
ただでさえ謎が多い人物であり、おそらく本当に正確なものは分からないのだろうけど、辿れる範囲でビン・ラディンがどのように生きてきたのか、どのようにして彼の思想が形作られてきたのか、少しでも理解するうえでは役に立つと思う。
彼が決して最初から、過激なテロリストのスポンサーだったり、反米主義の急先鋒だったのではない。彼が尊敬する宗教指導者が反体制的であるというだけで投獄され、殺されたり、アメリカによる数々の政略的な戦争、大切な祖国が異教徒であるアメリカ軍に駐留(=当然、彼らからは侵略以外に何物でもない)されるなど、何度にも渡る先制攻撃に対して立ち向かった過程をみると、アメリカ発の「世紀の極悪人ビン・ラディン」像には、疑いの目を向けざるを得ない。
イラクのフセインの時もそうであるが、えてしてアメリカ自体が紛争の種をまき、それに水と肥料を与えて育て、できた果実が反米主義、テロの標的国家アメリカに他ならないことを忘れてはならないだろう・・・。
かくいう私なんかもランボー3の「怒りのアフガン」とか出来の悪い映画でしか、アフガン戦争のイメージがないのは明らかに情報操作され、踊らされているのだと思う。アフガン戦争は、ソ連VSアメリカではなかったんですね。基本的な図式さえ知りませんでした。アフガンで闘っていたのは、世界中から軍事経験を積む為に来ていた人々も多くいたとは・・・、つまりある種のOJTにもなっていたとは・・・知りませんでした。何にも。
彼は既にアフガン戦争でアメリカを撤退させた英雄だったんですね。同時に、多国籍企業の経営者であり、土木業から運送業、穀物ビジネスの商社やら純然たる銀行や外国為替会社を始め、傘下にはそれこそ無数の企業群を抱えたコンツェルンのようなものを築き上げているんだからなあ。どっかの国のトップで、パパから紹介してもらった石油会社をつぶしまくった誰かさんとはえらい違いですね。条件が同じなら、絶対にどちらが優秀なのか分かります。
まあ、本の著者は人物の能力は冷静に評価しつつも、その思想や行動については相当冷ややかなコメントをされていますが、私は異なったイメージを持ちました。肯定はできませんが、少なくともアメリカのいう悪役ではなく、日本のマスコミも含めてみんなで情報操作をしているのは間違いないですし。自由な国と言っても北朝鮮と大して変わらないかも?・・・マスコミの無為無策には。
他業界には競争を強いるくせに、自らが資本主義の中で競争に巻き込まれると、逃げようとする卑怯な態度には不快感を覚える。不祥事を起こした時点で、何故免許を剥奪しないのか不思議? 民放の一つや二つがなくなっても、いくらでも代わりの局なんか作れるのにね。トヨタTVがあってもおかしくないのに・・・。
ちょっと、話がそれましたが公平な観点から、世界のいろんなことを知りたい方にはお薦めします。アル=カーイダやタリバン、世界で起こった各種テロ事件、国際紛争。いろんなことを知ることができます。日本にたくさんの石油を供給してくれるアラブの国ですが、豊かで明るい石油成金なんて、とんでもない誤解でした。国内の各種反対勢力を抑える為に、法律によらない不法監禁・拷問なんかもやる結構えげつない国なんですね。TVのイメージのようなのんびりしたもんなんかじゃありません。やはりいつでも政治は、冷酷で非情なんだと思いました。
少なくともアメリカが正義の国でないことだけは、いつもながらに実感しました。もっとも、その国無しにやっていけない日本の繁栄も痛感してますけどね。所得が半分になっても世界平和を望む日本人はどのくらいいるでしょうか? 奇麗事ではなく、生きるのは大変だと感じました。
ウサーマ・ビン・ラーディンその思想と半生(amazonリンク)
関連ブログ
「インタビュー オサマ・ビンラディン」ダイヤモンド社
事件の事実関係は依然謎のままで、今後ともその実際はなかなか確証されないでしょうが、歴史の中で徐々に解き明かされていくのでしょう。
もっと長期的な視点で判断しないといけないのかもしれません。かつて十字軍も聖戦でしたし、日本の侵略行為もアジア同胞の帝国主義からの解放をうたったものでしたし・・・。
コメント有り難うございました。