2025年02月04日

「FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド」クリスティー・シェン (著), ブライス・リャン (著), ダイヤモンド社

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FIREブームの先鞭をつけて当時、大変話題になった本です。

まずは種銭を作り、それを年率4%の利回りで運用し、その運用益の範囲内で生活する(できるようにする)ことで、資産を減らさずに生涯働かずに好きなことをして過ごす、というアレです。

私自身もプチFIREした身の上ですので、一度ぐらいはまあ、流行だった本を読んでみたいと思い、手に取りました。

う~ん、読後の感想としては、なんでこの本がブームになったか分からないです?

今はお金もあって、好きなことを書いて、小遣い稼ぎしながら、優雅な生活をしているそうですが、物の考え方が正直いささかおかしいと思いました。貧しい暮らしから、頑張って成功した一種のサクセスストーリーではあるのかもしれませんが、それでも普通の人には理解できないぐらいの生活水準を語られてもねぇ~。

医療廃棄物を漁って・・・・どうのこうのというくだりには、正直、絶対に関わりたくない階層の方だと思います。
別に不要な見えをはる必要はないですし、誰もがメディアに踊らされて浪費をしようとは思いませんが、あまりにも異質で冒頭から拒否反応が溢れそうになりました。

本書は18章から成りますが、まずは1~10章まで自分語りのナルちゃんのお話で読む価値がありません。
他人の意見や偏見に左右されるな、という著者自身は語る一方で、読者に対してはこうあるべきだ、すべきだという押しつけが酷く、主張に論理的な整合性がありません。

家を買うよりもその資金を投資に回して、より一層早くFIREを目指すべきとか、どこかで何度も聞いたようなことも述べていますが、家庭や家族の幸せという効用が、FIREよりも高い人が当然いて然るべきで、その場合、幸せの為のFIREで持ち家を断念するのは合理的ではないはずですが、著者がそんなことを考えるそぶりも見られません。

自国で生活するよりも物価の安い海外で放浪する方が生活コストが安いというのも、昔からタイの安宿で沈没している人達の話のようで何をいまさらと思うことしきりです。

株の暴落時に、現代ポートフォリオ理論とか言い出す始末ですが、私が何十年も前に大学院生やってた頃の話を言い出しても苦笑しかないです。というか、今はそれさえも「まぐれ」とか「カオスの帝王」の本、読んでみてねで終わってます。

株と債券による分散投資でリスク代替ができるというのは、既に昔の話でしょう。
11章で少しだけ、興味深い話(FIRE直後に相場の暴落があると、FIREが失敗する事例)が出てきますが、私は債券ではなく、現金(定期預金)でカバーしてますね。

リスク資産はほぼ株式ですが、金融資産全体の半分以下なので、暴落したら、ナンピンして取得時価を下がるだけです。投資信託がメインで個別銘柄は限定的だし、ローン完済した住宅も最悪、売ればそれなりの現金になるし、そのうち年金ももらえる歳になれば、まあ、死ぬまでなんとか資金を回せるでしょう。

余談ですが、著者は自分は才能がないので最低限稼げるだけの学歴をつけて、それなりの給料をもらえる仕事を選んでついた。副業でいろんな仕事をしたけれど、そちらはすべて失敗したとか、まあ書いているんですが、別にどうでもいいかと。

お給料安くても、やりたい仕事をして最低限の生活を出来れば幸せな人もたくさんいるわけですし、他人の生き方には上から目線で助言する姿勢には、不快感を覚えました。それでいて、自分の価値観は他人に理解されない、そして他人に影響されたくないと言い切る姿勢には、もうなんと言うか、呆れて物が言えないとはこのことかと。

まあ、私も独立して会社作って、儲からないので辞めて、借り入れた事業資金返済の為にサラリーマンに戻った口なので、言えたギリではないのですが、本書の著者は相当きてますね。

