2008年02月06日

「成毛式・実践マーケティング塾」成毛 眞 日本経済新聞社

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マイクロソフト日本法人の社長を10年以上やっていた人物だけに、やはりマーケッターとしての視点には非常に説得力があり、見習うべき点が大変多かった。

その反面、著者の肩書きがなかったら、普通にあるマーケティングの本とそれほど違わないのも事実。マーケティング関係の本を何冊か読むと、必ずそのどれかに書かれている内容とも言える。

もっと著者の場合は、それを実際のビジネスで実践し、形にして成果を出している点が非凡なのであり、ある意味もっとも付加価値の高いはずのその実践への具体的過程は、たいして紹介されていない。この点は、大変残念だ。

また、良くも悪くも『実践』の行動の人なので、著者の環境では、最大限有効な手法をとられているのだと思うが、必ずしもその原則は一般化できないものもいろいろとあるように感じた。

具体的に言うと、あえて専門用語を使って商品の解説や宣伝をすることで、その商品に精通した先導者的な顧客層(オタク)を生み出し、彼らを通じて市場自体を拡大・活性化するというのは確かに卓越した戦略だが、あくまでも市場占有率の寡占を狙え、市場が拡大するという前提での話であり、市場内においての少数派である場合、それが有効だと思えない。

個人的なビジネス経験から言うと、専門用語はやはり使うべきではないと思う。顧客に努力を要求する姿勢は、確かに中長期的には、ロイヤリティの高い顧客を育てて有効ではあるが、基本的な顧客予備軍の大多数を失う危険が高い。成熟市場であれば、そうしたリスクを犯した会社は消え去るだろう。まあ、著者が念頭においているのは、あの当時のIT業界ですからね。

そういった割り引いて考慮すべき点はいくつもあるが、改めて頷かされる点も多々あった。以下、個人的メモ。
「最低レベル(=できない理由を探す保守的な人)」を切る

毎年、下から5%だけ切る。同時に、毎年新しい人が入るわけでその全体の中から、5%を切っていく。

戦略(=勝利条件の確定)と戦術を区別する。

ネットワークの外部性
ネットワークに参加するメンバーが増えるほど参加メンバーの効用が増えること。その結果、もともとの当該の商品や規格を作った企業などとは関係のないところで、ネットワークの加入者が増え、もとの企業にもプラスの影響を与える
・・・山田英夫「デファクト・スタンダードの経営戦略」中公新書

時間は貴重だからこそ無駄遣いさせよ
 ← 損切り」をためらう消費者心理で購買につなげる

専門用語で語ろう
 マニュアル代わりに使われるカタログ

何故海外ばかり出掛けるのか 
 ← 道中全てをマーケティングせよ
どんな集団、どんな組織にもマイナス面だけに脚光を浴びせ、変化を拒む人達がいる。彼らがいる限り、組織は必ず衰退すると私も信じている。
新しいアイデアに対して、生じるであろうマイナス要素を提起すること自体は、決して悪いことではない。問題なのは、どうしたらそのマイナス面をクリアできるかの対処法(あるいは代替案)を出さずない問題提起することである。私が会議を主催していた時は、マイナス要素の指摘に対しては必ず対処法をセットでなければ、その発言を評価しないようにしていたものだ。そうでなければ、会議で建設的発言など有り得ないだろう!

ネットワークの外部性、パラパラといろんな文脈で見かけるが、今ひとつ理解しているとは言い難いことに気付いたので、今度はその辺を読んでみよう。

製品カタログは、実は購入前よりも購入後に見たりするのは、意外に知られていない真実です。これは通販などでも同様で、商品到着後にこの商品って何ができるの? 何がメリットなの?ってカタログを見て初めて商品に納得するというのが、よくある行動。

その理由は簡単です。詳しいだけで読み手のことを考慮しない取り扱い説明書やマニュアルに対して、カタログは究極まで読み易さや理解し易さを目的に書かれているので、当然客は読み易いカタログを見るのです。
【目次】
第1講 利益を生み出しているのは誰?
第2講 マーケティングは楽しい戦争だ
第3講 時間を無駄遣いさせよう
第4講 隠れ中間層を探せ
第5講 魔法とファンタジーに注目しよう
第6講 ITとカネとアタマは使いよう
成毛式・実践マーケティング塾(amazonリンク)
posted by alice-room at 22:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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