
でも、この作品に関していうとちょっとなあ・・・というのが率直な感想です。15世紀に描かれた名画の修復過程で発見される不思議な文字。X線という現代の手法で、500年ぶりに明らかにされる謎の言葉。
主人公の女性修復士の周りで起こる不可思議な死。それはやがて明確な殺人となり、徐々に主人公を追い詰めていく。何よりもこの作品で特徴的なのは、絵に描かれたチェス盤。勝負の途上にある対局が実は、500年後の現代にあって何事かを語り始める。犯行と同時進行して行くチェスの差し手が謎を深める一方で、解決へと導いていく。
アイデアは盛り沢山で、実際ある種の誘引力で惹き付けるんだけど、チェスが分からないとこの小説理解出来ません。日曜の3チャンネルでやっている将棋の対局表のように、チェスの盤面が示され、棋譜を解説されても読み飛ばすしかない。一冊の小説を読む為にわざわざチェスのやり方を覚えないでしょう、みんなも。結局、そこは読み飛ばすしかなく、雰囲気を味わうだけで面白さを賞味できませんでした。
だからでしょうか?なんか、面白みが湧かない。絵画に秘められた当時の複雑な状況なんかはすっごく魅力的なんだけど、思わせぶりなだけできちんと生かし切れていない感じもしました。一概に、つまらないと切って捨てられないだけの不思議な魅力はあるんですけどね…なんか惜しい!って感じ。
最後は、いかにもミステリーという感じで納得のいく予定調和で終わるので安心できるのですが、う~ん評価は微妙? 個人的には、読まなくてもいいような気がします。恐らくほとんどの人にもそう思えると思います。これが結構売れたというのは、ちょっと不思議ですね。
チェスの分かる人の意見も聞いてみたいところです。将棋なら分かるんですけどね、私も。だから、チェスを通して言いたいことは分かるんですが、どうも実感できなくて。
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