2018年09月17日

「図録 全国の美しい御朱印」マイナビ出版 八木透


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本当にただ、ただ、御朱印の写真を載せているだけの本。
御朱印を出している神社仏閣に関する情報は潔いほどにほとんど無いです。

その代わり、全国の御朱印をかなり網羅的に一覧することができ、ここの御朱印を
欲しい!! とか、御朱印探しには大変便利かと。紙の本の強みを最も発揮した
御朱印本かと。

実はもうかれこれ20冊以上、御朱印本を読んでいますが買って手元に置いておこうと
思った中では上位に入る本です。

本書で御朱印の陰影等、また御朱印の有無を確認して、あとは個々の神社や寺の情報を
ネットで探して車でGO! そんな使い方に最適かと。

個人的には結構、好きです。
値段が高いんですけどね・・・。

図録 全国の美しい御朱印 単行本(amazonリンク)
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2016年07月16日

「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」ウンベルト・ エーコ  CCCメディアハウス

先日エーコの亡くなったニュースを知った時、蜷川さんが亡くなったニュースを聞いた時もそうでしたがみんな改めて人って死んでいくんだなあ~と思いました。

ただ、エーコの書く本を読んでいて面白いと思った本はほとんどなかったような気がします。映画になった「薔薇の名前」は映画が良くて原作読んだけれど・・・原作はね?

作者も映画はね?ってことを言ってたようですが・・・。

ただ、私の関心を惹くテーマを取り扱った題材で書かれる本が多くて、つい手に取ってしまったりする。
この本も正直読んでつまらないんだろうなあ~と思いながら、読み始めました。

まして私の嫌いな対談集だし・・・ね。

それなのに、予想に反して本書は結構興味深かったです。
出てくる本や本にまつわる関連情報もさることながら、単純に読んでいて面白かったです。
図書館で借りた本でしたがこれは購入して手元に置いておく予定。

【目次】
序文
本は死なない
耐久メディアほどはかないものはない
鶏が道を横切らなくなるのには一世紀かかった
ワーテルローの戦いの参戦者全員の名前を列挙すること
落選者たちの復活戦
今日出版される本はいずれもポスト・インキュナビュラである
是が非でも私たちのもとに届くことを望んだ書物たち
過去についての我々の知識は、馬鹿や間抜けや敵が書いたものに由来している
何によっても止められない自己顕示
珍説愚説礼賛
インターネット、あるいは「記憶抹殺刑」の不可能性
炎による検閲
我々が読まなかったすべての本
祭壇上のミサ典書、「地獄」にかくまわれた非公開本
死んだあと蔵書をどうするか
訳者あとがき 本の世界はあたたかい
主要著作一覧
もうすぐ絶滅するという紙の書物について(amazonリンク)
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2015年02月15日

「なれる!SE」1、2巻 夏海 公司 アスキー・メディアワークス

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2ちゃんのプログラマのスレにあったので読んでみました。
まあ、元SEの肩書きなら、私も持ったことがあるので少しだけ一般人よりは予備知識がある状態で読んでます。

でも、実際はこんなものじゃないかなあ~と思う。
かつてソフトウェアハウスで働いたことがあるが、バグというかそれ以前に仕様通りの機能が実装されてないのを知ったまま、プレスリリースしたからと発売。
「修正パッチで実装すればいいから~」という、そういう業界ですもんねぇ~。
まともな神経してたら目が点になりますが、今時のモバイル関係なんて、それに更に輪をかけた酷さでしょうし・・・・。押して知るべしって感じですね。

本書は基本、あるあるで書かれたラノベになっています。
よく言われますが、まともな業界ではないですね。過労で潰れたり、欝で会社に来なくなったり、担当者が逃げる、プロジェクトが炎上、デスマとかまあ、当たり前過ぎる現実だったりする。

本作では就職に失敗して、藁にもすがる思いでまさにブラック企業たるシステム開発に就職してしまった可哀想な青年が主人公。そしてそのブラック企業で美少女の上長と出会うのだけれど・・・。

とってもベタなツンデレだったりする。
舞台がシステム業界という点だけが特筆すべき特徴です。
ただ、それを差し引いてもありきたりではあってもそれなりに面白いです。
個人的に嫌いではないです。(だから、そのまま2巻目に突入した訳ですが・・・)

2巻目に至っては、開発と運用の対立。
これも本当に良くある話だしねぇ~。まさに自分の経験でも当てはまってるか・・・と。

実際、UATも開発部署で確認しないまま、ベンダーが持ってきたものを現場でテストさせる神経が分かりません?常識を疑う?ベンダーコントロールが本当に出来ているのかは別にしても、テスト環境とテスト自体を自ら確認しないまま、他部署に投げる・・・。誰も責任を取らず、無意味なエビデンスばかり残しても・・・。

で、担当者はいつのまにか消えていって残らない・・・。
私も早々に消えられるように準備しないと。

書評書く前に、職務経歴書のupdateをせねば!
と痛切に思う今日この頃でした。

舞台設定以外は、ラノベの王道をいってますので、それなりに続編出てるんですねぇ~。
ちょっと驚きました。少し読んでみたい気が・・・私も。

ちなみに・・・2巻目の運用の娘が可愛いです。
そういう子がいるなら、つまらない職場でも頑張れるのですが・・・あ~、月曜日会社行きたくない!!

なれる!SE (amazonリンク)
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2013年06月02日

世界最古のトーラー(旧約聖書)の巻物がイタリアで発見された

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'World's oldest Torah' scroll found in Italy
【以下、BBCより転載
The University of Bologna in Italy has found what it says may be the oldest complete scroll of Judaism's most important text, the Torah.
The scroll was in the university library but had been mislabelled, a professor at the university says.
It was previously thought the scroll was no more that a few hundred years old.
However, after carbon dating tests, the university has said the text may have been written more than 850 years ago.
The university's Professor of Hebrew Mauro Perani says this would make it the oldest complete text of the Torah known to exist, and an object of extraordinary worth.
The university says that in 1889 one of its librarians, Leonello Modona, had examined the scroll and dated it to the 17th Century.
However, when Prof Perani recently re-examined the scroll, he realised the script used was that of the oriental Babylonian tradition, meaning that the scroll must be extremely old.
Another reason for the dating is that the text has many features forbidden in later copies under rules laid down by the scholar Maimonides in the 12th Century, the university says.
日本語でもニュース記事があったので以下、転載。
モーゼ五書の巻物発見 伊、最古の完全写本
イタリア北部の国立ボローニャ大は30日までに、旧約聖書の「モーゼ五書」の12~13世紀ごろの写本巻物が大学図書館から見つかったと発表した。五書が完全にそろった写本巻物としては世界最古とみられるという。イタリアのメディアが伝えた。

 これまでも同図書館に保管されていたが、1889年に作成された目録では17世紀ごろの写本と分類されていた。新たな目録を作っていた同大のヘブライ語専門家の教授が今年2月、書体からもっと古い時代の写本だと気付き、放射性炭素による年代測定を依頼したところ1155~1225年ごろのものと判明した。

 写本は羊皮紙製の巻物で縦64センチ、長さが36メートル。預言者モーゼが記したとの伝承がある「創世記」から「申命記」までの旧約聖書の最初の五書がヘブライ語で書かれている。五書の写本巻物の断片は、さらに古い年代のものが存在するという。
やっぱりイタリアだよなあ~って感じがしますね。何があっても不思議じゃないし・・・。

古い壁を壊したら、出てきた地下通路が古代ローマ時代のものだったというか記事もありましたもんね。

シエナ、また行きたいなあ~。
他にも行きたいとこ多くて、まだだいぶ先になりそう・・・・だけど。
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2013年01月12日

「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」マックス ヴェーバー (著)、大塚 久雄 (翻訳)  岩波書店

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【目次】
第1章 問題
 1 信仰と社会層文化
 2 資本主義の「精神」
 3 ルッターの天職観念‐研究の課題
第2章 禁欲的プロテスタンティズムの天職倫理
 1 世俗内的禁欲の宗教的諸基礎
 2 禁欲と資本主義精神

訳者解説
主要索引

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)(amazonリンク)
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2012年04月30日

英国図書館(BL)、7世紀の貴重な写本である『聖カスバートの福音書』を購入

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英国図書館(BL)、7世紀の貴重な写本である『聖カスバートの福音書』を購入
【以下、図書館に関する情報ポータルより転載】
2012年4月16日に、英国図書館(BL)が、7世紀に作製された貴重な写本である『聖カスバートの福音書』の購入を発表しました。写本購入にかかった金額900万ポンドは2011年7月以来の資金調達キャンペーンの結果達成されたもので、これは、BLの歴史上最長かつ最も成功したキャンペーンであったとのことです。『聖カスバートの福音書』は既にデジタル化され、同館のウェブサイト“Digitized Manuscripts”で公開されています。

The St Cuthbert Gospel
http://www.bl.uk/manuscripts/SetupViewerHandler.ashx?ref=add_ms_89000_fs001r

British Library acquires the St Cuthbert Gospel -- the earliest intact European book (British Library 2012/4/16付けのプレスリリース)
http://pressandpolicy.bl.uk/Press-Releases/British-Library-acquires-the-St-Cuthbert-Gospel-the-earliest-intact-European-book-58c.aspx

St Cuthbert Gospel Saved for the Nation (Medieval and Earlier Manuscripts Blog 2012/4/17付けの記事)
http://britishlibrary.typepad.co.uk/digitisedmanuscripts/2012/04/st-cuthbert-gospel-saved-for-the-nation.html

British Library acquires St Cuthbert Gospel (BBC 2012/4/17付けの記事)
http://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-17732310

参考:
英国図書館(BL)、聖カスバートの福音書の購入のため総額900万ポンドの資金調達キャンペーンを実施
http://current.ndl.go.jp/node/18697

British Library acquires St Cuthbert Gospe
【以下、BBCより転載】
The oldest intact European book - the St Cuthbert Gospel - is to remain in the UK after the British Library raised £9m to buy it.

The acquisition of the 7th Century copy of the Gospel of St John follows the library's largest fundraising campaign.

The National Heritage Memorial Fund gave £4.5m but charitable foundations, trusts and the public also contributed.

The book was sold by the Society of Jesus (British Province) to raise money for education and restoration work.

The manuscript, produced in the north-east of England, was buried with the early English Christian leader on Lindisfarne in about 698.

It was rediscovered at Durham Cathedral in 1104 after the coffin had been moved to escape Viking raids.

The library has acquired the Gospel in partnership with Durham University and Durham Cathedral, and it will be displayed equally at the library and in the North East.

It had been on loan to the British Library since 1979 and the institution was given first option to buy it.

Digitised version
"To look at this small and intensely beautiful treasure from the Anglo-Saxon period is to see it exactly as those who created it in the 7th Century would have seen it," said the library's chief executive, Dame Lynne Brindley.

"The exquisite binding, the pages, even the sewing structure survive intact, offering us a direct connection with our forebears 1,300 years ago.

"I would like to pay tribute to the donors who have made this acquisition possible.
"This was a once-in-a-lifetime opportunity to secure the Gospel for the nation and we were both grateful and touched that so many people felt moved to support our campaign," she added.
The library's director of scholarship and collections, Caroline Brazier, said the £9m cost of the book was worth it.

"We don't know what an item like this would have actually gone for on the open market, but... we feel that we've negotiated a very good price."

The St Cuthbert Gospel will be on display in the Sir John Ritblat Treasures Gallery at the British Library's main building in London's St Pancras.

The first display in Durham is expected to be in July 2013 in Durham University's Palace Green Library on the Unesco world heritage site.

The Dean of Durham, the Very Reverend Michael Sadgrove, said the book's acquisition was "the best possible news".

"For the people of Durham and north-east England, this is a most treasured book," he said. "Buried with Cuthbert and retrieved from his coffin, it held a place of great honour in Durham Cathedral Priory."
イギリスに残る最古の完全なヨーロッパの本とか書かれていますね。

実際、本の中を開いて動画で公開していますが、状態がすっごい良いです。
ラテン語ですが、そのまま読めちゃいますね。ラテン語知ってたら・・・たぶん?(私、知らないけど)

残念ながら、私好みの挿絵等は無いようですが、表紙の装丁とかはなかなかいい味出してます。

英国図書館で購入資金を集めるキャンペーンを行い、その資金で購入したそうです。

中身はデジタル化され、公開されています。
Digitised manuscript
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2010年10月25日

日経新聞「講義、ネット無償提供ー大学で広がるOCW」2010年10月18日

先日読んだ本「ウェブで学ぶ」で、非常に関心を持っていたところで日経の記事を見つけた。

まあ、内容は本に比べると格段に落ちる。関係者による現状紹介ってレベル。OCW(open course ware)が有する本質的な変化、その将来へ及ぼす影響とかいった視点がすご~く薄っぺらで残念。

これだけ読むと、ああ日本でもそういう風になりつつあるんだね、で終わってしまう。なんだかなあ~。

大学が勉強しない名ばかり大学生のものではなく、真に社会にとって有用な知識を提供しうる場所になれる、なろうとしている機会だと思うんですけどね。

仕事をしている人にとっても、通学せずに学べる非常に有用な今だから、得られる機会なんだけど・・・。そういえば、私の学びたい講義を探していて、なかなかいいのが見つからなかったんだよね。その辺ももう少し分かり易く、使い易く提供してもらえると嬉しいんだけどな♪

ブログ内関連記事
「ウェブで学ぶ」梅田望夫、飯吉透 筑摩書房
来春から義務化される韓国のデジタル教科書事情
ラベル:日経 教育 OCW
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2009年08月29日

「マキゾエホリック Case1:転校生という名の記号」東亮太 角川書店

最近、ラノベばっかり読んでる私ですが・・・やっぱり一般小説同様、ラノベも駄作が多いなあ~ホント。最初から最後まで、全く読むに値しないんですけど・・・。

一般人とは異なる人達が集まるクラスがあって、そこに転校生がやってきて・・・そして事件が起る。

まあ、こう書くだけでなんかマトモな大人的には気恥ずかしさが伴う設定で、しかもキャラが全然たってないし、萌えないのでは、どうにも始末がつかない有様です。

無理して記号がどうとか、虚無がどうとか言っても、著者の知識レベルでは扱い切れず、言葉が上滑りすること甚だしくて、泣けてきます。

「薔薇の名前」読んでから、そういうこと言ってね!書いてね!

私、読んでいて全然意味が分かりません。別にカオスだとか、新しい手法のせいだとかそういう次元ではなく、単純に文章力が低いだけだと思います。

申し訳ないが、金返して欲しいと思う。それ以上に読んでしまった分、脳みそ退化したような・・・。やっぱり買うのは、まーちゃんとみーくんだけにしとけば良かったなあ。

しかしもったいぶったキャラが多数出てくるのだけど、どれも印象に残らない。リアル厨房じゃないんだから、ラノベの登場人物くらい強烈な個性が欲しいなあ~。

私の友人の方がキャラ濃いし・・・。筋モノ系ニアリーとか、薬中とかマジ一歩間違うと・・・なんですけどね。

とにかく読んで面白ければ、全てOKですが、つまらないのは全てゴミです。大失敗でした。

そういやあ~この本買った後に読んだ「ライトノベル完全読本」にも、この小説紹介されてましたけど、あの本も適当なのが分かるな。どちらもどうしょもねぇ~です(ガッカリ)。

マキゾエホリック Case1:転校生という名の記号 (スニーカー文庫)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ライトノベル完全読本」日経キャラクターズ 日経BP社
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2008年04月27日

「狐物語」(翻訳)鈴木覚、福本直之、原野昇  岩波書店

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12世紀後半に書かれたと思われる中世フランス文学の作品。と言っても堅苦しいものではなく、庶民にまで広く親しまれた作品で、イソップ童話のように動物が主人公で人間のように話します。

国王や諸侯、聖職者に職人や農民など中世のたくさんの階級の人物が登場し、骨の髄から意地悪な狐ルナールによるいたずらとそれによってひき起こされるトラブルなどが話の中心となります。

オイレンシュピーゲルなどとも共通するような、中世特有の世界観や常識などが何気ない文章の中に散りばめられ、それらが分かると更に興味深いこと、この上なしですが本書では注や解説などでも適宜説明されていて、それらを読むだけでかなり勉強になります。また、それを読むことで何倍も話の面白さが倍増します!

本書を読む方は是非、注や巻末の解説などもお読みになることをお薦めします!!

しかしねぇ~、狼の奥さんと不義密通しちゃう狐のルナールもルナールですが、自分から喜んで誘っちゃう奥さんていうのも、まさに人間世界を戯画したような場面です。

またまた、ルナールに大切な下半身の玉をかじられてなくなってしまい、妻から、女としての喜びを失ってしまったとなじられる場面なども、何のエロ本かと思ったぐらいです(笑)。

そうかと思うと、妻を陵辱された決着を国王の裁判に求める場面では、諸侯が訴えでた原告の証言だけでは発言の信憑性が無いとして、二人以上の証人が必要だとしたり、被告の出頭を待って、弁明を聞いたうえで判決を出そうとするなど、どうしてどうして、実に明確な訴訟手続きが慣習法としてあったことをうかがわせ、中世の裁判制度などの勉強にもなります。

それに、どんな極悪人であっても(国王が死刑にしようとしていたぐらい)、告解をして死んでしまえば、実に有能で立派な家臣を失ったと嘆く国王の変化も面白いです。

単純に童話としての面白さを持ちながら、いかにも民衆が好んだ猥褻性や時の権力者をあざ笑う風刺性などもたっぷり効いていて愉快です。おまけにローマ・ギリシアの古典を踏まえているし、「聖ブランダン航海譚」などもさらっと出てきたり、なかなかやってくれます(ニコニコ)。

本当は読む前は、子供向けのちゃらい本かと思い、読むのを先伸ばしにしていたのですが大きな間違いでした。これはお薦めです!!

以下、ルナールが死んだことになり、葬儀の前で語られる話の抜粋:
「・・・・
国王はじめ、大小の諸侯、皆々様お聞き下さい。我ら承知の如く、ルナール殿は亡くなって我らの前に横たわっています。

狼イザングランの妻君エルサン夫人もご愁傷様です。ルナールは二人きりで、何度も彼女と後ろからやったからです。何度も何度も背中から彼女の割れ目に突っ込んだのです。いつ突っ込んでも仕損じる事のない穴こそ呪われてあれ。

ルナールは王妃様の穴にも何回も突っ込んでいます。彼女から苦情が出たのは、回数が少ないということだけです。聞いてみれば分かりますが、いくら突っ込まれても穴がもうたくさんといったことはありません。

国王を寝取られた男にしたために、王妃の尻の穴は裂けてしまったに違いありません。でっかい尻をしたエルサンもきっと臀部に火傷をしたことでしょう。

疑うなかれ、ルナールはそれらをすべて悔い改めたのです。彼の魂は後ずさりしながら、騾馬を連れて天国に昇ります。そこにはきっと驢馬も死んでから行くことになるでしょう。
・・・・」
これが岩波文庫に入っているのですから・・・みんなお勉強しましょうネ♪

ちょっとだけメモ
中世において本は信仰の対象そのものであり、聖遺物箱に保管されていた。疾病などがはやると、写本を水に浸してそれを服用すると薬効があるとされたそうです。

『ダロウの書』の頁に穴があいているのは、このせいだって。

本に書かれていることは絶対であり、真実であって、その為、著者(auteur)と権威(autorite)が同じ語源を有する所以だそうです。

フランス語でルナールは狐を表すそうだが、元々は別の単語があったのにこの話が有名になってしまい、「ルナール=狐」となったそうです。

この話は大変人気があったらしく、複数の写本が現存し、時代を下るに従って、中核となる話に付随する形で枝篇として、いくつものアナザー・ストーリーが生まれたらしい。
【目次】
ルナールの誕生と子供時代
ルナールが荷車の魚を失敬した話
ルナールがイザングランを出家させた話
ルナールがイザングランに鰻釣りをさせた話
ルナールが雄鶏シャントクレールを捕まえた話
ルナールがティベールの尻尾をちょん切った話
ルナールがイザングランの弟プリモーを坊主にした話
イザングランがルナールを国王の宮廷に告訴した話
ルナールが染物屋になった話
ルナールが旅芸人になった話
ルナールが烏のティエスランからチーズをだまし取った話
四十雀とルナールの舌戦
ルナールがイザングランを井戸にはめた話
ルナールとイザングランの決闘
ルナールの死
狐物語(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」藤代 幸一 法政大学出版局
「聖ブランダン航海譚」藤代幸一 法政大学出版局
かのこん
「狐物語」でamazon調べると、「かのこん」が出てきて笑えた。かのこんもエロいが、岩波文庫にエロさで負けてるのが更に笑える。
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「ノートルダムの鐘」ヴィクトル ユーゴー 竹書房

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大変有名な作品で名前を聞いたことがあり、何故か粗筋もおぼろげながらに知っていたりするが、一度も読んだり、見たりしたことのなかった作品でした。

個人的にディズニーって嫌いだしね。日本人って全く気付かない人も多いですが、何故、ああまでディズニーが世界の人々に受け入れられつつも強烈に毛嫌いされているか、少し考えればすぐ分かるんですけどね。知らない方は、少し無邪気過ぎるかも? 有名なお話ですのでここではこれ以上触れません。

まあ、いささか偏見を持っていた私ですので、なかなかこの本に手を出せなかったりする。で、読んでみると・・・。

第一の感想は、全く読む前からの想像通りの内容だったが、それはそれで面白かったってことです。と、同時に・・・この本の訳ってディズニー的な歪みが既に入っているのか? それとも元々の原作がこれなのか? 訳者による恣意的な要素があるのか?ってことが大変気になりました。

他の本で訳を読んでいないので、なんとも言えませんが、この本はこの本で相当疑問(!)が残る内容でした。

率直に言って、キリスト教的価値観の押し付けが著しい。現在でもカトリック国であるフランスの、ユーゴー時代に書かれた作品だからからだろうか? そこが分からないのでなんとも言えないのだが、ジプシーに対するキリスト教的偏見と都市秩序維持の観点から見た現代にも通じる実際的な視点がリアルであり、カトリック以外は全て異教徒と看做す世界観がかなり不快である。

異教徒をそもそも断罪したうえで、人類に共通の美徳を並べ立ててもそりゃ『偽善』としか見られないだろう。まさにそれこそがディズニー作品のキーワードであり、世界中の人が嫌う真の理由なのだけれど・・・。

日本人のお母さんが子供にディズニー作品を見せているのを知るたびに、自分でその作品の意図していることをご存知なのかと不安になる。
そういう人達が安易な大人になり、国連主義を主張したりするのではないだろうか? 

素晴らしい理念を語りながら、実体として無秩序と各国の利権漁りで堕落した国連の運営状況をご存知なのだろうか? 国内の社保庁の状況さえ分からなかったで済ませる人々だし、仕方ないのかもしれないが・・・。そういやあ~会社説明会で破綻が見えていた年金制度を前提に経済を解説していたどうしょうもない会社があったが、山一證券だったかな? あの後、つぶれたもんなあ~。そりゃ、当然だと思ったものでした。

話がだいぶそれてしまいましたので、本の話に戻ります。


【注意! 以下、一部ネタばれ要素あり】










本書は、とにかくキリスト教的(+中世的)価値観で満ち満ちています。教会内を「サンクチャアリ(聖域)」として、世俗の権力とは一線を画し、そこに世間で受け入れられないモノ(者?)としてせむし男のすむ場所としていることや、ジプシー娘をかくまう場所にしているのも興味深いです。

また、中世の祝祭としてしばしば挙げられる世俗の価値観の『逆転』なども、フレイザーの「金枝篇」を待つまでもなく、メインの舞台にすえられています。

パリの共同墓地の地下空間などもまさにパリのキリスト教的世界であり、現在もカタコンベで有名です。そういえば、「オペラ座の怪人」の地底湖も実在しますしね。楽しい世界です♪

あとあと世俗の裁判や処罰に対して、我関せずとする教会の姿勢も実に正当な描き方がされている。また、都市に暮らす民衆と都市管理当局との確執も中世的な世界観が分かっていると、それの延長線上にあり、実に興味深いです。

現在でもヨーロッパ各国でジプシーの人々に対しての根強い偏見がありますが、黒髪や赤毛はまさに彼らにとっては秩序破壊者の外的な印であり、悪魔なんでしょうね。それは地下鉄内などでも、いくらでも見かける事実ですし。

そうそう、そういったのとは別に思ったのですが、ファントムにしろ、せむし男にしろ、醜男は結局、幸せになれないのですね。美女と結ばれるのは、常にカッコイイ男か金や地位のある男だったりします。

いくら『愛』以外の貴重なものを見出した、とか得たとか言ってもそれって意味無いような気もしますが・・・???

妥協や諦めをもって、ごまかしているだけでなければいいのですが・・・。心の底から、人類愛や博愛を信じられるのでなければ、嘘はいけません。プロパガンダ的な胡散臭さがつきまとい、素直に受け取れませんでした。

う~ん、私が偏見に満ち過ぎている側面もありますが、この作品は視点をどこに置くかで、全く異なった意味を持つものになりそうです。いろんな角度から見ると、興味深いです。

その意味でも本当は原文で読みたい本ですね。翻訳者の能力によって、どこまで原作に忠実なのか、まずはそれが重要問題の気がしてなりません。出版社があの竹書房さんだしなあ~。(これも偏見ですが、他に出している本が本だけに・・・ネ)


ノートルダムの鐘 (ディズニー・クラシックス)(amazonリンク)
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2008年04月21日

「香具師の旅」田中小実昌 河出書房新社

実は、以前から気になっていた作家さんなのですが、なかなか本を手にとって読む気になれないでいた存在だったりする。期待通りであっても、期待が裏切られても、どちらも嫌なカンジがして読めなかったんです。

読んでみた感想も、予想通りでした。

うん、なんというか場末の忘れ去られた地方の町で、流れ流れて行くところの無くなった人が一時、留まる・・・そんな場面が目に浮かびます。

男も女も生きるのに倦み、疲れ果て、死ぬのも面倒で覚悟もないのでその日、その日をなんとなく生きている。そんな切ないけど、その程度で生きている人間のありもままの姿が、そこはかとなく実在感があって物悲しくて、心に引っかかります。

同情や憐れみとは違うし、憤りでもない。ただ、生き物としての性(さが)のようなものが、なんとも形容し難い感情を呼び起こします。

本当に、ただなんとなく生きている。目標があったり、努力したり、幸せを求めたり、そういった価値観とはおよそ無縁な存在なのですが、頭では分かるのではなく、感覚でどっか共感できてしまうそれが、どうしても気にかかります。

男女の交わりなどもその好例で、ちょっとした成り行きの挨拶のようなものでしかないのですが、せいぜい軽いコミュニケーション(それ以前)の一端とかでしかなく、愛とか恋とかとは別次元であることを痛感します。私には、ちょっと分かるような、分からない感覚ですね。

でも、嫌いでない自分がいて、自分の中の相反する感覚に戸惑うこともしばしばです。こういうのも人間なんだなあ~って心から思います。

効率良く生きよう、とか目的志向的に生きていくとかいうビジネス書とかの対極にあるのですが、どちらも肯定できてします自分がいます。
私的には、宿も決めずにふらっと放浪するしちゃう感覚に近いものがあるかも・・・。

私はこういう話もそれなりに好きです♪

以下、独り言。
昔、パリに行き、深夜2時過ぎにおきてTVを見てたら、女性が裸というかエロティックな肢体で、横になっている映像が流れてきた。画面の上や下には、電話番号がずっと表示されていて、ダイヤルQ2の宣伝か、コールガールの斡旋かな?と思ったのですが、急に怪しげな日本語がBGMとして流れてきた。

おじさんの鼻にかかったフランス語っぽい歌なのですが、歌詞がよく分からない。何故か分からないが、それを聞いていて田中小実昌氏のことをイメージした。その理由が釈然としないのだが、漠然と思い浮かべ、深夜のホテルでそれをぼお~っと眺め、曲を聞き流していたことが何故か記憶に残っている。

あれはなんだったんだろう? 未だに何がなんだか分からないのだけれど、ふと気になったりする???

香具師の旅(amazonリンク)
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2008年04月13日

「ハリアー・バトルフリート」米田 淳一 早川書房

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プリンセス・プラスティック シリーズの最終巻。当然、これに先立つ3巻を既読であることが前提になります。

人の姿形を有する人工知性体、ありとあらゆる行政情報がネットワークシステムにより制御・管理される近未来社会。社会に受け入れられた天才と受け入れられなかった天才による、未来を巡る捉え方の差異がもたらす争い。

舞台装置は、これ以上ないっていうくらいオーソドックスではあるものの、そこで描かれている緻密に構築された世界観(高度情報化社会・体制の設定)が実に想定内の範囲(=リアルっぽくて)で素晴らしい!!

主人公に思い入れる、というよりはそこに描かれた近未来社会の設定その他の緻密さを楽しむべき作品だと思いました。キャラ自体は悪くないけど、それほどの思い入れはないしね。

『近未来』というものは、どこまでを思い切って、どの視点から描くかで全然変わってきますし、概念的な切り口はそれはそれで思考実験的で面白いし、好きなんですけど、現在の技術的な方向性・志向性からその延長線上として描き切ろうとする著者の視点が私にはとっても面白かったです。

私自身はデータベース関係ならある程度分かるものの、ネットワーク関係には不案内だし、本書で描かれているものの前提を十分に分かったうえでの感想とは言い難いのですが、それでも類書にはないほど、小説の舞台としての社会設定をきちんと考えたうえで描かれたものには間違いないです。

読んでいる最中も、著者よく考えたうえで書いているなあ~と思っていましたが、後書き部分を読んでも著者がその点を明確に意識してご苦労されていたのが分かりました。

本書の魅力は、いわゆるSF的な、斬新な『発想』ではなく、緻密に現在から敷衍していく『論理性』ではないかと思います。恐らく、前提となる知識があればあるほど、この世界観が楽しめると思います。

逆に、『空想』的なただ、ただ漠然としたイメージだけの未来観や物語としての面白さばかりを求めると、凡庸な小説としか思えないかもしれません。

ただ、前3巻に比べて今回の巻は戦闘シーンが多く、それが逆に面白さを減じた感じもしますが、その反面、設定の細かさや緻密さが滲み出ていてトータルでは微妙かな? 

日本人の描くSFとしては、これまで無かったタイプとして評価して良いような気がします。本作品以外で、著者の本を読んでみたいと私は思いました。

ハリアー・バトルフリート―プリンセス・プラスティック (amazonリンク)
ラベル:書評 小説 SF
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2008年03月16日

「言壺」神林長平 中央公論新社

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ずいぶんと懐かしい作品です。未読本と間違えて再読してしまったのですが、すぐに既読と気付いてもやはり面白くて、結局最後まで読破してしまいました。

神林氏作品の本質の一つだと思うですが、言葉とそれにより構築される世界(現実世界と言語により認識・再構築される世界)の面白さが本作品でも非常に強く現れています。

「グーグル化」やらニコ動のコメントによる情報の共有化、古くはノレッジ・マネジメントなど、最近になって目新しい単語でさも新しい流れのように誤解されていますが、本質的なものは時代を問わず、変化がなく、基本は言語空間による自己認識世界と外部世界との関わりがポイントのような気がします。

その点で、本作品も実に本質的なものを突いていると感じています。

もっともらしくて内容の無い、ビジネス書やIT系の情報雑誌なんぞ読むよりも本書のような思考実験的な作品を読むほうが、『時代』のトレンドを読み(古い言葉ですみません)、むしろ新しいアイデアが生まれそうな気がしてなりません!

10年をはるかに超える昔の作品ですが、全く古くなっていません。情報というものや、コミュニケーションというものを考える時、本書の視点は実に示唆に富むものだと思います。

SF小説として、単純に面白いのですが、それ以上に社会論、文化論的な視点で見たり、情報処理(あるいは認識)論としても大変興味深いと思います。

是非是非、志のある方、一読して欲しい本です。

ちなみに神林作品系列で言うと、「言葉使い師」とかの直系かな? 広義でいうと「プリズム」を初め、神林作品の中核を占めるテーマでもあると思います。

知的な好奇心のある方にも勿論、お薦めですネ。

おっとっと、そもそも何を描いているのか説明していなかったですね。
文章作成支援ツールとして情報機器が一般化している近未来世界。この設定枠の中での短編(連作?)集です。

必ずしも完全に同じ設定内ではなく、ニアリーイコール的な揺らぎを持った設定です。但し、基本は人間が文章を書こうとする時に支援する『ツール』の存在を通して、人間の言語による世界認識の本質を鋭く突いたものとなっています。

何気なく使っている言葉が、全く違った働きを持っていることに今更ながら、気付かされますので実に面白いのですよ・・・(笑顔)。読後には、違った視点が貴方の中に生まれているのに気付くはずです。

まさに王道SFの一つでしょう♪

言壺(amazonリンク)

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2008年02月28日

「夢サーカス美少女地獄篇」奥田 誠治 徳間コミュニケーションズ

まさかあるとは夢にも思わなかった、あの「ドリームハンター麗夢」のノベライゼーションです。あったんですねぇ~、そんなのっていうか、こんなの!

