
FIREブームの先鞭をつけて当時、大変話題になった本です。
まずは種銭を作り、それを年率4%の利回りで運用し、その運用益の範囲内で生活する(できるようにする)ことで、資産を減らさずに生涯働かずに好きなことをして過ごす、というアレです。
私自身もプチFIREした身の上ですので、一度ぐらいはまあ、流行だった本を読んでみたいと思い、手に取りました。
う~ん、読後の感想としては、なんでこの本がブームになったか分からないです?
今はお金もあって、好きなことを書いて、小遣い稼ぎしながら、優雅な生活をしているそうですが、物の考え方が正直いささかおかしいと思いました。貧しい暮らしから、頑張って成功した一種のサクセスストーリーではあるのかもしれませんが、それでも普通の人には理解できないぐらいの生活水準を語られてもねぇ~。
医療廃棄物を漁って・・・・どうのこうのというくだりには、正直、絶対に関わりたくない階層の方だと思います。
別に不要な見えをはる必要はないですし、誰もがメディアに踊らされて浪費をしようとは思いませんが、あまりにも異質で冒頭から拒否反応が溢れそうになりました。
本書は18章から成りますが、まずは1~10章まで自分語りのナルちゃんのお話で読む価値がありません。
他人の意見や偏見に左右されるな、という著者自身は語る一方で、読者に対してはこうあるべきだ、すべきだという押しつけが酷く、主張に論理的な整合性がありません。
家を買うよりもその資金を投資に回して、より一層早くFIREを目指すべきとか、どこかで何度も聞いたようなことも述べていますが、家庭や家族の幸せという効用が、FIREよりも高い人が当然いて然るべきで、その場合、幸せの為のFIREで持ち家を断念するのは合理的ではないはずですが、著者がそんなことを考えるそぶりも見られません。
自国で生活するよりも物価の安い海外で放浪する方が生活コストが安いというのも、昔からタイの安宿で沈没している人達の話のようで何をいまさらと思うことしきりです。
株の暴落時に、現代ポートフォリオ理論とか言い出す始末ですが、私が何十年も前に大学院生やってた頃の話を言い出しても苦笑しかないです。というか、今はそれさえも「まぐれ」とか「カオスの帝王」の本、読んでみてねで終わってます。
株と債券による分散投資でリスク代替ができるというのは、既に昔の話でしょう。
11章で少しだけ、興味深い話(FIRE直後に相場の暴落があると、FIREが失敗する事例)が出てきますが、私は債券ではなく、現金(定期預金)でカバーしてますね。
リスク資産はほぼ株式ですが、金融資産全体の半分以下なので、暴落したら、ナンピンして取得時価を下がるだけです。投資信託がメインで個別銘柄は限定的だし、ローン完済した住宅も最悪、売ればそれなりの現金になるし、そのうち年金ももらえる歳になれば、まあ、死ぬまでなんとか資金を回せるでしょう。
余談ですが、著者は自分は才能がないので最低限稼げるだけの学歴をつけて、それなりの給料をもらえる仕事を選んでついた。副業でいろんな仕事をしたけれど、そちらはすべて失敗したとか、まあ書いているんですが、別にどうでもいいかと。
お給料安くても、やりたい仕事をして最低限の生活を出来れば幸せな人もたくさんいるわけですし、他人の生き方には上から目線で助言する姿勢には、不快感を覚えました。それでいて、自分の価値観は他人に理解されない、そして他人に影響されたくないと言い切る姿勢には、もうなんと言うか、呆れて物が言えないとはこのことかと。
まあ、私も独立して会社作って、儲からないので辞めて、借り入れた事業資金返済の為にサラリーマンに戻った口なので、言えたギリではないのですが、本書の著者は相当きてますね。
ぶっちゃけ、金持ち父さんのロバート・キヨサキがたまたま不動産投資で当てて、儲かったので本を書いたら、売れた。
本書の著者もそれ系かと。
まあ、タイミングが良かったんでしょうね。
今は4%ルールというのが有名ですが、昔からイギリスなどでは資産家はおおいに儲けたければ、事業を興して会社を経営し、面倒せずに働かずに生活していくなら、国債を買って5%のクーポンを生涯もらうっていうのが、ごくありふれた常識だったとものの本で読みました。
その頃からは何も変わっていませんね。
それこそ、ピケテイの「21世紀の資本」を出すまでもなく、労働するより相続で得た資産の増加率の方が高い時代が多いのだから、まあ、当然です。
本書はあえて読む価値の無い本でした。
【目次】
第1章 お金のためなら血も流す
第2章 桃のシロップ、段ボール箱、コーラの缶
第3章 (まだ)自らの情熱に従うな
第4章 あなたは私のものだ
第5章 誰も助けにきてはくれない
第6章 ドーパミンについてわかったこと
第7章 マイホームは投資ではない
第8章 本物の銀行強盗
第9章 株式市場の暴落をいかに乗り切るか
第10章 私を救ってくれた魔法の数字
第11章 現金クッションと利回りシールド
第12章 お金を浮かすために旅行をする
第13章 バケツ・アンド・バックアップ
第14章 インフレ、保険も恐るるに足らず
第15章 子どもはどうする?
第16章 早期リタイアの負の側面
第17章 自由になるのに100万ドルは必要ない
第18章 我が道を行け
FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド(amazonリンク)
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「まぐれ」ナシーム・ニコラス・タレブ ダイヤモンド社
「カオスの帝王」スコット・パタースン (著), 月谷 真紀 (翻訳) 東洋経済新報社
「トマ・ピケティの新・資本論」トマ・ピケティ 日経BP社