2008年05月05日

「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新

101938.jpg

新書にしては、実に美しい写真が豊富に入っており、写真を眺めているだけでも初心者の方にはロマネスクというものが漠然とイメージできると思う。

使われている写真もロマネスクの特徴を的確に捉えた、何よりも美しいものが多くて楽しい♪

本書が企画として成功し、売れているのは納得がいくだろう。しかし、逆に言うと、本書にはそれだけしか価値が無いように思える。フランス各地にあるロマネスク建築を紹介した本としては、質より量を優先させてしまった結果、必然的に個々の建築についての解説が不足しています。

率直に言うと、エミール・マールの本の翻訳をしていた著者への期待が大きかった故に、失望がより大きかった! ロマネスクの解説という点では、はなはだレベルが低すぎる。頁数が足らなくて、魅力が十分に伝えられていないと強く感じました。非常に残念だ。

また、よく読むと分かるが写真と文章の解説は相互の関連がなく、文章はそれだけで書かれた後に、ビジュアル的なレイアウトだけで写真が要れられているのが分かる。一見すると、華やかだが、ロマネスクの深い理解には至るわけがない。

そもそも、図像的な点を考慮するならば、写真へは番号が振られ、個々の写真への言及があってしかるべきだが、本書の場合、写真への直接的な言及は一切無い。

実にたくさんの場所・建築物を採り上げ、素敵な写真が多いもののただ眺める以上の価値が無いのが惜しい。大衆に媚売って、レベルを相当落とした結果の売り上げ増だろう。個人的には、この本はいらない!

でも、量のみを優先させた成果もある。普通では、ロマネスク建築の大判な美術百科でもそれほど出てこないような珍しい場所が出ており、その写真は、日本ではあまりお目にかかれないものでしょう。

でもでも、やっぱり写真が文章と遊離しているし、その建築についてもっと知りたいという好奇心を満足させるには程遠い解説は、ストレスになりそう。かえすがえすも残念な一冊でした(涙)。
【目次】
1章 ブルゴーニュ地方(ヴェズレー、オータン、トゥールニュ)
2章 オーヴェルニュ地方(オルシヴァル、サン・ネクテール、コンク)
3章 プロヴァンス地方(セナンク、アルル、ル・トロネ)
4章 ラングドック地方(サン・ギレーム・ル・デゼール、モワサック、トゥールーズ)
5章 ルシヨン地方(セラボンヌ、サン・ミッシェル・ド・クシャ、サン・マルタン・デュ・カニグー)
6章 リムザーン地方(ボーリュー・シュル・ドルドーニュ、ソリニャック、ル・ドラ)
7章 ポワトゥ地方(ポワティエ、ショーヴィニー、サン・サヴァン・シュル・ガルタンプ)
8章 ベリー地方(ノアン・ヴィック、サン・ブノワ・シュル・ロワール、ラ・シャリテヒ・シュル・ロワール)


フランス・ロマネスクへの旅 カラー版(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ロマネスク彫刻の形態学」柳宗玄 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展〜国立西洋美術館
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「芸術新潮 2007年04月号 イギリス古寺巡礼」
posted by alice−room at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年12月12日

「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社

fraromanesqe.jpg

とにかく写真が素晴らしい! 写真の撮り方もさることながら、どれを対象に選ぶか、その「選択」が冴えていると思う。本のサイズにしては非常に大きく写真が載せられていて、写真を最大限に生かすべく文字のレイアウトも考えられている。

解説はエッセイ風で気軽で読み易く、親しみ易い。ロマネスク建築を全く知らない人でも抵抗感無く読めるし、知っている人なら単純な旅行記(取材記?)として読んでも楽しめる。観光ガイドよりは、かなり詳しい説明になっているし、アクセスなども丁寧に説明されているので通常の観光ガイド+αとして現地に持参してもいいかもしれない。

本書を見ていると、改めてロマネスク建築を自分の目で見てみたいと強く感じる。ただ、アクセスの悪い所が多いのでそれだけが難点だけどね。

ロマネスク建築や美術に関する本や全集の写真はしばしば見ているが、本書はそれらに負けず劣らずの価値を有すると思います。きちんとした解説は、他の本を読むとして建築や美術はまず眼から入っていかないとネ! 最善は実物を見ることですが、それが無理ならせめて写真で見たいものです。本書の写真は、ロマネスク建築の理解に大いに役立つと思います。

もっとも堅いこと抜きにして、柱頭の怪しい彫刻などがとにかく好き。タンパンなども素敵だし、Simple is best.を地でいくシトー派の教会堂なども雰囲気が素敵♪

手紙流用形式のロマネスク紹介もいいけど、ちょっと紙幅を取り過ぎかな? もう少し割合を減らせば更に良いかもしれません。手元に置いて眺めていたい本です。
【目次】
ブルゴーニュ地方
 ロマネスク建築の宝石箱
 小さな教会を訪ねる ブランシオン
 トゥニュ 初期ロマネスクの空間美
 オータン 中世彫刻の甘美なささやき
 ヴェズレー 永遠の丘に座す栄光のキリスト

プロヴァンス=コート・ダジュール地方
 シトー派の三姉妹に会いに行く
 ル・トロネ 信仰をはぐくむ光の回廊
 セナンク うしろ姿に宿る気品
 シルヴァーカーヌ 修道士の夢のあと

ロマネスクからの手紙 中村好文

ラングドック=ルション地方
 ピレネー山麓の隠れ寺詣で
 ブール・ダモン 緑に埋もれた小修道院
 カスタイユ よみがえった絶壁寺院
 モレイヤス・ラス・イヤス 小堂を彩る仰天壁画

ミディ=ピレネー地方
 巡礼路の至宝をもとめて
 トゥールーズ 巡礼者が集う薔薇色の教会
 モワサック フランスでいちばん美しい回廊
 コンク 山里に息づく聖女の魂

ロマネスク美術談義 木俣元一

中世美術を見るヒント
旅案内
とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅 (とんぼの本)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ロマネスクの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
祈りの中世‐ロマネスク美術写真展〜国立西洋美術館
「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
posted by alice−room at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年11月22日

「奇想遺産」鈴木博之/藤森照信/隈研吾/松葉一清/山盛英司 新潮社

kisou.jpg

世界中の変わった建築物を紹介した記事で、朝日新聞の日曜版に掲載されたのをまとめたもの。

うちは日経新聞で以前は、朝日新聞も併せてとっていたけど、だいぶ前にとるの止めたからリアルタイムでは数回しか読んでいません。何か面白いものがあるかなあ〜と手にとってみましたが・・・。

結論から言うと、あまり面白いものがありません。ここ100年ぐらいの最近(私の建築についての感覚では)のものが圧倒的に多くて、数百年前に遡って時代を生きてきた建築物は一部しか採り上げられていません。

私の感想でいうと、テスト的に作られた建築物でまだまだ現在もテスト中で海のものとも山のものともならないモノかなあ〜って感じです。

でも、今まで知らなかった建築物で関心を持って、もっと知りたいと思える物がありましたので読んでいて完全に無駄というわけではありませんでした。

あと気になったのは解説の文章。肝心の建築物の説明は、平易な反面、あまりにも簡略化し過ぎて内容がほとんどなく、知りたい由来などが全然足りない。それなのに、朝日新聞故か、わざわざ文化論的な(つ〜か、現代社会批判的な文章)直接建物と関係のない文章が入っていることが多く、いらいらする。

同一著者によるそういった文章なら、それはエッセイ的な要素として甘受すべきかと思うが、複数著者により、それぞれの論調の方向性が微妙に異なっているその手の文章をまとめて読まされると、余計な文章を入れるな!と切に思う。

何故、素直に建築物の解説だけにしないのだろうか? はなはだ疑問だ?

それはおいといて。個人的に気になったものをメモ。

マレ=ベルニエ村の芝棟。この『芝棟』という言葉を私は本書で初めて知りました。これは、茅葺の屋根の上に植物を植えたもので植物が根を張ることで棟をしっかりさせる狙いがあるらしい。なかなか面白いですね。

しかし、この部分の説明が本書ではきちんとされていなかったりしてやっぱり解説に難有りかも?

