2008年04月18日

「私の仕事術」松本 大 講談社

マネックス証券社長によるビジネス書。実は、著者がビジネス誌に書いた記事を何度か読んだことがあるが、すっごくつまらなかった覚えしかない。

それなのに、本書では非常に有益なことを多々述べられていると思った。雑誌に書かれていたことと当然重複するのだが、本として読むのと記事で読むのでこれほど、私の受け取り方が変わった点がまず面白かった!

記事では要点を絞り過ぎてしまい、説明が不足した結果、私には価値を見出せなくなってしまったらしい。これは、新しい『気づき』だ。
・・・・同じ著者でも本と記事は違う、この点を今後は留意したい。

さて、前置きが長かったが、本書について。

「時間間隔」の説明でディスカウントレートを用いているのが面白い。
いかにも金融の世界で働いてきた方らしい説明だが、納得できる。
期限までに出来ない仕事は無価値であり、期限後に100%以上のものが出来ても現在価値に割り引いて考えたら、著しく価値を減ずるというのは、もっともだ。

判断回数が増えれば、増えるほどトータルでみた期待値としての正解率がupし、経験によるフィードバックによりそもそも一回毎の正解率自体も向上する。
・・・これは、以前いた通販会社の社長から嫌ってほど、教えられたことと同じだった。新規事業や新企画は、とにかく数をこなす。その際に、撤退すべき損失額と期待できる利得額を事前に想定し、その基準に従ってひたすら数をこなす中で、成功するシーズを見出し、稼げる事業として育てていく。これって商品開発にも共通するアイデアだったりする。 ⇒ 失敗は当然として、受け入れる。

重要なのは以下の2点
1)失敗を事前にできるだけ減らすべく計算したうえで、実行
2)失敗から得たモノをフィードバックし、次回へつなげること 


アメリカのTV番組「スタートレック」。
多様性を認め、リーダーが責任と自負心を持って行動にあたる。人間の普遍ともいうべき価値観を前面にうたっているのが素晴らしい!
私自身も大・大・大好きな番組の一つですが、見る人はしっかり観てますね。著者も大いにこの番組を評価し、薦めています。私は、その点だけでも著者の価値観に大いなる共感を覚えました。

私的にはこの番組こそ、アメリカの建前であると同時に、アメリカの誇るべき良識であり、価値観だと思っています。ちょい見、似たように見える「スターウォーズ」のような、野蛮な帝国主義的価値観(←私の偏見)は、逆に大嫌いです。3部作全部見てるけど・・・。

昨今、勝間氏のビジネス本とかが売れていますが、あれって受験参考書の延長線上にある、マニュアル本ですよ! 為すべき事が優先順位と共に列挙してあり、マネしたい人はそれを何も考えずに、ただ&ただ実行するだけ。

勿論、現在、この瞬間においてそれなりに成果は出せると思う。その点では売れるのも道理だが、何でも大切なのは、自らそういった『手法』を見出す能力でしょう!! 勝間氏ご自身は、勿論その能力をお持ちだと思うが、あの本にはその一番大切な点が欠けている、と思う。

日本人の学生に、そして社会人に一番欠如している能力。パッケージで旅行して、何かを自ら経験したと勘違いしたまま気付かない天然気質。

散々、迂回して非効率的な失敗をすることで、初めて効率的なものへ至る道を見出せる、その事を理解できない人が実に多い。本書では、そういったものを含めて本質を語っていると思うし、私には素直に首肯できる事柄が大変多い。

私にとっては、ここ半年の中で一番価値あるビジネス書だったかもしれない。強くお薦めします!! まあ、勝間氏の本と、本書の松本氏の一番違いは、リーダーでなかった人とリーダーだった人の違いなんですけどね。GEのジャックウェルチ本なんかも、当然後者と相通じるものがあったりしました。

私は、労働者ではなく経営者に興味があるので本書の方を迷わず選びます。両者を読み比べると、違いが如実に出て更に面白いですよ~。

今度、話題の「まぐれ」を読むから、そちらとも読み比べてみたいです、楽しみ&楽しみ(笑顔)。
【目次】
第1章 「コミュニケーション」とは結果を出すこと
第2章 「時間感覚」を強く持とう
第3章 情報収集のカンどころ
第4章 自分を高める「ビジネス現場での心構え」
第5章 悩んだ時の心の処し方
第6章 もしも起業したならば
第7章 まずはアクションを起こそう
終章 「今のマネックス証券と松本大」―文庫化にあたって
私の仕事術 (講談社+α文庫)
ラベル:書評 ビジネス書
posted by alice-room at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスA】 | 更新情報をチェックする
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