
書名はかなりの人が知っていても、読んだことがあるという人を滅多に聞かない古典。本書もまさにそういうものの一つではないかと思います。
私も知ってはいてもあまり読む気がなかったのですが、先日読んだ本「チャップ・ブックの世界」などで出てきていたので、気になってしまい、ついつい手に取った次第です。
amazonの書評を見ると、新旧の訳の違いが好対照で興味深い感じですが、私はこの訳でしか読んだことがないので普通に気付いた点などを挙げていきますね。
とにかく読み易い。表面的な字面で見る限り、児童文学並みの読み易さ&口語体、というか卑俗で猥雑な文章です。一言でいうと、下品な言葉がポンポン出てきます。
訳者が意図して原文の味わいを出そうとしているのでしょうが、人によっては嫌いな人がいるかもしれませんね。私的には、全然OKです。
基本、ジャックと豆の木みたいなノリの昔話みたいなもんです。最初は私全然面白くなかったんですが、読み進めていくうちに痛烈な社会批判ありの、冒険活劇ありので結構楽しめました。
戦闘シーンは、なかなか豪快で映画化したら、ほぼ間違いなくスプラッター映画になりかねないほど、エグくて残酷ですが、まあ、大衆の読み物なんてそういったモノでしょう。陳腐でどぎつくて刺激的でないと受けませんから。
とはいうものの、一見すると低俗なだけだと思ってしまいますが、どうして&どうして、文章のあちらこちらでパロディーや掛詞のようになっている台詞を見ると、実はかなりの教養が無いと完全には楽しめないのではないかと思います。
そもそも著者が修道士から医者になったインテリですし、それが散々世相を皮肉って、諧謔趣味に満ち満ちた文章を書いているのですから、当然と言えば当然ですね。
当時の常識を差っ引いても、ギリシアやローマ古典を踏まえた記述やスコラ哲学などをさりげなく踏まえてのパロディーとかは、ハードルが高いです。本書の中では訳注で解説してくれているので少しは分かるのですが、説明されても知らないことが実に多いです。
でも分かる範囲で「注」も実に面白く、むしろそちらを徹底的に調べたくなりますね。さすがにそこまでの情熱が無い私ですが・・・(口先だけのヤツです)。
確かに、教会やパリ大学の神学部をあれだけこき下ろしたら、大衆受けはするものの、異端の書として神学部から目を付けられるのも納得です。
いつの時代でも面白いものは、お上から睨まれてしまうものですから!
いきなり本書だけ読んで面白いと言えるほど、私は教養がありませんが、少しだけでも当時の社会や時代背景などを理解できる人ならば、楽しめるかもしれません。単純な物語以上に、奥が深い作品でした。
さて、続きも読もうかな。
ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル(amazonリンク)
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「チャップ・ブックの世界」小林 章夫 講談社
こどものころに読んだ少年少女世界の文学全集というシリーズのなかに、「ガルガンチュア物語」というのがあって読んだはずなのですが、まったく思い出せません。ただ、なんだかばかばかしかったような印象だけ残っています。子供向きにどぎつい表現はなくしていたのでしょうね。
でも結構印象的だったようで、幾つかのシーンはいまだに覚えてます。
この本日本に行ったときに一度手に取ったのでしたが、買いませんでした。次回。
僕は、書名は知っていても、読んだことがないという典型です。(苦笑)
いつになるかわかりませんが、挑戦してみたいと思います。(笑)
勿論、一面では正しいと思うのですが、過剰過ぎる過保護は、かえって良くないでしょうし、程度加減が難しいのかもしれません。
【注】を読みながらだと、かなり奥深いものがあるようです。
seedsbookさん>皆さん、しっかり読んでるんですね。う~ん、スゴイ! 実は子供の頃から変な本ばっかり読んでいて私はこれがお初でした。
偏りのある読書で定評のあるalice-roomです(苦笑)。大人になって読むと、結構面白いかもしれません。
子供の時にも読んで見たかったかも・・・。
lapisさん、私もまさに一緒です(笑)。機会がございましたら、どうぞ。古典は古典だけに奥深い面白さがある感じでした。