原因不明の病いとして、歴史的にどのように扱われてきたか、それがどこから発生してどのように広まっていったか? 私にはあまり興味が湧かず、ちっとも面白くなかった。
読む前に期待していたのは、中世に猛威をふるったというあの「黒死病」のイメージがあったものですから・・・、う~ん?
でも、ちょっとだけこの本を読んで分かった事は、私が想像していた以上にこのペストの被害は凄かったこと! よく中世の人口がこれによって激減したと書かれていたけど、村や町が全滅したり、人口の10分の9が死んだしまい、中世半ばまでの文献に出てくる町の名称や地名が、ペスト以後の中世後期には歴史上から存在しなくなっているのがしばしば見受けられるというのには、驚いた! これって、凄いことだと思う。
そしてこれだけ人が死んでしまうと、伝統的な社会制度や組織が維持できず、社会構造が人口減を理由に大きく変化したというのは新しい発見でした。農業労働者が激減した結果、土地にいついた農民が減り、賃金労働者が増えていく。需要に対して供給が硬直化しているので賃金水準は上がる一方、おおっとまさに需要供給曲線ですな。賃金労働者の増加は、まさに中世社会の崩壊にほかならなかったそうです。
社会的上層階級が占めていた閉鎖的なギルドや市政の運営のような組織にも、欠員により、本来なら入れるはずのない下層階級からの成り上がりが参画したりするようになったのも大きな変化だったことでしょう。この辺は、ちょっと面白いです。今まで、ペストによる人口減からそんな余波が生じていたとは全く考えたこともありませんでした。この視点は、中世後期を見るには、なかなか有用な視点かも?
これを知れただけ、読んだ価値はあったかな? でも、よほど特殊な興味がない限り、この本読まなくてもいいでしょう。お薦めできない本でした。悪い本ではないんですけどね。著者は真面目な感じだし。でも、つまんない。
ペスト大流行―ヨーロッパ中世の崩壊(amazonリンク)
そうなんですよね。私も今読みかけの本でフィレンツェ、シエナの絵画においてペストが与えた影響と言う本を小突き回していますが、そういう観点を踏まえて絵を見ると又興味深いです。
Painting in Florence and Siena after the Black Death。Millard Meiss著。