2008年06月02日

「悪魔の霊酒」上・下 エルンスト・テーオドール・アマデーウス ホフマン 筑摩書房

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聖遺物がきっかけで、人としての道を踏み外した修道士の巡る数奇な運命。悪魔による様々な誘惑にそそのかされた後に改悛し、元の修道士になった人物が、その人生を手記として残したものを元にしたという形式でつづられる小説です。

主人公は、幼くして父の罪業を消滅させんとしてカプチン会に入り、優れた美徳と天与の才から、将来の修道院長とまで期待される修道士であり、卓越した説教師でもあったのだが、信頼される人物として任された仕事の聖遺物の管理があったのが最初のつまずきの元となった。

その修道院は多数の聖遺物を所有するが、中でも一番本物らしく、それでいて危険なものに、あの聖アントニウスを誘惑せんと悪魔がもたらした霊酒(エリクサー)があった。

主人公は、なんとも芳しい香りと悪魔ならではの誘惑(?)に負けてつい、その液体を飲んでしまう。彼は、そうして先祖伝来の『業』とでもいうべきものを残らず引継ぎ、更に血によっていよいよ濃厚となる悪徳や涜神行為に染まっていくのであった。

聖遺物がきっかけとなるものの、複雑な自我や宗教観がなんとも惹き付けられる! また、俗世の欲望にこれ以上ないくらい素直なくせに、人一倍神をものともしない自己の行為に絶望感覚えるところなど、とてもではないが合理性では割り切れない、しかし、人間らしい感情に強い共感を覚えて止まない。

現代もてはやされる合理的思考やら、ロジカル・シンキングなんて子供の戯言とは一線を画し、より強烈な人間の思考(つ~か想い)をいやってほど、表現しています。

これこそ、まさに『浪漫』チックな作品ではないだろうか? 血縁関係のドロドロ具合も横溝正史に負けません! 思わず「マンク」をイメージしていたが、後書きを見ると、やはり本作品に影響を与えているらしい。さもありなん。

また、しばし見られる道化の髪結いがこれまた、哲学的で我知らず考えさせられてしまうんですよ~。熱情と理性の狭間。是非是非、本書で味わってみるのも素敵だと思います。

でも、今風の小説に慣れた人だとこの面白さを感じ取れないかも? 自分が自分が・・・的な発想しかできない人には、伝わらない可能性がある作品です。

でも、心ある人ならば、本書は読むに値する小説だと思います。私は大好きな作品でした(満面の笑み)。

悪魔の霊酒〈上〉 (ちくま文庫)(amazonリンク)
悪魔の霊酒〈下〉 (ちくま文庫)(amazonリンク)


ラベル:小説 書評 聖遺物
posted by alice-room at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 海外小説A】 | 更新情報をチェックする
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