ぶっちゃけ、金持ち父さんのロバート・キヨサキがたまたま不動産投資で当てて、儲かったので本を書いたら、売れた。
本書の著者もそれ系かと。

まあ、タイミングが良かったんでしょうね。
今は4%ルールというのが有名ですが、昔からイギリスなどでは資産家はおおいに儲けたければ、事業を興して会社を経営し、面倒せずに働かずに生活していくなら、国債を買って5%のクーポンを生涯もらうっていうのが、ごくありふれた常識だったとものの本で読みました。
その頃からは何も変わっていませんね。

それこそ、ピケテイの「21世紀の資本」を出すまでもなく、労働するより相続で得た資産の増加率の方が高い時代が多いのだから、まあ、当然です。

本書はあえて読む価値の無い本でした。


【目次】
第1章 お金のためなら血も流す
第2章 桃のシロップ、段ボール箱、コーラの缶
第3章 (まだ)自らの情熱に従うな
第4章 あなたは私のものだ
第5章 誰も助けにきてはくれない
第6章 ドーパミンについてわかったこと
第7章 マイホームは投資ではない
第8章 本物の銀行強盗
第9章 株式市場の暴落をいかに乗り切るか
第10章 私を救ってくれた魔法の数字
第11章 現金クッションと利回りシールド
第12章 お金を浮かすために旅行をする
第13章 バケツ・アンド・バックアップ
第14章 インフレ、保険も恐るるに足らず
第15章 子どもはどうする?
第16章 早期リタイアの負の側面
第17章 自由になるのに100万ドルは必要ない
第18章 我が道を行け


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「カオスの帝王」スコット・パタースン (著), 月谷 真紀 (翻訳) 東洋経済新報社
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posted by alice-room at 13:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスC】 | 更新情報をチェックする

2025年01月15日

「カオスの帝王」スコット・パタースン (著), 月谷 真紀 (翻訳) 東洋経済新報社

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昨年、銀行の社畜をようやく辞めてプチFIREのご身分になったので今年からはブログを再開していければと思っています。
年金が出るまではまだだいぶありますし、iDeCoから出金できるのもまだまだですが、なんとか食いつないでいきたいなあ~。

という訳で以前読んだ「まぐれ」のタレブ氏とかが思いっきり出てきます本書。
そっち方面だろうなあ~と思って読みだしたんだけど、本書の主役の一人だったりする。

端的に本書の中身を言うと、暴落は予測できないのでそれを予測しようと無駄なことするよりは、過小評価されているプットオプションを継続的に購入し、暴落時の権利行使することで膨大な利益を獲得することが出来る、そしてそれを実際に実現したヘッジファンドにまつわるお話。

但し、著者はあくまでもジャーナリストで本書もあくまでもジャーナリスティックな代物で本来、一番大切な理論やモデルについての数学的な説明は皆無。漠然として雰囲気は分かるものの、あくまでもボヤっとしていて単なる文屋さんの書き物に終始している。

更に投資という観点でみる限り、第3部以降は完全に蛇足というか、不要でただでさえ、冗長な文章が更に緩んで読むのが鬱陶しくなります。途中からは斜め読みして、肝心の投資理論部分を探していましたが、本書のどこにもその記載はありませんでした。

また、訳者さんも投資や金融分野の方ではないようで、訳語もところどころで違和感を覚えて読む意欲が落ちます。
訳者さんが原文について注記してくださっているのですが、必要なところに注記がなく、不要なところに訳者注記がある感じがしました。その辺が大変残念な感じです。

ボラティリティをいかにして捉えるか、期間の幅や振幅の上下、それに対して継続的にコストして支払うオプション価格の限界値等、モデルやパラメータがどのようになっているか分からないと結局はブラックボックスのままですよねぇ~。

効率的市場仮説なんてもんは、そりゃ当然、幻想に近いあったらいいなの世界ですし、近経やってりゃ、十分なスパンを取れば、失業は発生しないとか目の前の失業者をいないものとしてのたまう学者先生が大学院には確かにいましたが(政府の諮問委員だったりする)、まあ、現実は至るところに歪みだらけですしね。アノマリーとか言い出すと更にきりがない(笑)。

まあ、本書で数式出したら、売れなくなっちゃいますからね。分かるんですけど・・・ね。

ただ、久しぶりにアイン ランドの名前が出てきた時は、ナツイ!
やっぱり思想としては未だにアメリカ資本主義の底流を流れているんだなあ~と思いました。
先物のシカゴ学派なんて、何十年振りかに思い出しました。

本書から、理論やノウハウとかで得るものは全くありませんでしたが、【暴落に備える】という視点を最近、やはり甘く見てたのでそこは改めて気づきとなりました!!