笠森観音 千葉県長生郡長南町笠森 16世紀。天台宗の寺院で開基は784年。

投げ込み堂みたいな感じに写真では見えましたが、それとも清水寺の舞台みたいなのかな? 千葉なら遠くないし、今度行ってみようと思います。

武雄温泉 桜門・新館浴場。佐賀県武雄市武雄町武雄550、1915年 辰野金吾の設計。ご存知、日銀本店や東京駅舎の建築家ですね。竜宮城みたいなゴテゴテした温泉街の建物で、どこぞの風俗街のお店のようです(失礼!)。でも、こういうセンスってなんか好きで惹かれるんですよ〜。機会があれば、行って温泉に浸かりたいな。佐賀県って行ったことないし、一度くらい行ってもいいかも。

聖ワシリー聖堂、モスクワにあるあの有名なアレ。グリム童話のお菓子の家みたいだけど、ネギボウズがあるからイスラム版みたいなの? すごい言いようですが、やっぱりモスクワに行ったら寄ってみたいところですよね。まさに中心部にある建物だし、TVでなら見たことあるけど、やっぱし楽しそう♪

ゴルのスターブ教会、木造のゴシック教会で有名なものだと思う。さすがはバイキングって感じでこれはリアルタイムの記事で見たけど、その時から気になっていました。どっかにファイリングした記事があるはず? 

本当に世界中にはたくさんの見て回りたい建築物がありますね! 読みたい本もあるし、死ぬ前にできるだけたくさん見てから死にたいですね! 読みたい本も腐るほどあるし、頑張って長生きせねば。今頃になってラテン語勉強しようと本読んでますが、ラテン語できたら楽しい本がたくさ〜ん更に原書で読めるもんね! いつマスターできるか?挫折しないかが問題ですが・・・(苦笑)。
【目次】
1章 (時には風景までをも歪める)「奇景・奇観」
ル・ピュイ=アン=ブレ
ナショナル・モニュメント
シアトル中央図書館
名護市庁舎
カンピドリオ広場
カール・マルクス・ホフ
マレ=ベルニエ村の芝棟
ラ・ビレット公園
アンドレ=シトロエン公園
タ・プローム
笠森観音

2章 (都市の奇怪な象徴を意図した)「奇塔・奇門」
キューガーデンのパゴダ
プラターの大観覧車
サグラダ・ファミリア教会
戦勝記念塔
新凱旋門
ワシントン記念塔
ゲートウェー・アーチ
太陽の塔
通天閣
武雄温泉 桜門・新館浴場

3章 (不思議な形をきわめた)「奇態」
シドニーオペラハウス
ロンシャン礼拝堂
ポルト・ドーフィーヌ地下鉄駅出入口
アブラクサス
パーク・メールバイク
メーリニコフ邸
ジョンソンワックス本社
フラットアイアンビル
泥の大モスク


4章 (知的研鑽を提起する)「奇智」
サン=シュルピス教会
パンテオンとフーコーの振り子
オックスフォード大学博物館
サイオンハウスの大温室
テート・モダン
大英博物館グレートコート
オーストリア国立図書館
ベルリン・ユダヤ博物館
クロイスターズ
ウッドストックの音楽堂
屏山書院

5章 (自己流の風流をここまでやるかと思わせる)「数奇」
シュバルの理想宮
旧ムニエ・チョコレート工場
パサージュ・ジュフロワ
マジョルカ・ハウス
サー・ジョンソン・ソーン博物館
ツリーハウス
カステル・コッホ
ワッツタワー
ハースト城
児島寅次郎邸茶室
耕三寺

6章 (神仏の霊験を表現した)「神奇」
聖ワシリー聖堂
キージ島の教会
サンタンジェロ城
ゴルのスターブ教会
聖ミハエラ教会
クリシャン・サイエンス派第1教会バークリー
ファットジェム大聖堂
昌徳宮
首里城正殿と玉陵
御塩殿の天地根元造
会津さざえ堂

7章 (既成概念に確信犯的に叛く)「新奇・叛奇」
アインシュタイン塔
オリンピック競技場
ドイツ連邦議会議事堂
ソニー・センター
ウィーン郵便貯金局
セセッション館
ロースハウス
シュレーダー邸
ル・ランシーのノートル=ダム教会
イタリア文明館
メルモンテ日光霜降
奇想遺産―世界のふしぎ建築物語(amazonリンク)
タグ:書評 建築
posted by alice−room at 18:10| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年08月23日

「ランスの大聖堂」ジョルジュ バタイユ 筑摩書房

rannsu.jpg

バタイユによるランスの大聖堂について書かれた文章。それだけが読みたくて読んでみました。

著者の生きた時代において、大聖堂はなお人々の心の拠り所であったことが痛いほど感じられる作品です。中世ほどの熱狂的な想いとは異なるものの、当時を振り返られることはない現在では考えられないであろう想いが、この作品が書かれた時代には、まだまだ切実に存在していたのを感じます。

世界遺産が残っているようなところには、共通しているのかもしれませんが、何よりも地元の人が大切に思い、慈しみ、守る気持ちがその時代、時代にあり、それが継続してこそ、今の姿があるんだろうなあ〜って思わずにいられません。

法隆寺を守ってきた人々なんかも相通ずるものがあるのかもしれないですね。

とまあ、ありがりな感想ですが、悪くはないんですが、正直、心を打つほどではなかった。ユイスマンスの「大伽藍」とは比較にならない!

何故、私がここまでゴシック建築、とりわけステンドグラスに強い関心を持つに至ったか、その原因たる『聖別された空間』への描写はここには無い。しかし、ユイスマンスの作品には、それがある。

他の人がどう評価するかは分かりませんが、私は本書をまた読みたいとは思いません。実際、他の作品は更に興味がないものばかりで、心がピクリとも動きません。エミール・マールの解説を読んで感じるような新鮮な驚愕がありません。勿論、感動もね。
【目次】
T 一九一八(ランスのノートル・ダム大聖堂)
U 一九三七‐四〇
悲劇=母

プロメテウスとしてのファン・ゴッホ
天体
風景
幸運
戦争の脅威
聖なるもの
星を食べる人々―アンドレ・マッソンの天才
V 一九四六‐四八
半睡状態について
アンドレ・マッソン
よみがえるディオニュソス
取るか棄てるか
神の不在
神話の不在
シュルレアリスムと神
ランスの大聖堂 (ちくま学芸文庫)(amazonリンク)

関連ブログ
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
posted by alice−room at 16:08| 埼玉 ?J| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年08月22日

「ゴシックの芸術」ハンス ヤンツェン 中央公論美術出版

gothicgei.jpg

翻訳をされているのは、前川道郎氏。前川氏の本でゴシック建築の基本文献として頻繁に出てくるヤンツェンの著作を、ドイツ語から翻訳された資料本。原書で読めない私などには大変有り難い本なのですが、翻訳者ご自身が言われているように、訳がこなれていないうえに原文自体の問題があるのかもしれませんが、本書は非常に読み難い&理解しにくい。

もっとも意訳され過ぎて原文本来から意味が遠ざかってしまうものよりは、逐語訳のような文章の方がこの手の学術書としては、はるかに好ましいと思います。でも&でも、異様に読み難いし、理解するのが難しいです。パノフスキーよりは、まだマシですけど・・・。

ちなみに前川氏自身がゴシック建築という研究対象をいかにして捉えていくかを悩まれていた時に、『空間』として認識するという方法論を採用する際、非常に参考にした一冊が本書であったりするんだそうです。

そう言われてみると、以前読んだ前川氏の「ゴシックということ」で書かれていたことのかなりの部分の源泉が本書であったことが分かります。勿論、あちらの本は、あくまでも本書を踏まえて前川氏が論を進めている訳ですが、これがあって初めて成立した経緯がよっく分かります。

そういう意味で、きっと重要な基本文献の一つなんでしょうね! でも、嫌ってほど読み難い本です。いきなり最初に本書を読んでも普通の人ならまず理解できません。読んでて何語の本かと、息が苦しくなりましたもん、私。おそらく誰かの解説が必要でしょう。それぐらい、難解だと思います。

本来の順序とは逆になりますが、「ゴシックということ」を読んでざっと基本的な流れを一通り頭に入れた後に読んだ方がはるかに理解しやすいです。それでも私は苦労しましたが・・・(涙)。

丸々1日つぶして読書&メモしたが、どうでもいいところ(私的に関心が持てない細かい部分)は、一部飛ばし読みしても相当時間を費やしました。あっ、でも今、平行して読んでるエミール・マールの「ゴシックの図像学」と重なる部分もあって、そこは説明不要だったので結構助かったかも?

