2005年11月09日

「イグナチオとイエズス会」フランシス トムソン 講談社

イグナチウス・ロヨラにより作られた、軍隊式の厳格さと規律で有名な新しい修道会がイエズス会。ザビエルを遠いアジアの未知なる国へと宣教に赴かせた組織。堕落していたカトリック会に生まれた希望の光。

そんな教科書的な知識しか知らずに読み始めた本です。この本は16世紀の聖人イグナチオのことを19世紀の伝記作家が描いたものなのですが、これまでに私が抱いていたイグナチオのイメージとは全く違う人物像に本当に驚きました。勿論、伝記物ですのでどこまでが事実であり、またある程度の脚色はあるのでしょうが、読んで非常に参考になるというか、素直に感動できる内容になっています。

キリスト教の信仰に忠実に生きたというのは、この聖人の姿の一面に過ぎず、どんな苦境にあっても諦めず、目標に向かって一心に努力する。常に周りの人の意見を聞きつつも信念を貫き通し、かつての敵でさえうらむことなく、最終的に味方にしてしまうまでの人間的魅力にあふれた人。これこそ、聖人の聖人たる所以でしょう。一人の人間として、その人の主義主張に関わらず、尊敬に値する人間がまさにこのイグナチオだと思いました。本当にその凄まじい行動力と万人に対する愛は、胸にぐっときます!! 最近、感動したことのない方やただ生きているだけの方には、是非お薦めしたい本です。私も久しぶりに感動しました。

アッシジのフランチェスコもそうでしたが、イグナチオも若い頃は軍人として活躍し、結構、ガンガンにあらゆることをやってるタイプの人でした。それが戦争における負傷により、一生涯に渡って足をひきずらねばならないぐらい境遇に陥りながら、彼は人生を投げたりしません。たまたま手にして本によって、神の為に働くことを目指しました。

そこからがまた凄い。情熱的な軍人資質は彼そのものであり、彼は神への情熱から極端過ぎるくらいの苦行・禁欲を己に課す。何度も死にそうになりながらも彼は神故に生かされるのだった。

彼は行動するのは得意だったが、学問の素養がなかったので学校に通って一からラテン語は学びます。大の大人が小学生に交じって国語を学ぶようなものです。しかも、彼はその宗教的情熱から、学習の合間にも恍惚として神の世界に浸り、学業がおろそかにもなった。時間があれば、説教や托鉢に出かけ、そこで得られたものはみんなにまたすぐ分け与えてしまうという繰り返しであった。

そんな彼にはいつも敵対者がいた。彼は学問もないのに説教していると非難され、学校から追い出される羽目になる。しかし、彼はあきらめることなくパリへ向かい、今度は説教を控え、神の世界に浸るのも抑制して無事にラテン語や神学を修めた。彼は貧困にあっても批判されても、ただひたすらに抗うことなく、己が為すべき学問を修め、神へ為すべき事をするべく準備していった。

う~ん、書くことがたくさん有り過ぎてうまくまとめられないのですが、彼の生涯を通じて恐らく順風満帆に進んだことは何一つ無かったみたいです。語学を勉強してもなかなか成績が良くならなかったし、誤解や妬みから大学もあちこちで追い出され、イエズス会を作っても、イエスの名を語るとは不届きだとカトリック内部からも中傷され、プロテスタントとの宗教戦争においては、ルター派からも堕落したカトリック司祭達からも蔑まれた。

彼らを支持するものも多かったが、寄進されたものは全て貧者に分け与えて常に清貧であり、あらゆる称号や権威を辞退して、謙虚に努めた。同時に、学問を非常に尊び、ヨーロッパ中を始め、宣教した各地に大学や学校を作って、何よりも素晴らしい人を作った。今でも世界中に残るイエズス会ゆかりの大学などの伝統は、まさに彼らのものでしょう。

イエズス会は設立時もそうだし、更に知名度が上がれば上がったで、常に誹謗・抽象・妬みを受けて逆風の中にあった。それでも、イグナチオは淡々としてそれを受け止めつつ、自らが為すべき仕事(貧者の世話、学校の設立、後進の育成)を着実になし続けた。どんなに敵対する人にでも、相手の土俵に立って謙虚に語り、最後には常に勝利したのもまさに聖人の徳としかいいようがないのではないでしょうか?とにかく、この本読んでみて欲しいな。

相手を説得する素晴らしい交渉術が書かれています。情熱と正論と謙虚さ。私達が生きていくうえでも決して無駄にはなりません。逆にこれが少しでも会得できれば、私の人生も大いに開けてくるかも? 本当に私って根性無いもんで・・・(自爆)。少々の能力なんかよりも、人が生きていく為にもっと&もっと必要なモノを感じさせてくれる本です。

落ち込んだり、悩んだ時にも読んでみましょう。貴方はまだまだ、困難が足りないのかもしれません? 私自身がこれじゃいけないなって大変参考になりました。そうそう、努力もそうですが、得意なものを最大限に尊重し、伸ばしていくのもこの本でイグナチオが採用している教育であり、学問の進めです。好きこそものの上手なれって言葉はここでも生きています。
【目次】
第1章 若き日のイグナチオ・ロヨラ
第2章 スペイン脱出
第3章 大器晩成
第4章 イエズス会誕生
第5章 波乱の聖地巡礼
第6章
名誉ある少数者
第7章 イエズス会公認
第8章 インドへ 世界へ
第9章 イエズス会会憲
第10章 会士の育成・指導法
第11章 ドイツ宣教
第12章 反宗教改革運動
第13章 戦う修道会
第14章 トレント公会議
第15章 比類なき統率者

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posted by alice-room at 23:10| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 宗教A】 | 更新情報をチェックする
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