2005年11月27日

「エイリアン秘宝街」菊地 秀行 朝日ソノラマ

菊池氏の事を知っていて、この本を知らないのはもぐりかと・・・(オイオイ)。まあ、一部の方にはソノラマはちょっと読む気がしない、というお声も分かるのですが、これは自信を持ってお薦めする一冊です。

初めての時は借りて、2回目は買って、その本は友人にあげてしまったので今回久しぶりに読みたくなり、ブックオフで見つけて3回目の読書ですが、何度読んでもイイ!面白い!と思う本です。

ジャンル的には高校生が主役のジュブナイルものでアドベンチャーものになるのかな? SFと言ってもいいけど、何しろメインは宝探し。個人的にはインディージョーンズやハムナムトラよりもこっちの方が魅力的だと思いました。

表向きは、しがない都立高校の高校生。しかし、裏の顔は未だ10代にもかかわらず、世界で名立たる指折りのトレジャーハンターの一人。先祖伝来、トレジャーハンティングを生業(なりわい)とし、歴史上にその名を留める宝の数々を密かに発見してきた一族の末裔だったりする。

御先祖様の発掘したコレクションの一部だけでも、殷墟の地下で発掘された黄金の壺、古代ペルシアを祖とするゾロアスター今日の光神アフラ・マズダをかたどった銀面、ギリシア文明の聖地アテネの土中から掘り起こした純金製五十分の一パルテノン神殿模型、誇り高きローマ皇帝ネロの宝剣、インドはハマウルヤ朝の全ページ黄金作りの仏教経典、中国歴代王朝秘蔵の大真珠、珊瑚、金杯、杓。黄金の糸で織ったカロリンガ王朝の王衣、セルジュク朝トルコの栄光を示すダイヤモンドつくりの馬車と純金のハーブ。フランスの華ブルボン王朝ルイ14世所蔵の宝石二百粒三千カラットを散りばめた黄金の手袋、悲劇の主、ロマノフ王朝皇帝ニコライ二世が革命勃発の日に隠した二千五百三十六個のダイヤを散りばめたカサリン女帝の宝冠。などなど。

主人公の高校生は、多額の寄付で校長を意のままに操るだけでなく、日本の官僚・政治家を含めて金で影響力を行使できる全てのものを利用し、電話一本であらゆる特別待遇と、宝探しに関わる極秘情報を入手・利用できる環境を確保している。当然ながら、CIAやKGBの有する情報も利用でき、軍事用に開発された特殊機能の武器や装備も全て「宝探し」、この言葉の為に用いられる。莫大な投資がそれを可能にするだが、それだけの準備をしても得られる見返りは途方もなく大きい。

但し、最新の装備や念入りの情報収集も、あくまでも宝探し成功の可能性をアップさせるだけで、実際に成功にまで辿り着けるのはトレジャーハンターのほんの一握りに過ぎない。たとえ宝の場所を探し出し、発見しても無事に生きたままそれをこの世の中に持ち帰れるのは、さらにその何百分の1以下に絞られる極限までにシビアな生き残りゲームであったりする。その辺の描き方が実にうまい。

数々の伝説に彩られた宝探しはあるものの、本書のものもまさに伝説に由来するといういわくつきの宝がその目的だったりする。
元禄五年(1692年)、日本橋で呉服屋を開業し、主人は久兵衛。大阪出身といわれる。商才に長けていたらしく、3年後には時の老中柳沢吉保の庇護を受け、一時期、同じ日本橋の大呉服店「白木屋」を凌ぐほどの繁盛ぶりを示すが、元禄九年十一月失火により店は全焼。久兵衛および妻よね、番頭、手代、下女、丁稚にいたるまで、総勢六十名近い焼死者を出したという。夫婦に子供はなく、やがて店の名もその存在自体も、時の流れの中に忘れられていった。
残された記録が一致して語るのは、桐屋の豪奢な生活ぶりである。元禄十六年に出版された「古今商人記録帳」によると、消失年の資産は銀七千九百八十六貫八百匁。銀一匁を金一両として約十三万三千百十三両、これに営業開始以来の資産を足すとざっと五十万両はくだらぬ蓄財があったという。ちまみに商売敵の白木屋の江戸資産が商売の大拡大をみた元文二年で約六万両だ。
主人の久兵衛は病気がちで、あまり店に姿をみせることはなかったというが、病床からの指示は適格このうえもなしで、尾州、紀州家の大大名の他、江戸城本丸御座敷御門の出入札も有し、諸大名からも重んじられていたという。

こんな感じで出てくるものが、まさに忘れ去られた宝として関係してくるのでなかなか楽しいんですよ~。勿論、エンターテイメントに徹する著者ですから、アクション的なものもOK!スピーディーなノリでドンドン貴方の知らない世界を楽しませてくれます。純粋に娯楽物として楽しめると思います。

本書の成功でシリーズ化され、私もほとんどのシリーズ読みましたが、やっぱり最初のこれが一番面白いです。トレジャーハンティングという夢の職業と表裏一体で、人としての大切なものまでを引き換えにする「業」のようなものまで描かれていて、一種の切なさもあってうまいです。いくつになっても宝探しに憧れる人には、まさにうってつけの一冊です。とにかく楽しめると思いますよ~。

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posted by alice-room at 15:16| 埼玉 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
alice-roomさん、こんばんは
「エイリアン秘宝街」、懐かしいですね。多分これが、僕が初めて読んだ、菊地秀行の本だと思います。高校の頃、ソノラマからでている物をかなり読みました。後のノベルズものよりも、初期のジュブナイルのほうが好きです。
僕が、一番好きなのは、「吸血鬼ハンターD」の1巻で、次が本書です。
さすがに、両シリーズとも、長くなるにつれて、マンネリ化し、いつの間にか読まなくなりました。でもこの2冊は、傑作だと思います。
Posted by lapis at 2005年11月27日 22:34
おっしゃる通り懐かしいですね!ホント。私も吸血鬼ハンターDしっかり読みました。シリーズの何冊目で読んだのかは、もう覚えていませんけど…?
でも、確かにいいですよね、この二冊は!! 
Posted by alice-room at 2005年11月27日 22:47
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