おそらく、避けては通れない基本文献です。日本語であるだけでも喜ぶべきでしょう。つべこべ言わず、さっさと読んでおきましょうね。ゴシック建築に関心を持つ方は。どうせ、すぐには理解できませんが、そのうち他の本を読んでいて絡んできた際に役立つかもしれません。

淡い期待と共に義務感から読みました。もっとも、分かり難いけど、分かる範囲では大切な示唆に富む指摘や解釈だと納得がいきます。そういう本です。もっとも、どうしても辛くて読めないなら、前川氏の前述の本に集約されてますのであちらだけで読んでもそれほど困らないかもしれません。あちらが、凄く分かり易くて学ぶ事が多い素晴らしい本だからなあ〜。

でも、本書のゴシック大聖堂を「空間(空間限界の認識)」で捉える方法論は、やっぱり慧眼ですね。

本書の内容に関するメモはこちら。
【目次】
第1部 ゴシック教会堂の空間について
第2部 ゴシックの芸術―フランスの古典大聖堂、シャルトルとランスとアミアン

序論 ゴシックと現代
第一章 建てられた大聖堂
 第一節 長堂
 第二節 内陣
 第三節 袖廊
 第四節 光
 第五節 空間とゴシックの空間限界
 第六節 大聖堂の技術について
 第七節 外部の建築構成
 第八節 扉口と彫刻
 第九節 モニュメンタルなステンドグラスの絵
第二章 解釈された大聖堂
ゴシックの芸術―大聖堂の形と空間(amazonリンク)

関連ブログ
ゴシックの芸術〜メモ
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
posted by alice−room at 21:40| 埼玉 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年06月07日

「世界の建築・街並みガイド(1)フランス・スペイン・ポルトガル」羽生修二、西山マルセーロ、入江正之 エクスナレッジ

基本的なノリとして旅行のガイドブックに近い感じで、コンパクトに見るべきものがまとまって小さな写真入りで紹介されている。個々の説明は必要最小限なのだが、なにはともあれ、建築物(街並み)にポイントを置いて見るべきもの、見る価値のあるものをほぼ網羅している点がポイント高い。

通常の旅行ガイドブックだと、いわゆる観光名所全般や行くまでのアクセス等が入っているので焦点がぼけてしまうのだが、本書は対象を絞って(=建築物の解説のみ)厳選されており、私が実際に行った所はかなり重なる『選択』をしているので私的には便利が良さそう。また、行ったことのない所に関しては、是非見たいと思うようなところがしっかり選ばれているので、勝手に納得しちゃいました。

基本的には、本書で旅行に行く際に行くべきところを大まかにざっと見渡し、概要を確認しながら、更にその中で絞る為の資料として使えそうです。実際に行く時には、その絞ったものそれぞれのアクセス等を他の旅行ガイドやサイトで調べる手順になるでしょう。

本書だけで旅行の準備は完結しませんが、実に素敵な建築物を素晴らしい選択眼で選んでいるし、普通のガイドブックでは漏れてしまうか、粗略に扱われる情報が最低限きちんと入っているので旅行の目的がショッピングや食事メインではなく、「建築物」なら価値がある本だと思いました。
【目次】
フランス
1プロヴァンスのシトー会修道院を訪ねる
2巡礼路の聖堂と装飾は訪ねる
3中世の城から城館をたどる旅
4イル・ド・フランスのゴシック大聖堂を魔ぐる
5アール・ヌーヴォーの建築を訪ねる
6ル・コルビュジェの生涯をたどる旅
7パリの個性的な美術館を訪ねる

スペイン
8アンダルシアのイスラム建築を訪ねる
9スペインのバロック建築を訪ねる
10バルセロナにガウディの建築を訪ねる

ポルトガル
11ポルトガルの家と街並みを訪ねる
世界の建築・街並みガイド〈1〉フランス・スペイン・ポルトガル(amazonリンク)
posted by alice−room at 20:08| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年05月22日

「スペインの大聖堂」菅井日人 グラフィック社

写真が豊富に使われており、その多くがカラーなのは良いが、写真自体は全然良くない。構図が適切であるとはいい難いうえに、大聖堂そのものを中心にしたタイトル通りの意図を持った写真ではなく、余計な人物や景色に貴重な写真を用いて大変もったいない。

一方で肝心な大聖堂の姿を十分に写真として撮っておらず、本末転倒も甚だしい。建築物としての大聖堂を的確且つ十分に捉えていないので、大聖堂理解に役立っていないのが、なんともイタイ本である。

また、写真そのものの色調や色合いも綺麗とは言えず、発色も良くない。コメントでさんざん美しいステンドグラスというものの、そこに載っている写真は、黒っぽくつぶれていたり、平板に写っていてお世辞にも美しいとは思えない。著者はプロの写真家であると経歴が書かれていたが、全くの期待外れで本当かどうか私には信じかねる?(勿論、印刷時の問題もあるのかもしれないが・・・それでもね) 小細工など要らない。対象を正確に、且つ的確な構図で美しく写したものが見たかった。やや独り善がりな技巧的な写真(しかも美しくない)が目につく。

本書は、ある種写真集に近い感じで、説明として文章が入っているのだが、この説明もいただけない。必要な記述が欠けている反面、エッセイ的な要素を入れてしまい、結局意味のないコメントになってしまっている。むしろ、割り切って旅行ガイド的な名所説明の方が、はるかに有用で好ましい。

いろんな意味で、お金を出して買う価値を見出せない本だった。申し訳ないが、現在の高性能のデジカメだと、素人でもかなりのものが撮れるし、ネット上にある写真に負けている。この本。

これを買うなら、芸術新潮などで組まれている特集号を購入しましょう。あちらなら、まず外れはありません。
【目次】
スペインの大聖堂
アンダルシア地方
ラ・マンチャ/マドリッド地方
カスティーヤ・イ・レオン地方
ナバラ/バスク/リオハ地方
カンダブリア/アストリアス/ガリシア地方
ムルシア/バレンシア地方/バレアレス諸島
アラゴン/カタルーニャ地方

スペインの大聖堂(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「凍れる音楽−シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「世界の大聖堂・寺院・モスク」アンリ スティルラン 創元社
「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
posted by alice−room at 21:07| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年05月15日

「世界の文化史蹟 第12巻 ロマネスク・ゴシックの聖堂」柳宗玄 講談社

だいぶ前に格安で購入したまま、忘れていた全集タイプの一冊。編集があの柳宗玄氏の手になるもので、解説の9割もご本人が書かれている。

当然、この手の全集ものとしては十分過ぎるくらいの解説が書かれているし、写真が大変多いのもポイントが高い。解説がどんなに優れていても実際にどういったものかイメージできなければ、ロマネスク建築やゴシック建築といったものは価値が無いのでその意味で本書は十分に読むに値する。

とにかく非常に大型の紙面であり、一部の物は更にそれを両開きで一つの写真として掲載し、大聖堂のタンパンなどの細かい彫刻が一つ一つはっきり認識できるようになっている。美術関係である以上、当たり前のことだが、この点をクリアできていない全集物が結構あるので、本書はその点、問題がない。

但し、私が気付いた問題点がある。ステンドグラスの写真も大きく入っているのだが、綺麗に写っているとは言い難い。かろうじて、そのデザインされているものを認識できる程度で、ステンデグラス本来が有する神々しいまでの、ある種究極的とまで思えるような素晴らしい美術作品になっていない。私がデジカメで撮ったものの方が綺麗だと思えるほどで実際、悲しい。

