2008年03月03日

「下流社会」三浦展 光文社

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数年前に流行った本です。いつも通りひねくれ者の私は、売れてる時は見向きもしませんでした。友人が読んだと聞いた時も、全然関心がなかったのですが、ほとぼりもさめた頃なので、ようやく読んでみました。

感想を一言で言うと、なかなか面白い! 
対象集団をその属性で分類して類型化し、その類型化したグループ毎に個別化した最も効果的と思われる種々の販促企画を実施していくというのは、マーケティングの基本ですが、まさにその王道のパターンを行っています。

もっともずいぶん前からはその類型化は一層細分化して、ONE TO ONE MAKETING になり、それすらも古くなった昨今のご時勢から言うと、ずいぶんと古臭い手法ではありますが、見方を変えればトレンドを掴む的な視点からすれば、まだまだ効果的でしょう。

但し、本書の著者は社会的に顕著な現象(=マスコミで囃し立てて、一般人が関心を持ちそうな話題)を採り上げ、それを仮説と統計的資料から説明しようとしているのですが、それを踏まえて『行動』に結び付く提案や提言はほとんどありません(本書の「おわりに」で書かれたものは、あくまでも体裁を整えた程度で価値はないでしょう)。

端的に言うと、社会的にキャッチーなトピックの一見もっともらしい説明をした本、ではないかと思います。(これはこれで適切なものなら、素晴らしい価値があります)

最初に疑問点から挙げてみると・・・。
著者自身が頻繁に触れているが、あまりにも統計資料の標本数が少なくて、有意のものを言えるのか根本的に疑問? 即ち、統計的分析に値するのかが不明。

質問形式やアンケートの採取方法など、具体的な例示がなく、仮に質問が恣意的であったとしても、バイアスがかかっているかどうか不明です。

仮説の立て方そのものも、いきなり提示されているが、複数仮説を立てるにせよ、その仮説の前提条件の明示と合理的な選択肢の列挙が十分とはいえないだろう。

あと、文章を読んでいると怪訝に思ってしまうのはいかにもメディア受けしそうなキャッチーなトピックや用語を多用している点。ご出身がパルコ系でマーケティング情報誌をやられていたというので、思わず納得! 

いろいろな意味で非常に表現が上手いのですが、リサーチャーとしては、上っ面な感じがしてしまうのも事実(真実?)。西武の通販会社でデータベースマーケティングやってる人を知ってましたが、確かにもっともらしいのですが、細かいとこを突っ込んでみると、理論ばかりで現実がついていかず、客観性にかけていたような・・・? 同じグループ企業だからと一緒の扱いをするのも失礼な話ですが、ノリが似ているんですよ~、ホント。

西武グループの感性経営がその後、どのようになったかは皆さんご存知の通りです。美術館も、リブロポートもつぶれちゃったしね。(経営的にはつぶして正解だと思いますが)

まあ、その辺の気になる点(統計的な分析は、あまり意味無い感じがします)を無視して、あくまでも社会変化を捉える仮説として読む分には、大変面白いと思います。

自分らしさを求めるのは下流だとか、コミュニケーション能力の不足が所得格差に関係しているとか、週刊誌の記事的なノリで読むなら、ふむふむ確かにそうかも、って思う事が多々有ります。だからこそ、たくさんの人の共感を呼び、本書が売れたのも納得のいく話です。

でも・・・
それこそ、知的好奇心旺盛で上昇志向の強い人なら、本書を読んでただ首肯しないと思います。自信と誇りを持って生きてきた自分の生き方を知ったかぶりをしたサラリーマン程度の奴なんかに類型化して解説されたら、憤りを感じるのではないでしょうか?
 
自尊心の強い人や自らを『上』のグループにいると思う人が、自分より下と思われる『人』の分を過ぎた行いに対して、安易に許容するとは思えません。まあ、余裕がある分だけ、無視して放置するという対応もありますけどね。

あくまでも一つの見方(仮説)としては、面白いし、もしかしてそうなのかも?って思うんですが、思い付き以上のものがないのが残念。
もっと、掘り下げてきちんと統計的な裏付けを取ればいいのに・・・と思うのですが・・・。

でもでも、評価が二転三転するような書き方で申し訳ないが、やっぱり面白いです。

結婚や子供の有無が、想像以上に所得水準と相関性があるというのは、悲劇というよりも喜劇ですね。さんざん自由と平等という共同幻想上に成り立ってきた日本社会の実情がこの通りだったら、目も当てられません(苦笑)。

階層により居住地域の固定化というのも、実に近代的な『自由』であるところの移動の自由、職業選択の自由が実質的に「負」の方向性でしか機能していないという指摘であり、地域分権化論とも絡ませて考えるべきテーマだと思いました。ナショナリズムの前に、セクショナリズムですか・・・ハハハ。

先日見たNHK特集の中国と比べると・・・よろしいんじゃないでしょうか? 過労死する人も減るでしょうし、所得が半分になって自由時間が倍になり、GNPが毎年マイナス成長の国っても悪くないでしょう。

ゆとりの国ですもんね、日本は。努力しているのをかっこ悪いとする国ですし。美しい国でしたっけ?ねっ? 
ふと、そんなことを思ってしまいました。

そういえば、本当に地元以外の何物も知らないでそれだけで全てに満足している人が多数いるんですよね。それはそれで、その人の価値観で良いと思いますが、その価値観がドンドン増えていく日本という国は、投資対象になるのかなあ~とも思いますね。topixを見るまでもなく、昨今の外人売りは、すると正解かもしれませんね。ふむふむ。

と、会社を休んでブログを書いている人が言ってるようなのが、問題なんですね。仕事しろ~って!
【目次】
第1章 「中流化」から「下流化」へ
第2章 階層化による消費者の分裂
第3章 団塊ジュニアの「下流化」は進む!
第4章 年収300万円では結婚できない!?
第5章 自分らしさを求めるのは「下流」である?
第6章 「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る
第7章 「下流」の性格、食生活、教育観
第8章 階層による居住地の固定化が起きている?
下流社会 新たな階層集団の出現(amazonリンク)

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「大満洲国建設録」駒井徳三 中央公論社
「東京の下層社会」紀田順一郎 筑摩書房
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posted by alice-room at 15:07| Comment(0) | TrackBack(1) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 読む必要無し。ただそのひと言を伝えるためにエントリを書きます。 ずいぶん前にベストセラーになった新書ですが、いまさらながら文句をつけるためだけにエントリを書けるほどの駄...
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