2008年04月13日

「ハリアー・バトルフリート」米田 淳一 早川書房

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プリンセス・プラスティック シリーズの最終巻。当然、これに先立つ3巻を既読であることが前提になります。

人の姿形を有する人工知性体、ありとあらゆる行政情報がネットワークシステムにより制御・管理される近未来社会。社会に受け入れられた天才と受け入れられなかった天才による、未来を巡る捉え方の差異がもたらす争い。

舞台装置は、これ以上ないっていうくらいオーソドックスではあるものの、そこで描かれている緻密に構築された世界観(高度情報化社会・体制の設定)が実に想定内の範囲(=リアルっぽくて)で素晴らしい!!

主人公に思い入れる、というよりはそこに描かれた近未来社会の設定その他の緻密さを楽しむべき作品だと思いました。キャラ自体は悪くないけど、それほどの思い入れはないしね。

『近未来』というものは、どこまでを思い切って、どの視点から描くかで全然変わってきますし、概念的な切り口はそれはそれで思考実験的で面白いし、好きなんですけど、現在の技術的な方向性・志向性からその延長線上として描き切ろうとする著者の視点が私にはとっても面白かったです。

私自身はデータベース関係ならある程度分かるものの、ネットワーク関係には不案内だし、本書で描かれているものの前提を十分に分かったうえでの感想とは言い難いのですが、それでも類書にはないほど、小説の舞台としての社会設定をきちんと考えたうえで描かれたものには間違いないです。

読んでいる最中も、著者よく考えたうえで書いているなあ~と思っていましたが、後書き部分を読んでも著者がその点を明確に意識してご苦労されていたのが分かりました。

本書の魅力は、いわゆるSF的な、斬新な『発想』ではなく、緻密に現在から敷衍していく『論理性』ではないかと思います。恐らく、前提となる知識があればあるほど、この世界観が楽しめると思います。

逆に、『空想』的なただ、ただ漠然としたイメージだけの未来観や物語としての面白さばかりを求めると、凡庸な小説としか思えないかもしれません。

ただ、前3巻に比べて今回の巻は戦闘シーンが多く、それが逆に面白さを減じた感じもしますが、その反面、設定の細かさや緻密さが滲み出ていてトータルでは微妙かな? 

日本人の描くSFとしては、これまで無かったタイプとして評価して良いような気がします。本作品以外で、著者の本を読んでみたいと私は思いました。

ハリアー・バトルフリート―プリンセス・プラスティック (amazonリンク)
ラベル:書評 小説 SF
posted by alice-room at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
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