これはやはりカメラの性能故なのだろうか?それとも印刷上の技術的な問題のせいだろうか? 私には理由が分からないのだが、最近出版されているステンドグラスの印刷物の方がはるかに美しいのでそれだけは、本書に期待できない。まあ、1970年に出たものなので、時代性を割り引いて考えるべきだろう。

しかし、それ以外の点では、カラー印刷の経年劣化を踏まえても十分に分かり易い及第点の写真だと思う。この写真を見ながら、解説を読むと大変勉強になる。解説の充実ぶりからも読んでおいて良い本だと思う。

個別な解説はおいておくとして、柳氏もシャルトル大聖堂が本当に好きなんだなあ〜と思った箇所があるので引用しておく。世界中の美術作品、建築物を見たうえでのこの発言なので値千金だろう。私もまさに、同感である!
中世という語は極めて曖昧なものだと先に私は言った。シャルトルについて述べる場合、この曖昧な語を使ってもよい。いや語は曖昧な茫漠たる広がりをもったほうがよい。シャルトルは時代を超えた人間の理念そのもの結晶である、とまで言いたい。人類はかつてこれ以上のものを作ったか。またこれ以上のものを作れるか。

 ともかく、シャルトル大聖堂は中世の門であり、そして中世の奥殿である。それは私たちに、中世人の夢と現実を、中世芸術の豊かさとその規模を、十二分に示してくれる。中世を暗黒視する者は、シャルトルを訪れたことのない人間に違いない。訪れてなお妄言を弄する者は、何かよほどの理由によって、その心の潤いを喪失した人間に違いない。「いかなる無神論者も、シャルトルへ来ては勝手がわるかろう」とナポレオンが言ったとか。
また、他にも以下の言葉を紹介している。
「シャルトルは中世思想それ自体が形をなしたものである」(エミール・マール)
私自身もそれまでいくつかのゴシック大聖堂を見たことがあったのだが、シャルトル大聖堂だけは別格であり、本当に神様がいるのではないかという気持ちになった。この懐疑論者である私がだ。

いつ行けるか分からないが、少なくとも5年以内には再訪するだろう。前回は何も知らないままであったが、今回は少しだけ分かったうえで行ってみたいと強く思った。

そんな場所を、本書を見ることで見出せるかもしれない。少なくとも私には、引用した文章を見れただけで満足でした。
【目次】
1 ロマネスクの世界

(写真)
アーヒュン大聖堂
ヒルデスハイム大聖堂
ヴェルデン修道院聖堂
エッセン大聖堂
サン・タンブロージョ教会
サン・ゼーノ教会
サン・タンジェロ・イン・フォルミス教会
ピーサ大聖堂
オータン大聖堂
ヴェズレー修道院
フォントネー修道院
サン・サヴァン・スュール・ガルタンプ教会
モワサック旧修道院
サン・マルタン・ド・フノヤール教会
サン・フワン・デ・ドゥエーロ修道院
レスタニー旧修道院
サンティヤーゴ・デ・コンポステーラ大聖堂

(解説)・・・解説者名の記入無しは全て柳宗玄
聖堂とは何か
中世の深い根
先史よりの再出発
西洋の父カルロス大帝 辻成史
聖像の誕生
光と色彩の神学
ロマネスクの空間
瞑想の寂境
清貧の芸術
聖遺物と巡礼
天界のミクロコスモス
壁画―技法と様式 長塚安司
大彫刻の時代
彫刻の建築性

2 ゴシックの世界

(写真)
シャルトル大聖堂
アミヤン大聖堂
ル・モン・サン・ミシェル
カンタバリ大聖堂
グロスター大聖堂
バターリャ修道院

(解説)・・・解説者名の記入無しは全て柳宗玄
シャルトル大聖堂
ゴシックの空間 馬杉宗夫
自然と人間の再発見
ゴシック大聖堂と民衆
光の交響詩
彫刻の自立
世界の文化史蹟〈第12巻〉ロマネスク・ゴシックの聖堂(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「凍れる音楽−シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
その他、多数読んでますので記事検索してみて下さい。
posted by alice−room at 19:21| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年05月14日

「世界の建築第5巻 ゴシック」飯田喜四郎 学習研究社

目次を見てもらうと分かりますが、ゴシック関係の有名どころの学者さんがこれでもかと集められていますね。それだけでも大したもんですが、阿部先生が総説を書かれているのには、ちょっと驚きました。そりゃ、ゴシック建築は中世に関しての事柄ですから、冷静に考えれば、それほどおかしくないのかもしれませんが、建築関係でお名前を拝見するとは夢にも思いませんでした。

しかも、読んでみると何気にポイントをついた文章で、ふむふむ〜と頷く事しきり。やっぱり阿部先生、凄いです。こないだお亡くなりになったのがなんとも残念です。

さて、本書全体ですが、写真がかなりの量を占めます。そうですね、写真については、まあまあってとこかな? 大きな写真で建築という点ではそこそこいけますね。ステンド・グラスや彫刻については、もう少し期待したいところですが、とりあえず及第点かと。

解説は、それぞれの先生が一冊丸ごと書かれている本を何冊も読んでいるので、私にとっては基本的に既知の事柄ばかりでしたが、内容もそこそこ良いと思います。

もっとも本書の中で、私的に一番勉強になったのは、阿部先生が書かれた文章です。中世のこの時期に、いかにして大聖堂建設が行われるに至ったか、農業革命、それに伴う商業革命と都市の勃興だけではなく、実は古代ゲルマン以来の贈与慣行という社会システムの存在を指摘されています。

ローマ帝国の「クリエンテス」ではないが、グルマン民俗には贈与慣行があり、この場合の贈与はもらったら、もらっいぱなしの片務的な行為ではなく、必ず対等の返礼を伴う双務的な行為らしい。ある人から何かをもらって、それのお返しができない場合、もらった人に対して臣従するなどを要求されるものだそうです。

また、富を持つ者である王が下の者にそれを与えることに対し、家臣は従軍などの奉仕を提供する関係であった。同時に、富を持つことは人間の能力と幸運の現れであり、幸運が盗まれたりしないように地中に埋めたり、湖に沈めたりする習慣もあったらしいです。

その後、国王は政権の安定を図る為に教会からの支援を取り付け、教会側も国王への塗油を行う一方で、国王は神への贈与を地中や湖に沈めることから、教会への寄進。即ち、大聖堂建設へと転換させていった。

この場合、国王への返礼は聖職者の祈りによって天国で与えられるとし、形は変えても実質的な贈与慣行は生き続けた、と説明されている。

中世における『贈与』については、しばしば目にする話ではあるが、改めて大聖堂建設にも当てはまることを知って、目から鱗だと思いましたよ、ホント! 勿論、日本においても平安貴族が極楽往生を願って、寺院を建立する例はありますが、意味がかなり違います。本書の解説ではそれをより大きな枠組みで捉え、歴史的且つ社会的な慣行の一部として理解しようとするこの解説は、素晴らしいと思います。

他の本では、ここまで明確に指摘されていませんからね。実際。また、巡礼についても、妻子や財産全てを投げ打つこの行為は、まさに自らの全てを神に捧げる贈与であるという理解で説明をされています。う〜む、贈与おそるべし。賄賂のようなマイナス評価とは違って、当時では大変重要な行為だったんですね。ふむふむ。

ルターの贖宥状批判が、神への贈与を否定した時、中世の中に生きていた古代が完全に終わった、というのは、そういうことなんだそうです。逆に言うなら、何故、中世人が金銭と引き換えの贖宥状を進んで受け入れていたのか、疑問に思ってましたが、ようやく納得いった感じです。いやあ〜、物事って何でもそうだけど、複合的な視野から見ないといけないもんですね。決して一面的視野だけでは、理解できるものではないと実感します。

以上、阿部先生が書かれた部分についてでしたが、他の方の文章も本で未読なら読む価値ありますよ〜。どっかで見つけたら、目を通してみましょう。結構、面白いと思いますし、私は好きだなあ〜。
【目次】
総説
 ゴシック大聖堂の世界 阿部謹也

本文解説
 ゴシック建築の構造と空間 飯田喜四郎
 ゴシック建築と彫刻 馬杉宗夫
 ステンド・グラス 黒江光彦
 ヴィラール・ド・オンクール―ゴシックの建築家像 藤本康雄