18禁アニメから特殊な人気で一般ビデオに移行した例として、昨今ではしばしば見られるパターンの草分けと言っても良い作品だと思います。確か最初に出していた製作会社は倒産して、版権だけ売り飛ばされたんじゃなかったかなあ~? 

でもってシリーズ化されたんだと思います。相当古い話なんで記憶もあやふやですが・・・。今は無きLD版でいくつか確か持ってました(どうしたんだろ、アレ?)。

基本はいのまたむつみを待つまでもなく、あの当時ありがちな美少女が夢の世界で戦う、というシンプルなストーリーなのですが、自分自身に夢のあったあの頃には、いろいろと感じることもあったんでしょうね。多感なお年頃でしたし・・・(苦笑)。

そういうノスタルジーだけで読んだ小説です。実際、小説としてのレベルは相当低いです。つ~か、限りなくお金をとって読ませちゃいけないレベルというのが正当な評価だと思います。あえてそれ以上は申しませんけどね。

やっぱり、映像で観るべき作品です。くれぐれも小説として読んで失望なさらないように。久しぶりに観たくなったなあ~。ニコ動にも、少しだけあがっていたけど、まだ残ってるでしょうか?

同系統のお気に入り作品に「子猫ちゃんのいる店」という作品があったけど、あれはどうなったのだろう・・・?

何もかもが懐かしい・・・(by ヤマトの艦長)

夢サーカス美少女地獄篇(amazonリンク)
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2008年02月25日

「楽園の知恵」牧野 修 早川書房

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基本的には、かなり好きな牧野氏の作品なのですが、今回はあまり面白いとは思いませんでした。

いつもながらに才気溢れる片鱗は垣間見られるものの、あまりにも短い短編が多い為、その特異な世界観に埋没できないままに終わってしまった感があります。残念!

しかし、オカルトのパロディやら、元ネタが分かると別な意味で凄いなあ~と思わないではいられない作品などもあり、一言で評し難いのが本当のところです。

素直に面白かったとは言えない作品が私の場合、今回はたくさんあったのですが、面白くないのだけれど、凄いなあ~という感想があり、私の中でもうまく言えません。少し前の筒井康隆氏の実験小説的なノリがあります。

結構、評価が分かれるかもしれませんね。ただ、SFの可能性を窺わせる作品なのかもしれません。短編ではなくて、長編で是非とも読んでみたかったです。

楽園の知恵―あるいはヒステリーの歴史(amazonリンク)

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「月光とアムネジア」牧野修 早川書房
「MOUSE(マウス) 」牧野修 早川書房
「傀儡后」牧野修 早川書房
「SFバカ本 だるま篇」廣済堂出版
ラベル:小説 SF 書評
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2008年02月12日

「世界の涯の物語」ロード・ダンセイニ 河出書房新社

sekainohate.jpg

う~ん、ダンセイニの別な本を読んだ時は結構面白かったのでだいぶ期待して読んだのですが、全然面白くありませんでした。

あまりにも短過ぎる短編集で、私的にはファンタジーの世界に入る以前の段階で、唐突に終わっている物語ばかりでした。なんだかなあ~?

小説というよりも、一編の詩なのかもしれません。『詩』という形式のものを未だに受け入れられず、楽しめない私には、本書は全く受け付けられない作品集でした。大変残念です。

だいたい100頁ぐらい読んで時間の無駄ということで続きを読むことを放棄しました。短編であっても、作中世界に没入できないのは困るなあ~。
1 驚異の書
ケンタウロスの花嫁
宝石屋サンゴブリンド、並びに彼を見舞った凶運にまつわる悲惨な物語
スフィンクスの館
三人の文士に降りかかった有り得べき冒険
偶像崇拝者ポンボの身の程知らずな願い
ボンバシャーナの戦利品
ミス・カビッジと伝説の国のドラゴン
女王の涙をもとめて
ギベリン族の宝蔵
ナス氏とノール族の知恵比べ
彼はいかにして予言の告げたごとく“絶無の都”へいたったのか
トーマス・シャップ氏の戴冠式
チュー・ブとシーミッシュ
脅威の窓

2 驚異の物語
ロンドンの話
食卓の十三人
マリントン・ムーアの都
なぜ牛乳屋は夜明けに気づいたときに戦慄き震えたのか
黒衣の邪な老婆
強情な目をした鳥
老門番の話
ロマの略奪
海の秘密
アリが煤色の地を訪れた顛末
不幸交換商会
陸と海の物語
赤道の話
九死に一生
望楼
こうしてプラッシュ・グーは“誰も行こうとしない国”にやってきた
チェスの達人になった三人の水夫の話
流浪者クラブ
三つの悪魔のジョーク
世界の涯の物語 (河出文庫)(amazonリンク)

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「魔法使いの弟子」ロード ダンセイニ 早川書房
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2008年02月10日

「アリスは語る」七瀬 由秋 リーフ出版

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SFマガジンでファンになった、イラストを描かれている横山えいじ氏の絵が好きで目に留まった点とaliceがストーリーを語るという点の2点で気になり読み始めた本です。

どうやら元々はネット上の創作小説と発表されていたものを何かの賞に応募して、出版されたというモノらしいです。

さて、内容について。やや皮肉が利いた大人向きの小話といった感じでしょうか? いささか諧謔的というか、自虐的な側面もうかがわれます。

基本、日常に訪れたちょっとした非日常。ショートストーリーの短編集です。最初の幾つかは、正直ゴミかと思うぐらい、読むに値しない作品だと思いました。電車の中だったので、そのまま継続して読了しましたが、普通だったら最初の作品でサヨナラですね。

でも、全部の作品を読んでみると、最後の「桜」は大変良い! 私はこういうのが大好きです。全作品がこの水準をクリアしているなら、今後も読みたいのですが・・・。本全体の評価としては、良くて平均をかする程度です。amazon的な評価をするなら、星3つに近い星2つですね。

でも、最後の短編「桜」だけは、桜好きの方なら、読んで悪くないと思います。私も・・・・したい。

しかし、この作家さんの小説は、おそらくもう読まないと思います。

アリスは語る (ジグザグノベルズ)(amazonリンク)
ラベル:書評 小説
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2008年02月05日

「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 虚夢回路」藤咲 淳一 徳間書店

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未だにノヴェライズされた小説というものに、時代遅れの偏見を持ってしまう私ですが、さすがは攻殻機動隊、期待を裏切らない出来でした。

本書はTVシリーズを手掛けた人物によるノヴェライズですが、映画とコミックだけでTVシリーズは未見の私でも、イメージしていた作品の世界観にズレはなく、十分に楽しめました。

攻殻機動隊ファンは間違いなく楽しめるでしょうが、それにこだわらなくても十分に高い水準で一つのSF作品として満足できるものとなっています。株価がどんなに下がっても、日経新聞の記事内で日本が世界からいかに相手にされてなくても、こういった作品を生み出せる日本なら、まだまだ『日本終わっていない』って感じました!

以前なら、この手のSFはアメリカと相場が決まっていましたが、彼らの描くサイバー世界より、こちらの『情報』をキーにして世界を読み解く『電脳』社会の方がはるかにリアリティーを覚えます、私。

2030年まであと22年、十分にこの電脳世界は実現できそうです。いやあ~長生きしたいもんです。いくら技術が変わっても人そのものは変わらない反面、技術によって社会や制度は明らかに激変していく。その辺をうま~く扱っていて、もうぞくぞくするほど、こういうのスキ!

粗筋は、ご存知公安9課が要人の警護をしている。同時に頻発する若者によるテロ事件。それらを取り結ぶ関係とは・・・。何故、普通の若者が突如、自らの命さえ省みないテロを行うのか・・・。それらを裏で操るものの正体とは。

まあ、表面的なストーリーは完全な定番ですが、読み物として十分に読む価値があると思います。お好きな方には一読をお薦めします(笑顔)。う~ユビキタス時代は、まだか? 新規事業は「夢屋」を開こうかな? 共同経営者募集ってネ(ニヤリ)。

そうそう、表紙の絵はどうしたものかな? いかにもアニメアニメしていて、SFとは思えないのは顧客予備軍を狭めてしまうような気もするのだけれど・・・?

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 虚夢回路(amazonリンク)

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イノセンス(2004年)押井守監督
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2008年01月23日

「歌行灯」泉鏡花 岩波書店

あの泉鏡花の小説である。なんというか、文体、スタイルとにかく読んでいて読者を必ずや惹きつける魔性の力を有する文章と言っていいでしょう。

こういう文章を読むと、愕然とする自分に気付かされますね。どんなに頑張っても自分には、こういう日本語を書けないと痛いほど、感じさせられます。とてもではないが、自分が普段使う日本語ととても同一の言語と思われません。

読んでいて、文意を捉えるはずがどこか文体に酔っている、そんな感じがしてなりません。あるいは、鏡花の紡ぎ出す世界(魔界)に酔っているのかもしれませんが・・・。

実は短い小説なんで、2,3度読み返してみたんですが、恥ずかしながらどうにも未だに内容が分からないのですよ。単語が分からないわけではないし、物語世界の状況が分からない訳でもないのですが、どうにも本作品を理解したという(例え、誤解であってもいいのですが・・・)なんらかの主観的な満足感さえもないのです。

なんか分かっていない感じがして、釈然としないのです。う~ん。まだまだ私なんぞが読むには10年早い作品なのかもしれません。でも、気になるんですよ・・・。

うまく言えませんが、関心がある方読まれるといいと思います。旅の道中、おじさん二人が宿で経験する出来事というか・・・話なのですが・・・。駄目ですね、粗筋書いても意味ないし、現物の本をお手にとって確認してみて下さい。

未だによく分からないのですが、日本語の可能性を感じる文章であることだけは間違いないと思います。実に不思議で気になる文章でした。

歌行灯 (岩波文庫)(amazonリンク)

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「怪奇・伝奇時代小説選集〈7〉幽明鏡草紙」志村 有弘 春陽堂書店
ラベル:小説 書評
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2008年01月10日

「鏡像の敵」神林長平 早川書房

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基本短編集なのですが、何篇かどっかで読んだなあ~という感じがするのに、本書が出たのは最近ということで不思議に思っていましたが、amazonのレビュー見て納得しました。

どうやら、既に他の本で収録されているのが、重複して入っているようです。どんな意味があるのやら? ハヤカワ訳わかんないことするなあ~? 短編集にするにあたって原稿不足なのを既存のもので穴埋めしたのだろうか?

まあ、それは抜きにしてもまさに神林氏らしい作品集です。逆に言うと、全ての作品に対して既視感を覚えます。どの作品も発表年代が1980年代の後半なので、リアルタイムでSFマガジンの掲載で読んでいたかもしれません。

言葉だけで紡がれていく『異世界』。奇妙に実感を覚えると共に、作中世界にはまればはまるほど、現実世界の認識が揺らいでいくその喪失感。うん、私の好きな神林氏の世界です。

一面では、論理だけで感情など切り捨てられそうながら、どっかで人としての温かみというか『おかしさ』という感情が底辺に息づいている。その絶妙なバランス感が大好きです。

神林氏一押しとは言えませんが、外れることのない一冊かと思います。神林氏ファンやSFファンなら、読んでいて悪くないと思いますよ~。

鏡像の敵(amazonリンク)

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「親切がいっぱい」神林長平 早川書房
「プリズム」神林長平 早川書房
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ラベル:SF 小説 書評
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2008年01月08日

「親切がいっぱい」神林長平 早川書房

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まず第一に、これ本当に神林氏の作品かと思った。著者名を知らないで読んだら、絶対に分からないと思う。それぐらい神林氏の作品中では異色だろう。

だって、言葉遣い師とか、戦闘妖精雪風の作者だよ~。そりゃアプロも書くけど、まさかこういう物が書ける人だとは思いませんでした。なかなか芸のある人だったんですねぇ~ふむふむ。ちなみに私はこの作品それなりに好きです。ちょっとビックリしますが、それなりに魅力的です。

私の感覚でいうと、「プリズム」でマザーから切り離されるあの『パーツ』のような感じに思ったんですけど、マロちゃん。お前何者だ~って!最初から最後まで不明なままで通し切ってますけど・・・改めて考えるとかなり凄いストーリーですよ。見かけのほのぼのに惑わされてますが、作品としては結構ヤバイ?

SFと言えば、SFですがそう呼ぶのには別な意味で抵抗感を感じます。いわゆるハードSF好きは避けた方がいいでしょう。ただ、年明け早々ちょっと疲れてる私には癒しになりました。

いいんだよ、可愛ければなんだって。日常の中の非日常も日常なんだもん。まあ、SFにこだわらなければ、いいのかもしれません。

親切がいっぱい(amazonリンク)

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ラベル:SF 書評 小説
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2007年12月29日

「真夜中の檻」平井呈一 東京創元社

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あの怪人荒俣氏のお師匠さんで、永井荷風の弟子。ラフカディオハーンの「怪談」や「ドラキュラ」の翻訳者にして、日本の幻想文学で知らなきゃ、もぐりと呼ばれるあの平井呈一氏に関する本です。

冒頭の2作品は氏の手による創作。他のものは、翻訳した訳書や全集などに付けられたあとがき等様々なものから集めたもの。文庫なのに、実に充実した内容です。少なくとも幻想文学ファンを自認する方なら、是非一読をお薦めします!!

序から、荒俣さんが熱っぽく平井氏の在りし日の姿を語ってくれます。そして、いきなりの小説がこれまたイイ! 私の大好きなタイプの小説です。「迷い家」や「高野聖」を連想させるいかにもありそうな小説なのですが、でもやっぱり上手いと思う。私はこういうのが読みたいんですよ~ウンウン。

二番目の小説は、あの時代にしばしばあった系の小説で新味はないが、悪くないというところかな?

その後にずっと続いていく、あとがき集みたいなものが実に面白いし、勉強になります。私も大好きなブラックウッドとかマッケン、レファニュ、ビアスなど定番作家の当時の状況が分かって実に興味深い。改めて、今後自分がどういった作家のものを読み進めていこうか大変参考になります。

手元で眠っている本を探して再読、あるいは初読してみたいと思いました。今、積読本もだいぶ溜まってますし・・・(胸が痛みます)。

個々の内容は、それぞれの翻訳本を読んだ時に見た覚えがあるものがちらほら散見しますが、本書はまとめて読むだけの価値があります。師走ですが、これは最後の当たり本だと思いました(笑顔)。
【目次】
序 平亭先生の思いで 荒俣宏

真夜中の檻
エイプリル・フール
海外怪談散歩
 「魔人ドラキュラ」あとがき
 怪奇小説と私
 お化けの三人男
 ブラックウッドのことなど
 J・S・レ・ファニュ
 ウォルター・デ・ラ・メア
 ビアスとラヴクラフト
 アーサー・マッケン
 デニス・ホイートリ
 M・R・ジェイムズ、その他の怪談作家
 海外怪談ダンプ
 はじめに―「こわい話・気味のわるい話」第一輯
西欧の幽霊
 西欧の幽霊
 西洋ひゅーどろ三夜噺
私の履歴書

解説 紀田順一郎
Lovely Waters―平井呈一とその時代 東雅夫
平井呈一著訳書一覧
解題
真夜中の檻(amazonリンク)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【追記】
実はこの書評を書いた時、解説部分はまだ未読でした。今日(1月5日)読んでみると、東雅夫氏による解説には、実に驚くべきことが書かれていました!

平井呈一氏が永井荷風の弟子筋に当たるのは知っていましたが、偽書事件で関係がこじれ、それをネタにした荷風の作品によって平井氏が業界から冷や飯を食う形で不遇の時代を過ごされていたとは全く知りませんでした。

ものを知らない私には、まさに衝撃の事実でした。知っている方には大変有名な話なんだそうです。また平井氏のプライベートもそれなりのものがあったようです。あまり詮索するのは下種の勘繰りという奴で品がないのでこれ以上触れませんが、本書の素晴らしさは解説にもありました。是非&是非、解説もお忘れなくお読み下さい。いやあ~改めて読むに値する本だと思いました。

合わせて解説からの購読メモ:
・紀田順一郎「永井荷風 その反抗と復讐」リブロポート
・永井荷風「来訪者」
・平井呈一「怪奇幻想の文学」全4巻 新人物往来社

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「怪奇クラブ」アーサー・マッケン 東京創元社
「妖怪博士ジョン・サイレンス」アルジャノン ブラックウッド 角川書店
ラベル:小説 書評
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2007年12月18日

「蒼いくちづけ」神林長平 早川書房

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神林氏らしい作品だと思う。淡々と描かれる、現実とは異なる異世界。しかし、そこはそこでやっぱり人間という存在が微妙なニュアンスで描かれており、ある意味、より『人間』らしさが濃く出てくるのかもしれない。

神林氏の作品には、舞台は異なれでも常に人の『想い』に焦点が当たっているように感じる。この『想い』によって、世界が構成され、その存在さえも危うくされる・・・そんな印象をいつものように感じた作品です。

ややオブラートに包んだ感があるものの、読んで心に感じるものがある作品です。神林ファンなら、読んでおくべきでしょう。

粗筋は、月世界を舞台にしたテレパスが主人公の舞台。犯人・被害者・捜査官それぞれがテレパスであり、同時に非テレパスもいい感じで絡んできます。

人間の脳が死ねば、霧消してしまうはずの不定形で実体の無い『想い』がある意味、本作品の主人公です。後は読んでからのお楽しみというところで・・・。エピローグが余韻を希望につなげていきます。

蒼いくちづけ(amazonリンク)

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2007年12月11日

「王の眠る丘」牧野修 早川書房

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【書評の前に】
ちょっと手というよりも指が腱鞘炎ぽくなってしまったので、しばらくブログの更新を休むかもしれません。おそらくニコニコ動画のせい? 仕事に影響しても困るので自粛モードに入るかもしれません。更新ペースは落ちると思いますのでいつもご覧頂いている方、気長に見守って下さいませ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちょっと毛色の違うファンタジーです。しっかりしたストーリーに、独自の世界観、キャラクターの立て方などなど、欠点の挙げようもないほど、よく出来ている小説だと思います。

実際、読んでいると明らかに現実界とは異なる異界の出来事でありながら、どっぷりと作中世界に読者を引き込む(溺れさせる)力は、著者の他作品にも見られる特徴であり、魅力でもあります。

読んでいて、面白かったです。でも・・・知らない作家さんなら、誉めて終わるところなのでしょうが、何冊か読ませてもらっている作者の力量からすると、どうなんでしょう?

もっと&もっと、有り得ない世界像を提示して欲しかった!という欲深い願望を感じてしまいます。いつものような極端に淡白な側面とそこに怜悧に突き刺さっていく『ナイフ』の組み合わせではなかったような気がします。最初こそ、毒気を感じたものの、中盤以降はストーリーがあまりにも良い人になってしまい、えっ、えっ・・・となってしまいました。

決してラストが悪いということではないのですが、あまりにも綺麗にまとまり過ぎで、意外な感じがしたのです。まるで良質のファンタジーみたいなんだもん!

悪意の『ネバーランド』ではないようです。

面白いんだけど、私の考える牧野氏らしさとは、ちょっと離れている作品でした。

具体的な粗筋は・・・。
ごみためのような地区に住む人々。そんな彼らの住む所を軍に焼き討ちされ、追われた人々がいた。そのうちの一人の少年が、復讐を目差して競技会に出場する。その競争の完走者には、復讐を目差す相手のいる、警護の厳重な都市へ入る資格を得られるだった。

王の眠る丘(amazonリンク)

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2007年11月11日

「敵は海賊・正義の眼」神林長平 早川書房

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もうずいぶんと久しぶりの海賊シリーズでしたが、やっぱり神林氏の海賊シリーズは文句無く面白い。外れが無いんですよねぇ~。

表面的には、いつも通りのたわいないお馬鹿な会話を交わすアプロ、ラテル、ラジェンドラの愉快なノリが楽しませてくれる一方で、ツザキの『何者にも束縛されず、ただ自分の生きたいように生きる。そして、その障害となるものは徹底的に排除する』というシンプル且つ明確な世界観の描き方には、強い共感と憧れを抱きます。

今回の海賊課の面々は控え目の出番であり、むしろ舞台の設定の一部として溶け込んでいる感(←結構、そういう場合多いですね。このシリーズでは)もありますが、『海賊課 VS 海賊』の対立構図はあたかも世界を構成する陰陽二元論として本作品の中でも強く息づいています。

神林氏の作品に共通のテーマだと思いますが、この『世界』というものの認識や個々人のそれへの関与の仕方、それはやはり本作品でも貫かれています。

小難しいことを考えなくても、読み物として十分に面白いのですが、娯楽として楽しみながらも、ふといろいろなことを考えさせられる作品です。まさにSFの本質を兼ね備えていることは疑い無いところでしょう。

本書の前日に中世思想の本を読んでいたせいか、「天上位階論」とその思想的背景を思い浮かべてしまい、なんか感慨深かったです。

まあ、堅い話はその辺にして。ストーリーは・・・。
今回は、自然保護運動家だった人物が出てきます。主義主張は無いものの、人々を先導する天性の才能を有した人物。彼がツザキに操られ、ある行動に出る事で海賊課は、その根本的な存在意義さえ脅かされる・・・ことに?

「下手の考え休むに似たり」ではないけれど、行動することこそが海賊課を支える不滅の存在意義かもしれません。な~んてことを考えながら、楽しい読書をしました。

【余談】
先日初めて『敵は海賊~』のアニメを見たけど、う~ん・・・原作を一切考慮しなければ、普通のちゃらいアニメなんだけどね。原作を知ってるとちょっとショックかも? 少なくとも原作の設定を活用した別作品として捉えるべきモノでした。

まあ、割り切ってみれば、それはそれなりのアニメなんだけど・・・いやあ~原作の旨みが完全にばっさり割愛されているので、神林ファンの人は要注意! こういうのは難しいものですね、ホント。

敵は海賊・正義の眼(amazonリンク)

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本書はここで購入した著者のサイン入り本
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2007年11月05日

「黒い仏」殊能将之 講談社

kuroihotoke.jpg

黒い聖母の話はいろんな本で読んだが黒い仏は聞いたことがなかったので、まずタイトルに惹かれた。そして冒頭を読むと天台宗のあの円仁と十分に渡り合う以上の学識を備えた僧侶が遣唐使から帰国しようとした際に、持ち込んだという『秘法』。その『秘法』探しが本書のテーマ。かなりそそられません?

当初は正統派的に色々な意味で道具立てに凝っていて、読み易い文章と共にその謎解きの世界に引き込まれていきます。小説としては結構面白いと思います。

但し、本書では肝心の謎解きが全く解決していません。『秘法』の在り処(確認はされていない)やその内容とかは、全部続きへ持ち越してます。(最近、こういうのが多いね。たくさん本を買わせたいのか、一話完結でないのが流行りなのでしょうか?)

本書で一応、探偵らしき活躍(?)もあるのですが、率直に言ってこれは絶対にミステリーではありません。これをミステリーと言ったらミステリーファンに刺されるでしょう!

正直唖然としますが、ミステリーがいつのまにかSFになってしまいます。夢枕獏さん系統ですが、パワーはだいぶ落ちます。サイコダイバーではない、新しいジャンルの開拓を新人さんには期待したいですが、もしかしたら、最悪の結果で終るかもしれませんが、面白い部分は確かにあるのでとりあえず、しばらく読み続けたいと思います。

ミステリーとしては、絶対に駄作でしょうが、エンターテイメントとして期待できる(かも?)作品・・・だといいなあ。途中までは、本当に面白かったんだけどねぇ~。何故、あの引きなのかがどうにも解せん?

さて、きちんと作品として収束するのか発散して駄作になるのか、微妙ですが、期待したいところです。現段階では買ってまで読むべき本とは思えないなあ~。

黒い仏(amazonリンク)
ラベル:書評 小説
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2007年10月24日

「白澤 人工憑霊蠱猫 02」化野燐 講談社

続きで読んでいたのですが、どうにもつまらなくて困惑している。著者の薀蓄部分がウリのようなのだが、それがちっとも面白くないのだ。広辞苑やブリタニカを読んでいた方が率直に言って楽しい♪ 私、暇な時はよく見てるもん!

書かれている内容が上滑りしていて、痛々しくて仕方が無い。前巻同様、ストーリーの展開がボロボロでこんな単純な筋なのに分かり難いし、無駄な部分が多過ぎる。そして二巻目に入っても未だにこの話がよく分からない? 何が言いたいのだろうか?

コンピューターと妖怪という、昔よくあったようなベタなネタは止めといた方が良かったのでは?と思わずにいられない。何か脚色に味付けでもしてあればいいけど、全く面白さを感じられない。

同じノリでもエンターテイメントに徹した菊池秀行氏の作品のはるかに読んでて楽しいんだけどなあ~。読むのがだるいし、面倒になってきて苦痛。

1巻にも増してカオスに堕ちてます(合掌)。最近見た中では、断トツに文章下手ではないかと思います。さすがに3巻は読むのを止めようと思いました。

但し、前回の書評で著者はデータベースのこと分かってないということを私は書きましたが、それは私の誤りでした。2巻でしっかり要求定義とかにも触れられていました。その点は、私の間違った書評ですので、ここで報告しておきます。(誰も気にしてないかもしれませんが、明白な間違いが気付いた点は修正します。お気づきの方は、コメントなどに書いてもらえると幸いです(お辞儀))

白澤 人工憑霊蠱猫 02(amazonリンク)

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「蠱猫―人工憑霊蠱猫 01」化野燐 講談社
ラベル:妖怪 小説 書評
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2007年10月21日

「蠱猫―人工憑霊蠱猫 01」化野燐 講談社

koneko.jpg

怪しげな古書に囲まれた図書館。それに妖怪関係も絡む道具立てに関心を持って読み始めたが、う~ん、かなり不満足。

東西に渡る稀稿本を初めとするオカルト文献の名称がそれらしく書かれているものの、実に薄っぺらで本当に題名を並べるだけで全くストーリーにそれらの書物が生きてこない。

こんなのは虚構でもいいから、いかにリアリティーを出すかが小説家の腕の見せ所だと思うだけど、いろいろな意味でアラが見えて読むのが大変辛い。「鬼神論」がどうとかというくだりも、無理で不自然な会話の流れだし、冗談だと言っても学術的な話題として触れるにしては??? 違和感を感じる。

もったいぶったわりに、ありがちなステレオタイプ且つジュブナイル向きの妖怪話では、読者は失望を隠せない。ストーリー構成もいかがなものだろうか?

余計なことを言うと、妖怪のデータベースのサイトは私も知っているが、あれをネタにしてるのかな? それはそれとして、小説内のデータベースを作ろうとした時の考え方が完全に間違っている。いくら小説でもデータベースの話題なら、要件定義、スキーム定義とか最低限の知識を分かったうえで書かないと苦笑以外の何物でもない。中途半端なパソコン操作と同レベルの記述がイタイ。

何故、素直に稀稿本と妖怪の話だけに絞って、きちんと書かないのだろうか。その方が面白いように思えるのだけど。

私的には、古書・稀稿本絡みの観点でもつまらないし、小説としても面白くなかったです。ただ、続編を図書館で借りてあるんだよなあ~。中途半端のままだから、それ読むべきか悩んでます。

そうそう、「フーコーの振り子」(下)は途中まで読んだけど、やっぱり面白くならないので挫折した。時間は有限だからやむを得ないか。

蠱猫―人工憑霊蠱猫 01(amazonリンク)
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2007年10月01日

「傀儡后」牧野修 早川書房

kugutu.jpg

近未来的なネット世界の描写は、書かれた2002年という時代的制約を加味しても古い。例えば、データを音声化して認識するというアイデア自体が20年以上前のもののような気がしてならない。

既に脳神経に電極を差し込む実験や治療が行われている現代、近未来なら直接データはバイアスの入る感覚器を通さず、神経系に接続されるだろう、どう考えても。著者なら当然知っているであろうに何故わざわざ音声化するのかが疑問だ?

あと色々と思わせぶりに出てくる人物がその場しのぎの使い捨てで有機的に生きてこない。場面場面では、生き生きとしているのだが、それが単発で終わってしまって、大きな意味でストーリー上に貢献している感じがしない。後書きを読むと、本作は連載物だったらしいのだが、そのせいでしょうか? キャラの魅力が全く生きていません。

それほど難しい話ではないのに、ストーリーがとっても理解しずらいのも細切れ感のせいでしょうか? 残念です。

ただ、マイナス面だけではありません。ドラッグ関係が出てくる部分の描写は「マウス」以来の著者の十八番ですが、やっぱり何度読んでも秀逸です。その部分だけを読む為に、本書を買ってもいいかもしれません。

それと・・・。
異様に、微妙に、感情のない登場人物達の特殊な感覚がシュールです。人と争う際のおよそ考えられる人間としての情感の欠如性が、大変印象に残ります。昨今の「ヤンデレ」に通じるような感覚でしょうか? 

長編になっているのが失敗だったような気がします。短編の連作であったなら、読書の感じる印象も全然違ったものになったかもしれません。部分部分は、うまいし、さすがと思うのですが、全編を通した時、これが日本SF大賞受賞作なんだ、と思うと??? と思わざるを得ません。

あちこち複線(だろうと思う)として張られたものが、使われないまま終わってしまった、そういう作品だと思います。部分的には結構好きなんですが、作品としては×かなあ~(悲しい)。 

傀儡后(amazonリンク)

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「月光とアムネジア」牧野修 早川書房
「MOUSE(マウス) 」牧野修 早川書房
「SFバカ本 だるま篇」廣済堂出版
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2007年09月21日

「月光とアムネジア」牧野修 早川書房

gekkouto.jpg

相当昔に読んだ牧野氏の作品「MOUSE」をちょっと前に読み返して、感動を新たにし、是非、その後の作品も読んでみたいなあ~と漠然と思っていた時に見つけた作品です。

「MOUSE」のあの特殊な(露悪的擬似ファンタジー的?)世界観とは全く異質な作風とも一見すると思えるかもしれない。最初、読んでいて外したかなあ~これ?とか私、思いましたもん、実際!

確かにSF的、というか筒井的言語感覚の世界であり、ネーミングなのですよ~。まあ、著者は筒井康隆氏主催の「ネオ・ヌル」出身とのことでさもありなん、とは思うものの、それはほんの一瞬の類似であり、ある種の神林的世界観ともスレ違うものの、やっぱり違う。

最後まで読んでようやく、やっぱり牧野氏の世界であることをじわりじわりと実感する(させられる!)作品だったりします。

そうですね、改めて考えてみると「mouse」の閉鎖空間とは異なるものの、本作品で出てくる人の記憶を3時間毎にリセットしてしまう超常現象「レーテ」として生じる空間内も実は、別な意味で閉じた閉空間だったりします。

その限定された特殊な空間内で心理サスペンス劇のように広げられる、「敵は誰だ?」という探り合い。伝説の殺人者を追いかけながら、それを追う方が一人また一人と殺されていきます。

しかし、普通のサスペンスとは一味も二味も違っていて、SFが持ちうる類まれなる特性としての思考実験的な要素もあって、人間の心理描写が実に興味深い。

いやあ~、こういうのもイイ♪ 私的には大好き! 人間心理の嫌~なダーク面も含めてだけど。

恐らくこの作者の作風なんでしょうけど、常に舞台の背後に人間の心の闇を意識しているので、その辺が苦手な方はお薦めしません。そういうのも含めて、大丈夫な人ならOKかな? 

