2007年12月30日

「知」のソフトウェア 立花隆 講談社

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立花氏の本を読んでいると、頻繁に出てくる『知的情報のインプット&アウトプット』に関する個人的ノウハウ本を独立してまとめたもの。著者の読書に関する本でかなり重複して採り上げられている内容であり、それらが既読である場合、目新しさという点での価値は低下するが、まとめられているので分かり易くはなっている。

また、著者自身が言うようにこの手の方法論に最適な一般解が無いのであくまでも参考に資する程度だというのは、適切な理解だと思う。と同時に情報に対する基本的な姿勢・考え方には大変勉強になる点がある。

一方で本書は、執筆当時の社会情勢や技術水準に決定的に影響されていて、現在のネットやPCといった情報機器を利用した情報収集・管理・利用という点では、致命的に時代遅れである。スクラップがどうとか書いている部分や書名・雑誌名・記事・論文検索などは、あまりに古い発想とやり方で今日そのままでは全く使えない。
←googlebooksearchやgooglescholar使いましょう。amazonでもOK!
NYtimesの記事検索もあるしね。

極論すると、具体的なやり方を書いている部分(本書の四分の一ぐらい)はそっくり削ってもいいような不要な部分かもしれない。

でも、本書を読むことで自分の情報収集や管理方法を常に他人の視点から見直す契機になることも事実。肯定・否定といろいろな場合があるものの、常に刺激を受けて自らの方法論をブラッシュ・アップできるので私には本書は有用でした。

でも、私のやり方とは全く異なる点も多数ですけどね。

さて以下、私の読書メモ。
本書の構成
1)インプットの仕方
2)アウトプットの仕方
3)インプットからアウトプットに至るプロセス

インプットの二つのタイプ
・知的生産型・・・インプットは手段(アウトプットの為)
・知的生活型・・・インプットは目的

スクラッ・ブック作成について:
資料の情報収集という作業に夢中になり、本来の目的を忘れて自己目的化することだけは避ける
←何の為のスクラップかを常に明確に意識する!

スクラップ・・・同一資料をコピーなどで重複させて、クロスリファレンスに対応させる(←現代なら、テキスト付きpdfだろう)
1)単純時系列スクラップ
2)価値評価を加えて取捨選択した後、内容別に分類したもの

スクラップ時の記入項目:
紙名、年・月・日

外国の雑誌記事索引
"Readres's to Periodical Literature" THE H.W.Wilson Company社刊
アメリカの約180誌の雑誌記事が分類されている

アメリカの情報源
"A Directory of Information Resources in the United States"議会図書館発行

良き入門書の条件
・読み易い
・その世界の全体像が適確に伝えられていること
・基礎概念、基礎的方法論などがきちんと整理されて提示されていること
・更に中級・上級に進むためにはどう学んでいけばよいか、何を読めばいいかが提示されていること

読むに値しないくだらない本であるとわかったら、直ちに読むのをやめて捨てる

資料を読む時の心得:
・資料の裏づけがある客観的記述なのか? 筆者の主観的意見や思い込みに過ぎないか?
・資料の裏づけがある場合、その資料が信頼の置ける資料か否か、信頼の置ける資料であっても筆者がそれを正しく用いているかどうかの吟味が必要
  ↑
資料の信頼性チェック
 資料の方法論の吟味とその方法論の具体的実践のされ方の吟味


聞き取り取材の心得:
頭の中で絵を描け

説明下手の原因:
説明の順序が悪い

説明のプロセス:
無説明で前提としてよいある共有知識の上に、新しい共有知識を積み上げるということ=話を進めるごとに共有知識の山が危なげなく積み上げられていき、最後に結論の認識を読者と共有できればOK!

『ウラ取り』
職業的懐疑の場合、これはホントだろうと直感的に思っていても、一応必ず疑ってみることを原則とする。
・・・人は自分が信じたいことはたやすく信じてしまうものである。信じたいことなら、未確認情報でも、つい真実だと思い込んでしまう。逆に信じたくないことなら、なんとかしてその情報が真実ではない証拠を探そうとする。それ故に、自分が信じたいことに好都合な未確認情報を得た時こそ、ウラ取りを忘れるな!
私はジャーナリズムの世界は経験したことがないので分かりませんが、経営情報の分析とかマーケティング情報の分析をやっていて、本当に痛感したものです。同じ資料から、正反対の結論や求める結論へ誘導する為の資料作成がいかに容易かと。と同時に周囲の圧力に屈せず、実際の現実を現す数字としてそれを評価することがいかに大変かを。

どんな組織であれ、上司や部下、関連部署や自分への評価など思惑が無いことなどなく、それが意識・無意識を問わず、判断を歪めるものだったりする。また、数字の評価だけではなく、数字の取り方もなかなか難しいし、最近流行のネット調査ほどいい加減なものはない。

何故なら、私も現実の実態を知る為に複数の調査モニターを今も兼ねているが、僅かな報酬で膨大な質問数。誰がまともに回答するだろうか?それなりに考えられていれば、誠実に回答しようとするが、実際、あまりにもひどい質問形式だと私はかなり作為的に適当な回答をする。おそらく、これは他のモニターでもそうするだろう。

残念ながら、調査を依頼する企業はコストとアンケート結果だけしか見ておらず、具体的な方法論の適否まで判断しないので現在の歪んだテストマーケティングが横行しているのだが・・・。

私の企画なら絶対にネットアンケートを委託などしない。だが、楽だから丸投げしてるマーケティング部が実に多いこと、多いこと。しかもそれをベースにいくら企画を考えても・・・ネ。失笑を禁じ得ない。

まあ、いささか本書から論旨がそれたが、私の考え同様、情報を常に懐疑的に見て、元データに当たって確認する大切さを指摘されている点は、大いに共感しました。
【目次】
1情報情報のインプット&&アウトプット
2新聞情報の整理と活用
3雑誌情報の整理について
4情報検索とコンピューター
5入門書から専門書まで
6官庁情報と企業情報
7「聞き取り取材」の心得
8アウトプットと無意識の効用
9コンテ型と閃き型
10材料メモ・年表・チャート
11文章表現の技法
12懐疑の精神
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ラベル:実用書 書評
posted by alice-room at 20:32| Comment(0) | TrackBack(1) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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知のソフトウェア
Excerpt:  かなり前に購入した本だが,ふっと気になって読み出した。新装丁では「評判のロング
Weblog: EURISKO2005
Tracked: 2009-07-23 16:11
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