エッセイ
 アメリカの旅から 宮脇壇
 神々の奇巌城
世界の建築 (5)(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「アミヤン大聖堂」柳宗玄 座右寶刊行会
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「ゴシック美術」エリー・ランベール 美術出版社
posted by alice−room at 19:14| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年05月01日

「ロマネスクの園」高坂知英 リブロポート

著者が趣味にあかせて自分の足で訪れたロマネスク建築を紹介している。写真多数で、一見するとかなり期待できそうだったが、内容はかなりお寒い限り。

著者自身は、決して知識がないのではないと思うのだが、とにかく数を紹介しようとしてしまい、個々の建築に対する説明が全然足りない。説明があたかも安っぽい旅行ガイドブック並みか、それ以下の水準で甚だ失望した。

エッセイだろうがなんだろうが、それはどうでもいいのだけれど、作品の解説に徹するか、その場所に至るまでの旅行記にするのか、明確にして欲しかった。ただでさえ、説明が足りていないのに無意味にたくさん紹介されている写真が悲しい。

更にマイナスな点として写真が良くない。著者自身が撮ったものかもしれないが、平板過ぎて見せたいポイントが不明。また写真を並べた紙面としてのレイアウトも最悪に近い。写真に番号が振られてはいるものの、写真と本文がバラバラ過ぎて何の説明をしているか、きちんと追っていけないし、頻繁に頁をめくっても大したこと書かれていないし、実に読み辛い。

珍しい写真もありそうだけど、微妙に小さいし、相対的に役に立たない本。あえて絶版の本にお金を出して買うまででもなかった。大失敗でした。どうせなら、紹介する建築物を3分の1とか4分の1に絞って詳しい解説をすれば、もっと充実した本になったと思うんですけどねぇ〜。もったいない話です。
【目次】第1章 聖堂とばんな所にあるか
第2章 聖堂を外からながめる
第3章 聖堂の内側
第4章 回廊と外廊
第5章 柱頭
第6章 その他の彫刻
第7章 シトー派とビザンス
第8章 廃墟と修復
ロマネスクの園(amazonリンク)

関連ブログ
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
posted by alice−room at 13:45| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年03月16日

「シャルトル大聖堂のステンドグラス」木俣 元一 中央公論美術出版

chartres20070315.jpg

これも国会図書館に行ったときに借り出して読んだもの。といっても、大判なうえに頁数も多くて分量が多く、とてもじゃないが一日で読破できません。他の文献も調べていたので結局、こちらの本は第2章の途中までと、ざっと他の章を眺めてみたくらいです。

従って、書評にもならないのですが、自分自身への覚書代わりにメモ。目次だけ詳しく載せておくので調べ物をする時に少しは参考になるかな?

さて、シャルトル大聖堂関係の本を読むと頻繁に名前を見かける木俣氏が当時の文部省の助成金を受けて研究した成果物を出版したものがこの本です。

その為、最新の研究成果なのだと思いますが、あまりにも細かい点が多くて私のような一般人にはかなり辛い。ここで述べられている分節とは、要はステンドグラスを成立させている鉛枠でガラスとガラスを押さながら、つなげている仕組みを指しています。それらを丹念に調べて(シャルトル大聖堂のガラスって死ぬほど多いんだよ!)統計的に処理することで一定の傾向を導き出し、そこから一歩踏み込んで新しい解釈を主張するという流れになっています。

従来、ステンドグラスは彫刻も含めて文字が読めない人々にキリスト教の内容を教える為の「図説聖書」みたいな理解をされてきたが、木俣氏の主張では、確かにそうした点はあったものの、ステンドガラスだけ見ても聖書の内容など分かるはずもなく、必ずその理解には、聖書の知識とステンドグラスの指し示す意味の両方を理解している人の存在が前提であり、むしろそういった特別な人々を対象の中心にしたのが、ステンドグラスではないか?ということが述べられている。

また、実力をつけてきた商人などがステンドグラスの代金を寄進したので彼ら自身がデザインにまで意思を反映したから、寄進者としての商人などがステンドグラスに描かれた。と一般に理解されてきているが。

寄進の事実はあったにせよ、ステンドグラスのデザインは教会側があくまでも神の栄光の為に指示したのであって、その過程でそれぞれが自らの立場で現在の職業に励むことが望ましいことであり、それをデザインに反映したのも教会側からの意図に他ならないのではと述べられている。

ごく一部しか読んでないので、私の誤解等の可能性はご容赦願いたいが、結論的な部分については非常に面白いと思う。怠け者の私としては、結論だけ分かり易い形で書かれたものを読みたいなあ〜。本書は大部でし、国会図書館は借り出せないから、その場で読破は
無理。おまけに一番大切かもしれない、細かい説明は読んでていて飽きてしまう・・・。

う〜ん、どなたか詳しい方、結論だけ教えて〜!と切に言いたい。
【目次】
第1章 シャルトル大聖堂のステンドグラスへの問いかけ―序にかえて
 1.1 「文字を読めない人々の聖書」をこえて
 1.2 解釈の前提 図像テクストの作り手と受けて
 1.3 テクストとしてのイメージ

第2章 分節システムと幾何学的構成―枠とイメージを結ぶプロセス
 2.1 はじめて
 2.2 シャルトル大聖堂におけるステンド・グラスの分節システム
 2.3 パネルと場面
 2.4 分節システムの3つのタイプとその基本的様相
 2.5 おわりに

第3章 比喩としての物語の実現―“放蕩息子の譬え話”の窓
 3.1 はじめに
 3.2 たとえ話とその視覚表現
 3.3 シャルトル大聖堂《放蕩息子の譬え話》の窓
 3.4 おわりに

第4章 幾何学的構成のはたらき―“使徒聖トマス伝”の窓
 4.1 13世紀フランス人における《使徒聖トマス伝》の図像表現の展開
 4.2 シャルトル大聖堂《使徒聖トマス伝》の窓

第5章 「ぶどうの木」としてのカトリック教会―“聖レオビヌス伝”の窓
 5.1 はじめて
 5.2 分節システムと幾何学的構成の特質
 5.3 中央軸線上の場面と《聖レオビヌス伝》
 5.4 周縁と中心、階層性、ネットワーク
 5.5 ぶどうの木がつなぐもの

第6章 「寄進者像」を読み直す―教会論的視点
 6.1 「寄進者像」の問題点
 6.2 「働く人々」と中世の教会論
 6.3 パンとキリストの身体、そして教会

第7章 聖像と偶像―13世紀初頭のカトリック教会とイメージ
 7.1 はじめに
 7.2 問題の所在
 7.3 偶像表現の特質
 7.4 偶像とキリスト教の信仰との対比
 7.5 「イメージの中のイメージ」としての聖像(1)
 7.6 「イメージの中のイメージ」としての聖像(2)
 7.7 おわりに

第8章 聖ニコラウス像を罰するユダヤ教徒―宗教的イメージをめぐるポレミカルな図像
 8.1 はじめに
 8.2 聖人像への懲罰
 8.3 「イコノクラストとしてのユダヤ教徒」というトポス
 8.4 イメージを信仰するユダヤ教徒
 8.5 おわりに
シャルトル大聖堂のステンドグラス(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
ゴシックのガラス絵 柳宗玄〜「SD4」1965年4月より抜粋
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「凍れる音楽−シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社
posted by alice−room at 20:25| 埼玉 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年03月12日

「凍れる音楽−シャルトル大聖堂」建築行脚シリーズ 6 磯崎新 六耀社

わざわざ国会図書館まで行って、読んできました。探しても見つからなかったもので。

定価で一万円ですが、ちょっと暴利貪り過ぎって感じします。高名な紀信氏の写真ですが、正直言って全然良くない。使えません。写真向きの印刷に適していない紙というのもあるのでしょうが、たくさんのシャルトルの印刷物を見てきた感想としては、良くない部類に入ります。

また、磯崎氏の説明も同様に不要。中世の建築物を現代建築の視点で捉えようとしているようで、あくまでも中世の建築をただ&ただ知りたい私には読んでいるだけ無駄。

本書で唯一にして、読むだけの情報的価値を有するのは前川氏の「シャルトル大聖堂とゴシック建築」の部分。実際、本書のうちで60頁弱を占め、シャルトルに関する歴史や伝承を含め、ゴシック建築全般に至るまで大変勉強になり、有用。特にシャルトルの伝承に関する部分は、他の本でも散見するが、結構まとまっている方なので押さえておきたいところでしょう。

なお、本書のゴシック建築に関する記述部分は前川氏の「ゴシックということ」で詳しく述べられているのでそちらを読んだ方が良いかも?

