2018年12月10日

「紀元千年のヨーロッパ」 L.グロデッキ 新潮社

著者があのグロデッキで翻訳者が柳 宗玄だったので読んでみました。

もうちょい、ゴシック建築とかロマネスク建築、聖遺物や装飾写本とか出てくるかなあ~と思ったんですが、フランスのものが意外と少なく、シャルトル大聖堂とかほとんど出てこないうえに、ドイツの中世建築とか・・・ね。

なんか私の求めているものとは、かなりずれているのを感じました。
説明文も多いのですが、中世美術や宗教関係の記述もちょっとなあ~。
ヤンツェンやフォションが引用されてたりするが、ちょっと違うんですよね。

ざっと全頁をめくって興味が持てそうなところだけでも拾い読みしようと思ったのですが、全くそれに値する箇所もありませんでした。
本書のポイントがいまいち私には理解できませんでした。

紀元千年のヨーロッパ (人類の美術) (amazonリンク)

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「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
ラベル:書評 中世
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2017年07月26日

「ロマネスク美術革命」金沢 百枝 新潮社

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本書を読むと、著者のロマネスク好きは分かるのですがいくら読んでもタイトルの「ロマネスク革命」の意味が分かりません。

明確な用語の定義付けがあるわけでもなく、まして従来のフォションやマールとの違いについての説明も独りよがりで根拠となる説明や例証も足りないし、実際、どの程度、学会で受け入られているのか本書では全く分かりません。

ゴシック偏重の傾向に対し、ロマネスク好きが一人で独自理論で専門書籍ではなく一般書籍で書きなぐっている、それ以上のものが読み取れませんでした。

また、単純に文章のロジックを追っていっても素直に首肯できるような明快且つシンプルで説得力ある内容とは言い難く、まずは文書そのものに違和感を覚えます。

エミール・マールのような流れるように、また、目から鱗が落ちて、さらに腑に落ちるような説得力ある文章でもありません。著者の自己満足以上のものとは思えませんでした。

大仰なタイトルなど使用せず、淡々とロマネスク美術の魅力を語られれば・・・と思いました。
正直、全体を通じてもロマネスクの魅力が伝わりません。企画倒れで残念な内容になってしまった本のように思われました。
【目次】
第1章 かわいい謎 異様な造形
第2章 ロマネスク再発見
第3章 語りだす柱頭
第4章 かたちの自由を求めて
第5章 海獣たちの変貌
第6章 聖堂をいかにデザインするか
第7章 ロマネスクの作り手たち
第8章 世俗化と大量生産の時代へ
終章 ロマネスクの美

ロマネスク美術革命 (新潮選書)(amazonリンク)

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「イタリア古寺巡礼」金沢百枝、小澤実 新潮社
「フランス・ロマネスク」饗庭 孝男 山川出版社
「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
「スペイン・ロマネスクへの旅」池田健二 中央公論新社
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
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2016年12月23日

「教会の怪物たち」尾形 希和子 講談社

もう少し内容がある本かと期待したのですが、非常に薄っぺらな内容の本でした。

美術史がご専門の方らしいですが、だったら・・・エミール・マールやパノフスキー、フォションがどうとか中途半端な記述をせず、その辺の流れをもう少し丁寧にして、具体的に解説される図像の説明に際して、どこまでが従来のものでどこからが著者の言われるアプローチの成果なのか、明示して頂きたかった。

ところどころに不要な著者のエッセイ的な自己語りが入るくせに、肝心な図像の説明が何の背景的、歴史的な説明もなく、○○を表していると断定されてもあっけに取られます。

あくまでもエッセイなのか、図像の説明をしたいのか、目的を明らかにしてから文章を書くという基本が抜け落ちています。

著名な中世美術史の碩学の名前がたびたび上がるのですが、文脈上必要でしょうか?
肝心な図像の説明はガイドブック並みの表面的な説明で呆れました。

フランスではなく、イタリアだし・・・。まあ、それはおいといて・・・ですが・・・。

数10頁読んで、もう耐えられなくなり、残りは飛ばし読みして内容をざっと見てみてもあえて読むに値しない本でした。講談社選書メチエには、もう少し内容のある本が多かったような気がしますが大変残念な本でした。
【目次】
第一章 怪物的図像とイコノロジー的アプローチ
・従来のイコノロジー研究の限界
・ロマネスク美術の三つの境界侵犯
・新しいアプローチの可能性
第二章 神の創造の多様性としての怪物・聖なる怪物
・セビーリャのイシドールスによる「驚異的なもの」
・神の被造物
・「聖性の顕現」
・反人間形体主義
第三章 怪物的民族と地図
・中世の写本における怪物的民族の図像
・スーヴィニーの八角柱
・床モザイク上の怪物的民族
・ケンタウロス、ミノタウロス、サテュロス
・モデナ大聖堂の怪物的民族
・言語上の誤解が生んだ怪物
・物と動物の境界を越える怪物
・「他者」の表象としての怪物
第四章 「自然の力」の具現化としての怪物
・セイレーンとワイルドマン
・グリーンマン
・「四大」と怪物
・「風」の怪物
第五章 世俗世界を表す蔓草
・モデナ大聖堂のピープルド・スクロール
・キールティムカとグリーンマン=オケアノス
・怪物的形体の装飾的生成
・ロマネスクの美意識と蔓草
第六章 悪徳の寓意としての怪物から辟邪としての怪物へ
・悪魔としてのハイブリッドの怪物
・異教徒や悪徳のアレゴリーとしてのハイブリッド
・悪徳に満ちた世俗の海
・変身について
・悪魔払いされる怪物
・不安の克服の手段
・グロテスクと笑い
・笑いと辟邪
第七章 古代のモティーフの継承と変容、諸教混淆
・セイレーン=人魚と古代美術
・イタリアの紋章と人魚
・ロマネスクの人魚と諸教混淆
・新世界の諸教混淆
・セイレーンと音楽
結び 怪物的中世
教会の怪物たち ロマネスクの図像学 (講談社選書メチエ) (amazonリンク)

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「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
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2016年02月16日

「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日経

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この著者の作品はどんだけ私読んでるんだろう・・・。
本作も期待して読んだのですが・・・ちょっと違ったかも?

第1部はカタルーニヤ美術館の話で、私、バルセロナ行った時にちょっとロマネスクとしてもちょっと毛色が違うだろうと全く寄ろうとも思わず、観光する場所から外していたんだけれど・・・。

本書を読んで是非、一度行ってみるべきではと思った。
スペインのあちこちにある有名どころの壁画を聖堂から引っぺがしてあるとは知りませんでした!
なんか今回初めて知ってそれがすごく残念です。

ピカソとか、キュービズムへの影響については、まあ、本当にそう?というのはありますが、一画面にいくつもの場面を盛り込む中世絵画の視点の話は何度も聞いているけれど、改めてカタルーニヤ美術館で直に確かめたいと思いました。

その辺は本書を読む価値のあったところかな?

第2部のサンチャゴ・デ・コンポステーラへの巡礼途上で各地に残るロマネスク建築を見て回る話なのですが・・・これは正直、文章だけで写真が悪過ぎてお話にならない。

率直に駄目です。

いくら文章で読んでも大きくて鮮明な写真なしには読者に何も伝わりません。
また、文章もこれでは何も伝えられないかと。第2部は私にとって不要でした。

芸術新潮のがはるかに良いし、あちらは意味があるものかと。
本書は基本、読む価値はありませんでした。
【目次】
第1部 光と影の道カタルーニャ
カタルーニャの色彩
影に沈むモンカダ通り 若きピカソの街・バルセローナ
陽のあたる丘モンジュイク―ミロ美術館
ロマネスク美術の宝庫―カタルーニャ美術館
鬼才ガウディと聖地モンセラの山
異端の贈物―ベアトゥス本写本と天地創造のタピストリー
レコンキスタへの願い―ピレネーに眠るリポールの扉口彫刻)

第2部 星の道 サンチャゴ巡礼
千年王国―サンチャゴ伝説と巡礼
ピレネーを越えて
王妃の橋
星隆る町
過酷な地
ブルゴスからレオンへ
レオン王国
星の輝く野―聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラ
旅の終りに

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「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
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「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「スペイン巡礼史」関 哲行 講談社
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2015年07月27日

『バラの名前』とボルヘス―エコ ニルダ グリエルミ 而立書房

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いきなりでなんですが、訳者あとがきで本書では引用が多く、たくさんの引用文献があったそうですが、南欧の本には多いそうですが、結構引用の仕方が適当らしいっす!

訳者はそれは想定済みだったそうですが、想像以上に酷かったらしい。「引用が杜撰」とまで書いてます。
引用する箇所だけではなく、引用する文献名自体も多々間違っていたそうで、『テキスト・クリティーク』まで必要だったと嘆いて(?)書かれてました(笑)。

ブエノスアイレスだもんね!
ブラジルもそうですが、あちらの人は本当に細かいこと(というか面倒なこと)気にしないで適当にやるもんね。まあ、ふとブラジル行った時の事を思い出して、訳者に同情すると共に勝手に納得しちゃいました!

さて、そんな杜撰な引用のもとで精緻なエーコの「薔薇の名前」の分析・解釈をしていくのですが・・・類書同様に、解説の為の解説本。共通の知識を有する仲間内の同人誌(大学の紀要とか?学会の分科会の会誌?)レベルのよく分からないけれど、知っている人には面白いかもしれないような・・・・でも、たぶん、知っていてもつまらなさそうなまさに、独りよがり的な解釈をつらつらと書き連ねています。

著者、そこまで考えて書いているのかなあ~。
えてして、この手のは周囲の方が勝手に深読みして、勝手に難解な解釈し、勝手に有り難がっていることも多々あるのですが・・・・正直、そんな感じの文章、内容です。

とりあえず、読み飛ばしで斜め読みをしたわけですが、「4節 光は美なり」のところで小説内の大修道院長アッポ-ネがあのサン・ドニのシュジュの忠実な反映という指摘には、本当かよ~と思いつつ、しっかり読んでしまいました。
・・・・・・
エコの小説ではこの大修道院長はまさにシュジュがいうような言葉で語っている―
「ここの神の家にある一切の美しい品々に見とれていると、多彩な宝石の魅力で外界の心配事が消え失せ、相応の瞑想で省察へと導かれ、物質的なものを非物質的なもの[・・・]へと変えてしまうのです。」
アッボーネ-シュジュの言葉のうちに反響しているのは、宝石のうちに閉じ込められた光の意味、感性=認識なる長い伝統、というった広く表明されてきた概念である。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
アッボーネは
「可視のものであれ、不可視のものであれ、被造物はすべて、もろもろの光の父から誕生した一つの光なのです。」と語っていたのである。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
大修道院長シュジェがその著書の中で述べているように「芸術は物質を超越する」のだ。「神の家の光輝に私が抱いている愛により、宝石の多彩な美が外界への取り越し苦労をときおり私に忘れさせてくれたり、私を物質的なものから霊的なものへといざなって、公正な瞑想が私をして多種多様な聖徳について省察するように招いたりする[・・・]とき、そういうときには、私は神のおかげで、法悦のせいで、この下級な住居から上級の住居へと移動することができるように思われる。」こうした多種多様性はまた、彼をして「物質的なものから非物質的なものへと通過するように・・・・」駆り立てていたのである。
うわあ~懐かしい光の形而上学ですね♪

そこまで読み取れるのか、実際の作品から、あるいは読み取れたとしても読み取るべきなのかはほとんど読者の恣意的な感覚なのでしょうが、それはそれとして指摘は興味深いです。

他にも作品の至るところについて、ボルヘス絡みだけではなく、ありとあらゆる観点からいろいろな解釈や指摘があるのですが、「薔薇の名前」のマニアックなファンにはこういう本もいいんでしょうね。

前述しましたが、ファン向け同人誌的なノリですのでそれを承知で読むならば・・・ですけどね。
個人的には他の「バラの名前」解説シリーズの方が面白かったです。
【目次】
1章 本書の意図
2章 ストーリー
1節 歴史
3章 序説
4章 構造、素材、典拠
1節 探偵ジャンル
5章 作中人物と範域
1節 囲まれた庭―金と権力―大修道院と都市
2節 バスカヴィルのシャーロック―バスカヴィルのウィリアム
1項 バスカヴィルのウィリアム―オッカムのウィリアム
2項 バスカヴィルのウィリアム―パドヴァのマルシリウス
3項 バスカヴィルのウィリアム―ロジャー・ベーコン
3節 ミノタウルス
4節 光は美なり
5節 モデル読者?
6節 バベルの塔的言語
7節 「祈れ、そして働け」
8節 名もなき女
1項 村
2項 悪魔払い
3項 単純な者たち
4項 「甘き毒・・・」
5項 ヒーメロス(思慕の情)
6章 鍵
1節 「ヨハネ黙示録」的状況
 1項 逆立ちの世界
2節 迷宮
3節 鏡
4節 笑い
1項 「キュプリアヌスの晩餐」
2項 「キュプリアヌスの晩餐」と桃源郷
5節 欲望
6節 危機
7節 数
8節 バラ
7章 フィナーレ
『バラの名前』とボルヘス―エコ、ボルヘスと八岐の園(amazonリンク)

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『バラの名前』後日譚 ロリアーノ マッキアヴェッリ 而立書房
薔薇の名前(映画)
「バラの名前 百科」クラウス イッケルト,ウルズラ シック 而立書房
「薔薇の名前」解明シリーズ 而立書房
「サン・ドニ修道院長シュジェール」シュジェール 中央公論美術出版
シュジェール ゴシック建築の誕生 森洋~「SD4」1965年4月より抜粋
ラベル:書評 薔薇の名前
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2015年01月04日

「フランス・ロマネスク」饗庭 孝男 山川出版社

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以前、著者の世界の庭園(?)とかの本を読んで悪くなかったのと、あの歴史の教科書で馴染み深い山川出版がこういう本も出しているんだあ~ってことで手に取った本です。

本書の第一部は一般的なロマネスクに関する説明でこの辺は正直可もなく不可もなく、といったレベルです。類書と違うところはないのですが、第二部に入ると、本書で紹介される具体的なロマネスク建築の教会の物量に圧倒されます。

ロマネスク建築はフランスの片田舎、交通の不便な辺鄙なところにあちこちと散在し、それこそ日本の無名な神社仏閣のように至るところにあるわけですが、実に丹念に精力的に各地を廻り、本書でも紹介しています。

勿論、定番のサント・マドレーヌ教会やフォントネー修道院、サン・サヴァン教会、サント・フォワ、ル・トロネ等などもありますが、それ以外にもかなりのボリュームで大量の教会を紹介しています。

他書でもロマネスク建築の本はたくさん紹介している本がありますが、本書もそれらに負けず劣らず、一番多いかもしれません。

モノクロで小さいながらも、頑張って図版も入れてくれているのですがねぇ~。
残念ながら、第二部の各教会の図像の文字による説明を補完するには至っていません。いくら説明読んでも目で見ないと理解も納得も十分にできないのが悲しいです。

でもね、旅行に行く際に是非、持って行きたいという気持ちにさせられる本です。何よりも行ってみたくなりますね!旅の案内書としては、これもありかと。

実際は電車だけでも回れないところばかりだと思うのでバスか徒歩か、レンタカーで回るしかないのかなあ~。ちょっとハードル高そうですが、実際にこの目で見て、写真を大量に撮りまくりたいと強く思ってしまいました。

まあ、新婚旅行のイスタンブール(予定)に行ってからだろうなあ~。
会社で休み取らせてくれないのが痛いね。無意味に職場復帰して、速攻で退職して有休使いまくるような人のしわ寄せくらうのは、本当に勘弁して欲しい!

やっぱり景気の良いうちに転職を検討した方がいいんだろうなあ~。
頑張って、職務経歴書のupdateを進めないとね。

一気に有休と合わせて、その時に2・3週間ぐらいヨーロッパ放浪しようか?
友人みたいに・・・・と思う私でした。

来年、シャルトル本を出版できるように、資料収集を進めないと。
やることいっぱいだあ~。
【目次】
第1部 中世ヨーロッパの歴史とロマネスク
中世キリスト教の「聖」と「俗」
中世農村へのキリスト教の布教
農村世界の成り立ち
グレゴリウス改革
修道院時代
日常の教会・墓地教会・巡礼路教会
異民族の侵入
終末論
「ロマネスク」とは
ロマネスクの建築と様式
地方色豊かなロマネスク美術
ロマネスク彫刻

第2部 フランス・ロマネスクの教会を訪ねて
パリ
ロワール地方
ブルゴーニュ地方
ポワトゥー・サントンジュ地方
ブルターニュ地方
オーヴェルニュ地方
アスザス地方
ランドック・ルシヨン地方
プロヴァンス地方
フランス・ロマネスク (世界歴史の旅)(amazonリンク)

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「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
「カラー版 イタリア・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新社
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「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
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「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
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「ラルース ビジュアル版 美術から見る中世のヨーロッパ」ジャニック デュラン 原書房

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ルーブルの学芸員の方が書かれた本です。
ビジュアル版と書かれているように多くのカラー図版があって、解説されている内容が視覚的に確認できて分かり易いのが長所かと。

基本、概説書ですので突っ込んだ深い説明はないです。
そういう意味では読んでいて物足りなさを感じますね。本書を読んで新しい知見を得た、とかそういうことはありません。

ただ・・・、同時並行して読んでいた「フランス・ロマネスク」がモノクロで写真はそこそこあるものの、図像的な説明が多いのにそれを目で確認できず、説明を理解できなくて不満があった時に読んだので、そのタイミングにおいて、一部不満が解消され、本書の方が表面的な満足度がありました。

でも、本書で書かれていることってほとんど私にとっては既知の話で、目新しいものがなく、刺激に乏しいのも事実。図書館で借りてきて、最初、面白そうに思って、購入しようかとも思ったのですが、結局、購入を断念しましたもん。

もっとも時間がなくて、自分の一番関心のあるロマネスク以降、ゴシック部分を通しで読んだというせいもあるのかもしれません。彫刻と装飾写本の関連の説明やゴシック建築の国際伝播の説明等、押さえるべきところは押さえてあるのですが、『光の形而上学』とかその背景の思想にまでは至りません。

一回、目を通せば良いかと思います。
【目次】
民族大移動の時代
 ローマと蛮族
 古代の名残と蛮族化
 島嶼のキリスト教文化
カロリング・ルネサンス
 よみがえった古代
 カロリング美術の開花
 宮廷美術の限界
紀元千年前後
 帝国の伝統、オットー朝の美術
 初期ロマネスク美術
ロマネスク美術
 建築の手法と原則
 ロマネスクの諸派
 彫刻の統一性
 彫刻の多様性
 色彩と素材、古典主義
 色彩と素材、想像力
 ※「中世の西欧とビザンティン」
初期ゴシック美術
 サン・ドニのシュジェール
 ※「交差リブ」
 発展と抵抗
 ニコラ・ド・ヴェルダン
盛期ゴシック
 十三世紀のモニュメンタルな美術
 聖王ルイ治下のパリの美術
ゴシックの広がり
 ゴシックのヨーロッパ
 宮廷美術
 ※「ジャン・ビュセル」
 イタリアとゴシック
 ※「イタイア金工芸の発明」
 ジョットの時代
 ※「アヴィニョン」
国際ゴシック
 ※「クラウス・スリューテル」
 1400年前後の海外
 奢侈美術
 ※「中世のタピストリー」
中世の終わり
 末期ゴシックあるいはプレ・ルネサンス
 ※「西欧の大公」たち
ラルース ビジュアル版 美術から見る中世のヨーロッパ(amazonリンク)

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西洋中世学入門」高山博、池上俊一 東京大学出版会
「ヨーロッパの中世美術」浅野和生 中央公論新社
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2013年09月16日

「Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)」Maurits Smeyers Brepols Pub

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【本の中の図版の続きは以下へ】
「Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)」の美しい図版


結局、中止になったけれど、ベルギー旅行に行く前の勉強中に見つけた装飾写本関連の本。

実はフランドル絵画とかって、今まで全く関心を持って無かったのだけれど、知れば知るほど面白いです♪

実に多くの装飾写本がこの土地で作成されているのですね。
ヤン・ファン・エイクが元々は装飾写本の作成に関わっていたらしいとか、あのポール・ゲッティ美術館やモーガン・ライブラリー所有の写本もここで作成されたものがたくさんあるなんてね!
(本書の中に出てくる作品の所蔵館としても当然、それらの美術館の名前があちこちに出てきます)

「中世の秋」の舞台がここ、フランドル地方であったことさえ、最初気付かなったし・・・私って!(オイ!)

人って、本当に関心が無いと何を見ても、実は全く意識の中に入ってこないということを改めて再認識させられました。

関連書を読めば読むほど、関心は深まるものの何か良い本ないかと思って購入したのが本書。
これ、大当たり!!

物凄く大判でページ数も600頁近いかな?
何キロもあって重いし、頁開くのも結構、大変なほどですが(書見台が必要なくらい)、もうこれでもかっ!っていうぐらい各頁に綺麗で大きな美しい図版が入っており、さらにびっしりと説明が入ってます。

まだ、本当に冒頭の数頁しか文字は読めていませんが、パラパラ頁見てるだけでも感動ものです。

もう、たった数頁しか読んでなくてもラテン語の本を意味する「libre」が自由を示す言葉に由来するとか、少し前に読んだ書物愛の「フィロビブロン」とかもバシバシ引用されてます。

"miniature"も古代ローマ人は、赤で描かれたものを指すだけで、「小さい」意味はなく、それが後の世で「肖像画」とかだったかな? 小さな円の中に描いたりしたものを"miniature"と呼ぶうちに、「小さい」ものを意味するようになったとか、もう装飾写本に関する興味深い知識があふれんばかりに詰め込まれてます。

本は人の全てを映す鏡とか、他にもこれでもか、これでもかってぐらい、いろんな情報盛りだくさん!!

しかも絵が綺麗で豊富な解説もあって、これは本当に購入して大正解。

もう一家に一冊は必需品ですね。
眺めているうちに、もう一冊欲しくなってきて、困ってます。

値段はコスパからいったら、全然安くて金銭的に問題無いのですが、自室の床だけが本当に心配です。

なんとか置き場所を作って、是非、もう一冊は予備として手元においておこうと思います。
それぐらい、本書はお薦め。

装飾写本好きな人なら、絶対の購入をお薦めします。
これと上智大学の中世思想原典集成を全巻揃えて読んでいたら、楽しいだろうなあ~。
あれも買うのはいいのだけれど、置く場所が確保できず、購入に二の足を踏んでおります。あ~あ、早く買って読みまくりたいなあ~。

Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)(amazonリンク)
【Contents】
Intoroduction
THE GREAT LABYRINTH
1.A Short Cultural History of the Medieval Book
2.The Marketing of Manuscripts,a Complex Process
3.The Many Facets of Manuscript Illumination
4.The Historical Setting
5.Flemish Manuscript Illumination

ChapterⅠ
SIGN AND MEANING:
THE PRE-ROMANESQUE PERIOD(8th to 11th CENTURY)
1.Monastic Scriptoria
2.The First Stirrings(8th to 9th century)
3.Pre-Romanespue Manuscript Illumination in Flanders and Northern France
4.Pre-Romanespue Manuscript Illumination in the Mosan region

ChapterⅡ
REPRESENTING THE INVISIBLE
1.Image and Sign
2.Benedictine Abbeys in Northern France,Flanders, and Hainaut
3.Cistercian Manuscripts,Ideals of Humility
4.The Benecitines of the Mosan region
5.Masterpieces from the Premonstratensian Milieu

ChapterⅢ
COURTLYNARRATIVES:
EARLY AND LATE GOTHIC(1200-1350)
1.Book for the Laity,Books by the Laity
2.The contribution of the Citis of Northern France
3.Bruges and Ghent:Psalters for the Upper Class Citizens
4.Manuscripts for Monastic Use
5.Tournal,Hainaut,and Brabant
6.Psalters of the Mosan region

ChapterⅣ
THE INTELLECTUAL EMANCIPATION OF THE CITIZENRY:
THE BREAKTHROUGH OF REALISM(1350-1420)
1.Pre-Eyckian Realism:"after the likeness of nature"
2.Flemish Illuminators in France and England
3.Manuscript Illumination in Flanders
4.Bruges as an International Book Market
5.On the Periphery:Northern France,Tournai,Hainaut,and Brabant

ChapterⅤ
MANUSRIPTS FOR CITIES,MONASERIES,AND UNIVERSITY(1420-1475)
1.The Guild System
2.Bruges and Ghent,the Twin Centers of Flemish Manuscript Illumination
3.The Borderning Territories:Northern France,Tournai,and Bruges
4.The Heritage of Van Eyck
5.The Monastic Patronage
6.Leuven:Manuscripts for the University

ChapterⅥ
THE PATRONAGE OF PHILIP THE GOOD AND HIS CIRCLE:
FLEMISH MANNERISM(1419-1467)
1.A Learned Prince
2.Miniature and Politics
3.Manuscripts for Isabella of Portugal
4.Bibliophilia in the Circle of the Duke
5.Simon Marmion,"Prince of Illuminators"

ChapterⅦ
CHARLES THE BOLD AND MARGARET OF YORK:
1.Illuminated Manuscripts for Charles the Bold
2.Margaret of York and the Devotionnal Book
3.Renewal in Ghent
4.Manuscripts for Citizens,Nobles,and Princes of the Church

ChapterⅧ
LATE GOTHIC MANUSCRIPT ILLUMINATION IN FLANDERS:
REALITY TRANSCENDED(1475-1550)
1.Realism in Three Dimensions
2.Famous Illuminators
3.Bibliophiles in the Low Countries
4.An Internationaliy Renowned Art

Epilogue
ILLUMINATED MANUSCRIPTS VERSUS PRINTED BOOKS
1.Printing:a Slow Beginning
2.The Power of Handmade Books
3.The Second Flowering
4.According to the Medieval Example:
the 19th and 20th centuries

Bibliography
Index of Manuscripts
Index of Illuminators
List of Abbreviations
Photographic Credits
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「Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)」の美しい図版
「旅名人ブックス56 フランドル美術紀行」谷 克二
「フランドルの祭壇画」岡部 紘三 勁草書房
013年01月06日
ゲッティー美術館が希少な装飾写本を獲得

「The Golden Age of Dutch Manuscript Painting」James Marrow  George Braziller社刊
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
プレゼントでもらった写本
シエナ大聖堂③(20120709)
シャンティイ城&コンデ美術館3~フランス(20100626)
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2013年08月04日

「中世の秋の画家たち」堀越 孝一 講談社

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フランドル絵画について関心があり、適当な類書が無くて読んでみました。
この著者の書いた本で良かったものって一冊も無かったはずなので、散々迷ったのですが、いい本が無くてねぇ~。

結果、少し読んでやっぱり、読む価値がないので読むのを中止しました。

目次は面白そうでそそるのだけれど、最初から著者の自分勝手な独り言ばかりで、一般的な説明もなく、しかもその独り言も、共感できない完全な個人的な感想や思い付きの域を出ず、端的にひどい内容。

別にエッセイであれば、それについてとやかくいう気はないけれど・・・・これを講談社学術文庫に入れたら駄目でしょう。本にする価値さえ、見出せませんが・・・・。

まずは当たり前の説明が出来るようになったうえで描いて欲しいですね。仮にも専門家であるならば。私には要らない本でした。
【目次】
ファン・アイク兄弟―万聖節の宵宮
ヤン・ファン・アイク―空間の呪縛
ペトルス・クリストゥス―小さな和みの空間
ロヒール・ファン・デル・ウァイデン―力を帯びた場
フーホ・ファン・デル・フース―色蒼ざめた沈んだ空間
ハンス・メムリンク―均斉と不動
ディーリク・ボウツ―風景のなかの衣裳
ヘールトヘン・トート・シント・ヤンス―塑像のある風景
ヘラルト・ダフィット―硬直と緩解
クェンティン・マッシース―永遠の再‐演者
ヒエロニムス・ボッス―日常の裏側
絵の空間
中世の秋の画家たち (講談社学術文庫)(amazonリンク)

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「フランドルの祭壇画」岡部 紘三 勁草書房
「旅名人ブックス56 フランドル美術紀行」谷 克二
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2013年07月27日

「フランドルの祭壇画」岡部 紘三 勁草書房

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10月に、18万マイル使ってベルギーまでの特典旅行2名分を予約したので、廻る美術館や大聖堂の候補を絞る為、情報収集の一環だったりする。

ゲントの祭壇画、「神秘に子羊」は外せない作品ですが、それらを含めてフランドル絵画全般のお勉強には良さそうかと。

今のところ、半分ぐらい読んだところでしょうか?
一般向け図書にしては、読書に前提として要求する水準がかなり高いなあ~と思っていたのですが・・・。
後書きを読むと、著者の大学の紀要などに載せた論文等をまとめて一冊にしたものらしいです。

パノフスキーとかエミール・マールとか図像学の基本とかは、既知前提で引用し、それらを踏まえて説明されているので、その辺をそもそも知ってないと、何言ってるのか、全く分からないままかと。

国際ゴシック様式やらシエナ派の板絵とかはいうまでもなく、有名な装飾写本などもポンポン説明の過程で出てくるし、METのクロイスターやウフィツィ、プラド美術館や定番ところは実際に見たりしたことないと、説明が生きてこないかも?

そもそも載ってる図版が小さ過ぎるし、少な過ぎて、説明には役立っておらず、文字だけの説明になっていて分かり難い。

他の研究成果を踏まえての自説の主張なのは分かるものの、もう少し、その前提の学説を簡潔に触れたうえで納得のいく解釈と根拠を丁寧に説明したうえで自己の主張があるといいのだけれど、正直、解釈と根拠は専門家以外の私には、不十分過ぎて良く分かりません!

単純にロジカルか否かの視点で見ても、説明不足で結論に至る過程には、飛躍を感じてしまう。

エミール・マールの説明は、誰が読んでも思わず、納得しますけどね。

それはともかく、本書を読んで知ったことも多く、旅行に行く前に益々、関心が増してきました!
写本の方は興味があって少しは知っていましたが、ご他聞に漏れず、フランドル絵画も影響を受けているのですね。

あと14世紀のイタリア画の直接・間接の影響のあること。
「シエナ派の絵画が国際様式として全欧に流布していたから、たとえ反対の立場をとるとしても、その痕跡を完全に払拭することはできなかった。」と本書に書かれています。

それに、14世紀末から15世紀初頭の板絵の影響のあること。が書かれています。

去年、シエナの国立絵画館で、本当に素晴らしい装飾(彩色)を施された板絵の数々を見ましたが、あの影響を受けているフランドル絵画、なんとも楽しみです♪

ヤン・ファン・エイクがかつて装飾写本を手がけていたのでは・・・という話は、ツレからも聞いていましたが、本書でも「ベリー公のいとも豪華な時祷書」や「ブシコー元帥の時祷書」なども触れていて、おととし行ったコンデ美術館なども懐かしく思い出されました。

NYのクロイスターは相当昔だからなあ~。9・11の直後だったし。
プラド美術館はほとんど記憶に残ってなかったりする。アルハンブラ宮殿とタブローで見たフラメンコしか覚えていない。

いろいろと非常に懐かしいものを思い出すきっかけにはなりました。
フランドル絵画と装飾写本、シエナの板絵が結びつくことを知っただけでも十分に本書を読んだ価値がありました(私的にはね)。

ただ・・・、予備知識の無い人が本書を読んでもほとんど理解できず、面白いところはないかと思います。
前提を知っていれば、まあ、ところどころ興味を持てるところもあるし、勉強にはなるんですけどね。

私は勢い余って、重さ数キロの洋書まで購入しちゃいましたが・・・・床が抜ける・・・orz。
『flemish miniatures』

いつ読むんだ? 我ながら正気を疑う所業だけれど・・・・。
Flemish Miniatures from the 8th to the Mid-16th Century (Single Titles in Art History)(amazonリンク)

全然関係ないけど、今、このブログを書いていて気づいた!
映画「ナインズ・ゲート」の原著の題名って「フランドルの呪画」ジャン!

そうか、そうか、1人で納得して悦に入ってしまう私(ニヤリ)。
【目次】
1章 メローデ祭壇画
2章 ゲントの祭壇画
3章 ボーヌの祭壇画
4章 コルンバ祭壇画
5章 聖餐の秘蹟の祭壇画
6章 ホルティナーリ祭壇画
7章 マリア・ヨハネ祭壇画
8章 マギの礼拝の祭壇画
9章 マセイスの二大祭壇画
フランドルの祭壇画(amazonリンク)

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シエナ大聖堂③(20120709)
シャンティイ城&コンデ美術館2~フランス(20100626)
「旅名人ブックス56 フランドル美術紀行」谷 克二
「フランドルの呪画(のろいえ) 」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
ナインズ・ゲート デラックス版(1999年)ジョニー・デップ主演
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2013年07月14日

「旅名人ブックス56 フランドル美術紀行」谷 克二

今度の10月にようやく遅い夏季(?)休暇を取るので、それに合わせてベルギー関係の旅行資料を集めていて見つけたもの。

非常に勉強になることが多かった!
リネンのレースや、カール5世の生まれたのが行こうと思っているゲントだったことなど。

去年かな?bunkamuraで見たブリューゲル展良かったけれど、そっかブリューゲルってベルギー出身だったことも忘れていました。

ルーベンスもそうですが、定番のファン・エイクも見たい作品がたくさんありそう。
ブリュージュのステンドグラスについては別な観光本で興味ありましたが、見てみたいですね。

壊れたステンドグラスの修復に関しての記事ですが、初期のガラスの品質が不均一な方がより複雑な光の味わいがあり、荘厳さが勝るという見解には大いに同感です!

大変繊細で色彩鮮やかな中世後期以降のステンドグラスも美しいのですが、シャルトル・ブルーに勝るステンドグラスなぞ、私には想像も出来ません! シェジェールの思い描いた『光の形而上学』を具現化する物質として、現代のガラスは負けていると思いますので・・・。

まあ、それはおいとくとして、このフランドルという土地の持つ歴史や文化などを上手に説明されていて、大変勉強になりました。また、具体的な美術館や建物をそれと関連させて紹介されているので、見たいという欲求が大いに刺激されました!!

旅行に行かれる前に読んでおくと良い本かと。
図書館で借りて読みましたが、バーゲンで安くなっていたこともあり、速攻、新たに購入しました。
旅行の際にはもって行こうっと!
【目次】
第1章 ブリュッセル
第2章 アントワープ
第3章 ゲント/ブルージュ
第4章 フランドルの小さな町
第5章 フランドル美術を深める

(amazonリンク)旅名人ブックス56 フランドル美術紀行
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2012年10月21日

「マギの礼拝」図像研究 久保尋二 すぐ書房 

数年前にamazonで購入してkindleで読んだ「Revelation of the Magi:The Lost Tale of the wise Men's Journey to Bethlehem」が結構、面白かったので(書評書いてないかも?)、三王礼拝図には関心があり、どっかの古書市で見つけて購入したもの。

しばらく放置していたのだけれど、部屋の掃除中に見つけたので改めて読んでみた。

読了にはあと少し残っているけど、最近時間がないので書けるうちに気付いた点を書いておく。

文章はうまくない。ダラダラと文章を連ねているばかりのうえ、参照元や比較する文献、作品への言及が言葉足らずのうえ、指摘自体もありふれており、どっかで聞いたような内容をただ適当に繋げているだけに感じてしまう。

マギを巡る時代的な変遷や解釈は、いくらでも既に出ており、その列挙で終わっている感がする。
著者がもう少し丁寧に、既存の解釈を説明したうえで自らの立場・主張をされているような部分があればいいのだけれど、ほとんど見当たらない。

単純に種々の解釈の紹介なら、それはそれでも良いと思うのですが、紹介にしてももうちょい時系列的な解釈の変遷が分かるように、うまく書けないものだろうか?本書の存在意義が分かりません。

参集する人々の人数や捧げ物、ヨセフの取り扱いの説明など、散々、あちこちの美術書で読んでますが、本書の説明はかなりお粗末です。マギの礼拝をテーマにしているが故に、残念感が半端無いです。

黄金伝説からの描写なども多々指摘されていますが、そもそもの民衆が黄金伝説に仮託したもの、誕生の背景とかも説明なしにあれこれ言われても、ちょっとねぇ~。著者の行う解釈・説明の説得力が本書全般を通して希薄過ぎて、素直に首肯できないのですよ。

つ~か、別に非論理的な説明をしたり、論外な説を押し付けるようなこともなく、淡々と説明するのですが、本当に大学でただ板書して自書を読み上げるだけの・・・そう、あの感じが本書の全てです。

実際、読んでいると非常に眠くなり、その意味での有用性も大学の講義並みですが・・・。

著者、一次資料を自ら当たって、実際の作品を観たうえで納得しているのですかねぇ~。どうにも二次資料でお茶を濁しているように思えてなりません。文章がシンプルというよりは、薄っぺらなのですよ。どうも。

ほとばしるパッションが見えない・・・。

もっとも読んでいて、当然、知らない事もあり、本書が全く役立たないわけではありません。本書で学んだこともあります。(後で別途、記述するつもり)

しかし、著者さん、そもそもの専門がルネサンス美術のようで、宗教画家に独自の才覚での発露を高く評価するような姿勢が文章のあちこちに滲み出ていて、個人的にはかなり嫌悪感があるのも事実。

ルネサンス期の美術表現とそれ以前の表現の比較がテーマなら、それもありですが、何故、その時代だけを特別視するのか?明らかに著者の個人的嗜好が偏見として出ているように思えてしまい、がっかりします。

元々、宗教画にその辺が出ているのをいささか浅ましく感じ、それをよしとしない今度は私の偏見なのですが、(それでいてラファエロの聖母子が大好きでわざわざ、こないだも見てきたばかりの矛盾の塊でもあるわけで・・・)とにかく、なんか本書を肯定するのは難しい心情ですね。

まあ、本書を出していた出版社も閉めたようで絶版なのかな?
需要無いだろうしね。

本書に独自の主張らしいものはありません。おそらく・・・・。
入門書としても偏ってるし、不親切だし、知らない人への紹介への意図も見えず、まして専門家がこんな説明を必要とする訳もなく、不思議ですね。ターゲットがどの層なんでしょう。

本書を読むなら、英語ですが "Revelation of the Magi" を読みましょう。はるかに面白いです。
改めて読み直して書評書こうかな? あちらの。

最近、読書スピードが落ちた上、読んだ本の書評を書く暇がなくて、何冊分の読了した本があっても全然書評書けてないなあ~。なんか悲しい。今週も残業ばっかりだし・・・・(涙)。
【目次】
Ⅰマギ物語のキリスト教における意義
 1福音書におけるマギ物語の特異性
 2古カトリック教義における「マギの礼拝」の意義
Ⅱ 「マギの礼拝」図像の構造
 1キリスト教美術における「マギの礼拝」表現の重要性
 2「マギの礼拝」図像の構成と教義
 3ヨセフの取り扱い
Ⅲ 「マギの礼拝」図像の基本形態
 1関連図像との関係
 2聖母子表現
 3<三王>表現と「マギの礼拝」図像
Ⅳ 「マギの礼拝」図像の様式展開
 1様式展開の根拠
 2図像の伝達と時代性
 3<群>表現への発展
結語 カトリック芸術の精神史的意義
「マギの礼拝」図像研究―西洋美術のこころとかたち(amazonリンク)
Revelation of the Magi: The Lost Tale of the Wise Men's Journey to Bethlehem(amazonリンク)

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「マギの顕現」バチカン図書館で何世紀も失われていた古代の写本がクリスマスの話の目撃した説明をあらわにした。
「マギの聖骨」ジェームズ・ロリンズ 竹書房
「ゴシックの図像学」(下)~メモ
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2012年05月27日

「新・大英図書館への招待 The British Library Souvenir Guide」Heather Crossly、Ann Young ミュージアム図書

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こういう本があるんですね。大英図書館の案内・紹介本。
監修は、やっぱりあの高宮氏です(笑)。
この手のは、この方ですね。名前貸してるだけっぽいですが・・・。

それはともかく、私の好きな綺麗な装飾写本がたくさん写真で紹介されています。
読む本というよりは、眺める本です。

あのハガター他、定番の時祷書から、東インド会社の特許状まで。
実物見てみたいですね。

まあ、今年はバチカンのシークレット・ライブラリーでテンプル騎士団の裁判記録とか見るから、こちらはそのうち、観に行くって感じで今は我慢&我慢。
【目次】
聖典
彩飾写本
印刷本
歴史文献
英文学
楽譜
科学文献
地図、風景画
その他の所蔵品
新・大英図書館への招待 (The British Library Souvenir Guide)(amazonリンク)

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英国図書館(BL)、7世紀の貴重な写本である『聖カスバートの福音書』を購入
「物語 大英博物館」出口 保夫 中央公論新社
世界最古のコーランの一つが大英博物館で展示される
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2012年05月26日

「パトロンたちのルネサンス」松本 典昭 日本放送出版協会

7月から久しぶりに出かけるイタリア旅行に備えて、お勉強の為の読書。

フィレンツェは3回目か4回目だね。

「利息をとってはいけない」というキリスト教的価値観に対し、有名どころでは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」があるが(学生時代にサークルで読んだなあ~)、中世まではユダヤ人とかキリスト教徒以外しか出来なかった職業としての銀行業がまさにこのルネサンスを生み出す背景だったりするしね。

利子とって儲けたお金に対する贖罪的行為と経済発展に伴い、社会的な地位向上を果たした新興市民勢力の自尊心の発露としての、パトロネージュ。

その辺は本書を読む前から知識として知ってはいましたが、本書を読んで改めてパトロン達が金を出すだけではなく、口を出し、私が持っていた「才能のある人への善意からなる奉仕」といったイメージとは全然異なる事を知りました!

というか、パトロン達は純粋に施主であり、注文主であり、金で職人に対し、請負契約を結んでいる、そのまんまであることを理解しました。だからこそ、建築物については、肝心要の設計自体をパトロンがして、細部の仕上げや実施に際する実務部分をいわゆる後世の芸術家達にさせていたりする事例があったりするんですね。

絵画であれば、色彩やその材料、画面構成、個々の人物のポーズに至るまで何から何までも注文主が指示して、画家(=職人)に描かせる。そりゃ、才能も自負もあるダ・ヴィンチ等は指示通りに描かないことでしょう。よくよく得心がいきます。

その一方でどんなに指示があっても、それを後々の世まで名品として残すには、それを描いた画家の力量があっての話であり、あの時代の限定された作品にだけそれが可能であったのは、また、特筆すべき現象だったのも事実でしょう。

私の大・大・大好きなラファエロもフィレンツェにはたった5年ほどしか滞在してなかったんですね。お金をもっとくれるローマに長くいたそうですが、私の好きな作品は、べたですが、ピッティ宮殿にあるアレです。

延々と作品の前に一人で見ていても許される、今回も人がいないといいなあ~。
日本で、ごちゃごちゃと人混みにまみれて見てもイマイチ嬉しくないもんね。現地でみるのが一番!!

そうそう、建築物や絵画の価値をそれにかかった費用の金額を評価尺度にしてしまうのも凄い!
拝金主義・物質主義的精神もここにきわまれり。

バカ高い値段で、豪勢な箱物施設を作った社保庁の方々とメンタリティー的には共通するものがありそうです(笑)。

もっとも、彼等は自分達の才覚と努力で稼いだ金を私的目的の為に公共物建設にあてていますので、どっかの国民から掠め取った資金を自分達のモノと思い込んで使い込んだお役人様とは一緒にされたくないかもしれませんが・・・・。

ただ、後に私物化された君主国家となりさがると、さしものフィレンツェも市民への増税で得た資金をローマで教皇として戦争資金などに流用しちゃったりするんですが・・・。そういった話なども説明されていて、なかなか勉強になります。

人(芸術家を含めて、一般人も)は自由を求めるものの、経済的な裏付け無しの自由なんて、この世には無いもんね。って教訓を得られたりします。本書を読むと・・・私だけかも知れませんが。

自給自足であろうと、年金生活であろうと、生きていけるってことこそが経済的な裏付けですからね。

今週も(そして来週も)不本意ながら、納得の決していかない仕事を淡々とこなす自分とも重なったりする。寝不足だよ・・・・もう~ふはあ~。
【目次】
序章 奇跡の都市、フィレンツェという舞台
第1章 大聖堂の影のもと
第2章 威信を競い合った同職組合
第3章 金持ち商人たちの礼拝堂
第4章 「祖国の父」コジモ・デ・メディチ
第5章 メディチ家の「黄金時代」
第6章 「黄金時代」のパトロン群像
第7章 炎の共和国
終章 フィレンツェ共和国の最期
パトロンたちのルネサンス―フィレンツェ美術の舞台裏 (NHKブックス)(amazonリンク)

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「フィレンツェ・美の謎空間」宮下孝晴 日本放送出版協会
「フィレンツェ幻書行」ロバート ヘレンガ 扶桑社
何かがある?謎の空洞と文字 ルネサンスの絵
裸のモナ・リザが陳列される
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2012年02月19日

「カラー版 浮世絵」大久保純一 岩波書店

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たくさんのカラー図版入りで、全くの浮世絵の初心者が理解するのに役立つであろう、浮世絵のお約束となる部分を簡便にまとめて説明されています。

特にお上の圧力で検閲される当時の世相から、各種比喩が多用され、重層的なイメージの指し示す実態へと向かうアプローチ法など、分かり易い説明だと思います。

あと実際の作成の工程や流通事情など、浮世絵を取り巻く一通りの基礎が身に付きそう。

そういう意味では良い入門書かと。

ただね、採り上げられている図版とかは、正直全然面白くない。本としても、平板且つ平凡過ぎて、興味を維持するのは難しいかも?悪い本ではないんですけどね。

購入してまで読むことを薦めるかと言われれば、微妙な気がしますねぇ~。個人的にはイマイチ感が拭えません。今週は、あまり面白い本無かったなあ~。残念!
【目次】
第1章 浮世絵のながれ
浮世絵版画のはじまり
錦絵の誕生
現実に向ける眼差し
急速な大衆化
浮世絵の終焉

第2章 錦絵のジャンル
美人画
役者絵
名所絵(風景画)
花鳥画
戯画
武者絵・物語絵

第3章 重ねられた主題と隠された主題
イメージの重層を楽しむ―見立絵
世相諷刺を読む

第4章 錦絵はいかにつくられ、売られたか
改め、彫り、摺り
販売の実態
購買層と値段

第5章 錦絵の技法さまざま
摺り色制限の効果
空摺という技法―質感再現のために
ぼかしのさまざま
カラー版 浮世絵 (岩波新書)(amazonリンク)

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2012年02月05日

「没後150年 歌川国芳展」in 森アーツセンターギャラリー

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没後150年 歌川国芳展 公式サイト

行こう&行こうと思いつつ、危うく行き損なうところでしたが、会期ギリギリでようやく土曜日行ってきました。

基本的に血まみれ芳年の方が壮絶な美で、血湧き肉踊って好きなんだけれど、まあ、国芳も嫌いではない。

Cool Japan!のさきがけみたいなもんだしね。

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ありふれた感想になってしまうのだけれど、ディフォルメを極端且つ、ポイント的に集中して活用する構図や色彩感覚は、絵画というよりもポップ・アートの感性に近いものを感じます。

昔のセゾンの意味無し、適当・感覚コピーなんかよりもよっぽど洗練された、coolな商業広告で、時代の最先端性に気付かされてなりません!

