2005年10月05日

「錬金術」沢井繁男 講談社

私は、この本は初心者の為の入門書だと誤解して読み始めました。全然違っていたようです。この本を読んで錬金術を理解できた方はきっと初めから知っていらっしゃったか、恐ろしく誤解されているのではないか? そんな心配をしてしまう本です。

まどろっこしい表現をしてしまいましたが、著者が勝手にそうだと思っている理解を自分の論理で《分かり易く》紹介している本ではないかと思います。少なくとも私には、この本を読んでも何を言っているのか全く理解できませんし、錬金術モドキではないかと思いました。もしかして難しいことを言って「ケムに巻く」この本自体が錬金術かな~とも屈折して捉えたいくらい、訳が分かりませんでした。

そもそも錬金術とは何か? この基本的な命題を歴史的な変遷や社会的背景とかをほとんど考慮しないまま、あたかも所与のもののように定義付けされても、私には懐疑的にしか見れません。物事を単純化して考える、巷にもよく言われますし、予備校の先生である著者にはお得意なのでしょうが、正直言って無理してます。錬金術の概念の仮説構築の段階で失敗していると思います。

更によせばいいのに、ご自分の把握した概念説明の便宜の為に、ご自分が作り上げた用語で説明しだす辺りから、暴走しているなあ~としか思えません。いろんな本とかからも引用しながら、説明するのですが、なんかグチャグチャしていて、まがりなりにも単純化したメリットが全くないようにも感じました。

それとオカルト系のしょうもない本によくある、錬金術師が使った用語とかの説明をしてしまい、(そもそもそこに入門書で触れるのはどうかと思うのですが)・・・自爆してます。段々と、しかしはっきりとこの本が何の本か分からなくなります。何を説明したい為に、引用しているのか or 単語の象徴するものを述べているのか、本末転倒し、ダラダラと引用と説明をするだけで私にはついていけません。

後半以降は、さすがに耐えられず飛ばし読みしてみましたが、私には無意味なものとしか映りませんでした。私が読んだ錬金術関係の中では、一番つまらなかったし、訳分からなかった本です。オカルト本の方が、噂や捏造にしろ、もっと面白いですし。

講談社の現代新書シリーズとしても読んだ中では、初めて期待外れでした。う~ん、なんでだろ? 絶版で良かったかも、古書で見つけても買わなくていいと思います。

錬金術―宇宙論的生の哲学(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」吉田光邦 中央公論社
これらの2冊の方が、はるかにいいです。
posted by alice-room at 18:37| 埼玉 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
わたしも同著者の他の著書を読んで”これってどうよ!”と思いました。
しかしながら同著者はちくま学芸文庫や岩波少年新書からも同テーマの本を出版しており、一定の読者受けがあるようですね。
ユタンは・・・、どうも自分の流派に偏りがある気がします。
Posted by 岡 at 2005年10月19日 04:50
岡さん、こんばんは。そうですね、この本の著者は類書を何冊も出されているみたいですね。きっと支持している方々がいらっしゃるんだと思います。残念ながら私には分かりませんでしたけど・・・?
ユタンも偏っていますか、やっぱりいろんな本を読み比べてみないといけませんね。関心はあるもののこの分野の本をきちんと読んだことがあまりなかったので、これからもいろいろと読んでいきたいと思います。
コメント有り難うございました。
Posted by alice-room at 2005年10月19日 18:57
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