そうそう、巻末の参考文献も前川氏によるものでこれも使えます。できれば、一切の不要なところを除いて前川氏の文章と参考文献だけで廉価版を作って欲しいですね。二千円以下だったら、欲しいところです。私は必要なところだけ、1枚25円で40頁ほどコピーしたので十分でした。

でも、前川氏の部分だけなら、決して悪くないのにもったいない感じがしてなりません。
【目次】
シャルトル大聖堂―ゴシックの光と構造  磯崎新
示現の装い  磯崎新
図版  撮影・篠山紀信
シャルトル大聖堂とゴシック建築  前川道郎
図版解説  磯崎新・前川道郎
図版 
  平面図
  南立面図
  北扉口
  縦断面図
   (身廊部横断面図、内陣部横断面図、クリプト平面図、地下部分年代図、北扉口断面図、断面の透視的概略図)
参考文献  前川道郎
図版 クレジット
凍れる音楽 磯崎新+篠山紀信 建築行脚シリーズ 6(amazonリンク)

関連ブログ
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
ゴシックということ〜資料メモ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「フランス中世美術の旅」黒江 光彦 新潮社
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
posted by alice−room at 21:53| 埼玉 ?J| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年02月23日

「世界の大聖堂・寺院・モスク」アンリ スティルラン 創元社

mosuku.jpg

ほとんどが世界遺産になっているものだと思います。タイトルの通り、大聖堂やモスク、寺院など、宗教建築の代表的なものを空中から撮影した写真集。

特徴的なところとしては、四つ折になっている大きな写真がテーマ毎に一つついていて広げると大変大きなサイズの写真を見ることができます。大判の写真集だと非常に場所を取り、困るものですが、これは四つ折の為、大変コンパクトなサイズで本棚の普通サイズに十分入れられます。

しかし、それ以上の長所は特にありません。空からの撮影というのは、写真集としては確かに珍しいかもしれませんが、TBSの世界遺産を見慣れている目には、別に・・・というのが率直な感想。また、四つ折の大きな写真も他の写真と比べて何か工夫されているようでもなく、ただサイズが大きいだけでしかない。

新しいうちはいいのですが、古くなってきた時に写真の折り目が汚くなりそうで不安なのですが・・・大丈夫なのだろうか?

採り上げている建築物の選択はいいと思うのですが、写真はどれも大したことないように感じてしまいます。個人的には地上から写したものと空から写したものを組み合わせて、うまく立体的になったら面白かったのではと思いましたが、基本は全て空からの撮影です。

自腹では買う気がしません。図書館で借りれて幸いでした。こないだも本屋で平積みしていましたが、値段が値段だけに出版社さんも大変だろうなあ〜と思いました。
【目次】
聖シメオン聖堂―一人の苦行者に奉献された礼拝堂
エフェソスの聖ヨハネ大聖堂―使徒ヨハネに献上された大聖堂
アヤ・ソフィア―ビザンチン芸術の頂点
メッカ―イスラム教の心臓部
岩のドーム―イスラム教の最初の建造物
サマラの大モスク―ジグラットに似せたミナレット(尖塔)
法隆寺―世界最古の木造建築
バイヨン―千の顔を持つ仏陀
ラリベラ―聖ギオルギスの岩窟聖堂
ピサのドゥオモ広場―大理石で出来たロマネスク芸術の粋〔ほか〕
世界の大聖堂・寺院・モスク(amazonリンク)
posted by alice−room at 22:44| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年02月12日

「Chartres Cathedral」Malcolm Miller  Pitkin

malcolm.jpg

フランスのシャルトル大聖堂を見に行った際に大聖堂前の土産物売り場の店で購入したものです。これが値段で比較して一番ステンドグラスの説明が多く、写真も綺麗だったので購入したのですが・・・。実は、英語だったんでしばらく読んでいませんでした。

帰国してから、国内にあるシャルトル大聖堂に関する本をあらかた読んだ後、しかたない洋書に手を出すかとamazonで探していてまさにカートに入れた後、決済直前に気がつきました。自分が現地で購入したのと同じものであることを! ふう〜危なかった。持ってる本を買うとこでした(苦笑)。

とまあ、こんな経緯があってすぐに本書を読んだのでした。でも、うちのブログで採り上げていなかったし、今も再読しているところなので改めて書いておきます。

シャルトル大聖堂の解説は、非常に定評のあるマルコム・ミラー氏による文章で、とっても簡潔ですが実に分かり易く、豊富で美しい写真と共にシャルトル大聖堂の魅力を益々増加させていきます。

大聖堂に行ったことのある人、これから行く人には絶対に目を通して欲しい本だと思います。この値段でこれだけの内容はまずありませんから! 現地のフランスで買うより日本のamazonで買った方が安いというのはいささか皮肉ではありますが、決して損をしたとは思わないでしょう。大変薄くて軽いので旅行カバンに一冊忍び込ませておきたい本です。

そうそう、ただ32頁という紙面の少なさから、サブタイトルの通りシャルトル大聖堂のステンドグラスと彫刻に絞って解説されています。大聖堂の歴史については冒頭に2頁分説明され、あとは個々のステンドグラスの主題の説明と扉口などの彫刻の説明になります。

従って、ゴシック建築に特徴的な飛び梁(フライング・パットレス)やリブ・ボールトなどの純粋に建築的な説明は、ほとんどありません。そこは残念ですが、その分、ステンドグラスの写真が充実していますので是非押さえておきたいアイテムです。とっても綺麗ですしね。

マグダラのマリアがイエスの足を洗っている姿を主題にしたステンドグラスなども採り上げられています。
【Contents】
ANCIENT CHARTRES

The 12th Century
The Royal Portal
The Blue Virgin Window
The west Lancets

THE GOTHIC CATHEDRAL

The 13th Century
The West Rose Window
The North Porch
The North Rose Window
The South Porch
The South Rose&Lancets
The North Aisle Windows
The South Aisle Windows
The Transept Windows
The Ambulatory Windows
The Upper Storey Windows
Chartres Cathedral - The Mediaeval Stained Glass and Sculpture(amazonリンク)

関連ブログ
「Stained glass(ステンドグラス)」黒江 光彦 朝倉書店
ステンドグラス(朝倉出版)〜メモ
「ロマネスクのステンドグラス」ルイ グロデッキ、黒江 光彦 岩波書店
「ステンドグラスの絵解き」志田政人 日貿出版社
「ステンドグラスによる聖書物語」志田 政人 朝日新聞社
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
シャルトル大聖堂 〜パリ(7月5日)〜
posted by alice−room at 09:22| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年02月07日

「ゴシック(上)」アンリ・フォシヨン 鹿島出版会

中世美術の碩学アンリ・フォションによるゴシックの本です。非常に有名な本ですが、私にはほとんど理解できませんでした。なんとか読破したものの、説明されている文章内の単語で分からないものが頻出するうえに、章の区切りはあるものの、節らしいものに分けられていても節のタイトルがなく、何について書かれているのか非常に理解しづらい。

実際に文章を読んでみても個々の説明以上に、どういった論旨で何を説明しているのか全体像がつかめないので個別の説明に振り回されてしまい、私には大いに欲求不満を感じた。

勿論、私自身の知識不足にもその原因はあると思う。ただ、それだけではないようにも感じる。翻訳者は何故か仏文学専門の先生達だが、美術史や建築の専門ではないようだ。失礼ながら、翻訳者ご本人がよく分からないままに文字だけを訳しているよう可能性があるのかもしれない。