率直に言うと、カッコイイし、目を惹くんですよね。
実際、この美術展の宣伝も素材をただ、うまく生かすだけでどこでも目につき、インパクト大ですもんね。

まあ、BUNKAMURAのブリューゲルのように最近、どこも宣伝がうまくなってきますけど(下手だと人が集まらず、予算が取れず、宣伝費カット、展示企画の予算縮小で更にジリ貧・・・・というお寒い懐事情もあるのでしょうが、商業的に成功した展覧会だったと思います)

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見ていて気に入った作品の画像が見つかりませんが、こういう金魚達の描き方もいいですよね。

たくさんの人が集まった1人の人の顔を形作る、あの定番の作品とかも出ています。
アンチン・ボルドのようなあれとか。

私的には、雪の白い背景に人物等が色鮮やかな衣装で活躍し、そのモノクロ世界とカラーの世界の鮮烈な対比とか好きですねぇ~。(画像見つからないけど・・・)

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前期と後期で展示品の入れ替えがあり、前期の見れなかった作品は少し残念でした。
でも、楽しい美術展でした。

入場制限があり、ちゃんと見れるか心配でしたが、混んではいたものの、普通に作品が観れたので良かったです(笑顔)。

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2012年01月14日

「イタリア古寺巡礼」金沢百枝、小澤実 新潮社

イタリアの古寺巡礼、このテーマやタイトルの本って実は無数にあるのですが・・・正直、それほど読んでいて面白い本でも無い事が多かったりする。

本書はビジュアル面重視で、昨今人気の『とんぼ』のシリーズなのですが・・・。
よくあるような教会だったら、まあ、マンネリだよなあ~と思いつつ眺めていたのですが、実に珍しいタイプの古寺を紹介しています。

全体的に大都市にあるゴシック建築ではなく、地方に点在し、メジャーにならないようなロマネスク建築の教会を紹介してます。ましてイタリアのロマネスク建築だもんね。

ほとんど知らないところばかりでした。それだけでもかなり新鮮な感じ!

フランスゴシック建築至上主義者(そんな言葉無いけど)の私などには、本当に目新しい視点に気付かされた感覚でした。フランスのロマネスクも行きたいと思っていましたが、イタリアも悪くないと思いました。

とにかく写真が面白い♪
こんなの見たら、是非行って自分の目で見たくなっちゃうって。でも、田舎って観光するの大変なんだよね。時間さえあればいいんだけど、空港からアクセスの良い大都市と比較するとロスする時間が・・・痛いなあ~。

でも、こんなの見ると久しぶりに海外旅行に行きたくなりましたよ。年末も行きそびれたしなあ~。

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これ、なんだと思います?
樹になっているのは、男性の生殖器。これらを収穫したり、使ったり(!)している連中が『魔女』だって。泉(貯水槽)の建物の壁につい先頃まで塗り込められていたそうです。イタリア、その手の多過ぎ(笑)。

豊穣の象徴らしいのですが・・・・さすがにこの手のデザインは見たことも聞いた事もないですよ、私。インドのリンガやヨニでもあるまいし、しかも魔女って・・怪し過ぎる(ワクワク)。

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こちらはケルト十字みたいな意匠ですが、イギリスでもないのでランゴバルド芸術だってさ。なんか独特のレリーフだよね。

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ここいらになると、フランスのロマネスク建築でしばしば見るような意匠になりますが(グリーンマンではないものの)、個人的には好き♪だったりする(笑顔)。

本書は、コラム的に名物の郷土料理の紹介なんかもあったりして、まあ、上出来の観光ガイドみたいなノリではありますが、結構、いいと思います。フィレンツェも2度ぐらい行ったけど、本書に出てくるような教会は、全く気付きませんでした。

もうちょっと近ければ、行き易いんだけどね。でも、行ってみたい気持ちになります。
定番のイタリアを押さえた人ならば、こういう系も良いかもしれません。

私は結構好きな本でした。
あとは、もうちょい解説がね。中身深くなると、はるかに面白みを増すと思うんだけど、そうしたら、読者層が絞られて、売れ行き落ちちゃうんだろうから無理か。

その辺の薄っぺらさは残念なんですが、でもこの手の好きな人には、外れではないかと思いました。
【目次】
フィレンツェ―眺めのよい聖堂 サン・ミニアート・アル・モンテ修道院聖堂
ロメーナ―ロマネスク日和 サン・ピエトロ教区聖堂
ピサ―奇蹟の広場 サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂
シエナ―聖母に護られた町 サンタ・マリア・アッスンタ大聖堂
モンタルチーノ―簡素な楽園 サンタンティモ修道院聖堂
マッサ・マリッティマ―アヒルと魔女 サン・チェルボーネ大聖堂
アンコーナ―東方の香り サンタ・マリア修道院聖堂
ジェンガ―かくれ里の名作 サン・ヴィットーレ・アッレ・キウーゼ修道院聖堂
フェレンティッロ―のどかな渓谷 サン・ピエトロ・イン・ヴァッレ修道院聖堂
アッシジ―心洗われる中世美術の宝庫 サン・フランチェスコ聖堂
イタリア古寺巡礼―フィレンツェ→アッシジ (とんぼの本)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「芸術新潮 2007年04月号 イギリス古寺巡礼」
イタリアだけの贅沢、民家の壁からラファエロの複製
何かがある?謎の空洞と文字 ルネサンスの絵
「ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂」渡辺 晋輔 小学館
「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」石鍋真澄著 小学館 感想1
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2011年11月16日

「中世の芸術家たち」アンドリュー・マーティンデイル 思索社

本書は元々、大分の本「中世の開花」の一部だけを訳出したものであり、分量、内容共にそれほど深いものではない。さらっと読み飛ばせてしまう程度の本である。

内容も当時は、芸術家が職人から分化する以前であくまでも職人階層の中での上位と下位の別であったことを述べている。まあ、誰でも知っている話です。

しかしながら、職人は職人でも石工はまったく別格であり、建築家として、巨大な大聖堂を設計し、多大な栄誉と報酬を受けていた石工は、特別な地位を占めることが制度として認められていた。

絵師の場合、どんなに優れていても絵師そのものは職人の域を出ず、石工と擬制されて認められたり、宮中では、王様の側近として、評価されるに留まったらしい。

装飾写本でお馴染みのランブ-ル兄弟とか、他にもいろいろと私の好きな写本の話も出てくるのですが、正直物足りないし、浅い。

箇条書きでダラダラ書いているものの、深い洞察や考察などは全くありません。読むのは時間の無駄でしょうね。挿絵もあるのですが・・・まあ、早くNYのモーガン・ライブラリーに行きたい!と思うぐらいで、他に思うこともありませんでした。

ここの出版社が出している中世シリーズって外ればかりですね。「中世の女たち」とかも駄目だったし、もっと価値のある作品の翻訳や出版を期待したいところです。もう、つぶれてしまったかもしれませんが?

ちょっとぐぐったら、案の定倒産したようで、次の会社に引き継がれているようですね。
【目次】
第1章 都市の芸術家
第2章 宮廷の芸術家
第3章 修道院の芸術家
第4章 建築家
第5章 芸術家とルネサンス
第6章 補遺

文献解題
水星の下に生まれて
訳者あとがき

中世の芸術家たち(amazonリンク)

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「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社
「中世の女たち」アイリーン・パウア<新思索社/a>
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2011年05月29日

五百羅漢 増上寺秘蔵の仏画 幕末の絵師 狩野一信 in 江戸東京博物館

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五百羅漢 江戸東京博物館の公式サイト

劇団四季の予約を入れた後、何気に美術展とかを調べていたら、目に入ってきたのが五百羅漢の展覧会。

それは先週のことでした。江戸東京博物館もしばらく行ってなかったのでようやく土曜日に行ってきました。

あいにくの雨でしたが、お昼を食べて軽くお酒も飲んで、テンションはまあまあ。

いざ、五百羅漢へ。

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雨にもかかわらず、思ったよりは人がいたかな? でも、それほどごみごみとするわけでもゆっくりと一幅づつ、100幅の羅漢図をじっくりと見れたのはとっても良かった♪

とっても色彩が鮮やかだったりする。何よりも地獄絵図とか大好物の私には、今回の作品展はとっても見応えがありました。

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結構、始めてみる構図も多く、ふむふむと勉強になることも多い。もっとも、成田山新勝寺にある作品や東京国立博物館にもある五百羅漢図と同じ構図もたくさんあり、それが比較展示されていました。

キリスト教の黙示録の図像も、一箇所で生み出されるとそれが範となり、広く流布していくのをあちこちで見たり、読んだりしましたが、仏教も改めて一緒なんだなあ~と思いました。

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大蛇の口の中にいる羅漢さん、分かる?
これなんかもなかなか斬新な構図だと思うんだけど・・・。

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小さい画像で分からないでしょうけど、竜宮で接待されていて、その周りを蛸と蟹だったかな?たくさんの魚達などに囲まれていたりして、なんかユーモラスでもある。

ちょい若冲とかを思い出した。

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こちらは禽獣達と戯れている図。

他にもね、昔流行った怪人21面相よろしく、変装を剥がして本当の姿をさらすあの映像を彷彿とさせるような構図なんかもあったりする。顔を剥がして中から、観音様の姿を出している瞬間を捉えたものや、お腹の中を割って、中に観音様が鎮座していたり・・・。

もう、まさにファンタスティックな映像を見ているようです(笑顔)。

羅漢さんの姿・形も実に異形の者達だし、構図もかなり特異な印象を受けますが、いやあ~実に面白い。

伝統を踏まえたうえで(パクリで?)、そこにプラスαを加えていて、なんとも力強い。

曾我蕭白のレベルまでは、正直言っていなし、若冲のあの凄さにも達してはいませんが、十分に見る価値のある作品でしょう。個人的には地獄絵図、お薦めです♪ 

あと成田山新勝寺の大きな「釈迦文殊普賢四天王十大弟子」。この展示方法は、照明方法をかなり凝っていて時間とともに明るさと共に、照明の角度も変えてあり、それが実に効果的に機能しています。

基本は墨の濃淡で描かれているのですが、それぞれの像の光輪は、金箔が使われているようで何重にも重なった輪となっていて、それが光の強弱で見え方、印象が全然変わってくるのですが。

これは素晴らしいの一言です!!

あと簾がかかった浴室を描いた作品の脇には、後ろの展示室との仕切りをあえて簾にするなど、細かいところにも気を配った演出をしていました。なかなかにGJです(笑顔)。

しかし、痛いほど残念な点も。
大衆向けに分かり易い解説のつもりでしょうが、必要以上に大衆に媚びた解説があり、正直雰囲気台無しのような・・・?
「羅漢さん達の議論」を「朝まで生テレビのような・・・」とかいうコメントは不要でしょう。

他にも多々その手のくだらない表現が散見し、読むのがうんざりしました。
分かり易さは低俗さとは異なるし、不正確な表現もちらほら。

玄武は玄武だろうと思うのに、大きな亀って、それは別モノでしょ。玄武(大きな亀)とかなら、まだしも、一般人なめ過ぎ。

更にいうなら、実際の作品と展示は大変良かったので図録を買おうとして中身を見ていて唖然としました。図録の解説も、展示室のコメントと全く同じ。大きな亀、朝生って・・・オイ。

色見も正直、あまり良いとは思えなかったので購入を断念しました。解説は、個人的には大嫌いで最低ーと感じた。図録、手抜きじゃね?

もったいない。あとで芸術新潮でも買おうっと。あちらの方がなんぼかマシ。作品数が少ないのが残念だけどね。

芸術新潮 2011年 05月号 [雑誌](amazonリンク)


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2010年11月14日

アルブレヒト・デューラー版画・素描展 in 国立西洋美術館

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なんか今年は、版画関係の展覧会が多い感じがしますね。先日のbunkamuraのブリューゲルも最高でしたが、今回のデューラーも実に内容があって、好きな人だったら、たまりませんね!

ただ、宣伝が地味だからかなあ~。そりゃ、ブリューゲルのような奇怪なキャラは、あまり見当たらず、一般人受けしないこともあるのでしょう。

昨日の午後から行ってきたのですが、本当にガラガラにすいていました。もっとも、おかげで1作品ごとに、ゆっくり&じっくりと眺めることができました(笑顔)。

やっぱり版画って言ったら、何はなくともデューラーを思い浮かべますが、改めて実物を見て、それは間違いないことを確信します。エングレーヴィングの線の細かさは、まあ、納得しますが、木版画であっても、その細部にわたる精密さ・線の細さは、デューラーの彫りの技術と完璧さを追い求める職人技を感じちゃいますね。

と同時に、16世紀ですよね。エミール・マールによれば、15世紀以降は、キリストを描くにあたってもそれ以前の時代の『理性』をキーワードにしたものから、『感情』へ移行したというのを読んだ覚えがありますが、デューラーの描くキリストの姿も悲しみ、苦しみ等観る人への感情へ訴えかけ、共感を覚えさせるものなのだと感じました。

しかしながら、デューラーはそれを表現するにあたって、非常に人体均衡論など比率を重んじる姿勢を強く現しています。それは、ルネサンスが古典古代に学んでいたことをまさに体現し、ゴシック建築以来の『理性』や『合理性』の存在を強く窺わせているように感じました。

まあ、あれこれ言わずに見れば分かりますし、感じ取れますね!!

宗教的主題が大半を占めますし、タイトルからその場面がすぐに頭に浮かばないと、この素晴らしさ・面白さの理解は、かなり辛いかもしれません。作品には適宜説明がつけられていますが、イマイチ説明の表現がうまくないかも? 端的に言うと読みづらいし、理解し難いです。

もうちょい、その辺への気配りしてくれるといいんですけどね。作品の展示物自体は、もう100%以上満足ですが、展覧会自体の作りはいかがなもんでしょうね? 地味な作品だけに、これで人が呼べるとは全く思えません。だからこそ、チケットのあの価格設定なのでしょうが、創意工夫が足りませんね。

個人的には以前のここの常設展好きだったんですが、新しくなって、展示や照明が変わってから、魅力は格段に落ちてます。全体的に明るくなっただけで、個々の作品の陰影などを味わえないです。建物自体も含めて薄っぺらになったような気がしてなりません。休憩して座る椅子も硬くなり、居心地悪い。

最近、行く回数減ったしね。

まあ、それはおいといて。今回の企画展で気付いたこと。

ほとんどの作品にデューラーのサインっていうか、マークが入っているんですね。意匠化された「A」がどうしても「鳥居」の形に見えてしまい、最初、どんな意味があるのだろうかと悩んでしまいました(笑)。作成された年代も入っていたりして、なんか面白いです。

あとね、宗教画に普通はあまりみないようなおいぼれ犬がしばしば入っているのですよ。これってデューラー自身? 解説のカタログ見たけど、特にそんな説明はなかったようですが・・・?謎だ?

そうそうブリューゲルの作品にもありましたが、「阿呆船」から題材を採ったものも幾つかありました。つ~か、時代的にデューラーの作品を見た後に、ブリューゲルがぱくったんでしょうけどね。それとも、そのデザイン自体が以前から既にパターン化していたものだったのか? その辺はよく分かりませんんけど。

今回は、定番中の定番でどっかで見たような有名ところもいろいろありました。
「ネメシス」「メレンコリアⅠ」とか、西美が持ってたんですね。知りませんでした。何度かあちこちの展覧会で見ていておなじみですが、いいですよね。

「神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の凱旋門」とか、カラーコピー機の宣伝で使いたいぐらい、なかなかの超大作かと(満面の笑み)。いろいろな事柄を暗示しつつ、ヒエログリフまで出てきたり、なんか楽しい♪

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あとあの有名なサイの作品もあったよ~。長い間、船に押し込まれて運ばれる間に皮膚病か何かになって、あちこちに変な模様が出てしまったのだけれど、それしか見たことのない人が、それが普通のサイの姿だと思い、それがデューラーの版画で世界中に広まり、更にそれをあちこちで模写されて、日本などに伝わったっていう奴ね。

私が昔、チェコのプラハで読めもしないのに購入したデューラーの本の表紙もこの犀(サイ)だったです(関係ないけど)。

あとね、「魔女」って作品。
いろいろな構図が逆にされていて、デューラーのマークの『D』も逆になっている。魔女というのは、神の作った秩序に反する、逆の存在であり、それを表現しようとしたものですが、これも面白かった♪

他にもエラスムスやメランヒトン。宗教改革の大御所達を描いた作品があります。
グーテンベルクの活版印刷術の発明が、宗教改革を広げたことを知っていて、文字が読めない一般民衆には、宗教改革の意図を図示する必要があり、それを担ったのがまさに版画であったことを知っていれば、大いに納得&納得でしょう。

この辺も時代背景的諸事情を理解していると、とっても&とっても楽しめますネ。

知っている人には、この版画展大いにお薦めです!!
実際に、そういうのを知っている人は喜んで観てますね。でも、予備知識無しにこれだけ見ても、どこまでその面白さに繋がるのかは、保証しないなあ~。

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2009年11月23日

「宗教地獄絵 虐殺地獄絵」吉田八岑、田中雅志 大和書房

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悪魔関係の著書で有名な吉田氏の名前があったので期待していたのですが・・・、とんだ期待外れです。

中途半端に西洋・東洋と手を広げ過ぎ、こういうのがあります的な地獄絵図の列挙&紹介で終わっています。もっともそれが博覧強記のレベルまでいけば、それはそれで価値があるのですが、興味のある人なら誰でも知っている水準で目新しさがありません。

さらに現代の戦争による戦禍をありきたりな『地獄』の一類型に加えてしまうことで、益々、浅薄で読む価値のないモノになっています。悲しい。

ソンミ村の虐殺なんて、読者は求めてないんですが・・・。

また、何をとち狂ったか仏教のあまたある地獄の種類を唐突に説明しだし、しかもただどっかの説明を丸々引き写したレベルなのには、唖然としました! 論外っしょ。エッセイであってももうちょいマシだろう。

西洋で地獄を語るなら、また、ダンテの神曲を語るなら、『煉獄』概念の誕生やカトリックの「死の舞踏」ぐらい触れろや~。

知らないわけないだろうに、何故、触れていないのか、全く納得がいきません。著者の知識の範囲と質のバランスをいぶかしく思います。

現代的な地獄とか大衆化した「地獄」を散りばめられて吐き気がします。日和見的な大衆路線を読者は求めてないでしょうに。

ラス・カサスも地獄の意味が全然違うっしょ! 巻末の参考文献そのものがおかしいです。じゃなければ、私が全く違うものを期待し過ぎなのかということですね。

百歩譲って淡々と解説を読んでいても、例示して紹介される文中の挿絵がモノクロで小さくて、全然解説が分かりません。いろんな意味で使えません。挿絵の数は多いですが、全く意味がありません。

失礼ですが、地獄絵等に関心を持っている方でこんなもの読んで満足できる人いないでしょう。もっと&もっと、面白くて興味深いものがあまたありますよ~。別な本を読みましょう。

【目次】第1展示室 西洋の地獄
第2展示室 現世の地獄
第3展示室 地獄ギャラリー
第4展示室 ヨーロッパ地獄探訪
第5展示室 東洋の地獄
第6展示室 仏教地獄絵テーマ展示
宗教地獄絵 虐殺地獄絵(amazonリンク)

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「悪魔考」 吉田八岑 薔薇十字社
「西洋暗黒史外伝」吉田八岑 桃源社
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
「天国と地獄の事典」ミリアム・ヴァン スコット 原書房
奈良散策シリーズ~興福寺(8月23日)
最澄と天台の国宝 東京国立博物館
「日本絵巻大成7」小松 茂美 中央公論社
Hours of Catherine of Cleves 獲得までの経緯
「インディアスの破壊についての簡潔な報告」ラス・カサス 岩波書店
ラベル:地獄絵 書評
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2009年11月11日

「フランスの中世美術」国立西洋美術館 1972年図録

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こないだ、神田の古本まつりで購入した美術展の図録。今から30年つ~か40年近く前に国立西洋美術館で開催された展覧会のもの。

そんな昔にやっていたんですねぇ~。私好みのやつを。

ルネサンスしか知らない人達を心の片隅で冷ややかに眺め、やっぱり知っている人は、こっちだよなあ~とか言いつつ、是非とも見たかった!!(どんな浅ましい輩だろ、私)

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でもでも、写本も結構たくさん来てたみたいだし、今でもなかなかに本では見られないモノですよ、これらって。

この上のだって、写本の装丁の板らしいけど、ずいぶんと意匠凝ってません? うわあ~見たい~!

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こちらは光の形而上学で有名なステンドガラスです。モチーフはソロモン王とシバの女王だし。

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あっ、あっ、この時祷書見たかった~!! こういうの好きなんだよね。

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これはモノクロで残念だけど、変わってますよね。

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羊皮紙に書かれた写本。う~。

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最後はローマ時祷書。

時祷書好きの私には、モナリザよりもこれらの時祷書の方がはるかに見た買ったりする。あ~、不動産なんていらないから、動産の稀覯本欲しいなあ~。そういやあ~横浜で稀覯本の展示即売やってるんだよね。観に行きたいけど、平日だしね。

会社休んでいけないし、悲しい。送られてきた目録を眺めつつ、溜息ばかり。今週だけで50万円以上も株の評価損膨らんでるし、それどころじゃないっしょ。

だのに、ナンピンで買い増す私。キャピタルゲイン獲得できたら、本買おうっと。来年六本木でやる稀覯本フェアで、是非何か買ってみたいけど・・・眺めるだけど終わりそう。

ブログ内関連記事
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展~国立西洋美術館
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「ベリー侯の豪華時祷書」レイモン カザル (著)、木島俊介(翻訳) 中央公論社
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
「The Golden Age of Dutch Manuscript Painting」James Marrow  George
「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「パリ―中世の美と出会う旅」木俣 元一 新潮社
「悪魔のバイブル」、350年ぶりにチェコに里帰り
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
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2009年09月05日

「ヨーロッパの中世美術」浅野和生 中央公論新社

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『中世』大好き、『ゴシック』大好き、『写本』大好きの私が読まないわけにはいくまいと思い、読んでみました。

採り上げられているテーマが非常にバランスが良く、説明もそつないのですが・・・読んでいて全然面白くないのですよ・・・トホホ。

教科書的とは言いませんが、悪い意味で、新書らしく読み易さやとっつき易さを大切にしたせいで、薄っぺらい印象が拭えません。

具体的な土地(都市等)を出しての説明は、知らないところもあり、興味を惹くのですが、あまりにも淡々とした記述に想いが伝わってきません! 

中世の本物の魅力を伝える意思があるのなら、やはり、感想や想いも含めてそれを伝える術(すべ)も強く意識して欲しかったです!!

後は、ほとんど知っている話ばかりでしたし、知っている内容ももうちょい表現の仕方があるのでは・・・と感じるものが多数ありました。木俣氏のあの熱い思いの幾分かでも表現されていると、また読み手の感じも変わるのですけれど・・・。

トータルの印象は、教科書とガイドブックの中間であり、あえて読む価値を見出せません。

本当に中世の真の素晴らしさを伝えるなら、著者は役不足でしょう。著者の独り善がり的な自己満足ではなく、(独り善がりでもいいのだけれど)中世への熱い想いが文章から伝わりません。

ルネサンス礼賛なんてのは、世間に踊らされているモノを知らないだけ人でしかなく、中世の一部が顕在化しただけジャンとか思っている私のようなひねくれ者には大いに不満が残る本でした。

やっぱり積読状態の英語の本を読もうか。本書ではなく、エミール・マールの著書を読めば、もう中世礼賛に転向するでしょうね、絶対(笑)。

ちょいメモ:
名古屋の古川美術館 「ブシコー派の時祷書」・・・以前、見つけたアレ。
ニコラウス・ペブスナー「ヨーロッパ建築序説」
【目次】
1中世美術とキリスト教
2古代から中世へ
3王国の夢―ラヴェンナ
4市民たちの信仰
5聖堂の壁画
6聖遺物
7イコンと祭壇画
8中世の町
9巡礼
10修道院
11写本
12中世の建築家―カンタべりー
13中世からルネサンスへ
ヨーロッパの中世美術―大聖堂から写本まで (中公新書)(amazonリンク)

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「イスタンブールの大聖堂」浅野 和生 中央公論新社
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ヨーロッパ中世美術講義」越 宏一 岩波書店
「中世ヨーロッパの書物」箕輪 成男 出版ニュース社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「十二世紀ルネサンス」伊東 俊太郎 講談社
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「中世末期の図像学〈上〉」エミール マール 国書刊行会
「中世末期の図像学〈下〉」エミール マール 国書刊行会
他、多数。
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2008年11月29日

「パリ―中世の美と出会う旅」木俣 元一 新潮社

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実はね、この本の内容、既に既読だったりする。というか雑誌の芸術新潮でこの本のタイトルのまんま、特集していた記事をただ本にしただけという安易なこと極まりないやり方で作られた本です。

出版社的には、一粒で二度美味しいだろうが、安直だなあ~。

ただ雑誌を購入しそこなった方には、嬉しいかも? 特集自体は、大変良い出来でパリを巡る5日間の旅という設定でした。勿論、流用で作られた本書もその5日間に即して章立てされています。

さて、具体的な中身はというと・・・。
さすがはシャルトル好き&ご専門の木俣氏によるセレクトだけあって実にツボをついています。

何度かパリに行った人がベタな観光名所から離れて、パリの美を、フランスの美を楽しむのには、最高のガイドブックかもしれません。普通に読んでいても楽しいですが、現地で読むとより素敵かも?

素直に私も本書は参考にさせて頂きたいと思います。

そうなんだよねぇ~、中世美術館、行きたかったんだけど、廻る時間的な余裕が無かったんだよねぇ~。非常に口惜しかったので絶対に次回は行くぞ!!

ネットで調べた感じでは、シャルトル大聖堂の工事も終わったみたいだし、今回の年末は断念したけど、来年のGWか夏には、是非、シャルトル行かないとネ。

再びシャルトル熱を再燃させられた一冊でした。中世好きには、かなりお薦めでしょう♪ センスが秀逸ですよ~♪
【目次】
1 シテ島ぶらぶら
書割の美学
ノートル=ダム大聖堂
夜明けの聖遺物箱
サント=シャペル

2 しずかなルーヴルと街角のロマネスク
魚、マリア、涙
ルーヴル美術館
左岸の古寺もうで
サン=ジェルマン=デ=プレ聖堂

3 シャトルへ
パン屋とワインとおさげ髪
シャルトル大聖堂

4 クリュニーの至宝と壁さがし
クリュニー館の中世の秋
国立中世美術館

5 聖王ルイが愛した小さな町
廃墟のほとり
ロワイヨーモン修道院
樫の木とカテドラル
サンリス
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「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「中世の芸術」グザヴィエ・バラル イ・アルテ 白水社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
ラベル:中世 アート 書評
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「インド細密画への招待」浅原 昌明 PHP研究所

綺麗な表紙が気になって読んでみた本です。最近流行の色鮮やかな写真多数入り&解説文少なめのビジュアル重視本です。

それなりの数、写真が入っているので見た目はいいのですが、解説がお粗末過ぎです。つ~か、よくあるようなインド史に若干のミニアチュールの構図へのコメントがあるだけで、文章に読む価値を見出せません!

受験生の時にBGMとしてシタール使った曲聞いたり、部屋にクリシャナ神のポスターを貼っていた怪しい私的には、残念な本でしかありませんでした。

個人的な希望としては、せっかくたくさんの図版を入れるのですから、図版自体の構図や主題への説明をして欲しかったです。ミニアチュールの本ではなく、観光ガイドに載ってるレベルのインド史の本になっていて、意味がありません。いくら入門書として「招待」をうたっていてもレベル低過ぎです。

ミニアチュール(細密画)関係で満足のいく本をあまり見つけたことがなく、今回も同様で大変残念です。読むに値しません。
【目次】
第1章 インドの細密画との出会い
第2章 インドの伝統的なヒンドゥー教系の細密画
第3章 ペルシャの影響を受けたイスラム教系の細密画
第4章 インドの細密画は語る
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2008年06月07日

「奇想の江戸挿絵」辻 惟雄 集英社

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最近、『奇想』のキーワードで人気の辻氏による本。もっとも本というよりも図版を楽しむ為の画集に近い。

採り上げられているのは、独自の視点で純粋に(見方によれば、いささか邪道に)面白い・凝っている等といった印象や感想をもたれた作品で、観ていて「ほほお~」「ふむふむ」と頷かされるようなものが多い。

今まで、あまり関心が無かった江戸の挿絵に対して、大いに興味をそそられる契機になった。でもね、現代表現としての漫画との比較は、正直いらないと思う。感覚的な共通点を通じて、時代を超えた生き生きとしたライブ感を伝えたかったのかもしれないが、安っぽい文化論的な文章と私の中ではオーバーラップしてしまい、少しガッカリした。

そして何よりももったいないと思うのは、新書でこれを出している点!
最近、新書でビジュアルを売りにしているのが多いが、本書もそれで致命的な間違いを犯していると思う。

実に、図版がもったいない。端的に言うと、紙面が小さくて見難いし、せっかくあれだけの数の図版を使用しているのに、ごちゃごちゃして図版が死んでます。

本が売れなくなって新たな切り口の新書で、客を集めようとする出版社の意図も分かるのですが、千円でこれかい?というのが実際の感想です。

まあ、数千円の本にしたら、売上が全然違うだろうしなあ~。辛いのは分かるんですが、これでは一度読めば十分で買う気になるのかな???
手元に置いておきたい本ではないです。

ただ、図版自体は実に面白いし、いい刺激にはなるので是非、観てみるとことをお薦めします♪ ただ、買うのはこの本ではないような?(複雑な心境なのです)
【目次】
はじめに 江戸後期挿絵の魅力;
第1章 「異界」を描く;
第2章 「生首」を描く;
第3章 「幽霊」を描く;
第4章 「妖怪」を描く;
第5章 「自然現象」を描く;
第6章 「爆発」と「光」を描く;
第7章 デザインとユーモア
奇想の江戸挿絵 (集英社新書 ビジュアル版 8V)(amazonリンク)
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2008年03月18日

「デューラー版画展図録」西武美術館 1980年

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(聖カタリーナの殉教 木版)

かつて、お金がいっぱいあって日本が12000円割れなんて、嘘のような株価が想像できなかった頃に存在した西武美術館による版画展の図録です。

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(ヨハネの黙示録 福音記者ヨハネの殉教 木版)

実際の展示は、見ていないのですが、先日どこぞの古書市で発見して購入したものです。

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(ヨハネの黙示録 神の御座の前のヨハネと24人の長老 木版)

いやあ~、これだけ充実したデューラーの版画というのは、なかなか見ることができないんじゃないかと思うくらいの圧倒的な量です。確認してみると、この図録に載ってる図版の数だけで200点あるようです。

す、凄い!!

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(ヨハネの黙示録 第六の封印切り 木版)

少しだけ、ここで紹介していますが、木版画に銅版画、エングレービング等々。それぞれに違った味わいがあって、実に楽しくありませんか?

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(ヨハネの黙示録 太陽の女と七頭の龍 木版)

しかもしかも、そこに示されている象徴としての図像が殊更に関心を惹かずにはいられません。こういうのって、スキ♪

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(大受難 十字架のキリスト 木版)

膨大な図版を見ているだけでも十分に楽しいのですが、本書の冒頭に書かれている解説がまさに目から鱗でした!

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(マリアの生涯 受胎告知 木版)

デューラーは、単なる技術の巧みな職人としてではなく、当時有数の教養人・文化人の第一人者としても看做されていたなんて、知りませんでした~。

デューラーはレオナル・ダ・ヴィンチと同様、人体をより美しく表現する為に「比例論」を生涯に渡って研究し続けたそうです。それこそダ・ヴィンチ・コードではないが、ウィルトルウィルスなどの研究も行っていたんだそうです。

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(マグダラのマリアの法悦 木版)

そして彼のドイツ芸術における影響力としては、実際の作品よりも彼の美術的理論の方がはるかに、その後のドイツ芸術の水準を高めるのに役立ったというのは、驚き以外の何物でもないです。

私は、全然そんなこと知りませんでした。へえ~。

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(三王礼拝 木版)

従来と異なり、デューラー作品を見る視点が変わりました。ホント。

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(書斎の聖ヒエロニムス エングレーヴィング)


大変勉強にもなったし、何よりも見ていて楽しい図録でした。是非、この展示を再度やって欲しいなあ~。切に思いました。

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(皇帝マクシミリアンの凱旋門)

ブログ内関連記事
「ルターの首引き猫」森田安一 山川出版社
町田市国際版画美術館 企画展「カラフル・ワールド! 版画と色彩展」
「ヴィッテンベルクの小夜啼鳥」藤代幸一 八坂書房
国立西洋美術館、平成14-18年度新収蔵版画作品展




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2008年02月09日

「庭園の世界史」ジャック・ブノア=メシャン 講談社

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私も何気に『庭』が好きで、京都の寺社仏閣巡りの楽しみの一つに庭園巡りが必須の要素となっていたりする。勿論、海外での名所旧跡巡りでも庭園は欠かせない要素だと思っている。

そんな訳で大いに興味を持って、本書を読んだ。著者は心底、庭好きらしく世界中の庭を題材に自らの経験と読書で得た知識を元に自らの思う事を述べている。

その視点は、単純な『庭園』だけに止まらず、それを生み出した民族・文化・思想・時代など、非常に多くの要素を加味した総合的な観点であり、読んでいてなかなか興味深く、面白い。

実際、著者は可能な限り自分で現地に足を運んで見たうえで書いているので、その点でも文章に熱がこもっているのを感じる。

庭好きなら、読んでいて十分に楽しめるし、それを生み出した人々・地域・文化・時代などに対しての関心も深まると思う。その一方で、著者の見解は、必ずしも同意できるものばかりではない。

解説でも訳者が書かれているが、それとは別な点から見ても、日本の庭に関する文章は、かなり疑わしい記述が散見する。率直に言って、種々の制約があったのだろうが、誤解と無知に基づくと思われる。もっとも別な見方をすれば、逆によくぞあそこまで調べてという評価もできることを付言しておく。

また、グラナダのアルハンブラ宮殿に著者はとりわけ関心を持っていたと思われる。私自身も、海外で見た『庭』の中では間違いなく第一に推すし、丸々二日間、アルハンブラ宮殿に入り浸っていたので自分自身の思いとしても並々ならぬものがあるのですが、そういった気持ちからすると、著者の文章では全然物足りない! というか、どんなに書いても書き足りないし、アーヴィングの「アルハンブラ物語」を超える文章を今まで他の本でも見た覚えがない。

まあ、それは仕方ないといえば仕方ないのだが、著者はアルハンブラ宮殿は個々の閉ざされた空間が個々に魅力的な点を強調し過ぎていないだろうか? 私は、あえてあの壁の脇などの裏道っぽいところなどに入り込み、下からあの赤い壁(アルカサル)などを見上げたりしてみたが、そこで見た姿も含めてあの空間全体、アルハンブラ宮殿およびヘネラーリフェ庭園を一体化したあの『場』そのものが余すところ無く、魅力的であると私だったら強く言いたい!!

そういえば、先月アルハンブラ宮殿に関する本を入手してまだ読んでいなかったことを思い出しました。改めて、是非読まねばと意を強くしました。
【目次】
1グラナダを訪れてふたたび庭への情熱をかき立てられる
2原始の庭・魔法の庭
3中国の庭
4日本の庭
5ペルシアの庭
6アラブの庭
7トスカーナの庭
8地獄の庭ボマルツォ
9フランスの庭
10ふたたびの庭
庭園の世界史―地上の楽園の三千年(amazonリンク)

ブログ内関連記事
アルハンブラ宮殿の思い出(2002年8月)
NHK世界遺産 光と影の王宮伝説 ~スペイン・アルハンブラ宮殿~
「アルハンブラ」佐伯泰英 徳間書店
「三大陸周遊記」イブン・バットゥータ 角川書店
「サファイアの書」ジルベール シヌエ 日本放送出版協会
ラベル:書評 アート 庭園
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2008年02月03日

週間朝日百科 世界の美術 ゴシック美術

昭和53年に毎週一冊で全14巻140分冊予定で販売されたもの一つです。

まずは、非常に大きな紙面にたくさんの写真が載っていて視覚的にかなりのインパクトがあります。内容ですが、紙数の制約を考慮すれば、ちょっとした美術全集並みの水準になっています。

そもそも執筆者が私も何冊もその著作を読んでいる御馴染みの方々ばかりなんですけどね。馬杉氏、柳氏、前川氏等々、その筋の専門家が書かれています。

従って、限られた文字数でそれなりの解説が書かれているのですが・・・私は執筆者達の本を何冊も読んでいるので、その解説が何を指して言っているのか理解できましたが、全く予備知識の無い方が、この解説を読んで分かるのかというとはななだ疑問です。

文章自体は、平易で誰でも読めるのですが、そこに表現されている内容はとてもじゃないが、一言で説明できるようなものではなく、まともに理解しようとしたら、それだけで数十頁が必要だと思うのですが・・・。

単純に美術や建築が好きな人が予備知識無しにこの解説を読んでも、字面を追うだけで執筆者が本当に意図している事を掴むのは、無理だと思います。それぐらい、深い説明とも言えるのですが、一方で私的には物足りないなあ~というのが率直な感じです。

写真も悪くはないのですが、改めてみると、いろいろと不満が・・・。まあ、無いものねだりばかりしても仕方ないですね。私的には、ある程度知っている人が確認として読むのに良い本(雑誌)かと思います。

まあ、写真がそこそこ入っているので、それを眺めるだけでも楽しいかもしれません。但し、ステンドグラスの写真は、やっぱり駄目です。あまり綺麗とは言い難いし、そもそものデザインが判別できないものもある。それだけ写真デステンドグラスを撮るのって難しいんですけど・・・。

ブログ内関連記事
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書 
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会 
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研 
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社 
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社 
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社 
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社 
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社 
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2008年02月01日

「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房

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序文より本書の扱う内容について。タイトルは様式を超えた総合的な形態を扱う意図による。
美術作品に認められるそれ固有の表現方法を様式と名付けて様式の研究を美術史の中心問題とすること
・・・
中世芸術について言えば、とくに重要な要因は時代の宗教感情である。
・・・
中世美術の研究は、単なる様式論であってはならない。
・・・
作品の形態をそれそのものとして、様式から精神さらに素材にいたるあらゆる問題を含む総合的な生命の表現として、扱うべきであろう。その意味での形態学である。
エミール・マールの本の訳者であり、中世美術で知らない者がいないであろう、柳氏の本で雑誌「みづゑ」に連載されたもの(1964年)をまとめたものである。本書の出版は40年後の2006年だけど・・・。通常のロマネスク美術の本では、およそ見かけないような珍しいロマネスク彫刻の作品がたくさん&大きな写真で紹介されています。

写真も著者自身が撮影したものが大部分なようで、個別に見ると、大変レアで面白いです。解説も個人的には当たり外れがあるものの、時々大変そそられる内容であったりします。

他方、ロマネスク自体が地域差や差異性の著しいもので、一概に評して言えるものではないと共に、ゴシック美術に見られるような、明確で怜悧な論理による説明もなかなか難しいものがあるようです。それでも読むに値する本だと思います。

本書で初めて知る図像の意図が、必ずあると思います。中世図像学に興味のある方は、目を通しておくべきでしょう。

以下、抜き書きメモ。
ロマネスク聖母子像においては、母と子は会話をしない。二人はむしろ神的栄光に輝く一なるものとして信徒に対する。会話は聖母子とこれを見る者との間に行われる。
ルネサンス期の母子が互いに見つめ合うものとは、明らかに異なっている点を指摘されてます。
キリスト教建築の内部空間はすべて明瞭に一つの核心を持っている。つまり祭壇がこれである。・・・祭壇の位置は十字架形をなす平面プランを考えると、磔刑のキリストの頭部に当たる。かくてこの祭壇上に聖母子像が置かれる時、その像は全建築空間を支配する事になる。
こういう視点を意識してみるのとみないのとでは、全く物の見方が異なってくるでしょう。
中世の教会は百科全書的であって宗教的知識はもちろん、時間、空間に関する様々な知識がそこで得られたのである。神は、宇宙、あらゆる土地、そこに住む生物を創造したが、教会はこの全宇宙であったのだ。動物学は同時に地理学であり、動物図層は広大なる世界の空間性を表現するものであったのであろう。
 怪獣はしたがって遠き異国を示すものであった。異国とはまだキリストの福音の光が及んでいない土地である。しかしその土地は単に物質的な意味での遠国に止まらない。異国は、また人々の心の中にもある。
これって、私的には「おおっ、そうだったんだ! だから、怪しげな怪獣みたいなのが、聖なる空間にいてもいいんだね。」って初めてその存在の正当性に納得した次第です。個人的にはずっと&ずっと、いいのかなあ~。こういうの存在してて・・・と疑問に思っておりました。
およそロマネスク時代の人々ほど植物にとり憑かれた人間はいなかったであろう。ゴシックの大聖堂の彫刻家が、柱頭彫刻その他において植物への深い愛情を示した事はよく知られている。しかし彼等は自然主義的様式によって(つまり対象の自然の形を忠実に写そうとして)植物を表したため、その植物の種類も自然界のそれを超えることはなかった。
 これに対して、ロマネスク彫刻家は自然の対象に縛られる事はない。
・・・
作者は自然界の植物の形を真似ようなどとはいささかも考えなかったのだ。そしてさらに空想力に任せて勝手に植物を生み出したのである。
ご存知、シャルトル学派などは、まさに自然主義的視点に立っていましたが、ロマネスク彫刻との違いがこの点にあるという指摘も改めて、ふむふむと頷いてしまいました。
彫像としてのキリスト像は単独像と聖堂入口の高浮彫に大別される。図像学的に言えば、前者はほとんど磔刑像に限られるに対し、後者は受難関係の図像よりはむしろ全能者、絶対者としての図像が選ばれている。
・・・
キリストの神性と人性とは、全能者と贖罪者という二つの概念を導き出す。
・・・
教会建築そのものが全能者と贖罪者という両概念を視覚化したものと考えられる。贖罪者キリストという概念は、聖堂内部の祭壇においてさらに具体化される。
・・・
これに対して聖堂入口では、聖堂全体の意味、神の支配する宇宙としての意味が示されねばならない。
う~ん、この点はいま一つ実感が湧かないです。この点を意識して、今度実物を見る機会があれば、改めて自分の感性で確認してみたいですね。頭での理解も大切ですが、現物を見て実感が伴わなければ、こういうのって心底納得なんてできないですし。
中世人にとっては、動物という概念は私たちのもつそれとは異なる。彼らが動物に関心を持ち、それを研究するとすれば、それは動物生物学ではなく動物表徴学ないし動物神学の立場からである。
・・・
中世人は動物の背後にひそむ真義を解明しようとする。その意義ゆえにこそ動物は存在理由をもつと考えるのだ。
この辺りの論理は納得しやすいですね。
中世は芸術を教育と考えた。宗教の教義、世界創造以来の歴史、道徳や学問、あるいは自然の秩序から職業的知識に至るまで、人間にとって必要な秩序すべてが図像化され、それが、教会に彫刻や絵ガラスとして表現された。教会美術は視覚化された庶民の聖書であると同時に百科全書であった。これは当時の神学者たちの著書が単に神学だけでなく、あらゆる学を包括していたのと一致する。暦は民衆にとってまことに必要な知識であった。次にその暦が何故に労働によって表現されたか。労働は中世の神学者にとっては、原罪を贖うための業であった。それは奴隷の行為ではなく、人間を罪の重荷から解放する聖なる行為であり、かくてこそ、中世の教会では、王侯貴族が貧しい席しか与えられないのに、ほとんどありとあらゆる職業の民衆が、表現されているのだ。
(by エミール・マール)
時祷書に描かれる『暦』もこの視点で捉えると、また違った見方ができそうです。
本来、ロマネスク聖堂入口は、その内部空間の縮図としての意味を持ち、やはり小宇宙を象徴するものと解してよかろう。半円型のいわゆるティンパヌムはそのまま宇宙の象徴であり、したがって神ないし、キリストの座である。このティンパヌムを囲むアーチおよびまぐさ石は先ず天使と使途が占める。アーチは建築構造上、原則として数層に重なるが、天使の外側は聖人、さらにその外は地上の生活に直接関係した像―善と悪、暦となる。
・・・
建築各部が比例的に縦に伸びたせいか、聖堂入口における宇宙の秩序はティンパヌムを中心とする放射形をとらず、むしろティンパヌムを頂点とする上下の形式をとるようになっている。
ここまで進んでくると、ゴシックまで一直線という感じもしてきます。個人的には、ロマネスク建築は良い意味でのカオス(混沌)だと思っていましたが、ここで挙げられている論理性は、私的にはゴシックのものだと感じるんですけど・・・。まあ、あくまでも私個人のイメージですけどね。
聖堂正面入口の高窓を円型にし、それを車輪状あるいは華文状に表現したのは、明らかに太陽を象ったものである。さらにそれらの「ばら窓」の構成を詳細に見ると、中心から放射状に出ている光が、それぞれ柱によって支えられる柱頭までを具えたアーチをなしている場合が多いのに気がつく。これはスツィゴウスキーのいう古代イランのアーチ信仰と関係しているものと見てよいだろう。窓は教会内部に光を入れる場所であり、内部空間にとっては光の源である。窓は時には太陽に象られるが、時には「聖なるアーチ」として象られるのも、そのような意味で理解される。
バラ窓の捉え方なんだけど、「初めに光あり」だしなあ~。ステンドグラスによる光とバラ窓による光の違いって、なんだろう? 同種のものでいいのかな? ちょっと気になってきた・・・。
門を飾る首:
 アイルランド南部のロマネスク教会クロンフェルト大聖堂入口の破風である。これは12世紀の建物だが、もともと聖ブレンダン修道院に属し、その起源は古く、八世紀に遡り、爾来幾度か火災や破壊の難にあった。その間、幾たびも建て直された建築は多かれ少なかれ、古い伝統を残したと考えられるが、その入口の破風は、その異様な彫刻装飾によって異教あるいは原始社会の神殿を見るの印象を与える。
ここで実際に写真が挙げられていて、見るとギョっとする! 破風の部分に首(の彫刻)が多数飾ってあったりするのだから。

古代ケルトの首に特別な力が宿る、という信仰などが説明され、その伝統を引き継ぐものではと解説されているが、実に&実に面白い!! 聖ブレンダン系統という由来と合わせて二重に関心をひいた。その辺の話も是非もっと知りたいなあ~。なんかいい資料ないものか???