あくまでも道具立てがSF的設定なだけで、基本は人間心理そのものを描くという作品だと思います。

ざっと粗筋。
理由は不明なまま、超常現象として確認された『レーテ』と呼ばれる空間。そこに入った人間は、3時間毎に記憶をリセットされ、それを何度も繰り返すと人は人格崩壊を起こして廃人となる。

しかし、その空間にいた時間や個人差により、単なる記憶忘却だけで大して被害を受けない者がいる。また、ある者はその特殊な体験により、記憶に関する特殊な能力を身に付ける者もいた。

『レーテ』後も生き残った者を中心にして組織された特殊な組織に組み込まれることになった、元敏腕刑事。彼もレーテで記憶忘却を経験し、何もかも忘れてしまったまま、組織の一員となる。伝説の殺人者を捕まえる為、彼はレーテに突入する任務を受けて遂行しようとするのだが・・・。

結構、暗~くて鬱っぽくなるから要注意! 一応、ある程度のカタルシスはあってストレス発散されるけど、それも重い。そういう点でも一般向きではないなあ~たぶん。

月光とアムネジア(amazonリンク)

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「MOUSE(マウス) 」牧野修 早川書房
ラベル:SF 小説 書評
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「ルナティカン」神林長平 早川書房

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大好きな神林氏の作品なのですが、今回ばかりは期待外れでした。普通のどこにでもあるSFになってしまっています。氏の従来の持ち味である、どこか人間性の奥深いものを透徹している鋭い洞察と虚構なのにリアル以上の実感を伴う独特の世界観が本作品には、全く感じられません。

いつもなら読んでいる作中の虚構空間に囚われてしまい。読後に襲われる現実空間の奇妙な揺らぎが全くないのです。安心して読めてしまう神林氏のSFには興味がありません。私的には、残念としか言いようがない作品でした。

粗筋は、舞台は月に人が生活するようになった時代、その月社会でアンドロイドの開発製造を行う多国籍企業が身寄りのない子供を育てます。赤ちゃんの頃から、アンドロイドのママとパパによって育てられ、実の親と本人さえも慕っているのですが、その全ては、アンドロイドの優秀さの宣伝であり、企業の広報戦略の一環として行われたことでした。

しかし、その身寄りの無い子供は普通の子供ではなく、月社会から外れたアウトローであり、『ルナティカン』と呼ばれ、差別される特殊な集団の子供だったのです。子供を巡り、巨大な力を有する多国籍企業との間で争いが生じます。

まあ、粗筋自体はベタなSFですが、そこからが非凡な神林氏の手腕が冴えるはずだったのですが・・・(悲しい)。

生粋の神林ファンには、ちょっと満足できない水準の作品であるように思いました。お薦めしません。

ルナティカン(amazonリンク)

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「プリズム」神林長平 早川書房
「グッドラック―戦闘妖精・雪風」神林 長平 早川書房
「機械たちの時間」神林 長平 早川書房
「ラーゼフォン」神林 長平 徳間書店
ラベル:SF 書評 小説
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2007年09月08日

「奇談」行川渉、諸星大二郎 角川書店

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原作の漫画をずいぶん昔に読み、大変感銘を受けたことを覚えています。映画になった時は観に行こうと思っていたんだけど、忘れてた・・・しかもまだ見ていない(苦笑)。

映画からノベライズした本みたいだけど、全く期待していなかったのですが、逆に想像以上によく出来ています。

改めて考えたら、これってあの「イエスの墓」の戸来村がモデルなんでしょうね。そうか、そうか、納得!

つーか、この本を読むまで気付いていなかったのはマジ!? 薄々は感じていたのものの全然まとめに考えてなかったから、全て作り物だと思ってましたもん。

でも、やはり面白いし、この手の話は大好き! これは読む価値ありかもしれない。個人的には何はなくとも諸星氏の原作漫画「生命の木」を第一にお薦めですが、この本もそこそこ楽しいです♪

民俗学とかって、こういう視点で捉えると実に興味深いんですよねぇ~。

粗筋は、東北の辺境の地にある、隠れキリシタンの村、ここが舞台。この村には『はなれ』と呼ばれる集落があり、隠れキリシタン達が弾圧を逃れてここに訪れるはるか以前から住みついている人々だった。『はなれ』と村の人々は、極力接触を避けて暮らしていた。

この『はなれ』では、数十年に一度、神隠しにあう者が出た。今回、この地に誘われるように訪れたのは、その神隠しからの生還者であった女性と、学界から異端視される民俗学者だった。

ホント、諸星氏の作品っていいんですよねぇ~。家のどっかのダンボールにしまってあるこの原作もまた読みたくなってしまいました。あと、映画借りてきて観てみようっと!

なんとも不可思議でいて、妙に説得力のあるこの世界観がたまらない魅力ですのでそれが好きなら、この本も読んでいいと思いました。

奇談(amazonリンク)
妖怪ハンター 地の巻(amazonリンク)「生命の木」収録

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日本のイエスの足跡(BBCのイエスの墓の記事による)
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2007年07月22日

「書物狩人」赤城毅 講談社

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実は、最初かなりなめて読んでいました。本書は全部で4篇の独立した短編から成り、特に最初の話は、あまりにもベタ過ぎるネタで使い古されているものをちょっと別視点で採り上げているだけであったりしたので、もう読むのやめようと思ったりしました。

私的には、「ナインズゲート」のコルソみたいな玄人向きの稀稿本ハンターをイメージしていたので、正直もったいぶっただけで、あまり知性を感じない主人公とストーリーは期待外れだったのです。

でも、残りの三篇を読むと、いわゆる本当の古書好きにはどうかと思いますが、目先の変わったエンターテイメントとしては、そこそこいけるような気がしました。何しろ、短編なのでストーリーのテンポとノリがいいんです。

そこそこの歴史的記述と最後にちょっとした意外性を持ってきて、軽~く楽しんで読める小説となっていると思います。読後感も最初の一編ほど悪くないですし、それなりに面白かったです。

ただ、小説としての嘘であっても、いかにもありえそうな信憑性を伴った説得力のある嘘にはなっていません。その意味で、架空の内容なのに妙に現実感がある、そういった小説にはなっていません。

最初から最後まで、御都合主義の娯楽小説として捉えれば、結構楽しめると思います。ただ、もう一歩踏み込んで書かれている内容を見ると、う~ん、上っ面な点は否めないでしょう。

ネタ的に知的好奇心をそそるものはありませんでした。でもね、その代わり、小説らしい大胆なネタもあり、おおっそういうことアリ?とか思う痛快さを味わえます。

真剣にならず、あくまでもかる~く読むならOKだと思います。本当に虚虚実実の古書を巡る駆け引きとかを想像するとチャラくて悲しくなりますが、それさえ期待しなければ楽しいです。(ヒトラー日記などの単語にピンとくる方は、読まない方が無難です)

あちこちの紹介にもありますが、一冊の書物が一国を、一つの世界をも滅ぼしかねない影響力を有し、それを巡る書物狩人の活躍を描く小説となります。
【目次】
教科書に準拠して
神々は争う
Nの悲喜劇
実用的な古書
書物狩人(amazonリンク)

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「謎の蔵書票」ロス キング 早川書房
「呪のデュマ倶楽部」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
ナインズ・ゲート デラックス版(1999年)ジョニー・デップ主演
ラベル:書評 小説 古書
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2007年07月05日

「MOUSE(マウス) 」牧野修 早川書房

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最初に読んでから10年以上経つが、いっこうに古びないし、未だに新鮮で鋭利な衝動を覚えさせずにいられない本です。ドラッグを扱った小説でありながら、欧米でいうようなドラッグ文学ではなく、むしろ出版社から想像がつくようにSF的世界観といえると思う。

ある種のファンタジー系でさえあるかもしれない。それとも、いささか皮肉なユートピアであろうか? どちらにしても日本でドラッグを扱いながら、かくも強い衝撃と断トツの位置を占めている本もないだろう。

ただ、勘違いしないで欲しいのですが、決してジャンキー向けの本ではありません。著者の醒めた描写に垣間見える狂気と情熱の共同幻想がたまらなくも魅力的に映ってしまう物語世界なのです。

ドラッグを契機に、他者と自己の危うい境界がたやすく揺るぎ始め、肥大化する自己増殖と他者及び場への相互干渉による、共同幻想的世界観がなんとも魅力的に映ってなりません。この手の言葉使いでピンときた方! そうです、その世界なのですよ。

本質的な意味でSF好きな方、思考実験の好きな方、きっと楽しめます。独特の仮想世界がかなりキテます! 私は大好きですが、一般人向けはしないでしょうね。薬中の方も、楽しめないでしょう。でも、特定の方に強くお薦めする本ですね。

先日読んだ「責苦の庭」にも通じるものあり、神林氏の「七胴落し」とかにも近しい感性を感じます。どっちもかなり特殊ですけどねぇ~(苦笑)。

本文中の表現から
ここは十八歳以上の大人の立ち入れない異形の子供たちの楽園、ネバーランド。
・・・
いつからか、廃墟となったこの土地に子供たちが集まってきた。彼らの大半は数十種類の薬物が入った箱を身に着け、カクテル・ボードと呼ばれるコントローラーでブレンドして直接体内に送り込む、新種のジャンキーたちだった。
彼らは自らを【マウス】と呼ぶ。新しく開発された薬を、次から次へと己の躰で試すからだ。
MOUSE(マウス)(amazonリンク)

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「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
「媚薬」エーベリング (著), レッチュ (著) 第三書館
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2007年06月06日

「鬼仙」南條竹則 中央公論新社

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芥川龍之介の王朝物みたいなタイプの小説です。本書では、中国の古典的な志怪小説に範をとり、独特の怪しげな・・・それでいてどこか憎めない人間くさい物の怪が出てくる怪談になっています。

出てくるのは、お役所に住み付いている「鬼仙」と呼ばれる女性の怪異。普段は悪さなどしないものの、人間がちょっかいを出すと、手酷いしっぺ返しをしてきたりする。それでいて、人間に対して優しく見守ってくれる土地神(産土神:うぶすながみ)のような面もあり、どうにも憎めない。

その鬼仙にまつわるお話を中心に幾つかの志怪小説が載っています。

夜中の就寝前に、一編づつ読んでいくと楽しいかもしれません。「聊斎志異」には及びませんが、後味も良い楽しめる怪談です。お好きな方はどうぞ。

鬼仙(amazonリンク)

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「本朝聊斎志異」小林 恭二 集英社
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2007年05月14日

「澁澤龍彦」河出書房新社

澁澤さんの死後、澁澤さんを偲んでゆかりのあった人々による追悼集の類(たぐい)。澁澤さんが亡くなった時に、幾つかこの手のものが出ているのは知っていたが、極力ダンディズムを渇望し、自らもそれたらんとしていた故人だったら、きっと嫌がったのではないかと思う。

実際、どうかは知らないが、私の内部ではそういう思いが強く、今まで極力この手のものは避けてきた。ただ、先日、澁澤さんが没後20年という展覧会を見て、自らの呪縛を解いて読んでみた。

作品からだけでは、知らなかった澁澤さんの姿がいくつも現れる。勿論、周囲の人による思いは、故人とその人との関係により、見方も評価も異なるのを前提としても、やっぱり驚きが大きかった。

と、同時に読むべきではなかったかなあ~という気がしないでもない。あくまでも一読者でしかない私だが、少なくともリアルタイムに氏が書かれていたものを読んでいた以上、作品以上のものを不要であったと思う。

確かに人物としての澁澤さんにも関心がないといえば、嘘になるが、やっぱり著者自身以外の文章から著者を推し量るのは美学に反する。端的に言えば、下世話で美しくない。

例えばチェークスピアの生涯に関心を持つのは、同時代人ではなく、後世の人々であるのと同様に、同時代人である氏を同じような観点から捉えるには、抵抗を覚える。『過去の人物』としての見方はしたくない!

そういう私には、読むべきではない本でした。人生に後悔などする愚か者ではない私としては、悔やむことはありませんし、知らなかったことを知れたという喜びもあります。でも、知らなかったことによる、勝手な自己満足の一部が確実に失われたのも事実でしょう。

それぞれの人の思い入れにもよるでしょうし、考え方にもよるでしょうが、私と近い考え方の人は、絶対に読むべきではないと思います。少なくとも同時代人ならば、読まない方がいいと私なら信じます。

なお、多彩な人物によるコメントは興味深いのも事実だと付け加えておきます。貴方次第ですが・・・。

参考までに多彩な人物の一部:
 巌谷國士、種村季弘、出口裕弘、埴輪雄高、石川淳、三島由紀夫、稲垣足穂、良行淳之介、四谷シモン、養老孟司、野中ユリ、唐十郎、寺山修司、中野美代子等々。
【目次】
Ⅰ家
  高輸に生まれる
  深谷のブッデンブローク家
  滝野川の少年時代
  鎌倉小町
  最後の家

Ⅱ讃
  澁澤龍彦讃
  花の魔術師
  澁澤龍彦氏のこと
  読書界を裏返した男
  昭和二十三年の澁澤龍彦
  夢の宇宙誌
  闇の中の電流
  銀鮫

Ⅲ論
  amour figurae
  月の王の末裔
  『洞窟の偶像』『東西不思議物語』
  『裸婦の中の裸婦』『澁澤龍彦考』書評
  異端の日本学の系譜
  上機嫌の思想
  よく似た男
  神と玩具
  球体のものがたり
  ランティエの余裕と孤独
  薬草園とサド

Ⅳ回想
  後ろ姿の澁澤龍彦
  サロン、庭園、書斎
  『裸婦の中の裸婦』あとがき
  一字の師、大度の友
  天使となった澁澤さんに
  オブジェと化した肉体
  むかし、むかし
  日時計の影のもとに
  「青春の日々」のこと
  澁澤龍彦メモリー
  澁澤龍彦のこと

Ⅴ旅
  中近東日記
  泥の王宮
  『滞欧日記』の真相

Ⅵ作品
  サディストの文学
  幸福より、快楽を

Ⅶ全集
澁澤龍彦(amazonリンク)

関連ブログ
企画展「澁澤龍彦 カマクラノ日々」鎌倉文学館
「澁澤龍彦ー幻想美術館ー」展、埼玉県立近代美術館
「黒魔術の手帖」澁澤 龍彦 河出書房新社
「神聖受胎」澁澤龍彦 現代思潮社
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
澁澤龍彦氏の書斎を紹介するサイト
ラベル:書評 澁澤龍彦
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2007年04月16日

「少年サロメ」野阿梓 講談社

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いとも耽美なる虚構世界を描き切る野阿梓氏の小説です。各短編は独立していて本書はそれをまとめた短編集みたいになっています。

いつもと比べると・・・今回はちょっと物足りない。あの非情で卑劣で卑怯な故に、耽美の極みとしか言えないような革命家もおらず、美し過ぎて毒のある美少年の切れもイマイチ。

ただ、タイトルにもなっている「少年サロメ」はそこそこいい感じ。設定はSFながらも、その実、まんま聖書に出てくるサロメの世界。ヨナカーンとサロメの関係も素敵に耽美に描かれていて、こういうのスキ! 著者お得意の陰謀なども盛りだくさん。まあ、著者のファンが惰性で買ってしまう本かな? ノーマルな方にお薦めしてまで読む本ではないなあ~。きっと。
【目次】
覇王の樹
砂路
孤悲
王国の真昼
少年サロメ
少年サロメ(amazonリンク)

関連ブログ
「ソドムの林檎」 野阿梓 著 早川書房
ラベル:書評 小説 耽美 SF
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2007年03月30日

「四月は霧の00(ラブラブ)密室」霧舎巧 講談社

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西尾維新氏の作品を読んで、ライトノベルに対する偏見が崩れたので他の作品もまずは読んでみようかとトライしたもの。で、結果は見事に玉砕。

なんて申しましょうか、ライトノベルという響きに私が当初イメージしていたまんまの作品。ラブコメ学園物ミステリーもどきってところでしょうか。

謎解きは、まあどうでもいいとして(ミステリーファンからは殺されかねないことをサラっと言って逃げる・・・私)、一応ミステリーの体裁はとっていると思います。でも、キャラが弱い。つ~か、私のリアルな知り合いの方がもっとキャラたってるし・・・。文章も普通、あまりにも普通でつまんない。

わざわざ現実逃避にこの本読まなくてもいい、つ~か必要なし。私的には、この本読むべき価値はゼロでした。時間の無駄かな?まあ、所要時間一時間以内だったから、たまにはこういう無駄も含めて試してみることは必要だけどね。しかし、つまらないこと甚だしかった。どんな本でもいいのだが、面白くないのは罪だろう。

四月は霧の00(ラブラブ)密室―私立霧舎学園ミステリ白書(amazonリンク)
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2007年03月20日

「陰陽師 鬼一法眼〈弐之巻〉」藤木稟 光文社

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微妙? 一巻目から読んでいるのですが、前半はつまらなくてこのシリーズを読み続けるのはやめようかと思いました。せっかくだから二巻目を読破だけしておこうかと読み進めていくと、中盤以降の後半になるとちょっと面白くなってきます。

京都の鴨川や上賀茂神社、貴船神社に関する呪的解説など、実にうまいなあ~と感心するものがあります。まあ、貴船とかは何度か行っているし、個人的に歴史を調べたこともあるのでいささか眉唾の説明だなとは思いつつも、さすがは小説家、語りは上手で引き込まれます。

有名な崇徳上皇絡みの怨霊話は、今時なら誰でも知っている定番になりつつありますが、基本に忠実だから、ヨシとすべきでしょう?ただ、個人的な願望だと有力御家人の比企氏の話をもっと入れて欲しいところですが・・・。(私のとこの地元が地名に『比企』を関するうえに、畠山重忠関係のものなんか、すぐ近くにあったりする。

知名度がないから、知られてませんが、鎌倉との関係は非常に密接で面白いネタたくさんあるんだけどね。知っている人が調べれば、すぐ分かるけど・・・。一般の人には知られてないからなあ~。木曾の義仲、すぐ近くにいたそうだしね。

話がそれましたが、本書の場合は力入れずに惰性で読み飛ばす感じなら良いかも? あえて読むほどの小説ではないし、歴史好きには物足りないぐらいですが、時々、少し面白いところがあります。

私も今後読むべきかは悩んでいたりする。いささか時間の無駄かもしれない・・・???

陰陽師 鬼一法眼〈弐之巻〉(amazonリンク)(amazonリンク)

関連ブログ
「陰陽師鬼一法眼〈壱之巻〉」藤木 稟 光文社
「ハーメルンに哭く笛」藤木 稟 徳間書店
「黄泉津比良坂、暗夜行路」藤木稟 徳間書店
「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店
「陀吉尼の紡ぐ糸」藤木 稟 徳間書店
「夢魔の棲まう処」藤木 稟 徳間書店
「大年神が彷徨う島 」藤木 稟 徳間書店
ラベル:小説 書評 陰陽師
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2007年03月18日

「インストール」綿矢 りさ 河出書房新社

良く知りませんが、なんとかという賞を取った作品です。映画にもなっていたと思います。書店で平積みされている時にパラパラと頁をめくりましたが、その際には読むに値しないと思って二度と手にしたことがありませんでした。

今日、図書館で他の本と間違えて手にとってしまったついでに、30分ほどで読んでみました。

まあ、ある意味ここまでくると絶句しますね。これ読むなら、ゴーストライターの書いたタレント本を読んだほうが面白いと思う。これを本として出版した出版社さんと編集者さんに賞をあげるべきではないかな? 逆説的な意味ですけどね、勿論。

つまらないし、若者らしいどこまでも澄み切った透明感や鋭利で傷つき易い、キラリと光るガラスのような感性のカケラもない。この小説の価値ってどこにあるのか、私には理解できません。単純に稚拙、幼稚としか感じられないんですけど・・・。これ読むなら、桜井亜美とかでも読めって! 三島由紀夫の「花ざかりの森」を見習えって!

せっかく年齢が若くてもさあ~、小学生が書いた作品なら評価するけど・・・。高校生でももっと素敵な文章を書くしなあ~。

しかも内容が陳腐過ぎて耐えられない。私は一切、嘘の無いメールだけで半年とか一年間ぐらいメル友から、女性だと勘違いされていたことあったけど、ここに出てくるようなアホは知らないぞ~。ただ、何故か英語やチェコ語やイタリア語など語学が堪能な人か、美大関係者が多かったけど・・・不思議だ?

私の知り合いの方達の方がよっぽど変わってる人だと思う。私はごく普通の人でしかないが・・・。

高校生のゆる~い日常を描くにしても、甘ちゃん過ぎてるうえに視点がずれててセンスを感じない、こういうのは大嫌い! もっといろいろあるでしょうに、コミケ行くとか、合コン行くとか、マクドでバイトして人生を軽~く浪費してみるとかさあ。もっと危険で怪しげなバイトするとかさあ~(冗談です)。

ああ、本そのものに引きずられて感想がグダグダになっている。すみません、私のまでいつも以上に駄文になってしまって。こんなの読むなら、漫画読みましょう。漫画喫茶で、はるかに水準の高い読み応えのある作品がたくさんあります。誰かさんのブログの記事みたいな内容を本で読む必要はないかと思うんですけどね・・・。わざわざお金払ってまで。

私の感性からは、強い拒絶反応を覚える作品でした。でもね、きっと10年後、20年後には誰も覚えていない忘れ去られた作品だと思うんだけどなあ~。私の感性が異常なのか、時代についていっていないのかは、やがて分かることでしょう(笑)。

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ラベル:小説 書評
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2007年03月14日

「陰陽師鬼一法眼〈壱之巻〉」藤木 稟 光文社

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朱雀シリーズで有名な藤木稟氏の歴史小説です。舞台は鎌倉時代。たくさんの政敵を初め、自らの弟、源義経までも抹殺して獲得した武家政権ですが、その鎌倉幕府を揺るがす怨霊や魔性の者の魍魎跋扈。それと対決し、国家鎮護を図る陰陽師の鬼一法眼。

図式はオーソドックスですし、いわゆる巷で氾濫する陰陽師物と大して違いはないようです。決してつまらなくはないのですが、せいぜい平均水準をクリアした面白さでしょうか? シリーズ物はたいてい最初の巻で、ぐぐっと読者を引き込むように思いますが、本書にそこまでのパワーはありません。

いつもの藤木氏を期待すると、期待外れかもしれませんが、普通に読む分には悪くないかも。ちなみに第一巻である本書では、まだまだ序の口のようでこれからやって何か起こるのかなあ~? そういった段階です。さて、これから面白くなるのかな???

陰陽師鬼一法眼〈壱之巻〉(amazonリンク)

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「鬼」高橋 克彦 角川春樹事務所
ラベル:陰陽師 小説 書評
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2007年03月06日

「殺人百科」佐木 隆三 文藝春秋

いつ、どこで買ったのか不明ですが、部屋の片隅から出てきたのでとりあえず、読んでみた本。

殺人に関する犯罪の事例をただ&ただ、採り上げたもの。どうせなら判例に出てくる事実や経緯だけにして欲しかった。著者の余計なコメントには、いささかいらつきと不快を覚える。無意味だし、不要。また、何を基準にして事件を選択しているのかも不明? 

確かに犯罪というものについては、多かれ少なかれ俗な関心を持つがかなり期待外れで面白くない。

ちょっと、専門的な感じで普通の人からは手が出しにくいかもしれもないが、「判例タイムス」や「法律時報」の方がはるかに面白い!!

更に暇なら、刑事事件の裁判を傍聴してみましょう♪ モノにもよりますが、最高に興味深いです(不謹慎な発言ですみません)。人間心理のリアルな側面が垣間見えます。もうだいぶ行ってないけど、私もまた見に行ってもいいなあ~。

とにかく、子供騙しの犯罪事案紹介です。それでも醜悪なことな醜悪で反吐が出ますが、中途半端で消化不良になりそうです。

こんなもんより、やっぱり生の裁判に勝るものはありません。悪は滅びて正義が勝つ世界を期待したいものですね、ハイ!

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ラベル:書評 殺人
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2007年03月05日

「悪魔のラビリンス」二階堂 黎人 講談社

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何冊か著者の作品を読んでいますが、その中では一番面白くなかったような気がします。典型的な探偵と悪魔的犯罪者との対決を描いた短編集。ここで使われるトリックもいかにも正統派ミステリーの伝統を受け継ぐべくしっかりはしているのですが、ミステリー好きではなく、単なる小説好きの私としては、そんなことはどうでも良かったりします。

端的に言うと、トリックなんて極論すると無くっても良くて、読み物としてどれだけ楽しませてくれるかを求める読者なのでそういう観点から言うと、全然面白くない。トリック自体も、今時そんなこと説明されてもねぇ・・・。実際、私は個々の細かいことなんて読み飛ばしてます。論理的な緻密さが好きなら、ミステリーより数学や各種の学術理論でも読んでいた方が面白いと思う。

何故、わざわざ小説なのか?そこんとこをもう一度考えて欲しいような気がします。ミステリーの方法論にこだわる余り、著者の独り善がりになりつつあるように感じます。

もっとも西尾氏の小説を読んでから、『時代の感性』を強く意識してしまうようになってしまい、私自身がその反作用であまりにも伝統に忠実な本書のような小説にいささか懐疑的になっているのかもしれません。

でも、小説の醍醐味である、洋館とか出てきてもステレオタイプ以外の何物でもなく、背景的な要素の描き込みも薄っぺらでどうにもやり切れない。短編故の瞬間を切り取るような鋭さもない。

う~ん、好きな作家さんだけになんとも悲しい読後感でした。別な作品の方がはるかにいいなあ~。

粗筋を書くと、すぐネタばれしそうなんで今回は触れません。

悪魔のラビリンス(amazonリンク)

関連ブログ
「聖アウスラ修道院の惨劇」二階堂黎人 講談社ノベルス
ラベル:書評 ミステリー
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2007年02月18日

「第三閲覧室」紀田 順一郎 新潮社

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手元に積んでた本があらかた読み終わったので、部屋の中を少しだけ探してみたら、発見された未読の本達!

その中でも先日古書市でも見かけ、ふと思い出した本書のタイトルをたまたま今回部屋で再発見したのでついにようやく読むことになりました(笑)。

古書に関する愛情と博識さで、面白く勉強になる小説をよく書かれている紀田氏の本ですが、本書についての感想は、残念ながら月並みかな?としか言えないような気がします。

というか、(確かに私には知らないことばかりなのですが)古書に関する知的好奇心を満足させるほどのものではなく、説明を聞いてもああ、そうなの?っていうぐらいで、古書関連というプレミア無しに、単なる小説という観点でしか評価できない小説だと思います。逆に小説として読んだ限りでは、あまり面白いと思えません。探偵役が今回は不在ですし、創業者(企業だけではなく、どんな分野にも当てはまりますが)にありがちな会社資産の私的流用とか背景的なものもつまらないです。

もっともそうでもしないと今の日本で稀稿本に自由にお金を使える存在が設定できず、小説が成り立たないのかもしれませんが、大学の創始者で学校の図書費用をインキュナブラや稀稿本に使うというのも、格別インパクトがあるわけでもなく、その設定自体が今回のストーリーで効果的な役割をしているのでもないので、つまらなかったりします。

ざっと粗筋を書くと。
学長の肝いりで、なかば職権乱用の呈をしながら、存在する大学の
第三閲覧室。稀稿本の宝庫でありながら、誰にも利用できない、利用させない場所であるが、その場所で一人の女性職員が事故死をする。しかし、その死には不審なところがあり、事故死か他殺かを巡る争いが・・・。そして、その死の背後で何かしらの関連を伺わせる世界に一冊しかないという幻の詩集の存在。事件の謎を解いていく過程で暴かれる詩集の秘密とは?

う~ん、もうちょいと何か謎かけというかミステリーが欲しかった。登場してくる古書店もその存在意義があまり無かったし、つ~か今回に限り、実質不要。

まあ、今まで読まないでいた私の勘は正解だったようです。

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関連ブログ
「古書街を歩く」紀田 順一郎  新潮社
「われ巷にて殺されん」紀田順一郎 双葉社
ラベル:古書 小説 書評
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2007年02月15日

「貧困旅行記」つげ 義春 新潮社

著者は一部で有名な漫画家であるが、私の好みではないので読んだことがない。また、タイトルで使われる「貧困」というのもエセっぽくて拒否反応があり、普段だったら読まない本なのだが、最初の数ページを読んでていて妙にしっくりきてしまい、読むことにした。

とにかく先週一週間と同じ仕事を来週もするのか、再来週もするのか? そう思っただけでたまらなくなり、ふっと旅に出てしまう。そんな突発的且つ短絡的行動で旅に出てしまう著者の姿が、妙に人間らしく共感を覚えます。

できるだけ、マイナーな鄙びて過疎地になったようなボロ宿に好んで泊まる著者の屈折した心情が、淡々として記述によく表現されています。

商人宿や安宿に泊まるのは、著者の純粋な好みの問題ですが、いささか枯淡というか人生に枯れ切った物事の捉えようが、微妙にいい感じです。周囲のモノに対しても、ヒトに対しても、適当に距離を置き、いつも人と接することなく、できるだけ仕事もせずに、社会の片隅に目立たずに生きていたい。その為に、離婚したばかりで自分の作品のファンという女性と会ってもいないのに結婚したら、どうだろうかと夢想し、わざわざ旅に出て会うところなど冷静に考えるとキチガイ沙汰なのだが、こういう人がリアルにいそうだし、読んでると存在を肯定しちゃう気持ちになってしまうのが不思議。

場末の町で人生に疲れた男女が出会い、一時的に互いに傷を舐め合い、やがて離れていく。まさに、社会の底辺そのものなののように見えるのだが、脱力的な生き方はあるがままでもあり、社会にはしばしばこういうことがあったりする。実に自然であるのでそれがまた本書の味わいになっている。

全体を通して、私には著者の旅の考え方に共感する部分がいくつかある。賑やかな観光地よりは、静かな一軒宿や一人旅を愛し、うらぶれた中での人の生活への慈しみ的な部分はまさに思いを同じくするが、同時に著者には違和感を覚えることも多い。

一泊一万円を超えるとこに泊まって貧困旅行とはさて如何に? まして、車で移動しているのには、違和感以外のなにものでもない。公共交通機関(鉄道、バス)か、死ぬほど歩けと言いたい。

更に言うと、自腹でなく領収書の認められる(=出版社持ち)旅行は『旅』ではない、それは出張であってそんなもので大層な旅行記を書かれては、嫌悪感さえ覚える。

行き当たりばったりの旅をしていて宿が見つからないので綺麗でないところや安宿に泊まるというのは、分かるがあえて汚くてボロイところに泊まりたいというのは、私には気持ちが分からない。

私も奈良や東北で商人宿や宿坊など、いくつか泊まったことがあるが、可能な限り綺麗なところか、古くても歴史のある建物(旧陣屋旅籠)などに泊まりたいと思う。勿論、安くね。

鄙びて寂れた、うら悲しさには確かにそそられるのだが、清潔でないところはパスしたい。著者は更に静かでいいからと鉱泉の宿を温泉よりも好んでいるが、選べるならば私はしっかりと効能のある温泉を絶対に選ぶ! 

とまあ、ずいぶんと違いもあるのだけれど、それでも本書には一人旅を愛好する人なら、たぶんに共感できる要素があると思う。私の場合であるが、今でも時間に余裕がある時やなんかどうしょうもなくなると、ふとやってしまうのが、手ぬぐい3枚(温泉用)と下着と靴下の替えに、現金とクレジットカードを手にふらっと来た電車を乗り継いでいくことがある。

乗り込んだ電車の終点(基本はターミナル駅)まで行き、そこから接続していて乗ったことのない電車に乗る。缶ビールは駅の売店で冷えたものを購入し、同時にワインはペットボトルに移したものを
ちびちび飲みながら、文庫本を読みふける。気が向いたらキオスクで時刻表を買ってどこまで行けるかを調べてみるのも面白い。

但し、どこかに行こうとして調べるのではなく、乗った電車がどこに行くのかを調べる為に。田舎に行くほど、電車の接続は悪くなる。接続待ちで一時間や二時間近くというのがあるので、そうしたら、駅から出て町を歩くのもいい。食堂があれば、食事をしてもいいしね。この点、18切符などは非常に都合がいい。もっとも地方であれば、駅員さんに話せば、そのまま外に出してくれることもままある。

都内と違い、無賃乗車や悪質な客でもないのである程度は融通を利かせてくれるものだ。相手に迷惑をかけないようにしている限り、人はそこそこ親切なものである。これはどこの国に行っても通用する(場合が多い)。笑顔と挨拶さえ、できれば世の中は渡っていけるものだ。

温泉地なら、その間に共同浴場か立ち寄り湯でさっと一風呂浴びてくるのもイイ。ちょうど電車も来る時間だし、湯上りに暖かい車内で揺られながらほろ酔い加減のお酒もまた楽しい♪ 勿論、飲み過ぎないようにしないと周りに迷惑ではあるが・・・。

その点、著者は下戸なのかな? 本書ではお酒に関する記述はない。私なら酒を少しづつ飲みながら、旅の日誌を書くのもまた楽しい♪ いろいろなことが頭に浮かび、思ったこと感じたことを車内で書き留めるのはなんとも言えず、素敵だ。

宿に泊まり、夜、TVも見ずに明日どこに行こうかな?っと思いつつ、ふと思いついたこと、今日の出来事をノートに書くのは一人旅の特権だと思う。人と行くのは楽しい時は、確かに楽しいのだが、自分と向き合うこういう時間が取れないのが残念だ。

人は環境が変わると、思考も思いも変わっていく。著者がする旅の中で何が変わったのかは分からないが、著者も自分と向き合って内省的に物思いに沈むようだ。もっとも、著者自身、神経衰弱で精神的に病んでいるそうでその傾向は一層強い。

世の中をアグレッシブに生きていくタイプの人には、本書は不向きであり、逆に軟弱で駄目人間と叱咤されかねない内容の本だが、弱くて自分は駄目かもしれないという人は救いになるかもしれない?

