2005年11月06日

「法王暗殺」より、抜き書き

本の感想とは別に、本の中で興味深いことに触れられていたので抜き書きしてみた。

オプス・デイ
国際的なカトリック信者の団体で、会員は六万ないし八万人と少ないが、大きい影響力を持ち、しかも教会が禁じる秘密結社である。何も秘密はないと称しているが、これまで一度も会員名を公表したことがない。

創設は1928年、スペイン人ホセマリア・エスクリーバ神父により始められた。聖職者は5%セント前後に過ぎず、大半は男女信者で、味方も多いが敵も多い極右団体である。会員には特別の資格を要求しないが、経営者や言論界の指導者など、上流階級に属する人が多い。オックスフォード大学講師で元会員のジョン・ロッシュ博士は「秘密で陰険でファシズム的団体だ」と書いている。

オプス・デイが反感を持たれるのは、中世風の苦行によりわれとわが身を苦しめることと、カトリック教会の乗っ取りを企てていると噂される点だろう。もちろん、その精神性には高く評価すべき点もある。

現教皇ヨハネ・パウロ二世(出版当時)は、即位後はやばやとオプス・デイ創始者の墓に詣で、続いてこの団体に教区に似た資格を与えた。つまりオプス・デイは教皇直属の強力な機関になったわけである。

世界各地の新聞社や学術誌六百社のジャーナリスト、五十以上のラジオ、テレビ局の関係者がオプス・デイの会員だそうだが、60年代にはフランコ時代のスペイン政府閣僚のうち三人が会員で、スペインの「経済の奇跡」達成に功績があったという。スペインのルマサ社の総帥ホレ・マテオスも会員だが、彼はカルビばりの金融帝国をつくろうとして1984年4月、西独警察に逮捕され、現在スペイン政府が引渡しを求めている。

スペインで所得ナンバーワンというマテオスは、既に巨額の金をオプス・デイに出資し、そのうち相当な金額は、スペインとアルゼンチンでカルビはじめP2との連携による不正行為から得たものだそうである。

P2
Pはプロパガンダの頭文字。もとは19世紀の有名はフリーメイソン支部名だった。最初、ジェッリは退役した高級将校を入れ、やがて彼らのつてで軍の現役上層部を抱き込み、人脈は徐々にイタリア権力機構の中に浸透していった。

フリーメイソンが揚げる理想はまもなく建前だけになり果てた。ジェッリが狙ったのは、極右勢力の大同団結と、イタリアが共産化した場合に備えクーデター勢力の温存だった。西側諸国からの支援には自信があった。事実、P2の初期には、イタリアで活躍するCIAからの積極的な協力を得た。

P2は、単なる左翼恐怖症だけで結びついた秘密結社ではなかった。その証拠に、P2イタリア支部の会員は、陸軍司令官ジョバンニ・トリーシ、秘密警察首脳ジュゼッペ・サントビートとジューリオ・グラシーニ、税関長オラーツィオ・ジャyンニーニ、その他閣僚、共産党を除く各政党の有力者、将軍30人、提督8人、新聞社やテレビ局の首脳、カルビやシンドナを含む実業界や金融界のトップという実力者ぞろいだった。一般のフリーメーソンと違って会員名は極秘にされ、全会員の名を知るのはジェッリだけだった。

P2の勢力拡張に、ジェッリはさまざまな手段を使った。会員のつても用いたが、脅迫を多用した。一人の会員が入会すると、有力者を脅迫できるように秘密文書を忠誠のあかしとして提出させる。それを利用して対象となる人物を強請り、会員に加えていくという手口である。一例が国有石油会社ENIのジョルジョ・マツァンティ社長のケースでサウジ原油買入れに関する贈収賄やリベートの証拠書類をみせられたマツァンティは直ちに入会、されに多くの秘密情報を提供した。

また、不正な取引をしている情報源から有力者3人の名前を出させ、彼らに電話してトラブルがあれば片付けて差し上げようと申し入れる。すると翌日には少なくとも一人が新会員になっているというわけだった。表面上は、P2は共産化を阻止する為の秘密機構である。今日でもイタリアの他アルゼンチン、ベネズエラ、パラグアイ、ボリビア、フランス、ポルトガル、ニカラグアに支部を持ち、スイス、米国でも活動している。イタリア、キューバ、米国でマフィアと結びつく他、南米諸国の軍事政権やネオ・ファシスト団体と連絡があり、CIAとは緊密に協力中である。さらにバチカンの奥深くに浸透している。要するに反共を掲げた組織である。

その実は、P2は反共団体でも何でもない。さまざまな利害を持った国際組織で、反共よりもっと当面の利益の為に連絡をとりつつ動く。「自由世界の防衛」という掛け声の裏で権力と富を利己的に増やしていくのである。 
 
勉強家のダン・ブラウン氏は、「ダ・ヴィンチ・コード」に先立ち「天使と悪魔」を書く際に恐らくこの本を読んだのは間違いないでしょう。とすると、当然これらの文章を見ており、後にダ・ヴィンチ・コードでオプス・デイを導入し、巧妙な役割を果たさせるアイデアを得たのもこの本がきっかけかも知れませんね?

「レンヌ=ル=シャトーの謎」とかもそうでしたが、ダン・ブラウン氏は読者の興味を引く材料の選び方・調理方法がなんとも非凡ですね。断片的な知識を組み合わせて一つの作品に組み上げる素晴らしさは、やっぱり凄いなあ~と勝手に思ってしまいました。

関連ブログ
「法王暗殺」デイヴィッド・ヤロップ 文芸春秋
オプス・デイ創立者、列聖へ  カトリック新聞
「法王の銀行家」殺害で4人起訴 CNN
「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社


posted by alice-room at 13:45| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
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