本書内で挙がっていた本:
サン・ヴィクトールのフゴーの著「教会の神秘の鏡」
ジャン・ジャベル「大聖堂の建築者たち」(1961)
原著の文献一覧がないので、タイトルが分からない。残念だ。
【目次】
1 聖母
2 空想の怪獣
3 天年と悪魔
4 植物
5 キリスト
6 鳥獣
7 庶民の生活
8 抽象の形
9 謎の顔
10 人像円柱
11 柱頭の福音書
ロマネスク彫刻の形態学 (柳宗玄著作選)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
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2008年01月22日

「物語 大英博物館」出口 保夫 中央公論新社

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この本は日経か朝日新聞の書評で知った本です。是非、読んでみようと思っていました。結論は、読んで正解! 大変面白いです。

以前、ヨーロッパに行ったことのない頃、ロンドンに行ったら何はなくとも大英博物館に行ってみたいと心の底から思っていた過去の自分を思い出しました。いろいろと訳有って、実は未だに行ったことがないままなのですが、図書部が独立&統合した大英図書館こそが一番行きたいところかもしれません。

まあ、それはさておき、大英博物館って民間人の収集品がスタートだったとは本書を読むまで全く知りませんでした。ルーブル美術館のように当然王室コレクションが元だと信じて疑ってなかったのでそれだけでも驚きです。

更に、マホガニーの書棚に以前は、本が傷まないように革まで張られていたとは、いにしえの栄光ある『大英帝国』を彷彿とさせる凄さです。円形のリーディング・ルーム、是非&是非、見てみたいものです。

本書ではタイトル通り、大英博物館がどのようにして始まり、発展して現在に至るのかを250年にも渡る歴史を通して紹介しています。王室の保護以上に、いかに民間人が多大なる情熱を注いで収集し、寄付していったか、その情熱や想いが大変素敵ですし、面白いです。

やっぱり思うのですが、この世にある非凡なものには、それを生み出し&支えた非凡なる情熱が必ずあるものなんだなあ~って思います。

それと同時に、それを利用する人々の描写がまたたまらなく私を惹き付けます。有名な南方熊楠のリーディング・ルームでの喧嘩のエピソードなども興味深いですが、ここを利用する市井の人々の何気ない生き方に、なんか心をぎゅっと掴まれた感じがします。
1960年代のはじめの頃、毎日わたしの机の近くに座り、机上に積み上げた何冊もの書物に目を通しながら、熱心に何やらメモを取っている老婦人がいた。彼女のいでたちがあまりにも異様なので、その存在がすこぶる印象的だった。まるで浮浪者のような風体で、肩からズダ袋を下げてやって来る。

 その外見からすれば、老女が幸せな家庭の人ととはとても思えない。彼女の年齢でリーディング・ルームに毎日通えるということからすれば、生活の困窮者とはいえまい。だがその異形の外見からすれば彼女はとても学問的探求の人とみなすことはできないだろう。

 あるとき私は、彼女が席を外している際に、机上の書籍の小山を目撃して驚いた。それこに山積みにされていた本は、すべてエジプトの象形文字ばかりだったのである。だいたい象形文字ばかりで書かれた書籍自体が驚きだったのに、あろうことか浮浪者まがいの老女が、そんなヒエログリフの本を探査していたのである。

 この種の人は大英博物館のリーディング・ルームでは決して珍しい事例ではなかった。
その紳士は背が高く、物腰は柔らかで人品も卑しくない。いつもきまってノース・ライブラリーへ行く通路側の机のうえに、本を積み上げている。
 
(中略)それは1920年代のことで、その後数年を経てふたたび大英博物館に通いだすと、相変わらずその人は朝早くから夜の閉館まで、毎日読書室のおなじ机のまえに座っている。
 たぶんこの人は、いずれ大著をものにするに違いないと思っているうちに、30年代も終り、あの忌まわしい戦争に突入した。大英博物館もひどい戦禍を蒙った。

 あの悪夢のような大戦が終わって、ふたたび大英博物館に通いだすと、例の紳士の姿があったが、その髪は白髪となり、容姿はすっかり老け込んで見えるが、昔日の威厳は失われていない。相変わらず、毎朝早くから、リーディング・ルームの同じ机に陣取り、夜遅くまで読書とノート取りをつづけている。いつの間にか30年が過ぎ去ったが、彼の新しい著作が加えられる事はなかった。この間、くだんの紳士は生業についたとは思われないが、さほど金持ちとも思えない。彼はこの30年間のほとんどすべて、大英博物館の一室で時間を費やしたのである。

いやあ~、私の晩年の姿もそんなふうでありたいと心から思いました。飽きず、弛まず、淡々と通い詰めて読書を続ける。メモを取りながら、一心不乱に読書している姿はまさに『至福』の時かもしれません。

何の役にも立たないまま、一人自分の為だけに勉強を続ける。およそ生産的とは言えないかもしれませんが、そういう生き方や勉強の仕方があってもいいように思います。

私もこのブログで効率的な読書法などの本を読んでコメントしてたりしてますが、『効率的』などという観点を意識している自体、薄っぺらな読書法だなあ~と思う気持ちをアンビバレンツなまま抱えている矛盾した自分を改めて感じました。

働かないと食べていかれない庶民としては、最低限の妥協は必要なのかもしれませんが、自分の一番したいこととの本末転倒だけは避けるように気をつけたいと強く思いました。

いろんな意味で凄く面白かったです。少しでも大英博物館という名称に惹かれるもののある方、読んでいて間違いはないと思います。ミーハーに人に説明するだけでも価値があるかも?(笑)
【目次】
序章 新しく甦った大英博物館
第1章 創立とハンス・スローン
第2章 草創期とウィリアム・ハミルトン
第3章 ロマン派時代とギリシア彫刻群
第4章 ヴィクトリア時代の光と影
第5章 中興の祖オーガスタス・フランクス
第6章 大英博物館を訪れた人びと
第7章 困難な時代―ふたつの大戦をはさんで
終章 大英博物館のさまざまな至宝
物語 大英博物館―二五〇年の軌跡(amazonリンク)
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2008年01月14日

「中世末期の図像学〈下〉」エミール マール 国書刊行会

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「中世末期の図像学(上)」からの続きです。

やっぱりこの本も読むと、目から鱗が落ちてきます。実に興味深い!

初版が1907年でとても百年前の著作とは思えません。私が物を知らないだけかもしれませんが、私にとってエミール・マールの著作以上に美術関係で学ぶ所の大きかった本はありません。このシリーズは間違いなく名著です!! 日本語で読めて本当に良かった。訳者陣に感謝&感謝です。でも、いつか原書で読むぞ~。

以下、いつものように本書より抜き書きメモ。
キリスト教的芸術というものが存在して以来、芸術家たちが表現してきた人生の観念は結局同じであった。人生は戦いであり、人間は絶えず自分自身と戦わねばならないということである。世代が代わっても、同じ事が繰り返される。個人の進歩はあるが、全体的進歩と言うのはない。それゆえ、古い教会の壁の悪徳と美徳の像の語る言葉はいつまでも力を失わない。父親が学んだ事を今度は息子が学ぶ。それぞれが神の助けを得て自らに打ち勝たねばならないことを学ぶのだ。
十四世紀末ごろにには新しい世界に入ったことが感じられる。芸術家達はそれまでとは違って、それほど高尚ではなく晴朗でもないが、感じやすい魂を持つようになる。イエス・キリストの教えよりも、その苦しみの方がより深く彼らの心を打つ。芸術はじめて苦痛を表現するようになる。芸術が死を表現しようとするのもそれとほとんど同じ時期である。新しい中世がシャルル五世の治世の終わりごろに始まったということができるであろう。

 この根本的な変化は、十三世紀と十四世紀の托鉢修道会の歴史が書かれることによってはじめて完全に理解されるであろう。フランシスコ会士とドミニコ会士は感性に訴えることによって、キリスト教徒の気質を変えるに至った。ヨーロッパ中でイエス・キリストの傷口に対して涙を流せたのは彼らであった。死について語ることによって大衆に恐怖を抱かせ始めたのも彼らであった。

 これから検討する「死の舞踏」を最初に思いついたのもフランシスコ会やドミニコ会の説教師たちであったと、わたしは確信している。(P86)
「死の舞踏」に関する本は、以前も読んだことがあるのですが、本書と比べると雲泥の差があります。一流の学者の著作は、やはり違いますねぇ~。
十三世紀と十四世紀にあれほど有名で、繰り返し書き写された『三人の死者と三人の生者の物語』が
・・・
この説話が実際に芸術に表現されるようになるのは・・・十四世紀末のことである。
・・・
わたしは1400年ごろに作成されたベリー公の時祷書の一冊の中にこの説話を発見した。この主題は公のお気に入りであったに違いない。なぜなら、1408年、公はレ・ジノサン教会の扉口にこの主題を彫刻させ、そこに自分の墓碑が置かれる事を望んだからである。それ以降、この説話は芸術家たちの創作意欲を刺激して止まなかった。(P88)
本書を読む前と後では、ベリー公の時祷書の捉え方が全く変わっている自分に気がつきます。綺麗であるだけでは、対象物を満足に理解しているわけではないんだなあ~と心の底から思いました。
中世には、みずからの血で羊皮紙に呪文を書いたうえで自分を鏡に映してみると、自分の死後の姿を見ることができると信じられていた。(P99)
これって、もっと詳しく知りたいな♪ 意識して資料を探したいかも。
1470年頃に書かれた『リンゴの噛み痕』と題された詩である。奇妙なことに、この遅い時期の作品は「死の舞踏」の原作にまでわれわれを立ち返らせる。その冒頭の部分はまるで説教のようであるが、そうした構想は十四世紀に、役者たちが演ずるよりも前に、フランシスコ会やドミニコ会の説教師が発展させたものであった。

 この詩人は、われわれの始祖が罪を犯したその瞬間に、地上の楽園に死神が生まれたと説いている。天使は地上の楽園からアダムとエバを追放する一方で、三本の長い矢と神の印璽をつり下げた一枚の小勅書を死神に引き渡した。この小勅書では、神は君主のように語り、彼が死神に全権を委ねることを皆に知らせている。それゆえ、死神はこの文書に定められている自分の仕事を平然と開始しているのである。

 カインが自分の弟を殺したとき、死神がその傍らにいるが、アベルを打ち倒しているのはこの死神である。そして死神は一方の手に小勅書を、もう一方の手に矢を持って、世界を横切って去ってゆく。彼にはいくらでも仕事があったのである。(P117)
『死神』という存在の定義を初めて知りました。勅書で権限が与えられているとは・・・、いやはや面白いです(笑顔)。
中世末期の地獄の表現:
「聖パウロの幻視」が図像の着想源になった。
死者の国への旅の話は、いずれもアイルランドからわれわれに伝えられてきたものである。
―聖ブランダンの旅、オーウェンの旅、チュンダルの旅
まさかこんなところで聖ブランダン(ブレンダン)が出てくるとは思いもしませんでした。ユダの記述のところで、アレレ?と思ったらやっぱりブランダンだったとは。いろんな知識が、複雑に絡まっているのがとっても楽しい♪
実際、中世の芸術の原則は、ルネサンスのそれとは反対であることを認めなくてはならない。終わろうとしていた中世は、苦しみや諦めや神の意思の全き受容といった、霊魂のあらゆる惨めな側面を描き切ってしまっていた。

 聖人や聖母、そしてキリスト自身でさえ、しばしば十五世紀の貧しい人々のようなひ弱な姿で描かれ、霊魂からの輝きしか持っていなかった。この芸術はこのうえなく謙遜な芸術であり、真のキリスト教精神がそこにはあった。

 ルネサンスはこれとは完全に異なっている。その隠された原則とは慢心である。人間はもはや自身以外のものを必要とせず、みすからを神にしようとする。この芸術の最高の表現は衣服をまとわない人間の肉体の表現である。(P256)
ルネサンスに対して以前は全面肯定的な捉え方をしていた私ですが、既に何度か書いてますが、中世を知れば知るほど、ルネサンスとは距離を置いた見方をしている自分がいます。
中世の伝統を滅ぼしたのはルネサンスではなく、宗教改革であった。
宗教改革はカトリック教会にその思想のあらゆる面を監視することを余儀なくさせ、厳しく自己規制を行わせ、あの詩情と幻想の伝統に終止符を打たせたのである。(P258)
かくしてキリスト教美術のあれほどまでに豊かな『美』は過去のものになっていってのかと思うと、実に切ないです。憤りさえ、覚えてしまうのですが、それでもラファエロのマドンナを見た時の感動もまた、真実なので困るのですよ・・・私は。
【目次】(上巻)
序言

第一部 説話的芸術
第1章 フランスの図像とイタリア芸術
第2章 芸術と宗教劇
第3章 宗教芸術は新しい感情―悲壮感―を表現する
第4章 宗教芸術は新しい感情―人間的優しさ―を表現する
第5章 宗教芸術において聖人たちは新たな姿で登場する
第6章 古い象徴主義と新しい象徴主義
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(下巻)・・・本書の内容
第二部 教訓的芸術
第7章 芸術と人間の運命―人生、悪徳と美徳
第8章 芸術と人間の運命―死
第9章 芸術と人間の運命―墓
第10章 芸術と人間の運命―世の終わり/最後の審判/刑罰と褒章
第11章 中世の芸術はいかにして終焉を迎えたか
そうそうデューラーによる黙示録の図像が「ヴィッテンベルク聖書」を通して、広く受容され、お手本化していったそうだが、先日読んだ本にもこの図版がたくさんあったなあ~。

ベリー公の時祷書にしろ、『キャサリン・ド・クレーブスの時祷書』にしろ、バラバラになっていた知識が本書を通して有機的に関連付けられていくのはなんとも言えず楽しい限りです。木版画や活版印刷術など、全ては結び付くんですね。本当に勉強になります。

中世末期の図像学〈下〉 (中世の図像体系)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「中世末期の図像学〈上〉」エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会 
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会 
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会 
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店 
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(下)」エミール・マール 岩波書店 
「キリストの聖なる伴侶たち」エミール マール みすず書房
「ルターの首引き猫」森田安一 山川出版社
「ヴィッテンベルクの小夜啼鳥」藤代幸一 八坂書房 
「聖ブランダン航海譚」藤代幸一 法政大学出版局
「屍体狩り」小池 寿子 白水社
「ヨーロッパの死者の書」竹下 節子 筑摩書房
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
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2008年01月04日

「The Golden Age of Dutch Manuscript Painting」James Marrow  George Braziller社刊

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去年、神田の古書市で購入したもの。たま~に眺めていたりするのですが、地の文は実は少ししか読んでいない。

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以前購入した「Hours of Catherine of Cleves」のように一頁毎に図像の説明がされていたのとは異なり、本書はたくさんの装飾写本を紹介しているものの、個別にその図案の解説をしているのものではなく、写本自体の概要ぐらいになっています。

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それもそのはずで、NYのモーガン・ライブラリーで開催された15世紀オランダの装飾写本の企画展の為に、世界中から集められた一級の美術作品を紹介しているのが本書だったりします。

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逆に言うと、本書の一番のウリは大変綺麗なカラー図版となります。前回、少し紹介したのでそれらとできるだけ重複しない範囲で選んだものをいくつか載せておきますね。

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実際に見てもらえると分かりますが、実に綺麗です。これで個々の図版にエミール・マール氏の解説でもあったら最高なんですけど・・・(それだったら定価の倍でも価値ありそう!)

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とにかく実に美しいです。見てるだけで十分に楽しいです。出版社はアメリカの会社ですが印刷は西ドイツとなっています。賢明だよねぇ~。アメリカでなくて良かった!(オイオイ)

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そうそう、ついでに言うと本書から図版を借りて去年のクリスマスカードを作成していたりする(うっ、ネタばらしちゃったよ)。

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あと、本書の欠点というと、本書の写本の中でも中心になるのはやっぱり Hours of Catherine of Cleves。従って、そちらを既に持っている方には図版が重複しちゃうのが欠点ですね。まっ、しょうがないですけど。この点と解説の点がマイナスですが、写本好きなら買っておいて損は無いものでしょう。

今年もいろいろな写本絡みの本欲しいなあ~。
遅ればせながら、本年のお年玉として目の保養になれば幸いです。

The Golden Age of Dutch Manuscript Painting(amazonリンク)

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第48回東京名物・神田古本まつり~其の二
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
2007年 クリスマス・カード
「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「美しい書物の話」アラン・G. トマス 晶文社
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2008年01月03日

「中世末期の図像学〈上〉」エミール マール 国書刊行会

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本書が扱うのは14世紀以降、1563年のトリエント公会議まで。
本書の中心課題は15世紀の新しい図像の研究。

中世末期芸術の示す二つの相
1)物語的芸術・・・キリスト教の歴史、聖人たちや殉教者の物語、聖母、とりわけイエス・キリストの物語 ← 13世紀の象徴主義から強い感情を伴う物語性へ
2)教育的芸術・・・芸術が人間に義務を教えている
中世の作品は美術館ではなく、その現場において見なければならない。美術館はたくさんの興味深い事実を教えてくれるが、心の躍動は与えてくれない。芸術作品はその地方の風景や森や水や、しだや牧草の匂いと結び付いていなければならないのである。

芸術作品は街道を通って遠くから訪ねてゆくべきものである。そして、それを見た帰り道では、何時間もその感動を心の中で暖めるのだ。するとそれは心の内部のすべての力を活動させはじめる。芸術作品がその秘密のいくつかをわれわれに打ち明けてくれるのはそれからなのである。(P12)
著者のこの揺るぎない信念がある限り、読者は強い共感と感動を免れ得ないだろう。
十四世紀の終りまでは、劇作家たちはイエス・キリストの生涯を上演する際、その着想を「福音書」―正典であれ外典であれ―と「黄金伝説」にしか求めなかった。しかし、彼らはついにあの驚くべき書物に頼ることを思いついた。それは、それまで知られていなかったわけではないが、成立からすでに百年以上たっていながらも何の影響も与える事のなかった偽ボナベントゥーラの「イエス・キリストの生涯についての瞑想」である。

それはまさに劇作家を魅了するものであった。事実、「瞑想」の著者は演劇的感覚をもっており、説教を身振りで行いクリスマスの物語を演じた聖フランチェスコのまがうことなき弟子であることを示している。その師のように、著者は登場人物を行動させ語らせずにはいなかった。彼はヨセフとマリア、イエスと弟子たち、イエスとその母の間で交わされる多くの会話を想像した。彼の本の中ではすべてが語り始める。神も天使も徳も魂も。

「瞑想」は絵画的であると同時に演劇的である。この二つの要素のおかげで、この本は聖史劇の作家たちを大いに魅惑したのである。彼らはそこに舞台と対話を同時に見出した。とりわけ、想像、詩情、情熱といったドラマを生き生きとさせるすべてのものを発見したのである。(P60)
あの黄金伝説でさえ、当時の民衆には足りなかった具体性がこの「瞑想」という本により埋められていったらしい。
洗礼者ヨハネの物語はイエス・キリストの公生涯と密接に結びつけられている。十五世紀の初頭から「ヘロデの饗宴」の場面に、それ以前の芸術家の知らなかった一つのエピソードが現れる。聖ヨハネの頭が食卓に運び込まれたとき、ヘロディアがその刀を彼の額に突き刺すのである。1413年以前にランブール兄弟が彩色したベリー公の「いとも豪華なる時祷書」は、私の知る限り、このエピソードの描かれた最も古い例である。それは十六世紀にアミアン大聖堂の内陣周壁を飾る浮彫の中にふたたび現れる。
・・・・
福音書の中にはこうしたことは一切書かれていないし、イタリアの芸術の中にもそれは全く見られない。
・・・・
最初にヘロディア刀の一突きが語られたのはどこにおいてであろう。それは聖史劇においてである。メルカデに帰せられる「アラスの受難劇」の中に、次のようなト書きがある。「ここで娘は、ヘロデの食卓にいる母親に洗礼者ヨハネの首をもってゆく。ヘロディアは小刀でその首を打つ。彼女は首の目の上に傷をつける。」(P86)
聖史劇のト書きに残っているとは、本当に驚きです。それを見つけた著者の熱意もさることながら、実に興味深いです。

さりげなく出てくるベリー公の時祷書も、本書の中ではずいぶんたくさん紹介されていて、そこに描かれた写本のデザインがランブルール兄弟のアイデアではなく、イタリア由来、さらにはビザンティン由来であることが説明されています。それを知っただけでも私には大いなる驚きでした。
十三世紀ほど芸術がキリスト教の真髄を的確に表現したことはなかった。シャルトル、パリ、ブールジュ、ランスの彫刻家たちは、いかなる神学者よりも明快に、福音書の奥義が、その究極の言葉が、愛であることを説いたのである。
十五世紀にはこの天上的輝きはとっくに消え去っていた。現存するこの時代の作品の大半は陰惨で悲劇的であり、芸術はもはや苦しみと死のイメージしか描き出そうとはしない。イエスはもはや教えを説くことなく、苦悩している。
・・・・
この時からキリスト教の奥義を宿す神秘の言葉は、もはや「愛する」ではなく「苦しむ」であるように思われる。それゆえ、われわれがこれから取り組もうとしている時代が特に好んだ主題は「キリストの受難」である。
・・・・
以前は知性に訴えかける教義であったイエス・キリストの死が、今や心に語りかける感動的なイメージとなったのである。(P124)
私が強烈な印象を受けたあのシャルトルは、そういう意味では紛れもなく知性と心の奥底に訴えかけるものであったと思いました。
「憐れみのキリスト(悲しみの人)」像の15世紀流行の理由:
教皇によって、大きな贖宥と結び付いていた為
神秘の葡萄絞り機:
葡萄絞り機の下に横たわったイエスが押しつぶされて桶の中にその血を流している。
「生命の泉」同様、キリストの血への信仰と関係している
→当初の「受難」の象徴的表現から、16世紀のプロテスタンティズム(=聖体の秘蹟を否定)に対するカトリシズムの教義確立の意図の下、「聖体の秘蹟」の表象となっていく。(P165)
この手の象徴主義的図案にすっごい惹かれてしまう私。うっ、読んでいてゾクゾクします。手元にある「カトリーヌ・ド・クレーブの時祷書」の挿絵などにも共通するものがあり、それを眺めつつ、本書を読みました。
神に近づくこと。これこそはまさに十三世紀末頃からキリスト教徒の心を奪い始めた欲求である。こうして人々は少しづつ神を自分たちのところまで引き降ろしていったのである。(P200)
【本文より要約】
人々は、聖人にとりなしを願い、聖人はそれを聖母に取り次ぐ、聖母はキリストにとりなし、キリストが神にとりなす。・・・・この繋がりが『聖人崇拝』ということらしい。
こ、この連鎖ってすごくないですか? 『とりなし』自体は知っているつもりでしたが、本書を読むまで聖人が直接神かイエスにとりなすのだと思っていました。
十五世紀と十六世紀のほとんど全ての象徴的作品が「貧者の聖書」あるいは「人間救済の鏡」から生まれたことについては、もはや議論の余地はないと思われる。(P330)
意味は分からずともそれらの2冊を傍らにおき、お手本としていたそうです。
古代の異教徒達のキリスト教世界における位置付け:
「真の神は異教徒から顔をそむけなかったばかりでなく、彼らに特別な啓示を与えさえした。キリスト教のすべての教義がかいまみられ、時には古代の賢者たちによってそれらが明瞭に語られたこともある。プラトンとアリストテレスは聖三位一体について語り、アプレイウスは善良な天使と邪悪な天使がいることを知っていた。そして、キケロは復活を予言した。神の息吹に満たされたシビュラと呼ばれる処女たちは、救世主の到来をギリシア、イタリア、小アジアに予告した。シビュラの書に学んだウェルギリウスは、世界の様相を変えようとする神秘な子供を詩に歌った。」
・・・by『権威ある異教徒によって証明されたキリスト教信仰』(P340)

ラファエロはすべての教会博士を集めた「聖体論議」と向かい合わせに、哲学者たちが一堂に会した「アテナイの学堂」を描いた。彼はこうしてヴァチカン宮殿のただ中にあって、古代思想は神聖であり、哲学者は神学者の正当な先祖であり、ギリシアの知恵とキリスト教信仰はつまるところ同一のものでしかないと断言していたのである。
これも結構ショックです。バチカンは2度行ったし、この絵もしっかり見たけど、全然そんなこと知らないでぼお~っと見てた。エミール・マールの本を読むといつも思うのですが、私は目が開いていても何も見ていなかったことを痛感せずにはいられません! やぱり、原書で読みたいなあ~エミール・マールの本は。う~ん・・・素晴らしいです。
【目次】(上巻)
序言

第一部 説話的芸術
第1章 フランスの図像とイタリア芸術
第2章 芸術と宗教劇
第3章 宗教芸術は新しい感情―悲壮感―を表現する
第4章 宗教芸術は新しい感情―人間的優しさ―を表現する
第5章 宗教芸術において聖人たちは新たな姿で登場する
第6章 古い象徴主義と新しい象徴主義
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(以下、下巻)
第二部 教訓的芸術
第7章 芸術と人間の運命―人生、悪徳と美徳
第8章 芸術と人間の運命―死
第9章 芸術と人間の運命―墓
第10章 芸術と人間の運命―世の終わり/最後の審判/刑罰と褒章
第11章 中世の芸術はいかにして終焉を迎えたか
中世末期の図像学〈上〉 (中世の図像体系)(amazonリンク)

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「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(下)」エミール・マール 岩波書店
「キリストの聖なる伴侶たち」エミール マール みすず書房
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2007年12月16日

「金刀比羅宮の美術」伊藤大輔 小学館

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NHKの新日曜美術館をみて、速攻で読破した本です。本自体は、知ってたのに一度も読まないでいました・・・(オイオイ)。これだよ~。

NHKで紹介されていた前半から30分ぐらいまでの内容はほぼ本書でも説明されています。番組よりかなり詳しく、綺麗で大きな写真なんでこれは大いにお薦めです。

七賢の間に暴漢が侵入して、お顔のところに墨をぶちまけた話とか、若冲の「花丸図」は現在、金砂子の地の上に描かれているように見えるけど、書かれた当初は白紙の上に描かれていてずいぶんと印象が違ったであろう・・・という話など、実に魅力的で面白い話が書かれています。

あと素晴らしいなと思うのは、各『間』がどのようにつながっているか間取り図が書かれていること。絵師達がいかにその間取りを踏まえた空間芸術を意識していたのかを理解できるようになっています。

TVでは映像だったので、その空間感覚が非常に分かり易く、それが何よりも素晴らしかったかも? 是非、本書と合わせて番組見るといいかも。

内容からすると値段も手頃でしょう。手元に置いておきたい本ですね。この本いいと思います(笑顔)。著者は新日曜美術館の番組内で解説されていた方だし。さて、夜も再放送見ようっと!
【目次】
はじめに―金刀比羅宮の文化財について
 表書院・奥書院の平面図

表書院
 鶴の間、虎の間、七賢の間、山水の間、富士の間、表玄関

奥書院
 柳の間、菖蒲の間、春の間、上段の間

まだまだある金刀比羅宮の宝物
 高橋由一、金毘羅祭礼図

現在の参道
 金刀比羅宮の境内概要
金刀比羅宮の美術―思いもよらぬ空間芸術(amazonリンク)

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NHK新日曜美術館「「こんぴらさん」の美をさぐる」
プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展~東京国立博物館
三の丸尚蔵館第40回 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>
「伊藤若冲」新潮社
「澁澤龍彦ー幻想美術館ー」展、埼玉県立近代美術館
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2007年11月29日

「キリストの聖なる伴侶たち」エミール マール みすず書房

本書はエミール・マールの著書「Les saints compagnous du Christ」の全訳。

キリスト教の聖人たちを採り上げているが、ポイントは聖人の解説ではなく、キリスト教図像学の解説に他ならない。従って、本書のカテゴリは「宗教」ではなく、「美術・図像学」となるので要注意!

あの中世図像学の碩学エミール・マールの著者だから、当然と言えば当然なのですが、本書も学ぶべき事がぎっしり詰まった充実した内容となっています。

但し、あの偉大な定番「ゴシックの図像学」「ロマネスクの図像学」等々に比べると、さすがにパワーは落ちてますけどね。その代わり、著者がイタリアで教鞭をとるようになった以降のものですので、フランスばかりではなく、イタリアに関する図像が非常に多く採り上げられています。その点が従来と異なる点です。

私もまだ全部読み終えてません。やっと半分近くかな? 残りはいつ読めるのか分からないので、とりあえず読んだ範囲でメモ。
聖ヨハネと聖エリザベツに関して西方教会にある独自の伝説。
13世紀末、聖ボナヴェントラ作とされていた「イエス・キリストの生涯についての瞑想」で具体的な伝説が新たに生まれた。聖史劇への影響。
→ 自分の周りで二人の幼子を遊ばせている聖母の図像はこれに起源を有する
→ レオナルド・ダ・ヴィンチの「岩の聖母」が最古の例。後にラファエロの「美しい庭師と聖家族」
私も実物を見たことありますが、そんな経緯があったとは知りませんでした。この時が初めて図案だったんですね。へえ~。
聖ヨハネはフィレンツェの守護聖人。どこよりもこの都市で手厚く崇拝された。
みんな知ってるんですね、これぐらいのこと。私は二度も行ってて全然知らなかったけど、友人に有名じゃんと言われて落ち込んでます。
イエスの受洗の意義の変遷
1)西暦初期、洗礼は復活を意味していた
2)中世、崇高さに満ちた神秘の出来事
3)トリエント公会議後、謙遜の神秘
ヨハネに関して流布していた伝承:

 ヘロディアはヘロデの王宮内に聖ヨハネの首をそのまましまいこんでいたというのである。それは世の終りに至って聖ヨハネが肉体の復活をするのを妨げるためであった。なにしろ首と胴体とが切断されているのだから。後に、ローマ皇帝がこの聖なる首をもらい受けてきて、コンスタンティノープルに美しい教会を建てて、そこに奉納し、崇拝をささげた。

 十字軍が1204年コンスタンティノープルを攻略したとき、王宮も教会も容赦なく、荒らしまわった。敗北した敵に暴力をふるうことを辞さず、町のあちこちに火を放った。この時の火事で半ば消失したとある教会に、アミアンの司教座聖堂参事会員でヴァロン・ド・サルトンと名乗る人が、箱に入れられた一つの首を、洗礼者聖ヨハネの名を刻んだ銀製の皿に載せられた首を発見したのだった。

 「主に先立つ者」のあまりにも有名な聖遺物発見の経緯はこんな具合だった。この人はいそぎフランスに向けて出発、首を持ち帰った。長途の旅行費用を支弁するため、銀の皿は売却せねばならなかった。アミアンの教会関係者たち一同から凱旋将軍のように歓迎された。大聖堂内に安置された聖遺物は間もなく、数知れぬ巡礼者たちの群れを招き寄せることとなった。

 洗礼者ヨハネの首がアミアンに到着したのは1206年のことである。12年後、1218年大火が起こって首の安住の地、アミアンの古い町は烏有に帰した。まさにこの時、かつての教会堂ではあまりに小さ過ぎ、巡礼者聖ヨハネの祝日に押し寄せる大群衆を容れることができぬとかねて見究めていた司教は、フランスの全司教座聖堂中、最大のものを建てる決意を固めたに違いない。そうでなければ、新しい教会堂の驚くべき広大さの理由はとても説明がつかない。

 王家も競って長い行列をつくり、続々この地に巡礼を重ねた。聖ルイ、シャルル5世、王妃イザボー・ド・バヴィエールなどが姿を見せた。王妃イザボーは壮麗な黄金の皿を寄進し、首はそこに納められた。のち、ルイ11世はその皿をいくつもの見事なルビーで飾らせ、このあと、私人で王の範にならう人々が続出し、皿は値段のつけようもない財宝となった。

 フランス革命の時、イザボーの皿の宝石は剥ぎ取られて溶かされてしまった。首はアミアン市長が自宅へ持ち帰って隠匿し、信仰が回復したのち、教会へ返した。
アミアンの大聖堂の聖遺物なんて、この本読んで初めて知りました。そっかー、大聖堂は聖遺物箱だもんね。シャルトルもしかり。
アミアン大聖堂の内陣仕切り内にある浮彫に描かれたもの:

 ヘロデの脇で食卓についているヘロディアのところへ首が運ばれてきた。ヘロディアはいきなりナイフをとると、洗礼者ヨハネの額めがけてそれを突き刺す。前面ではサロメが卒倒し、召使いの人の腕に倒れかかり、今しも鳥料理を運んできたもう一人の召使いは仰天して足を止める。

→この伝説はアミアンで生まれたもので、実際、大聖堂に保存されている首の左眼上方には、一つの穴が観察できた。アミアンでは、巡礼者たちに対し、この傷の説明として、ナイフで刺されたとの伝説を語ったのである。

また、サロメの卒倒は地方的な伝承と考えられる。洗礼者聖ヨハネの聖遺物のもとへ治癒を求めて集まった病人達の中には癲癇患者が多くいた。そして当時、癲癇のことを「聖ヨハネ病」と呼んでいた。
最初に現象があって、伝説は後追いで作られていくんですね。
【目次】
洗礼者ヨハネ
聖ラザロ
聖マリア・マグダレナと聖マルタ
聖ペテロと聖パウロ
聖アンドレ
聖大ヤコブ
聖ヨハネ
聖トマス
残りの弟子たち
キリストの聖なる伴侶たち(amazonリンク)

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「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
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「ヨーロッパのキリスト教美術(下)―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店
ラベル:書評 アート 図像
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2007年11月05日

「芸術新潮 2007年04月号 イギリス古寺巡礼」

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いつも思うが、芸術新潮は写真が大きくて綺麗なのがイイ♪ また写真の選択基準が普通の美術雑誌とは異なった独自の視点なのがポイントかと思う。

この号は「大特集 イギリス古寺巡礼―中世を訪ねる旅―」というテーマだったが、より具体的に言うと、イギリス国内のあまり知られていないロマネスク建築を訪ねる旅だった。

素朴だが、地元の人々にしっかり愛されている生きている歴史遺産。そんな感じで、いささかマイナーっぽいのを選んでいるセンスがなかなか素敵。

写真も普通ロマネスクなら、まず建築から入るものだが、かなりの部分が彫刻(洗礼盤含む)で占められているのは珍しい。また、ラザロとマグダラのマリア、マルタが共に描かれた「ラザロの復活」に関する彫刻などもなかなか楽しい。

文章はエッセイに紀行文が混ざったような感じで、予備知識無しに誰でもが歴史への旅として気軽に読めるようになっている。非常に間口が広い。だからこそ、今時雑誌が売れない時代にこれだけの値段を設定できるのだろう。

その反面、まともにロマネスクに関心を持って読むと、知的好奇心を満たすだけの水準には程遠いのも事実だ。想定読者層が明らかに異なるのだから、これは無いものねだりかもしれない。

あくまでも割り切って眺める分には大変楽しいと思う。ただ、料理の記事は、いかがなものか? 個人的にはかなりうざいんだけどなあ~。料理のことは、料理の本読めばいいと思うのだけど、総合誌の辛いところでしょうか・・・。

芸術新潮 2007年 04月号(amazonリンク)

関連ブログ
「芸術新潮 2006年 06月号」新潮社
「芸術新潮1994年9月」特集血まみれ芳年、参上
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
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2007年10月30日

「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会

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ゴシックではないからなあ~と軽い気持ちで最初は読んでいました。また、初めの方は勉強にはなるものの抽象的な退屈さもあって、読んでるうちに眠気を誘うのですが・・・。

2章、3章と進んでいくにつれ、より具体的な図像(写本、ステンドグラス、柱頭の彫刻等)を採り上げた解説になってくると、グイグイと引き込まれいきます。

私が大好きなシャルトルのステンドグラスや彩色写本の図像が題材なのだから当然と言えば当然ですが、それがどのような歴史的な伝統を引き継いだものなのか、また中世に入ってそれがいかなる修正を受けた図像なのか、そこに秘められた深い象徴性故に大変面白いのです!!

更に&更に、今までも分かったような気でいた図像が正確に理解していなかったことを痛感させられます。著者のエミール・マール氏により、図像が意図する本来の象徴を、具体的な資料と論理的で明解な説明で学べるのは本当に喜び以外の何物でもありません。まさに目から鱗と言っても良いでしょう♪ 表面的なガイドブックの説明を見て分かったような気でいた自分が情けないというよりも、悔しいというか、なんともったいないことをしていたのかと反省することしきりです。

それぐらい本書の説明は、私のような無知蒙昧の輩の目を開かせてくれます。シュジェールの言でいうならば、
 「愚鈍なる精神は物質を経て真実にまで昇る」
ということで愚鈍な私も少しは真実に近づいたでしょうか?

さて、本書の内容ですが、まず4~6世紀のキリスト教美術には大きく二つの流れがあり、以下の二つがあった。
 1)ヘレニズム的キリスト教美術
 2)シリア的キリスト教美術
それらが写本等を通して、ヨーロッパのキリスト教美術に取り入れられたとする。

十二世紀のキリスト教美術は、ビザンティンを通り越してそれ以前のニ系統の伝統を継承したものと言える。中世を通しても、伝統的な図像はお手本に対して忠実に守られていった一方で、その一部は修正を受けたものもあった。

そういった大きな枠組みを説明したうえで、個別具体的な例証を挙げて説明していきます。勿論、大きな流れも大切ですが、私的には具体的な意匠の意図の説明が何にも増して有用でした。

例えば、「エッセイの木」とかね。典礼劇の影響をどのように受け、それがどのように反映しているのかとか。当初はイエスの玉座の系統樹を示していたものが、聖母崇拝の高まりに応じて、聖母の系統樹と変質していく視点など、なんとも示唆に富む解説ばかりで改めて手持ちの資料等を見直したぐらいです。

後でそういった個別の説明部分は、抜き書きメモを別途載せますが、
本書を読んでから、ステンドグラスや彫刻見た時、ただでさえ胸を打つ感動は更に数百倍以上に増大すること請け合いです。

私は知らないで見ても、シャルトル大聖堂に心を揺さぶられましたが、本書を理解してから見たら、更にどれほど感動できるか、想像できないくらいです。写本もきっと同じでしょう。

手元にある中世の時祷書の本も、ただ綺麗だなという一線を越えて、深いその象徴性に気付くと全然違った見方ができると思います。象徴性を理解するには、絶対に知識が必要であることを再認識させられました。

本当に素晴らしい本です。エミール・マール氏の本を読むといつも感動させられますが、本書も間違いなく良書です。ただ、分量が多いので読むのにはかなりの気合が必要なのと、いつもながら図版は数があるものの、小さくてよく分からないのが大きな欠点です。図書館等で巨大な美術全集とか建築全集で可能な限り、図版を確認するとベストです。

本当に勉強になり、視点が変わる一冊です。でも、下巻を読むの大変そうだなあ・・・。実は上巻も読破するまでも結構時間かかってます。

具体的な記述については以下に抜き書き。
「ロマネスクの図像学(上)」~メモ
【目次】
<上巻>
第1章 モニュメンタルな大彫刻の誕生と写本群の影響
第2章 十二世紀の図像の複合性―そのヘレニズム的・シリア的・ビザンティン的起源
第3章 フランスの芸術家たちによるオリエントの図像の修正
第4章 図像の多様化―典礼と典礼劇
第5章 図像の多様化―シュジェールとその影響
第6章 図像の多様化と聖人たち
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<下巻>
第7章 図像の多様化―イタリアの巡礼起源
第8章 図像の多様化―フランスとスペインの巡礼路
第9章 芸術における百科全書的性格―世界と自然
第10章 修道院の刻印
第11章 図像に飾られた十二世紀の扉口
ロマネスクの図像学(上) (中世の図像体系)(amazonリンク)

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「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
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「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ルターの首引き猫」森田安一 山川出版社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
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2007年10月18日

「夜の画家 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール」ピエール・ローザンベール、ブルーノ・フェルテ 二玄社

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かなり大判の画集。最初の説明は、ちょっと分かり難くて退屈。

でも、一枚一枚大きな頁で絵の全体が図版として入っていて、対面頁に細部を拡大した図が入っているのは、見やすくていい。個々の絵の説明は、読んでいて勉強になりますし、面白いです。

改めて、ラ・トゥールって忘れ去られた後に、再評価された画家であることを痛感しました。実際に西美の展覧会でも見たし、ルーブル他、外国でも見たけど、私のように何も知らない人だとそのまま見過ごしてしまうなあ~。ルーブルの『常夜灯のあるマグダラのマリア』は結構好きなんですけどね! 

と同時にこれだけ評価が高いラ・トゥールの作品『聖トマス』をよく西洋美術館が入手できたもんだと感心しました(拍手)。予算それほどないだろうに・・・。ご苦労様です。

と同時に、他にもラ・トゥールの本物が日本に一時あったそうです(驚愕の事実)。現在は所有者が変わってスペインのプラド美術館(?)の所有らしいですが、日本に作品があったというだけでも驚きですね。是非、見たかったなあ~。

などといっぱしのラ・トゥールファンを装っていながら、画集で見た限りでは、好きな作品はそんなに多くない。『聖トマス』も西美で頻繁に見る割に、イマイチ好きになれないでいたのですが、本画集を見る限りでは、結構いい方の部類かも? ゲンキンな性格してます私。

レゾネではないのですが、たくさんの作品が紹介されてますのでお好きな方には良いかもしれません。でも、大きくて重いうえに高過ぎるなあ~。それと印刷の発色というか色合いが、ちょっと違和感を覚えます。

図書館かどこかで眺めるものかなあ~、これは。私的には買ってまで欲しくはない画集でした。
【目次】緒言(ピエール・ローザンベール)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの世界(ブルーノ・フェルテ)
ラ・トゥールの作品
作品総目録
生涯
主要参考文献
展覧会
夜の画家 ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(amazonリンク)

関連ブログ
美の巨人たち ラ・トゥール『常夜灯のあるマグダラのマリア』
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展 国立西洋美術館
ルーブル美術館 ~パリ(7月4日)~
ラベル:アート 書評
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2007年10月08日

「エジプト大遺跡」荒俣宏 リブロポート

フィラエ島の大神殿柱廊下部にある彩色浮彫り
[フィラエ島の大神殿柱廊下部にある彩色浮彫り]

ナポレオンが国家の威信をかけて実施した、多数の科学者達を同伴したエジプト調査。その成果をまとめた『エジプト誌』に精密な記録図として入っていた多色刷り銅版画などをまとめた図録集。

エジプト誌 第2版の扉絵
[エジプト誌 第2版の扉絵]

彩色された図版はそれほど多くないが、実に美しいです。先日、町田の版画美術館で本物を見て是非、もっと知りたくて本書を読みました。見ていて実に楽しい♪

フィラエ島の大神殿柱廊の内部
[フィラエ島の大神殿柱廊の内部]

モノクロの銅版画なら、たくさん入っています。ただ、その精密さがちょっと分かりづらいかな? 論より証拠でいくつか気に入ったものを挙げておきますね。

テーベ西岸のメヒネット・ハブ宮殿南列柱回廊にある彩色レリーフ
[テーベ西岸のメヒネット・ハブ宮殿南列柱回廊にある彩色レリーフ]

なお、町田で見た『エジプト誌』のものは、全てこの本に入っていました。重複するから、ここに挙げていませんけどね。

エドフ 大神殿柱廊の内部
[エドフ 大神殿柱廊の内部]

モノクロの図版はここから。本書に入っているのは圧倒的に多くがモノクロです。

カルナック 神殿の内部
[カルナック 神殿の内部]

私の好みでここに挙がっているのは考古学篇の図版だけです。博物学篇の図版もたくさん入っています。

エスナ 神殿の内部
[エスナ 神殿の内部]

見ていて面白いのは確かだけど、手元に置いておく方がいいかは難しいところ。大きいから嵩張るんだよね。このシリーズ(FANTASIC DOZEN)って。私が現在持っているのは、『怪物誌』と「バロック科学の驚異』の2冊のみ。自宅近くの図書館に全巻あるから、わざわざ買う必要がないような・・・気がしたりする。

もし、引っ越すなら、国会図書館近くがいいなあ~。ふとそんなことを思う今日この頃です。
【目次】
『エジプト誌』―ナポレオンと古代の復活

<考古学篇>
 アスワン周辺(上エジプト南部)
 テーベ周辺
 デンデラ周辺〈上エジプト北部〉
 ベニ・ハッサン周辺〈中部エジプト〉
 メンフィス周辺〈下エジプト〉

<博物学篇>
 古代遺物
 哺乳類
 両生・爬虫類
 魚類
 水生無脊椎動物
 植物
エジプト大遺跡(amazonリンク)

関連ブログ
町田市国際版画美術館 企画展「カラフル・ワールド! 版画と色彩展」
「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り)
「怪物誌」荒俣宏 リブロポート(図版13枚有り)
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2007年10月05日

「ステンドグラス」宮本雅弘 美術出版社

ステンドグラスの写真というのは、なかなか綺麗に写らないらしく、私が見た限りでは、ステンドグラスの写真集とかでも本当に綺麗なものは、ごく一部しかありません。

この本は、頁のほとんどを四分の三以上をステンドグラスの写真で占めていますが、そこそこ綺麗に写っている方に入ると思います。ただ、もう20年以上前の本であり、紙質のせいか印刷のせいかは不明ですが、発色自体はそれほどよくありませんでした。

その代わり、写真そのものは非常にはっきりと明瞭にデザイン・色合いを識別できるものが多く、その点では有用な部類に入ると思います。ステンドグラスだけ写っていても肝心のデザインを特定したり、判別したりすることができないと、本来のステンドグラスの面白さが半減しちゃいますし、せっかく図像学を学んで意味なくなっちゃいますから!

