
どうしてどうして、なかなか盛りだくさんの内容で想像以上に中身が濃い。遊郭に関する本は何冊か読んでいたので、この本で初めて知った知識は少ないもののコンパクトにまとめられた割に基本がバランス良く抑えられていてとっても良心的。この手の分野の初心者には、絶対にお薦めします!
読み易いけど、これでもかっていうくらい親切な解説は嬉しいかも。客が遊女を尋ねる1回目を初会、2回目を裏を返す、3回目を馴染みとかの用語の他にも祝儀の惣花(そうばな)や特別イベント日の紋日、吉原へのアクセスとして猪牙船とか他の本で学んだことがこの一冊で分かってしまいます。
なかなか客がつかなくて「お茶をひく」って言葉がありますが、これは売れていなくて暇な女郎に本当にお茶を臼でひかせていたとか、トリビア的な事柄もいっぱいあって読んでて楽しい。
あとね、文章ばかりで飽きないようにコラムみたいにして、別なトピックを採り上げているのもユニーク。当時を踏まえて、現代の散策路として紹介されているのもイイです。紹介される前から、時々この辺は歩いているので知っていますが、確かに歩いても面白いところを挙げてます。御存じない方は是非、一度歩いてみるといいかも?
後半の4分の1くらいは実際の落語を文章におこして、脚注に用語の解説をしてくれています。ここまで解説しなくても、っていうくらい詳しく丁寧な解説で、落語をほとんど聞きに行ったことのないような人(私も数回しかないんです、実は)でも分かります。きっと。
これ読んでると、落語を聞きに行きたくなりますよ。ホント。おまけにこの本はCDで志ん生の落語まで入っているのでまさに至れりつくせり。遊郭に興味のある人、落語ってどんな感じと思う初心者、買って損のない一冊です。見た目と違ってなかなか、充実した本でした。出版社が技術系の技術評論社っていうのも意外ですけどね。これは当りかと思います。
【目次】
1章 江戸の遊廓「吉原」
江戸の不夜城・吉原遊廓
吉原は色の夢里
いざ吉原へ
五丁町と仲之町
茶屋と見世
見世の格付け
見世のつくり
吉原遊び
目指すは間夫
遊女の手練手管
散策コース (1)浅草寺と奥山
散策コース (2)富岡八幡宮と深川えんま堂
地図で読む江戸今昔 吉原遊廓の“廻し”
2章 吉原の歴史と伝説
格子向こうの吉原の花
新吉原の変遷
明治以降の新吉原
伝説のお大尽遊び
座敷遊びと料理
観光名所・吉原
花魁道中
江戸文化の華
ありんす国の花魁伝説
散策コース (3)柳橋と鳥越神社
地図で読む江戸今昔 浅草は江戸の解放区
3章 遊廓に暮らす人々
娘たちの十年間の吉原生活
遊女の一日
遊女人生
吉原の年中行事
吉原モード
遊女屋で働く男たち
遊女屋に出入りする人々
散策コース (4)吉原遊廓と鷲神社
地図で読む江戸今昔 芸者の男名前の由来
4章 四宿と岡場所
庶民が通った色里
四宿と岡場所
宿場と飯盛旅籠
四宿の遊び
南国・品川宿の飯盛旅籠
岡場所と女郎アラカルト
気っ風が売りの深川
散策コース (5)内藤新宿と追分跡
散策コース (6)板橋宿と縁切榎
地図で読む江戸今昔 四宿と宿場女郎
落語速記
付き馬
二階ぞめき
幾代餅
品川心中
志ん生で味わう江戸情緒[2] 江戸の花街「遊廓」がわかる [CD-ROM付](amazonリンク)
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