イスラムの聖者にはキリスト教の列聖のような制度がないので、みんなが認めればOKらしく、民衆の支持こそがその基準となるようだ。キリスト教でも元々は、地方限定の聖人がたくさんいたことを思い浮かべれば、その類似性は宗教に普遍的なものなのだろう。
その一方で、本書で初めて知ったのは「バラカ」という概念です。一応、「神の祝福」「恩寵」「御利益」と訳されるそうですが、そんな単純なものではなく、非常に幅広い意味合いを持つ独特な概念のようです。以下、本文中から。
・・・・・全体として、可能な限り文献など資料を基にして、イスラム世界における聖者の存在を採り上げようとした真摯な姿勢が見れる真面目な本なのですが、如何せん、イマイチ面白みには欠けてます。
バラカは、イスラムに内在する要素であり、様々な物や者に宿りながら、それらをイスラムの聖性によって結合させる固有の機能であるといえよう。
エピソード的なものの紹介よりは、むしろそれらの類型的な分類とその解釈に力点が置かれていますのでご注意下さい。私的には、まずは具体的な聖者のエピソードの方に関心があったので、その意味では残念でした。
まあ、「バラカ」という言葉を知っただけでもヨシとしましょう。
【目次】イスラム聖者―奇跡・予言・癒しの世界(amazonリンク)
1 生き生きとした聖者社会
2 人はいかにした聖者になるか
3 聖者のプロフィール
4 聖者と奇跡
5 社会の中の聖者たち
6 聖者は歴史をどう変えたか
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