発色というか色合いは、いささか平板なのですが、十分に使えるステンドグラスの写真集だと思います。個人的には結構OK(笑顔)。

ただ、問題もあります。本書はこの手の本としては、尋常ではないほどステンドグラスを生み出した中世の歴史的・社会的背景に関する説明がついています。

プロの写真家ではあっても、その筋の専門家ではない著者が非常にたくさんの本を読んで勉強されて書かれているのは、そこの挙がってくる文献名から分かります。それらの文献は私も読んだことがある本が何冊もあり、著者が書きたいことも分かるのですが、時々明白に間違いではないか?と思う箇所があります。

途中までは、ふむふむと納得しながら読んでいると何故か結論がおかしいのです。例えば、「ゴシック建築を物質的な要素が大きく、キリスト教的に異端だ」とか著者は主張しますが、決してそんなことはありません。どうらや光の形而上学に関しては文献を確認されていないようです。文献を挙げられずに著者の思い込みで書かれている部分に、どう考えても誤りだろうと思われる部分が多いです。

著者はご自分の体験に引きずられてしまい、必要以上に民衆や職人に思い入れ過多となって、彼らが大聖堂建設の主役と位置づけているのですが、それも違和感を覚えずにいられません。勿論、宗教的情熱の高揚は必要な条件ではあったのでしょうが、それはロマネスク建築の教会で事足りたでしょう。何故、ゴシック建築なのか? それを裏打ちするキリスト教会側の論理をあまりに軽視しているように感じられてなりません。

正直言って、あまりその辺の知識の無い人が読んでうのみにしたら、まずいような誤りが多過ぎます。

その一方で、著者は現代における職人達を取材した体験や、ステンドグラスについての修復についての取材を通して得た貴重な情報も書かれています。これはまさに価値ある情報だと思います。

実に惜しいのですが、著者のゴシックに関する説明は、全て削って残りの体験や取材部分だけだったら、もっと良い本だったと思います。もし、本書を読まれる方はその点を注意して読まれた方がいいと思いました(老婆心ながら)。

でも、写真は本当にいいと思います。ベストではないですが、かなりベターな部類ですので機会があれば是非ご覧下さい。
【目次】
ゴシック大聖堂には民衆のキリスト信仰の魂があり、ステンドグラスがその存在を守っている

甦る新しい信仰が過去に類例の無い聖堂を生み出した

信仰に人間性を求めた聖母マリア崇拝

グラスの輝きを創造した庶民と職人

「よきソマリア人の窓」視覚的で現代的でさえあるステンドグラスの釉彩絵の構成

カンタベリー大聖堂と遍歴の建築家集団

教権が世俗権力より優位に立つべきことを主張して暗殺されたトマス・ベケット

ボーヴェー大聖堂、ゴシック建築の偉大な失敗

ザンクト・クニベルト教会

城館のステンドグラス

聖遺物崇拝と聖書外典

現代のインテリア・デザインの先駆を示すサント・シャペル

「施しの窓」生き生きと描かれた中世の人々の表情と生活

中世人を支配した世界終末思想

釉彩を緻密多彩にしたシルバー・ステインとヴェール・ドウブレ技法

ルネッサンス 釉彩専業職人の出現

グラスもまた風化による消滅の道を辿っている

明るくモダンでさえある草創期のグラス

現代のステンドグラス

大衆信仰を輝きに凝縮させた職人たち

遍歴修行をする職人たち

風化と破壊で消滅の道を辿っているステンドグラス

アトリエ・グリベール アトリエ54
ステンドグラス―大衆信仰を輝きに凝縮させた職人たち(amazonリンク)

関連ブログ
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「ステンドグラスの天使たち」志田 政人 日貿出版社
「世界ステンドグラス文化図鑑」ヴァージニア・チエッフォ・ラガン 東洋書林
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「聖なるものの形と場」頼富本宏 法蔵館
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
ゴシックということ~資料メモ
「中世思想原典集成 (3) 」上智大学中世思想研究所 平凡社
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2007年09月28日

「ゴシック美術」馬杉宗夫 八坂書房

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馬杉氏の本は、結構読んでいるものの本書は未読だったのでずっと読もうと思っていた本でした。先日エミール・マールの本を読んで、再び中世ゴシックに関する関心が湧き上ってきたので早速読んでみることにしました。

う~ん、馬杉氏の他の本に書いていることと重複する事が非常に多い。特にシャルトル大聖堂の本で既に詳述している内容を繰り返している部分が多く、あちらを読んでいると同じ本を読んでいるような気分になってしまう。

シャルトル大聖堂自体が中世ゴシックのまさに代表格であり、最初のゴシックといわれるサン・ドニとの密接な関連性からも当然ではあるものの、それでも重なり過ぎの感が否めない。

馬杉氏の著作の中で、本書の差別化できる特徴としては、サン・ドニのシュジェール修道院長の件や、ゴシック彫刻における最初とサン・ドニを認められるか等の考察などがあるが、同じ内容についてなら、前川道郎氏の本の方がはるかに詳しく、整理されているのでそちらの方をお薦めする。

ゴシックの図像やステンドグラスにおける『光』についても、同じく前川氏やエミール・マールの著作の方が本書と比べると面白い。

ただ、馬杉氏は当然それ以前の研究を踏まえて考察を加えられているので、エミール・マールの解釈も時代的な批判(=その後、判明した文献・資料などがあり、研究が進んだ成果による)も含めて問題点などを指摘されているのでその点は興味深いところがある。

また、大聖堂に床にある迷宮とそこに建築家の名前が遺された例を挙げて、中世は後のルネサンスのような自己主張がされない無名の人々による神への奉仕の時代という、従来の評価は誤りという指摘が著者からなされている。

エミール・マールなどはその著作で明確にルネサンスの嫌らしいほどの自己顕示欲の時代に対してある種、蔑むような態度を示し、対照的に中世のつつましい神への栄誉のみを称える時代を称賛しているいるが、それと著者の意見は、正反対のものだ。

私は、建築家の名前が記されている事例は知っていたものの、馬杉氏の主張には衝撃を受けた。私も中世こそ、俗っぽい自己顕示欲や『個人』主義がはびこるルネサンスとは異なる時代とずっと思っていたので。

確かに建築家の名前が残されているものの、私には、あれは神の栄誉を称える為の『奉仕者』としての栄誉であって、世俗の人々に対する自己顕示とは異なる感じがしてならない。う~む・・・? 実際はどうだったのだろう?

他の馬杉氏の本を読んでいる時には、あまり感じなかった違和感を本書ではところどころで受けた。これってエミール・マールの本を読んだ影響でしょうか? だいぶあちらから影響を受けてるかもしれない、私。

全体として、一般的なゴシックの説明がサン・ドニを中心にしてなされるが、サン・ドニ自体が数々の破壊・修正を経て製作当時の姿が明確に特定できない為、まずはその当時の姿を特定する議論にだいぶ時間を割かれている。

それ自体は、真摯な学究的な姿勢だと思うが、単純にゴシックの説明を知りたいなら、シャルトル大聖堂がまさに中世ゴシックのエッセンスであるし、現存する中でもっとも破壊や修復が少なかったものでもあるので著者の著作の中でなら「シャルトル大聖堂」を読んだ方がすっきりと明解な論旨で分かり易い!!

勿論、個別の大聖堂故に特化した内容ではあるが、十分に一般性を兼ね備えていると思うのでそちらがお薦め。「光の形而上学」等に知りたいなら、本書では説明が足らず、前川氏の本が一番分かり易いのでそちらをお薦めします。

それ以外にもいささか考察の内容が細かくて一般人には煩雑に過ぎるきらいがあり、段々眠くなってくるのでちょっと辛かったかもしれない。読んでて面白いところが少なかったのも残念でした。

そうそう、図版も値段が高い割に巻頭の口絵以外モノクロで不鮮明。全然説明が分からなかった。これは大いにマイナスポイントでした。
【目次】

Ⅰゴシックの時代―時代背景
 1ゴシックとは―その語源と背景
 2大聖堂(カテドラル)の時代
 3宗教界における新しい潮流

Ⅱゴシック美術の誕生―サン・ドニ修道院長シュジェールとゴシック美術
 1シュジェール以前のサン・ドニ
 2修道院長シュジェール時代のサン・ドニ修道院建築
 3サン・ドニかシャルトルか―ゴシック彫刻誕生の問題
 4サン・ドニ周歩廊の館sねい
 5サン・ドニ修道院北袖廊扉口彫刻図像形成について

Ⅲゴシックの歴史
 1ゴシック大聖堂に至るまでの聖堂建築の発展
 2ゴシック大聖堂の変遷
 3ゴシック彫刻の展開
 4ステンドグラスの展開
 5中世における色彩

Ⅳゴシックの図像
 1大聖堂の図像学(大聖堂で表現されているもの)
 2バラ窓の図像学、その意味と象徴性
 3宇宙像としての大聖堂
 4迷宮(ラビリントス)の意味―大聖堂の建築家たち
ゴシック美術―サン・ドニからの旅立ち(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
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2007年09月06日

「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会

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いろいろあって残り30頁が読めなくて止まっていましたが、ようやく読了できました(満面の笑み)。

上巻からの続きとなります。具体的に言うと、4つの鏡のうち『歴史の鏡』の途中からです。

ステンドグラスや彫刻に残された図像、そもそもそれらが描かれた大聖堂がどんな聖遺物を有していたか、それが分かると自ずから判別するらしい。具体的な聖アンナの話では、シャルトルにおける特異な描かれ方(聖母を抱く聖アンナ)は、聖アンナの聖遺物をシャルトル大聖堂が有していた歴史的事実から合理的に説明されていく。

思わず、大きく頷いてしまう説明です。聖アンナの遺物があったことは、別な本で知っていましたが、それがこういう風に関係してくるとは本書を読むまで全く知らないでいました!う~む。

また、聖書で説明されていない聖人の人生の残りの場面は、素朴な中世人の関心を惹き、そのまま放置されることはなかったそうで、外典や黄金伝説がそのすきまを埋めていき、それらに基づく伝承は大聖堂に残された図像に反映しているそうです。

その一方で、描かれた図像を見た人々がそれから新たに着想を得て、伝承を作っていくようなこともあったらしく、相互作用的にも関係しあった事実もあるそうです。

そうかと言っても、図像の内容は全部が全部、伝承によるものだけだったわけでもなく、たくさんの工房で共通して用いられた図像の手引書のような存在があったことをうかがわせている。

こういった示唆は、本書を読まなければ、一切知らずに意識することなく見過ごしてしまったであろう点であり、読めば読むほど著者エミール・マールの偉大さ(とゴシックに対する情熱)を感じざるを得ない。

王も貴族も司教でさえも普通の寄進者の資格においてしか大聖堂には描かれず、聖人とは明確に区別されていたことや、歴史的出来事も神の世界との関連がなければ、一切大聖堂には記されないことなど、中世の人の考えが徐々に伝わってくるかのようです。

しかし、これだけの内容をよく本にまとめられたなあ~と感嘆します。それ以上によくもこれだけきっちりと典拠を調べ上げたと感動しないではいられません。注釈も宝の山のようです。

内容から考えれば、タダみたいな値段です。大袈裟かもしれませんが、ゴシック建築に関心があるなら、どんなことをしてもまず読むべき本かもしれませんね! 岩波文庫で出してくれたら、更に凄いんだけどなあ~。それは無理か。

でも、これは必ず手元に置いておくべき本ですね。何度も読み返すだけの価値があります。久々に感動モンの書籍でした。時代は経ってもいいものはいいです!!

これを読まずに、ゴシックを語られてもきっと相手にされないんだろうなあ~ということを心の底から感じた本でした。

具体的な内容については次の抜き書きを参照下さい。
「ゴシックの図像学」(下)~メモ
【目次】
<上巻>
序論
第1の書 『自然の鏡』
第2の書 『学問の鏡』
第3の書 『道徳の鏡』
第4の書 『歴史の鏡』
 第1章 旧約聖書
 第2章 福音書
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<下巻>
 第3章 旧約聖書と新約聖書に関連するさまざまな伝承
 第4章 聖人と黄金伝説
 第5章 古典古代―世俗の歴史
 第6章 世の終わり―「黙示録―「最後の審判」
結論
ゴシックの図像学〈下〉(中世の図像体系)(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術(下)―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックの図像学」(下)~メモ
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2007年08月31日

「中世彩飾写本の世界」内藤裕史 美術出版社

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オタによるオタの為の本ですね。美術品でもある彩飾写本のコレクターだから、マニアといった聞こえはいいかもしれませんが、本質的には同じ事です。

おそらく写本とかに興味がない人にとっては、金と手間暇かけてよくやるよなあ~と呆れる所業なのでしょうが、少しでも興味がある人ならば、尊敬と同時に、軽く妬みたくなるくらい羨ましい経験をしている方の趣味に関するお話の本です。

著者の本業はお医者さんなのですが、ご自分で書かれている通り、美術関係の仕事に就くか二者択一で悩むほどの美術好き。特に「ゴシック大聖堂が一番好き!」とおっしゃられている点など、それだけで私なんかは、お仲間かと勝手に喜んでしまいました(笑)。勿論、私なんかよりもはるかに勉強熱心で情熱を持っておられる方なんですけどね。

ゴシック美術の中でも、彩飾写本に特に関心を持ち、完本は資金的に難しくても一枚だけの写本が十分に美術品として評価される点や、通常の本は閉じると中が見れなくなってしまうという美術品としての価値に矛盾することに対して、一枚物は常に鑑賞ができるという点から、収集を開始されたそうです。

著者は、最初はパリの古書店や古美術商で購入していたのですが、やがて全ての一級品が集まるロンドンの専門古書店やオークションへと舞台を移していきます。

実際、著者が所有していた一枚が後にバチカン図書館所蔵の一冊の中のものであったことが分かり、まさにコレクター冥利に尽きるような話がドンドン出てきます。うがった見方をしたら、自慢ではあるんでしょうが、著者の人柄が決してそんなふうに感じられず、素直に「凄いなあ~」「羨ましいなあ~」と思ってしまいます。と同時に、それにまつわる故事来歴が大変興味深いんですよ~。

一流の美術品なら、当然それ相応の履歴を有しています。誰が誰に依頼して作成され、相続や売買、贈与などを通じて所有者が移転し、オークションなどを経ていれば、その時の作品状態や価格などの情報も含めてついてまわるものですが、本書で挙がったその一枚も調査してみると、しっかりとどのような経緯で流出して、著者の手に届くに至ったかも判明してきます。実に、実に興味深いです(笑顔)。

本書の中では、他にも面白い記述がたくさん出てきて、お好きな人にはたまらないものがあります。例えば、慶応大学が購入したグーテンベルクの42行聖書ですが、あれをオークションで落札した丸善は7億円を払ったそうですが、所有者が金策に困っていて通常の半額程度で落札できたとか、私の知らない世界なので実に楽しい♪

あと、私が先日購入した時祷書「The Hours of Catherine of Cleves」を初め、非常にたくさんの中世写本を所有しているモーガン・ライブラリーですが、本来は他の美術品と一緒にメトロポリタン・ミュージアムに寄贈したんだそうです。しかし、当時は彩飾写本への評価が低く、受け入れを断られたんだとか。その為、写本だけを別に保存する為に作られたのがモーガン・ライブラリーらしいのです。

メトロポリタンももったいないことしてますね。もっともそのおかげか、そのせいか、モーガン・ライブラリーにはあれだけの写本が揃っているんだそうです。何故、あそこのあれだけの写本があるのか疑問に思っていたのでおかげで謎が氷解しました。

他にも研究者しか閲覧できないような写本を豊富な人脈を利用したり、専攻分野が入っていないがprofessorと大学名だけ入った身分証明書を見せて(研究者と誤解を期待しつつ)閲覧したりと、実に羨ましいのですが、まさにマニアならではの情熱がほとばしる行動をされていたりします。

いろいろな意味でオタクの鏡のような方ですよ、ホント! 後半の3章分ぐらいはつまらなかったですが、それ以外は、為になることや面白い情報が詰まっています。

写本好きなら、是非、読んでおいてもいいかも。日本人でこんなことをしている人がいるとは思いませんでした。いやあ~、私も自分の写本から作ったオリジナルテレカが欲しい♪ 著者は、名刺代わりに持ち歩いていたそうですが、きっと凄いインパクトあるんでょうね(笑顔)。

内容はGOODです。ただ、写本の絵は、口絵だけで後はほとんどありません。撮影が難しかったのかもしれませんが、その点は大いに残念でした。
【目次】
彩飾写本とパリの古本屋巡り
五六〇年前の本
魔がさした教授と誤解した教授と間違えた教授
十四世紀の聖書の一葉
彩飾写本の生まれ故郷
ケンブリッジのパーカー図書館
ベラルド君
彩飾写本の旅
カタルーニャの中世美術
アメリカにおける美術の思い出
パリのカルチャーショック
フランドル絵画が辿った数奇な運命
青木繁の少女の「おもかげ」
中世彩飾写本の世界(amazonリンク)

関連ブログ
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「中世ヨーロッパの書物」箕輪 成男 出版ニュース社
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
「本の歴史」ブリュノ ブラセル 創元社
プランタン=モレトゥス博物館展カタログ
「図説 ケルトの歴史」鶴岡 真弓,村松 一男 河出書房新社
「コーデックス」レヴ グロスマン ソニーマガジンズ
ヴァチカン教皇庁図書館、古文書をデジタル解析する共同研究で調印
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2007年08月24日

「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会

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「ヨーロッパのキリスト教美術」を読んで以来、いつかは読もうと思っていました。つ~か、読まなきゃ駄目だと心に決めてはいましたが、ようやく1冊が読了できました。

やっぱり中世図像学の泰斗、つ~か大御所の著書は、内容が違います。一冊5千円以上と値段もかなりのもんですが、少なくとも中世美術が好きだとか、ゴシック建築に興味がある、なんていうならば、ipod買わずにこちらを買いなさい!! 値段の何十倍もの価値があることを保証致します。最低でも図書館で借り出して、読みましょう。

心の底から言いますが、中世のありとあらゆる写本やステンドグラス、彫刻を見たときの、見方が全然異なってきます。今までの見方がいかに即物的なもので、本質を分かっていなかったのか(涙)と頭をグラグラ揺るがされるくらい、それほどの衝撃があると思います。

ルールを知らないでゲームに参加しても、ゲームの面白さは一生見ていても分からない、そんな当たり前のことなんです。麻雀で役を知らずして、将棋で駒の動かし方を知らずして、勝負はできません。本書は、何よりも自分が参加する為のルールを教えてくれるのです。

要約版である「ヨーロッパのキリスト教美術」、これはこれで本当に素晴らしかったのですが、そこでは十分に言い尽くされていないことがどれほどあったのか、本書を読むとそのことに気付いて愕然とします。

もしかしたら、要約版にも書かれているのかもしれませんが、そちらでは気付かず、本書で初めて知った事が実にたくさんありました。

~中世芸術は象徴的言語であり、そこに描かれる聖書の世界は字義的に理解されるのみにあらず、歴史的意味、寓意的意味、教訓的意味、神秘的意味の4つの意味を有しているので、それを踏まえて象徴的に表現される。~

こういった事が続々と出てくるのです。これらの説明は、具体的な事例と解説を受けてようやく納得に至るのですが、本書ではたくさんの図像が入っており、それを明示しつつ説明されています。

そのスタイルは本来とっても分かり易くて良いはずなのですが・・・、紙面の関係かいまいち図が小さい。説明があっても、図が小さくてよく分からず、効果的な説明として成功していない点は悲しいです。あと、誤植がいくつかあり、図の番号が他の番号と変わってしまっているところがありました。これも残念。

しかし、そんな細かい事はどうでもいいほど、素晴らしい『名著』です!! 

16世紀の宗教改革時、プロテスタントが印刷したパンフに盛んに教義を説明した図が入っていたのは、何故でしょうか? 無知な民衆に、分かり易く主張や教義を教える為のおまけ的な存在だと思っていましたが、とんでもありません。分かり易さは従たる目的で、主たる目的は、教義そのものを図で示していたのです。

何故なら、それ以前の中世では、聖書はそのまま読んでも本当の意味が理解できない難しいものであり、表面的な字義の裏に神が準備している寓意を理解できるのは教会に他ならなかったんだそうです。つまり、教会による解釈によって初めて聖書は、理解しうる存在になったわけです。

宗教改革で教会による解釈を否定してしまった以上、聖書を読んで真の理解をするには、それがどう解釈されるか、新しい『解釈』が絶対に必要となり、図がまさにその解釈を示しているんだそうです。

う~ん、そんな意味があったんですね。印刷革命後、プロテスタントが配布したパンフの図版の重要性がようやく分かりました。本書のおかげです。こんな感じで、目からうろこ~がたくさんあります。後で抜き書きメモを作成するつもりですが、これ読んでない人はもぐりでしょう(自分のことは棚にあげておく)。

写本関係の本を読んでいて疑問に思っていた、図なども本書で謎が氷解します。本質から『中世』を理解したい方には、絶対的にお薦めです。他の本を読んでもなかなか得られない視点が得られること間違いなしです(満面の笑み)。
【目次】
<上巻>
序論
第1の書 『自然の鏡』
第2の書 『学問の鏡』
第3の書 『道徳の鏡』
第4の書 『歴史の鏡』
 第1章 旧約聖書
 第2章 福音書
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<下巻>
 第3章 旧約聖書と新約聖書に関連するさまざまな伝承
 第4章 聖人と黄金伝説
 第5章 古典古代―世俗の歴史
 第6章 世の終わり―「黙示録―「最後の審判」
 結論

※点線以降は下巻の内容になります。
なお、下巻についはこちらを参照下さい。ゴシックの図像学〈上〉 (中世の図像体系)(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)~メモ
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ヨーロッパのキリスト教美術(下)―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店
「ルターの首引き猫」森田安一 山川出版社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
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2007年07月31日

「黒い聖母」の謎に迫る 東北芸工大でシンポジウム

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「黒い聖母」の謎に迫る 東北芸工大でシンポジウム
【河北新報より、以下転載】
東北芸工大文化財保存修復研究センターは、約100年前にフランスの修道院から鶴岡カトリック教会(山形県鶴岡市)に寄贈された「黒い聖母像」の修復作業に取り組んでいる。その一環として14日、宗教、美術史、修復の専門家らが集まって同大でシンポジウムを開催。謎に満ちた聖母像の魅力を解き明かす。

 黒い聖母像は19世紀末から20世紀初めにかけ、鶴岡カトリック教会建設に尽力したダリベル神父の故郷近くにあるフランス・ノルマンディー州のデリブランド修道院から寄贈された。木彫りで、高さは約160センチ。腕に抱いているキリストとともに肌が黒いのが特徴だ。

 ひび割れができ、汚れやカビが付着するなど劣化が進んだことから、教会が同センターに修復を依頼した。同センターは本年度、美術史・文化財保存修復学科の藤原徹教授を中心に修復に取り組む。

 肌が黒い聖母像はフランスでは山岳部などに数多く見られ、「お助けの聖母」として知られる。しかし、国内にあるのは、この一体だけ。顔が黒い理由について(1)土俗の宗教とキリスト教が交ざった(2)エルサレム方面から来たジプシーの守り神だった(3)献灯のすすによる変色―などの諸説があり、謎が多い。

 シンポジウムでは鶴岡カトリック教会司祭の本間研二氏が聖母像の由来を報告した後、黒い聖母像の研究を続けているお茶の水女子大名誉教授の柳宗玄氏、ルーブル美術館所蔵の作品の修復を手掛けているフランスの修復家アニエス・カシオ氏が講演する。

 総合司会を務める藤原教授は「修復作業が必要な彫刻作品は人間でいえば患者と同じ。何を表現し、どんな歴史を持っているかが分からなければ、良い治療はできない。シンポジウムの議論を修復に生かしたい」と話している。
 シンポジウムは正午から。入場無料。連絡先は東北芸工大文化財保存修復研究センター023(627)2204。
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聖母像の保存・修復シンポジウム
海を渡った黒い聖母~フランスから鶴岡へ~
鶴岡カトリック教会には、1903(明治36)年に北フランスのデリヴランド修道院から寄贈された「黒い聖母」像が安置され、100年にわたって人びとの祈りを受けてきました。この木彫(彩色)像は劣化がすすみ、このたび本学の文化財保存修復研究センターに修復が依頼されました。ヨーロッパでは、肌の黒い聖母像の伝統が、中世以来耐えることなく、今日でも各地でその像に崇敬を捧げようとする巡礼があとをたちません。
我が国では他に例を見ない鶴岡の「黒い聖母」像をめぐって、宗教・美術史・保存・修復の各方面から、その謎と魅力を説き明かします。

日時:2007年7月14日(土)12:00~16:30
場所:東北芸術工科大学 本館4階410講義室
入場料:無料
主催:東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター

内容:
報告1 鶴岡カトリック教会の設立と黒い聖母像の招来(12:00~12:30)
    本間研二(鶴岡カトリック教会司祭)

報告2 鶴岡=デリヴランドの黒い聖母像(12:30~13:00)
    安發和彰(本学 美術史・文化財保存修復学科准教授)

聖母像の見学(13:00~14:00)
本学文化財保存修復研究センターにて/休憩も含む

講演1 「黒い聖母」の謎と系譜(14:00~15:15)
    柳宗玄(お茶の水女子大学名誉教授)

講演2 フランスにおける木彫彩色の技法と修復(15:15~16:30)
    アニエス・カシオ(修復家・トゥール高等美術大学)(仏語通訳付)

総合司会と見学案内:藤原徹(美術史・文化財保存修復学科教授、文化財保存修復研究センター兼任)

申込方法:参加者氏名・所属を明記して、下記へお申込ください
お問合せ:東北芸術工科大学 文化財保存修復研究センター
〒990-9530 山形県山形市上桜田3-4-5
E-mail:iccp@aga.tuad.ac.jp/TEL:023-627-2204/FAX:023-627-2303
あの柳宗玄氏による黒い聖母に関する講演会だって、うわあ~是非聞きに行きたかった! でも、ちょっと山形までは遠いよなあ~。夏休み中なら、予定合わせて行っても良かったのに・・・なんとも残念!

ニュースで既に終わってしまったのを知った時は、悲しかったです。

せめて講演会の内容ぐらい、ネット上に公開してくれないのかな? それぐらいは期待したいところです。youtubeで公開でもしてくれればいいのに・・・。

関連ブログ
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
「黒い聖母」柳 宗玄 福武書店
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2007年07月25日

「ベリー公のいとも美しき時祷書」フランソワ・ベスフルグ、エバーハルト・ケーニヒ 岩波書店

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これも国会図書館で見たものです。うっ、買えないもん。こんなの・・・。買った後に、しまっとく場所がなくて更に困惑する姿が目に浮かぶ以上、金銭的問題以上に手が出せない代物です。

でもね、こちらは約1万5千円で先ほどの写本の2万4千円よりは手が出るかも? まだ買えそうな値段に近づくけど、問題は中身ですよねぇ~。

実際に見てみると、残念ながら、やっぱり先ほどの写本と同様です。両見開き2頁の中に、同一写本の同一頁の図版が3つ入る構成。
・文章の先頭修飾文字
・頁全体
・頁の中の主題部分

この3つが重複して入っているんですよ~。このレイアウトというか構成が写本の世界では一般的なのでしょうか??? なんか個人的には納得がいかない。

本書の場合は、トリノの時祷書が紛失していてモノクロ写真によるものの為、モノクロの頁も多い。おまけに白紙の頁もあるし、なんかもったいないよ~(涙)。

何でも中身を詰め込めばいいというものではありませんが、私には高い値段を出してまで欲しいと思えません。それほどの価値ないと思うんだけどなあ~。 まあ、私が貧乏性なのかもしれませんが、お金と書庫に余裕のある方以外にはお薦めしませんし、できません。

なんか違うんだよねぇ~。本当に美しい宝物のような時祷書を期待してると裏切られると思います。くれぐれも実物を確認してから、購入したほうがいいですよ~。経費でないと買えない本です。自腹を切りたいとは思えないなあ~。

ただ、改めて時祷書っていっぱいあることを知りました。美しいものもあるし、それほどでもないのも結構ありますね。
【目次】
いつも美しき聖母時祷書
トリノの時祷書
ルーブルの時祷書
トリノ=ミラノの時祷書
ベリー公のいとも美しき時祷書(amazonリンク)

関連ブログ
「ベリー侯の豪華時祷書」レイモン カザル (著)、木島俊介(翻訳) 中央公論社
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「美しき時祷書の世界」木島俊介 中央公論社
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
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「ベリー侯の豪華時祷書」レイモン カザル (著)、木島俊介(翻訳) 中央公論社

普通のところではなかなか見れないので国会図書館に行った時に見たのですが・・・。

正直、期待していたほどのものではなかった。定価で2万4千円。どうしても欲しけりゃ買うけどさ。それだけの価値があるのか、確かめてみたいという気持ちで時祷書拝みに行ってきたのです。

確かに並みでない大型本ですが、これだけの大きさと高価な装丁と高価な紙を使いながら、図版にどうしても納得がいかない。同じ頁を全体で写したり、トリミングして拡大したりと結局、同じ図版を3回も載せているのって無駄としか思えないんですが・・・。

これだけ大きな本です。写本の頁全体をそのまま1頁にしただけでは不十分でしょうか? 私のような浅学のものには、それだけで十分だし、細かいところが見たけりゃ、繊細なつぶれない印刷しておいてルーペでもなんでも使えばいいだけだと思うんですけどねぇ~。

私がこんなことを言うのには理由があります。だって、同じ頁(の部分)を3回も使っているところがある反面、1頁に3~4枚の図版が入っている頁があるんだ。小さくぎゅっと押し込まれた頁。

だったら、重複して載せてる頁を削って、押し込まれた図版を一枚づつ載せればいいのに・・・と思わないではいられません。私には、このレイアウトや編集意図が分かりません。

どんな人が本書を欲しがると思っているんでしょうか? マーケティングのターゲットが一部の特殊な学者だけ(or 図書館)なのでしょうか? 普通の人だったら、こんなレイアウト許さないと思うのですが・・・。もっとも、研究者だったら、こんな解説では意味ないだろうし・・・疑問?

実際、書かれている解説は、たいしたことありません。時間的な制約があり、解説はほとんど読まずに図版だけ見てましたが、少しだけ読んだところもやっぱりたいしたことありませんでした。

もう絶版みたいですし、誰も買わないでしょうが、絶対にお薦めしません。これを買うならば、本書の翻訳者が出している「美しき時祷書の世界」を買いましょう。絶版だけど、安く手に入るなら絶対にこちらが上です。コストパフォーマンスもいいし、十分に綺麗です。

余談ですが、「美しき時祷書の世界」はハードカバーですが、これとほぼ同じ内容で同じタイトルで、先行して特別号の雑誌形式で出ているものがあります。なんでそんなのがあるかというと、元々雑誌の特別号として出したのが大いに売れたので、それをハードカバーの本として出したというのが真相のようです。

ちなみに私がそのことを知ったのは、非常に安くこの本が手に入ったので喜んでいたら、手元に届いたらハードカバーでないのでビックリ!!
逆にハードカバーの方(近所の図書館にあり)を調べたら、増刊号のものに加筆修正して本にしましたと書いてありました(←読んだけど気付いてなかった私)。

まあ、中身は比較してもどこが変わったか分からないぐらいなのでOKです。紙質もさほど変わらず綺麗なのですが、ハードカバーでないので角とか折れたりしないかだけちょっと心配です。まあ、ホントに余談でした。

さらに余談ついでに。
国会図書館内には、スキャナーとかデジカメの持ち込みは禁止なので本書の写真も撮れませんでした。どんな具合に重複しているか、ブログにも載せたかったけどね。一度、見れば十分です。手元に置いていつも見たいと思うような本ではありませんでした。

そうそうくどいけど、更に余談。
ベリー公の時祷書で、現在入手可能で安くて綺麗な印刷なら、「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」をお薦めします。洋書だけど、新品が2千円以下で買えたよ~。最近、手元に時祷書や写本の本が溜まりつつあり、嬉しいけど、置き場所に困る日々。

本書と同時に眺めていた写本の書評はこちら。
「ベリー公のいとも美しき時祷書」フランソワ・ベスフルグ、エバーハルト・ケーニヒ 岩波書店
【目次】
カレンダー
占星学的人体
福音書抜粋
聖母への祈祷
楽園を追われるアダムとエヴァ
聖母への時祷
東方三博士(出会い・礼拝)
聖母マリヤのお潔め
悔悛詩篇
大連祷
十字架の時祷
聖霊の時祷
死者の聖務日課
地獄
週間の小聖務日課
ローマの図
受難の時祷
典礼暦年の時祷
『ベリー侯の豪華時祷書』の魅力(ウンベルト・エコ)
ベリー侯の豪華時祷書(amazonリンク)

関連ブログ
「ベリー公のいとも美しき時祷書」フランソワ・ベスフルグ、エバーハルト・ケーニヒ 岩波書店
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
ラベル:時祷書 中世 写本
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2007年07月16日

「The Golden Age: Manuscript Painting at the Time of Jean, Duke of Berry」Marcel Thomas George Braziller

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先日、アメリカのamazonから購入した洋書である。最近、すっかり写本好きになり、ついつい綺麗な写本を見ると、手元に欲しくてしょうがなない。いい本を見つけると、買わないでいられなくなるのは、病気かもしれない。

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不幸中の幸いなのは、お金がないのでせいぜいが数千円程度の印刷本を買うぐらいで、まかり間違って資産家の御曹司に生まれていたら、有り金はたいてオークションで本物を手に入れようとしたことでしょう(笑)。

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さて、本書はたくさんの中世写本の中から、綺麗な写本の頁(フォリオ)をセレクトした編集物である。一冊の写本を全て紹介しているのとは違い、写本全体を知る楽しみがなくなり、少し残念なところもあるが、一冊の本で数多くの写本を眺める楽しみが味わえるのでこれはこれでヨシだと思う!

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版型がかなり大きく縦約30センチに横21センチで119頁。そのうちカラー図版は40頁を占める。カラー図版は丸々1頁を使って、身開きの対面頁がその解説になっている。その他、モノクロ図版もいくつか入っている。

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元々はフランス語で出されたものを英語に翻訳したものだが、印刷はスイスになっている。図版がとにかく大きく綺麗。

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解説は、図版そのものではなく、その図版の属する写本全体に関するものであり、個々の図版の象徴する意味を理解しながら、写本を楽しむというのには向いていない。その点は少々残念だ。

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私は、写本全般に関する解説は、読み飛ばしてカラー図版を見ながら、気に入った頁の解説を拾い読みしている感じでまだ、きちんと全部を読んでいないが、この本はそういう読み方でいいように思う。

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あくまでも綺麗な写本を眺めるスタンスでしょう。ちなみにこの本を出している出版社は先日の時祷書と同じGeorge Braziller社です。ここって結構いいの出すね。この出版社が出す本に注目していこうっと!

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論より証拠で、綺麗な写本の頁を幾つか紹介してますが、これらが入ってます。

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そうそうこの本ですが、日本のamazonでも扱ってました。ただ、ペーパーバッグだけみたい。ハードカバーはないみたいです。一応、下にリンクを貼っておきます。

The Golden Age: Manuscript Painting at the Time of Jean, Duke of Berry(amazonリンク):ハードカバー
The Golden Age: Manuscript Painting at the Time of Jean, Duke of Berry(amazonリンク):ペーバーバッグ
【目次】
ACKNOWLEDGMENTS
INTORDUCTION
SELECTED BIBLIOGRAPHY
LIST OD COLOR PLATES AND BLACK-AND-WHITE FIGURES
PLATES AND COMMENTARIES
関連ブログ
amazon.comより洋書(時祷書)が届いた
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
ラベル:洋書 写本 中世
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「フィレンツェ・美の謎空間」宮下孝晴 日本放送出版協会

1999年4月~6月にかけてNHKの人間講座として放映された番組のテキストです。何気に結構、昔って感じがしますが、当時リアルタイムにTV見ていた時に購入したものですが、先日部屋を掃除していて出てきたので読み直してみました。

一言で感想をいうと、頁数に比して実に内容があるテキストです。タイトルにフィレンツェという単語の入る本は、それこそ有象無象としてありますが、上っ面な観光ガイドレベルを乗り越えてもう少しだけ深く知りたいと思うと、なかなか適当な本が見つかりません。

その点で本書は、可能な限り分かり易くしながらも、作品をより深く理解する為に必要な芸術家自体に関する知識や製作技法などをきちんと教えてくれます。それと同時に、非常にバランスのとれた視点で極端な方向へ傾くのを抑制しつつ、解説してくれているので大変有り難いです。

いやあ~、何度か読み直しているはずなのに、今回読んでみた改めてそうなのかあ~と頷かされることも多く、やっぱり私の読みというか理解力は浅かったんだなあ~と気付かされるばかりです。さすがにTV番組のテキストということでもう無いのかもしれませんが、古書店かどっかで見かけたら手に取るだけの価値はきっとありますよ~。

紙がだいぶボロボロになってきてるので、今度スキャナーでとってPDFにでもしようかな?と考えている私です。面倒なんだよなあ~、う~む。

そうそう、この番組の反響がいかに凄かったかについて。
この書評を書くべく今、ネットを検索してたら、以下のサイトがありました。
フィレンツェ サンタ・クローチェ教会 壁画修復プロジェクト

この番組の講師であった宮下氏の下に、番組を見ていた方から2億円の寄付があり、壁画修復プロジェクトが生まれたそうです。いやあ~、日本にも篤志家がいるんですねぇ~。どこぞの保険会社みたいに、何の意味も無くゴッホの絵を買い、それを有料で日本で公開してどんな意味があるのだろう???(買ったうえで、フランスに寄付するくらいなら、立派ですが・・・) な~んて、ところばかりではないんですね。

小市民な私としては、大変嬉しいお話です。こういうのニュースでもっと流せばいいのに・・・。

まあ、とにかくそれだけ人に感銘を与えた番組だったのでしょう。もう一度再放送して欲しいなあ~と、ふと思ったりました。

そうそう、これ以外にも驚いたことが書かれていました。ちょっと前のニュースでレオナルド・ダビンチの未完の絵というのがあったのですが、要は「イタリア・フィレンツェの宮殿会議室に描かれたルネサンス時代の画家バサーリのフレスコ画の裏側に空洞があり、そこにレオナルドの絵があった」そうです。

そして、この件はずいぶん昔から話があったようで、実はこのテキスト内にも触れられています。当時は、まだ絵そのものが見つかってなかったはずですが、いやあ~まさか本当にあるとは思っていなかったのではないでしょうか? 日々、新しい事が発見されていくと考えると、実に楽しくなりますね♪
【目次】
第1回 壁画の裏に生きていた男 
 イタリアで最初のフレスコ画
第2回 斜光線が解き明かす謎
 フレスコ画の完成者ジョット
第3回 ルネサンス壁画の出発点
 マゾリーノとマザッチョ
第4回 ピサの墓地炎上
 出現したシノピア
第5回 視線を操る画家
 パオロ・ウッチェロの遠近法
第6回 建築空間に生きる壁画
 画像フラ・アンジェリコ
第7回 「聖十字架物語」の演出
 ピエロ・デッラ・フランチェスカ
第8回 ロレンツォ豪華王時代の壁画
 ボッティチェリとギルランダイオ
第9回 イタリア・ルネサンスの三巨匠
 レオナルド、ミケランジェロ、ラッファエロ
第10回 新たなる壁画法の登場
 ヴァザーリのフレスコ画論
第11回 病んだ壁画の修復と保存
 最先端技術と倫理
第12回 現代に生きるフレスコ画の伝統
 アンニゴーニの世界
フィレンツェ・美の謎空間―フレスコ壁画への旅(amazonリンク)

関連ブログ
レオナルド・ダビンチの未完の絵
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2007年07月01日

「ヨーロッパのキリスト教美術(下)―12世紀から18世紀まで」エミール・マール 岩波書店

「ヨーロッパのキリスト教美術(上)」の続き。

上巻を読んですぐに下巻も読んだのだが、書評等は書かないでいた。今週、改めて上下巻2冊を読み直したので下巻について感想を書いてみる。あわせて、この本の目次を見ただけで好きな方なら、ある程度内容の想像がつき、読まずにはいられなくなると思うし、自分の役にも立つので以下、目次を書き出しておく。
【上巻目次】 

?T十二世紀の宗教美術
1その起源
2典礼劇の影響
3サン・ドゥニおよびスゲリウスの影響
4美術と聖人たち
5巡礼、イタリアの道
6巡礼、フランスおよびスペインの道
7世界と自然
8図像を表した十二世紀の聖堂入口

?U十三世紀の宗教美術
1中世美術の象徴性
2研究の方法―ボーヴェのヴィンケンティウスの四つの「鑑」
3自然の鑑
4学問の鑑
5道徳の鑑
6歴史の鑑
7結論
【下巻目次】・・・本書の目次

?V中世末期の宗教美術
1基本的性格
 イタリア美術の影響
 宗教劇の影響
2中世末期の美術は新しい感情―激情的なもの―を表現する
 ゴルゴタの丘に座すキリスト
 聖母の受難
 聖墓
3中世末期の美術は新しい感情―人間的な優しさ―を表現する
 聖母子
4中世末期の美術において、諸聖人は新たな姿を取って登場する
 聖ロック
 聖母
5新しい象徴主義
 巫女(シビラ)
 ルアンのサン・ヴァンサン聖堂の絵ガラス「凱旋車」
6美術と人間の運命
 美術における死の登場
 死の舞踏
 臨終の時―「往生の術 アルス・モリエンディ」
 墓
 ヴァンセンヌの絵ガラスとデューラーの「黙示録」
 「最後の審判」と宗教劇の影響

?Wトレント公会議
1宗教論争と美術
 美術は聖母を讃美する
 聖ペトロの座
 美術は秘蹟を擁護する
 聖カルロ・ボルローメオ
 聖ホアン・デ・ディオス
2殉教
3幻視と法悦
 天使に矢を射込まれる聖女テレサの法悦
 フランス、イタリア、スペインで法悦はどのように表現されたか
4死
5新しい図像
 「お告げ」
 「キリストの降誕」
 「笞打たれるキリスト」
6新しい信心
 守護天使の存続
7過去の存続
8アレゴリー
9各修道会の聖堂装飾
10結論
中世は確かに千年という長期に渡る期間であり、その盛期から末期にかけての変化は当然のことであるとは、頭で理解していながら、かくも大いなる変化を遂げていたのかと、本書はまさに蒙昧の眼を開かされるような書物です。

その点を著者エミール・マールはこう表現する:
「十三世紀の晴朗な美術の後に十四、十五世紀の情熱的で悲痛な美術が続く。かつての神学者たち、まさしく教義にはぐくまれた荘重な人々の後を、涙の才能に恵まれた詩人であり、心に対して全能の力をもつ霊感を授かった人々、アシージの聖フランチェスコの弟子たちが受け継いだのである。」

聖人崇拝における表現や「死の舞踏」など、具体例をモノクロながら図版で示して的確な説明をしていくのでとても理解しやすいうえに、著者自身の思いのこもった解説は読者にも強く訴えるものがあります。

採り上げるトピックが多いし、本書がもともとが(著者自身による)
大部な本の要約である制限から、個々のテーマではもっと詳しい本もあり、量だけでは負ける。しかし、他の本を読んだ限りでは気付くことができなかったより深い次元からの図版の意図など、本書だからこそ初めて知ることも多い。

まあ、本書は基本中の基本の部類に入るようですし、中世に関心があるなら、目を通しておきたい本と言えるでしょう。読むたびに気付かされることがある本とも言えます。

今、同時進行で黄金伝説も再読しているところなので、いい本はやはり精読すべきことを強く実感しています。そして、今年中に本書の元である「ロマネスクの図像学 上下」「ゴシックの図像学 上下」「中世末期の図像学 上下」計6冊を読破することを目標にしたいですね! 金額もはることながら、ちゃんと読破できるか否かになかなか自信が持てません・・・? 面白いんだけど、分量の多さにひるむ軟弱な私です。

そうそう、本書読んで気付いたことをもう一つ。宗教改革の意義について。従来、大聖堂などの石やステンドグラスに刻まれたものは、宗教改革によって紙へと表現場所を移すと共に、これまであえて意識されず、それ故表現される機会の少なかった、宗教改革の非難の対象となった主題(聖母、聖人、教皇の権威、秘蹟、死者への祈り等)がクローズアップされるようになったそうです。そして、それらを表現する為に美術も新たな価値を付け加えられるようになってきたそうです。

宗教改革をこういう契機として捉える見方は、実に面白いです。やっぱり6冊読まなきゃだなあ~。

ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで (下)(amazonリンク)

関連ブログ
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「中世の美術」黒江光彦 保育社
「中世の芸術」グザヴィエ・バラル イ・アルテ 白水社
「キリスト教図像学」マルセル・パコ 白水社
「ヨーロッパ中世美術講義」越 宏一 岩波書店
「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「屍体狩り」小池 寿子 白水社
「ヨーロッパの死者の書」竹下 節子 筑摩書房
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2007年06月07日

「ウィリアム・モリスとその仲間たち」岡田隆彦 岩崎美術社

うわあ~、うわあ~、ちょっと恥ずかしいかな?っていうか、かなり恥ずかしいのですが、実は本書を読むまでロセッティとモリスの間に、関係があるとは夢にも思いませんでした。完全に、別個の存在と認識していました。

あれほどロセッティ好きとか言いながら、こんなレベルだもんな。我ながら赤面以外の何物でもない。まさか一緒に活動してことがあったなんて・・・!

ラファエロ前派の絵って、基本的に私好みで画集や絵葉書集など持っているし、実際にあちこちの美術館で実物も見たけど、いやあ~私って物知らない奴だなあ~と心の底から再認識しちゃいましたよ。

それだけで本書は読む価値あったかも。本書の中では、モリスが考案した壁紙のデザインや、出版した本の装丁や頁、飾り文字が図版で紹介されています(・・・確か印刷博物館で見たような覚えが・・・)。図版だけで本書の半分を占め、作品の解説やモリスの行っていたアーツ・クラフト運動などの説明が残りを占めます。

そこそこ図版が入っているのは、嬉しいのですが、全てモノクロなのが残念。カラーもあると良かったんですけどね。あと、モリス関係の説明ですが、何も知らなかった私がコメントするのもおこがましいですが、率直な感想は、読んでいてあまり面白くはないです。モリス自体に、そもそもあまり関心がないせいもあるのですが、あまりに淡々とした記述でもっと熱い情熱的な要素があるはずなのですが、本書からはそれが伝わってきません。どんなもんでしょうかね?