そこまでいかなくても、ひっそりとそして淡々と生きていくだけで満足できる人が読んでもいいかもしれない。私はそこまではいかないが、好意的に言えば、癒されるような部分を感じたりもしました。昔読んだ、井伏鱒二の小説に出てくる(タイトルを忘れた)宿の話と何故か類似性を感じました。あの小説に出てくる旅人もなんか、著者に近いんだよねぇ~。

読んでも何の訳にも立たないけど、ある人々には癒しになる内容です。もう駄目駄目人間であるのを肯定しちゃいます?(苦笑)

ちなみに、本書内で著者が訪れたいくつかの土地は私も旅行で行っており、宿泊したこともあるが著者とは全く違い感興を抱いた覚えがある。しょせん、同じところであっても人によって受け取り方は違うということだけ当然だが、書いておく。

河口湖で一週間何もせず、酒ばかり飲んで雪の降る別荘用マンションに閉じ込められていたり、奥多摩の民家の離れに同じく一週間篭っていたり、人生はあっという間に浪費されてしまうものであることを記憶に留めておこう(独り言)。


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ラベル:書評 旅行記
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2007年01月25日

「上海幻夜 七色の万華鏡篇」藤木 稟 徳間書店

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盲目且つ秀麗な美貌を併せ持つ冷笑家の探偵役で人気の朱雀シリーズから出てきた番外編。朱雀が5歳の頃の上海を舞台にしている。(本書は既に推理小説ではなくなっていることに注意!)

もっとも私個人は朱雀自身にはさほど興味がなく、本書も朱雀シリーズの番外編と言いつつ、朱雀は決してメインとは言えない。むしろ番外編ということで、朱雀以外の登場人物を実に生き生きと描いている。

国際的な政治都市であり、列強各国や各種諜報機関、現地勢力の陰謀のるつぼたるこの都市で、次々に進行していく各種の謀略など実に、舞台立てが魅力的である。

しかも何でもありのこの時代、この都市を踏まえて著者がかなり趣味に走って書いているようにしか思われない内容がなんとも楽しい♪

纏足やら宦官の話など、非人道的と非難されるような内容を著者は嬉々として描いています。私の持っている資料系の本にもその辺りの詳しい話は載っていて以前から知っていただけに、より一層そそられてしまいます。阿片窟の話とかも何故か好きなんだよねぇ~。廃人ってなんかそそります。阿片による廃人っていうと、私はすぐにオスマン・トルコとかの王位継承者を部屋に閉じ込めて、阿片付けにして美女をあてがい飼い殺しにした史実などをどうしてもイメージしてしまったりする。

もっとも本書では、それとは全然違った描き方をしていますが、この手の分野を凄まじい筆力で生き生きと描かれています。本当に著者って怪しい精神構造をしていらっしゃる?!

ただ、著者はいろいろとお疲れのようで実際にいささか精神のバランスを崩されてしまったようです。早く元気になって、今後の作品にも期待したいですね。一ファンとしては。

個人的には、満鉄や軍部、特務機関に匪賊や馬賊、清王朝の奸臣などの活躍も期待しております。特急あじあ号に乗りた~い!(本に出てくるか不明ですが)。

当時の日本郵船の世界旅行パンフなど、個人的には『萌え』だったりします。
そういうのを見るたびに当時の中国に独特の憧れを抱いてきた私としては、本書はかなり面白いです。それはそうと・・・、今年は中国の凄さを実感しに行くべきだろうか???う~む、いつでも行けるだが・・・。
 
上海幻夜 七色の万華鏡篇―朱雀十五シリーズ(amazonリンク)

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ラベル:小説 書評
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「夢魔の棲まう処」藤木 稟 徳間書店

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一応、推理小説なんですが、既に謎解きは二次的な要素となり、探偵役の朱雀十五の活躍もさりげなく物語の解説役に出てくる程度です。

本作に至っては、江戸川乱歩や横溝正史の正当後継者と言ってよいのではないでしょうか? 藤木氏以外でいまどきこの手のタイプのおどろおどろしさを違和感無く描き切り、それでいて陳腐にならないまま、澱んだ怨念がまとわりつくような作品はないように思います。

日蓮宗の一派と自称して「死のう、死のう」と唱えつつ、集団自殺を行う怪しい宗教団体に、死んだはずの者達への思いに囚われてそれに引きずられてしまう人達。街中から浮浪少年が1人、また1人と消え、巷で囁かれる人肉ソーソジの噂などなど。

混沌としてなんとも危うげな世界観に、悲しいまでの人の心が描かれていて何故か惹き付けられてしまいます。推理小説としては、正直大した評価はされないかもしれませんが、普通の小説としては私こういうの好きなんですよ~。

浅草の衛生博覧会やサーカス、カフェタイガーってもうお好きな方にはそれらの名詞の羅列だけでそそるものがあります。私自身が怪しいものや珍奇なものが大好きで、サブカル系に妙なシンパシーを抱いてしまうタイプなんでどっぷり小説の世界に浸かっている感じです。

そういうノリを楽しめる方、固有名詞でその映像が頭に浮かぶ貴方(貴女)、お薦めです! いわゆる推理小説好きには、受けないだろうなあ~。

舞台には当然の如く、浅草なども出てきます。私も浅草には頻繁に出没しますが、神谷バーで飲んでいてもヤクザや芸人の方と知り合いになったくらいでとりたてて怪奇な事件に遭遇したことがありません。幸せなのか、不幸せなのか? まあ、実際に遭遇したら、洒落になりませんけどね。どうしても一寸法師とかが出てきそうな予感がして浅草に足を向けてしまいます・・・(苦笑)。

夢魔の棲まう処 朱雀十五シリーズ(amazonリンク)

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ラベル:書評 推理小説
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2007年01月24日

「パプリカ」筒井 康隆 中央公論社

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映画を見る前に購入し、映画を見た後に読みました。

映画は映画でそこそこ良かったですが、やはり小説には映画とは全く異なる魅力があります。設定は共通するものがあるものの、映画とは別物として考えた方がいいように感じました。

映画では不明であった登場人物それぞれの人間関係やそれぞれの置かれた社会的状況などが詳細に説明され、人物相互がある意味必然性を持って物語を形作っていることが分かります。

また、夢と現実が融合し、混沌としていく過程は、なんといってもあの筒井氏の描写力でよく分からないままに切迫感と現実感があり、とっても迫力があります。

どうしても映画の映像(と音楽)があって、小説を読む私の頭の中にそれが侵食してくる感じでうまく表現できませんが、夢を題材にしながら、そういう世界があって欲しいという夢を叶える小説であるようにも感じました。

夢系のお話が好きな方、読んでおいて損は無い作品でしょう♪

余談ですが・・・。夢探偵パプリカとの二役を演じる千葉女史ですが、小説では分別のある大人過ぎてちょっとねぇ~。個人的には、もうちょい潔癖そうな映画の千葉女史の方が好みかも?

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パプリカ 2006 今敏監督 映画の感想です。
ラベル:SF 書評
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2007年01月09日

「魔獣狩り」夢枕 獏 祥伝社

夢枕氏の有名シリーズ「魔獣狩り」の1~3巻までをまとめて一冊にして新装版として出したもの。もともとが三巻で完結していた話なので、バラバラに買う必要がなくて楽と言えば楽なのだが、単行本3冊分の厚さはそのままなので通常の3倍厚い。値段もそれなりにするし、何よりも重くてキツイ。一気に読むにはいいが、そうでない場合はバラで買ったほうがいいような気もする。

と、付帯条件はおいといて。だいぶ昔にも読んだことあるが、文章はうまいし、アイデアもなかなかのものだと思う。何よりも読者をひっぱる手腕には伊達に『売れっ子』ではないことが分かる。その一方で、この手の単行本の宿命なのだが、必要以上にエロが多い。あとがきを見ると、編集サイドから一冊につき何ページはエロと指定があるそうで、作家さんも本当に大変だと思う。

勿論、文脈上の必要があれば、少々過剰な演出もOKだし、喜ぶ場合もあるのだが、本書の場合、3冊分のエロ場面があり、正直言ってウザイし、その部分は飛ばしたくなる。辟易したのも事実だ。

でもでも、それらの欠点を補って余りある長所がある。
【以下、ネタバレ含む】










突如、高野山から空海が盗まれる、な~んてストーリー考えられないでしょう。普通。逆にそれらのアイデアを可能にするほどしっかり資料を集めて書かれているんですよねぇ~。他にも立川流や理趣教の話など、私も他の本を読んで知っていなかったら、びっくりするようなことが実にさりげなく本文に散りばめられています。本当に勉強になりますよ~(笑顔)。

更に人間の精神に潜り込むサイコダイバーなんてアイデア、私には思いもつきません。しかも人間の精神内の描写がなんとも微に入り、細に入りで素晴らしいものがあります。ゾクゾクしちゃいます。

最後の結論は置いといて。結構、面白いと思うんだけどなあ~。エロ場面を五分の一くらいに減らしてくれると私的には更にポイント上がりそう。基本的に夢枕氏の作品は好きなのですが、もし一度も読んだことがなければ、読んでみるのも良いかも? あっ、ちなみに良くも悪くも完全なエンターテイメント小説です。読書を楽しませることに徹底しておりますのでそこだけ理解しておけば、楽しい作品でした。

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2006年12月25日

「娼婦たちの暦」津村 節子 集英社

う~ん、今日18切符で適当に電車に乗っていたら新潟県の長岡駅に着いたので長岡の古書店巡りして買った本。車内で手持ちの本をみんな読み尽くしちゃったので綺麗そうな本を買ってしまった。

思い切り外れた! こういった娼婦や吉原とか風俗系の本は、時々非常に興味深かったり、人情の機微に通じた文章があったり、掘り出し物があるのですがこれは箸にも棒にもかからないかと。

勿論、猥褻ではない。かといって当時の社会状況を克明に描いたものでもない。また、出てくる娼婦の内面も上っ面しか追っていないようで感情移入も何もありゃしない。「墨東奇譚」でも読んで爪の垢でも煎じて飲んで欲しい。茶者には。少なくとも私にとっては、何の価値も見出せない本だった。

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2006年12月06日

「霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿」田中芳樹 講談社

kirinohoumon.jpgいつもどおり、そつなく楽しく大変無難というと失礼かもしれませんが、安心して楽しめました。舞台が舞台なんでお約束の破壊活動は、やや控えめでしたけどね。まあ、珍しく女王様の忠臣が怪我をしてしまっているのですから、さすがのお涼様も臣下への思いやりで手加減をされたというところでしょうか。

ただ、相変わらず若干誇張した(そして健全な)批判精神は健在です。昨今、いじめで自殺するなどという悲しいお話がありますが、是非そういう人に読んで欲しいぐらいです。やられたら、どんなことをしてもやり返せねばいけません。だって生きていくとは勝つことですから!

どの世界に生存競争があるんで勝たねばならないのでしょう。まあ、みんながお涼様になったら、世界は崩壊するかもしれませんが・・・(笑)。ただ、いい意味でストレス発散になる小説だと思います。水戸黄門よりも勧善懲悪であり、主人公がおじいさんよりも妙齢の美女の方がいいのは、古今東西を通じて自明でしょう♪

私的には、そこそこ面白かったです。読んでおいてOKかと。まあ、これ以前のオカルト的な要素はほとんど姿を消しているのでそれを求めるファンの方には、物足りないかも? でも、私には十分面白かったです。

霧の訪問者 薬師寺涼子の怪奇事件簿(amazonリンク)

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「薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲」田中芳樹 祥伝社
「薬師寺涼子の怪奇事件簿 魔天楼」田中 芳樹、垣野内 成美 講談社
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2006年12月03日

「大年神が彷徨う島 」藤木 稟 徳間書店

ootosihi.jpg藤木氏による、朱雀シリーズの一冊です。今までの作品は面白いんだけど、いま一つのところで不満が若干残るものだったのですが、今回のは私的には一切問題無し。推理小説としての王道を歩みつつ、これは今すぐの映画化等でも十分に耐え得る傑作の一つだと言うのは誉め過ぎでしょうか? でもね、それぐらい私は気に入りました。昔の角川さんだったら、即映画化&メディアミックスで媒体露出ガンガン出まくり・・・ってな感じ間違い無しだったでしょう。

粗筋としては、周囲から隔絶された特殊な歴史と環境に置かれた孤島が舞台。本土では既に廃れ、或いは失われつつある古の風習・禁忌が今も絶大なる力を有し、人々を支配する閉鎖空間で殺人が続発する。

私がこの本を読みながら、自然と浮かんだのがフレイザーの「金枝篇」にクレチェマーの「天才の心理学」、そして小松和彦氏の「異人論」や「憑霊信仰論」。映像的には丸尾末広の「犬神博士」と横溝氏の「八つ墓村」が常に本書を読みながら、漠然と脳裏を漂っていました。

実際、最後の参考文献に小松和彦氏の著作が載っていたのを見て「なるほど」「やはり」と思いましたが、知識として知っているのとそれを材料に小説に仕立てるのは全く別です。藤木氏は実に素晴らしいストーリーテラーであることを本書で改めて実感しました。

そうそう! これなんです! 日本やヨーロッパのような古い歴史を持つ国の国民は、意識的に認識しているか否かを別にすると数百年や更に千年単位で血や土地に縛り付けられて生きていることを強く感じます。私は以前、企業城下町にいたことがありましたが、そこでの行動原理は多国籍企業であっても所詮、『(企業という)村の論理』であることを嫌ってほど体験したことを思い出しました。

同時に人は決して自由意志で動くものではなく、限定された環境(社会通念、時代認識等々)に規定された枠内での打算に基づく行動ぐらいしかできないということを本書では訴えていますが、その点でも深い人間洞察に満ちた書だと思います。

あとね、そういった面もさることながら、何よりもおどろおどろしい雰囲気がそそります(笑顔)。こういうのって本当にスキ! 澱んだ血と歴史、鬱屈した閉鎖的社会、こりゃ何か起こらなければ不思議ってもんでしょう。横溝正史氏の作品を超えた出来じゃないかな?

陰陽道に関しても、小松氏の本で御馴染みの「いざなぎ流」を彷彿とさせる場面なども多く、知っている人ならニヤニヤしながら読んでしまうこと請け合います。そしてそれらを知っていても、更にゾクゾクさせるこの小説は、エンターテイメントしてやっぱり素晴らしいと思います。

粘着質的な本作品、推理小説のまさに王道でありましょう。是非是非、私がここに書いた内容にピンときたから、速攻でGETして読んでみましょう♪まず、間違いなく楽しめます(満面の笑み)。

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2006年11月29日

「ダ・ヴィンチ・コード最終章」花山 空勝 ウィズダムブック社

本屋の店頭で何度も見たことあるのですが、あまりにも内容が論外のトンデモ本なのでうちのブログでは触れないできましたが、たまたま図書館にあったのでその場でざっと流し読みしてみました。

《結論》
これはいけません。トンデモ本でも読んでいて面白い本や(前提条件が)荒唐無稽でもそれなりに架空の論理で首尾一貫しているようならば、いいのですが、この本はヒド過ぎます。

誤解と曲解が随所に見られ、牽強付会どころの騒ぎではありません。引用文献内で、その箇所がどのような意味づけで書かれているかを全く斟酌せず、論旨を無視した字面のみの引用に加え、日本・ユダヤ同祖説や○○天皇がテンプル騎士団の会員だとか、笑うことさえできないほどです。

おまけに邪教で有名な立川流やらなにやらどっかで聞いたようなモノをきちんとした文献を見ないまま、適当に結びつけて解説(実は解説にもなっていない)しているさまには失笑を禁じえません。私も何冊か立川流の資料もありますが、全然違います。

少なくともこれまで私が読んだダ・ヴィンチ・コード便乗本の中では一番お勧めできないものです。amazonの書評もどう考えても不自然過ぎて作為的なものを感じてしまうのですが・・・。あまり大きなことは言えませんが、amazonのコメントには利害関係者による『やらせ』が含まれていることが時々あります。実際、私も仕事絡みで知っていますが、amazonのコメントには有用な反面、そうした危険性がありますのでご注意を!
もっともamazon自体は直接関知していないのでしょうけどね。

同じトンデモ本でも著者独自の主張があればいいのですが、文字と空間が多いだけで引用メインで成立している本書は、見ているだけでイライラしますのでこれはいけません。どちらにしてももうちょっと勉強してから、書いて欲しいなあ~と思いました。しかし、著者以上に本書を出版するしている会社がスゴイね。私には信じられません。
【目次】
裏コード解析1(ナザレのイエスは果たして実在したのか?
ナザレのイエスは実在した!? ほか)

裏コード解析2(新約聖書(福音書)は偽書?
聖母マリアは子だくさん ほか)

裏コード解析3(日本人とユダヤ人
ユダヤと日本の類似事跡 ほか)

裏コード解析4(聖遺物一―トリノの聖骸布
聖遺物二―ロンギヌスの槍 ほか)

裏コード解析5(リヒアルト・ヴィルヘルムからユングへ伝えられた蛇の力
キリストの聖婚と真言密教立川流 ほか)

裏コード解析6(「岩窟のマリア」を解析する
「モナ・リザの微笑み」を解析する ほか)

裏コードのウラ(イエスの死後復活を解析する)
ダ・ヴィンチ・コード最終章(amazonリンク)
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2006年11月16日

「死後の恋」夢野久作 出版芸術社

やっぱりイイですね! 三一書房での全集を持っていますし、角川文庫でも何冊か持っていますが、たまたま図書館で見つけて借りてしまいました。

なんていうんでしょうか、私が考える推理小説って基本的にこの短編集のイメージというかノリなんですよ。渡辺啓助氏の小説もやはり同じ匂いがするのですが、このいかにも『新青年』っていう感じにたまらないモノを感じてしまいます。

人間の心理をどこまでもあざとく描き出す描写とそれを支える合理主義的な思考方法が、実にイイ! 昨今の状況描写のみと薄っぺらな心理描写(=ほとんどが今の時代の特有性に判を押したような、それでいて定型的に過ぎるもの)で、人間として思考がない小説にやりきれないばかりの思いがあったのでたまにこういうものを読むと改めて小説の面白さに気付かされます。

ある種のナンセンスであってもいいのですが、それをどこまでも掘り下げていく『真摯さ』が最近読んだ小説では、感じられません。個人個人とはいいつつも個人主義に名を借りた利己主義には反吐が出ます。

一見不合理なようで有り得ないと思いつつも、本文で語られる論理を筋道立てて辿っていく過程で常識とは相容れないながらも、実に論理的な説明がなされ、納得せずにいられなくなる。読書は、まさにその物語の世界に入り込んでいってしまうわけですが、その読書故の楽しみを存分に満足させてくれる本でしょう。

夢野久作と言えば、『ドグラマグラ』が最高峰であり、私個人の感想では今まで読んだ小説の中でこれ以上の小説を読んだことはありませんが、それなりにハードなのも事実。小説の表面的な謎懸け的な技巧に翻弄されてしまい、一番の美味しいところまで味わっていない(のではないかと、勝手に私的には思うのですが・・・余計なお世話ですね)人が多いようです。

まずは本書でしっかりと準備をしながら、楽しんでから、次にステップアップするのも一考の余地があるかもしれません。まあ、堅いこと言わずに小説というもののエッセンスが凝縮している作品です。

この手のものがお好きな方なら、きっと同感してもらえると信じています。これでしょう、これ!(ニヤリ)
【目次】
死後の恋
悪魔祈祷書
人の顔
瓶詰地獄
キチガイ地獄
鉄鎚
冗談に殺す
オンチ
人間腸詰
押絵の奇蹟
死後の恋(amazonリンク)

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ユメノ銀河(1997年)石井聰亙 監督
ドグラ・マグラ(1988年)松本俊夫監督
「暗河 21」1978年冬 葦書房
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
ラベル:書評 小説
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2006年10月30日

「ルビーフルーツ」斎藤 綾子 新潮社

ruby.jpg久々に箸にも棒にもかからない最低に近い作品。男女の性愛というよりも同性愛の割合の方が高いかな? 元々は官能小説の部類として書かれた作品らしいが、そういう意味でまず失敗作。男性がこれを読んで欲情するだろうか?はなはだ疑問である。かなりの嫌悪感を覚えた。

私自身は猥褻作品であっても素晴らしい作品は大好きだが読み物としてつまらないものは、耐えられない! 何よりも内容がないのは・・・。性愛を通して描かれるのは、安っぽい好悪の感情のみ。しかも小学生の女の子以下の水準ときては、何をかやいわん。

紅楼夢やサド文学でも読んで少しは教養を積んでから、文字書きましょうね!(文章ではない、文字の羅列でしかない)と皮肉の一つも言いたくなる。

絶対に読むべきではない本である。フランス書院の方がなんぼかマシ。個人的には男女の恋愛を超越したものの方が面白そうだけどね。じゃなきゃ、もっと思いっきり俗っぽいのでもいいのですが、この作品は全てにおいて×(バツ)。

同じ性愛を描いても「ボディ・レンタル」とか「植物性恋愛」とか無機的なものや、「痴人の愛」のような狂おしいまでの屈折した熱情とかの方がずっと好き!! ドロドロものでもOKですが、本書だけはいただけません。

ルビーフルーツ(amazonリンク)
ラベル:性愛 小説 書評
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2006年10月28日

「グッドラック―戦闘妖精・雪風」神林 長平 早川書房

yukikaze.jpgこれ読んだと思っていたのに、実は読んでいなかった一冊です。そうか「戦闘妖精・雪風」の続編で読んでなかったんだ~。う~、こんなに面白い本を読まないでいるとはなんとももったいない。危うく大損するとこでした。

いつもの神林氏の作品らしく舞台はバリバリの近未来。異星人との遭遇という設定自体はもやは陳腐とさえ言えるありふれたものなのに、何故この著者にかかるとこれほど非凡な作品になってしまうのかが不思議なくらいです。まさに言葉の魔術師。氏の作品名にもありましたが、まさに「言葉使い師」と言っても過言ではありません。

日本にあまたのSF作家はいらっしゃいますが、私が読んで『SF』というジャンルの醍醐味や可能性を余すことなく実感させてくれる貴重な作家さんのまさに筆頭で挙げられる方です。

では他のSFと本書では違うのか? ズバリ徹底した論理的思考の延長線上に構築された物語世界であること。またそれ故に、有り得ないはずの世界が異様なまでのリアリティを獲得することがその特質ではないかと思うんです。

異星人という自らの価値観の枠外にある存在を鏡として、自らを見つめることで自己の存在意義、人間を人間たらしめていること、モノとしてではなく独立した存在としての『機械』の意義などを強烈なエネルギーで考えられずにはいられない状況にまで追い込むその手腕が凄い!!

本書を読んでいる間中、現実で生活をしている実感が確実に薄れ、本の中の世界観の方がはるかに生々しいのが印象的でした。なまじっかな哲学などよりもはるかに思弁能力を問われる作品と言ってもよいかと思います。

こう、これでなくっちゃSFじゃないでしょう。純粋なまでに思考実験をする、その舞台を得んが為の仮想状況の設定がSFの本質の一つだと思いますもん。ゾクゾクするほど、脳を刺激してくれますので本当に堪らない興奮ですね(満面の笑み)。この手の大好きぃ~。

自己と他者の認識や、機械と人間の意識の相違と相互理解なんて、ここまで洞察できませんよ~、普通の人には。しかもその論理が、諸条件で規定されていながらも論理的破綻を起こさずに読書を納得させるこの力量は手放しで賞賛ものでしょう。

日常の生活に埋没されている貴方。この本を読めば夢から醒めますよ!あるいは、夢に陥って起きれなくなるのか?それは定かではありませんが・・・。

注:本書のあとがきはお薦めしません。個人的にはまったく共感できないし、本番に比して薄っぺらな解説で本書の格を落としているような気さえします。もっと&もっと深く考えながら読みましょう。

ある種、スタートレックのQにも近いものを覚えたが、あれに輪をかけてハードな思考を要求されます。哲学好きの人にも十分満足できる面白さです。分厚い本をたっぷり楽しんで下さい。しかし、この論理的思考力は手放しで賞賛ものですね、ホント。

グッドラック―戦闘妖精・雪風(amazonリンク)

関連ブログ
「プリズム」神林長平 早川書房
「ラーゼフォン」神林 長平 徳間書店
「機械たちの時間」神林 長平 早川書房
ラベル:SF 書評
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2006年10月14日

「SFバカ本 だるま篇」廣済堂出版

タイトルのまんまである。SFと言えば言えなくもないが、要は空想上でしかありえない設定で、トコトンお馬鹿な話を作ったものである。

いろいろと疲れた時、漫画を読むのとは違った気軽さともっとポップなお馬鹿さ加減で癒されたい時に読むのならいいかもしれない。頭が冴え渡り、仕事でもプライベートでもバリバリ何でも出来そうな時は、手にとるべき本ではない。時間の無駄である。

岬氏の作風はいつもの「魔女でもステディ」的なほんとご都合主義の読み易さ最優先は変わらないもので、まあ気軽に読み飛ばし、いつものようになにも残らない。

牧野氏にいたっては、あの「MOUSE」の著者が・・・とも思うが、やっぱりピアッシング系のマゾっぽいのお好きなんですねと納得した。

大原氏に至っては、いつもの精神病んでる系がいささかぶっ飛んでる系になり、正直うざくて失望した。個人的な好みだけど、「未来視たち」とか「ハイブリッド・チャイルド」のノリと世界観が好きだったので悲しかった。

山下氏の作品は初めて読んだが、まるで筒井康隆氏のようなブラック感あふれる感じが結構、好きだった。ただ、アンソロジーになるのかな?この本はいらんなあ~。実際のところ。
【目次】
リストラ・アサシン(山下定)
奇跡の乗客たち(梶尾真治)
液体X(かんべむさし)
サイバー帝国滞在記(松本侑子)
ゴースト・パーク(難波弘之)
花モ嵐モ(大原まり子)
踊るバビロン(牧野修)
薄皮一枚(岬兄悟)
フィク・ダイバー(井上雅彦)
12人のいかれた男たち(岡本賢一)
SFバカ本 だるま篇(amazonリンク)
ラベル:SF 書評
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2006年09月20日

「五重塔」幸田 露伴 岩波書店

gojyuunotou.jpgこれも読んだような気がするんだけど・・・、記憶が怪しい? でも、改めて読んで正解でした。

腕はあるのに、おべんちゃらが言えない為に自らの大工としての技量にふさわしい仕事に恵まれてこなかった男。鈍い奴と世間からの侮りをよそに、その男が谷中の寺に作る五重塔を作りたいという、ただその一念から恩ある師匠への義理も捨て、傑物と思われる寺の上人様から見事、五重塔製作の依頼を勝ち取る。

人としての義理も人情も、恥も外聞もなく、ただひたすら素晴らしい五重塔を我が身で作りたい。それだけを唯一の心の支えとして、職人として誠心誠意を尽くして仕事に打ち込む。その結果は、各地の建築物に多大なる被害を与えた暴風雨が来てもその五重塔は壊れるどころか、釘一本、板一枚抜けることなく完璧なままであった。

実に小気味良く、引き締まった感じの文体から、日本人が近代への過程の中で価値観を喪失しつつあった『職人としての誇り』を強く感じた。コスト削減や効率化の美名の下で、全てのものから完成度を執拗に求めるという姿勢を否定してきた昨今には、決して昔の話では無い。まさに今現在のお話でもある。

NHKのプロジェクトXを見るまでもない。研究者であろうと職人であろうと自らの仕事に限界を設けて、そこそこの事で事足れりと妥協する俗物に真の満足は得られないであろう。

解説で触れられるエゴイズムという単語自体が不適切であろう、そういう次元ではないのである。個人の思惑ではなく、ひたすらに技の完成度を求めれば、他の一切は捨てねばならぬ。それが明々白々の真実なのだろう。それが分からぬ輩に、説明するだけ野暮ともなろう。

職人の仕事への情熱、そのひたむきさに心を打たれると共に、改めてそういう飛び抜けた才能と情熱は、世渡りには不向きであることも改めて身に沁みる話でした。自らに思うところのある人には、良い刺激になるかもしれません。それが不幸か幸運かは定かではありませんが・・・。

五重塔(amazonリンク)

関連ブログ
奈良散策シリーズ~興福寺(8月23日) 興福寺の五重塔
ラベル:職人 名著
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2006年09月05日

「蟲」坂東 真砂子 角川書店

まず最初にタイトルの「蟲」ですが、amazonでは「虫」で登録されていますが、本には「蟲」と書かれています。一応、ホラー文庫の一冊ですから、オドロオドロしくないとね!どっちが正しいのやら?

ちょっとだけ、歴史的なスパイスを効かしたところもあるが、基本は妊娠して情緒不安定気味の精神の危うさに重点を置かれた作品。あまりにくど過ぎてジメジメしながらも、さらに自家中毒を起こしたような心理描写は、私の偏見を差し引いたとしても絶対に男性にはかけない粘着質性のもので、凄いとは思うものの、個人的には嫌い。端的に言うと鬱陶しい。

でも、あれだけ書ければ、やっぱりそれはそれで才能なんでしょうけどね。そういえば、一時うちのブログでも坂東真砂子氏関係の記事にアクセスが増えたけど、ネット上で有名な動物殺しの件みたい。まあ、坂東氏ならやりそうですね。他の作品みても、かなり独特な性格をお持ちのようですし・・・。まあ、作品はあくまでも創作であり、著者の性格と必ずしも関連する訳ではないですが。

そうそう本の内容ですが、夫が偶然掘り起こした石の中に特殊な『蟲』がいて、それがまずは夫を、次には妊娠中の妻に寄生する。度重なる不可解な現象。次第に変化していく取り付かれた人々の性格・行動。まあ、オーソドックスなホラーですが、ホラーとしてはかなりつまらない部類。個人的には絶対にお薦めしません。

簡単に読めるけど、まあ、物足りないです。
しかし、嫌いとか酷評している割に結構な数、坂東氏の本読んでるのは何故?
虫(amazonリンク)

関連ブログ
「神祭」坂東 真砂子 角川書店
「イタリア・奇蹟と神秘の旅」坂東真砂子 角川書店
「旅涯ての地」坂東真砂子 角川書店
ラベル: 小説 ホラー
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2006年08月30日

「赤線物語」清水 一行 角川書店

「赤線」と言われても誰も知らないだろう。私が生まれるはるかかなたの時代にあった売春などの行われていた区域の名称である。昭和30年代の売春防止法によって赤線という言葉自体は、消滅したそうであるが、人類の歴史上、最古の職業の部類に属する売春がなくなるはずもなく、より一層の無秩序と混乱の中で存続し、ますます氾濫しているのは現状の通りである。

まあ、そんなお堅い話はさておき、本書はその売春防止法の施工直前の時代に赤線として有名であった『玉ノ井』の女性達を描いている。今も昔のこの手の話に変わりはありません。

封建的な男尊女卑に対抗して女性の性的自立と自由を求める・・・とかしょうもない権利・主義主張などもなく、格別、悲惨でもない淡々と生きている人間が描かれている。

何も考えずに、日々生きているだけの人もいれば、計算高く生き抜いている人もいたり、いろんな生き方が人それぞれあるわけだが、それもまた人生。「良き哉(かな)、良き哉(かな)」とか思ってしまいます。本能的な欲望である性がテーマになっている分だけ、人間らしさが生々しく描かれているかも?