少なくとも今までこの分野の本を何冊か読んできてこれほど理解できないのは初めてだった。勿論、原本自体が難解な可能性もあるのだが、とにかく私には読んでも何も得られない本だった。期待が大きかっただけに非常に残念である。

他の人の感想も是非、聞きたいところである。ちなみに書評で有名な松岡正剛氏の千夜千冊というサイトでも本書が取り上げられている。たまに興味深い書評が書かれていることもあるのだが、本書に関する限り、そこの書評を読んでも納得できない。

確かに本書では、他の書物ではほとんど採り上げないオジーブについて多くの紙面が割かれているが、それがゴシックの本質だろうか? 素人の私なりに疑問を感じる? 私が本で理解した範囲の知識ではむしろサン=ドニで体現された光の形而上学の思想こそが本質的なものに思えるのだが・・・。

逆にその点にほとんど触れられていないのも、時代のせいなのか分からないが、本書が偏っているようにも感じられる。もっといろいろな本を読んだうえで比較しないといけないのかもしれません。手元にまだ何冊かゴシック関係の本があるので、おいおい読んで勉強していくことにしましょうか。

本書を読んで自らに課題を残すことになりました。
(実は下巻も買ってあるのだが、フランス以外のゴシックについての話だし、意味分からなそうだから、しばらく積読にしておこうと思う)

ゴシック 上(amazonリンク)
【目次】
第一章 初期ゴシック芸術

 1オジーブ芸術の誕生、多様にわたる諸実験、イル=ド=フランス地方のロマネスク芸術として出現したゴシック建築、オジーブについてその機能の問題と論争、オジーブ構造体系の発達、飛びアーチの原初的形体

 2サン=ドニ修道院付属教会堂とシュジェ、トリビューンつき大型教会堂と身廊立面の四層構成、円形袖廊の教会堂群ーノワイヨンの大聖堂・ソワッソンの大聖堂、ランの大聖堂の将来、パリのノートル=ダム大聖堂、身廊立面の三層構成ーサンスの大聖堂

 3シトー派芸術、ブルゴーニュ地方における発祥と地方色、聖ベルナール、シトー派芸術のロマネスク時代ーフォントネー修道院付属教会堂、ゴシック時代ーポンチニー修道院付属教会堂、派生的変種、ラングドック地方の教会堂群、ヨーロッパ全土へのオジーブの伝播

 4ゴシック彫刻の出現、黙示録に基づく図像体系の枯渇、タンパンに嵌め込まれた聖母像型聖遺物匣、先触れびとたちのテーマの発案、その様式ー人像円柱、ロマネスク彫刻の最終段階、様式技法の忘却、新しい探求

第二章 古典時代

 1初期ゴシック芸術の偉大さと生命力、古典時代、フランスの偉大な大聖堂群、三層構成形式の流行、シャルトルの大聖堂とそのグループーランス・アミアン、この形式と多層式内部立面構成の組合せ、ブールジュの大聖堂とそのグループーマン・クータンス、ブールジュとパリの両大聖堂の差異

 2レイヨナン芸術派革新ではなく洗練化である、壁体廃除、縦目石、パリのサント=シャペル、十二世紀の教会堂の改修、バラ窓

 3多様化と相互影響、ノルマンディー地方におけるフランス芸術、ブルゴ−ニュ地方におけるラン地方・ソワッソン地方の芸術、ラングドック地方におけるフランス芸術、独創的な諸形体ーアルビの大聖堂、輸入されたものージャン・デシャンが築いた教会堂、地中海沿岸地方のゴシック、イタリア、二つのスペインーゴシック的スペインとムデハル的スペイン

 4イングランドの建築、その進展の独立性、初期イングランド様式、曲線様式、南部ネーデルラント、レイヨナン芸術の流行、ドイツにおけるロマネスク的ゴシック

第三章 モニュメンタルな彫刻とゴシックの人間主義

 1宗教的感情の三段階、十三世紀の図像体系、福音書のキリスト、聖母の戴冠、若々しさ、世界の絵巻と百科全書的精神、さまざまなる「鑑」、ヘレニズムの人間主義、ゴシックの人間主義、仏教の人間主義

 2様式、建築と彫刻との新しい繋がり、枠組みー柱頭・ヴッシュール・タンパン・側柱、モニュメンタルな様式、プロポーションと処理技法における遠近法、壁面風の肉付け

 3各地の工房と様式進化、初期、十三世紀前半におけるフランスの大聖堂の工房、ゴシック彫刻のプラクシテレス的時代、パリの芸術と都会的洗練味、枠組みと型式の進化、十四世紀の聖母像、貴材芸術、墳墓用肖像、フランスにおける伝播、ローヌ河流域の南仏とトゥールーズ地域の南仏、フランドル問題

 4イタリアのゴシック、帝政期ローマへの妄執とトスカナ地方の典雅趣味、スペインーロマネスク的伝統の生命力、フランスの影響、ドイツ・サクソニア流派、バンベルク、ナウムブルク、イングランド彫刻の独創性、モニュメンタルな枠組み、ひょろ長い形体、アラバスター彫刻

第四章 十三、十四世紀のゴシック絵画

 1中世の二種類の絵画、光の模倣、遮られた光、フランスの焼絵ガラス、その起源と初期の工房、サン=ドニ修道院、フランス及びイギリスにおけるシャルトルの影響、パリの焼絵ガラス職人、サント=シャペル、バラ窓、十四世紀、グリザイユ、技術上の革新、様式の進化

 2イタリアのモニュメンタルな絵画の偉大さ、ダンテの築いた大伽藍、ジオット以前の絵画、トスカナ地方のビザンチン芸術ーチマブーエ、ローマの教皇庁芸術ーカヴァルリーニ、シリアの修道僧の逃避から初期フランチェスコ派の聖画像に至る民衆的芸術、ジオットと聖フランチェスコ、、ジオットの芸術がフランチェスコ会の思想に形を与える、ジオットとジオット派、シエナ派、トスカナ地方の絵画の東方趣味、ボヘミア・カトロニア・アヴィニヨンにおけるシエナ派絵画の伝播

 3フランスの絵画、新しい枠組みと焼絵ガラスの影響を受けて進化した壁画、世俗的主題の絵画におけるモニュメンタルな様式、絵画の間戦士達、祈祷所の絵、フランスの細密画、ウィンチェスターとヴィラール・ド・オンヌクールの規範、十三世紀の建築における枠組み、十四世紀最初の三分の二世紀、ジャン・ピュセル、単彩画、版画の発明、空間の構造に関する十四世紀待つの偉大な探求、ジャックマール・ド・エダン、ジャック・コエーヌ、ランブール兄弟
関連ブログ
「SD4」1965年4月 特集フランスのゴシック芸術 鹿島研究所出版会
「図説世界建築史(8)ゴシック建築」ルイ・グロデッキ 本の友社
「大系世界の美術12 ゴシック美術」学研
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックということ」前川 道郎 学芸出版社
ゴシックということ〜資料メモ
「中世思想原典集成 (3) 」上智大学中世思想研究所 平凡社
「カテドラルを建てた人びと」ジャン・ジェンペル 鹿島出版会
「フランス ゴシックを仰ぐ旅」都築響一、木俣元一著 新潮社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
posted by alice−room at 21:16| 埼玉 | Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年01月30日

「スペインの光と影」馬杉 宗夫 日本経済新聞社

いつもゴシック建築等で勉強させてもらっている馬杉氏による紀行文?つ〜かエッセイ?

第二部のサンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼に期待して購入したのですが読むべき内容がほとんどなく、大外れ! 期待が大きかっただけに、残念でした。

特に第一部については、正直どうでもいいかな〜ってぐらいです。もっと面白くて為になる本がたくさんありますのでカタルーニャやガウディについては、他の本を読んだ方がいいでしょう。

また、肝心の第二部ですが、著者は車で見て回っていますがそりゃ駄目でしょう!って声を大にして言いたい。勿論、巡礼路を巡るだけではなく、その道沿いの辺鄙なロマネスク建築の建物も回りたいから、という意図は分かるんですが、巡礼の途上にある宗教建築物を真に理解するには、やっぱり徒歩で巡礼して欲しかった!!