本書は自由価格本として、だいぶ安くなっていたので買ったのですが、定価で買うのは、ちょっと・・・という気がします。特価書籍ルートでも流れていると思いますので、定価の半値以下で買えると思います。私は700円ぐらいで買ったかな。それでも、内容的にはイマイチだったけど。
【目次】
ウィリアム・モリスとその周辺
デザイン運動の母胎・ラファエル前派
新しい芸術と工芸の運動
モリスのデザインとその思想
ウィリアム・モリスとその仲間たち―アールヌーボーの源流(amazonリンク)

関連ブログ
「西洋の書物工房」貴田庄 芳賀書店
「美しい書物の話」アラン・G. トマス 晶文社
ラベル:書評 アート
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2007年06月06日

「エクラン世界の美術 第13巻 イギリス」主婦の友社

定番系の美術全集でイギリスの美術館から、誰でもが知っている作品を選んで紹介したもの。もうベタっちゅうくらいのベタな作品が選ばれています。

個々の作品の解説はどうでもいいレベル。但し、この全集は32㎝×24㎝ぐらいでかなり大判で、写真も思いっきり1頁丸々使っているので大変大きかったりする。普通なら邪魔なのですが・・・。

実はこれ、去年の神田の古書市で200円で購入した本。結構、私の好きな作品があったので、気に入った絵だけバラして、ポスターにしようと思って購入したのでした。これだけの大きさならポスターとしても十分だし、ポスター買うより安いしね。自宅のプリンターでは、ここまで大きな印刷できないし。

「読書するマグダラのマリア」ファン・デル・ヴェイデン

「読書するマグダラのマリア」ファン・デル・ヴェイデン

「受胎告知」カルロ・クリヴェッリ

「受胎告知」カルロ・クリヴェッリ

「オフィーリア」ミレイ

「オフィーリア」ミレイ

「ヴィーナスとキューピッド」クラナッハ

「ヴィーナスとキューピッド」クラナッハ

「アルノルフィーニ夫妻の肖像」ヤン・ファン・エイク

「アルノルフィーニ夫妻の肖像」ヤン・ファン・エイク

「神秘の降誕」サンドロ・ボッティチェリ

「神秘の降誕」サンドロ・ボッティチェリ

うん、この幾つかに裏紙貼って部屋に飾ろうっと! 残りのものは、捨てちゃおうっと。あれっ、これって以前読んだ「書物の敵」って本に書いてあったパターン。気に入った分だけとっておいて、本を駄目にするとかという・・・何気に本の敵だったんだな、私って。う~む・・・。

まあ、それは別にして本書では古寺も紹介していて、それにはカンタベリ大聖堂等、ゴシック建築やロマネスク建築なども含まれています。写真はいいのもあるので、これも切り取っておくか。

しかし、部屋が狭いなあ~。
【目次】
ナショナル・ギャラリー、テート・ギャラリーの名宝50
ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館
イギリスの古寺と史跡めぐり
エクラン世界の美術 第13巻イギリス~ナショナル・ギャラリーと名画名宝のコレクション(amazonリンク)
ラベル:アート 書評
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2007年06月05日

「Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry」Jean Dufournet  

ベリー公の時祷書

日本語訳だと「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」だったかな? なんど聞いても似たような題名の本があってこんがらがってしまうのだが、その時には、私がいつもお世話になっているlapisさんのブログの記事で確認することをお薦めします。

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さて実は先日、中央公論社から出ている「美しき時祷書の世界―ヨーロッパ中世の四季」(←当初、雑誌の特集として出したものを増補してハードカバーにしたもの)を入手したのですが、残念ながら私が手に入れたのは特集として出たものだったのでちょっと残念に思っていました。ハードカバーは、プレミアついてる感じですね。図版に関しては、ほとんど一緒なのでとりあえず、雑誌の方で我慢しましたが。

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そんな時に、本屋で洋書のバーゲンセールをやっていて、いきなり本書が目に飛び込んできたので速攻購入しちゃいました。

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内容はというと、月毎の美しい写本の挿絵の全体図が最初にあり、更にその細部についての拡大図がいくつかあり、それぞれについて図の内容を説明した文章がついています。基本構成としては、右側全面に図で、左側にその図についての説明という形で両面見開きになっています。図を見ながらの解説ですので、分かり易いですね。

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また全体がかなり大きいので、何よりも絵が大きくて綺麗です。発色等もそこそこいいと思います。あえて欠点を挙げると、図版が説明用の拡大図になると、どうしても絵が雑っぽく見えてしまうことでしょうか?その点は致しかたないのかもしれませんが、少しだけ残念な感じがします。

私は2000円以下で購入したので、これなら十分に満足です。池袋の西武リブロでまだ売ってたと思います。お好きな方は、是非どうぞ!
 
【余談】
私が買った本は80頁でamazonのものと一緒ですが、出版社がHACKBERRY PRESSで異なっており、ISBNコードも異なっていて、印刷はイタリアになってました。同じ内容でライセンス等を供与して多数の出版社で出している本なのかもしれません?

Les Tres Riches Heures Du Duc De Berry(amazonリンク)

関連サイト
雄松堂のファクシミリ版「ベリー公の美わしき時祷書」のサイト

関連ブログ
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller
「世界名画の謎」ロバート・カミング著 ゆまに書房
「美しい書物の話」アラン・G. トマス 晶文社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社
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2007年04月25日

「The Hours of Catherine of Cleves」John Plummer George Braziller

The Hours of Catherine of Cleves:私の購入した本

Hours of Catherine of Cleves 獲得までの経緯

いろいろと苦労して購入したんですが(40年以上前の初版ですし)、その辺の経緯は上記をご覧下さい。やっと読了しました。

経緯のところで触れたのと一部重複しますが、本書「カトリーヌ・ド・クレーヴの時祷書」について。
全部で360頁中、160頁に写真のような彩色図版が入っていて右が図版で左が図版の内容説明という見開き対面構成になっています。15世紀の手彩色写本による時祷書を元に、簡潔で適切な解説と非常に美しい絵が印刷されています。初版は1966年で、その後数回版を重ねています。ハードカバーとペーパーバックがあり、革装丁版もあります。
十字架降下

具体的な内容について。
「時祷書」とは、キリスト教の平信徒などが日常のキリスト教の礼拝用に用いる絵入り聖書で、多くは貴族の女性用に作成され、豪華で貴重な貴金属をおしげもなく使い、一種の宝物としても扱われたもの。従って、本書でもたくさんのキリスト教的図像がこれでもかというぐらいに表現されています。

隅の4つの円が有名な四福音書を表しています。

新約聖書が基本ですが、それのみに限定されること無く、旧約聖書や黄金伝説や外典由来の図像が頻出します。アトリビュートや黄金伝説などの知識もあればあるほど、面白いはず。

この白いものがマナです。

それに、中心に描かれる図案とそれを取り囲む枠及び帯状の枠内に描かれる図案との関連が面白い。旧約聖書と新約聖書を対比させた予型論やアナロジーなど見ていて飽きないし、絵を見てコメントを読んでいくだけで自然と中世のイコノグラフィー(図像学)が理解できるようになります。

シバの女王が十字架になる予定の木の橋を渡らないようにしているところ

勿論、何も知らなくても絵を見ているだけでも面白いのですが、その絵の説明を読んだ時、理解できるだけのものを持っていると、絵だけを見る時の何十倍も楽しめます。これ、絶対!!

アダムとイブ

例えば、プレッツ(あのプレッツね)とビスケットで囲まれたデザインとか、セバスティアンなどは、弓矢で囲まれている。
地獄へ通じる口なんか、ずいぶん斬新なデザインじゃないかなあ~。他には、ワイン絞り器に挟まれたイエス様が血を流して、それが絞り口にあるカリス(聖杯)に集まっている図もあります。これって凄くない? 確かに以前、中世彫刻でも同じ図案を見たことがあるけど、これはこれでかなりのインパクトがあります。

エッサイの木

とにかく絵だけを見たのでは、気付かないことやよく分からないことが本書の説明を見ると、おおって驚かされることが多々有ったりする。実に、実に楽しめる時祷書です。

Hours of Catherine of Cleves

ホント、NYのモーガン・ライブラリーまで実物を見に行きたくなりますよ。前から知っていたらなあ~、チェッ!

キリスト教図像に関心のある方、美しい写本好きな方、これは絶対に間違いないと思うのでお薦めします。日本のamazonでも扱えばいいのに・・・。在庫あるんだからさ。

【図像に関する補足】
十字架降下、減らない食べ物マナ、エッサイの木、アダムとイブ、シバの女王などが、ここに載せた図版です。本書にはこんな感じの頁が160頁あります。
イエス様の血を聖杯に集めてる絵は経緯の記事の図版です。

The Hours of Catherine of Cleves(amazonリンク)
Hours of Catherine of Cleves(amazonリンク)
日本のamazonでは、登録がおかしい?

関連サイト
The Morgan Library & Museum

関連ブログ
Hours of Catherine of Cleves 獲得までの経緯
紹介している図版が違うので、こちらもどうぞ!
「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社
黄金伝説 Golden Legend コロンビア百科事典による
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2007年04月22日

「聖書の名画を楽しく読む」井出洋一郎 中経出版

本当に全然基礎知識がない人が、西洋画を見たときにこれって何について書かれているのかなあ~?と思う疑問に答える初心者用鑑賞案内ってとこでしょうか。

実際の記述はQ&A式になっていて、若い女性と著者の対話形式をとっています。個人的には、分かったような分からないようなストレスの溜まる解説にも思えますが、本書がターゲットとしている層向きには、妥当なのかもしれません。

本文の文字が非常に大きく感じるのも、私は嫌いなのですが、これって読み易さへの配慮だと思います。その分、詳細な説明は削られていますが、著者自身が従来の分かる人しか分かるような、一般向きでない説明へアンチテーゼとして本書を書かれていますので是とすべきでしょう。

基本的には、西洋画に対して全く予備知識がない初心者を十分に意識しているという点は素直に評価すべきかもしれません。ただ、その延長線上で疑問というか不満に思ったのは、主題の説明などに使われる図版ですが、あまりにも小さい。数も少ない。初心者への説明を第一義的に考えるのならば、もっと分かり易い図版が絶対に必要に思えてなりません。大きな文字ばかりの解説で、初心者が分かるのかなあ~て思います。

まあ、私自身が初心者に毛が生えた程度ですが、もっと大きな図版で説明してもらえないとよく分からなかったです。他の人はどうなのだろう? 対話形式も親しみ易いのですが、ずばり言うとウザイ。子供じゃないんだから、大人が読むなら、簡潔で要を得た説明をつければ十分に思うのですが・・・。これも個人の好みの問題かもしれません。私はお薦めしませんけどね。

聖書の名画を楽しく読む カラー版(amazonリンク)
ラベル:書評 アート
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2007年04月17日

「世界ステンドグラス文化図鑑」ヴァージニア・チエッフォ・ラガン 東洋書林

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大判の本、写真がいっぱい、説明がいっぱい。でも、値段に比していうと決して買うだけの価値を見出せない。本書は昔の(実際は中世以降)ステンドグラスから近代ぐらいまでのものを中心に取り上げて多数の写真を載せて、個々の説明を施している。

でも写真は、はっきりと図像が見えるようにした為か、平板になってしまい、とってもつまらないものになってしまっている。photoshopで明るさとコントラストを上げて、シャープネスをきかすとこういうものによくなるのだけど、これではステンドグラスの素晴らしさが全く伝わらない。ちっとも美しくない。興醒めで悲しい限りです。

説明も個人的には中途半端で、もっと深いものを期待していると思いっきり裏切られる。値段にふさわしい内容とは思えない。非情に分厚いし、採り上げている作品は多いが、個人的には使えない本だった。ステンドグラスの写真を中心に目を通して、面白そうな部分を拾い読みだけしかしなかった。それでも退屈してしまうほど。う~ん・・・。

世界ステンドグラス文化図鑑(amazonリンク)

関連ブログ
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「ステンドグラスの天使たち」志田 政人 日貿出版社
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2007年04月12日

「ギュスターヴ・モロー」ギュスターヴ・モロー 八坂書房

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おおっと!これほどまでのものとは思いませんでした。か・な・り・オキニです、コレ!!

モロー自身が残した作品に関する説明を翻訳したもので、こういう内容の本だとは全然知りませんでした。うっ、危うく大切なものを見逃すところでした。これはなかなか貴重だと思います。モローファンなら、絶対に押さえておくべきマストアイテムかと。

モローの作品の図版と共に、モロー自身の言葉による作品の説明があるのってもう素晴らし過ぎです♪ カラー図版が多いのもポイント高し。更に、翻訳者による説明も過剰になり過ぎず、いい感じかと。

私も大・大・大好きであちこちで見たし、外国の旅行先でもモロー作品があることを知っていれば、ほとんど必ず見るようにしてきました。その為、ここで紹介されているかなりのものは実物で見たことのある作品も多く、一人で大いに喜んで巻末の掲載図版一覧で所蔵場所をチェックしながら、喜色満面で眺めておりました。

やっぱりモローはイイね♪ お金に余裕ができたら是非ともレゾネでも買いたいもんです。今は展覧会で購入した「出現」のポスターで我慢&我慢。

庭園のサロメ

本書を見ていた気付いたのですが、大好きなサロメ作品の一つに「庭園のサロメ」(個人蔵、上図)というのを見つけました。この作品は初めて知りました。こんなサロメもありなんですね。嬉しくなってしまいますね、ホント。

「ヘロデ王の前で踊るサロメ」

それ以外にもLAのアーマンド・ハマー美術館蔵という「ヘロデ王の前で踊るサロメ」。見慣れたサロメと細かいところで違っていて、これも見たことないので是非&是非見たいサロメです。

サロメに関するモローの説明を以下、引用してみます。
サロメ、それは永遠に女性的なるものの象徴である。軽やかに飛ぶ鳥だが多くの場合、それは不幸を告げ知らせる鳥だ。
彼女は花を掲げ持ち、漠然とながらも、たいていは不吉な理想を求めている。

 天才も聖人さえも足下に踏みつけにしつつ、彼女は歩む。彼女は舞うその神秘的な歩みは、死を目前に成し遂げられる。死は振り下ろされる剣を手にした死刑執行人の前で恍惚としつつも用心深いサロメの姿を絶えず窺っている。

 この女はいかがわしい好奇心から、名も無き理想と官能を追い求める者達に残された、その恐るべき未来像の象徴だ。首を切り落とされた聖人はまさに花々を敷き詰められた彼の輝かしい人生の終着点にいる。

 すべては神聖な至聖所の中で行われる。そこは精神が厳粛なるものに、崇高なるもの観念に捧げられる場所なのだ。
こんな感じでたくさんのモローの言葉による説明があるのです。モローが自らが癌であることを知ってから述べた言葉も載せられていますが、それは本書を読んで味わってみることをお薦めします。

そうそう知らなかったけど、国内にもモロー作品ってあるんですね。本書で紹介されていたのをメモ。

国立西洋美術館
 ・牢獄のサロメ 1873-76年頃
 ・ピエタ 1876年ごろ 
 ・聖チェチリア 1885-90年頃
岐阜県美術館
 ・ピエタ 1856年
 ・聖セバスティアヌスと天使 1876年 
横浜美術館
 ・岩の上の女神 1892年頃
大原美術館
 ・雅歌 1893年
ブリジストン美術館
 ・化粧 1885-90年頃
メナード美術館
 ・サロメの舞踏 1876年

この本では紹介されてないけど、西洋美術館にある「聖なる象」もモローの作品だったはず。滅多に展示されないけどね。あれは。国内で見たことのない作品も是非、見に行きたくなりました(笑顔)。
【目次】
1850-1863 独自のスタイルを求めて
1864-1875 サロンでの成功
1876-1883 サロメの画家
1884-1898 最愛の母と恋人の死

ギュスターヴ・モロー略年譜
主な参考文献
掲載図版一覧
モロー作品を所蔵する国内の主な美術館
ギュスターヴ・モロー―自作を語る画文集夢を集める人(amazonリンク)

関連ブログ
ギュスターヴ・モロー展 Bunkamura
聖チェチリア(モローの画像有り)
オルセー美術館展~東京都美術館(2月3日)
国立西洋美術館にあるマグダラのマリア
ラベル:アート 書評
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2007年04月03日

「グリーンマン」ウィリアム アンダーソン 河出書房新社

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植物の葉と人間が組み合わさったデザインである通称『グリーンマン』。本書はこのデザインが象徴するものを読み解くイコノロジー(図像解釈学)という話なのだが、イコノグラフィー(図像学:図が意図するものを把握する)まで達していないような気がしてなりません。

ただ&ただ、グリーンマンとおぼしき図像があるものを採り上げて紹介・勝手な推測しているだけで、自分の知識を広める役に立ちません。まず図像が直接的に意図している内容自体の説明がかなり適当で、一応は脚注で文献を示していてもいきなり著者自身の独自解釈を入れてるうえに、複数の図像を提示しつつもそれらがどのように関連するのかの論理的な説明がほとんどありません。

別に引用なら引用で明示したうえで著者自身の見解を表すとか、そういった基本的な姿勢がなくて主張がかなり混乱して記述されています。また著者独自の解釈なら、それはそれで良いと思うのですが、単なる類似性だけで論理的な説明や根拠となる文献等も示されないまま、いきなり結論的な見解を出されてもきっちり1分間思考停止してしまいます。「はあ~?なに言ってるの?」ってなカンジ。

およそ合理的ではなく、だらだらと列挙と引用と独断が続く文章には嫌気がさしてきます。

グリーンマンが異教的な要素を残したままキリスト教的美術に取り込まれたという一般的な見解に対し、著者は異教というよりも十分に取り込まれて一体化したうえで更に発展したというようなことを主張したいようなのですが、本書全体を通して、一貫した論理展開が見られません。エッセイとしても論外なカンジがしてなりません。

話はあちこちに飛ぶものの、それが最終的に著者の論旨に収束することがなく、かえって論点を分散するだけでいっこうに要領を得ません。これってヒドくないかなあ~。

第五章にいたっては、ゴシック期のグリーンマンとしてシャルトル大聖堂内の彫刻内のものがたくさん出てきて頁数も結構占めてるものの、全然意図不明です。もったいない。デザインの一次的な意味するものさえ、明確に特定できないままに解釈とか、歴史的な大きな意味で捉えようとしても論外でしょう。方法論の時点で致命的に欠陥有り。

個人的には絶対にお薦めしない本です。狙いは面白くてもねぇ~。ただ&ただ、たくさんの本を読みましたというレベル。それだったら、単なる引用とそれの整理だけでも十分に価値があるのに、無理して独自の解釈の真似事等した為に何の役にも立たないものに仕上がってるようです。実に、実にもったいない・・・。ちなみに図版もそれほど多いとは思いませんし。

これを読むなら、図像学の大家エミール・マール読みましょうね! パノフスキーは私には難しくて理解できませんが(涙)。
【目次】
プロローグ グリーンマン登場
第1章 グリーンマン狩り
第2章 古代のグリーンマン
第3章 暗黒時代のグリーンマン
第4章 ロマネスク期とゴシック初期のグリーンマン
第5章 ゴシック期のグリーンマンの凱旋
第6章 グリーンマン作品の謎
第7章 グリーンマンの再来と消滅
エピローグ グリーンマンはよみがえる
グリーンマン―ヨーロッパ史を生きぬいた森のシンボル(amazonリンク)

関連ブログ
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社ここでいう「葉人間」が「グリーンマン」のこと。
「キリスト教図像学」マルセル・パコ 白水社
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2007年03月13日

「ヨーロッパ中世美術講義」越 宏一 岩波書店

これも岩波市民セミナーでの講義を元にしたもの。図版の数は入っているものの小さいし、ほとんどがモノクロでよく分からず、実際には説明の役に立っていない。

また、解説自体が各種図版を元にして、それぞれの比較や影響などを個々の図版ごとに細かく説明するスタイルなので、不鮮明な図版でいくら文章で説明されても内容が理解できません。

おそらくその場でOHPなどで図示しながらの説明だとまた感想も変わってくるのかもしれませんが、本書だけで説明を理解するのは難しいし、そういった細かい点での配慮に欠けた本です。ただ、講義録をまとめたもの、そのレベルで終わってしまっているように思います。

図版ばかりが頻出するだけで、一番大切な本旨の部分が説明不足に感じられてなりません。勿論、私の理解力不足が原因かもしれませんが、この本だけ読んでも得る所はほとんどないように思います。これ読むなら、エミール・マールの本でも読んだ方がいいのではないでしょうか? 分からないなりにもパノフスキーの方がまだましではないかと・・・?
【目次】
第1講 中世美術の特質
第2講 中世絵画の様式的諸相と展開
第3講 中世彫刻の様式的展開
第4講 中世美術の図像学
ヨーロッパ中世美術講義(amazonリンク)

関連ブログ
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「中世の芸術」グザヴィエ・バラル イ・アルテ 白水社
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
ラベル:中世 アート
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2007年03月07日

プランタン=モレトゥス博物館展カタログ

プランタン=モレトゥス博物館展

上記が印刷博物館で開催されたプランタン=モレトゥス博物館展のカタログ(~「印刷革命がはじまった:グーテンベルクからプランタンへ」)です。表紙右と下の装飾など、ちょっと凝っていたりします。

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この図録は実に図版が多く、基本はカラー(現物がモノクロである場合が多いが)であり、実に美しいカタログになっている。値段は張るが、しっかりした作りであり、さすがは本家の印刷会社が力を入れているだけあると思わせるだけの出来になっています。

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図版もさることながら、個々の印刷物の説明もいいし、世界史的な視野から見て、全体を貫くプランタンという印刷業者が果たした役割の説明も実に充実していて本当に勉強になるし、印刷技術や書籍というものに関心のある人ならば、資料として是非持っておきたい本だと思います。展覧会のカタログですが、私的には十分に立派な本ですしね。

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お金があったら、是非、こういった本が欲しい!と切に願ってやみませんね。ホント!

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本書の内容には初めて聞くようなことも多く、メモとして別のところに引用しておきましたが、世の中というのはしたたかでないと生き残れないんだなあ~と思いました。

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最近、思うんですが、宗教改革というのは世界を形作る枠組みを変革するほどのものだったのですが、産業革命同様にそれを成立させる基礎的条件が揃って初めて成し遂げられてものだったんだなあ~と思います。

カトリック側の腐敗のみならず、都市の自立やそれに伴う人々の意識の変化、種々の変化を促進する情報伝達手段の成立・発達(=印刷革命)などね。

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直接行かないと買えないかと思いますが、印刷博物館に行く機会がある方。是非その目で確かめて気に入ったら、忘れずに購入しておきましょう♪ 多言語聖書など、写真で見ても感動するほどの出来映えです。

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【目次】
<序論>
印刷革命がはじまった:グーテンベルクからプランタンへ
 マインツからアントワープへ
 オフィシーナ・プランティニアの活字製造
 クリストフ・プランタンと挿絵職人

<図録>
第1部 出版のはじまり
 プランタン=モレトゥス家の系譜
 オフィシーナ・プランティニアーナと日本
 フェリペ2世とプランタン=モレトゥス

第2部 オフィシーナ・プランティニアーナの偉業
 ユマニスムー書物、コスモポリタニズム、書簡のネットワーク

第3部 同時代に生きた人々
 メルカトル、オルテリウス、ルーベンス

関連サイト
印刷博物館 公式サイト

関連ブログ
プランタン=モレトゥス博物館展カタログ~メモ
印刷革命がはじまった:印刷博物館企画展
「グーテンベルクの時代」ジョン マン 原書房
印刷革命がはじまった:印刷博物館企画展 2回目
ラベル:印刷 アート 書評
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2007年02月21日

「ゴシック美術」エリー・ランベール 美術出版社

ずいぶん前に購入して積んどいた本。ゴシックについて総括的に説明をしていて、オーソドックスなスタイルなんだけど、私には本書を読んで学ぶことは何にも無かった。そもそもだいぶ古い本で(もう40年ぐらい前?)古くても価値のある古典には、ならないだろうなあ~というレベルの本。

今までこの手の百科事典や美術全集系の本(ゴシックやロマネスクの部分)は何冊も読んでいるので、よほど特徴があるか、新しい研究成果でも入ってないと知っている説明の繰り返しなんだよねぇ~。ちぇっ!

本書がそもそもフランス語の本を一冊丸ごと翻訳したものの為、巻末の参考文献もほとんどフランス語のものばかり。読めないよ~、これでは。英語や日本語になっているものも今では結構あるはずなのだが、フランス語の文献名しかなく、また当時のものなので正直資料としても使えない。残念です。

まあ、参考までに詳しい目次を挙げておきます。
【目次】
Ⅰゴシック様式の一般的特質

Ⅱゴシック美術の歴史的発展
 ゴシック美術の時代
 フランス・ゴシック様式の展望
 ゴシック美術とフランスの歴史
 王権の強化とゴシック大聖堂美術の形成
 聖ルイからシャルル六世へ パリの文明とレイヨナン様式の美術 十五世紀 地方的アトリエの多様な活動とフランボワイヤン様式
 十六、十七世紀におけるゴシック美術の存続

Ⅲ大芸術としての建築
 ゴシック建築
 ゴシック建築の特質
 ゴシック建築の構造分析
 宗教建築 教会堂と修道院
 世俗建築と軍事建築

Ⅳ建築を補助する諸芸術
 彫刻
 ステンド・グラス
 タピストリ
 モザイクと陶製品
 家具類

Ⅴ小規模な工芸品
 線と色彩による諸芸術
 浮彫りによる諸芸術

Ⅵフランス諸地方の美術
 初期ゴシック様式の地方的形態
 ラング・ドッグ系地方の美術
 ゴシック末期の地方諸流派

Ⅶフランス以外の諸国におけるゴシック美術
ゴシック美術(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
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2007年02月12日

「日本絵巻大成7」小松 茂美 中央公論社

サブタイトルにあるように、餓鬼草紙、地獄草紙、病草紙、九相詩絵巻を扱った大判の画集タイプの本です。

今から30年前のものですので私が見た限りでは写真はイマイチでした。でも、内容はそこそこ充実しています。

地獄草紙とかって、何故か惹かれるんだよねぇ~。幼少時から、悪いことをしたら地獄に落ちると信じていたせいでしょうか? 別に親からそういった話を聞いたことはほとんど無かったにもかかわらず、小さな頃から本でそういった知識を得て勝手にそう思い込んでいたみたいです。我ながら変な子だなあ。

そんなせいか、今でも奈良国立博物館や京都国立博物館では必ずこの地獄絵図のようなものを喜々として(!)見てしまうのですが、今回のものは不鮮明なカラーにもかかわらず、楽しかったです。

餓鬼草紙や地獄草紙は普通なのですが、『病草紙』これ初めて見ました。様々な病気を取り扱っているのですが、実に面白い!! お化け屋敷で見るような、怪しい雰囲気が充満していて気色悪いのですが実に生々しいんですよ、これが!

アルビノもあれば、畸形を扱ったふたなりもあり、奇妙なことこのうえなし。変なものや変わったものが好きなキワモノ好きな方どうぞ!

そして九相詩絵巻ですが、これは九品相図のこと。人が死ぬまでに見せる死体の腐敗状況を九段階に分けて説明するもので、どんなに栄誉や金銭などを得ても死ねばこんなものだ、という現世へ執着心を諌めるものですが、まさに諸行無常で味わい深いものがあります。

とっても大きいので、これで写真が綺麗だったら言うこと無しなんですが・・・。新しいのでこういうのがあったらいいな。

日本絵巻大成〈7〉餓鬼草紙,地獄草紙,病草紙,九相詩絵巻(amazonリンク)

関連ブログ
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
ラベル:アート 絵巻 書評
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2007年01月05日

「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社

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あくまでもお祈りの対象としてのシャルトル大聖堂を写真と平易(というよりも『幼稚』な感じさえする)な言葉で紹介したもの。

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写真は綺麗だけど、かんでふくめるような語り口調にはだいぶ違和感を覚える。大衆に説明する司教さん、といった感じがしてしまうのは私だけでしょうか? 絵本を前に先生が生徒に教える感じです。

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実際、ここで説明されている内容はほとんどの場合、なんの役にも立たない。その一方でシャルトル小史の中には、他の本で聞いたことがない話があったりもする。例えば、以下の話とか・・・。
「ローマ総督がキリスト教徒に弾圧を加えて、ここにできた最初の聖堂を破壊したんだそうです。そのとき、ローマ総督は父を諌めようとした愛娘モデスタの喉を裂いて多くの殉教者の死体と共に井戸の中に投げ込んだので、その井戸は後世<聖なる井戸>と呼ばれたということです。」

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他にも知らなかった話があり、そういう意味では文章も全て無価値とは言えません。また、本書は写真が非常に多くて綺麗なカラーで写されているのでそういう意味でも手元に置いておいて悪くない本だと思います。

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文章だけなんとかなるともっと良いのですが・・・そこが残念です。でもステンドグラスの写真とかは、なかなかだと思います。

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【目次】
大聖堂へ
シャルトル小史
勝利の聖母
正面に立って―誰の像か
南口に立って―義の司祭メルキセデク
天国と地獄
キリストの体
北口に立って―聖母戴冠
黒い聖母
巡礼について
時代を超えた慰め
黙示録とステンドグラス
シャルトルの青
旧約の人物像―特にダビデ
民衆とガラス職人
大聖堂見取図
“シャルトルの丘にそよぐ風の中で”
祈りの大聖堂シャルトル(amazonリンク)

関連ブログ
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
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2006年12月15日

「中世ヨーロッパの書物」箕輪 成男 出版ニュース社

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写本についての知識が欲しくて読んだ本。非常に興味深いところもあるが、退屈なところもあって興味のあるところだけ拾い読みをした感想です。

写本として現存しているものを紹介したり、そこに描かれているものの説明を主題にした本は多いですが、『写本』を生み出す行為やそれが持つ宗教的意義や経済的意義までを含んだ幅広い視野から研究の対象として採り上げたという点で非常に価値ある一冊。

写本がどれほど手間がかかり、同時に貴重な動産あり、その製作手法や製作過程、さらに流通過程まで含めた独自の視点がなんとも面白い!! また完全受注生産であった為に成果物の価値に比して制作費が妥当であり、中世を通じて非常な数量が作られていたことも初めて知りました。

また、amazonの書評でも指摘されていますが、印刷技術の長所はこれまで教科書では安価に本が作れることだと教わってきましたが、実はそれは必ずしも正確でなく、誤りのない正しい文章を供給できるようになった点こそがむしろ功績であったというのは、本当に驚きでした!!

他にも大変興味深い話が多いのですが、まあ退屈な点も実はあったりもする。あくまでも個人的な関心の度合いによって異なってくるのでしょう。値段からして妥当かな?って思う。写本のそういった面に関心がある人なら、買っておいて良い本ではないでしょうか? 
【目次】
はじめに
I 三つのルネサンス
II 写本の中世
III 教父時代の出版
IV 宣教師時代(初期修道院時代)の出版
V 修道士時代(後期修道院時代)の出版
VI 修道院出版への挑戦
VII 写本出版の研究
あとがき
主な参考文献
本書登場人物一覧
中世ヨーロッパの書物―修道院出版の九〇〇年(amazonリンク)
ラベル:書評 修道院 中世
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2006年12月13日

「美しき時祷書の世界」木島 俊介 中央公論社

ランブール兄弟の手になるベリー公の時祷書への憧れから見つけた本。大判の本の中にたくさんの中世写本からの画像が入っています。大変綺麗で見るだけの価値がある本ですが、採用されている写本すべてが気に入るかと言われるとかなり疑問?

私の好みから言ってしまうと必ずしも傑作ばかりが選ばれているわけではないような気がします。端的に言うと、好みでない作品もたくさん入っていてもったいない。ランブール兄弟の美しく且つ素晴らしい作品だけではなく、いろんな人の手によるものが混ざっているのでその分、私なら割り引いて評価します。

また、最後の方にまとめてある解説は、写本そのものについての説明として勉強になりますが、個々の作品に付けられている説明は全然足りなくて不満足。じっくり見てると値段(4800円)に見合っているのか微妙です。まして定価以上のお金を出してまでは欲しくないなあ~。個人的には定価の半額であれば買ってもいいレベル。

ベリー公の時祷書に限定したものの方がはるかに良かったかと、一見すると綺麗なだけにとっても惜しかった一冊でした。

美しき時祷書の世界―ヨーロッパ中世の四季(amazonリンク)

関連ブログ
「世界名画の謎」ロバート・カミング著 ゆまに書房
「甦える中世ヨーロッパ」阿部 謹也 日本エディタースクール出版部
ラベル:書評 中世 アート
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2006年11月29日

「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店

stainedglass.jpgとてもじゃないが、1万9千円も出して買えません。でも、価格に見合うだけの内容を持っているのも事実である本です。図書館で普及版と書かれてこの値段のものがありましたから、他にも普及版以外のものがあるのかな?どれだけ高いのだろう・・・?

冒頭から値段の話ばかりで恐縮ですが、黒江氏の本ってどれも高い!半端じゃなく高いです。その代わりに非常に大判の大型本で写真がこれでもかって入っています。もっとも、ステンドグラスに関してはどんなに大きい素敵な写真があっても実物の素晴らしさの1%にも及ばないとは思うのですが、でも、見るならばやっぱりこういう本が間違いなくイイです。

本書は中世以降のゴシック大聖堂などに作られたステンドグラスを中心にしているが、中世のみに限定されることなく、最近の作品までを視野に入れた幅広い観点からステンドグラスを採り上げている。

しかも、オーソドックスなサン・ドニ修道院長シュジェール以来のゴシック建築におけるステンドグラスの歴史的・宗教的意義付けをも踏まえてきちんと解説し、同時にそこに描かれた図像学的な説明や技術的な説明まで過不足なくされている。ステンドグラスに関していうならば、私が知っている数少ない本の中では一番総合的且つ包括的に捉えた本であり、ステンドグラスの基本書的な存在と言ってもいいのではないかと思います。

目次を丹念に見てもらうと、本書の内容をいくらかなりとも伺い知ることができるのではないかと思いますが、現代的な課題であるステンドグラスの修復にまできちんと解説してくれているのは、正直あまりありません。

西欧各国でどのようにしてステンドグラスが用いられ、どのような歴史的・社会的状況下であったのかなど、実に興味深い限りです。

私は、あくまでもシャルトル大聖堂に代表されるフランスのゴシック建築のステンドグラスについて調べるという目的があり、そこに重点を置いて読んでいたのでそれ以外の部分については、量が多いのでざっと流して読みましたが、ステンドグラスについて知りたいならばまず本書にあたるべきでしょう。現代的なインテリア装飾としてのステンドグラスには、私の場合、全く興味がありませんし、その意味では本書も役に立ちませんが、中世のステンドグラスについてなら、本書は外せません!!

購入するのは仕事で使うなら別として、ちょっと難しいでしょうから、是非図書館で探して見てみて下さい。きっと満足がいくものだと思いますよ~(満面の笑み)。シャルトル大聖堂についても「大聖堂の時代」のところで大きく何頁かにわたって採り上げられていました。

ステンドグラス(朝倉出版)~メモ
勉強になる点が多いのでいつものように抜書きはこちらに。
【目次】
ステンドグラスの世界
 素材としてのガラス
 古代のガラス
 芸術的な形のはじまり
 教会堂とそのプラン
 建築的挑戦
 光による絵画
 石の綱
 円とバラ窓
 霊感の源泉―聖書
 霊感の源泉―聖と俗
 善と悪の霊
 象徴の言語
 聖者とその表徴
 キリストの家系樹
 キリストの顔
 寄進者―自己保身と信心
 ガラスの縁飾り
 自然の世界
 紋章学の伝統
 ガラスの紋章の芸術
 時代の反映―建築
 時代の反映―ファッション
 変貌する肖像芸術
 ステンドガラスの捧げ物
 芸術と芸術家

ステンドグラスの歴史
 11、12世紀 大聖堂の時代
 13世紀 ゴシック芸術の時代
 14世紀 騒乱と改新の時代
 15世紀 過渡期
 16世紀 衰退の時代
 17、18世紀 不毛の歳月
 19世紀 復興の時代
 20世紀 広がる地平の時代

ステンドグラスの窓の製作と修復
Stained glass(amazonリンク)

関連ブログ
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
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2006年11月13日

「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房

romanesuku.jpg

ゴシック建築も興味深いのですが、それに先行するロマネスク美術もまた知れば知るほど面白かったりする(笑顔)。

ロマネスク彫刻が写実主義を否定して人間の概観の中に宿らないものの美、精神的な美を追求したものであると書かれているが、物質的なものを通じて人が神の国へと到達する、としたゴシックとの対比を考えるとなんとも対称的である。

また、シャルトル大聖堂の西正面扉口の人物円柱についての解説は、ロマネスク彫刻のもっとも純粋且つ頂点であると同時に、ゴシック彫刻のまさに始まりという重要な意義を有するものであることを知りました。

お約束ともいえる<黒い聖母>もしっかりと出てくるし、著者の「シャルトル大聖堂」の本と完全に内容的にはかぶってしまっていますが、何度も読むうちにようやく理解できるものもあり(私の理解力が足りないのでしょうが)、大変勉強になります。

これも読んでおいて間違いないでしょう。ちょっと睡魔に襲われることはありますが、複数の本を読むことで同じ内容であってもそういう意味であったのかと納得させられることが多々あります。一見無駄なようでも頑張って読みまくり、メモしまくってみましょう。絶対に理解は深まると思います。

だって今日、改めて「スティグマータ」(映画)を見直して、最後の最後にしっかりとトマス福音書を明示して説明しているのに気付きました。なんども見ていたのに、本を読むまで全然気付いていなかった自分のお間抜けさにビックリしてしまいましたから。

人は見ようとしないものは、見えていても認識しないということを改めて実感しました。これって、全てのことにおいて当てはまりそうです。
【目次】

 1世なるものの表現とキリスト教美術ー芸術の二大根源
 2地中海文明圏における表現
 3中世美術と現代ー中世美術の二元性

Ⅰロマネスク美術とは
 1一般的特徴
 2ロマネスクへの道ーその語源
Ⅱロマネスクへの道ー聖堂建築の場合
Ⅲ「神の国」の実現ーロマネスク聖堂建築
Ⅳ天国への門ーロマネスク聖堂扉口彫刻
Ⅴロマネスク扉口彫刻(タンパン)の図像学
 1多様性から統一性(統合)へー図像学的側面
 2ロマネスク扉口彫刻の多様性
Ⅵロマネスク彫刻の形態原理ー聖堂建築が提案する「枠組」
Ⅶロマネスク聖堂壁画の問題
 1ロマネスク壁画の図像配置
 2ロマネスク聖堂壁画の技法とその表現
 3ロマネスク聖堂の特徴
Ⅷ<聖母子>彫刻と<黒い聖母>の謎
Ⅸロマネスクの唐草模様
Ⅹ異教美術の遺産
ⅩⅠロマネスクからゴシックへーサン・ドニ修道院長シュジェールと新しい美意識

おもな聖堂所在地
参考文献
あとがき


ロマネスクの美術(amazonリンク)

関連ブログ
「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「黒い聖母」柳 宗玄 福武書店
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
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2006年11月12日

「ステンドグラスの天使たち」志田 政人 日貿出版社

tennsitati0.jpgう~ん、綺麗なのは綺麗です。写真をみてもらえれば分かると思います。ある意味一番人気のある天使ですし。

でも・・・やっぱり同じ著者の他の本を見てしまうと・・・ちょっとなあ~というのが正直な気持ちです。もう限界なんじゃないでしょうか? ステンドグラスを本来あるべき教会堂などから切り離し、更にステンドグラス全体からもバラバラにしてパーツとして、単なるデザインとして見せてしまっています。

ああ、綺麗だね。それ以上の言葉はありません。

元々の写真が綺麗以上の神々しいまでの素晴らしさが容易に想像できるだけに悲しい気持ちさえします。これは図書館で見つけたのですが、私的には購入するだけの意義を見出せません。

勿論、本書をお薦めもしませんがなんか残念だなあ~。もっと&もっと本来の意味で美しいステンドグラスが見たい!!

tennsitati1.jpg

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tennsitati5.jpg

tennsitati6.jpg

個々の写真を見る限りでは、そこそこ綺麗なんですけどね。他の本のあまりの素晴らしさと比べると、格段にレベルが落ちているのもまた事実。しかし、もったいない・・・。本当に。
【目次】
1 お告げの天使
2 祝福の天使
3 磔刑図の天使
4 受難具の天使
5 楽園を護る天使
6 戦う天使
7 奏楽の天使
8 神に仕える天使
9 聖人たちを助ける天使
10 ティンパヌムを舞う天使
11 装飾の天使
12 最後の審判の天使
ステンドグラスの天使たち―光の御使い(amazonリンク)

関連ブログ
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
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2006年10月11日

「世界名画の旅(3)イタリア編」朝日新聞社

朝日新聞の日曜版に載っていた文化記事をまとめたもの。個人的には朝日新聞よりも日経新聞の方のアート記事を評価するが、どちらも似ているといれば似ている。

本書の場合も新聞記事だけあっていかにもジャーナリスティックな視点から、アートというものを捉えている。逆に一般読者への関心を誘い、敷居を低くするメリットもあるのだと思うが、美術に関する文章としては、正直たいしたものではない。

基本的に一話読み切り形式で一つの絵が出てくるが、絵そのものの説明をしていることはほとんどない。画家や絵にまつわる周辺情報というか、いかにも人間を扱っています的な俗っぽいお話がほとんどある。

それゆえ誰でも読み易いし、とっつき易いのだが、肝心の絵はどうでもいいような取り扱いになっている。せいぜいが美術にまつわるエッセイとでもいうべき内容です。

ボティチェリの「春」に描かれた花々がフィレンツェに実在する植物だった話や最後の晩餐の修復の話とか、以前にもっと詳しい本で知っている内容も多く、読んでも別に・・・という感じのものが多かった。TV番組の「美の巨人たち」とかの方がはるかに内容が深くて面白いです。NHKスペシャルなんかもイケルね!

脱線する話自体は悪くはないが、脱線した話だけで絵画を語られてもだいぶ不満が残る。これと一緒に購入したフランス編も同様でした。

もうちょっと絵だけを楽しませてくれぇ~という声が聞こえてきそうな本でした。

世界名画の旅〈3〉イタリア編(amazonリンク)
【目次】
豹の墓―エトルリア壁画
ディオニソス秘儀図―ボンベイ壁画
東方三博士の礼拝―ジオット
東方三賢王の礼拝―ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ
聖母子と天使―フィリッポ・リッピ
狩り―ウッチェルロ
ウルビーノ公―ピエロ・デルラ・フランチェスカ
春―ボッティチェルリ
ビーナスの誕生―ボッティチェルリ
最後の晩餐―レオナルド・ダ・ビンチ
1498年の自画像―デューラー
嵐―ジョルジョーネ
デルフォイの巫女―ミケランジェロ
小椅子の聖母―ラファエロ
聖ヨハネの斬首―カラバッジオ
サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂への行進―グアルディ
金枝―ターナー
十一月―フォンタネージ
街角の神秘と憂鬱―キリコ
ラベル:アート 書評
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2006年10月03日

「中世の芸術」グザヴィエ・バラル イ・アルテ 白水社

cyuseinobijyutu.jpgバランス良く中世における芸術全般を概説している入門書、クセジュ文庫です。歴史的な面、社会的な面、地理的な面など多面的に捉えて説明しています。知識としての情報はたくさんあったうまくまとめられているのだが、この手の本にはつきものの宿命ですが、読んでるとかなり眠くなってしまうのが難点。

一般的によくある概説書であるが、他の本と異なる点は、「第3章 中世の芸術の研究」。学説史のようなものが書かれており、どういった流れが中世の研究にあり、それぞれの流れ(学説)の中で著名な研究者の占める位置が分かる。こういった研究における位置付けを理解したうえで読み進めていくのは大変有用だと感じた。

でも、概説書・入門書なんだけど、これ最初に読んだらつまんなくて中世美術が嫌いになりそう・・・。やっぱり最初にモノを見て感動して、個々のもに対する好奇心を満たしてからでないと、美術史的な話にまで興味持てないなあ~私だったら。

よくまとまっているし、悪くはないと思うのですが面白くはないです。常に本に対して面白さを求める私がいけないのかもしれませんが・・・。う~ん、こういうのって難しいね、ホント。

中世の芸術(amazonリンク)
【目次】
第1章 中世芸術の観点
(歴史、地理、年代
ビザンツ、西欧、そしてイスラム
都市、城、そして修道院
教会堂、扉口、回廊
クリュニー会とシトー会
大聖堂
芸術家、職人、そして施主)
第2章 中世芸術の展開
(古代末期と蛮族侵入期のヨーロッパ
カロリング朝の世界
十世紀、オットー朝芸術、ロマネスク芸術の始まり
ロマネスク芸術
ゴシック芸術
中世末期)
第3章 中世芸術の研究
(学問としての歴史―いくつかの道標
史料
考古学
図像学
記念建造物とその修復
中世芸術の博物館)

関連ブログ
「甦える中世ヨーロッパ」阿部 謹也 日本エディタースクール出版部
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「キリスト教図像学」マルセル・パコ 白水社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
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2006年09月18日

「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研

この本は、図版がこれでもかと大きく豊富に入っているので実にイメージしやすいうえに、執筆陣がその分野の第一人者と思われる複数の人物によって執筆されている。正直言ってこれだけの人物によく依頼できたものだと思う。

うがった見方をすると、学研が現在のように斜陽になる前に子供相手の教材でぼろ儲けができていた時代に豊富な資金をつぎ込んで、作り上げた美術全集物なのだと思う。今では絶対に採算があわないはずだし、これだけのものを作り上げる気概も執筆陣を集める事はできないのでは?などと思ってしまうが、それぐらい内容的には素晴らしいと思う。

ただね、あまりに・・・あまりに大判過ぎて正直邪魔になりそうな気がする、っていうか確実に邪魔。大きさ的にはまさに百科事典並み。こんなの買ったら、部屋の床がまた危なくなりそうだもん(涙)。

でも内容的には、いいんんだよねぇ~。

ちょっとだけ内容をメモ。
大聖堂の装飾は「文盲の人々のための聖書」であったには違いないが、だからといって全てが一般の人々に分かり易い伝説や物語の絵解きであったわけではない。ルイ・レオーが正当に指摘しているとおり、「大聖堂というこの壮大な書物の中で、聖職者のための高度に専門的な章と一般の人々の教育のためのの章とを区別しなければならない」。
←これって、私的には目からうろこ状態です。まさか専門家向けの図像があるとは・・・。今後、心して彫刻やステンドグラスを見なければ!!

旧約と新約の一致:聖アウグスティヌス「神の国」
 旧約の中に新約が隠されており、新約の中で旧約は顕(あらわ)になる
 =エミール・マールの文章でも読んだ覚えがありますが、これを知らずしてゴシック建築の図像は理解できませんね。また、この考え自体は以前からあったものだそうですが、ゴシック時代に劇的な熱心さで表現されるようになったそうです。しかもこの熱心な表現を最初に始めたのが、あのシュジェールだったとは。いやあ~やっぱりやり手は違います。

番外のメモ:
 2世紀 アレクサンドリアで編纂された本「フィジオロゴス」は別名、動物の黄金伝説と呼ばれる。

関連ブログ記事一覧
叡智の禁書図書館内の「ゴシック建築」のタグで検索
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
ゴシックと現代/吉川逸治~「SD4」1965年4月より抜粋
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
ゴシック建築の成立/堀内清治~「SD4」1965年4月より抜粋
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
ゴシック空間の象徴性/高階秀爾~「SD4」1965年4月より抜粋
ゴシックのガラス絵 柳宗玄~「SD4」1965年4月より抜粋
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
デモンズ3(1988) ダリオ・アルジェント製作

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2006年09月14日

「イタリア―美術・人・風土」三輪 福松 朝日新聞社出版局

とっても読み易い。だが、それ以外に一切の長所を認められない本である。一度絶版したものを再販したようだが、はなはだ疑問である。絶版のままにしておくべき本だったのではないでしょうか???