実はこの手の本もだいぶ読んでいて、一応子供時代から、早熟で耳年増傾向の強かった私には、特に目新しいものでもないのですが、時代的な情緒はあるかもしれません。

でも、やっぱり玉ノ井というと永井荷風の「墨東綺譚」なんだけどね。あれは名作でしょう♪ 映画も余韻があって結構好き。残念ながら、本書は比べ物になりません。これも悪くはないんだけどね。役不足ってところでしょうか。

赤線物語(amazonリンク)

墨東綺譚 DVD(amazonリンク)

墨東綺譚 文庫(amazonリンク)

関連ブログ
「性風土記 」藤林 貞雄 岩崎美術社
「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
「AV女優 (2)」永沢 光雄 文芸春秋
「恋は肉色」菜摘 ひかる 光文社
ラベル:売春 風俗
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2006年08月29日

「コンスタンティノープルの陥落」塩野 七生 新潮社

konstatin.jpg読んでいるうちは、それなりに読めるのだが、読み終わった後にはなんにも残っていないのも事実。歴史小説であるが、小説以上の域には至っていないのが正直惜しい感じがする。

舞台は、『あの』ローマの伝統を引き継ぎながら何百年間も永らえてきた東ローマ帝国の都であり、その後もトルコ帝国の首都として名前こそイスタンブールに変えたものの更に現代にまでつながっていく大都市。

交通の要衝であり、文化の結節地点としての重要さもさることながら歴史的にも大きく名を残すコンスタンティノープル。キリスト教対イスラム教、という図式と共に西洋文明の古き良き伝統の息の根を止めたまさに歴史的な瞬間を描き出している。

しかし、この小説には珍しく英雄がいない。皇帝とスルタンはいても、本書の描き方では、せいぜいが優れた支配者程度の表現であり、むしろ地道にその時代を生きている商人や居留民などの動向などがより史実っぽくて関心をそそる。

でもね、ある種の突き放した感のある冷静さは、観察者のようで歴史を眺める姿勢としては悪くは無いが、小説として読むとずばり面白みや情熱に欠ける。感情移入ができない小説をどう読むのかは微妙なところだと思う。

嫌いではないが、歴史好きの人にあえて薦めようとも思わない。小説好きの人なら、むしろ止めた方がいいとさえ思う。そういう小説です。

もうちょっと意外な史実とか、小説なら一工夫が欲しいところでしょう。そうでなければ、より一層淡々とした歴史の説明の方が個人的には好きだったりします。でも、イスタンブール、改めて行ってみたくなりました(笑顔)。

コンスタンティノープルの陥落(amazonリンク)
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2006年08月27日

「完四郎広目手控」高橋 克彦 集英社

kansirou.jpg浮世絵を扱った作品で世に出、NHKの大河ドラマの原作まで手掛ける著者ですが、正直言って読んで面白い物とそうでないものとの当たり外れが激しい作家さんと私の中では位置づけております。

そして、今回もおっかなびっくり読んでみたのですが・・・。いやあ~一本取られましたね。実に面白い作品です。江戸を舞台にした時代小説ですが、出てくる登場人物がかなりの曲者(くせもの)揃い。

そこそこの地位を持つ武士の家柄で剣術の腕前も相当なのに、平然と居候を決め込む浪人を探偵役として、江戸に起こるきな臭い事件をバッサ、バッサと解決します。しかし、そこは著者の高橋氏、その浪人が居候よろしく居座るのが表家業は古本屋ながら、その実、江戸時代の広告代理店の走りのような広目屋。噂をネタに商売するだけあって、そこの主人もなかなか如才のない商売人。瓦版の発行なども広く手掛けていて、江戸のそこかしこでイベントを仕掛けたりもするのが面白い。

まあ、舞台立てはそんなところですが、次々と起こる事件の内容もさることながら、それを解決に導くやり方とその結末のつけ方が実にうまい。ある種の洒脱さとでもいいましょうか、センスがいいんですよ、これが!

それでいて結構人間心理のツボを押えていたりといやあ~実に楽しめました。純然たる小説ですが、久しぶりに楽しめた読み物でした。続きがあるようなんでそちらも是非読んでみようと思っています。怪談などがあったり、江戸の粋を感じさせるものがあったり、個々の作品ごとにずいぶんとテイストが違っていてそのバラエティーさも楽しめますよ~。

完四郎広目手控(amazonリンク)
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2006年08月18日

「陀吉尼の紡ぐ糸」藤木 稟 徳間書店

これまでも読んでいた藤木氏の作品は、どうしても素直に面白い!良かった!と言えない点が残ったんですが、本書の場合はそういうところは無かったです。夏、読むのにふさわしい怪談であり、真夏なのに背筋にゾクゾクとくる、正統派の推理物といえるでしょう。十分にお薦めする推理小説です。

最近は、こういうオーソドックス且つ緻密に構成された作品でしかも、怪談の本質とする日常のとある一瞬、理性のタガがはずれていく感覚を有したものが少ないだけになんともイイです。

夏の夜中にこっそり読むのにはうってつけです。怪談系お好きな方、是非どうぞ!

舞台は昭和初期、戦中の吉原。独自のしきたりと独自の法体系を有する一個の自治組織を持つこの空間で、盲目の元検事朱雀が煮ても焼いてもくえない個性とたぐいまれなる鋭敏な頭脳で謎を解明していく。

吉原にある弁財天にまつわる不可思議な神隠し伝説が人の消えていく事件に重なっていく。理由もないままに次々と消えていく人々と夢かうつつか判別できない出来事の頻発。そして、そこに残されたひときわ高く聞こえる狐の鳴き声。まさに怪談でしょう・・・。

良くも悪くもオーソドックスなのだが、それがいい意味で基本に忠実で完成度が高いので安心して楽しめます。元ネタも基本を押えていますが、その料理の仕方が実にイイ。美味しく頂けるかと思います(笑顔)。

陀吉尼の紡ぐ糸―探偵SUZAKUシリーズ(amazonリンク)

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2006年07月29日

「神祭」坂東 真砂子 角川書店

kamimaturi.jpgまあ、予想通りというかいつものお得意のパターン。日本という風土に土着のドロドロしたアレです。坂東氏というとこれだもんね。その意味では、予想を裏切りません。

どんなにおぼろげであっても日本の田舎の原風景的なこの色彩は、否定しがたい実在感があるんだよなあ~。でもね、それを小説として読んで面白いかというと、別。私的にはちっとも面白くない小説である。というか、坂東氏の描いたもので面白いと思った作品なんて一作もないんだけどね。

ただ、著者の作品を読むとスネに傷持つ人がこっそりとやましい過去を振り返るような独特の感覚を擬似的に体験できるので、ついついそれを無意識に求めてしまうようなところがあるのかもしれない? 

私はこの本を読む時に、実家の本家があった新潟の長岡市を思い浮かべてしまう。冬になると雪囲いをし、中二階の屋根裏部屋的なものがあったり、何十畳かの広さのある部屋では、住職をも兼ねていた当時の時代を感じさせる寺の面影がある建物。父に連れられて夜行で本家に行った時の、雪国の空気と重い曇った空。そんなものを無性に連想させる坂東氏の作品なのだ。

夏には川で泳ぎ、寺の境内でセミを取る。いわゆる日本の夏も全てが結び付いてしまうのだ・・・。もっとも今住んでるとこでも夏には川で泳いだり、魚を取ったりしてたから、どこでも変わらないのかもしれないが。

本書を読んでいてもその思いはますます濃くなる一方である。村の夏祭りは、今でも地方に行けば行くほど、強烈な印象を残す。大都会の祭りは華やかであっても、深みがなかったりする。

やはり地方には、独特のパワーを覚える。土葬があり、その地域間での近親婚が続き、遺伝的障害があったりする家系が普通にあったりするのも小説の世界ではない。リアルな世界には、いくらでもあったりするのだ。どうしてもこの著者の作品は「楢山節考」ともオーバーラップしてしまうなあ。

本書は短編集です。どれもこれも泥沼に浸かってしまい、重くて『地域』という枠から抜け出すことができないようなそんな独特の重力下で人がはえずりまわって生きている、そんな姿が描かれています。基本的人権やら、個人の自由、そんな異国の言葉のような根無し草の概念などでは、立ち打ちできない人の生(性)が存在することを無理矢理認めさせてしまうような感じです。

かつての日本であって、今の日本では虚構としてしか存在しなくなった日本。そんな日本を後生大事に留めたい方にはいいかも? まあ、明るく楽しく刹那的に生きたい快楽主義者がもっともきらう小説でしょうね。三島由紀夫とかもこういうの大嫌いだろうなあ~。

神祭(amazonリンク)
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2006年07月21日

「暗河 21」1978年冬 葦書房

1978年に出て聞いたこともないタイトルの雑誌を買ったのには、訳がある。そこに「資料 同時代から見た夢野久作」の文字を見たからだった。

また、ここには夢野久作が書いて出版社に売り込んでいた幻の長編小説『ゴーヂャン・ノット倶楽部』というものが載っている。どうやら原稿の方は、戦火で焼けてしまって完全なものは残っていないらしい。この雑誌にも載っているのは、本当に&本当にさわりの部分だけしかない。つくづく惜しいものだ。

そうそう、その作品が出版に至らなかったのも、出版社の評価は良いが、時勢柄出版は難しいという事だったそうで、内容にはますます興味が湧く。

ご興味ある方は、国会図書館とかにでも行けばあるだろうから、探してみて下さい。そういえば、検索システムあったもんね。

あと、この雑誌にはそれ以外にも夢野久作がまだまだ若い盛りに亡くなった際に、彼の死に対して寄せられた文章が集められている。1936年のまさに当時、彼の周りにいた人々が彼に対して抱いて気持ちが分かって大変興味深い。人によっては、ずいぶん異なる評価や思いがあることを改めて認識させられる。

私が抱いていたイメージもずいぶんと違ったのも事実であるが、なかなか資料的にも面白いと思う。現在のまさに伝説ともなった、あの「夢野久作」とは異なるもう一つの久作がいたことを感じた。

改めて夢野久作の作品を全て読み直してみたくなった。

そして、私の脳裏をよぎったのは・・・とある古書店で見つけた「ドグラ・マグラ」の初版本。私が学生の頃だから、そこそこ前なのだけど当時70万円の値が付けられていた。あの当時は、株で儲けた分もあり、マジに買いたいと真剣に悩んだ覚えがある。まあ、それにしても高くて結局は買えないのだけれど・・・。しかし、しかし、やっぱり欲しかった!

今でもどんな本を読んでも「ドグラ・マグラ」以上の作品にはあったことがないし、あれだけのものが書けたらいつ死んでも本望と若い頃は思っていたことを思い出した。今は未練があるから、死んでもいいとまでは思えないが、でも、やっぱり、凄いよなあ~と心から思う。

2日か3日か部屋にこもってひたすら本を読んでいたことを思い出した。

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ユメノ銀河(1997年)石井聰亙 監督
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
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2006年06月20日

「ラーゼフォン」神林 長平 徳間書店

ノベライゼーションというものらしい。普段の私だとあまり読まないジャンルかもしれない。

実はアニメの方もほとんど見たことがないのですが、神林さんという名前とlapsiさんのブログで見たなあ~という安易な理由で読みました。だって、図書館でタイトルが目に付いたんだもん!

さて、読んでみるとなんだかんだ言っても神林氏の独自の世界観は健在です。ただ、世界観設定のポイントになっているエジプト神話自体がいささか拒否反応に近いものがあるのでそれだけがネックになったかもしれません。それ以外に関しては、もうバリバリSFしています。

よくもまあ、言葉という移ろい易いツールを使ってここまで現実感のある仮想世界を構築できるなあ~と感嘆するのは毎度の通り。まさに「言葉使い師」の何者でもない!! 

時間と言葉によるこの世界認識の鋭さに相変わらず読者は翻弄されるのですが、分からないなりに感じられてしまう辺りがスゴイ。でも、読んでいて思ったのはこのハードSFがアニメでどうやって表現できるの? 失礼な言い方ながら、アニメ好きの方でSFはそれほどでもっていう人に理解できる(というか共感できる)のかなあ~と勝手に心配になりました。

もっともあとがきを読む限りでは、舞台設定自体はアニメと小説は共通項を持つものの、だいぶ違っていてそれぞれの世界を楽しむという感じみたいです。納得!! 本書に忠実なアニメも観てみたいが、本書とは異なるラーゼフォンというアニメにも関心が湧きました。今度レンタルしようかな? う~ん、借りに行くのが面倒なんだけど・・・。

それはおいとて。神林氏のファンなら、普通に楽しめる作品だと思います。但し、あまりに期待し過ぎては辛いかも?

ラーゼフォン―時間調律師(amazonリンク)

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「機械たちの時間」神林 長平 早川書房
「プリズム」神林長平 早川書房
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2006年05月30日

「怪奇・伝奇時代小説選集〈7〉幽明鏡草紙」志村 有弘 春陽堂書店

久しぶりに怪談♪怪談♪

本当はこれからの季節、夜中にこっそり読むのが雰囲気があっていいのだが、せちがらい車内での読書。イマイチ興が乗ってこなかったのは残念。

いわゆるアンソロジーというものだが、まあいんじゃないかな。全体的にそこそこという感じだが、ゾクゾクとくるほどの怖さは無かった。読み通した感じからすると、あともうちょっと・・・という感じが多かった気がします。

今回読んだ中では、一番最初の「怪異石仏供養」がなんとなくだけど、一番心に残るものがありました。まさにそのなんとなくの感じがなかなか素晴らしい作品です。

他のも、いい感じまでいくんですが、常識の範囲内を飛び越えて異界にまで連れていってくれるほどではありませんでした。そういうの読みたいな。妖しの世界に惹きこまれるような本に出会いたいものです。
【目次】
怪異石仏供養(石川淳)
月の夜がたり(岡本綺堂)
幽明鏡草紙(潮山長三)
濡事式三番(潮山長三)
首斬り浅右衛門(柴田錬三郎)
妖魔の辻占(泉鏡花)
能面師の執念(佐野孝)
惨虐絵に心血を注ぐ勝川春章(神保朋世)
池畔に立つ影(江藤伸吉)
悲願千人斬り(橘千秋)
悪鬼になったピリト(岡田耕平)

怪奇・伝奇時代小説選集〈7〉幽明鏡草紙 他10編(amazonリンク)
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2006年05月24日

「歌麿おんな秘図」大下 英治 ベストセラーズ

utamaro.jpgまあ、艶本というか、ありていに言っちゃうと男女の関係を扱ったエロ本でお子様に読ませてはいけないような本になってしまうのかな?

でも、著者の手にかかるとなかなかの読み物になっていたりします。実際、文章が実に上手い感じがする。欲を言うと男女の心情の機微とかにまで描写が進むと、あっというまにいかめしい『文学』という名称だけ高尚な部類になるのですが、閨房(ベッドの中のこと)の行為自体に多くの比重が割かれているのでそれは無理か。

もっとも、それ故に楽しいんですが・・・。人様に迷惑をかけない範囲で楽しみましょう。

まあ、難しいこと言わずに、ちょっとした息抜きに軽く読むと面白いです。車内で読むのにはちょっと抵抗ありますけどね。さすがに私も聖人君子ではないので・・・目が血走ってしまいます。こんな本を読んでいたら、車内で痴漢に間違われても言い訳できませんって。

いかにも男が喜びそうな話ではある。日刊ゲンダイの怪しい記事よりは、こっちの方が面白いけどなあ~。日常に疲れているサラリーマン向けか?でも、図書館とかでも見たことあったような・・・。図書館もこういう本ならOKなんだと驚いた記憶があった。だったら、富士見文庫やフランス書院でもいいような気もするが・・・。 

うだうだ書いてますが、そういう本です。お薦めしませんが、読みたい方はどうぞ!

歌麿おんな秘図(amazonリンク)

関連ブログ
「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
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2006年04月26日

「チョーサーの世界」桝井 迪夫 岩波書店

とっても面白いうえに、有名な「カンタベリー物語」の著者チョーサーについての本です。以前に「カンタベリー物語」を読んで面白かったんでチョーサー自身にも興味を持ったんですが・・・。

駄目、残念ながら面白くない。いや、本が悪いわけではないんですが、チョーサーが宮中に出入りしながら、公務員としてどういう仕事したとか、学校でどういう学問を学んだとかって正直興味ないもん。彼の他の著書における修辞法がどうとか、崇敬していたダンテの影響がなんとか言われてもねぇ~。

確かにいろいろと知ることで、より一層深く味わえることがあるのも否定しませんが、せっかくの作品の面白さがむしろ興醒めしてしまうような・・・失礼!

少なくとも私は、この手の本はあまり好きではないなあ~。こういう本を読むなら、その人の作品を100回読んだ方がいいように感じてしまいます。『読書百遍義自ずから通ずる』っていうほうを信じておりますんで、ハイ。

いささか研究者的な姿勢の本です。文学は好きだけど、文学者はあまり好きでなかったりする私には向いていませんでしたが、こういうのがお好きな方には、悪くない本かと。チョーサーについての入門書にはなるんじゃないでしょうか。インテリの方どうぞ。

でも、作品の方が面白いね♪

関連ブログ
「カンタベリー物語」チョーサー 角川書店
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2006年04月20日

「退魔針―鬼獣戦線」菊地 秀行 祥伝社

taima.jpgやっぱ、たまにはお気楽読書もしなくっちゃ・・・と、妙に軟派に走って確かこないだの土曜か日曜に読んだ本。菊池氏の作品なんで、まあそれほどの外れはないだろうという安易な計算と、少しはお色気も必要かと読んだのですが・・・。

今回の本には珍しいので、妖艶なシーンがない。別にそれだけを期待していたわけでは、菊池氏の妖獣戦線とかのファンとしては、この世のものならぬ妖しの色事は結構好きなのだが・・・ちぇっ!

鬼を操る一族とか、宿命に抗う鬼達とか、その辺の舞台設定はいつもながらの手慣れたものでうまいなあ~と思わせるものの主人公達があまり活躍してないような・・・。ほらっ、吸血鬼ハンターDとかで育った世代としては、絶世の美少女やこの世のものならぬ美青年とかあたかも千夜一夜にでも出てくるような登場人物で慣れ親しんでいるからさあ~。ちょっとやそっとのことでは、刺激が足りないんですよ(ハハハ)。

魔界都市新宿とかを漫画でも本でも読んでいた読者としては、まだまだって感じでしょうか。もっと&もっと菊池氏の素晴らしいおとぎ話を楽しませてもらいたいところです。もっとドロドロで怨念めいていて壮絶なのに、出てくるのは美形揃い。めちゃくちゃに不条理な話ですが、日常のどこかに潜んでいそうな、そんな話を期待しちゃいますね。

まあ、本書は中ぐらいってとこかな。氏の小説の中ではもっと&もっと面白いのがあるからなあ~。そういうの読みたい。

退魔針―鬼獣戦線(amazonリンク)
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2006年04月18日

「帝都探偵物語」赤城 毅 光文社

tantei.jpg題名に惹かれて買ってしまった本。最近、ちょっと読書する意欲が減退してきたというか、いささか鬱っぽくなってハードな本を読む気力がなくて、流し読み用に買ってみました。

まあ、今でいうところの東京国立博物館へ納められるミイラが、突如として動き出し・・・というお約束で始めり、探偵さんやら、その子分の小林少年みたいなのがいたり、事務所には美人のお姉ちゃんが庶務よろしくいたり、刑事さんや博士など登場人物はまさに基本通りの構成。そこで起きる異変や謎解き、最後の結末に至るまで、全て教科書通りで寸分違わない作りです。

もっともそれ故に、非常に読み易いし、分かり易いし、ほのかなロマンス有りと安心して読める読み物ですね。つまらないとは言いませんが、わざわざ読むほどの価値を見出せません。別にジュブナイル作品とかでも、十分に満足できる作品もあるのですが、これはちょっとパス。

怪人二十面相とかは、少年少女用のジュブナイルと言っても大人が読んでも楽しめるだけの独特のものを持っていましたが本書には全くないです。読み捨てられてしまう大量消費向けの工業製品ってところでしょうか、品質は均一で基準はクリアしてますが、使い捨て以上の価値はないような気がします。

現代の子供は、もっとドロドロした凄い世界に生きてますよ。最近の少女漫画でも読んでもっとストーリーの構成力をつけましょう♪奨励賞ってカンジでしょうか。但し、全体を通してのバラスン感は非常にいいです。逆にあえてそれを狙っているのだったら、それはそれで素晴らしいのかも? 個人的には好きになれませんが・・・。

帝都探偵物語 私の愛した木乃伊(amazonリンク)
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2006年04月14日

「肝盗村鬼譚」朝松 健  角川書店

最近小説やらホラーやら、読み物系のものを読んでなかったので久しぶりに読んでみました。軽~い気持ちで読み始めたありがちなホラー物だったんですが、どうして&どうしてなかなかしっかりした骨太の構成。読み易いけど、しっかりとしたスタイルを持って読者を惹き付ける文章力は侮れません。

角川のホラーっていくつか読んだことあるんだけど、薄っぺらな現代生活の表層的なちゃちな怖さが多くて、暇つぶしにはなっても読書した満足感がないんだけど、これは違っていました。ちゃんと小説を読んだという満足感がある本でした。

私の嫌いだけど、何故かねちっこくて惹かれる日本固有の土着的な風土と地方の深い精神性に根差した宗教的な遺風や建築物、慣習などなど。八つ墓村とは言わないまでも基本だね、基本! 

地元にある大きな神社の神主を代々務める一族とか、その一族に伝わる風習や一族間の明白且つ歴然とした序列とかね。お約束だけど、まさにこれなくして何の日本かってね! 冠婚葬祭と来た日には、本家を代表しまして・・・とか挨拶しちゃうし。あっ、これうちの実家の話ですが、都会に逃げて根無し草になると忘れてしまいますが、社会共同体って大変です、マジに。

そういった北海道の忘れ去られた村が舞台。怪しげなその土地にだけ伝わる真言宗の寺の跡取りが急遽、都会から数十年ぶりに村に戻ってきたことを発端に、次々と不可解な出来事が・・・。

正統派のホラーなんですが、描き方がうまいのと背景に盛り込まれた知識が非常にリアルな感覚を呼び起こして、自然だったりする。おまけに村の隠された歴史や、眉唾ものの古文書など、道具立てもバッチリ! かなり楽しめるんじゃないかと思います。

ネタバレになっても困るので、ポイントには触れませんが、先日私が行った埼玉の高麗神社、なんとそこの地名と神社名が出てくるのは奇遇といおうかなんといおうか、ちぇっ私が使おうと思ったのに・・・先にとられたか。な~んて思ったりして、でもいい線行ってると思います。

スプラッターとか、ああいうホラーが嫌いで正統派のじっくりと精神の底からじわじわくる、怨念とでもいうべき粘着系の怖さが好きな方なら、是非!!

あとね、読み終わってあとがき読むまで知らなかったんだけど、この著者って国書で「ラブクラフト全集」や「アーカム・ハウス叢書」「世界魔法大全」を担当していた編集者さんだったらしい。なんかおおっ~知らなかったぜ、と思っちゃいました。

紀田順一郎氏にも師事してたそうだし、こやつもどこからどうみても、そういう人なんだね。ふむふむ、思わず納得しちゃいます。そりゃ、そこそこのものを書かれて当然ですね(えらそうな私)。

しかもしかも、この著者の名前もあのアーサー・マッケンからとったとは・・・こりゃ、もう参ってしまいました(笑)。今まで知らない私がモグリですね。今後は、ちょっと注意して著者の本を読んでいってみたいと思います。まあ、ほどほどに期待しつつってとこでしょうか。

素直にこの本は面白かったです。正統派ホラー好きなら、楽しめるでしょう、きっと。

肝盗村鬼譚(amazonリンク)
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2006年03月26日

「鬼」高橋 克彦 角川春樹事務所

onitakahasi.jpgどうしてもこの本を読んでいると思い出すのは、夢枕獏氏の「陰陽師」。本書も主人公は陰陽師達である(珍しく安倍晴明メインではない)。バリバリに鬼が主役として活躍する小説ではなく、鬼に仮託された人間の持つつくづく救われない性(さが)が一番の問題として描かれている。

高橋氏の書くものは、SF系・歴史系・小説系の3タイプがあるように思うのだが、割合良く読む作家さんである。時々、SF系が行き過ぎてややトンデモ系になることもあり、あまり好きではない作品もあるが、ホラー色の強い小説など結構好きな作品も多い。

本書は、ほどほどに楽しめる作品だと思う。実力はありながらも、あえてそれを誇示することもなく、黙々と日常の職務として仕事に励む主人公達。ある種の職人のような潔さが心地良い。普段は目立たないながらも、国家に一大事があるとなると、突如として日常の仮面に隠された姿を現し、尋常ならざる能力で国家的な難事件を解決していく。ある意味、NHKのプロジェクトX(?)とか勝手に思いながら読んでいました(笑)。

でも旅行中にちょこっと読んだりする分には十分OKでしょう。でも、心に残るとか感動した、とかいうタイプの作品ではありません。軽く読み流すものですね。

【追記】
一番最後のお話だけ、晴明が主役です。忘れてました。

鬼(amazonリンク)

関連ブログ
「陰陽師」荒俣 宏 集英社
「短編小説集」荒俣宏 集英社
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2006年03月19日

「神刻」荒川 佳夫 学習研究社

sinkoku.jpg聖遺物を巡り争う物語で、それを獲得した者が神の大いなる力を身に付ける。それ故に聖遺物を巡り、ユネスコの外郭機関やら「マルドゥーク」なる秘密機関に属する特殊な者達が争うという、粗筋に惹かれて読んだのだが・・・。

全然駄目。全く駄目。お話にならないぐらいのつまらなさでかなりの精神的苦痛を受けたかも?

だって、読み始めるや否や、錯綜したままのごちゃごちゃの人間関係のままでありきたり(菊池氏の二番煎じもどき?)のアクションが延々と続く。良く分からないままであっと言う間に80~100ページがそれで進む。中盤以降に申し訳程度にその小説の世界観というか設定が説明されるが、中身が全くない。聖遺物も何にも意味がないし、聖遺物を争う組織の設立由来も設定付けも全くできていない。そりゃ読み捨てる新書だからと言ってしまっては元も子もないが、酷過ぎません?

同じ新書であったも菊池氏や夢枕氏の伝奇小説等は、アクションと共にきっちりと作りこまれて架空の世界観自体が小説の魅力だし、だからこそその後の続刊もあるのだが、本書に関する限り続刊はありえないでしょう!!

エヴァからまさにぱくったとしか思えない「マルドゥーク」の言葉も意味分からずに使ってないかなあ~著者さん。子供騙し過ぎ。しかし本当につまらなかった。

まあ、さすがは学研さんというところでしょうか。(文字通りの)お粗末様でした。

神刻―龍の覚醒(amazonリンク)
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2006年03月11日

「犬」中 勘助 岩波書店

inu.jpg本棚を整理していた出てきた本です。読んだ覚えはありましたが、今日改めて読んでみてこういう内容だったとは…。まして岩波文庫だったから完全に「ヤラレタ!」って感じですね。あの「銀の匙」の中氏とは思えないぐらい強烈さで、ん!?江戸川乱歩の小説を読んでたっけ?と一瞬思ってしまいました。

でも、そういうカンジも読んだら納得してもらえると思う。それぐらいエグイ。肉欲に対する人の寄せる情念が実に生々しく描写されています。久しぶりにおおっとこのカンジ、これはキテル!と思いました。美しい恋愛も『純愛』でしょうが、純粋な肉欲から生じたある種の愛着として生じる執着心、それもこの域までいくと限りなく『純愛』に近いような感じさえしてしまうのが凄いです。勿論、それは狂気故のまさに狂おしいばかりの所有欲でしかないのかもしれないのですが…。

同時に、異教徒に辱められつつも見た目のカッコ良さと幾分かの優しさに心惹かれる女。心ならずも醜い男との生活を送りつつも、異教徒の男をひたすらに求める浅ましいまでの恋心。これもまた『純愛』なのかもしれません。

女はひたすら被害者の立場に置かれつつも、最後の最後まで偏った獣(けだもの)の愛である加害者の男の愛を拒み続けます。一見すると、可哀相な女性に同情するものの、読み進めていくうちに情欲に踊らされている男の方が哀れに思えてしまうかもしれません。

これ読んでいて、私は「オペラ座の怪人」に関してのロッテの行動を思い出さずにはいられません。もう20回ぐらいは見ましたが、ファントム好きの人達と話すと必ず意見が分かれるのが、ロッテが最後にファントムではなく、ラウルを選ぶところ。男性はまず、ロッテの無情さを口にします。手段はどうあれ、あれだけ尽くしてロッテを愛したファントムを捨て、ぽっと出の金持ちイケメンのラウルかよ~ってな感じですね。それに対して、女性はやぱりラウルをとるロッテの行動を評価するのですが・・・個人差なら分かるのですが、性別によりこれだけ評価が分かれるのも珍しいです。

勿論、ファントムとこの小説に出てくる加害者であり、情欲の塊である男とは同一視できないのですが、それでも根本的なところで非常に似通ったものを感じます。また、この小説に出てくる男も女もどちらもが『純愛』なのでしょう。『純愛』という言葉が、独り善がりで自分の感情の赴くままに心が欲する相手を求めようとすること、を意味しているならばですが・・・。

プラトニックとかどうとか、そんな瑣末な問題ではなく、本質的に『純愛』が野蛮な動物的な衝動に他ならないと思うのですが・・・。それゆえに人は非合理的な行動を平気で採る訳で、と同時に体が熱いと感じるのも当然なわけです。まさに常軌を逸していることこそが、『純愛』であるならば。

とまあ、いささか恥ずかしげもなく恋愛論めいたことを語ってしまいましたが、ある種の禁じられたゾクゾク感が味わえます。あるいは人によっては、遣り切れない憤りでしょうか。屈折しているが故に、先鋭化した人間心理の描写は秀逸でしょう。甘っちょろくて、砂糖をまぶしたような愛情に飽きた方にはお薦めです。相当刺激的ですし。でも、普通に幸せに暮らしたい方は、単なる犯罪者の心理?としか思えずに不快感だけが残るかも。でも、個人的にはこういうのは大変好きな部類です。怜悧な刃物で余分な飾りを落とした分、ギラギラと光る剥き身の人間の本性がかいまみえてくるようなんで(ああっ、病んでるかも私?)。

そうそう、小説自体のことも少し書いておくと。
舞台は回教徒が蹂躙し、略奪の限りを尽くすインド。登場人物は厳格な身分制度(カースト等)があり、登場人物はその最高位で敬虔なバラモンの苦行僧とまだ幼さの残る百姓娘(16歳!)。汚らわしき異教徒に陵辱されたうら若き娘が、それでもその美しい回教徒に心惹かれていることをバラモン僧に告白する。聖者として崇敬されていたバラモン僧だが、娘の祈祷する裸身を見る事によって情欲の獣と化す。バラモン僧としての秘術を使って自らと女を犬に化身させてまで、女を独占しようとするだが・・・。いつの時代も恋する者は狂気の沙汰だなあ~と思う一冊です。

犬―他一篇(amazonリンク)
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2006年03月01日

「ハーメルンに哭く笛」藤木 稟 徳間書店

fuefukku.jpg先日も読んだ盲目の探偵朱雀が主人公のシリーズものの続きです。前回のもの(黄泉津比良坂)も諸手をあげて傑作だ、とは言えないものの最近読んだものの中ではなかなか読ませる作風で、作中に豪華件絢爛に撒き散らされた知識の数々にいささか心惹かれるものがあって印象に残っていました。

そのうえに、これも先日読んで大感激した「ハーメルンの笛吹き男」を題材にした探偵物でしょ。池袋のサンシャインでやっている古書市で見つけたなり即購入してしまいました。

さてさて、で、実際の本はというと…。
前回は横溝先生のノリでしたが、今回は江戸川乱歩先生のノリですなあ~。軍部が幅をきかしていた昭和初期ぐらいが舞台。帝都を震撼させる謎の笛吹き男が起こす不可思議な犯罪の数々。ハーメルンが如く、子供達を30人もかどわかし、その手足を切断して放棄された遺体やら、なにやら怪しいサーカス団や浅草界隈の猥雑さなど、まさに江戸川先生を彷彿とさせます。

今や懐かしい(といってもピンとこない若い人もたくさんいそうですが…)エロ・グロ・ナンセンスの雰囲気がプンプンしています(笑)。元検事でありながら、今は吉原の法律顧問を務める盲目の弁護士探偵が複雑怪奇な謎を、皮肉や冷笑と共に快刀乱麻のごとく解いていくのはなかなかに鮮やかです。

前回と異なり、今回はプロットがかなりしっかりと作り込まれていて完成度も高いです。客観的に言うと実に良く出来ている最近では珍しい本格探偵物とでも言えましょうか。出てくる登場人物も、小人やフランケンシュタインからマッド・サイエンティストに至るまでまさにオン・パレード。いやはや豪勢です。

ただね、これだけの作品であり、批判するようなことは何もないんだけど、個人的にはどうにもイマイチのり切れないのがなあ…。読んでる時は、結構引っ張るものがあるんだけど、横溝氏や乱歩氏の読後になんとも言えない余韻が残るものが何もない、それが私的にはお薦めとまでは言えなかったりする。

気分爽快な読後感や、感動・感激、あるいはなんとも言えないやりきれなさや、最悪の場合、鬱になってしまいそうな落ち込み感、そういったものがまるで感じられなかったりする。これはもう著者との相性の問題なのかもしれません。面白かったんだけど、なんか素直に笑顔で面白かったよ~!と言えないのが残念。

とにかく、決してつまらない作品ではないので機会があれば読んでもらうとこの気持ちが伝わるかな?エロやグロの表現も、どぎつくないのはむしろ嬉しいのですが、その背後にある人間のドロドロした感情を表現し切れていない、そんな不満足が残ってしまうのかもしれません。

ハーメルンに哭く笛(amazonリンク)

関連ブログ
「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店
「黄泉津比良坂、暗夜行路」藤木稟 徳間書店
「ハーメルンの笛吹き男」阿部 謹也 筑摩書房
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2006年02月28日

「われ巷にて殺されん」紀田順一郎 双葉社

古書といったら、まずこの方でしょう。神田神保町を舞台にした小説を書かせたら右に出る者がいないでしょうね、きっと。

さて、いつものように舞台は神保町。本の探偵を自称する古書店主の元に持ち込まれる人探しの依頼。混沌とした戦後の古書業界、神保町界隈をある程度知っているなら、妙な親近感を覚えつつ、謎のある過去を持つ男に徐々に惹かれていきます。派手な殺人事件等とは無縁ですが、切ないまでの人間の人生が描かれています。

特にここでは、猥褻本の印刷が絡んできたりします。もっとも猥褻本と言っても、内容はピンからキリまで。私の所にも大正の頃の法律書があるが、あくまでもアカデミックなもので用語にはラテン語まで使われているのに、売淫(売春)についての箇所がなんと、伏字になっている。×××って。こんな本にまで猥褻という概念を見出す当時のお役所の姿勢には、ある種の狂気に近いような執念を覚えますね。現代のヘアーが見えた、見えないなどという即物的な次元ではないのがまさに時代を感じさせます。

一時は卒論のテーマに考えたもんなあ~、「売春」か「賭博」かと。どちらも取り締まる為の根拠がはなはだ恣意的で、国家による建前論的なものが鼻について毛嫌いしてたもんなあ~。根っからの自由主義者だったし、私は。統制経済も大嫌い!! それでいて官僚を目指していたのは…(苦笑)。大いなる矛盾って奴ですね。話がそれた。

読んでる最中は確かに興味を惹くんだけど、冷静になってみるとどうなんでしょう? ラストはある意味しっかりと解決しているんだけど、探偵の役周りがちょっと…。あまり意味がないような気もしたりして…。

いつも以上に読者を選ぶ本でしょう。古書マニアでも一部の人だけが面白いと思うかも?私自身もそれほど面白いとは思わない。時間のある時にちょっと読む分にはいいかな? 古書に興味のない人には、つまんないだろうな~この本。絶対に読まない方がいいと思う。かなり特殊な本かも。全体としてあまりお勧めしません。

アレレ…amazonにもないのかな?そんなに古い本でもないんだけど。

関連ブログ
「古書街を歩く」紀田 順一郎  新潮社
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2006年02月17日

「黄泉津比良坂、暗夜行路」藤木稟 徳間書店

yomotu1.jpg前巻の続きで読み続けてしまい、結局朝の3時までかかって読破しました。今日の仕事は辛かった(眠いんだもん…ふああ~)。でも、ここんとこしばらくの間では珍しく夢中になって読めた本でした。いささかの不安のあった結末も破綻せずにきちんと説明をつけて収束させるだけの力量はある著者さんでした。一安心!