私は株と債券のポートフォリオとかは信頼してないので(落ちる時は両方落ちるでしょ!)、株(個別株と投信)と現金を50%:50%で持っていますが、バフェットさんの現金ポジションを見るまでもなく、暴落に備えるなら個別株は全売りかと思いますね。

NISA昨年360万円埋めて、今年も1月中に8割方埋める予定ですが、個別株は数回に分けて売っておくべきでしょうね。幸い、今の市場環境でも利益が十分出ているので一度売って、キャンペーン金利の定期で寝かしつつ、投信はひたすらキープ。
暴落したら、個別株は買い戻し+追加購入して、また寝かすってところでしょうか。

iDeCoは何もせず、出金できるようになるまでキープ。時期が来たら、NISAに移したいけど、その頃には枠埋まっていそうなので特定口座になりそうですね。

リーマンショックは、事前に現金化して社債に変えていたので無傷でしたが、今度の暴落も無事に切り抜けたいところです。同時に、絶好の買い場なので資金も準備しておこうと改めて思いました!

そんな気付きを与えてくれただけで読んだ価値はあったかもしれません。

ただ、まあ、グレタさんはいいや。大嫌いだし。
金になりそうと思って企業が排出権ビジネスやクリーンエネルギー投資が賑わっていましたが、今、アメリカの金融機関はほとんどやる気ないよね。環境や多様性とか、なんて一時のブームに過ぎなかった扱いです。

環境気にするなら、車なんて乗るなって話です。
EVだってモーターや電池の製造、電気の発電等大きく考えれば、すべて本当の意味でクリーンなんてあり得ない幻想(妄想)に過ぎないですしね。子供騙しも飽きられた感があります。

これからのトランプ政権下、世界はより一層、不安定でボラティリティに満ちた世界になっていくでしょう。
先日観た「トランプ・ダイナスティ」の番組の方がはるかに勉強になりましたね。
別にウィナーになりたいわけでもありませんが、ルーザーにはなりなくないかなあ~。

本書は究極の逆張りで、考えたことあっても実現不可能と思われていた(であろう)手法を実際にして成功した一例の紹介になります。
私も机上の空論で考えたことはあるが、実際にできるとは本書を読むまで思いませんでした。十分にペイする価格でプットオプションが入手できるなんて想像もしませんでした。

ただ、本書にも何度も繰り返し記述されてますが、メンタルにきそうですね。
成功する前に、メンタル削られて病みそうです。
毎日毎日、少額の損失をコストとして垂れ流し、いつか来るであろう暴落をひたすら待つ、う~ん、絶対に精神病みますね。
まあ、勉強になりました。得るものはあまりありませんでしたが。

【目次】
プロローグ:地獄がやってくる

【第1部:スワンとドラゴン】
第1章:瞬時の崩壊
第2章:破産問題
第3章:さらに暗い未来が待ち受けている
第4章:シズラー
第5章:ナシーム・タレブの世界
第6章:七面鳥問題
第7章:ドラゴンハンター
第8章:その先にある狂気
第9章:真っ暗なトンネル

【第2部:ファットテールの世界】
第10章:夢と悪夢
第11章:フラッシュ・クラッシュ
第12章:無秩序のクラスター
第13章:ボルマゲドン
第14章:これが私たちの生きている世界
第15章:宝くじ

【第3部:厄介な問題】
第16章:この文明は終わった
第17章:絶滅への移行
第18章:破産は永続する
第19章:タイミングはとっくに過ぎている
第20章:ギャンブル
第21章:ティッピングポイントを越えた先に
第22章:目隠し飛行
第23章:リスクの大いなるジレンマ
第24章:破滅の入り口


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posted by alice-room at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 実用・ビジネスC】 | 更新情報をチェックする