イタリアは確かに素晴らしい国だし、誰がいつ行っても印象に残る国ではあるが、この本を読んでも私はイタリアの魅力を感じられない。私は2回しか行ったことがないし、イタリア語の通訳をしていた友人と比べてさえ、それほどイタリアを知っているわけではないが、少なくても私が感じたイタリアの魅力を本書からは再現できなかった。

そもそもイタリアの風土的なものを著者個人の記憶から再構成するのは自由だが、それが本当に個人的な取るに足らない感想でしかないというのはいかがなものだろうか? 

正直言ってかなり失望した。イタリアに対する情熱も美術に対する情熱も少なくとも本書からは、感じられなかった。端的に言うと、パッションが感じられない!

と同時に、その代わりに美術の専門家としての視点があるかと言えば、それらしい素振りは見せるものの、薄っぺらなトリビアにもならないようなことばかりで甚だ興醒めでした。

有名な作品だからといって、あえて自分の感想はここでは書かないというその考えが理解できない。有名な作品だろうと無名な作品だろうと、自分が素晴らしいと思えばそれはそれでいいだろうに・・・。

論文書くわけでもないのに、変なことを意識して素直な感性をセーブしつつ、結果的には適当な書きなぐりの文を書いているようでその矛盾にもストレスを感じた。

ラファエロの聖母は、他の誰が書いてもかないっこないし、絶対に最高だと私は確信しているが、そういう気持ちがこもらない空虚で無意味な文章の羅列は、悲しかった。

イタリア好きや絵画好きには、絶対にお薦めしません。もっとパッションのある人の本を読みましょう。

イタリア―美術・人・風土(amazonリンク)
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2006年08月27日

「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会

daiseidou.jpg『20世紀最後にして最大の錬金術師として、その名を残すフルカネリの貴重な書が日本語で読める!』 このコピーにずっと惹かれ続けていました。

私がこれまで読んださまざまな本にも本書の書名が挙がり、ヘルメス学やオカルト系の基本文献として押えておかねばならないものの筆頭に挙がるものですが、値段が高くて今まで尻ごみしていました。

まあ、ちょっとしたタイミングで結局買ってしまったのですが、これは難しい本です。文章自体は非常に平易でその点では、むしろ読み易いのですが、その文章で表現される内容となると・・・普通の人100人いれば99人は、理解できないと思います。私には、残念ながら理解できませんでした。

では、読むべき価値がない本かというと、決してそうではなかったりするのが更に困るのです。これまでも何冊か読んできた錬金術関係の本やグノーシス関係の本で出てくるものを十二分に理解し、そういった方面に造詣が深い方であるならば、本書に書かれている深い&深い意味を自分のものとすることができそうな・・・非常に漠然とした予感がしてしまうのですよ・・・。

パリのノートルダム大聖堂を初めとする、種々の大聖堂の彫刻やステンドグラスに描かれた図像の数々。今まではキリスト教的図像学の視点からしか解釈されていなかったゴシック大聖堂の図像が、本書では、それらを音声学的カバラという視点で読み解き、ヘルメス学の叡智を世界に伝えるものと捉えてその解釈の仕方を伝えることを目的にして書かれています。

本書の中でもはっきりと述べられていますが、ヘルメス学を学ばんとして長い期間に渡る修練と忍耐を経た一部の者のみにしか理解できないし、しかもの能力も才能もある正しき者しか、それは不可能だと言っています。

本書は選ばれし者にとっては、最良の贈り物であっても凡百の大衆には理解できるはずがないものです。私も当然理解できないですし、そこまではまりたいとも思いませんが、少なくとも本書を読んで価値がある、と思うには最低限、キリスト教的な図像学関係の知識を持っていないと辛いように思います。そして錬金術関係の知識も必須です。勿論、表面的なものでいいと思いますが、何も知らないで読むのは無謀です。個人的には、エミール・マールの「ヨーロッパのキリスト教美術」とか、セルジュ・ユタンの「錬金術」ぐらいは読んでからチャレンジすることをお薦めします。

本訳者の平岡忠氏が奇しくもエミール・マールの「中世末期の図像学」の本訳者であり、後書きでセルジュ・ユタンの「錬金術」等を参考にしたというのは、なるほど!と頷けました。

そうそう、個人的には馬杉氏の「パリのノートルダム」も事前に目を通しておくべきかと? それぐらいの気合が必要な本です。でもね、この本で得た知識は後できっと役に立ちそうな気がします。知識が深まれば、深まるほど本書の理解が深まり、そのうちに「ああっ~あのことか!」ときっと言いそうななんだよね。今の私には宝の持ち腐れですが、将来への期待を込めて買っておいて正解のような気がしています(あくまでも私個人の場合)。

私が分かる範囲でいうと、非常に鋭い洞察力に裏打ちされており、そこいらにあるいい加減なオカルト本とは違うように感じます。特にルネサンスに対する辛辣な評価。ラファエロとかは私結構好きなんですが、そうであってもやはりそれ以前の伝統を壊したことの歴史的評価や近代につながる、ある種の浅ましさを伴う個人主義の問題点などへの洞察には、改めて考えさせたり、気付かされたりすることも多かったです。


本書の一部分でもいいから、もっと理解できたら素晴らしいだろうなあ~。それと共に思ったのは、よくこの本を日本語で出版できたなあ~ってこと。正直言って、日本で売れるとは思えません。出版自体が快挙でしょう。フランスでさえも当初は全然売れなかったのも然り。国書も頑張っちゃいましたね!それはやっぱり拍手もんでしょう。おそらく本書では利益が出ないでしょうからね。
【目次】
大聖堂の秘密
パリ
アミアン
ブールジュ
アンダイの周期十字架
結び
大聖堂の秘密(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」沢井繁男 講談社
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」吉田光邦 中央公論社
「荒俣宏の20世紀ミステリー遺産」集英社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
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2006年08月16日

「芸術新潮1999年10月号」特集「黒い聖母」詣での旅

「黒い聖母」このキーワードに引き寄せられて、ようやく探し出して購入した一冊。ご存知の通り、芸術新潮は写真がいいんだよね。それとあわせて解説も雑誌の割にしっかりしていて、変な本よりよほど勉強になる。

今回も特集が「黒い聖母」詣での旅、ですから、定番のル・ピュイやロカマドゥールに、私が大いにはまっているシャルトル。ヨハネ・パウロ2世でおなじみのポーランドの黒い聖母までまさに黒い聖母尽しです(満面の笑み)。

そして私も何冊も著書を読んでいる馬杉宗夫氏が書いた「黒い聖母の起源と信仰」という記事も載っています。まあ、内容的には氏の他の著書で書かれているものと同一のものですが、もし、読んだことない方には、とても面白いものだと思います。

とにかくこれだけ、たくさん且つ綺麗な黒い聖母の写真はなかなか無いので保存版として購入しておいて正解だと思いますよ、きっと! 私はスキャナで採り込んで透明テキスト付きPDFとして保存しておくつもり。

しかし、あ~フランス行きたくなった! たまたまの偶然でしょうが、この本を読んでいる8月15日は『聖母被昇天』の祝日だったりする。黒い聖母を祭っているところでは軒並お祭りで大騒ぎなんでしょうね。益々行きた~い!!

関連ブログ

「黒い聖母」柳 宗玄 福武書店
「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母崇拝の博物誌」イアン ベッグ  三交社社
「聖母マリア」 竹下節子著 講談社選書メチエ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「芸術新潮1994年9月」特集血まみれ芳年、参上
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅
「芸術新潮 2006年 06月号」新潮社
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2006年08月05日

「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社

タイトルからして、最近の私の読書傾向にピッタリという予感と、著者の名前に見覚えがあったのでふらふら~っと購入した一冊。

冒頭にシャルトルの事が書かれていたんでそれが決め手だったんだけど、大当り!! 著者は、修復をメインの仕事にされている方ですが、修士論文がシャルトルやサン・ドニ絡みだったんだって!!

う~ん、学生時代に法律と経済を勉強したのは面白かったし、後悔はないが、建築方面に進むという手もあったなあ~。今、この瞬間に大学生だったら間違いなくゴシック建築(つ~か、シャルトル大聖堂)をテーマにするだろうなあ。死ぬ気でフランス語の文献資料を漁るぞ、たぶん。

まあ、今それはできないが、基本をきちんと学んでから、シャルトル大聖堂について論文を書いてみたくなった。日本語で読める資料って限界がありそうだなあ~。英語の文献でも数少なそうだし、フランス語できなきゃ駄目ジャン。やっぱ、アテネ・フランスをマジに通おうか? 以前、イタリア語講座はイタリア大使館主催のに通っていたけど、仕事が忙しくて挫折してしまったのだが・・・(言い訳だね)。

そんなことを本気で考えさせられるぐらい、強い興味と学習意欲をかきたてられる本です。中世美術というもののここに出てくるものの基本は、ロマネスクやゴシックの大聖堂にステンドグラス。それに対する著者の熱い思いが全編にあふれています。まさに『パッション』ですね!

特にシャルトルに対する入れ込みようは、素晴らしいというかユイスマンスの大伽藍並というか、かなりキテマス。でもね、私的には非常に共感してしまうんだなあ~。2週間、シャルトルに宿とって2週間の間、毎日、朝から晩までシャルトル大聖堂の彫刻とステンドグラスを見ていたい♪ それが今、一番の夢かな? 巡礼よりもそちらの方が、神に近付けそうな気がしてきました。

とにかくシャルトル・フリークの人にはお薦めしていいかと。知識としての情報は、まあまあでそれほど特筆すべきではないが、素直に著者に好感が持てるし、私はこの本大好きですね。旅のエッセイに近いノリではあるが、十分に楽しめると思います。

シャルトルが好きでステンドグラス好きなら、読んでおきましょう♪ きっと後悔しないと思います。しっかり、サンチャゴ・デ・コンポステーラの話も出てきますしね。まあ、この辺の話は、みんなグルになってますから(笑顔)。楽しんで下さい。

しかし、いろんな本を読めば読むほど、ゴシック建築への興味は尽きないなあ~。もっと専門書が読みたいです。

今日も5冊本買っちゃったしなあ~。どうすんだお金?それと部屋の床が抜けないか心配・・・? 読みかけのパリのノートル・ダムも残ってるし・・・・。
・SD選書183 ゴシック建築の構造
・SD選書116&117西欧の芸術 2 ゴシック 上下巻
・芸術新潮 特集 黒マリア
・ロマネスク聖堂

そうそう、改めてブログを確認してみると、著者の本結構読んでました。もっともブログの検索をかけないとそれに気付かない私は、ちょっと間抜けジャン(涙)。

フランス中世美術の旅(amazonリンク)

関連ブログ
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
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2006年07月26日

「芸術新潮1994年9月」特集血まみれ芳年、参上

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特集:危うい浮世絵師 血まみれ芳年、参上

もう大好きな芳年なんで迷うこと無く即、買いです(満面の笑み)。映画などはスプラッターとか大嫌いなんですが、何故か、芳年のものは好きなんですよねぇ~。画集も持っているし、展覧会に芳年があれば、まず出掛けて行っちゃうもんね!

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実は、今年の夏は絵金祭りに行こうかと思っていたんです。で、先日調べて見ると・・・ショック!! 祇園祭と同じ15、16日で終わっていました(ガ~ン)。

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もう、かなりショック大きくて・・・確か去年も行きたいとか思っていて、行き損なってるし・・・あ~あ。日々の生活に追われて、記憶力の欠如に悩む私。

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で、絵金の情報をネットで検索していたら、血まみれ系の絵師ということでまた芳年を思い出したというわけです(ニヤリ)。

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おまけに、こういうのってホント不思議なタイミングなんですけど、古書店をいつものごとく物色していると、本当にたままた芳年を特集している雑誌が目に入りました。

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おまけに&おまけに、値段がたったの100円なんだもん。こりゃ買わずにいられないってことで、GETしたのがこの本でした。

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値段は安くてもさすがは芸術新潮、たくさんの絵が入っていて思わず笑顔がこぼれます。実に、実にイイ! 最近、芳年を特集したものないなあ~。夏だし、幽霊・怪談ときたら、芳年でしょうに・・・ネ(勝手な思い込みだって!)。

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ああっ、本物見たいな。いつだったか東京国立博物館で見たけど、また浮世絵の特集やらないのかなあ~。あそこってたくさん浮世絵持っているんだよねぇ~。どこぞの浮世絵博物館のように、名前だけで何にもいいの持ってないのと違うんだから、ドンドンテーマ決めて展示して欲しいなあ~。

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そういやあ、幽霊画も見に行かないと!! あれっていつまでだっけ? 夏はなんやかんやと大忙し。花火大会もあるし、お祭りもあるし、旅行も行かなくちゃ。今週末は決まっているけど、来週末はどこ行こうかな???

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あっ、温泉も行きたい。とりあえず、今日は新幹線のチケットをGETしたので来月の準備はバッチリです(Vサイン)。

芳年妖怪百景(amazonリンク)
これが私の持っているもの。結構、お気に入り。だけど・・・どこの段ボール箱に入れたか現在、行方不明。どこに行ったんだよ~?

関連ブログ
東京国立博物館、好きなもの&芳年
「絵金 ArT RANDOM CLASSICS」デザインエクスチェンジ
ラベル:芳年 アート
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2006年07月16日

「伊藤若冲」新潮社

itoujyakuchu.jpg何よりも手軽。寝そべってゴロゴロしながら、若冲の絵を眺めるには最適でしょう。勿論、既に本物の作品を観た後で自分の記憶を思い出す為のきっかけとしてです。

若冲に限らず、画集はしょせん画集です。本物を観た時の感動とは、全く別ものですが、一度感動を胸に頂いた後で、今度これ観ようとか、あれ観ようと楽しい計画を立てるのにはいいかも?

非常にコンパクトでこれを持って、昨日の三の丸尚蔵館の若冲も観に行きました。見終わった後、涼しい場所で休憩しながら、すかさず本書を取り出します。一緒に行った人と頁をめくりながら、「あっ、これあったね。」「これもあったじゃん。」とか、この絵も裏から彩色されてたんだあ、などと感想を話すのもまた楽しいです。

そんなアクティブな使い方もできる一冊です。若冲を観に行く時に持ち歩くと楽しさ倍増ですね。シンプルな説明も手軽で嬉しいポイントです。

伊藤若冲(amazonリンク)

関連ブログ
三の丸尚蔵館第40回 花鳥-愛でる心、彩る技 <若冲を中心に>
プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展~東京国立博物館
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2006年07月12日

「屍体狩り」小池 寿子 白水社

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大いに期待外れだったと言わねばならないと思う。暇さえあれば、死体の絵画や写真集を見て過ごす、かなり危ない趣味の持ち主の著者が書く以上、内容にもそれなりのものを期待して当然だと思う。

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世界中で死者を描いた図版を集めているとご自身がおっしゃられる割に本書の中で紹介される図版はかなりヒドイ!!

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私は絶版のハードカバーで読んだが、本書は普通では見られない図版を紹介しつつ解説するところに意義があると思うだが、図版が小さいうえに白黒で何が描かれているのか全く分からない。この図版では、何のために載っているのか不明だし、エッセイゆえの軽い口調はどうでもいいが、個々の図版に関する説明も旅行パンフの説明に毛が生えた程度。およそ説明らしい説明にもなっていない。大変失望した。著者は自分の本の図版の校正さえせずに編集者に丸投げているのだろうか???
【目次】
ラグランジュ枢機卿のトランジ
名の知れぬ男と見知らぬ女
世の終わり、陽気な踊り
頭のなか、たとえばバルドゥンク・グリーン
残酷の報酬、ホガースの場合
老いと時
蛇とカエルと蛆虫と
墓場の安らぎ
チティパティ
牛に乗った死〔ほか〕


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私は死体などは美しくないし、死体解剖なども見たいと思うこともない、至極ありきたりの感性の持ち主で他人の趣味嗜好にとやかくいう筋合いはないが、著者の語る口調はいかにも日本人的で下世話な自己卑下っぽいものを感じてしまうのは、私の偏見だろうか?

素直に自分が好きなら、好きで他の人には分からないだろうけどこれがいいんだよなあ~と熱く語るところがなくて興醒めである。自分でオタクというが、正直苦笑ものである。

タイのシリラート死体博物館やローマの骸骨寺、カタコンベ、ロンドン・ダンジョン(これはちょっと違うか?)等々でもいいじゃん。一応、私も一通りは観てきたもの。あるいは美術的な説明をするならば、もっと役に立つ話をしてくれい~。どっか他の本で読んだことのある話を表面的にさらっと話してもねぇ、しかもエッセイとしてもつまんない。こういうの嫌い。

京都博物館にある地獄絵図や九相図とかの方がはるかに面白いし、心惹かれる。だてや酔狂で道楽をやっている人をなめて欲しくないなあ~(笑)。

まあ、私自身がエッセイが好きでないのが一番の理由かもしれないが、本当に情熱と知識のあるオタクなら、私はお友達になりたいが世捨て人のうだうだ話に付き合う無駄な時間はない。

タイトル的に気になっていたので、一年以上無視していて税込み100円だったので買ってしまった。安かったのでまだ許すが、やっぱこの著者の本は合わない。私の購入リストから著者の名前は永遠に外そうっと。

※関係ないんですけど、本書の中の図版はあんまりいいのがなかったから、ローマの骸骨寺で買った絵葉書の写真を載せておきます。後でスキャンしなおそうっと。もっと綺麗だよ~(笑顔)。全部人の骨でデザインが出来ています。

屍体狩り(amazonリンク)

関連ブログ
「ヨーロッパの死者の書」竹下 節子 筑摩書房
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
最澄と天台の国宝 東京国立博物館
「絵金 ArT RANDOM CLASSICS」デザインエクスチェンジ
ラベル:骸骨寺 書評
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2006年07月02日

「祈りの美術館」丹治 めぐみ 日本キリスト教団出版局

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特に理由があった訳ではなかったりします。表紙が目に付いたのと中の頁をめくった時、鮮やかな絵が美しかったのでとりあえず買ってしまったというところでしょうか?

表紙裏

プレゼント用にいいかも、そんな気持ちもありました。有名な宗教画を1頁または見開き両頁で使って、その中に祈りの言葉が入っています。

祈りの美術館 図版

英国国教会祈祷書から採られている祈りとかは、なんか珍しい感じもしました。全体としては、トレヴィルとかが以前によく出していたものに近いかもしれません。眺めて楽しむ本ですね。

祈りの美術館 図版

ラ・トゥールやフラ・アンジェリコ等々、誰でも知っている画家の宗教画などを美しくコンパクトに楽します。逆に言うとそれ以上でもそれ以下でもありません。手元に置いておくには便利。

祈りの美術館(amazonリンク)
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2006年06月18日

「ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂」渡辺 晋輔 小学館

マリアの神殿奉献

そうそうパドヴァにあるんだよね、スクロヴェーニ礼拝堂って。以前、ローマからフィレンツェに行き、今度はフィレンツェからヴェネツィアへと行こうとユーロシティに乗った時、確かそんな地名があったのを思いだしました。(上の画像は本書より、「マリアの神殿奉献」)

夏だったから電車は混むし、席の予約も取れずにすっごい苦労したことがありましたよ~。あん時は3時間も電車の連結部で立ち通しでしたもん。高くてもいいと言っても席取れなくちゃ意味ないしね。夏に鉄道での移動は考えものだと思いました。そうそう、スペインでの移動でも寝台車を取れずに結局飛行機で移動する羽目になったしなあ~。まあ、日本の夏と変わりません。

余談はおいといて。だてに有名ではありません。本物を見たことはないのですが、本書の写真を見るだけでもこりゃチェックしておかなきゃなるまいと思ってしまう素晴らしさです。

実に美しく残っているんですね。でも、15分しか見れないの? 15分×10回とかって駄目なのかな~? 気に入った作品は何度も時間をかけてじっくり見たい派の私としては2、3個見てるだけで終わってしまいそう・・・。

つい最近までは、こんな無粋な時間制限なかったらしいのでその時に行きたかった! う~ん、しかし保存の為には仕方ないんだろうけどね。それにしても短い・・・短過ぎる(涙)。

実際に行くのはいろいろな手間を考えると、イタリアを周遊する際のついでぐらいのプライオリティになりそう。世界中にまだまだ見たいものがいっぱい有り過ぎて困ってるし・・・。

私みたいな言い訳はしないにしても、実際にゆっくり見れないなら、こういう本は非常に貴重で有用です。写真も大きいし、この値段にしてはずいぶんと多くの枚数が入っています。何よりも綺麗が嬉しい♪ 説明も私のような初心者でも分かり易くて絵をより良く理解できるような気がします。

今回、本書を見ていて思ったのが、イエスの埋葬に際しての天使の嘆き悲しむ姿が非常に特徴的。こんなふうに天使が描かれているのって少ないような気がします。少なくとも私があちこちで見た作品の中では、際立っている感じがします。

あとね、七美徳と七悪徳像。それぞれがまさに象徴的な表現なのですが、それぞれの意味するものが実に面白くって! 

いくつか引用すると、
「移り気」:車輪のうえでバランスをとる若い女としてあらわされる。床は傾いており、彼女はいまにも滑って転がり落ちそうだ。
「不信仰」:右手に持った異教の女性像に首をつながれた若者である。彼は目が不自由で、冑で耳もふさがれているので、預言者が読みあげる聖典を聞くことができない。

大聖堂の柱やティンパムにもこの手の概念を象徴した表現が彫刻されたりするが、大好きだったりします。ジョットのものもなかなか楽しかったりする。本書は、まさにお薦めの一冊でしょう。眺めているだけで楽しい本です。

以下、本書より「ラザロの蘇生」と「ユダの接吻」。他にもこういった綺麗な画像が多数あります。

ラザロの蘇生

ユダの接吻
【目次】
第1章 スクロヴェーニ礼拝堂とジョットの壁画
壁画「ヨアキム伝・マリア伝」
壁画「キリスト伝」
壁画「最後の審判」
壁画「七美徳・悪徳像」

第2章 ジョットの生涯とその作品
修業時代
アッシジのサン・フランチェスコ聖堂上院壁画
スクロヴェーニ礼拝堂壁画まで
スクロヴェーニ礼拝堂
スクロヴェーニ礼拝堂以後
フィレンツェでの活動
晩年
ジョットとスクロヴェーニ礼拝堂(amazonリンク)

関連ブログ
「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」石鍋真澄著 小学館 感想1
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2006年06月11日

「芸術新潮1996年10月号」生きている中世~スペイン巡礼の旅

聖ヤコブの聖遺物を目指し、サンティアゴ・デ・コンポステラへと至る巡礼の旅。いろんな本も読んだが、実はこの雑誌の特集記事が一番興味深いし、写真にも素敵なものが多かった。

例えば、巡礼路の途中にあるサングエサの町のサンタ・マリア・ラ・レアル教会。ここの円柱像には首をつった姿そのままのユダの自殺が彫刻されている。写真がついているが、なかなかにえげつない。

また巡礼路の道々にある中世の橋も、実にイイ! プラハのカレル橋も良かったが、こういうのにも私は弱かったりする。ローマ時代以来の橋が普通に今も使われていたりするんだから、なんとしても徒歩で巡礼してそれらを自分の足で実感してみたい。

道から少し外れてしまうが、サント・ドミンゴ・デ・シロス修道院はちょっと前に世界的ブームになったグレゴリアン・チャントのCDを録音したところなんだって! 実は、しっかり私もグレゴリウス聖歌のCDは持っているので興味津々だ。ここには、修道僧が日々瞑想に耽った回廊がロマネスク建築として現存し、写真が写っている。

ホタテの印をつけて、この巡礼路を歩きとおした時、何か奇跡が起きるのであろうか? 是非試してみたいもんです。いつ行こうか、問題はその時期だな。生活のこともあるし・・・。とにかくしばらくは無理だしね。

アルハンブラ宮殿やチュニジアも行こうと思ってから実際に行くまで、なんだかんだと事情があって5年以上はかかってるもんな。とにかくしばらくはこの本で我慢しよっと。

古いし、雑誌だから、普通のところでは手に入らないかもしれませんが、図書館とかにならあるかもしれません。お好きな方なら、頑張って見て下さいね。解説もなかなか詳しくて為になります。何よりも面白いんだから♪

関連ブログ
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
「聖遺物の世界」青山 吉信 山川出版社
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「ケルズの書」バーナード ミーハン 創元社

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ハイハイ! あの有名なケルズの書です。是非一度本物を見てみたいとは思っていますが、とりあえずどんなものか図版や写真で見てみたい、思っていました。

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なかなか思っていたような美しい図版のものが見つからなかったのですが、これは絶対にお薦め。値段もそれなりにしますが、同じ値段で他の画集買うよりは、はるかにいいです。

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とにかく大好きな写本でしかもこの斬新な表現ってなんなの???って思うほど美しいし、衝撃を受けるほどの美しさとデザインです。

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よくさ、巷に独創的だとか画時代的なデザインだとかいうがあんなもの、コンサバ以外の何物でもないジャン。と思わず、うめいてしまうほど私にはその新規性に圧倒されちゃいました。毎晩1、2頁ずつ眺めながら、頁をめくっておとといようやく最終頁まで辿り着きました。

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さすごにこの本はパラパラめくったり、ざっと眺める本ではなく、じっくり
と1頁ごとに格闘したくなるような本です。説明は勿論、眺めたものを理解するのに役立ちますが、まずはそんな説明なんておいてしまってとにかくじっくり眺めたい本です。これこそ、本当に愛蔵版(愛憎版?)でしょう。

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いやあ~、この写本の原本の為なら殺人事件を冒す価値あるでしょう。映画「薔薇の名前」に出ていたあの写本もわざわざ手作業で専門にやっているところに依頼して物凄い期間をかけて作られたものだったとメイキングの映像で語っていましたが、宝石なんかよりもはるかに魅力的♪

まさに人類の叡智の結晶だもんね。それとも隠されし宇宙の神秘の理(ことわり)かもしれないが・・・。

くどくどと書き連ねてしまいましたが、美を愛する方なら是非&是非&是非お薦め!

買う買わないは別にしても、美や芸術を愛する方は見ておくべきだし、見ておかないと後悔するぐらいのものだと思いました。しかし、ついこないだまで全然知らなかった私って何? 

ケルト文化にはほとんど興味なかったんですが、食わず嫌いだったのかも。とにかくケルト文化おそるべしってとこでしょうか。論より証拠でいくつかここに紹介しておきます。これみてなにかピンときたら、すぐ本屋で探してみてね。私の下手な感想より、はるかに雄弁にそれらが貴方に語ってくれるはずです。
【目次】
『ケルズの書』とその背景
装飾の表現―影響と類似
装飾ページの構成
装飾の目的
装飾のテーマ(聖書と十字架
天使たち
福音書記者とその象徴
聖体のシンボル
キリストとそのシンボル:魚、蛇、獅子
孔雀と鳩 ほか)〔ほか〕

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ケルズの書(amazonリンク)


関連ブログ
「図説 ケルトの歴史」鶴岡 真弓,村松 一男 河出書房新社
「聖者と学僧の島」トマス カヒル 青土社
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2006年06月10日

「芸術新潮 2006年 06月号」新潮社

美しい写真とかなり突っ込んだ解説があり、時々面白い物がでている雑誌である。今回はダ・ヴィンチ・コードの特集があり、手に取った。
《緊急特集!》
美術史家も侃々諤々 
『ダ・ヴィンチ・コード』の〇と× 【対談】小池寿子+宮下誠

Chapter1 映画も小説も修道僧シラスは○
Chapter2 ダ・ヴィンチ解読の姿勢は
      ○だが答えは×
Chapter3 聖書に縛られない
      新たなイエス像は○
Chapter4 欲望のない美術史は×
いわゆるダ・ヴィンチ・コードに関する評論とか説明としては、既存のものとはだいぶ異なっている感じがした。ダ・ヴィンチ・コードをきっかけにして、各々が好きなことを語っているというのが率直な感想。

エッセイとかそういった類いのものにも近いかもしれない。話が非常に多方面に広がっていきます。逆に言うと、対談物が苦手な私には、ちょっと避けたいタイプかもしれない。この手のものが好きな美大生(崩れ)の友人とかと学食とかで話したときに、こういうことをよく話したりしていたのでわざわざ活字にすることに、抵抗を覚えてしまうのである・・・。因果な性格の私です。

ただ、普通の切り口とは明らかに異なる点があるのでそれはそれとして見るとかえって面白いかも? あえてダ・ヴィンチ・コードと関連付けなくても良かったような気もする。

とまあ、いろいろ生意気なこと言いつつ、芸術新潮のバックナンバーを先日も三冊ほど仕入れてきた私だったりします(笑顔)。

芸術新潮 2006年 06月号 [雑誌](amazonリンク)
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2006年04月02日

「中世の美術」アニー シェイヴァー・クランデル 岩波書店

天井のエルサレム『トレドの聖書』

そうですね、類書の多い中で言えば、比較的に読み易く万遍(まんべん)なく、情報や知識が盛り込まれているといった感じでしょうか。写真(ほとんどモノクロ)や図版もそれなりの数入っていて、文章だけの説明よりはずっといいのですが、写真が置かれている位置と文章の位置がいまいちピッタリとせず、文章の説明している部分が写真のどの部分かを特定することが難しい。同じページに写真がないことも分かりにくさを増長している。

ソルズベリ大聖堂

ただ、他の本を読んでもこの手のものは、実際に実物を見て初めてその意味が分かるのも事実。この本でも紹介されているシャルトル大聖堂のタンパンやステンドグラスの美しさをいくら説明や解説しても、どんなに綺麗な映像で見ても、あの神秘的な美しさ・感動は言葉にならないし、伝えられない。

あくまでもこんなものあるんだ、見に行きたいな。そんなきっかけになりうるかも知れないのがこの本の役目もしれない。本当は中世の美術といっても多種多様な存在形式や表現形式があり、それらを包括的にくくろうとすること自体が、ある種の便宜的な物差しに過ぎず、なんでも分類し、類型化することで効率よく処理し、分かったような気になる現代的な病(やまい)なのかもしれない。そんなことを思いつつ、読んだ。

ランのノートル・ダム大聖堂

本書の場合は、包括的な説明は割合少ないほうで個別具体的な有名どころの大聖堂や礼拝堂、写本や彫刻などを解説しながら、中世的な特徴を説明してくれている。限られた写真の枚数と写真のどの部分のことを指すのかという特定の困難さ、それらの問題はあるものの総合的には悪くないと思う。基本となるロマネスク建築とゴシック建築について、挙がられているものはどれもこれも行ってみたいものばかりだ。コンクのフォアの聖女、カンタベリー大聖堂、ランス大聖堂等。

「嬰児虐殺」「エジプトへの逃避」、シャンティイ・コンデ美術館

「キリストの埋葬」、「鯨の腹に呑み込まれたヨナ」。クロースターノイブルク聖壇

美しい写本の説明も嬉しい♪ 『トレドの聖書』や『トリニティ・カレッジの黙示録』など、写本も好きな私としてはこれらの紹介があるだけでも楽しくなってしまう。駆け足の説明であることは否めないが、どんなものがあるかさえ知らない私には次へのきっかけになるものでした。

あと、本書全体で感じた不満は、説明に使われる用語がなんか古いってこと。最近の本はもっと分かり易い用語で説明しているのに、すご~く時代めいた漢字を多用した用語が多い。中世美術史の用語の統一や表記って、確定しないのかな?美術史を何も知らない私としては、そこが大変気になりました。法律用語や経済用語もそういうのってあるけど、今時の時代、情報の共有化による恩恵を享受しないのは、もったいないような気もするんだけどね。どんなでしょう?
【目次】
1 ロマネスクの建築と美術
2 初期ゴシックの建築と美術
3 盛期ゴシックの建築と美術
4 後期ゴシックの建築と美術

中世の美術 ケンブリッジ西洋美術の流れ(amazonリンク)

関連ブログ
「図説 西洋建築の歴史」佐藤 達生 河出書房新社
TBS世界遺産「リトルポーランドの木造教会群(ポーランド)」
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「中世の美術」黒江 光彦 保育社
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
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2006年02月19日

「秘境のキリスト教美術」柳 宗玄 岩波書店

ただ単に、物珍しさを求めて秘境に残されたキリスト教美術を紹介する、そんな本ではありませんでした。著者の言葉でいうなら、宗教美術であるならば、本来現世的なものを越えた聖なるものを志向するにも関わらず、そもそも美術自体が感覚に訴えるものであり、それをいかに肯定するのか、あるいは否定するのか。それらが最も端的に現われてくるものが世俗をまさに超越せんとする修道院、秘境におけるキリスト教美術なのではないか、そういう意識で本書はかかれています。

この本で描かれている美術は、技巧的に珍しいとか美術史上において高い評価を得ているとかいう次元で採り上げられているのではなく、あくまでもその美術を生み出した人々がどのような生活をし、どのような思いからそれを描き出し、それと共にあったのか。それを可能な限り、理解しようと勤めた試みを描いている。

実際に著者はその秘境といわれる地に向かい、そのカッパドキアなどの遺跡の中で壁画に向かってそれを体感しようとする。或いは、中世以来全く変わらない生活を続ける修道士達が住むアトス山に入り、修道院での生活を経験したりもしている。写真や記述された資料に頼るだけでなく、自らをその場に実際に置くことでその秘境における美術の存在自体に迫ろうとする姿勢には、何よりも説得力がある。うわっつらの理解ではない、本物の美術に対する情熱がつまっています。

著者が本文中で語っていることで特にう~んと唸らされたことは、「自分の目から見れば、およそ上手いともいえず、生き生きとした躍動感にも欠けた、単に様式に従って描かれただけの壁画の宗教画でしかない。しかし、一人の修道士がその絵に向かって飽かず眺め、その絵に口づけして祈る姿をみて自分の理解の仕方が学問的ではあっても宗教的な理解でない。」ことを愕然と悟るのが衝撃的でした。

宗教画において描かれている絵が上手いか下手かというのは、本来問題ではなく、あくまでもそこに描かれているものは、たかだか平面の存在でしかなく、大切なのはそれらを超越した聖なる存在であり、あくまでもそれを敬う為に聖なる存在に至るきっかけ程度のものでしかないわけです。

まあ、これは本書でも偶像崇拝の否定論・肯定論にも触れて書かれていますが、どちらにせよ、最も大切なのは表面的に目に見えるモノではなく、あくまでもその背後にある聖なる存在
こそが宗教画の本質であることを改めて理解し、自らの学問的な美術理解の限界を認識する。そのうえで著者が研究を進めていこうとする姿勢がとてもイイ! 感動物です。

そういった意味で美術を捉える根本を考えさせられました。まずは、自分の率直な感動、それを基点に徐々に興味が湧いた範囲で調べたり考えたりしていくしかないかなあ~と私なんかは一人で勝手に思ったりしました。まあ、基本は何事でも大切ですが、偏見に曇るのは避けたいしなあ~。その兼ね合いが難しそう。

これって旅行で史跡・旧跡などを回る時にも感じる複雑な感情です。ある程度は調べておいた方が対象物に対して関心が増し、同じものを見てもインパクトや感動が変わってくるのですが、中途半端な解説などを読んでしまうと勝手なイメージを自分の中で作り上げてしまい、まっさらな気持ちで目前のものを自分自身の感覚で捉えられなくなってしまうのも怖い…。

そんなわけで現在の私がよくやるのは、一つの場所を何日か或いは何度か行ってみたりします。最初はあまり知識を入れずに、その場所に行って気分の赴くままに適当に見て回ります。そして、その場所でのんびりと座っておもむろにその場所・建物・絵画に関する本を読み始めます。先ほど見て感じた思いを再現しながら、情報を集め、自分の中で理解が深まってからおもむろにまた同じ場所を回ったりします。

これを時間が無い時は、同じ日の午前と午後に。もっと時間があれば、もう一度別な日にその場所を訪れてあれこれ考えたり、本を見ながら実物を見ることでようやくなんか自分のモノにした気がしたりします。そこまでしないと、どうも自分のモノにならないんだよねぇ~。そこまでしないと、人様のものをただ見ただけのような気分でつまんない。逆にそこまでやると、結構、自分のもの的な感覚が芽生えていいカンジになったりします。ラファエロの聖母子なんか、連日通ったし、1回見終わってから戻るのを5、6回は最低でも繰り返したもんね。プラハ城も午前と午後に回るのは4日以上繰り返したから、結構知ったかぶりですもん(笑顔)。
勿論、アルハンブラ宮殿も連チャンです、ハイ!

とまあ、いろいろと思うことはありますが、美術について考えさえてくれる一冊でした。いい本だと思うけど、普通の美術関係の本を求める方向きではないかもしれません。

秘境のキリスト教美術(amazonリンク)
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2006年01月22日

「世界名画の旅 2」朝日新聞社

朝日新聞の日曜版で紹介されていた名画の記事をまとめたものです。個人的には日経新聞でやっている方が記事の内容がずっと面白いのですが、古書店で安く売っていたので気に入っている絵がいくつかあり、購入。暇つぶしに眺めています。飽きたら、切り抜いてポスター代わりにしてもいいしね。

解説はオーソドックスです。基本的に専門家ではなく、新聞社の記者さんが門外漢の立場から取材をして書いているので、誰にでも分かり易く、とっつき易いというのが魅力でしょうか?逆に言うと、いくらかご存知の方には物足りないレベルの解説ですが、絵が大きいので眺めるには良いかと。

フィリッポ・リッピ 聖母子と天使

フィリッポ・リッピ 聖母子 

フィリッポ・リッピです。一見するとなんかちょっと冷ややかにすましているような感じがしなくもないのですが…。端正な美という言葉が似合うようにも感じます。非常に品行方正の画僧が描いたとも思ってしまいそうですが、50歳過ぎて尼僧に手を出し、子供まで作って駆け落ちしちゃうんですから、なかなか熱い情熱を秘めた僧侶だったそうです。他の本でも読んだことがありますが、その後、法王のとりなしで還俗して俗人の画家として、教会に多数の絵を残したんですから、当時から評価は高かったんでしょう。と同時にローマ教会もなかなか寛容な時代だったみたいですね。個人的には、ラファエロの聖母子がNO.1ですが、その次の次に来るかな?結構、好きなだったりします。どうしても私の好きな作家さんは、色恋沙汰のエピソードの多い方が多いようですね(笑)。

ボクシングをする少年

エーゲ海に浮かぶサントリーニ島の壁画なんだそうです。迷宮クノッソス宮殿の怪獣ミノタウロスで有名なクレタ文明の一部がまだまだたくさん残っているんだって!紀元前1500年頃というと今から3500年以上前の文明の壁画なわけでなんか、凄いですね。ワクワクします。ボクシングをする少年が色鮮やかに描かれています。こういうのも見に行きたいですねぇ~。 

ボス「快楽の園」

お約束のボスです。プラド美術館に行った時も私的にはこれが一番でした。後はちょっとねぇ~。何度見ても、この絵ほどSF的なイメージを持つものはないなあ~。これに近いものでたまに見かけるのは、聖アントニウスの誘惑とかで、悪魔が怪しい生き物達と美女を遣わして誘惑する場面がなんとも幻想的でスキ! ボスの快楽の園につながるものを感じます。西洋美術館にある「聖アントニウスの誘惑」を見るたびに、私はいつもこの絵を思い浮かべます。

ロセッティ プルセルピナ

多くの画家や文人に愛されたロセッティの妻シダル。美の啓示をもたらすはずの美女も、最後は睡眠薬の大量服用による変死。いかにも優れた画家につきまとっていそうなエピソードが満載のこの画家ですが、やっぱりイイです。キツメの美女を描かせたら、ダントツではないでしょうか?テイトに行った時も見るならば、ミレーとロセッティー、後は妖精画の各種と思って連日行きましたもん。まあ、行く途中のパブも良かったけど。軽く飲んで行くと、美女がひいき目にこちらにほほえんでくれるようでもあり、普段が冷たいだけに、ちょっと嬉しかったりもする。絶対になびかないような美形好きなら、やっぱりこちらでしょう!! 西洋美術館にあるロセッティの「loving cup」も冷ややかな感じがする美女ですが、ハートマークの盃がなんとも意味深です。

ニースのヘッキング版モナリザ

これじゃなかったかな? ダ・ヴィンチ・コードの謎解き(もどき)番組で出てたニースのモナリザ? この本でもルーブルのモナリザの説明した後に、あちこちにあるモナリザの一つとして紹介してます。正直、モナリザ自体は絵として、あまり好きになれないので興味がありません。ダ・ヴィンチ・コードの本を当初、知りながら読まなかった理由にモナリザの絵が表紙だったからというのがあるくらいですから(天邪鬼な私)。まあ、自称モナリザはたくさんあるみたいです。それよりもなんでここまで人気があるのかが不思議でしょうがないのですが…?
【目次】
フィリッポ・リッピ 聖母子と天使
コンスタブル 干し草車
ボッティチェリ 春
サントリーニ壁画 ボクシングをする少年
ピカソ ゲルニカ
マネ オランピア
ルブリョーフ 聖三位一体
ジェリコー メデューズの筏
ゲインズボロ ジェイムズ・クリスティー肖像
ブリューゲル 子供の遊び
ルーベンス 二人の息子
セガンチーニ 死
クロード・ロラン デトス島のアエネアス
キリコ 街角の神秘と憂鬱
ボス 快楽の園
ベラスケス 宮廷の侍女たち
クリムト 接吻
ノルデ 仮面とダリア
ホーマ 八点鐘
ドローネー 赤いエッフェル塔
ターナー 金枝
レオナルド・ダ・ヴィンチ モナ・リザ
モンドリアン ブロードウェイ・ブギウギ
セザンヌ マルディ・グラ
ロセッティ プルセルピナ

世界名画の旅 2(amazonリンク)

関連ブログ
「美の巨人たち」日本経済新聞社 感想2(快楽の園の画像有り)
「悦楽の園」を追われて 中野孝次 小学館
国立西洋美術館にあるマグダラのマリア
ビートたけしの歴史的大発見 名画モナ・リザはもう一枚あった!
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2005年12月25日

「鯰絵」宮田 登、高田 衛他著 里文出版

しんよし原大なまずゆらひ

他の亙版の本や、印刷博物館で本物の鯰絵を見て漠然と関心を持っていました。鯰が地震を起こすので鯰が暴れないように押さえつけておくのが要石(かなめいし)。茨城の鹿島明神が要石で鯰を押さえているというのが、なんともユニーク。絵面も面白いし、なんか惹かれてしまう魅力があります。

鯰と地震の話は、誰でも知っているくらい有名ですが、地震が起こった後に鯰のせいだというだけで終わらないのがイイ! 地震は、確かに建物を壊したり、世の中を混沌とさせるのですが、壊れたら新しいもので立て替えなければならなくなるように、必然的に新しいものを生み出す原動力にもなるんですね。逆に、マイナス面のイメージが強い地震を積極的に、「世直し」鯰などという絵で捉えるような考え方があったというのには、驚かされます。

切腹鯰、小判が腹からザックザク

江戸時代にあった身分制度や武士よりも羽振りのいい商人の存在など、社会的矛盾などへの鬱屈した思いが、こういったものにも反映されているのかも? 今の日本にもある閉塞感にもつながるような気がします。

まあ、そういう背景的なものをおいておいても、単純に見ていて楽しいです♪(笑顔)

鯰の宝船

鯰に乗った宝船に、落語鯰亭の一席。何故に鯰が宝船とかかわりを持つかと言いますと・・・? この絵とかってどういう意味だか想像つきます? 資産を持つものにとっては、地震等の災害は損失以外の何物でもないわけですが(当時、保険がないので)、持たざるものにとってはむしろ、建設ラッシュなどで雇用が増えるし、資産家からの出費で貨幣流通量も増え、景気がよくなるわけです。要は、不況だから政府主導で公共事業を増やせというケインズ経済学そのまんまだったりします(笑)。

まあ、実際、それで庶民にとってはかえって景気が良くなったものも多く、社会全体面からも地震はマイナス面ばかりではなかったようです。

鯰と職人達

特に地震で儲かった建築絡みの職人達が、大恩人の鯰様を囲んで楽しく一席を設けている風景です。ヒューザーの社長や姉歯建築士とかも混ざっていそうですね(苦笑)。

仮宅遊

吉原も当然そのままでは営業できず、復旧されるまでは仮宅での営業となります。あくまでも応急処置としてなので、通常の面倒な手続きを省き、その分値段を安くしたので通常にも増して、商売大繁盛!! まさに鯰さまさまってな感じも嘘ではないようです。

しっかり品定めをしている鯰のお客さんがなんとも心憎いです。まさか、ひやかしじゃないでしょうね(笑)。

この本は、資料としてはなかなか興味深いものがたくさん集められています。資料としては結構、有用かも? その一方で、鯰絵の資料ではなく、鯰の資料であったり(鯰の種類についての写真)、集まられている文章も鯰絵の範疇から悪い意味でそれていて、なんでこの本に入っているのか分からない文章も散見されるのはどういうことでしょう? 編集者の意図をいささか疑う側面があるのも事実。7千円出す以上、資料集としてなら、それに徹して欲しかった。言葉を悪く言うと、ただなんでもいいから鯰絡みのものを集めたとさえ言えてしまうのが悲しい。

面白い本であり、嫌いではないが、7千円の価値はない!と思う。それゆえ特価書籍として出回っている事実は首肯できる結果である。3千円以下で新品が入手できるはず、それ以上の価値を見出すのは難しいかもしれない。

おしいんだけどねぇ~、あまりにも無駄が多い。情熱に伴う余波としての無駄ではなく、ただ紙面を埋める為の無駄としか思えないのが、非常に悲しく感じる。何故、せっかくの鯰絵なのに、そのテーマでもっと&もっと掘り下げないのだろうか?あれだけの大部の作りに、値段設定。どう考えても一部のマニア的な層しか買うわけない商品なのに、その層の目の肥えた人がこの本を欲しがるとも思えない。少しはそそられるだろうけど・・・ね。それだけが本当に残念!

