
古代ギリシャ社会で起こった裁判の記録がこうして残っていることを本書で初めて知った。高級娼婦の市民権を巡る古代ギリシャの現実の裁判が題材。改めて人の判断能力とは、こうもあやふやであり、冷静な判断などほとんど困難に近いことを実感した。
それがあれだけ理知的な古代ギリシャであり、比較的『民主的』とさえいえる多数決的な意思決定の裁判であっても、人としての『愚』は避けがたかったことを示している。
昨今、日本で陪審員制が取り沙汰されても同じことを想起せざるを得ないのが悲しい。人を裁くのに自信がないといって、何でもお上に任せておいて、政府批判や官僚批判を臆面もなくする輩が多いのには、日本に国民主権、民主主義など100年経っても無理なのだろうなあ~とつくづく思う。
少なくとも義務として負担すべきことをしないで、また自分が責任をとりたくないから、誰かに死刑判決を出して欲しいなんて、言う人には選挙権なんて無用の長物でしかない。
人は恐ろしいほど、昔も今も変わらないのだろう。多数決を民主主義と誤解している人が100人中99人以上いるこの国では。
多数決が最高の決定方法だと思っている人は、歴史上、独裁者がしばしば国民からの圧倒的多数の支持を受けて登場したことを知らない人達なのだろう。無知は無邪気や無垢ではなく、怠惰と無気力でしかないはずなのに・・・。
いきなり、独り言ばかりで恐縮ですが、本書を読むとそんなことを考えてばかりいました。
純粋に歴史的な観点から古代ギリシャ社会や制度を知る楽しみもあるのですが、頁の半分を過ぎるといい加減飽きてきます。読む前は、裁判制度と高級娼婦への関心から読み始めたのですが、いまいち面白みに欠けます。
正直どうでもいいことがダラダラと描写されていて、なんか文章にメリハリがない。知らなかったことがたくさんあるのですが、なんか私の興味の対象外ですね。私は時間が惜しいし、もっと面白い本「まぐれ」を読みかけなんでそちらに完全にスィッチしました。
残り三分の一は読まずに放置。特別関心のある方を除いて、まず、お勧めしません。古代の売春制度(ヘタイラ)とかに興味あるなら、類書でもっと好奇心を刺激する本が多々有りますのでそちらがいいです。
【目次】訴えられた遊女ネアイラ―古代ギリシャのスキャンダラスな裁判騒動(amazonリンク)
第1部 遊女として生きる
女将ニカレテの遊女屋
女奴隷ネアイラの所有者とそのほかの愛人たち
第2部 ステパノスと子供たち
古代アテナイにおける男児と市民権
ステパノス、一家の養い手にして闘う男
パノの最初の結婚
一家の客と既婚の男たち
第3部 裁判とその前史
私闘
脇役たち
ネアイラの裁判