一定水準の満足感をもたらせてくれる小説でした(笑顔)。まずまずというところでしょうか。

ただ、かなり厳しめに言うと、普通の水準での解決でしょうか。驚くような結末ではないです。ああっ、あのパターンね。と推理小説をある程度読んだことのある方なら、すぐにフフンっと頷けてしまうのがちょっと残念かも? 貴種流離譚とでもいうべき話だと、似たようなものをそれこそたくさん読んだことあるからなあ~。前巻が結構な勢いで独自世界に突っ走っていきそうだったので、別な意味で期待していたんですが…。その点については、せっかくの著者の博識が生かし切れていなかったように思えてしまうのですが…なんかもったいないです。

面白いことは面白いんですが、やはり徳間書店さんのノベルズの域を出ていないのかあ~とも言えるかもしれません。ここまでせっかくドロドログチャグチャ系の日本の粘着質的な地方風土を舞台にしながら、思ったよりはサラっとしているし、新青年のようなシニカルに人間の内面を捉えるような側面もない。まして、夢野久作のような完全に、全く新しい独自の領域に突っ込んだ天才の作品でもなかったです。

で、段々冷静に読んでいるとグノーシスの理解の仕方にもいくつかの間違い(?)が散見され始め、当初の博識さも薄っぺらな感じがしてきてしまったのは悲しかった。これは謎解きの進展と共に、相乗効果で私のテンションが下がってしまっていくことにも拍車をかけた。

とまあ、あまりに期待して読むとガッカリするかも? 通常の小説として読む分には、十分に楽しめるし、並以上だとは思います。但し、歴史に名を残すような傑作ではないなあ~。面白いけど、新鮮な感動を伴わない作品でした。図書館で借りて読めば十分でしょう。ブックオフで購入した割には、想像以上に面白かったんだけどね。

悪くはないので、ちょっとした異世界で遊ぶにはいいと思います。ある程度の読書家には、最後の最後で物足りなさが残りますが、それは無い物ねだりかもしれません。ちょっと生意気な感想を私もいっていますが、最初に期待していただけにちょっと惜しい!! でも、最近の中では、面白かったのは確かです。

黄泉津比良坂、暗夜行路(amazonリンク)

関連ブログ
「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店
こちらが前巻です。
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2006年02月15日

「黄泉津比良坂、血祭りの館」藤木 稟 徳間書店

yomotu.jpgこれは&これは、久しぶりに装飾過剰な極彩色なまでの推理小説ですなあ~。

いかにも日本という国の地方にありそうな土着的な匂いがプンプンする御当主様が出てきます。今でも実際にあるそうですが、地方においては未だに何から何まで全てにおいて人々を支配するドンとでもいうべき有力者っているんですよねぇ~。閉ざされた地域に、地元の人々からは雲の上の人と思われ、敬われている一族。古来よりその地域を宗教的権威によって統べてきた祭政一致の伝統的な権力はなかなかに強力です。

莫大な資産に、血族間の濃密な婚姻による澱んだ血筋。古代エジプトの王家が選ばれた血筋を守る為、俗物の血による穢れを避ける為に近親婚を繰り返したいたのと同じ論理が世界中にはしばしば見られます。クレチェマーが挙げていたような閉ざされた地域における有力な家系にしばしば見られる血の弊害がここにも色濃く描かれています。

基本的にこの手のノリ大好き。横溝正史氏の小説に出てくるあの犬神家のノリです。そしてその一族に次々と起る惨劇。出る人出る人が確実に一人づつ死んでいきます。一族の掟の中で全てのことが完結し、そこで起る事柄は世間には決して明らかにせれず、警察さえも関与させないほどの政治力。その重々しさがね、うん、お約束ですがイイ!

しかもその舞台たるや筆者が趣味に走って、自分の願望を満たさんが為に描き出した、何とも豪奢でありながら、怪しい呪的文様や意匠によって、隅から隅まで計算され尽くしたこの世にありえないほど奇妙奇天烈、且つ壮大な意図に基づく洋館だったりします。奥深い山の中で、突如として出現するこの世ならぬ幻想空間。贅を凝らした調度や建築物だけでも本書を読む読者は幻惑されること間違い無しです。

この本は、これに続く巻と合わせて謎が解決されるらしく、今この本を読み終わった時点では全然謎解きがされていなかったりする。それでもそこそこ面白くて引っ張るのだから、次の巻の最後がどうなるのかが期待と不安で入り混じっているのが正直なところ。

莫大な財産相続や妾の存在、家長の屈折した性癖に歪んだ家族構成、濃い血が生んだ美しいが脆弱な神経を持った一族の人々など、まさに推理小説の王道でしょう(ニヤリ)。もっともある意味、その王道をあえて踏襲しつつどこまでそこから逸脱できるのか? あるいは、その王道における完成度を極限まで高めるのか? 本当に最後の最後次第で、この小説の評価はガラリと変わり兼ねない感じがしています。どっちかなあ~ほんと???

実際に読むと分かるのですが、最初に感じるのはまずは黒死館殺人事件のあの衒学的なノリに圧倒されます。と同時に、その描写の過剰さの割に伝わってくるイメージはイマイチであの文章はまさにペダンチックなだけで実質何もない空虚さを感じてしまうのは、私だけでしょうか? 多分に著者の一人よがりになってしまっていて、非常にもったいない感じがしてならないのですが・・・。

その後に出てくる辺りも京極氏の「陰摩羅鬼の瑕」みたいな…。どちらが先に書かれたものか知らないのですけど。いささか、口うるさいこと言ってますが今のところはそれなりに面白いです。後は次巻の謎解き次第ですね、ほんと。

全編にあふれんばかりのオカルト的な(それ以外のものも含めて)知識などは、結構楽しいかも? 知っている事もたくさん書かれていましたが、知らない事もたくさんありました。さてさて、どうなるのでしょうか? 楽しみでもあります(笑顔)。

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こちらが続きで結論が出るはず…
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2005年12月29日

「新釈古事記」石川 淳 筑摩書房

なんか違う~ってのが第一印象。古事記はもう何回も読んだし、いろんな人が書かれたのを読んだけど、この古事記はあまり好きではないなあ。読み易いと言えば読み易いのかもしれませんが、なんとも安っぽい文体のように思える。別に格調高くなくてもいいけど、俗っぽ過ぎていただけません。

ヤマトタケルやスサノオノミコトなど、有名な英雄も出るし、何を問われても一言で答える一言主の話もあるけど、どうにも読んでいて面白くない。少なくとも私の感覚では古事記を読んでる気がしません。

訳もしっくりこないし、なんだかなあ~っていう感じです。もっと読んでいて面白い古事記があるはず。どうせ読むなら、他の古事記をお薦めします。

読んで早く終わらないかな?っていう本は駄目でしょう。どうせなら、もっと&もっと夢の膨らむ話じゃないとね!

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2005年12月07日

「短編小説集」荒俣宏 集英社

tannpen.jpg荒俣氏の短編集である。この本の場合、氏の得意な博識をベースにしたものといささか異なる。博物学者、あるいは翻訳家の荒俣氏ではなく、まさに作家としての荒俣氏の手になるものである。

しかし、本当に荒俣さんって初期の翻訳家の時と比べると、文章が読み易く上手になられたなあ~と実感させられる。下記の目次のうち、福子妖異録から平安鬼道絵巻までなんて、非常にいい味が出ていて結構好きだったりする。氏の博識さは行間から滲み出ているのは隠せないが、それ以上に読みものとしてウマイ!と思う。あとに残る余韻をうま~く生かしていると感じる。

私風情が言うのもなんですが、ストーリーテラーとしても高得点だと思うなあ。逆に、後半のものは、ちょっとパス。いささか毛色が変わったものも面白ければ何でもいいのですが、私には面白いと思えなかったかも? 後半だけ削れば、完成度の高い短編集だったような…。

平安鬼道絵巻は実は、他の本でも読んでいて既に知っていたけど、それでもそこそこ面白かったし、福子妖異録とかは、非常にそそられた。

昔、うつぼ舟に入れて流したとされるヒルコやそれが恵比須とも呼ばれることなど、個人的に調べていたことがあったので、常人とは異なる存在が福の神になる、そういった系の話が大好きなもんで(満面の笑み)。そういった意味でも、お薦め!!

可坊草紙(べらぼうぞうし)も見世物小屋とか、お化け屋敷が好きな私には興味深かった。思わず、江戸川乱歩の一寸法師を思い出しながら、読んでいたりする。

弁天小僧もGOOD! 当時の衆道の様子が彷彿としてくるし、威勢の良さもいい。歌舞伎か何かの演目にでもしたいくらい。ここまでは読んで外れはないと思う。

だ・け・ど・・・。後は知りません。後半までは保証しませんが、読んどいていい一冊かな。
【目次】
福子妖異録
可坊草紙
弁天小僧
平安鬼道絵巻―九つの鬼絵草紙
 緊那羅
 乾闥婆
 夜叉
 摩〓羅伽
 戻橋
 茨木童子
 丑御前
 橋姫
最後の闘い
目玉の熊ちゃん龍動奇談―奇想天外博物館小説
生える悩み―香港ファンタジー・ノベル
長嶋明神縁起
無憂物語―ハワイのカメレオン・ハンターから聞いた話
ホーキング博士の四次元生活
恐怖をふたたび愛する―ホラー小説と現実の恐怖

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2005年12月01日

「セクシャル」桜井亜美 幻冬舎

sexual.jpgいつも通りの桜井氏定番の世界観。10代の少年少女限定で許される一過性だけれでも、限りなく純粋、ピュアでいて虚無的な感情。素直に生きたいと思いつつ、一人で生きられず、周囲に不協和音を産み出し、単なる利己主義に走っているだけに過ぎない独善的な故に魅力的なライフスタイル。

いかにも神経衰弱気味の現代的少年少女にありがちなものを、逆に言うとこの著者ほど、鮮やかに文章で表現しているをみたことがありません。行動は異なるものの、自分がそういった社会に対する束縛感に苛まれていたので、人ごとには思えないのも事実。しかしその一方で社会に出て人に使われ、人を使い、組織を動かして社会を受動的に捉える観方から、主体的に働きかける対象として捉える観方に変わると、また違ってみえるのも事実。

嫌な言い方ではあるが、別な視点からみると、子供だ幼稚だとは言わないものの、やっぱり自分一人の観点からしか見ていない視野狭窄はバランス感覚の欠如に裏書されたものだと言えてしまうのを強く感じる。私にも経験があり、未だにひきずっているのものがあるが、ちっぽけな自分に対する薄っぺらな自負や自尊心は、往々にして自分以外の他者(若いときには世間や社会がこれに当たる)に対して不寛容で対処しようとするが、それは失敗する。

もっと高次元でみた場合(私の勝手な考えだと仏教的な悟りもこれに入るかな?)、何よりも他者への寛容を実現しながら、自己の独自性の確保が自然に出来てしまうように感じるのですが・・・。う~ん、この本の内容とは、違う話になっているような???

まあ、そういったいろんなことを考えさせてくれるきっかけになる本です。桜井さんの本は、なんだかんだと言いつつ、10冊以上読んでいて立派な読者のくせにいちゃもんつけてるようなこと書いてますが、どうなんでしょう? 本書もそうですが、非常に純粋でそれでいてガラスのように怜悧で脆い心理描写には、真似できる人はいないのではないでしょうか? 読むたびに10代の頃の感情がリアルに甦ります。一方で、それに対する自己否定までいかないものの、本に描かれる感情を礼賛するのに対しては、異様に拒否反応も覚えます。

周りを否定するだけで、自分が我がままであることを当然の権利として周囲にまで認めさせようとする若者故の傲慢さをもそこに感じてしまうからでしょうか?いつものことながら、私の中にアンビバレンツな感情を起こさせる本です。

主人公の少女は、性的自由を主張する女性を中心に集まって共同生活をする特殊なコミュティーで育つ。後に警察や福祉事務所の手で、いわゆる普通の社会生活に適応するべく保護観察下におかれるのだが・・・。

彼女は、それを社会への『束縛』としか認識し得ない。コミュニティーの主催者であった女性から教えられた自由への渇望から、商品として少女の性を売ることで、擬似的な『束縛』からの解放を図る。更に究極的な束縛から解放の手段として・・・。

見かけの自由と、本物の自由の違いが分かるでしょうか? 放浪の末に、自給自足する方がはるかに自由のようにも感じますけどね。社会に寄生している時点で、自由を放棄している論理的矛盾に気付かないのも、また10代的感性の素晴らしさかもしれませんが・・・・。

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2005年11月28日

「機械たちの時間」神林 長平 早川書房

1987年に出されたんですね、この本。もう20年近く前のSFなのに、全くと言っていいほど、古さがありません。いつもながらの神林氏の描く近未来(擬似未来?)像は、的確であり、またリアルであり、繰り返しで恐縮ですが日本の誇るSF作家というのは、これを読んでも納得できます。

火星での兵士(マン・マシン・インタフェースを脳内に装着した兵士)だった記憶を持つ男が主人公。生体脳とマシンが一人の生身の人間の中で通常なら一方向ベクトルしか持たないはずの時間を巡ってせめぎ合う。火星における敵マグザット。いるのか、いないのか、その実存さえ不明な世界で、男に降りかかる事件。時代を超え、場所を越え、記憶を越え、それでも主人公はかつての火星における戦友を尋ねて行動していく。

ここで展開されるのは、時間という流れを多次元的に捉えながら、その通常とは違う現状把握の過程で気付かされる、自分という存在。いつもながらとはいえ、神林氏に固有な世界観の認識手法が私の現実感覚を非常に危ういものにしてくれる。

こういうの読んでると、普通に仕事をして生きていくという日常観をふっと、突き抜けてしまいそうで怖いです。時々、こういうの読むと、全て捨てて旅に出たくなってしまうんだよなあ~。まあ、今はさすがに大人になったので(いい意味でか、悪い意味でか?)そういうことしないけど、考えさせられました。

個人的には、こういうのは好き!! でも、普通の人には、好まれないであろう作品です。月並みなポップカルチャーやサブカルチャーのような底の浅いエセ文化論的なものとは、およそ正反対な超ハードな方です。哲学的な思索がお好きな方にはいいかも? もっとも好きだといいながら、私もどこがいいのかよく分からないのですが・・・? でも、イイ!

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関連ブログ
「プリズム」神林長平 早川書房
ラベル:SF 書評 小説
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2005年11月27日

「エイリアン秘宝街」菊地 秀行 朝日ソノラマ

菊池氏の事を知っていて、この本を知らないのはもぐりかと・・・(オイオイ)。まあ、一部の方にはソノラマはちょっと読む気がしない、というお声も分かるのですが、これは自信を持ってお薦めする一冊です。

初めての時は借りて、2回目は買って、その本は友人にあげてしまったので今回久しぶりに読みたくなり、ブックオフで見つけて3回目の読書ですが、何度読んでもイイ!面白い!と思う本です。

ジャンル的には高校生が主役のジュブナイルものでアドベンチャーものになるのかな? SFと言ってもいいけど、何しろメインは宝探し。個人的にはインディージョーンズやハムナムトラよりもこっちの方が魅力的だと思いました。

表向きは、しがない都立高校の高校生。しかし、裏の顔は未だ10代にもかかわらず、世界で名立たる指折りのトレジャーハンターの一人。先祖伝来、トレジャーハンティングを生業(なりわい)とし、歴史上にその名を留める宝の数々を密かに発見してきた一族の末裔だったりする。

御先祖様の発掘したコレクションの一部だけでも、殷墟の地下で発掘された黄金の壺、古代ペルシアを祖とするゾロアスター今日の光神アフラ・マズダをかたどった銀面、ギリシア文明の聖地アテネの土中から掘り起こした純金製五十分の一パルテノン神殿模型、誇り高きローマ皇帝ネロの宝剣、インドはハマウルヤ朝の全ページ黄金作りの仏教経典、中国歴代王朝秘蔵の大真珠、珊瑚、金杯、杓。黄金の糸で織ったカロリンガ王朝の王衣、セルジュク朝トルコの栄光を示すダイヤモンドつくりの馬車と純金のハーブ。フランスの華ブルボン王朝ルイ14世所蔵の宝石二百粒三千カラットを散りばめた黄金の手袋、悲劇の主、ロマノフ王朝皇帝ニコライ二世が革命勃発の日に隠した二千五百三十六個のダイヤを散りばめたカサリン女帝の宝冠。などなど。

主人公の高校生は、多額の寄付で校長を意のままに操るだけでなく、日本の官僚・政治家を含めて金で影響力を行使できる全てのものを利用し、電話一本であらゆる特別待遇と、宝探しに関わる極秘情報を入手・利用できる環境を確保している。当然ながら、CIAやKGBの有する情報も利用でき、軍事用に開発された特殊機能の武器や装備も全て「宝探し」、この言葉の為に用いられる。莫大な投資がそれを可能にするだが、それだけの準備をしても得られる見返りは途方もなく大きい。

但し、最新の装備や念入りの情報収集も、あくまでも宝探し成功の可能性をアップさせるだけで、実際に成功にまで辿り着けるのはトレジャーハンターのほんの一握りに過ぎない。たとえ宝の場所を探し出し、発見しても無事に生きたままそれをこの世の中に持ち帰れるのは、さらにその何百分の1以下に絞られる極限までにシビアな生き残りゲームであったりする。その辺の描き方が実にうまい。

数々の伝説に彩られた宝探しはあるものの、本書のものもまさに伝説に由来するといういわくつきの宝がその目的だったりする。
元禄五年(1692年)、日本橋で呉服屋を開業し、主人は久兵衛。大阪出身といわれる。商才に長けていたらしく、3年後には時の老中柳沢吉保の庇護を受け、一時期、同じ日本橋の大呉服店「白木屋」を凌ぐほどの繁盛ぶりを示すが、元禄九年十一月失火により店は全焼。久兵衛および妻よね、番頭、手代、下女、丁稚にいたるまで、総勢六十名近い焼死者を出したという。夫婦に子供はなく、やがて店の名もその存在自体も、時の流れの中に忘れられていった。
残された記録が一致して語るのは、桐屋の豪奢な生活ぶりである。元禄十六年に出版された「古今商人記録帳」によると、消失年の資産は銀七千九百八十六貫八百匁。銀一匁を金一両として約十三万三千百十三両、これに営業開始以来の資産を足すとざっと五十万両はくだらぬ蓄財があったという。ちまみに商売敵の白木屋の江戸資産が商売の大拡大をみた元文二年で約六万両だ。
主人の久兵衛は病気がちで、あまり店に姿をみせることはなかったというが、病床からの指示は適格このうえもなしで、尾州、紀州家の大大名の他、江戸城本丸御座敷御門の出入札も有し、諸大名からも重んじられていたという。

こんな感じで出てくるものが、まさに忘れ去られた宝として関係してくるのでなかなか楽しいんですよ~。勿論、エンターテイメントに徹する著者ですから、アクション的なものもOK!スピーディーなノリでドンドン貴方の知らない世界を楽しませてくれます。純粋に娯楽物として楽しめると思います。

本書の成功でシリーズ化され、私もほとんどのシリーズ読みましたが、やっぱり最初のこれが一番面白いです。トレジャーハンティングという夢の職業と表裏一体で、人としての大切なものまでを引き換えにする「業」のようなものまで描かれていて、一種の切なさもあってうまいです。いくつになっても宝探しに憧れる人には、まさにうってつけの一冊です。とにかく楽しめると思いますよ~。

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2005年10月10日

「プリズム」神林長平 早川書房

何度この本を読んだだろうか? 4回か5回か、それ以上か? 相当昔に読んで以来、何かの機会があると読んでしまうのだが、いっこうにこの本の持つ世界観は色褪せない。私個人が日本人のSF作家として真っ先に思い浮かぶのがこの神林氏であり、その後も時々はSF小説を読むものの、氏以外でSF作家として名前を記憶するほどの衝撃を受けた人はいない。

もっとも最近の小説では、ジャンル分けという概念自体が希薄であり、SFという枠があってもなくても関係ないのですが、神林氏が一流の作家であることは間違いないと個人的には確信していたりします。何故、こんなにすごいなあ~って、思うかというと…。

とにかく『言葉』というものの本質についての理解が深い。『言葉』をここまで理解し、言語という狭い認識にとどまらず、(万物に内包される)世界・社会を構築させるシステムとして捉えるある種の理系的発想が、サイバーパンクなんてメじゃないぜ!ってなくらい新鮮且つ合理的であり、その一方で言霊(ことだま)信仰にも近いような世界観がたまらなく魅力的だったりします。

本書の魅力のごく一部さえ、おそらく私の表現能力では伝えられませんが、物事を観る視点が変わるとでもいうのでしょうか、慣れ親しんだ目の前にある現実世界が一瞬にして異世界に変化する、そういった凄さを実感できるのが衝撃的です。単なる小説なのに、この衝撃力には脱帽します。

こんなことばかり書くと、読むのがきついだけで息抜きの出来ないガチガチのハードSFかと誤解を招くかもしれませんが、違うんですよ~(クックックッ)。捉えようによっては、SFというよりもファンタジーかと思えてしまうのがこれまた凄かったりする。無機物のシステムが限りなく幼児のようになってしまうメモタルフォーゼ(変容)には、頭の固い大人にはついていくのが難しいかも? 

SFとはいいながら、柔軟な思考を持ちつつも危うい思春期のような繊細な感受性のある方にうってつけだと思うんですけどねぇ~。本書自体が短編集のようでもありながら、その世界観には複雑に関連したものを持っていて、それぞれが有機的に結びついている。だてに青雲賞(SF関係の賞です)をとっていないなあ~と納得させられます。

具体的にどんな内容の話かというと。
都市上空に浮かぶ都市制御体によって管理された世界(ここまではオーソドックスなSF仕立て)で、人びとはもっとも合理的・快適に生活が営めるように調整・管理されていた。人びとは、制御体にすべてを委ねるだけで最大公約数的な幸せが保証されているのですが、そういった制御体に認識されない人物が存在した。彼らはいるにもかかわらず、社会として認識されず、完全に完成した世界にとって危険な不安要素であった。

目の前にある現実世界。しかし、これがあくまでも上の世界と下の世界の間にある、中間世界に過ぎなかったならば…。世界は垂直的層構造をもった社会であるのかもしれない?世界のあり方が変容していく中で、人の存在、私という個人の意義、様々なものが新しく問い直されていく。

どうしたってこの説明や紹介ではよく分からないし、伝わるわけもないのですが実物の本を是非見て、ちょっと読んでみて欲しい。巷にあふれるSF小説とも違うし、単なる小説とも違う。読むだけの価値ある小説であることだけは保証します。少なくとも著者の作り出した世界観はきわめて魅力的で夢がある。ありえないのだけど、論理的にはありえるのかも知れない虚構性がたまらない魅力です!! はまると著者の本、読みまくりで出費がかさみそうですけどね・・・責任は負い兼ねます(笑)。

~色というのは、何も無いところに色たちが降りてきて、初めて鮮やかな色を目にすることができます~
こんな世界観さえ出てきますがついていけますか?皆さん。童話ではありません。

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2005年10月05日

「デセプション・ポイント」ダン・ブラウン 角川書店

desept.jpgご存知「ダ・ヴィンチ・コード」で一躍、世界の中でも有数の有名人となったダン・ブラウン氏の作品です。実は、この本を読むのはちょっと避けていたんですよ。読む前から、想像していたある理由からなんですが・・・。

「ダ・ヴィンチ・コード」には、私が知らないことが非常にたくさんありましたし、この本を読んで今まで漠然とキリスト教に抱いていた胡散臭さ(=表現が適切では無いですが、作られた歴史等々)がある方向からではありますが、明確に形として提示されたのが素晴らしいと思いました。何よりも着眼点とその見つけた素材の料理の仕方が卓抜していると思っています。

この本によって、世界各地で見るキリスト教美術・建築等々の素晴らしさと同時に、それが内在し、秘匿してきた問題点があることを示した、それが本当にすごいなあ~と感動しました。おかげで私も関心を新たにし、いろいろな関連書籍を読むきっかけになったんですから、まさに感謝&感謝です。

「天使と悪魔」については、バチカンという知名度の割に実体が知られていないものを採り上げ、知的好奇心はもとより『信仰』というものについて非常に考えさせられ、物語として実に素敵な小説でした。ダ・ヴィンチ・コードが知的好奇心に訴えかける感動だったのに対し、天使と悪魔は感情に訴えかける感動だったように思います。あくまでも相対的にですが、私の場合では。

どちらも私の大のお気に入りですが、今回の「デセプション・ポイント」は読む前からこれらとは根本的に違うだろうなあ~と予想しておりました。勿論、読者が未知の情報・知識がふんだんに露出し、ハラハラドキドキのスピーディーな展開、ちょっとしたロマンス。ブラウン氏のいつものお得意パターンは変わらないだろうなあ~とは思いつつも、何か新しい切り口や着眼点がなければ、人は新鮮な感動をしませんから・・・。

で、実際に読んでみると。
恐ろしいほどに私が想定していた通りの本でした。著者のもともとのスタートだったSF的な素養を感じさせつつも、舞台はまさに映画によくある政治・陰謀もの。まあ、逆に言うとダン・ブラウン氏の作品はどれもがそのままいつ映画になってもおかしくないものばかりですけどね(いい意味で)。勿論、ストーリーもしっかりされているし、主人公達は、最初から最後まで息つく暇なく、追われ、探し、闘い、休み無く酷使されます。読書が少しでも気が抜けないように、次から次へと、謎と追っ手と回答が与えられて読者を離しません。私も結局、睡眠時間削って読んでしまったのでまんまとはめられた一人です(苦笑)。

アメリカ政府が情報収集・解析・攪乱を含めた情報戦略に莫大な資金を費やしていることやネットや通常通信のありとあらゆるものを調べて対テロや国際政治の駆け引きに使っていることは、以前から個人的に興味を持っていて知っていたので何を今更・・・的なとこもありましたが描き方はやっぱりうまいです。(googleがNASAと共同研究とか、世界盗聴システム「エシュロン」とか、その手の情報は普通の新聞やネットニュースで無限に情報ソースありますしね)

NASAの地球外生物探査計画(SETI)もずいぶんと以前に話題になりましたもんね。私も大喜びして記事読んでた覚えがありますが・・・。まあ、そういったものを小道具にしながら、政治的な駆け引きの最たるものである大統領選を絡めつつ、個々の団体・個人の思惑等が複雑に交差しながら、いかにもありそうな人間ドラマを描いています。

心憎いことに、しっかりラストも王道をいってますしね。ダン・ブラウン氏の他の作品読んでなければ、絶対にもっと面白かったんだけどなあ~。3作とも同じパターンは辛いです。この人の作品でなければ、読者をなめんなよ~と怒りたいぐらい、本当にそのまんまのパターンです。何から何まで一緒なんだもん。さすがに今回は辛かった・・・マジに。付け足しのロマンスはもういいでしょうに、007じゃないんだから。

知らないこと(細かい科学的知識)もたくさん載ってましたが、本質的な意味でこの本読んで知らなかったなあ~と驚いたり、感動したことはなかったです。小説としては、読み易くていいんだけど、退屈しのぎに読む小説レベル。少なくとも、私にはこれは読まなくてもいい本だし、想定していた通りだったけど、予想を裏切ってくれるのではなどという隠れた期待もあっただけに、がっかりした。

普通にこの本だけ読めば、それなりに楽しい小説だとは思うんですけどね。ちょっと思い入れが大き過ぎるので、残念でした。まあ、ブラウン氏のファン故の愚痴みたいなもんです。でも、ブラウン氏の本を読むなら、「天使と悪魔」か「ダ・ヴィンチ・コード」をお薦めしますね。両方とも傑作ですよ、本当に! ミステリーとして読むべきものではなく、そのまんま小説として読む方がいいと思いますけどね(あの本で謎解きを期待すると、違った感想になるかもしれません)。

ちょっとだけ、粗筋も書いておきます。
大統領選が一つの舞台。現大統領を支持しながらも、実の父親がその最有力候補者の女性が中心人物の一人。しかも彼女自身も政府の情報機関に勤める人物だった。その彼女が突如、大統領から呼び出される。訳の分からないまま、大統領の指示でNASAの長官と合わせられる。そしてそこで【世紀の大発見】を知らされる・・・。
一方の舞台は、政府の金食い虫でありながら、成果も出せず国民からの批判の目を浴びるしかなくその存続が危ういNASA。予算削減と民間への宇宙市場開放との要求に押しつぶされそうになっている。これらの両舞台を背景に、様々な思惑で動く政治や陰謀満載の娯楽小説ってとこでしょうか。これ以上はネタバレになるので、自粛。

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2005年09月29日

「薬師寺涼子の怪奇事件簿 夜光曲」田中芳樹 祥伝社

yakou.jpg知っている人は誰もが知っている銀英伝(銀河英雄伝説)や創竜伝の作者様のご本です。この人の小説は、どれも非常に人気が高くシリーズ物が多いのでも有名ですが、長い割にテンションが落ちずに引っ張る筆力にはいつも尊敬の念を抱いておりますが、これは予想ハズレでした。

思いっきり惰性で書きなぐってないか~い? という感じ。田中氏の作品は、文中にあふれる毒舌が一つの魅力であり、きちんと調べられた事実に、いかにもありそうな創作をプラスした著者一流の社会批判もなかなか痛快である種のストレス発散になるぐらいのカタルシスがあるのですが、本書にはそういうのがほとんど感じられない。

またいつも出てくる怪物等も、ちょっとひねった素敵な物が多いのだが、今回は安易過ぎて3流C級もののSFか特撮ものになってしまい、非常に残念でした。結構、好きでこのシリーズも毎回読んでるのになあ~チェッ!