面白い素材と資料が集まっているのになあ~。安いのがあれば、手元に置いておく資料系の一冊でした。

鯰絵―震災と日本文化(amazonリンク)

関連ブログ
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社
印刷革命がはじまった:印刷博物館企画展
「図説 浮世絵に見る江戸吉原」河出書房新社
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2005年12月17日

「中世の美術」黒江 光彦 保育社

小さな&小さな文庫本なのにほぼ半分が全てカラーや白黒の写真で、なかなか素晴らしい!!よくぞここまでのサイズで詰め込んだと拍手喝采したいくらい、画像が充実しています。他の本や写真集で見たことのある大聖堂や壁画、古写本などなどがたくさんあって、それを見ているだけでも楽しい♪

残念なのは、逆に言うとこれだけ良い画像があるのに便利さで犠牲になっているサイズでしょうか? それと出版が古くてね、どうしても紙が古くなってしまっているのが非常に残念。新しく出してくれれば、新品を買うのに・・・。昭和39年ぐらいのものなんで、amazonでは検索しても出てこないしさあ、ちぇっ。

でもね、状態の良い物があればお薦めします!! 是非、買っておいて損はないかと。

後半は初期キリスト教美術からバルバロイ、カロリング朝美術、ビザンティン美術、ゴシック美術まで、分かり易くて楽しい解説がついています。

でも、やっぱりお薦めは絵と言うか写真ですね。初期キリスト教のモザイクや「ダロウの書」「ゲラシウムの典礼書」聖フォア座像、「ベアトゥス黙示録注釈書」シャルトル大聖堂の青の聖母、ケルン大聖堂、「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」等々。大きな写真で観たかった!!

文庫で古いので頁を開いてうまく画像を取り込めず、ここでは紹介できませんでしたが、いいもの揃ってると思います。見つけたら、是非&是非お薦めします。
ラベル:中世 アート 図像
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2005年11月16日

「黒マリアの謎」田中 仁彦 岩波書店

黒マリアに関する本はいろいろありますが、この本が一番よくまとまっていて、内容が一番しっかりしていると思います。(私が読んだ範囲の中ですが)

結論としては、黒マリアについての起源をケルト由来の大地母神に行き着くところは一緒ですが、そこに至る過程が他の本とは違います。一つ一つ他説の根拠に対して、筋道を立てて反論や肯定をしながら、自らの仮説を進めていくので非常に納得がいくし、勉強にもなります。黒マリアに関心を持っていて、きちんとしたものを知りたい方には是非お薦め致します。残念ながら絶版ですが、大きな図書館とか調べればきっと見つけられると思います。資料としても手元に置いておきたいなあ~と思う一冊です。

いろんな話を知ることができ、単純に読んでるだけで面白いです。ケルトに関しての考察もなかなか詳しいと思います。なにげにマグダラのマリアやシャルトル大聖堂といった私の好きなものも盛りだくさんでした(満面の笑み)。以下、幾つか引用しておきます。
果てしなく広がるボース平野の中心にただ一つ聳え立つシャルトルの丘は、かつてドルイド教の重要な聖地だった所であり、そこには満月の晩には四方から集まってきたドルイドたちが集会を開いた「強き者の泉」と呼ばれる聖なる泉があって、その傍らに「産み出す処女(Virgo paritura)」という文字が台座に刻まれた黒い母神像が祀られていたことが知られている。ドルイド教の女神像にラテン文字が刻まれていたというのは奇妙な話ではあるが、これは古来のドルイド教の言い伝えをローマ属州時代になって文字にして彫り込んだものだという解釈にここでは従っておくことにして、はっきりしていることは、やがてキリスト教時代が訪れた時、ドルイド教に対するキリスト教の勝利を誇示するかのようにこのドルイド教の聖なる泉の上に建てられたシャルトル大聖堂は、この泉を「殉教者の泉」と名を変えてその地下に温存するとともに、この母神像を黒マリアとして地下祭室に祭ったということである。
シャルトル大聖堂の黒マリア、やっぱり基本ですね!
興味深いのは、カマルグ地方の地中海に面した町レ・サンド・マリー・ド・ラ・メール(海の聖マリア)に伝わる伝説である。この伝説によれば、キリストの処刑後、この処刑の場に立ち合っていた三人のマリア―――マグダラノマリア、小ヤコブとヨセの母マリア、マリア・サロメ―――が、死からよみがえったマグダラのマリアの弟ラザロや召使のサラたちとともに、ユダヤ人たちに追われてこの海岸に流れ着き、このあたり一帯に布教した後、この地に葬られたというのである。この話には更に尾鰭がついて、マグダラのマリアとラザロはブルゴーニュ地方にまで布教に行き、マグダラのマリアはヴェズレーに、ラザロはアヴァロンに葬られたということになるのであるが、こうした伝説の発生の元になったのはいったい何だったのであろうか?それはキリスト教以前からこの地に三体の女神が祀られていたということではないのだろうか。この三女神は三人一組になったあのガリヤの女神像であったかもしれないし、海の向こうから流れ着いたという伝承になにがしかの真実が含まれているとすれば、むしろキュベレ、アルテミス、イシスの東方の三女神であったかもしれない。そして更に伝説によって三人のマリアに結び付けられた召使サラの正体は、サイヤンの想像するように、もしかしたらインドのカリー神かもしれないのである。このレ・サンド・マリー・ド・ラ・メールでは、一年に一度、各地から集まってきたジプシーたちの盛大な祭りが行われるのであるが、彼らは三人のマリアの方には見向きもせず、まっすぐに地下祭室に祀られている黒いサラの像を礼拝しに行く。彼らにとってはサラは三人のマリアの召使などではなく、三人マリアとは無関係な彼らの神なのである。

ケルトの神には三体の女神があるんです。それがマグダラのマリアの漂流伝説に絡む可能性も?
シャルトルのそれと同じく「地下の聖母」の名を持つモン・サン・ミシェル大修道院の黒マリア。この黒マリアはフランス革命の時に破壊されて今では存在していないのであるが、それまではこの大修道院地下の「三十本のローソクの洞窟」に祀られていたのである。まるで要塞のように海中に聳え立つこの岩山の大修道院は、岩山がもともとは「墓の山」と呼ばれていたケルト古来の重要な聖地、おそらく西の海中に没してゆく太陽に関係した聖地だった所であり、伝説によれば、アヴランシュの司教オベールの夢枕に立った大天使ミカエルがケルトの太陽神にとって代わったということであろう。

モン・サン・ミッシェルにも黒マリアがあったなんて、初めて知りました!!(驚愕の事実)ミカエルがケルトの太陽神に代わっていく過程やさらにはエジプトのトト神につながる話は、非常に興味深かったです。これは、読んでおきたい一冊でしょう。

黒マリアの謎(amazonリンク)

関連ブログ
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「フランスにやって来たキリストの弟子たち」田辺 保 教文館
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「ケルト神話と中世騎士物語」田中 仁彦 中央公論社
「黒い聖母崇拝の博物誌」イアン ベッグ  三交社社
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2005年11月02日

「神聖受胎」澁澤龍彦 現代思潮社

神聖受胎今回は、もうレビューになっていません。この本を読んだ結果、インスパイアされて私が思った独りごとです。おそらく全然本の紹介になっていないので興味ない方は、読まずに飛ばして下さい。


【※以下、良識ある一般人が読むには値しない内容です。他の記事をお読み下さい。】




もう、ほんと大昔に読んだ本。あの当時意味も解らないまま、読んだであろうことが窺われる。だって、今読んでも100%理解しているとは言い難いくらいですから。

おまけに今の私の目から読むと、正直言って文章も硬く、いささか自分よがりに書いているうえにさえ見える。また、当時の時代色がはっきりと色濃く出てきていて、まさに資本主義VS共産主義対決や1960年代の香りが匂い立つような文章であり、その後のソフィスケイトされ、スタイリッシュな観さえある澁澤氏独特の文章とは、未だ一線を画す頃のものである。

逆に言うと、昨今では全く状況が異なり、まだいろんな意味で社会的な不満(=階級的対立に由来する?)がストレートに社会で表出しており、それを人間が本来的に持つ権利の主張として理性的に捉えるべく苦悩している。そんな時代にも私には見えた。

今は不満があってもそれは『社会』という共同幻想が産み出した偽りにさえ表象できず、個々人が私的未消化物としか認識し得ていないのではないだろうか? 社会を問題視できる時代は過ぎ去り、社会の束縛からどう抜け出していくかの時代から、それ以前の社会をどう認識して個人との間に関係を築くか、もうそのレベルまで社会規範の象徴性が希薄化しているのであろう。そんなことをこの本を読みながら、強く感じた。勿論、これは今の私の感想でしかないのだが…。

各種の雑多なエッセイやら評論やらをまとめた作品であり、澁澤フリークか今の時代においては、ブームに乗り損なった古き時代のエセインテリの残党ぐらいにしかお薦めできなくなってしまっている。元(?)澁澤ファンとしては、自分で自分を貶めるような自虐的なレビューであるが、古くても素晴らしい澁澤氏の作品がたくさんあるし、率直な今回読んだ限りの感想(というより独りごと)として紹介しておきます。この作品は全体としてはあまりいいと思いませんでした。

でもね、かの有名なサド裁判に関するところは良かった!裁判自体についてはもっと詳しく書かれた本がありますのでそちらをお薦めしますが、やはりこの本に書かれている部分も本質を捉えていて胸に響きます。

「猥褻」という概念は、初めから存在するものではなく、官警等の権力側(=体制側)の人々が彼らの築き上げた秩序維持上、不都合なるもの又は将来的に不都合になりうるものを見出した瞬間に生まれるものであり、その概念が本来的に有する恣意性や一方向性を鋭く指摘されているのが興味深い。思春期に澁澤氏の本を読むことで知らず知らずのうちに薫陶を受け、陶冶されてきたこの理性を武器にありとあらゆるものと闘う姿勢は、未だに私の人生の根底のところで息づいていることを感じざるを得ない。

さすがに良識ある(=ああっ、なんと小市民的響きに満ちた恥知らずな大衆の唯一の知恵であろう?)私は無政府主義者にもテロリストにもならなかったが、常に体制側に身を寄せつつも、その姿を異なる自分が冷笑している二重生活に甘んじざるを得なかった。生活の為と言いながら、身過ぎ世過ぎの為に労働することは、果たして真の人間らしさと呼べるのであろうか? 労働自体は、自らを律していく素晴らしき”業”にはなり得ても、生きる為という目的故に本能に呪縛された人間の理性故の行動になり得ない。そんな恐れがかつての私を、今の私を締め付ける。

たとえどんな仕事であってもまず、問題なく適切に処理できてしまう如才なさが逆に、我と我が身を貶める。仕事ができない故の世俗的評価の低下を恐れて、頑張ってしまう自分の矮小さがむしろ目に見えて哀れとも言える。万物における無知(=他人の目を省みない、美点をも含む)は恥ずべきことではなく、一種のタレントであり、自分が自分らしくいられる才能であることを痛感する。

若かりし頃に、澁澤氏に触発された思いがこの本を読んで思い出した。アカデミズムの世界に耽溺できず、実社会においても無知を貫き通せない自分。小賢しい労働者ほど、滑稽なものもないであろう。悲劇ではなく、喜劇でしかない。

澁澤龍彦氏のサインまあ、澁澤氏の本の副作用ってところでしょうか? はるか昔に仕掛けたタイマーが突然鳴り出したかのようでした。やっぱり、危険な書かな?コレ?

こういった私のような人が生まれてこないように、お上が民衆の事まで心配してくれたのが「猥褻」事件だったようです。巷のマスコミは、当時も今も変わらずに誤解したまま、Hなことと勘違いしてるようですが、そんなものは社会にとって好ましくはないが「危険」ではなく、わざわざお忙しい検察官様が問題にするはずなのにね。

それらを含めて「猥褻」概念の話は興味深いです。学部生の時は、それを卒論のテーマにしようかと思って資料調べていたしね。まあ、懐かしい思い出です。『猥褻とは何か?』判例に見られる定義が凄い!! 裁判官が当時の社会状況や社会通念上、良識ある一般人を恥ずかしいと思わせるものなんだそうです。要は、おえらい裁判官様が決めて下さるんだって。水戸黄門か遠山の金さんの世界。凄い法治国家だこと(笑)。

ああっ、いけない。反体制主義者と思われてしまう。今日も真面目にスーツ来て商談してきたのに・・・本性が出てしまう(笑)。おとなしく働いて税金を天引きされ、たまの週末に大切な人と巨大資本の提供する規格化され、あてがわれた娯楽に興じなかれば…。決して掛けた以上に戻ってこない年金も支払ったりしながら。

とまあ、こんなふうに考えるようになってしまう危険な書です。んっ!? 冗談です&冗談。あまり、深刻に捉えないように、軽~い書きなぐり文ですので。なんかひねた中学生とかマセがきが書くような文章だなあ~。もしかしたら、後ほど削除するかも? 読み飛ばして下さい。

それでは口直しに、澁澤氏のサイン。どうでしょう? これ、本物? ご存知の方は、コメントか何かで教えてもらえると幸いです(御辞儀)。
【目次】 これも河出書房新社のもの、ここに入ってないものも現代新潮社のものにはあるが、「他」の部分に含まれているのかは不明?

ユートピアの恐怖と魅惑
狂帝ヘリオガパルスあるいはデカダンスの一考察
反社会性とは何か
ワイセツ妄想について
神聖受胎あるいはペシミストの精神
スリルの社会的効用についてあるいは偽強姦論
国語改革はエセ進歩主義である
前衛とスキャンダル
仮面について―現代ミステリー映画論
「好色」と「エロティシズム」―西鶴と西欧文学
知性の血痕―ブルトンとトロツキー
銅版画の天使・加納光於
燔祭の舞踊家・土方巽
「鉄の処女」―春日井建の歌
発禁よ、こんにちは―サドと私
第1回公判における意見陳述〔ほか〕

神聖受胎(amazonリンク) 残念ながら現代思潮社の本は絶版の為、河出書房新社のものを挙げておきます。
posted by alice-room at 21:22| 埼玉 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする

2005年10月30日

「ヨーロッパ聖母マリアの旅」若月 伸一 東京書籍

maria1030.jpgえっと、読む前はもうちょっといい本かと思ったんですけどね。写真もあるし、一見するといいカンジなんですけど、実際に読んでみると違った印象でした。

要するに、単なる紀行文。文章量は多いが、肝心の中身がない。紀行文としても私的にはイマイチでした。読んでて知識もそれほど増えるとは思えないなあ~。大部分知っている話でした。ただ、どの本で読んだか忘れてしまっていたのも多かったのも事実。

せっかく読んだので、メモ代わりに改めて抜粋しておきます。他の本でもよく見る有名なお話です。
不思議なメダイ:
十二歳のカトリーヌ・ラブレーに聖母が御出現。聖母マリアの周囲には「ああ、無原罪のお宿りの聖母マリア、御身に頼る私のために祈りたまえ」という啓示の金文字が浮かび上がっていた。さらに、大文字のMの上に十字架、下にはイエスと聖母マリアの聖心が下がって図匠が現われ、それをモデルにメダイを造り、それを首にかけて祈りを唱える者には聖母マリアの恩寵が下されるであろうと告げた。

ちなみにこのカトリーヌ・ラブレーが亡くなった後、1933年にお墓を発掘した所、埋葬した時と同じ状態(腐らずに)で発見された。現在はガラス張りの棺の中で安置されている。

エフェソスの聖母マリアの家:
ドイツの修道女アンナ・カテリーナ・エマリッヒの幻視が発掘のきっかけ。彼女は聖母マリアがエフェソスで死を迎え、最晩年を過ごした家のある丘からはエーゲ海を聖女マリア教会へ延びる道が見えると予言した。

こんなふうの記述があります。ル・ピュイとかね。まあ、雰囲気とノリだけのような気もするんですが・・・。私個人としては、あまり良い本とは思えませんでした。値段もそれなりにするけど、それに見合った価値はあるかなあ~?

ヨーロッパ聖母マリアの旅(amazonリンク)

関連ブログ
「AVE―天使・聖母マリア・イエス」若月伸一 東京書籍
posted by alice-room at 23:30| 埼玉 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする

「蔵書票の美」樋田 直人 小学館

zouhyou.jpg正直言って、かな~りディープなマニアの世界。その本が誰のものか(僕のもんだい!)、といった所有者を明示する為に、蔵書に付ける付箋みたいなものと言えばよいでしょうか? 要するに商品についているブランド名のタグみたいなものがこの本で扱っている蔵書票です。ラテン語で EX LIBRIS と言うんだそうです。

日本だと蔵書印の方が一般的だと思いますが、西洋では印よりこの蔵書票の方が一般的なんだって。革張りのしっかりした装丁のぶ厚い本とかには、その方がピッタリくるからだそうです。なるほどね。たま~に見る事ありますが、あれってなかなかカッコイイですよね!!

蔵書票確かに意匠も独特で個性的なものもありそうですが、それを《紙の宝石》と呼んで、収集しているコレクターがいるとは思いませんでした。一種の美術品のような扱いなんだそうです。くぅ~かなりきてます。本を集めたりするのは分かるけど、まさか蔵書票まで集めているとはね。まあ、テレカ集めたり、切手集めたり、いろんなジャンルのコレクターはいるんでしょうが、『日本書票協会』という団体まであるとは知りませんでした。ある種のスノッブさが感じられてきそう?

それはともかく、本書はこのディープ且つマニア心をくすぐる小紙片を取り巻く妖しい魅力ある世界をたくさんの資料や作品例で解説しており、こんな世界があったんだと、未だ知られざる新たな世界への目を開かせてくれる本です。美しいものが好きとか、モノを集めて並べたり、整理するのが好きな人にはうってつけの世界です。

だ・か・ら・・・

怖いんですよ~。これ読んでると自分も集めてみたくなって困ってしまう。実は、なにげにいろいろと紙系のものをコレクションしていたりする私としては、この手の誘惑には弱いんですよねぇ~。意識して捨てるようにはしているんですが、なかなか面白くて美術館の入場チケットとか捨てられなくて・・・。興味ない人には紙ゴミでしかないんですが結構、凝ったデザインや魅力的なものもあり、アルハンブラ宮殿のものとかまだ2枚も持ってるしなあ~。ロンドンやNYで観たミュージカルのチケットや無料のパンフレットとかも持ってたりする。それ以外にも世界各地で購入した絵ハガキもあるし、栞もあるし、他にも・・・。

蔵書票うっ、ヤバイかも? 原則的には、わざわざその為にお金を払うことはしないようにしていますが(無駄はキライ)、思い出に関わるモノや綺麗なモノ、珍しいモノは捨てらんない。こういう私みたいな人には、はまりそうで怖い本です。少なくとも、この本を読んで蔵書印をそのうち作ろうとは、決めてしまいましたもん。

特殊な私の嗜好に合致して、尚且つ独自基準で内容が合格した保存しとくものにベタッと押してみたいですね。う~、なんか楽しそう。まあ、論より証拠。本書にいくつか載っていたものをここに転載しときますね。

ちなみにカラーは冒頭の数ページだけで、あとはモノクロですのでデザインは分かるものの綺麗な色を期待して本書を買うのはお薦めしません。でも、読み価値っていうか観る価値はある本かも? とても楽しい本でした。マッチラベルの本とか、あと引札の本とか綺麗なもの大好きなんだよね~。

蔵書票の美(amazonリンク)

posted by alice-room at 01:56| 埼玉 🌁| Comment(4) | TrackBack(0) | 【書評 美術】 | 更新情報をチェックする

2005年10月20日

「もっと知りたい葛飾北斎」永田 生慈 東京美術

瑞亀図
瑞亀図

鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月
鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月 

採り上げられている絵がとっても綺麗で種類や枚数が豊富なうえに、説明がポイント良くまとめられており、すっごく分かり易い。文章量もこの手のものにしては、それなりにボリュームもあり、きちんと解説してくれているのも嬉しい。

酔余美人図
酔余美人図

富嶽三十六景「駿州江尻」
富嶽三十六景「駿州江尻」

北斎の歩んだ生涯を、{誕生・幼少期、習作の時代、宗理様式の時代、読本挿絵と肉筆画の時代、絵手本の時代、錦絵の時代、肉筆画の時代、北斎死す}と大きく分けつつ、それぞれの時期における北斎の画業・動向を代表作を示しながら、説明をしてくれていて、とってもGOOD!

富嶽三十六景「凱風快晴」
富嶽三十六景「凱風快晴」

諸国瀧巡り「下野黒髪山きりふりの滝」
諸国瀧巡り「下野黒髪山きりふりの滝」

個々の絵の説明も普通のものより詳しいし、北斎に関わるエピソード等も所々挟んで、読書を飽きさせません。見ているだけでも楽しいし、読んでも面白い、この本に目を通してから北斎を見に行くと絶対に面白さが違ってきますね。たぶん。値段の割には価値ある一冊です。

諸国名橋奇覧「飛越の境つりはし」
諸国名橋奇覧「飛越の境つりはし」

「肉筆画帳」塩鮭と鼠
「肉筆画帳」塩鮭と鼠

そういえば、もうすぐ東京国立博物館で北斎展あるなあ~。時間取れたら観に行こうっかな。

赤壁の曹操図
赤壁の曹操図もっと知りたい葛飾北斎―生涯と作品(amazonリンク)

関連リンク
東京国立博物館 北斎展
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2005年10月03日

「AVE―天使・聖母マリア・イエス」若月伸一 東京書籍

ave.jpgそれなりに大判で見易いサイズの写真集となっています。実際、写っているのは歴史ある教会で飾られている綺麗な天使やマリア、イエス等々です。私も含めて日本人が好きそうって感じがします。

ですけどね、冷静になって考えるとこの本って、問題有り? 実はこの著者、以前に出した本が結構売れたんだと思います。確か聖母マリア関係の同じノリの本です。そちらは私が見ても良かったし、買おうかどうしようか今も迷っていますが、この本はそこで売れたので二匹目のドジョウを狙って作られたものではないでしょうか? 

だって、写真の水準が前よりも落ちていると思います。何故、そんなことを言うかというと、フラ・アンジェリコの「受胎告知」の写真が変。素人の方が絶対にうまい!! 他のも被写体がいいものの、紙面が大きいので写真が大きくなっているだけで、デジカメの500万画素に望遠レンズ付ければ、正直言って素人でもこれぐらい撮れそう。勿論、私は素人なんで写真としての芸術性が分からないだけ、という可能性もありますが、これは残念。

しかも前は同一テーマであったから統一感がありましたが、この本は残った写真を集めただけじゃないかな?キリスト教その他大勢をテーマにしていますが、とりあえず残っているのでもう一冊本を作ろうとしたのがありありと出てる…だって、タイトルにそれ表れてません?これってただの観光写真とどこが違うのだろう? 

著者の経歴を読むと、ヴァチカンの大学で勉強したり、イタリアにいたり、現在はドイツにいらっしゃるようですが、だったらもっと多数の素晴らしいものを目にされていると思うんです。きちんと勉強されていらっしゃるはずのに…、それゆえ手抜きではないかと? 御自分の生活圏内のイタリア・ドイツを中心とした作品ばかりで、なんだか納得が行かない…。ヨーロッパにはもっと&もっと素晴らしい宗教芸術が無数にあると思うんですけどね、プラハでもスペインでももっとあるでしょうって!

なんか批判ばかりですが、実際に見ると綺麗でそれなりに素敵に見えます。悪くは無いんでしょうが、どうもやっつけ仕事に思えてしまうんですよ~。大判にして写真減ってるみたいで、値段だけ高くするのって…。出版社が楽して稼ごうとしてませんか? 写真集だから、説明を求める私が間違っているのかもしれませんが、それぞれの写真にはほとんど解説がありません。ただ、教会の場所と題名ぐらい。せっかく知識のある著者が説明もせず、ただ写真を並べてもなあ~。

まあ、お金に余裕があればいいんでしょうが、3千円の価値を見出せませんでした。但し、悪い作品でもないと思います。私の見方がうがっているのかもしれないですし。もし買われる方は実際に見てから買われることをお薦めします。老婆心ながら。

(右)ニュルンベルクの聖ロレンツォ教会 (左)ストラスブール 大聖堂

ニュルンベルクの聖ロレンツォ教会、大天使ミカエル

フランスのランス、大聖堂、受胎告知

ランス大聖堂の受胎告知

スペインのサラマンカ、新大聖堂、東方の三博士

スペインのサラマンカの新大聖堂 東方の三博士

ケルン、大聖堂、東方の三博士

ケルンの大聖堂、東方の三博士

ローテンブルク 聖ヤコブ教会、最後の晩餐

ローテンブルクの聖ヤコブ教会、最後の晩餐

ニュルンベルク聖ロレンツォ教会、聖ヴェロニカ

十字架を背負うイエスのお顔を拭いたいわゆる「聖骸布」ってやつです。女性は聖ヴェロニカ。ニュルンベルクの聖ロレンツォ教会

ランス大聖堂

やっぱり綺麗です。ランス大聖堂のステンドグラス。

AVE―天使・聖母マリア・イエス(amazonリンク)
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2005年09月08日

「絵金 ArT RANDOM CLASSICS」デザインエクスチェンジ

ekin1.jpg

だいぶ大きいサイズの画集で、大好きな絵金(=絵師金蔵)を扱っているというので楽しみにして購入したんですが、失敗した一冊!

頁数が少なく、サイズは大判でこの値段だもん、それなりのもの期待するでしょう。やはり。物の見事に裏切ってくれます、この本。全部がカラーなのは当然だけど、レイアウトというか写真の撮り方が完全におかしい? 大判なのだからわざわざ見開きにして2頁を使う必要ないのに一枚の写真を分けてしまっている。迫力を出したいのかもしれないが、1頁で済むを分かることでかえって見にくくなり、紙面を浪費すると共に、煩雑さが増してしまっている。

ekin2.jpg

更に悪いことに、全体を写した頁の隣に、わざわざ細部を拡大しているがそもそも紙面が大きいのでそれらも一切が不要。中途半端に部分を取り出すことで主題から乖離してしまい、何がなんだか分からなくなっている。完全に製作者側の一人よがりで読者サイドの事が理解できないでいる。せっかくの絵金の作品が、色褪せて見える。

そもそも絵金については、テレビ東京の昔の番組「極めるⅡ」で絵金が採り上げられているのを見て、感動してしまったことに始まる。それ以来、ずっと気にはしていたが、特に調べていなかった。たまたま、アマゾンで見て衝動買いして失敗した(鬱)。相当ヒドイ本。決して定価では買わないように。きっともっと絵金の素晴らしさを教えてくれる画集があるはずですので。老婆心ながら、ご忠告まで。

ekin3.jpg

絵金については、関連サイトを以下に挙げておくので興味のある方は見て欲しいですが、元々は町民の子供だったのが、絵がうまいというので土佐藩のお抱え絵師になり、苗字まで許されて大層出世した絵師でした。

若い頃からその才能を認められ、江戸にまで留学して基本をしっかり身に付け、周りの者が羨む出世を果たすのですが…。いつの時代でも出る杭は打たれる、ではありませんが、とある陰謀によって贋作を作ったことにされ、その罪故に、お抱え絵師の地位を失うのでした。

ekin4.jpg

ですが、そこは大物。町絵師として以前にもまして自由な作風で素晴らしい作品を残していったのです。それが現在でも高知の赤岡町で見れるそうです。7月第3週の土曜・日曜日に、絵金祭りが行われ、大通りに沿った町内各氏子の家の軒先で、絵金の芝居屏風絵が一枚ずつ並べて置かれるんだそうです。これに是非、行きたくて!! 以前、TVで見たのもその祭りでの様子を取材したものでした。夏の夜に蝋燭で照らし出された、血色で毒々しいまでに鮮やかな芝居屏風絵。幻想的過ぎますって! う~、今年も行けなかった(残念)。

いつか行きたいなあ~、このお祭り。と、その前に絵金のいい画集が欲しいな。

絵金(amazonリンク)

関連サイト
絵金に関するページ 高知県立美術館
サムライ・ニッポンの異端画家 絵金
絵金祭りの写真
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2005年08月24日

「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社



先日、買ったステンドグラスの絵解き本と同一の著者による本です。本と言っても文章はほとんどなく、もうこれでもか、これでもかというくらい大きな写真によるステンドグラスばかりの本です。個人的にはもうちょっと説明も欲しかったんですけど、そもそもこの出版の企画は、著者が個人的に有する古い教会のステンドグラス写真をたくさん紹介したかったんだと思います。タイトルも巷にあふれていてあまり特色の無い通常のステンドグラスとは、ちょっと違うぞ!っていうぐらいの意味合いかと?



これは完全に写真集とか画集とかですね。とにかく歴史のある美しいもの、且つ宗教画をテーマにしたステンドグラスを見たいというなら、間違いないでしょう。私的には、前回の素晴らしい作品集を見てるので、あれよりは少し落ちるかなあ~と思いますが、持っていて悪くない一冊です。



ただ、またしてもこれも絶版なのですが…。古書市で探したけど、あまり出回っていないようです。



しかし、ステンドグラスも奥深いものです。知れば知るほど、神の世界を具現化するその素晴らしさには驚愕するばかり。色により光の伸縮性みたいなものが異なってくるそうですが、それを踏まえて、教会の西側に位置する薔薇窓と南側に位置する薔薇窓で基調となる色を変えてあるなんて! 先ほど読んだシャルトル大聖堂の本にその辺のことが詳しく書かれていましたが、そういったことを踏まえてこの本を読むと、より一層楽しく眺めることができます。

読むというよりは、眺める絵本みたいなものでしょうか。だてに「貧者の聖書」じゃありませんね。

ステンドグラスによる聖書物語―志田政人写真集(amazonリンク)

関連ブログ
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「シャルトル大聖堂」馬杉宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
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2005年08月16日

「高畠華宵」松本品子 河出書房新社

中将湯の広告日本ビクターのポスター

もう言うこともないでしょう。先日行った弥生美術館でも展示されていた華宵の作品集です。編者がそもそも弥生美術館の学芸員なので、こないだ見た作品について、更に詳しく説明がされています。

薔薇の香ポスターもいいし、日本画も言うことなし。まずはあれこれ言わず、ぼお~っと眺めてみましょう。とっても優美です。

華宵は、元々は苦しい生活から努力して当世に名だたる売れっ子挿絵家になったそうです。その後、売れていくに従って生活は、あたかも殿様のようだったとお弟子さんの証言が述べられています。その私生活はまさに上げ膳すげ膳で、靴を履くのもお弟子さんが手伝うのだそうです。勿論、食べ物にもうるさく、今で言うならお取り寄せに近いようなことまでしていたそうです。

稲村ガ崎に「華宵御殿」と呼ばれるモダーンな豪邸を建てて、白いカーテン、セセッション式の絨毯、ゆったりしたアームチェア、虎の毛皮の敷き物、エジプトの煙草、トルコ風の入口、卵色のシャンデリア、金箔装の洋書に囲まれ、まさに華宵好みを実践していたんだって。

夜を愛し、まさに宵っ張りの生活をしていたそうです(ここだけだな、私と一緒なのは)。まあ、書いているとキリがないのですが、ちょっと前の小室哲哉かツンクなんかのスケールを数百倍ぐらいにしたもんかな? よく分かりませんが、とにかく華宵の描く女性の身に付けるファションを元に服が作られて三越や松坂屋で売られていたそうですから。口先だけで役に立たないおすぎさんとは違いますよ~。まさに時代の最先端で、未来の体現者だったようです。便箋の表紙を書けば、便箋が飛ぶように売れ、華宵デザインの浴衣まであったそうです。

もっともそれだけ華やかな人生も晩年には曇りが出て、渡米をして永住を願いつつも夢半ばにして帰国したそうです。楽有れば苦有り、驕れる平氏は久しからずってとこでしょうか。人生の晩年まで栄光で終わるのは、やはり難しかったようです。

それでもあの作品の素晴らしさには変わりありません。実物は更にいいです。美しいものが好きな人には、この本をお薦めします。

編み物

胡蝶、便箋 人魚

高畠華宵(amazonリンク)

関連ブログ
弥生美術館&竹久夢二美術館
「昭和美少年手帖」中村 圭子編 河出書房新社
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2005年08月08日

「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社

sutend.jpgしかし&しかし、なんでこんないい本が絶版のままなんでしょうね。まだ発売して間もないないのに(2001年の出版)、もう無いなんて。出版社は増刷するにはリスクありと踏んでいるのでしょうか?その辺りの事情は分かりませんが、ステンドガラスが好き、ゴシック建築が好き、教会建築が好き―――このどれかに当てはまる人は絶対に買っておいて損は無い一冊です。これ以外の人でも、美しいものが好きで知的好奇心がある方とか、或いは旅先でよく教会をうろうろしてる人、高いけど無理して買っておくと“絶対に”貴方の人生が広がりますよ~。

stend4.jpg

専門家の方には、どうか分かりませんが、とにかく素晴らしい解説書だと思いました。フランス中の教会・聖堂を著者が自分の足で歩いて古いステンドガラスを探し出し、自分の手で撮影をしたまさに苦心の成果がこれだけのものにしているんだと思います。言葉が悪いですが、出版者の企画に乗ってカメラメンを伴い、それなりに名の通った先生が有名な教会で高い金払って取材してそこそこ書いたような本とは、全く違います。

本書内にも撮影時の苦労話はエピソードとして挿入されてますが、とにかく著者自身がステンドガラスが好きで好きでたまらず、長年に渡ってコツコツ自分の趣味で集めた写真がまず最初にあり、恐らくはそれを知った出版社が印刷の話を持ちかけたのかな? この本を見て、著者の非常に熱い情熱が伝わってくるような出来上がりになってます。解説も聖書をきちんと通読したことも無く、孫引きくらいの引用でしか聖書を知らない私が読んでも非常に分かり易いし、大きなステンドグラスの写真と共にその意味を詳しく解説してくれるのがなんとも嬉しい! 当然、出てくるステンドグラスも非常に美しく、先月フランスに行ってきたばかりなのに、また行ってあそこの修道院見たい、どこそこのも見たい!ってもう、参ってしまうぐらいの魅力です。

本の頁

この本を読んで、見て、ステンドグラスが『貧者の聖書』と言われている言葉の意味を初めて実感できました。頭では絵で解説してるんだあ~って思ってはいたのですが、そんなもんじゃないですね。ステンドグラスが直接、見る者を聖書の世界に連れていくんですね。御伽噺の世界ではなく、自分が見て感じられる世界になるんだと思いました。あ~もったいないことした!これ読んでから、シャルトル大聖堂行けば良かった。内容の理解が全く違っていたかもしれない。知らなくてもあれだけ感動したシャルトルで、この本の内容知っていたら、大聖堂から出れなくなったかもしれない。う~残念(涙)。

でもね、皮肉なことにシャルトル行ったから、ゴシック建築の資料本やステンドグラスの本を改めて熱心に探してるわけで、難しいもんです。にわとりが先か、卵が先か?って話になってしまいます。とにかく、これからそれらを観に行く予定のある人は、なんとかして目を通しておきましょう。幸せになれますよ~、きっと! もっとも道楽者として、その後、人の道を踏み外しても知りませんが…?(笑)

本の頁

参考までに幾つかの頁をデジカメで撮ったのを載せておきます。こんな感じで、あっちこっちのステンドグラスがいっぱい&いっぱい見れます。古書市かどこかで定価ぐらいで見かけたら、即購入しましょう。これは当りです!! 見た目以上に侮れない本です。中を読み込めば、読み込むほど、楽しくなってきてしまうし、実際に聖堂見学に持ち込みたくなります。著者は、単なる写真集みたいにしたくはなく、持ち歩けるサイズにしたと書かれてますが…重いし、大きい…軟弱な私にはせいぜい、フランスのホテルまで持っていくので精一杯だなあ。

恐らく、重い機材を一人で抱えてフランス中をステンドグラスを求めてさ迷い歩いた著者なら、あれぐらい軽いと思うんでしょうが…。もう使われなくなり、数十年も鍵を締めてあった聖堂を開けてもらい、撮影した貴重なステンドグラスなんかもあるそうです。凄いなあ~、こういうのプロジェクトXでやらんかいNHKさん。って言いがかりをつけたくなるほどのパッションです。

stend3.jpg

私みたいに素人で知識のない人ほど、役に立ち、勉強になる本です。著者が純粋な「オタク(勿論、いい意味です)」だからこそ、情熱にあふれ、説明にも細やかな気配りがあります。似たようなステンドグラスの場面でも、何を基準にどの場面の作品か分かるポイントまで教えてくれて、なんとも嬉しい♪♪ 貧者の私でも聖書が分かりそうな気になります。

普通に手に入らないのを薦めるのは恐縮ですが、これは間違いないと思うので見つけたら、即GET!!です(ポケモンじゃないけど…)。

ステンドグラスの絵解き―フランス教会に見る光の聖書(amazonリンク)

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シャルトル大聖堂 ~パリ(7月5日)~
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2005年06月25日

「ルーヴル美術館の楽しみ方」赤瀬川原平 新潮社

rubul.jpgこれは一方変わった美術館案内と言えるのではないでしょうか。10日間も通ったというので、熱狂と感動に浮かれたものとは違う、いささか距離を置いた楽しみ方としては良いかもしれない。

私も俗っぽさは嫌いではないし、センスのあるものにはむしろ拍手喝采してしまう俗物でもあるが、ルーブルを西洋の肉料理に例えるのには、どうでしょう?いささか、ステレオタイプで日本との違いを強調するのにはかなりの違和感を覚える。だって、江戸時代の無残絵はどうなんだ、と言いたい。私の部屋に転がっている図録や画集には、芳年のものや絵金のものがゴロゴロしているので(それが特殊なのだけど)、やっぱり納得いかない。

でも、それ以外のところではちょっと脱力系ながら、著者の感性を主体にして絵を紹介しているのはイイ。一般的な説明もいいけど、それだけではつまらない。やっぱり実際に見て感じたその人の感情・感動を知りたいもの。人が人を動かすのは、説明や説得ではなく、情熱だと思うし。表面的に出なくても、その人の秘めた情熱、そういったものを知りたいですね。小説でも絵画でも建築でも。解説であっても、そういった要素があると嬉しい。本書にはその片鱗があるかも。但し、片鱗であり、後はそれぞれの人の感性に合うかどうか?私はそれほど合わなかったけどね。

ルーヴル美術館の楽しみ方(amazonリンク)
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2005年06月21日

「ルーヴル美術館」世界文化社

ちょっと古いのですが、作品自体の紹介もさることながら、ルーブル美術館を美術館という空間として楽しむにはなかなかイイかもしれませんん。ミュージアムショップやブックショップ、レストランにカフェ。1日をゆっくりと美術館で過ごすには、知っておきたい情報がある程度、分かります。私も行ったら、開館と同時に入って、閉館ギリギリまで粘ってみたいなあ~。あまりにも量が多くて食傷気味にならなければいいのですが…(笑)。

あれれ? ルーブル美術館のサイト見てたら、火曜日は休館日だって。ってことは7月5日は火曜だから駄目なんだ。必然的に7月4日(月)がルーブルの日で、翌日(水)はシャルル大聖堂+αだね。

casio.jpg今回は写真を撮りまくろうと、長年の旅の友canonのIXY(初代)から鞍替えして新しいデジカメ買っちゃった!CASIOのEXILIM。ふふふ、薄いんだなこれが。チュニジアで100枚や200枚ぐらい撮っても大丈夫。どんなに下手な私でも枚数を撮るとうまくいくのもあるしね。腕ではなく確率論の写真テク。SDカードも結構な値段だけど、容量が多いので嬉しいです。昔のデジカメはそれはそれは苦労したもんね(涙)。

とにかく操作に慣れるため、明日はどこに行くにも写真撮ろう。雨でなければいいなあ。

ルーヴル美術館―アートを楽しむ最適ガイド(amazonリンク)
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ルーブル美術館
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2005年06月18日

「別冊太陽 ルーブル美術館」平凡社

何よりも紙面がとっても大きい。画集とかに近いかな?写真も豊富。説明はまあまあかな?他のルーブル美術館の紹介よりは、見易いし、掲載されている作品も多くて手頃かな。勿論、ルーブルに行く準備用です。図書館から、ルーブル関係だけで3、4冊借り出してきました。
いつ見てもサモトラケのニケは美しい。これはどっちにしろ見るな。モナリザは、新しい展示室を見たいけど、絵は一瞥ですませて(どうも苦手)ラファエロは押えると。以前行った時もラファエロやクラーナハはしっかり見てるし・・・どうしても趣味嗜好からすると一緒になっちゃうなあ~。アングルのオダリスク、これも同じ。

モローも2枚ぐらいあったと思ったけど、オランジェリー? せっかくだし、今回はマグダラのマリアを重点的に回るのも乙かな。絵画もそうだけど、彫刻なんてほとんで見てないから、勉強になるかな?エーアハルトの木製「マグダラのマリア」、少しいいかも。ここにあるラトゥールって「マグダラのマリア」あったかな?公式HPで調べてみようっと。

ルーブル美術館公式サイト
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2005年06月04日

「新装版 西洋美術解読事典」J・ホール 河出書房新社

seiyou.jpg事典を評価するのっていうのは、私のような物を知らない人が簡単に言ってしまってはいけないような気がしますが、ユーザー側の感想だったらいいかな?御存知の方も多いかもしれませんが、美術館に行って絵を見るのが好きな方なら、きっと重宝するので御紹介します。

著者はイギリスの美術関係(出版関係?)の仕事をされている方らしいのですが、在野の研究者という肩書きになっています。御本人も暇さえあれば、美術館に行って絵を見ているという人らしいのですが、西洋の人でもやっぱり絵を見るうえではいろいろと知らないといけない約束事(白百合は○○の象徴とかいう図像学的なアレね)で分からないことが多いのを痛感され、他の人の理解の為にもって感じで独力で頑張って作ったものらしいです。

ほらっ、出版社が企画立てて、各分野の専門家に分担させて作るのってよくあるけど、あの手のってあんまり好きじゃないんだよね。一応、調べるときには使うけど、共同作業だから、どうしても平板な説明に終始し、その人が感じているもの全てを書き込むような余裕がないでしょ。逆に言えば、全体としての統一感を出すためにも、個人が表面に出てはいけないんでしょうが、すっごくつまらないんだよね。なんでもそうですが、パッションは大切かと。

そういう意味でこの事典は、書かれた人の情熱がはっきり感じられるものになっています。しかもその情熱は、絵画を見るときにいかに初心者でも分かり易く、同時にそこに描かれた意味を深く理解していかに鑑賞を満喫するかを目的とする方向に向けられ、その情熱が成功していると思います。読んでて、あの絵の持ち物(アトリビュート)はこういう意味があるんだ~とか、後から気付かされることがとっても多いです。先日、行ったラトゥールのマグダラのマリアの持ち物なんて、典型ですね。ドクロと聖書と十字架、あと香油壺(これには諸説あるが、当時はマグダラのマリアと同定されていたから)。

絵画がお好きな方で図録の解説で満足できない方なら、見てみると楽しいです。図録にもアトリビュートのことは書かれていますが、正直言って説明不足。私のような人間にはもっと詳しい説明してくれないと知らないんだから~。といっても、学芸員さんに時々質問してみることもあるんですが、う~んあまり御存じない場合が多いしね。自分で調べないといけないですね。そんな時にも役立ちますよ。

もっとも購入しなくても図書館にあるんじゃないかな? 事典類は場所をとるし、高価なので私ももっぱら図書館派。近くに無い場合なら、泣く泣く購入しますけどね。買うとなかなか開かないもんでかえって。広辞苑もそうだしなあ~。

そうそう、この本の中でも黄金伝説の解説があったのでメモ。仏語からの英訳だったんだ。ラテン語からの訳と勘違いしてたかも?
ウォラギネ、ヤコブス・デ Jacobus de Voragine(1230年頃~1298年頃)
ドニミコ会修道士でジェノヴァの大司教を務めた、「黄金伝説 Legenda Aurea(1275年頃)の著者として知られる。
同書は聖人伝、聖母伝、その他教会の祝祭日にまつわる物語を集大成したもので、待降節(クリスマス前の4週間)に始まる教会歴の順を追って編纂されている。原著はラテン語で書かれ、1483年カクストンによって仏語版から英訳された。「黄金伝説」がキリスト教美術の図像表現に与えた影響はきわめて大きい。

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2005年05月25日

「昭和美少年手帖」中村 圭子編 河出書房新社

ふう~、決算が終わったので一息ついて読書。

最近、ちらほら見かけるが、昭和初期の少年少女雑誌で一躍有名になった挿絵等を中心に美少年という切り口で綺麗なイラストを集めたもの。ヤオイ人気の萌芽が既に見られるというと、俗っぽ過ぎるが日本人ってこういうの大好きだからね! 勿論、私も美しければ性別を問わずスキ。

出てくるのは、高畠華宵、山口将吉郎、伊藤彦造、山川惣治、石原豪人等々。高畠華宵氏の場合は、単独で画集も出ているほど有名ですが、他の方もなかなかイイです。百聞は一見に如かず。幾つかイラスト載せましたので、良かったら見て下さいね。

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「少年剣士」

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「夕月」

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「木村長門守重成」

img009.jpg

「刺青」

他にも美少年に関しての考証もありますが、正直ありきたりで目新しい所はないです。この手の好きな人は何故かインテリが多いですから、私の知り合いでもっとウンチクたっぷり語ってくれる人がいますし…。ただ、全くの初心者が初めてこの類いの本を読むときには、それなりに役立つ入門書かもしれません。(文章はおまけレベル)

とにかくイラストを見て、楽しいか否か? それが全ての本です。私は楽しかったです。編集は弥生美術館で働いていらした方。あそこも小さいけど、雰囲気の好きな美術館だったなあ~。最近、御無沙汰だけど…。夢二のが多かったと思ったけど?

そうそう、たま~に誤解されている方がいますが、美少年好きは女性の嗜好ではありません。それでは単なる異性愛で美しくありません。日本では昔ながらの伝統がありますし、「衆道」とか。稚児も然り、江戸時代の若衆歌舞伎や陰間とかその手のは事欠かないですから。まあ、三島先生を例えに出すまでもありませんが…。確か、うちの本棚にも何冊かそれ関係の資料がありました。探す気力はありませんけど。

もっとも少年愛は、古典ギリシア時代で愛好されていましたし、ローマ帝国でも特に問題無かったはずですしね。同性愛を禁じたのは、キリスト教的価値観の押し付けでしかないように感じますね。人に迷惑さえかけなければ、私的には偏見はありませんが。
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ラベル:美少年 昭和 書評
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2005年05月18日

「錦絵 京都むかし話」浅井収 蝸牛社

これは掘り出し物だと思います。非常に綺麗な錦絵がたくさん入っていてそれが全て昔話の場面を集めたものになっています。絵師も私の大好きな芳年を始め、国芳、清親、国貞等々。かなり鮮やかなのがたくさん入っていて定価も1800円。安い!ただ、ここの出版社も潰れたのか、今は蝸牛新社というのに引き継がれているようです。全国の取次店を経由してないのかも?ISBNコードないし、地方出版なのかな?

