2008年02月09日

「庭園の世界史」ジャック・ブノア=メシャン 講談社

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私も何気に『庭』が好きで、京都の寺社仏閣巡りの楽しみの一つに庭園巡りが必須の要素となっていたりする。勿論、海外での名所旧跡巡りでも庭園は欠かせない要素だと思っている。

そんな訳で大いに興味を持って、本書を読んだ。著者は心底、庭好きらしく世界中の庭を題材に自らの経験と読書で得た知識を元に自らの思う事を述べている。

その視点は、単純な『庭園』だけに止まらず、それを生み出した民族・文化・思想・時代など、非常に多くの要素を加味した総合的な観点であり、読んでいてなかなか興味深く、面白い。

実際、著者は可能な限り自分で現地に足を運んで見たうえで書いているので、その点でも文章に熱がこもっているのを感じる。

庭好きなら、読んでいて十分に楽しめるし、それを生み出した人々・地域・文化・時代などに対しての関心も深まると思う。その一方で、著者の見解は、必ずしも同意できるものばかりではない。

解説でも訳者が書かれているが、それとは別な点から見ても、日本の庭に関する文章は、かなり疑わしい記述が散見する。率直に言って、種々の制約があったのだろうが、誤解と無知に基づくと思われる。もっとも別な見方をすれば、逆によくぞあそこまで調べてという評価もできることを付言しておく。

また、グラナダのアルハンブラ宮殿に著者はとりわけ関心を持っていたと思われる。私自身も、海外で見た『庭』の中では間違いなく第一に推すし、丸々二日間、アルハンブラ宮殿に入り浸っていたので自分自身の思いとしても並々ならぬものがあるのですが、そういった気持ちからすると、著者の文章では全然物足りない! というか、どんなに書いても書き足りないし、アーヴィングの「アルハンブラ物語」を超える文章を今まで他の本でも見た覚えがない。

まあ、それは仕方ないといえば仕方ないのだが、著者はアルハンブラ宮殿は個々の閉ざされた空間が個々に魅力的な点を強調し過ぎていないだろうか? 私は、あえてあの壁の脇などの裏道っぽいところなどに入り込み、下からあの赤い壁(アルカサル)などを見上げたりしてみたが、そこで見た姿も含めてあの空間全体、アルハンブラ宮殿およびヘネラーリフェ庭園を一体化したあの『場』そのものが余すところ無く、魅力的であると私だったら強く言いたい!!

そういえば、先月アルハンブラ宮殿に関する本を入手してまだ読んでいなかったことを思い出しました。改めて、是非読まねばと意を強くしました。
【目次】
1グラナダを訪れてふたたび庭への情熱をかき立てられる
2原始の庭・魔法の庭
3中国の庭
4日本の庭
5ペルシアの庭
6アラブの庭
7トスカーナの庭
8地獄の庭ボマルツォ
9フランスの庭
10ふたたびの庭
庭園の世界史―地上の楽園の三千年(amazonリンク)

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「アルハンブラ」佐伯泰英 徳間書店
「三大陸周遊記」イブン・バットゥータ 角川書店
「サファイアの書」ジルベール シヌエ 日本放送出版協会
ラベル:書評 庭園 アート
posted by alice-room at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
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