そりゃいくら柳の下のドジョウと言っても、何匹もいるわけではないでしょうし。当たり前です。
世界を舞台にして知られざる古書の世界(古書店を中心にした古書事情)を紹介するという当初の企画は良かったと思います。しかし、本書では紹介すべき特徴ある古書店のネタが尽きたようで、政治的なことばかり書かれていて、本好きが求めるエピソードはほとんどありません。
編集サイド、それに気づかないのかな? これは古書店に関する本とは言えません。当然、古書店について興味のある人は、買って(読んで)失敗したと思うでしょう。
正直言って、つまんない古書事情の話などどうでもいい!(文化論も二の次) あくまでも知りたいのは、読む価値のある本、または、見る価値のある本がどうやって流通しているのか、どうしたら安く入手できるか、でしょう。
勿論、実際に購入するしないは別として、大概は矮小な所有欲を満たしたい俗物なんですから、古書コレクターなんてもんは。(一部は、そうではない高潔な紳士の方もいらっしゃいますが・・・)そういった類いの下世話な視点での古書店の話がもっと知りたかったです。
確かに人との交流も素敵ですが、いいじゃん、本の話なんですから、そんなに綺麗事ばかり書かれても・・・っていう感じですね。
16世紀のラテン語の聖書が格安で買えたとかという話がありましたが、そういうシンプルな方が実ははるかに好奇心をそそられます。(しかし、俗物な私)
また、本書の執筆者の中には猥褻な本がないのが良いと書かれている素晴らしい方もいらっしゃいましたが、私には理解できませんねぇ~。俗物根性の塊である私には、そういった雑本も十分に興味の対象なんですけど・・・。
さすがにここのブログではノリが違うので紹介しませんが、外国を旅行した時にその国の言葉で書かれたエロ本も当然コレクションの対象として買ってきてますけどねぇ~。猥褻とかどうか以前に、国民性が如実に現れていて大変興味深いですけどね。ブラジルでは、サッカーボールで怪しげなところを隠している構図でしたし、さすがはサッカー大国だと感心したのを覚えています。
余談が過ぎましたが、本書は読まない方がいいでしょう。こりゃ、駄目です。
【目次】世界の古書店〈3〉はるかなる本の文化を求めて(amazonリンク)
値切って買った『金鞭記』―中国、天津
北京書肆探訪―中国、北京
中国書店報刊資料部―中国、北京
青空古本市の「掘り出し物」―中国、北京
雑誌漁りに歩いた光華商場―台湾、台北
書厄・ご利厄・発禁本―韓国、ソウル
伝統と革新が共存する国―韓国、ソウル
懐を気にしながら買った古書―韓国、ソウル
マニラのちょっと危ない古本屋街―フィリピン、マニラ
フィリピンで唯一の本格的古書店―フィリピン、マニラ
英語文化の継承―ミャンマー・フィリピン
エネルギシュな街の頼もしき店主―ベトナム、ハノイ
新刊書のない国―ミャンマー、ヤンゴン
海の詩人の店「ル・ゾディアック」―フランス、パリ
日本人びいきの古書店主―ギリシア、アテナ
女たちの店―ドイツ、ベルリン
石畳を踏んで歴史と語る町―ドイツ、マールブルク
「ドン・キホーテ」とすいか―スペイン、マドリード
家族の絆のもとに―イタリア、ヴェローナ
オスカー・ワイルドと子供たち―イギリス、オクスフォード
古書店に生き続けるイングリシュネス―イギリス、ケンブリッジ
ロレンス・カントリーの「地霊」―イギリス、ノッティンガム
ああ、教会が古書店に―イギリス、インバネス
マヤ民族と本の精霊たち―グアテマラ、グアテマラ・シティ
ドンセレス通りと泥棒市―メキシコ、メキシコシティ
オクタビオさんとの出会い―チリ、サンティアゴ
ユニバーシティ・コミュニティに生きる古書店―アメリカ、ヴァージニア
地図片手に店内を巡る―アメリカ、ポートランド
地方の大学町で見つけた古書店―アメリカ、アイオワシティ
革命家の書物にうずもれた若い店主―ハワイ、ホノルル
人生の五分の一―日本、カンダ神保町
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「世界の古書店Ⅱ」川成 洋 丸善
「世界古本探しの旅」朝日新聞社