しかしこの手の本、大好き!! 見ていて飽きないし、味わいがあります。以下、幾つかの絵を紹介。

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「安寿と厨子王」

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「(一条)戻り橋と鬼」

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「祇王寺」

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「百夜通い」
ラベル:昔話 京都 書評 錦絵
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2005年04月29日

「図説 レオナルド・ダ・ヴィンチ」河出書房新社

reonarudo.jpgえっと、さっきのと同じ頃に読んだもののメモ。初めてダ・ヴィンチのことを知るには写真も多いし、ほどほどにまとまっているかな?でも、たいして目新しいことは書かれていません。

感想としては、生きて行く為に苦労してる人だなあ~ってことでしょうか。有名な話ですが、ラファエロとかと比べると暗~くて地味なタイプですし、一人で黙々と空想&実験等に励んでいるタイプというのがよく分かります。本人の才能故というのもありますが、そりゃ、周囲から怪しまれるだろうなあ~って思わずにはいられない経歴です。以下、そのまんま抜書きのメモです。
24才で同性愛者として密告され、無罪となったがその後も再び同性愛者としての疑いをかけられた。

鏡文字の理由 ①当時の社会では受け入れられない発想の内容が多く、周囲から誤解を生まない為②そのまま印刷用の版をおこせる為③左利きで書きやすかった為

岩窟の聖母 聖フランチェスコ・イル・グランデ聖堂の礼拝堂祭壇画を依頼された

ジャン・ジャコモ・カプロッティ 貧困家庭の劣悪な環境で育ち、窃盗の常習犯で問題児 サライ(小悪魔)と呼んで面倒をみた
図説 レオナルド・ダ・ヴィンチ―万能の天才を尋ねて(amazonリンク)

関連ブログ
レオナルド・ダ・ヴィンチ素描集
「モナリザ」も制作?伊でダビンチの工房発見か
「図解 ダ・ヴィンチの謎」宝島社、便乗してますねぇ~
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2005年04月26日

「図説 ヨーロッパ不思議博物館」宇田川悟 河出書房新社

hakubutu.jpgヨーロッパにある毛色の変わった博物館を紹介する、というのが商品コピーなのですが、本を読んだ限りではどこにもあまり行きたいと思いませんでした。まず、著者がフランス以前いたせいでしょう、ヨーロッパと言いつつフランスの博物館が多い。候補選択が偏っています。しかもこういっては失礼だが、どうでもいいようなものがかなり採り上げられているような気がするのですが・・・?都内にある変わった博物館を特集したものと大差無いのでは、わざわざ海外物を紹介する意味が無いのではないでしょうか?

ヨーロッパに限定する意味が分からないし、世界中にはもっと興味深い博物館が山ほどあるのに、不満が残ります(名称は忘れてしまいましたが、タイのあの有名な博物館の方がはるかに興味深いです、確か無料だったし)。何よりも、著者は博物館を好きなのでしょうか? 書かれている文章に情熱を感じられない。淡々と語るのもいいが、展示されているものついて書かれている事柄が恐ろしく薄っぺらい。採り上げる題材もつまらないし、そこから引き出されるエピソード的なものも面白くない。

こういうものを紹介するに際しては、著者の好奇心に満ちた情熱と一見、無駄なような博識の奇怪な結びつきがないといけないと思うのですけど・・・。少なくとも、私にはどちらも感じられなかった。改めて、これ見て行きたいと思わないなあ~。

実際、行く機会があった博物館も何ヶ所か紹介されているんですが、もっと興味深いものがあり、必然的にプライオリティーの低いそこには行かなかった覚えがある。確信犯的に行ってられない所だし、もっと人の心をひく紹介をしてくれないとねぇ~。本当は、こういうの好きなだけに、余計裏切られたようでがっかりしたので酷評になってしまったかも?

ただ、博物館自体に罪はないので、本を無視して面白そうかなと思ったところは、モナコ海洋博物館、中世刑罰博物館、ボローニャ人体解剖博物館とかかな。時間に余裕があれば、行ってもいいかもしれない。でも、美術館や史跡とかを回ってまだ時間が余ったらだけどね。

図説 ヨーロッパ不思議博物館(amazonリンク)
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2005年04月19日

「マグダラのマリア」 岡田温司 中公新書

magudra.jpg以前から、気にはなっていたんです。ダ・ヴィンチ・コードに関連しそうだけど、購入しようと決めたのは日経に書評が載っているのを見つけた時だった。内容は忘れたけど、こりゃ買って読まなければと思ったことを覚えてます。

読後の感想はというと、買って正解だった。あちこち話題が散らばることなく、一点突破の勢いでマグダラのマリアに絞って説明をしまくるんです。これでもか、これでもかというくらいたくさんの絵画に描かれたマグダラを材料にしながら、時代毎にマグダラのマリアがいかにして捉えられ、理解されてきたのか、を丁寧に説明してくれている。詩や本に現われたマグダラにも言及していますが、95%以上が絵画に描かれたマグダラ。巻頭には新書には珍しく綺麗なカラー口絵が12枚(8頁ほど)も入っていて、ちょっと驚く。もっとも本文の内部では、いささか小さくて分かりづらいものの白黒の図版がさらに多数挿入され、それを見ながら解説を加えるというスタイルになっています。

私が購入する前に想像していたのは、この本の第一章で扱っているもので、マグダラのマリアが聖書の中ではどうのように描かれているか、外典ではどうか? 他の書物ではどう扱われているか? ということで、それだけをたくさん収集した本だと思っていました。しかし、実際は想像と異なり、そういった部分はあくまでも基本事項の確認みたいなもので、本書の大部分はマグダラのマリアを当時の人々がいかにして捉えたかの歴史的変遷を絵画表現から確証を得つつ、紹介することであり、そちらがメインの本でした。そこが私的には物足りなかった反面、これほどまでに多様なマグダラが西洋絵画に描かれているとは知らなかったので、大変勉強になりましたね。

そうそう、この本の中でおそらく一番多く引用されたり、引き合いに出されているのがこないだ購入した「黄金伝説」 だったのは当然かな~って思う反面、やっぱりもう一度読み直してみようと感じました。辞書無しで、粗筋だけを掴む読み方でしかまだ目を通していないので、よく理解できていないんです。それではもったいないと改めて思わされた(手に入ると、それで安心してしまうのも考えものだね、本は読んでこそ価値があるんですから)。もっとも、この本の中で引用している程度なら、既に私の作った用語集の項目に入っている「マグダラのマリア」レベルでも足りそうだけど…。

それはおいといて。この本で取り上げられているマグダラは、その幾つかはあちこちで見たことがあるのですが、改めてマグダラを描いていると意識して見ると、また違って見えるから不思議。さらに有名な画家が描いてるマグダラで初めて知る作品も多く、こんなの描いてるんだあ~っと率直に感銘を受けたりしちゃいます。あと、西洋絵画、特に宗教画には必須の小物の象徴するものとかは、よほど意識しないとねぇ~。展覧会で買う図録の解説とかにはよくあるけど。説明読んでる時は絵を見た後だし、見てる時は知らないしで、本当に象徴を理解して絵を見る機会って少ないからなあ。少なくとも、これからマグダラの絵を見る時には、役立ちそう。せっかくだし、ちょっとパスしようかと悩んでいたラ・トゥール観に行こうかな。マグダラのマリア観たさにというのは邪道っぽいですが・・・。

とにかく絵画の中のマグダラに関心がある人には、必須の本でしょう。相当内容が充実しています。反面、グノーシス派の捉えるマグダラ像とかには、軽くしか触れられていないので、そういうものを期待するとちょっと違うかなあ~と感じられるかも? 私的には手元に一冊置いておいて、美術館行くときにはちょくちょく参考にしたい本ですね。

う~ん、面白かったけど、不満が残る・・・。もっとマグダラのマリアに関する事知りたいんですけどねぇ~、いい本無いかなあ~???amazonとかで探してもこれという本が見つからないんだよね。Googleで探してもイマイチ知りたい情報が揃っているサイトがないみたいだし・・・。だったら、自分で作ればいいんでしょうが・・・文献は日本語メインだと資料不足かな?とりあえず、日本語で分かるとこまで作って、それ以降はその時に考えるしかないかなあ~。まあ、気長に少しづつ資料集めましょうかね(既に独り言になっているのが、いかにもブログ的)。ダ・ヴィンチ・コードに関連するしね!

マグダラのマリア―エロスとアガペーの聖女 中公新書(amazonリンク)


関連ブログ
マグダラのマリア 黄金伝説より直訳
「マグダラのマリア―マリア・ワルトルタの著作による」あかし書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「マグダラのマリア」 岡田温司 中公新書
「マグダラとヨハネのミステリー」三交社 感想1
「イエスのミステリー」バーバラ・シィーリング著 感想1
美の巨人たち ラ・トゥール『常夜灯のあるマグダラのマリア』
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2005年04月14日

「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房

jigokubook.jpg目次
1 はじめに
2 地獄の経典
3 地獄の形相
4 奈良時代の地獄観と地獄絵
5 平安時代の地獄絵
6 地獄草紙と餓鬼草紙
7 中世の地獄絵
8 往生要集絵
9 地蔵の救済
10 "厭離乱世、欣求和平"―現世的地獄図
11 地獄図と現代

地獄絵と言って、すぐ頭に浮かぶ人がどれくらいいるでしょうか?私にとっては子供の頃にTVで見た恐山のイタコの姿、賽の目川原で子供達が積んだ石を壊していく獄卒、針で出来た山を罪人を急き立てて歩かせる地獄の番人達といったものが奇妙に混ざり合った形が原風景的に浮かんでくる。

中でも澁澤氏が解説してくれる「人道九不浄相之図」。これにはいろいろな個人的感慨があるんですが、解説も秀逸なので引用しておくと・・・。
「肉体の美しさは、ただ日歩にあるのみだ。もしも人間が、透視力をもったボエオテイアの山猫のように、皮膚の下にあるものを見ることができるならば、誰もが女を見て吐き気を催すことになろう。女の魅力も、実は粘液と血液、水分と胆汁とから出来ている。いったい考えてもみよ、鼻の孔に何があるか、腹の中に何が隠されているか。そこにあるのは汚物のみだ。それなのに、どうして私たちは、汚物袋を抱きたがるのか」

修道士の言葉との解説がついているが、まさに事実を的確に現している。そもそも九不浄相之図は、死者が徐々に腐敗の段階を経て、最後に完全な白骨に化するという屍体の変化を描いた一連の絵であり、究極のリアリズムの所産ともいえる作品なのである。

一生懸命にお化粧し、ブランド物を買い漁る人達をTVで眺める度に、汚物袋をいくら着飾っても・・・と考えるのはいささか皮相的過ぎるが、現金ではなく、ましてリボとかでしか買えない人々が無理しているのを見ると世の哀れを実感してしまうのは私だけではないでしょう。ブラックダイナース(年会費15万円)やセンチュリオンカードで買うなら、また違いますが・・・。

地獄はともすると、人の想像の産物だと思われがちだが、実はあくまでも現世に対応した存在であり、現世の物質世界を否定的に捉える「厭離穢土(おんりえど)」という価値観に対応するものでもあった。この厭離穢土であるが、世俗の欲望まみれの現世を離れ、死後は浄土へ、という考え方であり、カタリ派が考えるグノーシス的なものにも共通する観念でもある(ここは私見)。

jigoku1.jpg

まあ、堅い話はその辺にしておくとして。何故か心惹かれるんですよ~、この手の地獄絵図。日本では昔は、お祭りなどでお坊さんがこの手の絵を出して、説法していたらしいのですが、みんな聞いたことないでしょう。生きている間に善行を積んでおかないと死んであの世で地獄に落ちるぞ~ってなやつ。私もずっと聞いたことなかったんですが、あちこちを旅していて時に、東北のどこかで村祭りみたいなのにたまたま出会ったことがありました。

そこでね、な・なんと!地獄絵図を目の前にして説法していたんですよ。子供達を対象にやっていたんですが、生まれて初めて生で見たので感激して、ずっと子供達に交じって辻説法を聞いちゃいましたよ~。いやあ~なかなか良かったです。悪い事すると地獄に落ちるんだって納得しちゃいましたもん。説得力ありますよ~。なんせヴィジュアルに訴えますから(笑)。

この本の中では、それこそ無数の地獄が紹介されています。まさに人の罪の数だけ地獄があるみたい。刑法で、人が犯す犯罪の数だけ法定刑があるようであり、現世で裁けない分はあの世で裁いてくれるのかなあ~? 

中でもこれは辛いと思った地獄を挙げると、衆合地獄の一つなんですが・・・。
獄卒は罪人をつかまえて刀のような鋭い葉を持つ樹の林の中におく。その樹の頂上を見ると、着飾った美女がいるので、罪人はその樹に登っていくが、刀のような樹の葉は下を向いて罪人の身体を切り裂く。やっと頂上に辿り着くと、美女はそこにおらず、地上にあって、媚を含んだまなざしで罪人を見上げ、「貴方を慕って、私がここに降りてきたのに、どうして貴方は私のところにいらっしゃらないのですか、何故私をお抱きにならないのですか」という。これを見て罪人は欲情を激しく燃やし、樹を降りるが、刀のような葉は今度は上向きになっていて罪人の身体を切り裂く。やっと地上に降りると、女は樹の頂上にいて招く。罪人は再び樹を登り始める。このようにして計り知れない百千億年にわたって自分の心にたぶらかされてこの地獄の中でどうどう巡りを繰り返すのだそうです。

これは辛いよねぇ~。だけど、この地獄からは逃れられないかも???

jigoku.jpg

地獄絵図を見たことないけど、興味がある人には分かり易いし、入門書的には結構いいかも?この本は。で、これを読んだ後は何はともあれ、実物を見ないと。京都国立博物館や東京国立博物館に本物があります。ミュージアムショップでは絵葉書にまでなって売ってるしね。勿論、そういうのが好きな私は当然買ってますけど。ここに載せている地獄絵図も本の中にある図ではなく、自分の持っている絵葉書から取り込んだ「地獄草子」と「餓鬼草子」です。そうそう、あまり知られてませんが、千葉にある民族博物館だったかな(?)
ここでは、のぞきカラクリとして地獄絵図の辻説法みたいなのを再現でやっています。なかなかレトロで楽しいです。立派な建物なのに、中身はあまり面白いのがなくていつもガラガラな施設。国じゃなければこんなの維持できないなあ~と思う立派さです。暇な時には、時間つぶしにいいかも?もう一つある佐倉の美術館と絡めていくと効率がいいです。

あと、この地獄絵図と関連して忘れてはいけないのが映画「ドクラマグラ」。カルト界の中ではこれ忘れたらモグリでしょう。言わずと知れた夢野久作氏の最高傑作。映画も好きだけど、小説がそれ以上に傑作。紛れもない日本で一番の最高傑作と私は崇め祀っておりますが・・・。この中にも、先ほどの「人道九不浄相之図」が出てきます。しかもこの小説の核となる部分で重要な役割を果たしたりします。う~小説についても感想書きたいけど、とてもじゃないが、ここでは収まりきらないから、断念。とにかく、小説好きでこれ読んでないのは、不幸でしょう。昭和初期なのに、時代を経てもその価値が益々増しているなんてまさに傑作中の傑作でしょう。もっとも読んだ人はしばらく、自分の頭に信頼が置けなくなってしまうかもしれませんが・・・。

図説 地獄絵をよむふくろうの本(amazonリンク)
ドグラ・マグラ現代教養文庫(amazonリンク)
ラベル:地獄 アート 書評
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2005年04月07日

「日本の博覧会―寺下勍コレクション」橋爪紳也 平凡社

hakurankai.jpgとにかく、懐かしいけど、斬新なデザインのポスターとかビラがないかなあ~と期待して見ていたんですが・・・。う~ん、私の好きなタイプのものは無かったです。大正や昭和初期の海外旅行のポスターや満鉄の旅行ガイドとかだと最高なんだけど…。そういうの無かった。残念。

まあ、一応メモとして感想を。
たくさんの博覧会のポスターや入場券、ビラ、見所案内等々、博覧会に関する紙モノはなかなか驚異的にたくさんあります。普段消費して捨てられてしまうものだけに、なかなか興味深いです。

タ・ダ・シ・・・、デザインが私的にはイマイチなんだよなあ~。煙草やアルコールのポスターとかの方がずっとセンスがよく感じられます。レトロのものについては。私も持っている引き札とかの方がずっと&ずっと綺麗だもん!(ちょっと自慢)。あれも明治・大正ぐらいのものだと思ったけど・・・。

好きな人には好きなものですね。この本は。ちょっと私には対象外でした。ただ、たま~にこういうものの中にもいいのがあったりするので一応、チェックした感じですね。

日本の博覧会―寺下勍コレクション 別冊太陽(amazonリンク)
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2005年04月04日

「よみがえる最後の晩餐」片桐頼継 著 日本放送出版協会

bansan.jpgこれは以前にNHKスペシャルで見て、非常に感動したことがあったのですが、それを本にしたものです。主題はまさにダ・ヴィンチ・コードでも重要な鍵を有するとされる「最後の晩餐」。しかし、これは20年以上にも及ぶ修復を経て初めて、ようやくまともに見られるようになったことを知っている人は少ないかも?実は何度かイタリア行ったことあるにもかかわらず、私もこれは直接見ていなかったりする。

とにかく本当なの?と疑うような事実を次々と教えてくれる本です(私はTVを先に見てるので知ってましたが)。あの名画としての知名度は絶大にも関わらず、描かれてから500年にも及ぶ間に、どれほどの修正・修復(実際は、その名目で勝手に追加補筆、補彩がされていたそうです)がなされ、長い歴史を通じて人々が見てきたのは、ダ・ヴィンチの作品とは似ても似つかぬ別の作品とも言えるようなシロモノを見てきたという事実!こっちの方が驚愕だと思うんだけどね・・・仮説のダ・ヴィンチ・コードより。これは紛れないもない『真実』なのだから!

本文中には、非常に詳しく修復作業やその歴史的意義にもかかれているのですがかいつまむと。これは画法のことになるのですが、通常壁画は生乾きの漆喰に描くテラコッタ手法で乾燥すると化学変化を起こして定着するので時の経過にも耐えうるのですが、ダ・ヴィンチは一気呵成に書き上げるタイプではなく、じっくりと遅筆タイプなのでキャンバスとかに描かれるようなテンペラ手法を使ったそうです。

それで、ダ・ヴィンチ存命中から傑作との評判が高いのに既に剥落をし始め、その後の修復は適当に上塗りされたり、剥落を防ぐために行ったニカワや樹脂を塗る保存法は結果的に、更なる剥落を促進するなど、実際、ボロボロ状態だったそうです。おまけに場所は湿度が高くてカビまで生え、デコボコの画面上にはホコリが積み重なって層をなしていたり・・・なんか信じられませんね。

修復士のブランビッラ女史は、過去からのたくさんの模写や科学的検査や顕微鏡調査を元に、ダ・ヴィンチ本来の絵具を推測しながら、それ以外の加筆や汚れを丹念に洗浄していくのだそうです。一つ誤ると大切なオリジナルを失ってしまうというリスクを抱えつつ、一日に数センチしか進まない日が続いた事もあったとか…。こういうのって本当に頭が下がる思いですね。それこそ、もう職人仕事の域ですもん。汚れや加筆を落すのでも時代時代によって使われる素材が違うので、それに合わせて個々に最適な方法や薬品を使っていくそうで、気が遠くなります。だって同じ画面上に何層も塗られていれば、その回数分個別に作業をするわけですから…。

これ読むと、是非観たくなってしまいます。現在は、無事修復も終わり、見学できるそうですが、厳しい入場人数の制限があるそうです。人の出入りはどうしても大量のホコリを持ち込むことになる為、完全空調の部屋にしたうえでそういった措置が必要なんだとか、行っても感嘆に見られるわけではなそさう・・・。

そうそう、ダ・ヴィンチ・コード絡みの記述で面白いと思ったのは、マグダラのマリアとか勝手に思い込まれているヨハネ。説明を読む限りでは、やはりヨハネだよなあ~。ペトロのナイフの手の位置なんかは、未だにはっきりしていないし。他のところもそうだけど…よく分かっていない所が多分にある絵なのに、それを元にいくら説明されても意味がない…というのが今回改めて感じ感想でした。

とにかくこの修復を成し遂げた女史には、国民栄誉賞でもあげたいですね。日本の人じゃないから、不可能だけど。どっかの保険会社さんみたいにゴッホの絵に50億円以上かけるなら、こういう人の支援でもしてあげたほうがよっぽど生きた金の使い方なのに…。

この本には修復の他、NHKがCGを使って書かれた当時の絵を再現するというプロジェクトについても詳述されています。勿論、それはビジュアルでないとなかなか内容を理解できない私のような一般人向きに強くアピールする為のものでしょうが、観たときに感動しちゃうのも事実。これは法隆寺の復元とかでもやっていましたがNHKお得意のやつです。本ではイマイチですが、TVで観た時には本当にスゴイ!の一言に尽きます。

但し、これは本でしか分かりませんでしたが、研究者サイドでは当然、ある程度の確信を持って復元できるところに止め、完全に剥落してオリジナルが推測できない部分はそのまま空白にしたかったそうです。勿論、NHKのプロデューサーから推測でもいいから完全な復元図(一部はだから、完全に想像)にしろと言われて従ったそうです。さすが横暴なNHK!要は、もっともらしくして視聴者にビジュアルで訴えると効果的だからね。視聴率を取りたいというのは民放に負けないです。裏で金使い込むし…(ありがちな話だが)。

そういういやらしい部分も注意すると判りますが、全体としてみて面白い本です。昔、放送大学のテキストで壁画の手法とか書かれたのも読みましたが、改めて興味深かったです。何よりもイタリアの修復士さんは尊敬しちゃいます。日本の藤ノ木古墳の壁画を分離保存する際の特番も見たけど、アレにも共通する、使命感と誇りを感じました。TVもいい番組でしたよ。また、観たいなあ~。
よみがえる最後の晩餐(amazonリンク)

関連リンク
最後の晩餐
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2005年03月12日

「悦楽の園」を追われて 中野孝次 小学館

個人的な感想という限定付きで申し上げるなら、かなりの悪書だと思う。著者は善良なボスの案内人を意図し、若者への誘いを目的としてこの本を書いたというがトンドモナイ! というのが私の感想。

そもそもボスの作品の内面的な解説なんて、当人以外の何物にもできないはずだし、自分が思っていることをダラダラと述べている態度が(一見、真摯な姿勢に見えて)不誠実なものをかえって感じてしまう。しかも、一般的な絵画の説明はあえて避けているというが、そこが根本的に間違っている。ボスの作品の持つ一般的な時代背景や当時、一般的に理解されていた象徴等をまず、説明したうえでご自分の見解なり私見なりを述べるのはいいが、一方的に自分の意見を無意味に書き連ねたうえでこういう作品なんですよ、といって偏見を植え付けられた人がボスの作品を見た時に、果たして素直に受け入れられるだろうか?はなはだ疑問である。  

私的にはこういう本は大嫌い!! ボスの絵はまず、余計なものを入れないうちに実際に見るのが一番。それからなら、まだ弊害も少ないでしょうが、あまりに自分勝手な視点で書いているのに、最低限の基本的な説明はおざなりでヒドイ。しかも澁澤龍彦氏のような、作品に偏見を与えず(=害さないで)画家への興味をかきたてる絶妙のエッセイには、才能が必要なのに・・・・この本の作者にはそれが感じられない。失礼だが戯言にしか思えない。

私が怖いのは、個人的感想なら勿論自由だし、人がどうこういう筋合いでもないのですが、本として他の人が手に取った時に及ぼす悪影響が心配なのです。あの素晴らしいボスがこんな本の為に歪んだ理解へと導かれてしまうのが・・・悲しい。素晴らしい作品は、へんな予備知識なんていれず、まず自分の目で見るのが一番だと思うに・・・。別に有名な作品でなくてもいいし、自分が気に入ればそれが最高に素晴らしいものだと思う。街中に貼られているポスターであっても、素晴らしいセンスだなあ~と感心するものは無数にあるのにね。

なんかこの本だけは、イヤ! 基本的には、寛容の精神を持っているつもりの私ですが、苦痛を感じた一冊でした。 

「悦楽の園」を追われて(amazonリンク)

ボス「快楽の園」画像@プラド美術館
ラベル:アート
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「世界名画の謎」ロバート・カミング著 ゆまに書房

作家編と作品編でそれぞれ別の本になっています。基本的に、同じような作りなんで一緒にここで感想を。

まずは作家編から。ダ・ヴィンチ・コードで出てきた「岩窟の聖母」です。ずいぶんと大きな版を使ってますので絵をたっぷり楽しめます。ただ、惜しむらくはルーブルの方ではなく、ロンドンのナショナル・ギャラリーの方です。でも、どうしてこちらなのかな?誰だって、クレームついて加筆修正したものより、元の自由に描かれたほうが良いと思うのですが・・・。

で、プッサンの「アルカディアの羊飼いたち」。もうご存知ですね、「レンヌ=ル=シャトーの謎」で宝の隠し場所に関する暗号と密接な関係をもつ鍵であり、王がやっきとなって入手しようとした絵がコレであり、苦労して入手後、密かに隠していたといういわくがあり過ぎる絵です(ニコニコ)。

そして、これはNHKの世界美術館紀行でもやってましたが、世界でもっとも美しい写本とも言われる「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」。これぐらい大きい絵だと、十分に満喫できますね。いいなあ~、これ見たいなあ~。しおりか何かでミュージアムグッズ欲しいなあ~。
ベリー公の美わしき時祷書
ベリー公のいとも豪華な時祷書(1413-16、シャンティイ、コンデ美術館)
ベリー公のいとも豪華なる時祷書(ラブリー写時室様のサイト)
こちらは lapisさんに教えて頂いたシャンティイ、コンデ美術館


今度は作品編。
フラ・アンジェリコ。この細身でいて非常にしなやかな天使には、ゾクゾクするものを感じますねぇ~。確か、修道院の階段を上っていって、まさに上がったところにあった絵だったと思います。なんでここに、あの有名な絵が!?と狐につままれたような気がしたものです。だって誰も周りにいないし、単なる階段なんですよ。それを上がると、どこにでもあるような感じでポンと置いてあるんだもん。え~ってカンジ。生活に息づいていることをイヤというほど痛感させられちゃいますね。自然に溶け込み過ぎ~。

それと、ボス。あのあまりに幻想的で異端じゃないの~と思わずにいられない「快楽の園」。今年書かれた絵だといわれても、全く違和感をカンジさせない新しさ。常人では及びもつかない着眼と発想です。これだけはプラド美術館で見て良かったと、心底思えた作品。どうしてもエル・グレコとかがあそこは多くて、ちょっと暗いんだもん・・・。しっかりミュージアムショップでボスのしおりも買い込んできたしね(満面の笑み)。

ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂。これは説明不要かと。これ見たら、カトリック入ってもいいかな?って本当に思う。まさに、神の威光が目に見える作品。あまりに凄すぎて、感動で泣けるよ、初めてだったら。もう3、4度見ちゃったから、それほどでもないけど。でも、イイ!!

世界名画の謎 作家編(amazonリンク)
世界名画の謎 作品編
ラベル:アート
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2005年03月01日

「美の巨人たち」日本経済新聞社 感想1

日本経済新聞社のサイト確か日本経済新聞の日曜版に掲載されていたものだと思う。それをまとめて本にしたもの。TVのものにも似ているが、本は本で味わいがあります。
【目次】
セザンヌ 考える眼………小島英煕
ルノワール 幸福を描く職人………浦田憲治
ミケランジェロ 神か人か………土谷英夫
ボッティチェリ 線の詩人………名和 修
ヒエロニムス・ボス イメージの錬金術………阿部 良
サルバドール・ダリ 神話を駆け抜けた奇才………原田勝広
シャガール 20世紀の漂流者………浦田憲治
マレーヴィチ 黒い正方形の神話………原田勝広
パウル・クレー 瞑想する絵画………河野 孝
徽宗皇帝 風流天子の素顔………竹田博志
伊藤若冲 孤独な奇想………宝玉正彦

私自身の好き嫌いで個人的にはしって、好きなとこだけ読んでるので感想も偏っていますが、まずはミケランジェロ。システィーナ礼拝堂に描かれた大傑作の一部、「最後の審判」では裸体が数多くかかれ、それが神聖な場所にふさわしくないとされ、後世に腰布を加筆修正されたのは有名です。また、それが近年明白になり、加筆部分が取り除かれ、元のオリジナルに戻されたというのも知っていたのですが・・・。全部ではなかったんですね。新鮮な驚きです。だって、普通全てを元に戻したと思うでしょ。既に無くなったヴァチカン美術館の館長の指示で一部しか戻されていないそうです。その理由は・・・。

歴史的な宗教会議での決定事項であり、それを無視する事になるので出来ないそうです。それを聞いてなるほど~と、思いましたが担当者も苦しい立場なのでしょうね。いつの時代でもそうですが、正論が常に正しく評価されるわけではなく、当然いろんなしがらみ(=政治的駆け引き等)の結果でしかないのを痛感させられます。難しいものですね!ミケランジェロほどの天才でも、ブラマンテの陰謀でシスティーナ礼拝堂の天井画を描く事になったり、たくさんの苦労を抱えながら、意に染まぬ逆境を生き抜いてきた人でもあるんですね。
そこで腹は胸の下へぐっと引きつられ、ヒゲは天を向き、うなじは肩にくついている。わたしはまるでアルピア(ギリシア神話の怪鳥)のようだ。そして、頭の上にある筆が滴を落として顔を彩られた床模様にするのだ。~『ミケランジェロの生涯』~

これがあの有名なシルティーナ礼拝堂の裏側の姿です。初めてヴァチカンで見た時に、感動のあまり上を見上げたまま、息を止めて目を見張り、胸がいっぱいになった光景は、そんな苦労と努力から産み出されていたんですね。この話そのものは他の本で聞いていましたが、その時に受けた衝撃が鮮やかに思い出されます。この本を読んで改めてそう感じました。

そうそう、サン・ロレンツォ聖堂にあった地下室。フィレンツェが反動派により降伏し、革命派の軍事司令官までしていたミケランジェロが隠れていたという噂の部屋。この話にも触れられています。人生にはいろんなことがあるもんです。生きるということは大変ですね。

で、次は伊藤若冲。相当に斬新な画家で、奇想の画家とか呼ばれているそうですが、絵は躍動感があって鮮やかでいいんですよねぇ~。あちこちで何度か見た覚えがあります。でも、隠棲者とは知りませんでした。絵が全てという、その人生。凄いなあ~。フラフラと悩みつつ、よろめきながら雑学ばかりが増えていき、光り輝く人生の生き方を見出せない私には憧れと尊敬、以外の何物でもないです。まあ、泥をかぶりながらでも前進するしかないか。立ち止れば、それは即ち「終わり」であり、「死」に他ならないわけだから・・・。そんなことを感じながら見てました。
・・・・・・後はまだ途中・・・・・

「美の巨人たち」日本経済新聞社 感想2(快楽の園の画像有り)
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2005年02月24日

「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」石鍋真澄著 小学館 感想2

「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」石鍋真澄著 小学館 感想1
さて、感想の続き。

マッダレーナ礼拝堂には、アッシジの司教をしたテオバルド・ポリターノがパトロンとなって「マグダラのマリア伝」が描かれている。《ゾシマスから服を与えれるマグダラのマリア》、《マグダラのマリアの法悦》などでジョット工房の作とされる。マリア伝は珍しい主題だそうで、ヤコブス・デ・ウォラギネの有名な聖人伝集「黄金伝説」(1275年頃)に基づくこの壁画が最初の作例らしい。他にもマリア伝に基づく作品も多く、《マルセイユへの旅》などはその後のマリア信仰やイエスの血脈につながる過程を描いているとも思えて、何やら意味深に感じられてしまうのは、私だけでしょうか???でも、是非見てみたい作品ではありますね。

他にもなかなか渋い味のある作品が多いのですが、解説にも面白いのがたくさんあるので少々抜粋してメモ
磔刑図の変遷。磔刑図には、キリストが十字架上で目を開いている「勝利のキリスト」と脱力して目を閉じるタイプの「死せるキリスト」があり、聖フランチェスコはキリストの受難を強調し、その苦しみをともにしようとして、聖痕を得るに至った。それゆえ、サン・フランチェスコ聖堂に磔刑図が多く、新しいタイプである「死せるキリスト」への伝統が生まれたのは興味深い。また、この「死せるキリスト」にもキリストが弓なりに体を反らせて苦痛を表現するものと、体の重みで腰が引けたようになっている写実的なものがあり、この写実的なタイプがジョットにより、イタリア絵画にもたらされ、広く一般化したと考えられるそうです。

ジョット:
イタリア中世最大の画家。伝統的にチマブーエの弟子とされる。ジョットの傑作としてはパドヴァのスクローヴェ礼拝堂の壁画であり、晩年はフィレンツェの大聖堂主任建築家として鐘塔「ジョットの塔」を設計した。

サンタ・チェチリアの画家:
ウフィツィ美術館の「聖女チェチリアの祭壇画」から命名された画家。サン・フランチェスコ聖堂上堂の「聖フランチェスコ伝」最初の一場面と最後の三場面を描いたと思われる画家。

ジョットと言われてどっかで聞いていてずっと引っかかっていたのですが、やっと気付きました。あの《ジョットの鐘楼》のジョットです。確か80m以上の高さがあるんですが、すっごい美しいんですよ、外観が。私が今まで日本も含めて世界中で見た中では一番美しいと思う「塔」ですね、間違いなく!!勿論、初めて行った際には、朝早く開くや否やほとんど一番乗りに入り、誰もいない階段を延々と上っていきました。膝がガクガクしましたが・・・(年かな?)。下からの風の吹き抜けも凄かったです。しかし、しかし頂上から見下ろす風景は最高です。隣のドゥオーモにも勿論登りましたが、塔からだとドゥオーモが非常に綺麗に撮れたと思います(ちょっと記憶があやふやなんですけど・・・苦笑)。まあ、なんにせよ、ここの塔は絶対に写真に撮っておかないとね!相当数の写真をデジカメで撮りまくりました(笑顔)。でも、自分の写真も含めてネットでも画像を探してみましたが、あの色とりどりで鮮やかでいて白が際立つ美しさを表現できたものはありませんでした。百聞は一見に如かず。自分の目で見ないと。これだけは絶対にお薦めできますね。

聖フランチェスコ及びジョットに関するサイト
ジョットの鐘楼A
ジョットの鐘楼B
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2005年02月22日

「アッシジの聖堂壁画よ、よみがえれ」石鍋真澄著 小学館 感想1

あの地震で壁画が破壊され、世界中の人々が衝撃を受けた事件は、未だに記憶に新しい。私は行ってみたこともない場所なのに、是非地震の前に行きたかった・・・・と切に思ったのは言うまでもない。ちなみに、この思いはイラク戦争前にソポタミア美術の博物館に行きたかった!というのに共通する思いでした。

と言いつつも、映画「スティグマータ」とかを見たりするまでは、シエナ同様の中世イタリア都市という程度の認識しかなかったりする。聖フランチェスコの名前も聞いたことある聖人の一人に過ぎなかった(この程度なんですよ、実際)。

その後、薔薇の名前やダ・ヴィンチ・コードの影響でいろいろ調べるうちに、キリスト教史で初めて聖痕の現われた聖人であり、清貧を説いた非常に、存在感のある人物であることが分かったきたのでした。そんな時に、たまたま見つけたのがこの本。

何よりも画像が大きく、とっても見易いのがいいです。本来、壁画なんだからとっても大きいのを本にするだけで、見難くなるのに、変にレイアウトに凝ったりせず、ありのまま見せようとしてくれているのはすっごくイイ! また、壁画の各場面に付けられている説明がシンプルながら、1.2行とかの過度の簡潔ではなく、初めて見る人でもすぐに内容が分かるように説明されていて、なかなか嬉しかったりする。値段はそれなりにするけど、これだけ画像が多ければ、ヨシといえるくらいの値段です約二千円。

で、興味深い内容の壁画が多々あるので少々紹介を。まずは「火の証」。十字軍の兵士とともにエジプトに渡った聖フランチェスコがスルタンの前で福音を語る機会を得、スルタンの司祭達と火の中に入ることを提案するが、司祭達は逃げ去り、一人で入ろうとする申し出も拒絶されて、土産を持たされて丁重に送り返される話が描かれている。この辺りのことは、薔薇の名前の映画でも触れられていましたね。笑いを巡る話題の中で。そうえいば、探偵役の僧侶は、フランチェスコ会の修道士という設定でした。う~む、まさに清貧とユーモアですね。

あと有名な「小鳥への説教」。羽毛や翼をもらい、綺麗な空気と食べ物に恵まれているのだから、おもえたちは創造主を讃えなければならないと説教する場面。

「聖痕をうける聖フランチェスコ」。断食をしたり、祈りを捧げていた時、十字架称賛の祝日(9月14日)の朝、祈っていると点から六つの輝く翼を持ったセラフィムが舞い降りてくるのが見えた。しかも翼の間に十字架にかけられた男が見えたがこの時、聖フランチェスコは「苦痛の共感の剣」で貫通されたように感じた。こしてキリストと同じ十字架の釘の傷を両手足に、そして槍による傷を右腕に受け、胸の傷からはしばしば血が流れ出して僧服を汚したという。

「聖痕の検証」。聖フランチェスコの死を聞きつけた人々のうち、ジラロモという教養ある騎士が疑いを抱き、自らの手で傷を触ってみる。これにより、彼は聖フランチェスコの聖痕の熱心な証人になった。

他にも、火の車とか興味深いのがたくさんあるのですが、やはり聖痕関係が多いね。こんなに多いとは・・・・。あ~、きっとこれからは聖痕についての資料を読み漁りそう・・・、もうキリがないなあ~困った&困った。といいながら、また、本を探しに行くんでしょうね。結構、幸せだったりする私。これも聖フランチェスコの恩恵かな?(ニヤリ)

あっ、これらの絵はジョットが描いたと言われています。諸説あるようですが、若かりし頃のジョットがメインで描いていて、その他、「サンタ・チェチリアの画家」と呼ばれる人が描いているそうです。さて、ここで私がふと思ったのはチェチェリアってあの、チェチリアかな?だったら、その画家の事ももっと&もっと知りたいですね。ウフィッツィ美術館にあるらしいのですが、この画家の作品、私のもっているウフィッツィ美術館の画集では出てこないんですよ(英語の1980年、日本語の1986年ともにイタリアで出版されたもの)。どっかに情報ないかな?さっきもネットでvirtual uffiziを見ていたんですが、見つからなかった・・・(涙)。

で、他の壁画も凄いんですが、それはまた後日。

世界の宗教建築 アッシジのサン・フランチェスコ修道院聖堂
修道会概要 創立者
アッシジ

続き
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2005年02月12日

「ルネサンス街道の旅」  日経BPムック

「ルネサンス街道の旅」  日経BPムック
とにかく写真が大きいうえに、枚数も豊富。選ばれている写真も、定番中の定番をきっちり押えたうえで、非常に綺麗で構図もいいと思います。ここに出ているうち90%以上は実際に自分の目でも見ているし、写真も100枚を軽く超えて撮っているので懐かしいアルバムを開きながら、思い出に浸っています(ウットリ)。

ルネサンス期を代表する芸術家として31人に絞り込んで、とってもポイント良くまとめています。ちょっと言葉を悪く言うと、どっかで聞いたことばかりなのですが、時々、あまり良く知らなかったこと(ボティッチェリがサボナローラの影響で描く事を止めて晩年、享楽主義とは無縁で寂しく過ごしたとか)もあり、雑然とした知識を整理するのには、なかなか有意義です。

イタリアに行ったことの無い人には、憧れを満足させたり、実際に行く際の自分が必ず周るべき場所の選定に役立つと思いました。このムックでも明確にうたっていますが、歴史と美術に関心にある人なら絶対に楽しめると思うなあ~。

勿論、レオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロ、ミケランジェロの代表作はきっちり出ていますよ~。ラファエロのファンならみんなが知っている、女性好きでお目当ての女性を餌に絵を描かせたという有名なエピソードもしっかり書かれてました(笑顔)。ミケランジェロが非常に苦しい姿勢で何年にも渡ってほとんど独力(通常は工房の弟子込みなのに、一人)で描いたシスティーナ礼拝堂なんかも押えてます。基本ですねぇ~。さりげなく、サン・ロレンツォ聖堂の写真もあり!(ここにも手彩色写本あります)

さあ~て5月の連休明けに行こうかな?ミラノは一度も行ってないし、アッシジやシエナも寄りたいなあ~。でも、革製品の買い付けもあるし・・・。フィレンツェは3度目だけど外せないか。純粋に観光だけで行けないのは悲しい限り。まあ、宿泊費を削って2週間ぐらい滞在したいなあ・・・。ブツブツ・・・チュニジアにまた行くのが先になるのかな?それも辛いけど・・・。
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2005年01月23日

「図解 ダ・ヴィンチの謎」宝島社、便乗してますねぇ~

ナショナルギャラリールーブル

上記の画像は左がナショナルギャラリーで右がルーブル。やっぱり、手直しする前のルーブルの方が、センスいいよね。
~目次~
・「最後の晩餐」に仕掛けられたダ・ヴィンチの暗号?
・ヨハネがマグダラのマリア?
・鏡文字は暗号なんかじゃない?
・二枚の「岩窟の聖母」
・人体図の本当の意味は?
・シオン修道会は存続しているのか?
・聖杯伝説のなぞ
・モナ・リザのモデルはダ・ヴィンチなのか?
・ダ・ヴィンチの遺言に隠された秘密

端的に言っちゃうと、ダ・ヴィンチ・コードの人気にあやかった便乗本の一つですね。ただ、図版が多くて、一目で広く浅く知識が得られたような気になるっていうのがウリ。さすが宝島、お金儲けうまいなあ~って思います。買うほどではないけど、図書館で借りてみるぐらいはいいかも?実際、私も借りて読んだクチです(笑顔)。
最後の晩餐なら、ココ!絵も綺麗

でも、本読んでちょっと勉強になったこともあったから、メモしておこうっと。最後の晩餐の十二使徒:左から「ナタナエル、小ヤコブ、アンドレ、ユダ、ペテロ、ヨハネ、イエス、トマス、大ヤコブ、ピリポ、マタイ、タダイ、シモン」

タダイ:別名ユダ。イエスの処刑後、シモンとともにパレスティナへ伝導に行った
トマス:イエスの復活を信じなかった為、「疑いを抱くトマ」と呼称されることがある
ペテロ:第一の使徒。名は石を意味し、イエスにこの岩の上に教会を建てようといわれた
シモン:福音書では「熱心党のシモン」と呼ばれ、ユダとペルシャで殉教した
小ヤコブ:使徒名簿に「アルファイの子ヤコブ」と記されている
アンドレ:福音書ではシモンの弟と呼ばれている。ペテロをキリストの元に連れていった
イスカリオテのユダ:イエスを裏切り、銀貨30枚でヘロデ王にイエスを売った
ビリポ:イエスが宣教活動を始めた時期に弟子になる
大ヤコブ:ヨハネとは兄弟であるとともに最初の使徒殉教社でヘロデ王に殺される
マタイ:ユダの裏切りで減った使徒の代わりとなった
ナタナエル:斬首刑にされる前に、生きたまま生皮を剥がされた
ヨハネ:最年少の使徒。イエスの寵愛を受け、死後、福音記者となる

○トマの天井に向けられた指:イエスの「汝らのひとりがわたしを裏切る」の言葉に対し、「裏切りは一人なんですか?」
○イエスの足下:18世紀時代に馬小屋として使用された時に、壁を削って通路とした。オリジナルの模写で構図は確認できる。 Da Vinci-Museum, Norbertijnenabdij,Tongerlo
○イエスの右側に座る人:一般的にはヨハネ
○威嚇するペテロ:年長者でイエスの一番弟子ペテロが感情的に反応した姿
○パンを掴むユダ:イエスを売り渡し、銀貨を手にするユダ。パンを取るのは裏切り者の象徴。
○背中から現われた手とナイフ:ナイフはペテロのシンボルであり、受難を表す道具
○テンペラ画法。遅筆だったので後から何度も塗り重ねが可能なテンペラ画法と油彩を組み合わせた技法を採用。書かれてまもなく顔料の剥落が始まった。
○モナ・リザのモデルとして、フィレンツェ商人デル・ジョコンドの妻が定説となっている。

で、次はダ・ヴィンチ・コードでも取沙汰された「岩窟の聖母」関係。両方とも実際に行って見てるけど、あまり印象に残ってないんだよね。ダ・ヴィンチって正確さにこだわり過ぎて、見てても感動しないんだもん。ピティ宮殿のラファエロの聖母は、大好きで見てるだけで胸が熱くなり、涙がにじんでくるけど・・・。5、6回見たかな。今年も見に行きたいなあ~。
ダ・ヴィンチの端正さだったら、フラ=アンジェリコの端正さを買うけどなあ、私なら。

○岩窟の聖母。依頼主はミラノのサン・フランチェスコ・グランデ教会。ルーブルはダ・ヴィンチ作でロンドンはダ・ヴィンチ工房(弟子達)の作品といわれる。現在の所有はロンドン・ナショナル・ギャラリー、ルーブル美術館
○ロンドン作品には十字架と光輪がある。
○ルーブル作品の天使ウリエルの目線が鑑賞者を見ている
○マリアのかざす手は、「執り成し(=神への仲介)」を意味し、イエスに神の加護を祈っている様子
○天使の指、洗礼者ヨハネを指して紹介している
○舞台となった岩窟は当時、イエスが生まれたとされる場所が馬小屋と岩窟の二説あり、ダ・ヴィンチが岩窟説を採用したため
○ウィトルウィルス的人体図のウィトルウィルスは古代ローマの建築家の名前であり、彼の建築論に書かれた比例の原理を元にして描かれた図とされる
○鏡文字。内容を人に知られたくない、又は左利きだった為、とか種々の理由が挙げられるが不明
○ダ・ヴィンチは二度ほど男色の疑いで逮捕されたことがあり、同性愛者だった可能性が示唆されている。また窃盗癖がある問題児だったのに、10歳の美少年ジャコモを引き取って面倒をみていたこともその疑いを強くする。

と、以上この本を読んで勉強になったことでした。ダ・ヴィンチの男色の噂は有名ですが、当時男性だけの閉鎖空間である「工房」ではよくある話だし、真偽は謎ですね。もっとも、不思議の国のアリスをかいたルイス=キャロル(本名チャールズ=ドジスン)も数学者で真正ロリコンだったし、ワーグナーやオスカー=ワイルドに至っては・・・・。

まあ、芸術家はいつの時代も世間の常識を超えた存在なのでしょう。それ故に、社会の枠を超えた至高の芸術が生み出せるのか?
さてさて、余談はさておき、枕元に積んでる本読まないと。そろそろ本が崩れてきそうだし。「ルンヌ=ル=シャトーの謎」も誕生日プレゼントもらったんだから…。とっても楽しみ。
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