
印刷の文化史的なものや写本などの装飾に興味があり、そういったものを期待して読んだ本です。本の装丁や口絵、図版などがいかにも私の関心をそそりそうだったので読んでみたのですが・・・結果的に外れでした。
特に第1章は、非常に細かい事項を巡る話であり、印刷関係者でもない私には、退屈以外の何物でもありませんでした。う~ん、うまくいえないのですが、本書で言及している細かい点が印刷文化史の中でどういった意義があるから、問題とする価値があるとか、その辺の基本的な説明がないまま、いきなり最初から最後まで知っている人向けの内輪の議論に終止していて、どうにも話題に入っていけません。
何が言いたいのか、ポイントが全然分かりません。私の知識不足のせいでしょうが、他の一般の方が読んでも恐らく同様な感想を抱くのではないでしょうか?
また、第二章に入り、ようやく図版が出てくるかと期待したのですが、ここでも図版の解説のポイントが私の期待していたものと全く違いました。図版自体の何が描かれているいるかという視点は、ほとんど無いので解説がつまらないし、私的にはどうでもいいことばかり解説されていて、耐えられなくなりました。
結局、二章の半ば以降は、流し読みに変えましたが、やはりあえて読むに値する部分は見つけられませんでした。
専門家には、意義があるのかもしれませんが、まあ私のような一般読者には、退屈極まりない本です。お薦めしません。読んでても登場する本に、全然、興味が湧かないんだもん。個人的には図像学的な説明を期待したかった! 書誌的な視点ともまた違うような気がしました。
とにかく私的には、時間の無駄でした。
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序文
第一章 活字体
書物の伝播
「人文主義書体」と「ゴシック書体」
「能書術」と「人文主義写本」
「ゴシック体活字」対「ローマン体活字」
印刷技術による古典的著作の普及
刊本の普及と書籍販売業者のネットワーク
書物の戦い」
人文主義サークルと印刷技術
ローマン体活字と「碑銘研究」
「アルファベット論考」
「ゴシック体活字」から「ローマン体活字」へ
第二章 挿 絵
中世写本とギリシア・ローマ神話
ブルゴーニュ公の宮廷と中世写本
木版画挿絵と中世ロマンス
「トロイア伝説群」
古典古代神話の図像と『アルブリクス』
ボッカッチョ『名士の没落』『名婦伝』等の挿絵
古典的著作の刊本と挿絵
木版画挿絵の伝播
古典テクストと「記憶術」
古代遺跡・遺物と『ポリフィロの夢』
ダンテ、ペトラルカの挿絵本とフィレンツェの木版画
デューラーとホルバインの挿絵本
第三章 装 飾
ルネサンスと挿絵本・装飾芸術
愛書家と「個人的標章」
「タイトルページの縁飾り」と「印刷技術者の商標」
タイトルページとローマ建築様式の「拱門」等の装飾
古代ローマの建築と「建築理論書」
古代ローマの「メダル」「コイン」
「ローマのメダル集成」と「装飾デザイン規範集」
「印刷技術者=出版業者の商標」と「寓意画」
ホラポロン『象形文字』とアルチャーティ『エンブレム集』
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「グーテンベルクの時代」ジョン マン 原書房
「印刷に恋して」松田哲夫 晶文社
「美しい書物の話」アラン・G. トマス 晶文社
「中世ヨーロッパの書物」箕輪 成男 出版ニュース社
「本の歴史」ブリュノ ブラセル 創元社
>この本で最も参考になる部分は訳者による解説です。
なるほど・・・むしろそちらをよく読むべきでしたか、軽く流し読みしてもったいないことしていたかもしれません。私。
文献の件、同意です。日本語に訳してくれること自体は、いいと思うのですが同時に原書名がなければ、文献としては実際、実用性が著しく低いでしょうし。
図像学的な書籍の情報、本当にどうも有り難うございます。今度、本屋で意識してみようと思います。ちょっと楽しみです♪
たぶんに偏りのある書評で恐縮ですが、これからも宜しくお願いします。