2005年11月15日

「遊女の文化史」佐伯 順子 中央公論社

率直に言って、内容は無いかと。文化史と言いつつも、単なるエッセイ以上のものは感じられなかった。少なくとも何かについて主張するものではない。ただ、よく分からないのですが、これが修士論文を元にして書かれたものなの? たくさんの本を読んでいるのは分かりますし、それ自体は評価しますが、本書に学問的な意義を一切感じません。まあ、うちの大学院も書きゃ卒業させてあげると言われたし、お粗末なのはどこの大学院も変わらないか?(笑) 正直、暇潰し以上の価値を見出せませんでした。

普通にエッセイとして書かれれば、もう少し面白かったかもしれませんが、時々出てくる学究的な態度(態度だけ?)がかえって鼻について違和感を覚えました。うちの指導教官だったら、もっと厳しいと思うなあ~。余計なお世話ですけど。

ただね、全然使えない本かというとそうでもないです。遊女論や娼婦論に関するものなら、これよりもはるかにいい本がたくさんありますし、何冊か私も読んでますが、引用されているもので面白い内容が幾つかありました。それを知ることができただけでも、読んで良かったかも? 但し、それだけですが。
「春日権現記」
明恵上人の渡唐をとどめようとして春日明神が橘氏女に憑いて託宣を下す奇譚。橘氏女は懐妊の身であったにもかかわらず、「高き所にのぼりたければ天井へのぼるべし」と、するすると天井に上がってしまった。やがて天井から降りた時も、「鴻毛のちるが如く音もせず」、しかも彼女の身体から薫っていた「異香」はいよいよ芳しくなった。

その香沈麝などのたぐひにはあらで、こく深きにほひすべて人間の香にあらず。諸人感悦にたえず。御手足をねぶりたてまつれば、あまきこと甘葛などのごとし。その中に数日口のうちをいたむ人ありける。ねぶりたてまつりてたちまちにいえてけり。

この「異香」ってのがなかなかの曲者。手足までねぶるって凄いですよね!こんなお話があるなんて知りませんでした。もっと詳しく知りたいですね。いろんな資料を探すきっかけにはなるかもしれません。

遊女の文化史―ハレの女たち(amazonリンク)
posted by alice-room at 23:40| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 【書評 歴史A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさんが おっしゃる遊女論や
娼婦論に関する よい本ってどういうものですか。
よければ 教えて下さい。
この本は 遊女 とか 芸能 宗教 売春
について知る 入門書的役割はある と
思うんですけど。
ここに書かれてることが全て っておもうと
まずいかな と今は個人的に思います
Posted by 琵琶 at 2006年07月12日 12:26
琵琶さん、こんばんは。私自身も偏見があることを自覚しつつも本書もかなり独善的なところがあるように感じました。

遊女ではないですが、売春に関してはベタで恐縮ですが「売春の社会史」とか「娼婦の歴史」とかの方がまだオーソドックスな感じがします。

遊女に関してだと文化論ではなく習俗を知る本で良ければ「江戸吉原図聚」なんかもそこそこ面白いかと思いました。

ただ、あくまでも私個人が読んだ範囲内ですので一般的ではないかもしれません。ご参考までに。
Posted by alice-room at 2006年07月12日 23:36
レスありがとうございました。
私は「売春」「娼婦」には
あまり関心がないので
(ヨーロッパの高級娼婦 はどうやら
別 らしいですが(笑))
遊女関連出てこなかったのが残念・・。
大和岩雄著「遊女と天皇」明田鉄男氏の
「日本花街史」などは読まれたことは
ありますか。著者の立場には必ずしも
賛成できませんでしたが、資料、内容は
ボリュームあるものでした。
今は、佐伯氏系(芸能・文化から遊女を
読み解く)の本なら
脇田晴子氏の「女性芸能の源流」という
本が結構いいな と思っています。
Posted by 琵琶 at 2006年08月22日 11:45
琵琶さん、こんばんは。
〉大和岩雄著「遊女と天皇」明田鉄男氏の
〉「日本花街史」などは読まれたことは
〉ありますか。
う~ん、そちらの方は読んだことありません。吉原限定の花柳街の資料とかなら、幾つか読んだことがありますが・・・。

どちらかというと、売春史等文化人類学関係の本の方が多いです。私が読んだことのあるものは。

白拍子などもそうですが、日本でも古来から神への奉仕としての巫女の役割の一部に芸能の要素が入っているのは、面白いですね。
蝉丸などの話もご存知かと思いますが、皇室との関連もどこまでが本当かは別にして興味深いですね。
Posted by alice-room at 2006年08月25日 19:16
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