
などという大層な宣伝コピーに惹かれて気にはなっていたのですが、これは明らかに大袈裟です。っていうか、エーコやブラウンの本読んでないのアンタ?って言いたくなるぐらいの事実に反した宣伝文句以外の何物でもありません(フィッツジェラルドは読んでないのでなんともいえませんが)。とにかく、それほどの価値がある作品ではないし、これ読んでも自分の世界観というか価値観に一切の影響はありませんでした。逆に言うと、『薔薇の名前』や『ダ・ヴィンチ・コード』は今まで知らなかった世界の扉を開き、私にとっては大いに知的刺激となった作品達ですので、一緒にするな!と個人的には言いたくなりますね。
アマゾンのPublishers Weeklyからの書評で
『The Da Vinci Code』と比較されるのは必至。だが、本作のほうがより思索的で完成度も高い。ダン・ブラウンがドナ・タートとウンベルト・エーコの力を借りたレベルを想像してほしい。な~んて書かれていますが、これも嘘です。何しろ暗号の秘密があれでは盛り上がれませんって!それ以前にダ・ヴィンチ・コードを思索的か否かの視点で捉えるのがおかしいと思うのですが…。ダ・ヴィンチ・コードに思索的側面ってありましたっけ???
批判がましいことばかり書いていますが、そういう虚飾を取っ払って単純な読み物としては、割合面白いです。知的興奮もあるものの、舞台になっているプリンストン大学の学生生活そのものがこの作品の中心にドンと構えており、単なる背景以上にそこでの学生生活の描写が主眼の一つになっています。それ自体を十分に楽しめれば、他の小説よりはずっと面白いです!!この作品も映画化決まってるようですし、その意味では先に挙げられてた本よりも一番映画化しやすそうな作品でもあります。
内容はと言いますと、実在する希書「Hypnerotomachia Poliphili(ポリフィーロの夢)」という本を巡る物語です。この本は一見すると不可思議な部分のある小説だが、実はそこには大変な学識を持った超一流の人物でなくては解けない暗号が隠されており、それを解読する鍵となる知識も言語としては、イタリア語、ラテン語、アラビア語等々を最低限の必須としながらも、天文学、建築学、動物学等々の百科全書的な博識を要求されるという途方もない本というのがポイントです。
この本を巡り、プリンストン大学に入学した当初から憑かれたように本の解読を目指し、図書館に籠る学生と、父がこの本に魅入られて研究したあげくに事故死した古書店主の息子の学生が共同研究者となり、暗号の解読に取り組んでいく。また、それを取り巻く周囲の人物が興味深い。一番情熱を注ぎ、朝から晩までこの謎の研究一筋に打ち込む彼の卒業論文のテーマがまさにこの本なのですが、彼を取り巻く友人達もなかなか魅力的な人が多く、プリンストン大学のいかにも学生生活ってノリの描写が生き生きとしている。まあ、著者の1人はそこのOBだしね。逆にそれが故に、この本が知的興奮をもたらすミステリーから、単なる青春物として終わってしまう危険性もあるんだけど…。
そうそう彼の指導教官も実はこの本に取り付かれた1人であり、事故死した古書店主と学生時代に一緒に研究した仲であった。もっともその後は本に関する見解の相違から喧嘩分かれし、争いは彼らの一生にわたって続いた。そして、この指導教官は今でも暗号の解読を夢見ており、暗号解読を目指す彼ら学生達にさまざまな影響を及ぼしていく。
基本的なプロットはしっかりしているし、そこに重層的に関わってくる人間関係の描き方もうまい。謎解きの部分も十分に知的で面白いんだけど、個人的にはプリンストン大学の学生生活の描写や友情関係の描写が多過ぎて、何の本だこれは?という違和感が否めない。深夜に裸で走る行事とかはニュースでも時々出てくる恒例行事で有名だし、卒業パーティとかもいかにもアメリカのあの手の大学って感じだが、それが私には余計に感じられた。
タイトルの邦訳「暗号」に引っ張られ過ぎて、勝手に先入観を持ってしまったのがいけないのかもしれない? それによって確実に日本での売上部数は伸びただろうけど、私のように感じた人が多かったかもしれません。ちなみに英語タイトルは「THE RULE OF FOU」です。これなら変な先入観なかったかも…。
そうそう、いささか批判的な私の感想ですが、本のあとがきに興味深いのがあったのでメモしておきますね。
澁澤龍彦氏は早くもその著者『胡桃の中の世界』所収の「ポリフィルス狂恋夢」の中で「夢の中でさまよいながら、壮麗な古代風の庭園や神殿や、さまざまな建造物や、神話の怪獣や水精や、また愛神ウェヌスの盛大な祝祭や儀式などに次々に遭遇する。あらゆるエピソード、あらゆる寓意が、古代風の意味を帯びている」「異教的な官能を謳歌した物語」であることを、まるまる一章を割いて説明されています。え~、そうなの?っていうのが私の正直な感想です。だって、この本読んでたし、確かにそんな名称聞いた覚えがありましたが、この本を読み終わってあとがきを読むまで、澁澤さんが紹介していた本のことだとは全く気付きませんでした。うかつもいいところですね。
この本よりもこの作品で取り上げられた希書の方がなんか面白そうに思えてきました。今ではアマゾンでも売っているようですので下に挙げておきますね。私も手持ちの未読の山がなくなったら買ってもいいかも? その前にあと一、二冊英語の本も残っている読まなければ。
最後に、あまり暗号部分に期待してしまうと私のように違和感を覚えてしまいますが、単なる小説として読めば、結構面白いです。読んどいて悪くない作品です。但し、ある意味、青春学園物かも? そこだけ注意しておけば、楽しめると思います。
フランチェスコの暗号〈上〉(amazonリンク)
フランチェスコの暗号〈下〉(amazonリンク)
Hypnerotomachia Poliphili: The Strife Of Love In A Dream(amazonリンク)
まだ読んでいないけど。。。。
面白いかどうかわからないけど、でもこの手の本を扱っているといういきおいだけで読んじゃうかもしれません。
こちらからもTB入れちゃおう。
ネルソン・デミルとコールドウェル、トマスンのエージェントは同じ人です。
>ネルソン・デミルとコールドウェル、トマスンのエージェントは同じ人です。
あっ、そうなんですか。全然知りませんでした。それでは頼まれれば、仕方ないのかもしれませんね。情報有り難うございました。