まして専門家なんですし、本書は学術的な内容ではなく、エッセイもどきの紀行文のノリなんだから、そうでなければ、説得力のある文章にはなりえないでしょう。実際、著書の他の本と比べて、内容は二番煎じで使い回しだし、読んでいてもあまり勉強にならない。車で回っているんでは、紀行文としても論外でしょう。手を抜き過ぎではないかと?

おまけに致命的な欠陥がある。勿論、専門家として様々な建物についてそこそこの説明はしているものの、写真が最悪。モノクロは許せても小さいし、数が少なくて説明されても意味分からんて、もう〜(若干、怒りモード)。

それでなくてもこの手の建築物は、実際に自分で見るしかないんですが、写真さえもないのでは解説自体が独り善がりの何物でもない。写真もなしに、本書の説明で理解できる人がいたら、その人はスゴイと思うなあ〜。

これまでも非常に勉強させて頂いていただけに、本書は残念です。まあ、著書も数があれば、たまには外れもあるでしょう。あ〜あ。

本書ではモサラベ美術についてもいろいろ解説されています。もったいないなあ〜。別な本でもうちょっとなんとかしてくれれば、もっといい本で使える本になるのに。サンチャゴ巡礼とかについて知りたければ、芸術新潮で特集されたものをお薦めします。非常に美しく素晴らしい写真が豊富にあり、説明も簡にして要を得ています。本書も見習って欲しいもんです。

そうそう、そうは言っても本書で初めて知った言葉もあったのでメモ。
クリスム:
不可視的な神キリスト像を具体的な人間の姿で表現することをよしとせず、その代わりに抽象的・象徴的なもので表現しようとしたもの。八つに区切られた円で表現されたりする。
読んでいて思ったのですが、これって仏教の仏足跡や法輪とかと同じ意味だよね。法輪もまさに円だし。

どの宗教も当初は偶像崇拝を禁止するのですが、やがて徐々にね・・・。まあ、人間ってどこまでも即物的だから目で見えないと駄目なんだろうなあ〜。まあ、疑りぶかいトマスってことでしょうネ。
【目次】
第1部 光と影の道カタルーニャ

カタルーニャの色彩
影に沈むモンカダ通り 若きピカソの街・バルセローナ
陽のあたる丘モンジュイク―ミロ美術館
ロマネスク美術の宝庫―カタルーニャ美術館
鬼才ガウディと聖地モンセラの山
異端の贈物―ベアトゥス本写本と天地創造のタピストリー
レコンキスタへの願い―ピレネーに眠るリポールの扉口彫刻

第2部 星の道 サンチャゴ巡礼

千年王国―サンチャゴ伝説と巡礼
ピレネーを越えて
王妃の橋
星隆る町
過酷な地
ブルゴスからレオンへ
レオン王国
星の輝く野―聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラ
旅の終りに
スペインの光と影―ロマネスク美術紀行(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「ロマネスクの美術」馬杉 宗夫 八坂書房
「パリのノートル・ダム」馬杉 宗夫 八坂書房
「大聖堂のコスモロジー」馬杉宗夫 講談社
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「星の巡礼」パウロ・コエーリョ 角川書店
「スペイン巡礼の道」小谷 明, 粟津 則雄 新潮社
「芸術新潮1996年10月号」生きている中世〜スペイン巡礼の旅
posted by alice−room at 20:22| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2007年01月16日

「Cathedral Of The Black Madonna」Jean Markale  Inner Traditions

chartresruids.jpg

日本語で読めるシャルトル大聖堂の資料が減ってきたので、重い腰を上げて久しぶりに手を出した洋書。年明けてから配達されて、いざ、意気込んで読むとすっごいくだらない低レベルの本。正直泣けてきた。

amazonの商品の説明に学問的な密度はある読者には欲求不満にさせるかも?って書かれてたが、これかい、この事だったとは・・・。読んでから気がついたよ。あ〜あ、ひどい(泣)。

最初の一章を読むと、著者個人の思い出やらなにやらシャルトル大聖堂と直接結びつくとは思えないゴミのような戯言(たわごと)で本当に一章全てが終わっているんですよ〜。もう、唖然として絶句!

あまりにもタイトルに関係ない事ばかりで他の章も飛ばし読みしつつ内容を確認すると、余談というか本来、この本に期待されるシャルトル大聖堂自体に関する内容以外のことばかりで全然資料として使えない。エッセイ以下のレベル。この人本当にソルボンヌでケルト研究を教えていたのか、はなはだ疑問に感じます。

あちこち読んでいると時々、ケルトに遡った話が出てくるのですが、そんなの『黒い聖母』に関する本を読んでるとどんな本にでも出てくる基本中の基本レベルで正直失望を隠せない。

特に核心部分である「黒い聖母」の章でさえ、もう吐いて捨てるほど聞いたようなありきたりな説を不十分な説明なままで典拠も無しに場当たり的に説明されても勘弁してよと言いたくなります。もう他の章を読む気力も失せました。

後半部分のドルイドのミステリ関係の章は、どう考えても内容なさそうだし、その部分は結局読まないままで断念しています。なんかねぇ〜わざわざ苦労して洋書を読む必要がありませんでした。

日本語ではるかに使える資料(例:馬杉氏の本とか)がたくさんありますので本書を読むのは時間の無駄だと思います。でもねぇ〜洋書って結局、自分で読んでみないと使えるかどうか判断できないから・・・とっても困る。値段も高いのが多いしさあ〜(愚痴愚痴)。
【contents】
Part1 THE SITE
1The Entrance to the Labyrinth
2The Vibrating stories
3Chartres over the Course of History

Part2 THE VIRGIN'S GREAT SHADOW
4The Mother of God
5Worship of the Virgin
6The Black Madonna

Part3 THE MYSTERY OF THE DRUIDS
7The Forest of the Carnutes
8Gargantua's Itinerary
9Our Lady of Under Ground
10The Virgin of the Druids
Cathedral Of The Black Madonna: The Druids And The Mysteries Of Chartres(amazonリンク)

関連ブログ
「シャルトル大聖堂」馬杉 宗夫 八坂書房
「祈りの大聖堂シャルトル」小川国夫、菅井日人 講談社
「シャルトル 大聖堂案内」ウーベ出版社
posted by alice−room at 22:28| 埼玉 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 建築】

2006年12月23日

「ヨーロッパの歴史的図書館」ヴィンフリート レーシュブルク 国文社

ストラフ修道院付属図書館 プラハ

ヨーロッパにある図書館で歴史的な背景と蔵書を有し、一見に値するところを簡潔な説明と写真で紹介する本。結構前から興味を持っていたんですが、値段の高さから二の足を踏んでいた本です。

で、実際に読んでみると・・・。
う〜ん、ここで紹介されている図書館は圧倒的にドイツ国内のものが多く、ついでチェコの図書館とかなり採り上げられているものには偏りが見られる。また、簡潔で若干冷めた感じの解説は悪くはないのだけど、端的に言うと物足りない。著者による率直な感想や思い入れが出てこないのは、かなり味気無さを覚えるのもまた事実だ。

観光地でパンフを見るような素っ気無さを良しとするかは、個人の好みにも左右されるかもしれない。私の場合は、あえてその点での付加価値がないのをマイナスに評価しています。

また、本書では図書館の美的な側面も評価の要素として紹介しているのにもかかわらず肝心の図書館の写真は、モノクロだったりする。これはいただけない。全然、図書館の持つ美しさが伝わらない&分からない。

本書を読んで行ってもいいかな?と思う図書館はあったが、強烈に是非行きたいと思った図書館はなかった。これは写真がモノクロであることにも大きな原因がある。あの美しいプラハのストラホフ修道院でさえ、本書の紹介ではぱっとしない。実に!実に!もったいない話だ。

目を通して悪い本ではないが、こんな高いお金を出して買うほどの本ではない。最低限カラーの写真を使用するべきだろう。そして、簡略な説明と自らが行った際に感じた『生』の良さが書かれていたら、本書は素晴らしいものになったかもしれない。しかし、現状はたいしたことのない本だと感じた。実に残念でしかたがない。

写真は、プラハで購入した絵葉書より「ストラホフ修道院付属図書館」
【目次】
序文
<