でね、本当はつまらないはずなのに、何故かそれなりに読めてしまうのが悔しいです。ちょっとした息抜きには、やっぱりこういう本も欲しかったりする。いつものが極上の千疋屋のデザートなら、これは普通のスーパーで売ってるプリンとかのレベル。でも、それなりに食べれてしまって美味しかったりするのだから困る。図書館で借りて読みましょう。買うのはさすがにもったいないです。

では、あまりこの手の本を御存じない方向けに、ざっと登場人物のご紹介。主役は東大法学部を卒業し、当然の如く国家一種をパスして警察官僚になっている見目麗しき27才の才媛が主役。それが日本最大の警備保障会社のお嬢様兼大株主。お父様の人脈は、当然、警察本庁内部に及び、自分の会社ではたくさんの天下りまで受け入れているという素敵な御実家をお持ち。本人自身がラテン語を始め、語学にも堪能で勿論、能力上は何をとっても欠点がないのだが、人間性に致命的な欠陥あり・・・!

なんせ通称「ドラよけお涼」。その問題ある性格ゆえに、ドラキュラさえもよけて通るという意味で警視庁では、もっぱらの噂なのである。まるで「カミソリ後藤田」みたい(笑)。

首都東京で頻発する常識想定外の難問に、お供として官僚のお守り役たる男性(ノンキャリアで年上)を引き連れてバッサバッサと快刀乱麻のごとく解決していく訳です。名目上の上司さえ、自分の意のままに操り、ゆくゆくは警察庁を乗っ取り、好き放題の活躍(?)をしようと計画している内乱首謀者(?)であったりします。

日本にあふれる不条理な論理や常識を、一切合財無効にしてしまうその迫力はなかなか頼もしいものを感じますね。しかも、根は善人でお金持ちゆえ、汚職や賄賂のようなさもしい役人根性を毛嫌いするあたり、庶民の人気を得そうです。但し、現代の女傑は、義ある人ではなく、その行動原理が究極までの利己主義っていうのが、いかにもいまふうでまたそれが魅力ともなっています。

きっと10代ぐらいがメインの読者層でしょうね。それにプラス20代の学生ってとこかな?暇つぶしに読むには、いいと思いますよ~。これも1巻から読まれることをお薦めします。今回のは最後が特にいけてないのでパスしてもいいと思いますけどね。

ちなみに一応今回の話としては、新宿御苑で初夏なのにいきなり木々が枯れ落ちることからスタート。すわ細菌兵器のテロか・・・なんてノリで始まります。後は読んでいたら、終わってしまうといういつものパターンです。

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ラベル:田中芳樹 小説
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2005年09月11日

「敦煌」井上 靖 新潮社

tonkou.jpg映画「敦煌」でお馴染みのって、いってももう相当古い映画で内容はほとんど記憶に残ってません。映画に関して覚えているのは、冒頭に出てくる売り飛ばされる西夏の女と、西夏の王に謀反を図るものの、殺し損ねて逃げられた時に王が叫ぶ言葉「歴史に名を残すものはお前ではない!」。これらの二つだけが異様に鮮明に覚えています。

この本も以前、読んだかもしれません。今回は正直読んでも新鮮に感じなかった。面白いか否かと問われれば、面白いんですが、今回読んだ感想としては、まあまあってとこでした。

粗筋はというと。
本人も誰もが受かると思っていた科挙(中国の官吏登用試験)に落ちてしまい、呆然自失の時に、たまたま奴隷として売られていた西夏(西域の新興国家)の女を助けることになる主人公。その時にもらった布キレには西夏の文字が書かれていた。野蛮な国である西夏に、文明的な漢字がある。そして、その文字を読めるものがこの都市には誰もいない。文字をきっかけに西夏にとりつかれた男は、西夏の地を目指して旅に出る。想像もしない危難と偶然に翻弄され、男はいつのまにか西夏の軍の一員になり、そこで仏教と向き合うことになる。

まあ、更にいくつかの事件を経て、敦煌に仏典を隠すに至る話なのですが、どうでしょう?人物の描き方が淡々とし過ぎていて盛り上がらないのかな? 冒険譚としては、たいした冒険でもなかったりする。恋愛ものとしては少しかするものの、そうではないし。英雄譚でもないしなあ~。人生のはかなさはあるものの、イマイチでした。私的には。

女性を巡る争いにも、どちかというと主人公があまりに消極的過ぎて、いささか嫌になるくらい。中途半端に気にしたり、状況によってはやることはやっときながら、すぐどうでも良くなるし。本気じゃないんだったら、娼婦でも買いなさいって。

また仏教に関する情熱もどうも主体的に感じられない。知識もあるし、関心もあるんだけど、全てを犠牲にして「事を為す」っていうわけでもない。どちらかというと、状況があってそこでこうしたという感じ。どうもこういうタイプはあまり好きになれないかも。もっと、面白かったような気がするんですが、この小説がそれほど評価されるのって現在は理解できないかも。

井上氏の作品はあと2、3読んだことあるけど、う~ん、どれもほとばしるような情熱を感じなかったなあ~。確かにじわ~ってくるものあるんですが、どうにも不完全燃焼でストレスが残ったような気がします。決して、悪い作品ではないんだけど、ちょっと微妙。

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2005年08月19日

「かくれさと苦界行」隆 慶一郎 新潮社

前回読んだ「吉原御免状」の続きものです。かくれさと~を読むなら、いきなりこれからではなく、「吉原御免状」から読みましょう。その方がきっと楽しめます。

基本的には吉原を舞台、というか材料にして江戸幕府の悪役と、家康公にかかわる秘密文書を巡る駆け引きなんですが、ちょっと今回は毛並みが違う。

前回で、一通り決着はついているのですが、端的に言うと今回のはそのリベンジってところでしょうか? 前回ではなんとか生き残っていた人達もバタバタ死んでしまいます。着眼点の面白さは前回に尽きるので、今回のはシンプルにその世界観を楽しんで最後を見届けるってところでしょうか。男女の愛憎や機微も丹念に描きこまれてますし、普通の小説として楽しめると思います。

しかし、相変わらず文章はうまい! 読ませる文体(スタイル)ですね。読んで悪くないと思う一冊でした。但し、あくまでも前回の続きなので、そこんとこだけお忘れなく。書くとネタばれし過ぎるのであとは自粛しておきます。

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2005年08月02日

「魔羅節」岩井 志麻子 新潮社

mara.jpg確かに特徴がはっきりしていて差別化されている本だと思う。日本的な風土に根差したねちっこい土俗的な情緒が表現されている本だとも思う。だけどね、なんか無理して『性』的な要素に固執していないかなあ~? 神への供儀としての性の供宴なんて世界中にあることだし、民俗学の本とか見ればいくらでもその手の記述は出てくる。文章として生き生きと表現している点は評価しますが、本書で採り上げられているどれもが筆者の嗜好としての『性』に偏っていて、共感を覚えない。農村社会に固有の習俗ではなく、筆者の歪んだ性的嗜好の吐露に過ぎないと思ってしまったのですが…。

基本的に、昭和初期のエログロナンセンス系は好きなんですが、あれは単なる安っぽいエロ趣味とは一線を画していると思います。あくまでも人間の深層心理の表現の一手法であり、重点はその背後にある屈折した病的心理の描写だと私は捉えていますが、この本はなんか違う。もっと個人的な「なんかあったの? 貴女? 過去にひどいことでもされた?」といった感じの属人的な感性が強過ぎるなあ~。しかも、(社会から or 世界から)捨てられた女性の悟りの境地のごとき。とにかく私には相容れないモノですね。端的に言うならば、私には美しく感じられない!ってことです。

もう、この人の作品は読まないかも? 「ぼっけえきょうてい」の一発屋さんだったのかな。ちょっと期待していただけに残念。ぼっけえ~は、作者の持つアクの強さが出る直前でかろうじて抑えられていた、その危ういバランスの故に素晴らしかったのか? う~ん、難しいもんですね。作家さんも。

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2005年07月19日

「怪談部屋」山田 風太郎 出版芸術社

kaidanf.jpgやっぱり、読む前から期待していた通りの山田風太郎氏の作品です。まさに夏のこの時期にピッタリの怪談ですが、申し訳ありませんが、そこいらで売っている二束三文の今時の怪談と一緒にしたら、罰が当たりますぜ!っていうくらいの味わい深さ。こういうのを真夏の夜中にひっそりと読んでこそ、暑気払いもできるってもんでしょう! 昨日で関東は梅雨明けもしたし。

風太郎氏というと、ちょいエロさと共になんとも妖しげな忍法を駆使した忍者が活躍する『忍法帳シリーズ』で有名ですが(知らない奴~もぐりでぃ・・・伝法調に洒落っす)、勿論、あれはあれで面白くて好きですが、それ以上にもっと&もっと私が好きなのが、この手の「新青年」ノリの作品群。本書に載っている作品も、ほとんどが昭和20年代のものです。

淡々と語られる合理的精神に基づく現代人の理性行動に見え隠れする、原始的、否、原書的な生き物として人類が有する否応も無い本能行動。或いは理性を軽く凌駕するこの世の不可思議さ。そういったものを非常に、上品且つ洗練された筆致で描いていく構成力。もう、絶品の高級料理みたいなもんですよ。舌に載せるとしっかりした味わいにもかかわらず、ふわぁ~っと軽く舌で脂がとろけていくかのように軽い。コースのメイン以外にも、時々デザートとしてくずきりみたいなものまであり、のどこしが心地よいうえに後味も絶妙。いくらでも食べれてしまう、そんな極上の小説なんです。

読書家のグルメを自認される諸氏には、是非ご一読を願いたいところ。まして現代世紀の紳士淑女のプチ・ブルジョワ諸氏にはこんな怪談を寝物語に目を通されることは、教養溢れる日常生活を送るうえで必須の事でございましょう。(どこぞの口上みたいになってきたけど・・・笑い)

でもね、これ『新青年』とか好きな人にはたまりませんよ、ホント。お約束ながら、銀幕を闊歩しそうな絶世の美女やら、美少年。肉体的、或いは精神的畸形とか、ウットリ。江戸川乱歩の「一寸法師」なんかも私の大好物なんですが、あれにも似た作品がありますよ~。テイスト的には、似ていながらも異なっているのですが、こちらはこちらでまた美味しいのでまだ食べたことのない人は、是非、真夏のこの機会に!

巻末に著者が述べている素晴らしい文章があるので以下、転載
日本の探偵小説には、本来の本格的推理小説以外に、異常心理諸説、科学小説、空想小説、冒険小説、怪奇小説までふくまれている。わたしはいままでそのいずれの扉もたたいてみたが、なかんづくわたしに、もっともむずかしいという結論を得させたのは怪談であった。
怪談というものは、理におちてはこわくない。あとで合理的解決というものをくっつけてはも白くない。しかし、わたしたちが或る怪談を着想するときは、近代人のつねとして、ほとんど必然的にその合理的解決なるものがその話にくっついてくる。牡丹灯籠の近代的解釈として、ひとつの密室殺人をかんがえるといったぐあいである。結果として、さっぱり怖くないということになる。
怪談は、やはり徹頭徹尾、荒唐無稽なものでなくてはならない。荒唐無稽の世界を描いて、読者を一種の雰囲気にひきずりこむには、天才的文章力を必要とする。たとえば、鏡花のごとく。そうでなくては、書く本人だけいい気持ちになって、読者はたんにばかばかしがるよりほかはない。
第一、昔の人はおばけを信じていたが、今の人は信じちゃいないのだから、それをあえてへんとこな気持ちにひきずりこむのは、どれほどの文章力を必要とするか。―――
あえて怪談にかぎらず、同様の意味で、約二千年ほど前ほとんど同時に、キリスト、釈迦、孔子が出て、爾来これに匹敵する宗教家がでないのは、ほじめ簡単に生まれないからだと考えていたが、最近になって、たとえそれに匹敵する人物はうまれたかもしれないが、世界がしだいにそのような人にはうごかされなくなったのではないかと思いはじめた。科学の分野における出藍の超人は、未来続々出現するであろうが、宗教の世界では、キリスト、釈迦のごとき巨大な影響力をそなえた人物は、もはや永遠に出得ないのではあるまいか。
―――実はわたしは、宗教も一種の怪談だと思っているから、こんなことをいう。
・・・・・・ともかくも、怪談を成功させるには、天才的文章力と、それから、かく本人がそれを信ずる性格―――すくなくとも一種病的性格の持主でなければなるまい。わたしは、精神健全なる大作家のかいた怪談で、いまだ隔靴掻痒(かっかそうよう)の感、ないし息切れをかんじなかったものはなく、ポーの作品の息気及ぶべからざる点は、ここにあると考える。
ここに収録した怪談は、わたしがこういうことを知る以前にかいたものである

なるほど~、怪談の本質をうまく言い表していると思ったので抜粋しました。現代における怪談の難しさが分かりますよね。不可思議な行動の犯人がただ、精神病患者だったからとか、もうゴミかと思うほど安易な設定の昨今の怪談には正直、へどが出そうなくらい嫌悪感があったので私。京極さんの作品が、小説ではあっても怪談でないのは納得しますね。途中まで非常に面白いのでかなり読んでますが、いつも最後の決着のつけ方がイヤ。大嫌い。無理に意味付けしてるようで違和感を覚える。まあ、それが良くも悪くも京極氏のスタイルなのかもしれませんが、絶対の氏の作品は怪談ではないね。あれを妖怪小説というのにも、抵抗を覚えます。

すみません、そっちはどうでもいいですね。とにかくこの本は面白いよ~!!

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2005年05月31日

「ケルト神話と中世騎士物語」田中 仁彦 中央公論社

ほとんどケルトの事を知らない初心者の私には非常に理解しやすく、またいかにしてドルイド教を含むケルト的神話世界観がキリスト教と争うことなく融合・吸収されていったかの過程を知ることができて大変有益な本でした。

通常なら激しい抵抗を伴いつつ、キリスト教化されていくのはよくありますが、この地では目立った抵抗のないまま、受け入れられた理由としてローマ・カトリックではなく、東方キリスト教(文中では明言されていないけど、アリウス派でしょうね)が先に伝播し、その後にローマ・カトリック化していったからだと説明しています。ガリアでも確かアリウス派が広まってましたね。

ケルト的な霊魂不滅の思想、我々のいる世界と水平的に繋がっている異界を信じ、そこに人が移動するというような世界観がアリウス派キリスト教を受容しやすくしていたそうです。その例証として、聖アンナ崇拝(聖マリアの母)がケルト的地母神アナの習合したものであり、マリア崇拝よりもはるかに盛んであるとか、興味深いです。

また、「ブランの航海」「メルドゥーンの航海」等、文字に記録することを忌みするケルト的世界観が伺える作品を要約にせよ、知る事ができてとても面白いです。まるで御伽噺です。こういうのの邦訳が欲しいですね。既存のものでもあるかな?

海の向こうやドルメン(巨石遺跡)の地下に隠されていて普段は気付かない世界というのも、なんかとってもイイ! 「聖パトリックの煉獄」というのも紹介されていますが、そこはまさにキリスト教的解釈下のケルト神話世界であり、地獄などの描写ももう嬉しくってウキウキしちゃうくらい(ん!? 普通はウキウキしないか?)。読んでて、私は日本の寺社によくある胎内巡り(=真っ暗の地下を道案内として張られた数珠を手探りしつつ、巡ることで地獄の疑似体験をし、仏との縁(えにし)を結ぶもの)を思い出しちゃった。善光寺や清水寺とか、日本各地にあるね。私はあちこちで必ずやってましたけど。好きなんです、コレ。どこの世界もやはり類似するものがありますね。

そうそう、この本の中でケルトの神々が歴史を下るに従い、キリスト教の勢力が広がって過去のものとして忘れ去られていく中で、地母神アナが人食い妖婆に変じていくのが説明されていましたが、これって日本の妖怪が零落した神々であるっていうのとソックリですね。ふむふむ、勝手に納得。私的な解釈ですが、よくある話です。

日本において地方豪族の信奉する神が大和朝廷の支配下に入ると国津神とされ、天孫系の天皇に連なる大和の神々が天津神として国津神の上位に位置する。神の序列化は、ケルトとキリスト教間でも行われていたんですね。

そういった事とかを考えさせてくれるだけでも、この本は読んで良かったです。ケルト神話が何より面白いしね。でも、第3部のアーサー王絡みはちょっとパス。ユング的な解釈が鼻につき、いささか興醒め。この手のって嫌ってほど、飽きるほど、読んだことあるし…。グリム童話とかの解釈とかね。最近では、食傷気味で陳腐にさえ感じてしまう。ちょっと拒否反応が出てしまいました。この章は不要だったね。でも、全般的にケルトの入門書としては、良書だと思いました。
【目次】
序章 知の果てにて
第1部 ケルト人と他界
第2部 ケルト・キリスト教と他界
第3部 中世騎士物語と他界
終章 「夜の航海」
ケルト神話と中世騎士物語―「他界」への旅と冒険(amazonリンク)

関連ブログ
「アーサー王の死」トマス・マロリー 厨川文夫・圭子訳
「図説 ケルトの歴史」鶴岡 真弓,村松 一男 河出書房新社
「トリスタン・イズー物語」ベディエ 岩波書店
聖ブレンダンの航海譚 抜粋
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2005年05月26日

「吉原御免状」隆 慶一郎  新潮社

これは、吉原関係の本を読んでいた時にlapisさんから、御紹介頂いて読んだんですが、面白い! 面白過ぎる!作品でした。おかげで読み始めたら、他のが何もできなくなってしまい、困ってしまいました。週末に読むべきでした。それだけが失敗(苦笑)。(lapisさん、有り難うございました)

勿論、舞台が私の関心を惹き付けて止まない吉原というのもその理由の一つですが、そこに描かれている世界がなんと生き生きとしていることか。それこそ、おとぎの国にでも紛れ込んだ感じでいながら、今いる世界と変わらないものを感じさせる筆力は凄い!古めかしい時代感ではなく、まさに今現在の小説になっている点も驚きです。

一応、予備知識があるせいかもしれませんが、さりげなく且つ的確な解説で知らず知らずに頁を読み進めていくだけでいろんな時代的な知識が付くのも素晴らしいオマケです。いやあ~、ただ読んでいるだけでそこそこの知識がついてしまいますよ、ホント。勿論、そういったのはむしろ余禄の部分で、裏柳生VS(宮本武蔵の)二天一流の剣戟もまさに目前で繰り広げられるかのような鮮やかさで大娯楽活劇としても楽しめてしまいます。

しかし、しかし、一番の眼目はなんと言っても吉原設立に関わる大御所様(家康公)との密事でしょう。表向き、当時の遊女屋の元締めが幕閣への多額の賄賂と懇願、風紀的な必要から吉原の認可が下りているのは、私も知っていた有名な話ですが、その裏にこんなことがあったとは・・・・あくまでも小説です(笑顔)。やっぱり、ストーリー作りがうまいです。謎の天海僧正の正体とかね。すっごい楽しめる作りになってますよ~。超一流のエンターテイメントです。これだったら、ほとんどの人が楽しめる作品でしょう。私がここ数ヶ月読んだ中でも1・2位の面白さです。たいていの人にお薦めします。

でね、どっかでこの大御所様の話を知っていて、考えてみたら漫画で読んだ事があるんですよ。先に。その時もすっごく面白かったので、小説がちょっとという人はそちらの漫画もお薦め。小説には小説の良さが、漫画には漫画の良さがありますよ。どっちも私のお気に入りです(満面の笑み)。

あとね、小説の方はとにかく楽しくてしょうがないようなネタがたくさん含まれているの。八百比丘尼や漂泊の民なんて、民俗学の本にも良く出てくるし、私も好きでいくつかも資料持ってますが、うま~くその特性を生かしつつ、小説に溶け込んでて感動しちゃうぐらい。ちょっとその辺りの本をかじられた方なら、お分かりでしょうが「蝉丸」を暗示するような話が出てきてなるほどなあ~と頷いてしまいます。これ自体の名称は出せれていませんが、その背後にあるのは明白ですね。詳しく説明すると小説の面白みが半減するので、これ以上は書きませんが…知っている人には、より一層感慨が深いかもしれません。

とにかく、この小説のあちこちに巧妙なというか、くすぐるようなものが散りばめられてもう、堪らないですね! ポン、ポンと出てくる単語から目が離せません。仙台高野、花柳病、湯女等々、キリがない。それに普段から都内に出ると、上野や浅草でぶらぶらしている(働け!働け!って)私としては、聖天様やドジョウの駒形とか今でも違和感無いですしね。さすがにこの本には、神谷バーは出てきませんが…。真昼間から電気ブラン(オールド)を飲んでいるのは堪らないですね。タンのシチューとか、生ハムを食べつつ、ビールと電気ブランを交互に飲んで本を読む。至福の時ですね。

う~ん、どうしても話がそれてしまいますが、いい本です。本好きで未読なら、読んで間違いないです。と、自分も教えてもらったくせに太鼓判を押す、知ったかぶり。まあ、浮世の世界にはこんなとこで宜しいかと。

粗筋としては、宮本武蔵に山中で獣と共に育てられた天涯孤独の若者が、武蔵の遺言で吉原にやってきます。そこで知らず知らずのうちに、巻き込まれる柳生一族との争い。次第に自分が吉原にとっても、将軍家の天下にとっても重要な人物であることが分かってきます。そして、自らが何者か知らなかった若者は、自分がこの世に生まれて何をすべきかを悟る、という筋書きです。

ただ、この本の魅力はこのレベルではすみませんよ~。本当は、この本の魅力についてこの10倍ぐらい書きたいことあるけど、ただでさえ冗長なんでこの辺で我慢します。でも、間違いない!

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関連ブログ
「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社
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2005年05月19日

「ぼっけえ、きょうてえ」岩井志麻子 角川書店

bokee.jpg日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞受賞作。私が一番信用しない賞達のタイトルが付いていてまず、避けて通るはずの本のなのですが(天邪鬼でして…)、ふと目にしてたまたま手にとって見ると、これが思わずいける。本自体は幾つかの短編が入っているのですが、このタイトルの小説が巻頭にあり、これがもう凄い!

いやあ~日本人が書く怪奇小説だったら、こういうのでなければと思うのがまさにコレ。どろどろグチャグチャの日本という(島国)稲作農耕民族の土着気質から生まれる、粘着質の風土病的作風に、女性特有の「恨みま~す」的怨念志向が絶妙の配合で加わった熟成物です。表面上はさらっと書かれていますが、内実は発酵して腐りかけてるようなもの。欧米系の怪奇小説にはマネしようたってできない作品ですね。横溝正史氏の八ツ墓村のようなものです。もう、本当にドロドロします。

娼婦が客に寝物語で話すという冒頭からして正統派怪談なんですが、語られる女性の一生がいかにも救いようがなく、女郎に売られた今が一番幸せな状況というのが本当にリアルです。いかにも日本の農村で、さもありなんっていうモノ。映画の「楢山節考」とかで出てくる、まさに水呑百姓とか下女・下男の世界。名著「東京の下層社会」とかでも描かれていますが、現在が特殊なだけでつい最近までの日本の社会は、想像を絶するものだったようです。

で、そういった状況から必然的に売られて女郎になるのですが、その売られるまでの話がなかなか興味深い。村という閉鎖的な空間で禁忌に触れる存在であったわけで人々から忌み嫌われる理由が明らかにされていきます。片親の家庭で母の仕事が間引き専門の産婆となれば、もう誰が言わずとも鬼女です。母が鬼女でその娘なんですから…この女郎の立場たるや想像に難くありません。これが中世の西欧なら、紛れも無く魔女です。やってる仕事も社会における存在意義も一緒ですしね。私的にはどっちも一緒ですね。

うまく説明できないんですが、日本の誇る怪談の一つとして挙げてもいいと思います、絶対にこれ名作として残ると思いますよ~。ただ、時代が現代だけにどこまで、それを理解させるかは難しいところですが…。心ある人ならば、好き嫌いはあっても素晴らしい作品だと認めてもらえる作品です。ここ数ヶ月の中ではダントツでお薦めします!!(但し、あくまでも由緒正しき怪奇小説ファン向け。リングとか読んで喜んでる人には、理解不可能かと)

久しぶりに暗~く陰鬱な気分になりました。なんか重~くもたれる感じ。最後に、しっかりオチがついているのがまだ、救われますけどね。後書きで荒俣氏は、それを逆にマイナスと評価されてましたが、それには異議有り! 少なくとも怪奇短編小説なら、本来小説下手の荒俣氏よりもこちらの著者の方が上です。技量は。勿論、知識やうんちくではたちうちできませんが、ホラー小説大賞の選者より、候補者の方が小説家としては上でしょう。今回ばかりは。

荒俣氏のホラー好きは有名ですが、私はこの著者を強く押します!! 確か文庫もありますから、これだけはお薦め。もっとも、ある程度、この手のノリが分かる方ね。分からない人には分からないから、この手のって。

ついでに日本の下層社会がどんなもんだか理解するには、紀田順一郎氏の下記文献もお薦め。3日に一度、強姦にあうのが日常って想像つきます? 近親相姦が普通に行われる家庭。残飯を購入して食べる人々。少し前に海外旅行記読んで、残飯にもランクがあり、軍の残飯が一番栄養価が高くて高級品という文章を読んだことがあるが、日本でも遠い昔のことではなかったそうです。この本を読んでていて妙に納得した覚えがあるなあ~。人生なんて、まさにうたかたの夢の如し。

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ラベル:小説 書評 怪談
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2005年05月18日

「イエスを愛した女―聖書外典・マグダラのマリア」光文社

まず最初に著者は、あくまでも聖書に則った立場で可能な限り歴史的に忠実に数々の場面を再構成したいと主張し、その為には進んで独自の推測も加えてこの本を書くと言っています。それを最初の章で延々と述べているのはうざいですが、著者の誠実さが見えていいかも。但し、私が読んだ感想では、実際のところ、よく調べた小説の域を出ません。歴史的にどうのこうの言ってますが、勝手な著者のフィクションであることは否めません。それがこの本のスタートラインです。

次に、内容ですが、聖書という枠にはかなり忠実だと思います。逸脱してないと思います。でも、この本を読むよりは聖書を読んだ方がはるかにマシ。正直言って非常につまらない。驚くほど、つまらないんですよ。これが!何度も読んでて本当に寝てしまったもの。英語の本を読んでてもこれだけ眠くなるものはないです。こちらの勝ち。トンデモ本の方が面白いだけ、意味があるかも?

加えて、読んでも知識は一切増えません。つまらなかったし、感動も驚きも何もないです。私の個人的な感想で言うと、端的に言って時間の無駄。よくこんな本をわざわざ翻訳してるなあ~と呆れるばかり。買って読んだら後悔します。実際、後悔してるし・・・(涙)。買いたい人がいれば売りますよ、私が。(コメントにでも本買うぞ!って書いて…笑)

更に悪口になってしまいますが、タイトルにマグダラのマリアとか入れてるくせに全然、マグダラのマリアに関係ないんだもん。普通にどこの本にでも書かれているレベルの内容です。いちいちタイトルに入れないで欲しい。JAROかなんかにクレームつけたいくらい。あ~買ってもったいなかった…。

最近、当りの本がないなあ~。山積みになっている本の中にいいのはあるかな?ラッツィンガー氏の本でも読もうか、それとも吉原の本から読むか?どちらも興味はあるんだけど・・・。

あっ、最後の章にマリアを巡る伝承・資料がありましたが、ここだけは有益かも?メモメモ
○「黄金伝説」―既にこのブログで訳出済み
○1265年にエックス・アン・プロヴァンスにあるサン・マクシマン教会の地下納骨堂でマグダラのマリアの遺骨が見つかっている
○マグダラと共に海を渡ってきた女性達はそのまま海岸地帯にとどまり、遺物が15世紀に発掘されると、小さな町は彼女達の名前にちなんでレ・サント・マリー・ド・ラ・メール(海の聖マリアたち)と命名された。いまでも毎年その遺骨が行列に担ぎ出せれて町の中を練り歩く
○マインツのラバヌス・マウルス大司教(776-856年)による「マグダラのマリアの生涯」
○「フィリポによる福音書」グノーシス派の聖書外典で有名なもの。
○「救い主の対話」これもグノーシス派のもの、後で調べてみようっと
○「ビフィティス・ソフィア」グノーシス派のもので、聞いたことあるけど、詳しいこと不明?

