
先日読んだ「バチカン・ミステリー」は実はこの本「法皇暗殺」によって生じたバチカンを取り巻く世界中の冷ややかな疑惑の目(=在位33日間の法王は暗殺されたのではないか?)を晴らす為に、描かれたものでした。
そちらはこの本よりも後に書かれ、教皇のお墨付きでバチカン内部に取材ができたという特殊な恵まれた条件があったこともあり、丹念に事実を照らし合わせ、可能な限り冷静に当時の状況を再構築していると思いました。それ故、バチカン・ミステリーを先に読んでしまうと、こちらの方は推測が多いし、関係者は消される(実際に、マフィア絡んでるので殺されてるしね)恐れがあると言って証言した証人の裏がとれないので根拠がとても弱い。ありていにいうと、安っぽい陰謀論だろうと勝手に想像してました。読む前までは。
でもね、それは間違いでした。頭から法王は暗殺された。そこを出発点にこの本が始まってしまっているので、確かに問題は多い本だとは思いますが、一面の真実も語っていると思います。著者が法皇の暗殺が為されたとする理由の多くは、確かに事実も多く、それは当時の新聞記事やニュースなどで知られており、裁判を巡る証言や証拠資料からも明示されています。実際にBBCの記事などでも報道されています。
非常に怖い本です。これが真実ならば、この世の中に正義はあるのでしょうか?マフィアが彼らに不利な証言する人達や事件の検察官を暗殺して、闇から闇に葬る事件が実際にあるの聞いていましたが、ここで語られる内容はあまりにもヒドイ。しかも、宗教家までもがこれだけ堕落し、悪事に手を染めているのならば・・・。掛け値無しにこの世は闇かと思ってしまいます。
勿論、私はカトリックとは縁もゆかりもないですが、俗物以上に金と権勢を求める宗教家というものには、嫌悪の情を抱かざるを得ません。どこまでが本当か分からないのですが、全部が本を売らんが為の捏造ではなく、たぶんに事実が含まれていそうで怖いんですよ。この本に書かれている内容の10分の1でも真実であることが分かったら、まともな人は信者ではいられないでしょう? 生半可な信仰の危機、なんて言葉ではいられないように感じました。それくらいショッキングな内容です。
キリスト教に関心が薄い日本でこの本が出版されるにあたり、紹介記事が出た時点で日本司教団がバチカンに真相を問い合わせ、それに対して返信があったのも故なきことではない。それくらい、この本は危険なのだと思いました。
そこいらにあるような汚職や脱税事件なんかの比ではなく、多国籍間の国際金融取引を利用した巨大バチカン株式会社(著者は、こういう表現をしている)が起こしている問題の一端をかいま見せてくれたように思いました。

実際、バチカン銀行(IOR)がマフィアの息のかかった多数の銀行と密接な(?)取引関係を持ち、名目上バチカン銀行の支配下とみられるパナマの会社への融資の焦げ付きを原因にアンブロシアーノ銀行倒産に際しては、道義的責任と言いながら、二億五千万ドルもの巨額資金を負担しているのは、何故でしょう??? また当時のバチカン銀行のトップであるマルチンスク司教。彼がバチカン銀行の債務保証をした便箋の存在等。この便箋の存在自体は事実らしいし、これらに関する重要人物・関係者が次々と不可解な死を迎えたのも通常では有り得ない話でしょう。
そもそも根本的な疑問として、法皇が亡くなった当時のバチカンによる隠蔽工作や情報操作があったことは、事実だったそうだし、何故そんなことがなされたのか?それがますます民衆の疑惑を増す結果になってしまっている状況は現実世界の話だけに興味深いです。

最近、私が読んだ本の中でもトップ3に入るくらい!! 今まで読んできた中でも国際犯罪小説、金融小説、陰謀小説、ミステリー等々ひっくるめてもかなり上位に入るくらいドキドキしてしまう本です。どこまでが本当でどこからが創作か? その境界線上がいっこうに分かりません。是非、是非、興味のある方はこの本と「バチカン・ミステリー」、それと関係する海外のニュース記事とか探して読み比べて下さい。《事実は小説より奇なり》この言葉はやはり真実なのかと思いました。絶対にお薦めの一冊です!!
残念ながら絶版のようですが、とっても興味深い一冊です。復刻してくれても売れそうだけどなあ…。仮に、全くの創作でも十分に楽しめる国際金融小説です or 陰謀小説かな?(笑顔)読んでおいて損はないです。
あっ、でも信仰の厚いカトリックの方は読まれない方がいいと思います。不快感以上に、深刻に悩んでしまうかもしれません。事実は闇の中ですし。但し、完全な創作でもないことも確かです。そこがなんとも怖い本でした。
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関連ブログ
「法王暗殺」より、抜き書き P2及びオプス・デイの説明
「バチカン・ミステリー」ジョン コーンウェル 徳間書店
「法王の銀行家」殺害で4人起訴 CNN
「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社
法王の銀行家 2002年の映画
恐いですね。
難しいですね、どこにでもいい人と悪い人がいますし。でも、表面的なものだけでなく、物事はその背景に当たる部分も見なければいけないんだなあ~と改めて勉強になりました。
真実が知りたいですね…。
ドイツでそのドキュメントもすっごく関心をそそられます。
今年から来年にかけては、あらためて、この辺の本が少なからず出るかもしれませんね