2008年06月07日

「奇想の江戸挿絵」辻 惟雄 集英社

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最近、『奇想』のキーワードで人気の辻氏による本。もっとも本というよりも図版を楽しむ為の画集に近い。

採り上げられているのは、独自の視点で純粋に(見方によれば、いささか邪道に)面白い・凝っている等といった印象や感想をもたれた作品で、観ていて「ほほお~」「ふむふむ」と頷かされるようなものが多い。

今まで、あまり関心が無かった江戸の挿絵に対して、大いに興味をそそられる契機になった。でもね、現代表現としての漫画との比較は、正直いらないと思う。感覚的な共通点を通じて、時代を超えた生き生きとしたライブ感を伝えたかったのかもしれないが、安っぽい文化論的な文章と私の中ではオーバーラップしてしまい、少しガッカリした。

そして何よりももったいないと思うのは、新書でこれを出している点!
最近、新書でビジュアルを売りにしているのが多いが、本書もそれで致命的な間違いを犯していると思う。

実に、図版がもったいない。端的に言うと、紙面が小さくて見難いし、せっかくあれだけの数の図版を使用しているのに、ごちゃごちゃして図版が死んでます。

本が売れなくなって新たな切り口の新書で、客を集めようとする出版社の意図も分かるのですが、千円でこれかい?というのが実際の感想です。

まあ、数千円の本にしたら、売上が全然違うだろうしなあ~。辛いのは分かるんですが、これでは一度読めば十分で買う気になるのかな???
手元に置いておきたい本ではないです。

ただ、図版自体は実に面白いし、いい刺激にはなるので是非、観てみるとことをお薦めします♪ ただ、買うのはこの本ではないような?(複雑な心境なのです)
【目次】
はじめに 江戸後期挿絵の魅力;
第1章 「異界」を描く;
第2章 「生首」を描く;
第3章 「幽霊」を描く;
第4章 「妖怪」を描く;
第5章 「自然現象」を描く;
第6章 「爆発」と「光」を描く;
第7章 デザインとユーモア
奇想の江戸挿絵 (集英社新書 ビジュアル版 8V)(amazonリンク)
posted by alice-room at 08:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする
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