2007年12月23日

「不気味で素朴な囲われた世界」西尾維新 講談社

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病院坂黒猫が好きで好きでたまらず、その縁者が出るというだけ買った作品です。他にはな~んの意図もありません。モアちゃん(byケロロ軍曹)が「おじさまLOVE&LOVE~♪」と口ずさんでしまうくらい無邪気な愛情から購入しただけだったのですが・・・。


【以下、ネタバレの可能性大。直接はばらしませんが、書評上ストーリーが明らかになるので未読の方にはお薦めしません! ご注意を!】 








読んで最初、感じたのはあれっ? コレ、「きみとぼくの壊れた世界」ではなくて「化物語」ジャン?! そっちの世界のお話なのかなあ~ってことでした。だって、前回の兄と妹の関係が姉と弟の関係に転置されているものの、会話はまんま「化物語」系でノリノリだったし・・・。

最初は明るく楽しい話かなあ~って思っていたのですが・・・急転直下、殺人事件ですって、えっ~てカンジ。あまりにも前フリが無さ過ぎで最初、呆然自失と石化しました私。

でもね、でもね、いろんな意味でやっぱり西尾維新だったりします。

変化の無い、どこまでも予定調和の『日常』を『日常』として受け入れている周囲の人が、本当に宇宙人に見えるもんなんですよ。あの年頃は。つ~か、自分以外の人は全て宇宙人がすり替わっていて、自分ひとりだけが本物の地球人で実は、観察されて人間の習性を調べる為のモルモットにされているんじゃないか?な~んてことを日々、考えつつ保健室で寝ていた私には、全然違和感無く昨日のように思い出したりしますもん。

若さ故の傲慢というか、浅はかな思考なのかもしれませんが、学校の教師や親や同級生が全て自分とは違う『生き物』に見えていたことがあったりします。芥川が描いた「歯車」を保健室のベッドの仕切りカーテンにいくつも見たのもその頃のお話。まさか、20代を超えて生きているなんて信じられなかったし。

「ウテナ」ではないものの、『世界を革命する力』モドキの英雄に夢焦がれていたものです。本書の主人公は選ばれた救世主だと思っていたようですが、まあ、似たようなもんでしょ。

そういう人が日常の世界を見たら、やっぱこういう感じなのでしょうか? まあ、私の場合は、学校で気楽に生きていく為にも成績は絵に描いたように一番でしたが、勉強のことで直接教師に文句を言われないぐらいで他にメリットは無かったように感じてました。一部の教師には、だいぶ扱いにくい生徒と認識されていたし・・・。

個人的な経験はさておき、その辺の集団から遊離した存在の描き方はいつもながら秀逸です。ある種、典型的な人物像ながら、その実在感がいいんですよねぇ~スキ!

段々オーソドックスな謎解きものになっていくかと見せるくせに、いきなりバタバタ死んでくしさあ。思わず、いつから「銀英伝」かと思ったもんです。重要人物が突如死んじゃうと、いったんその辺の関係がリセットされちゃうような気がして、私なんかすぐ焦っちゃいますし。

でもでも、最後の最後の探偵役は、意外でしたねぇ~。あっ、これアリ?って奴だったし。でも、好きだから許す。愛があるから、私は本作品を大いに許します。もう「贖宥状(しょくゆうじょう)」をあげちゃうくらい、無罪放免にしてあげます。グーテンベルクに刷ってもらえるよう、お願いするぐらい許します。(←意味分かんないだろうな、この書評だけ読んでくれている方、すみません)

でも、犯人の動機がとっても&すっきりと分かり易いのが素敵♪ 
思わず共感できそうな自分が怖いぐらい。ある一つの願いを叶える為に、他の全てを忘れてしまうぐらいの微視的視野の狭さがなんと言っても本書の魅力かもしれません。それが若さであり、バランスを何よりも尊ぶ大人との差異なんだよねぇ~。

物事をなまじ見えてしまう人ほど、新しいことへの挑戦ができなくなるのもその辺が理由だったりするが、スバ抜けた大人はバランスを分かったうえでそれを壊す『強い意志』があったりする。それが、物の見えないまま、ただ行動するだけの動物に過ぎない若者と指導者(改革者)の差なのかもしれない。仮にやってることは同じ『壊す』行為だったとしてもね。

まあ、御託は置いといて。動機は仕方ないでしょ。
『愛』と『個人的利益』は並存するし、どちらがどちらかに勝るわけではないかもしれないが、常に一つしか考えられなければ、随時プライオリティーが変化してもそれは矛盾した論理にはならないかもしれない。詭弁っぽいけど・・・。

ただ、いつもながら作中の世界観には強く惹かれるものの、主人公は『HAPPY』なのだろうか? そこが少しだけ気になる。私だったら、全ての愛や好意に囲まれていられることが最善で、次善は周囲を一切無意識のまま過ごせること、かな? 

愛の告白は、実は自分にとっての日常化した世界観への刺激でしかなく、他者の同意は、さほど重要でなかったりする、な~んてうがった見方が一番似合いそうではあるのだけれど。

私の感想では明らかに「きみぼく」が上。だって、周りがいくら死んだって、たとえ反社会的だって、幸せなんだもん。愛に包まれてるし。もっとも、本書でも願いを叶えたのだから、幸せなのかもしれませんが、ちょっと幸せ感が微妙に違う。

まっ、でも最後の登場人物と知り合いになれただけでヨシとすべきなんでしょう。終わり良ければ全てヨシです(ホントか~?)。『囲われた』世界に暮らす方、どうぞ!

とにかく読みましょう!! 書店で西尾維新のしおりをもらうこともお忘れなく!!私は12種類GETしました(満面の笑み)。

不気味で素朴な囲われた世界(amazonリンク)

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他の西尾氏作品については、左上方のカテゴリ【書評 西尾維新】よりどうぞ!


posted by alice-room at 19:03| Comment(2) | TrackBack(2) | 【書評 西尾維新】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございました。
僕も某重要人物の突然の死には、驚きました。わりと、気に入っていただけに、少し残念でした。
でも、最後の探偵役で、帳消しでしたね。(笑)
>私の感想では明らかに「きみぼく」が上。
僕も作品の完成度では、「きみぼく」の方が上だと思いますが、この作品も西尾維新らしい秀作だと思います。
どこか歪んだ世界観は魅力的ですね。(笑)
Posted by lapis at 2007年12月23日 22:39
TB&コメント有り難うございます。
本当に、まさか&まさかの突然死でした! 好きなキャラがちょっと油断をしているとすぐ死んでしまうので気が抜けません(苦笑)。

おっしゃられるようにまさに西尾氏らしい作品だと思います。魅力的で怪しい故に、危険な世界ですね!本当に(笑顔)。微妙な読後感が後に残りました。
Posted by alice-room at 2007年12月24日 08:15
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