イエスを愛した女―聖書外典・マグダラのマリア(amazonリンク)

関連ブログ
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「マグダラのマリア」 岡田温司 中公新書
「マグダラのマリア―マリア・ワルトルタの著作による」あかし書房
「マグダラとヨハネのミステリー」三交社 感想1
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
美の巨人たち ラ・トゥール『常夜灯のあるマグダラのマリア』
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2005年05月10日

「神の子(イエス・キリスト)の密室」小森 健太朗 講談社

kaminoko.jpgイエス・キリスト復活に関する謎を独自の解釈で合理的に説明するという内容の推理小説(?)なんですが、”人類史上最大級の奇蹟の真相と驚愕のトリックに、本格推理の英才が挑む長編異色歴史ミステリー!”という触れ込みで宣伝文句が書かれています。

先にもう少し詳しく説明すると、イエスが布教し、奇跡の復活を遂げた当時、直接イエスに会った事は無いものの、とかく噂に出る有名人イエスに興味を持った非キリスト教徒のエジプト人が主役。この主人公が自分は会ったことのないイエスの事を知りたくて、イエスに会った人々から感想を聞き集める。また、イエスが処刑後、復活したと聞くと、奇跡が信じられず、その合理的説明を求めていろいろ調べまわるという話になっています。

で、当時の複雑な宗教・政治事情や文化的状況を背景に、仕組まれた謎を解明する、というのんですが…。まあ、率直な感想としてはこんなもんかなあ~って。全く推理も何もないと思うんですが、第一読み物として面白いところが全く無い。こんなんで本を出せるなら、もっといい本を出した方がいいんじゃないの?って思ってしまいます。ある意味、予想通りのお粗末な水準の小説でした。

何よりもコレ駄目だあ~っと思ったのが、巻末の資料。結構、二流の資料ばっかり読んでる。おまけに【注記】にはいくつか中心的な資料についてコメントを書かれているが、バーバラ・スィーリングの「イエスのミステリー」をご大層に持ち上げてそれを参考にしていると述べられている。私がトンデモ本だと書いて、小説のネタ本にはなるだろうと思ってましたが、そのまんまネタにするとは…安易! そうそうしっかり「死海文書の謎」も文献に入ってました。まあ、作家さんの読む本ってそのレベル止まりなの? 著者の経歴読むと、学者さんの孵らない卵レベルでもう少し期待していたので、残念。

別に小説に対して、史実としてどうかや仮説を求めている訳ではないので面白ければいいのですが、つまらないのは悲しい。逆に歴史書でないだけに面白くなく、知的好奇心も刺激しないものならば、不要な小説でしょう。出版社もこんなのに大仰なコピーをつけて売るのは、どんなもんでしょう? 面白いのを読みたいなあ~。

神の子(イエス・キリスト)の密室(amazonリンク)

関連ブログ
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想2
「死海文書の謎」マイケル・ペイジェント、リチャード・リー著 柏書房 感想1
「死海文書の謎」マイケル・ペイジェント、リチャード・リー著 柏書房 感想2
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2005年05月08日

「本朝聊斎志異」小林 恭二 集英社

ryousaisii.jpg本家本元の唐土(もろこし)製の聊斎志異に対抗した日本版の志怪小説ですね。そもそも聊斎志異は志怪小説(妖怪・怪談等)というジャンルですが、日本でも昔から、この類(たぐ)いはたくさんあって私も大・大・大好きなジャンルだったりします。一番良いのは、丑の刻(深夜2時)頃、周りが静まる中、一人でこっそり不可思議な話を読むというのが一番の至福の時ですね。その前に軽くアルコールをたしなむのは礼儀でしょう(笑)。大人の愉悦ですなあ~。

内容はかなり本格的な正統派妖しもの。怪談というよりは、不可思議な話というほうが実情に近いですね。基本的に怖いものではないです。上品で洗練された極上のエッセンス的な読み物。まさに徒然なるままに一つづつ読んでいくのに最適ですね。物凄く短いものから長いもの、王朝物からな・なんと現代物まで入っていて種類が豊富(個人的には明治以前ぐらいにして欲しかったけどね)。もうこれ読むの3回目ですが、まだ楽しめますね。(もっとも中国の聊斎志異は何度読んでも飽きないし、簡潔な文章に描かれる内容豊かな幻想・怪奇ものはまさに傑作!且つ古典中の古典!だと思うんですけどね)

枕元に置き、寝る前に何篇か読んでから我知らずまどろむ。というのが最高の楽しみ方かな?この中で個人的に気に入ってるのは、たくさんあるんですが・・・「閻王」なんかもいいですね。これって地獄の裁判官、閻魔大王のこと。肝試しで閻魔様の像を飲み会の席に持ってきたことから、閻魔様と知り合いになり、飲み友達になるんです。で、友人だからいろいろとご利益というか助言や手助けをしてくれたりします。だって、自分の妻の顔があまり良くないからなんとかしてくれって頼むと、死んだばかりの美女の頭と交換してくれるんですよ。凄いですねぇ~(ブラボー!!)。弓が下手だと、全身の神経を手術して配置を直して弓の名手にしてくれるしね。こんな飲み友達だったら、切に望みますね、私も。


「犬女」ってのもまた、正直過ぎ。犬でもなんでも、美女なら一切問題ないと手を出す始末。そりゃ気持ちは分かりますが・・・。
「天閹(ふたなり」このテーマも好きだなあ~。いわゆるアンドギュヌス(半陰半陽)って奴。男性の性器と女性の性器を持つというのも古来から知られたテーマです。実際にいろんなエピソードもあるし、本来男女が一緒になって初めて完全になるのに、生まれた時点で完結し、完全であるんですから・・・宗教的にも興味深い存在。以前調べた和漢三才図会とかにもあったなあ~。どっかに資料があるはずだけど…どこ行ったのやら?

他にもコオロギを扱ったものとか、非常に興味深いです。
他にも絶世美少女である幽霊と狐に愛されて、両方を妻にして幸せに暮らすなんて、まさにユートピアだと思うですが・・・(笑顔)。日々の暮らしの心配もいらないしね。まあ、そういった話がたくさん載っています。

タイトルに恥じず、きちんと聊斎志異になっていますので同好の士はもっていて良い本でしょう。日本霊異記や今昔物語、小泉八雲の怪談とか好きなら読んで間違いはないです。そうそう、アマゾンのレビューは酷評でしたけど、私は好きですね。素直に楽しめました。
【目次】人妖、鳰姫、閻王、犬女、桃香、放蝶、天牛、抜け馬、死を幸う、犬と新妻、碁狂、帝大生、将門公異聞、妖術、宝、鯰隈、不老長生、蓮の香、薮医者、琵琶湖怪、益荒神、清少納言、昆虫商、医学博士、菊とねね、迫力ある人物、丐仙、蛙神、蛙神二、夫婦仲、珠ゑ、美男、六畜瘟神、牛飛、天閹、怪洞、喪服の女、蟋蟀合わせ、博士の父、後北条家縁起、淀屋闕所、志乃、酒友、孫悟空、真悠子、六郎、予言、寧々と乃々、毒酒小兵衛次、白茅、天機、白石異聞、菊精、狐玉
あとね、妖怪や不思議な話が好きでまだ未読の方には絶対に聊斎志異をお薦めします!!これだけは読まないと損だと思う。私のお薦めは平凡社版(上下2冊)。他にも岩波や角川とかいろいろ読んだけど、シンプルな平凡社のをお薦めします。道教思想や金丹、狐や鬼、幽霊、化物等々がもう嫌ってほど味わえますよ~。
 
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2005年05月02日

「聖遺の天使」三雲岳斗 双葉社

seii.jpgこれを読もうと思ったのは、探偵役にレオナルド・ダ・ヴィンチがいてしかも聖遺物が出てくるらしかったので。最近、聖遺物に関心を寄せる私としては無視できなかったからでした。あと、チェチリアという名前の女性にも惹かれたんですけど。しかもタイトルに天使の文字が・・・、条件揃い過ぎだって(苦笑)。

最近、この手のは予想を裏切られるヒドイものが多かったので期待外れをいささか警戒しながらの読書でしたが、これはいい意味で裏切ってくれました。まず満足のいく小説でした。正統派の推理物でとっても洗練された感じの謎解きでしょうか、上品な一品とでもいうような趣きですね。しっかりしたプロットの下で、登場人物のキャラクターがしっかり設定され、描かれ、実在感のある感じ。実にうまい(芸達者な)作家の手になる作品と言えばいいかな。それでいて嫌味にならず、さりげなく自然にストーリーが進んでいく。最近、あまり見なくなった本格的な推理物です。

ダ・ヴィンチが探偵役っていうことで、読む前から正直安易な役柄を想像して駄目かなあ~って心配していたんですが、どうして&どうして。このダ・ヴィンチがなかなかのくせもの。一癖も二癖もあって、世間に迎合しない様はまさに私がイメージするダ・ヴィンチでしたし、「美貌の」とか「生まれた境遇」とかは別の本で史実だと知っていたのでこういうふうに描いているんだと逆に信頼が置けたうえ、頭のキレも鋭く、なかなかの探偵役でした。何よりも人や事物の捉え方について、ある種の哲学を有していた人物を描き出していて興味深いです。チェチリアもいい味出してるかも?勿論、音楽の守護聖人の名前を使っているだけあり、少しだけ音楽にも関連してますよ~。ダ・ヴィンチがこのチェチリアの音楽教師(マエストロ)っていう役柄でもあるし。

粗筋はというと、
沼の館と呼ばれる建物の中でその主、高名な建築家の遺体が発見される。しかし、彼の死体は運搬がおよそ困難な場所で発見される。死体発見の直前に天使を見かけたものさえいる他、彼は真贋の定かならぬ聖人マルコの聖遺物として香炉を所有していた。彼の死は奇跡によるものなのか、人の手による殺人なのか? 聖遺物を巡り、聖職者達の駆け引きに政治的な思惑も重なり、混迷を深める中、ダ・ヴィンチがその解決に関わるというお話です。

聖遺物についての扱い、というよりもそれを取り巻く人間模様や社会情勢の描写も的確でそういう些細なところも好感が持てます。聖母子像が煙に浮かんでくる香炉なんて、あったら欲しいですもんね。まさに、信者やお金も(名誉さえも)聖遺物さまさまですから。

聖遺の天使(amazonリンク)

また何よりも推理小説としての謎解きがしっかり出来ていて嬉しいです。ほほう~って感じで納得いきますし、最後の最後でその出来事の真の意味が分かるのも王道ですね。ちゃんとした推理物を読みたい方にはいいと思いました。




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2005年04月20日

「血塗られた法王一族」桐生操 福武文庫

表向き華やかなルネサンス期において、権謀術数の限りを尽くしてひたすら権力の拡大を目指す法王一族。精神世界のトップが同時に世俗における大領主でもある歪んだ時代に繰り広げられる陰謀・暗殺・戦争。オーソドックスながら、血族間のドロドロ具合はなかなか興味深い小説となっています。

ただ、どうしても政治的なものが関わってくると女性の描くものは淡白なんだよね(これは私の偏見かもしれませんが…)、まあ男性でもそういったものに興味の無い方もいるけど、概して男は政治的な生き物らしいです。この本でも勿論、当時の分裂していたイタリアを統一するという視点が明確に出せれているんですが、いかんせん、表現が甘い。田中角栄氏の元秘書である早川氏の描く生々しい政治の息遣いが聞こえてこない・・・そこだけは落第点。それ以外は、結構面白いのにね。

出てくる主役は聖職売買なんて当然ジャンってな人々の他、脇役を固める人達がちょっとイイかも? 君主論で有名な(これは読んでみると実感するけど、やはり名著!)マキャベリに、殺人事件の探偵役にダ・ヴィンチまで出させてなかなか豪華な顔ぶれです。確かにダ・ヴィンチは史実のうえでも軍事顧問とかいろいろやっていたけど、あまり必然性はないような?

でも、とりあえずは暇なら読んでもいいかも?改めていつの時代でも、どんな組織でも政治は勝つ事が大切で、目的により手段は正当化される、ということを思い出させてくれます。もっともこれ読むなら、君主論やカエサルのガリア戦記の方が、はるかに面白いけどね。私の場合。そういえば、マキャベリの食卓というイタメシ屋があったが、昔美味しかったんだけど、先日食べたら味が落ちてたなあ~、時の経過は悲しいものです。でも、そこの隣にできたロシア料理屋が安く美味しいから、いっか。世界はバランスが取れているものですね。

血ぬられた法王一族(amazonリンク)
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2005年04月14日

「ラー」高野 史緒著 早川書房

ra.jpg出版社で本の内容をどうこういうつもりはないのだが、一般的な傾向からしてあそこの出版社の出す本なら、このレベルは大丈夫だろうという目安があると思う。少なくとも私の中で早川書房のSFなら、ある程度安心して読める目安であった・・・。しかし、この本を読んでそれは間違いであったことを痛感した。

正直言ってこの本は、SFでもなんでもない。全然必然性がないのに、単純に過去の一定の時期に現代人を送って、現代人の視点から過去の事物をとやかくいう安易な設定。一番低俗でくだらないパターンをやりたいが為に、タイムマシーンを持ち出すあたりが最初のくだらなさ。勿論、タイムマシーン自体の物理的な特性や背景も一切触れず、幼稚園児の空想レベル。お粗末過ぎて絶句した。

さらに、いきなり周囲に浮いている現代人を既定の事として受け入れて世話するエジプト古代人。はあ~、頭のネジが5、6本飛んでませんか?と編集者に問い質したい。少なくともSFマガジンにこんなの載せたの?あ~あ、ガッカリ。個人的にはSFマガジンとか評価してる雑誌なんですが・・・。アニメのイノセンスに負けてますよ、既にその世界観も含めてあらゆる面で(当たり前か)。

著者が書いているように、エジプトが好きというだけらしく、中身には全く価値を見出せないです。装丁だけ綺麗なのに・・・値段も無駄に高いし、ほとんど詐欺。こんなの読むより、東京博物館の東洋館でミイラ見てたほうがはるかに勉強になります。本で読みたいなら、有名な「医師シヌヘ」の方を絶対にお薦めします。ミイラの作り方とかどきどきもんですし、全体のストーリーも非常に良く出来てる古典ですしね。

しかし、最近のエジプトものはつまらないものばかりで悲しいな~。もっと夢があって、人類の叡智を集めたアレキサンドリア図書館があったところなのにね。イシス信仰の本場だし、某本によれば、イエスはエジプト由来の魔術師だ、なんて説まであるくらいなのに・・・。

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2005年04月09日

「旅涯ての地」坂東真砂子 角川書店

tabihate.jpg以前にネイビーさんからコメントで教えて頂いた本です。どうも有り難うございました。

カタリ派について書かれているというので、amazonで見るとマルコ・ポーロや聖杯まで出ているので興味津々で読み始めました。ただね、ご存知のように坂東さんのってこう日本の情緒というか、風土に血縁的なドロドロしたものがべったりついたものが多いでしょう。読む前から、それが気になっていたんですよねぇ~。さてさて、どうだったかというと・・・?

粗筋から言うと、これは前半と後半でかなり綺麗にサクッと分かれます。前半は元王朝に(中国)に仕えていたマルコ・ポーロ一行が苦難に耐えてヴィネツイアにようやく戻ってきたところから始まります。そして、この本の主人公は数奇な運命を経てこの一行と共に元からついてきた奴隷なのですが・・・。

大金持ちから犯罪者まで経験したこの奴隷は、非常に聡明であり、それ故、あえて何も知らないように装いながら仕えています。そしてある時、偶然にもとある秘密の品を手にしてしまうのです。それこそが、あの伝説の聖杯!! 

やがて運命の導くままに奴隷はヴェネツィアを逃れ、とあるカタリ派の聖地へ・・・。そして明かされる聖杯の秘密とは?

確かに読ませるだけの力量を持っているとは思うんです。おまけに著者はこれを書くためにイタリアに滞在していたんだって・・・。そっ、それでこれか~い?(つ、つい心の声が)

なんていうか、これは舞台が海外であっても、本質的に「四国(死国)」であり、粘着質系の日本の小説以外のなにものでもない。個人的にはもう少し陽気なイタリア人を期待したいところなんですが、ベタベタし過ぎで辛い!良くも悪くもこの人のスタイル(文体)なんだろうなあ~。主人公も内省的で、思慮深いんだけど、精神的に枯れてる。いちいち心の中のことを丹念に書くものだから、本の世界観が非常に澱んでいるんだよねぇ~。これをどうとるかで評価が変わるかも?東洋的に言うと悟りを開いたものに近いところがあるから。

ストーリーもしっかりしてるんですよ。構成力や心理描写等も水準以上だと思うんですが、ある意味で絶対に女性にしか書けない作品でもあります。気付かれる人はすぐピンときそうですが。宗教に関するものは、興味深いものもあるけど、オーソドックス過ぎるなあ~。禅問答とかの公案の方が、僕は好きだけど。

以降、【ネタばれ有り】




ぶっちゃっけ、ダ・ヴィンチ・コードと同じオチです。あ~言っちゃった!!こっちの方が早いですのでパクリじゃないです。でも、結論に向けてのストーリーの盛り上げ方が全然違う。っていうか、盛り上がらないままに淡々と結論へ。一応、それなりに納得のいく結論なんですが、ただそこにポンっと、結論が置かれているのでリアリティーが全くないんですよ。それが即ち、読者を驚愕させるとか、怒らせるとかいった過激な反応につながらないんですね(まあ、ダ・ヴィンチ・コードで抵抗力がついてるからというのも一因ですが)。

これは翻訳しても海外で全く売れないでしょう。恐らく、書かれているのが日本人にしか分からない感性で書かれているから。ちょっと前に読んだ「オクシタニア」にも共通するかな?勿論、坂東氏の方が100倍以上もドロドロ粘着質だけど。その一方で「性」に関する捉え方があまりにも正統的で、これ以上ないってぐらいのパターンでのオチになっている。刺激が足りな~い???

と、マイナスっぽい書評のように思われますが、ダ・ヴィンチ・コードを読む前だとずいぶん違ったと思います。こちらが先なら、結構楽しめるかも。でも、それだとカタリ派の説明が足りなくて理解できないかな??? 相当調べて書いているのはよく分かるんですが、いきなりこれ読んでも分からないだろうなあ~。

あとは好みの問題だと思います。「オクシタニア」よりは、面白かったもん。設定が国内だったら、確実に面白いと思うんだけど、海外モノはやっぱりこの人のでは辛いなあ~。という独断と偏見に満ちた、私の感想でした。あっ、でも独自のアイデアもあったから、そういう意味では読む価値が別にあるね。(個人的にこのネタぱくって小説書いちゃおうかな…笑)

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2005年03月25日

「聖アウスラ修道院の惨劇」二階堂黎人 講談社ノベルス

これって再読だったりします。以前買ったものは、読書好きの(自称)美女にあげてしまってなくなってしまったんですが、図書館でふと目に入り、ついつい借りてしまった…。

さて、内容なんですがもう正統派中の正統派ともいうべき推理小説です。この二階堂さんのは何冊か読んでますが、そのきっかけになったのもコレ読んで面白かったから! でも他の作品はこの水準を越えていないのが悲しいかも?

舞台は湖畔に佇むベネディクト派女子修道院。製紙産業華やかなりし時代に、大儲けした大実業家にして大富豪が金に糸目をつけず、海外から中世の教会を運び込ませたその建築物で惨劇が起こります。ひたすら神のみを信じる清らかな子羊達の中で、忌まわしき殺人事件が!いきなり、少女が塔より落ちて死んでしまうとこなんか、薔薇の名前ソックリ。最初、読んだ時には気付かなかったんですが、他の部分でも完全にあのノリを踏襲してるんだよね、今回読んで初めて気付いた!! 

だって、東洋一といわれる貴重な古文書を蔵書するいわくありの古文書館が出てくるし…。さらにこの図書館が50年に一度しか開かれない、となればもうあれっきゃないですネ。一つ間違えれば、舞台を日本に変えただけで盗作かい?とでも言われそうな状況ですが、これがまた、作者の力量に脱帽します。確かに道具立ては、ソックリなんですが、その背景がいかにも日本的。戦後の混乱期等をうまく取り入れながら、舞台のリアルタイムは昭和40年代の設定。これまた、巧みに時代背景を生かしつつ、全く新しいものに作り上げています。犯人が明らかになっていく間で、ドンデン返しがこれでもか、これでもかっときて、最後の最後まで結論が分からない。特にラストはもう、日本人にしか書けないし、理解できない秀逸さです(内緒)。

しっかり、満開の桜の咲き誇る中、逆さ吊りで首無し死体は出てくるし、殺人はいわゆる「見立て殺人」タイプ。横溝正史さんの「犬神家の一族」ばりですね(ニコニコ)。生糸で金儲けた所とかもそっくりだし。その見立てがなんと、あのヨハネの黙示録だもん、パクリやん(爆笑)。おまけに密室殺人やら暗号文やら、盛り沢山の大サービス!!ここまでやるかってカンジだし。

すっごく面白いんだけど…、これ実は欠点があったりする。この人の本全てに共通するんだけど。著者がすっごい推理小説マニアらしく、探偵役の女子大生も推理小説研究会みたいなのに所属しててやたらとそのウンチクがクドイ&鼻につく。エラリー・クィーンの○○の小説の××だね、とか言われても分からんって!端的に言うと、狭い仲間内にしか分からないような台詞が頻繁に見られるのが、イヤ。それで初回の時に、何度か読んでる途中でイライラしたもん。読書にこういう感情を湧かせるのって果たしていい作品でしょうかね? 

これを乗り越えられれば、すっごく面白いんだけどなあ~。そこが残念!まあ、逆に推理小説マニアというかミステリマニアだったら、かえって面白いんでしょうね。雰囲気は想像できるけど、違和感を強く感じたなあ。

薔薇の名前のような、格調高い(難しい?)のとは違いますが、総合的に推理小説としては一級作品でしょう。う~ん、何度読んでもこれは結構イケル作品だね。

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2005年03月17日

「聖杯魔団」菊池秀行 実業之日本社

seihai_madan.jpg菊池さんの本は、基本的にどれも同じパターンを踏襲しているので一冊でも読んだことがあれば、あとはどの本であっても容易にその文体・スタイルは想像しうる作家さんである。とっても安定して読め、読書中はそれなりのスリルやスピード感とちょっとした幻想空間に連れていってくれるとっても便利な存在である。エロス・バイオレンス・アクション・ホラーが適度にまぶされて現代人が求めるつまみ食い的な欲求を的確に捉えて、それを適切に満たしてくれる本当にコンビニエンスだったりする。

その理由は、何よりもこの作家さんの描く小説が、あくまでも過程が60%で背景・道具立てが35%、エロス10%で、ラストがー5%だということにあると私は感じています。実際、私も20冊ぐらい読んでるんでは? 暇つぶしにTV代わりに見る分には、いいと思うんですが。

今回は、聖杯のキーワードに惹かれて読んでみました。ストーリーは基本通りの聖杯探求に、それに付随する格闘シーン。途中まではアーサー王物語をなぞるので安心して進みます。いつもながらにキャラがたっているは、さすがです。でも…まあ、こんなもんかな?あまり難しい話をしても読者がついてこないし、そもそも複雑で難解なものは一切求められていない訳でストーリーは基本路線から全く広がっていきません。ストーリーとしては、空っぽというのが私の受けた印象。意味は全くありません。

でも、妖しげな女探偵の姿態描写で売上はきちんと確保されてるんでしょうなあ~。もう、この程度では何も感じませんが…。電車の中で時間つぶしにはぴったり!でも、105円以上は払えないなあ~。
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ラベル:小説 聖杯
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2005年03月12日

「オクシタニア」佐藤賢一 集英社

異端カタリ派やドミニコ修道会士やらが盛りだくさんで出てくるみたいで、「薔薇の名前」かあるいは幻想文学等のようなものを期待して読みました。正直言って、読了するまでに膨大な時間をかけた割りには、なんにも残らない本でした。

内容としては、私がすっごく行ってみたいカルッソンヌでのアルビジョワ派十字軍での前後を挟んだ歴史小説です。当然、世俗の王侯諸侯やら、カトリック教会、ドミニコ会、異端審問、カタリ派等々、いい条件揃えているのにね・・・駄目なんだもん、コレ。

少なくとも当時の背景的な知識についていうならば、この本を読んで新たに得られたもの全く無く、知的好奇心には一切訴えかける点はありませんでした。「ダ・ヴィンチ・コード」とかそういう類いのウンチクを期待してはいけません。その分、小説に徹しているとも言えますが、個人的にはもっと突っ込んだ説明も欲しかったです。かなり浅~く書かれています、分かり易いかもしれませんが。

じっくり読んでいくとそれなりに登場人物がしっかり描かれているのですが、文体やプロット的には読者の興味をそそるのが下手です。こないだ「天使と悪魔」を読んだ後には、まさに苦行としか感じられません。読み始めて10分で読むのをやめようかと悩んでしまいました。その後、費やした時間・労力を考えると、忙しい方には時間の無駄かと(6時間以上はかかります、読了に)思います。

歴史小説といえば、そうなのかもしれませんが、私的には通俗小説って位置付けです。失礼ながら直木賞作家さんってこの程度なの?俗っぽ過ぎてちょっと・・・。この小説でなんで濡れ場が必要なのか、私には分かりません???(しかも中途半端なこと、このうえない)人間の生きる営みを描く上で性描写が必要なら、もっと描き込めばいいし、表面的過ぎて低俗さを覚える(むしろ、猥褻なまでの表現を期待します、描くならね)。時折、人物の心情表現には、うまいかな~と感じるところもあるが、なんの為に中世フランスを舞台にしているのかが不明???著者の意図を測りかねます。

私の好きな徳川家康、織田信長、豊臣秀吉等々の日本の戦国武将を描いた名作の方がこの100倍以上も面白いけどなあ~。人間の心理や、組織におけるリーダーシップ、戦略論とかも含めてずっと為になるし、小説としても面白いのに・・・。最近のだったら、早川元秘書が描いた政治家田中角栄とかね。

まあ、この本を買わなくても良かった!図書館はありがたいね。無駄な出費を避けられるもん。気に入ったら、読んでから改めて買えばいいしね。さて、借りてる本返して、明日はまた別な本借りてこようっと。

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佐藤賢一氏のインタビュー記事
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「ダビデの星」松田十刻 著 徳間書店

完全にタイトルで騙されました。さあ~と、見たときにはちょっと面白そうに見えたのですが・・・。やっぱ期待してはいけなかったですよね。普段、知らない作家の本を読む前には、読むだけの内容があるか否かを著者の経歴と出版社で判断するのですが・・・。失敗しました、忘れてました。徳間さんですもん。こういうので、ウンチク的なものを期待してはいけないですよね。私のミス。まあ、知識としては、一切得られるものはなかったし、エンターテイメントとしても全然面白くなかった。前回、散々否定するようなこと書きましたが、「イエスのミステリー」の方が100倍以上、1万倍も面白かったです。

本当に読む価値が無い本を読んでしまった時はつらい。時間を無駄にしたので泣きたくなるね。人生はそんな駄作を読むための無駄な時間はないのに・・・・。先に「死海文書の謎」読むべきだった。高いお金出して買ってきた本もあるし、他にも未読の借りてきた本も山積みだ。う~ん、失敗!

しょうがない、たまにはそういう時もあるしょう。人生前向きにいかないと。しかし、口惜しい。口直しに、「ルネサンス街道の旅」というムック本でも眺めて気晴らししよっと。いいなあ~イタリア。今年は久しぶりに行けるかな? 金と時間はあるんだけど、明るい未来の展望がないと、無駄使いできないし・・・困った?

ダビデの星(amazonリンク)
ラベル:小説
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「ソドムの林檎」 野阿梓 著 早川書房

いやあ~、ずいぶんと久しぶりに読みました野阿氏の本。懐かしいけど、相変わらず素敵な、一種、独特の世界観を構築された作品を書かれています。作品中の時間経過では前作「バベルの薫り」に先立つ話となる「ソドムの林檎」ですが、予備知識も不要ですし、幾つかの完全に独立した作品を集めた短編作品集ですので、この本だけ読んでも十分にこの面白さは伝わるでしょう。

もっともこの本はSFと言えば、ジャンル的にはSFなのでしょうが、本質的にここで描かれるのは、リアルな政治なんですよね。大国間や各種利権団体との権力奪取や国家対市民(=民衆)といったドロドロな政治的闘争やら葛藤を背景に描かれる、テロリスト側からの視点での描写。舞台が生々しすぎるのに反比例して、主人公は冷静沈着且つ非情の職業的テロリスト或いは特殊機関の捜査官。小説として、まさに観念的理想の結晶としての存在であるテロリストが出てきます。まるで、一切の無駄がないゴルゴ13みたい(でも、オヤジより若い女性の方がいいよね、やはり)。

何よりも、この著者の書かれる作品は、文章スタイルが洗練されていて流麗且つ簡潔で美しいんですよ。耽美的ですらあり、一番最初にこの著者の書かれた作品読んだときには絶対に、妄想癖のある少女趣味(=ゴスロリ系)の人か、演劇関係者かなあ~とか思いましたもん。まさかマッチョな男性(別な本のあとがきによる)と思えません。話はそれますが、夢枕獏氏とは方向性も文体も違うのですが、文章スタイルで感動を与える作家さんとしては、私の中では必ず挙がってくる方です。結構、ファンだったりする・・・・。

しかし、いつも思うんですが、この著者は好きだよねぇ~。政治結社や秘密結社、非合法組織、自治組織、軍部に宗教組織etc. ありとあらゆる合法・非合法を問わない組織が覇権や主張を争う姿を、現実にある組織を巧みに取り入れて近未来という場で構築する構想力には脱帽です。また、この方の作品の背景に描かれる建築物や文化、芸術に関する雑多な博学的知識も架空である作品世界を妙に現実感を伴って認識させ、下手したら、作品内のテロ事件がAP通信あたりのニュース記事よりリアルに感じることさえありますもん。

濃密な人間心理の描写も秀逸だし、こういうの好き。でももっと好きなのは、倒錯した愛情表現だったりして…。但し、低俗な快楽手段としてでは無く、宗教的にしばしば見られるような、人が人を超越する為の神話的(秘教的)秘儀としての手段としてなんですが…。
「ダ・ヴィンチ・コード」とかでも触れられていたけど、古代の宗教儀式にはつきものだし、そもそも巫女とかは神との間の一夜妻として神に奉仕する存在だったし、古代ローマ帝国ではウェヌスの処女、古代エジプトでは神聖娼婦とかの伝統はごく当たり前のことだったんですけどね。そういえば、マグダラのマリアが娼婦と呼ばれるようになったのは、「マグダラ」の地名が原因という説もあったなあ~。マグダラでは高級娼婦がいることで有名(当時は恥ずべきことではなく、むしろ神の恩恵を現世で顕現する祝聖された存在でもあった)で、その地に住む女性であったに過ぎないそうです。余談ですが。

感想からそれてきましたが、この小説内にも上記のことに関連した内容が出てきます。日本人には、すぐピン(!)と来る「喪がり」のこととかね。日本でも新しい天皇が即位する時には、大嘗祭で「喪がり」の期間がありますが、あれは天皇が代々引き付いてできた神性を受け継ぐ為の準備期間であり、人としての存在は亡くなっても神的霊力は、次の人に受け継がれることをシステムとして保障する仕組みなんですよね。人であって人でない、宗教的権力者には、イエスに負けない血脈としての神性だけでは足りず、そうした儀式が必要だったりします。これを挙行しないと、後に「半帝」などと呼ばれ、正式の天皇として資格が疑われたりするそうな。

恐るべし天皇制。そういえば、天皇制関係では女帝についての議論が騒がしいが、議論の本質がおかしいよう気がするんだよね。だって、そもそも人間はすべて平等と言っておきながら、皇室という特別な存在を規定しているわけで、その時点で通常の男女同権とかそういった論理とは別次元で捉えられるべきテーマだと思うんだが?まして、天皇制を考えるのに際して、他国の王室ではこうだとか比較するのって、論外!!

言葉は悪いけど、英国王室の歴史の浅さを考えてみると…。おまけに過去に断絶してるしさあ~。他の王室もそうでしょ。それぞれの国の事は、それぞれの国民が考えればいいことで何故、すぐ自分で考えずに周りばかり(=他人に目ばかり)気にするのかねぇ?マスコミが世論をリードするのもおかしな話。今のご時世、自分で情報は集められるし、判断できると思うのですが…。ほぼ一番歴史の古い日本の天皇制(インドのマハラジャにも日本の天皇制に負けないくらい古い血筋があるそうです)がむしろ、独自に新しいスタンスを生み出せばいいだけで、他の国の手本になればいいのにね。何故、マネばかりするんでしょうか?

読書レビューがニュース評論になってる(苦笑)? いつもながら、迷文だなあ。さて、「イエスのミステリー」を読むか?日曜までに読みきれるかな???

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2005年03月11日

「レックス・ムンディ」荒俣宏 集英社

以前から、図書館で見かけていて読もうか迷っていたのですが、表紙が嫌いで避けていた本でした。ダ・ヴィンチ・コードの関連本ということで読み始めたんです。う~ん、我ながらミーハーなこと(苦笑)。

この本のポイントは、やはりレンヌ=ル=シャトーをいち早く取り扱っている点ですね。レイ=ハンターを主役にしながら、欧米でベストセラーになったネタを取り込みながら、荒俣氏流に解釈しつつ、首尾一貫した論理的な謎解きがなされています。

ただねぇ~、面白い所もあるし、本書にちりばめられた知識もすっごく興味深いものではあるんですが、帝都物語とかとは、格段の差異があります。端的に言うと、つまらないんですな、これが。文章を含めたスタイルは、著書が増えるに従い、流暢で読み易くなっているのですが(以前の翻訳調とは違って)、その分なんか今風の安っぽさが感じられてしまうのは何故?

どちらかというとリスペクトしている先生ですので、とっても残念でした。

でもこの本に含まれている知識は、とっても面白いです。それだけを目当てに読んでもいいかも?ストーリーの結末は、いかにもありがちな陳腐なものに感じられたとだけ言っておきます。NHKスペシャル見てると、よく出てくるなあ~っていう評価です。神秘は神秘のまま、あえて合理的な説明はしなかればよかったのに・・・・。う~ん。

カタリ派に関心ある人にも、ストーリーは抜きにしてお薦めします。本としての面白さだけは求めないように。文庫も出てるそうですから、それで十分かな。借りて一読すればOKな本です。

レックス・ムンディ(amazonリンク)
ラベル:荒俣宏 小説
posted by alice-room at 21:41| Comment(6) | TrackBack(1) | 【書評 小説A】 | 更新情報をチェックする