2018年02月27日

「立ち飲み屋」立ち飲み研究会 創森社

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もうだいぶ昔の本になります。ブームになる前の頃の立ち飲み屋に関する雑文ですね。

特に大した内容はありません。
角打ちとか、本当にただ単にお酒を飲める場所で椅子がないところ、っていうぐらいの定義で括られる範囲内の居酒屋未満でしょうか?

私は基本的に立って飲むってのは、昔から好きでないのでどんなところでも座れるところがいいですね。
若い頃からそこは変わりません。

安くてお酒が飲めるってのはいいのですが、乾きものや缶詰ばかりってのは、どうなんでしょうかね?

個人的には、コンビニでそれらを買って、景色のいい屋外で肴をつまみに酒を飲むのは素敵だと思いますが・・・。桜の季節とか四季の移り変わりっていうのは、特にいいですよね。

安くあげたいのに、わざわざ、定価でつまみ買って、立って飲むってのがどうもね?
その分、いい酒やいい肴を安く買って、じっくりと家で好きな映画やアニメ、録画した番組見ながら、飲み食いする方が楽しかったりするんだけどなあ~。

飲むのに満足したら、そのままゴロンってなって本を読みながら、寝落ちする。
そういうの好きなんでね。だなあ~。
風情はあって良さそうですが・・・・。

まあ、嫌いではないんですけどね。本書みたいなの。

そうそう、よくよく見たら複数人で書かれているのですが、あの吉田類さんも実はこの中に含まれていました。この当時は、まだ有名じゃなかったんでしょうね。扱いが大勢のうちの一人で影が全然薄くて、最初、気付きませんでした。

今だったら、帯にでも大きく書かれているでしょうけれど・・・笑。

まあ、あえて読むほどの本ではありません。
その割に立派そうな本ですが・・・(笑)。
【目次】
序章 立ち飲み屋のルーツと立ち飲みの流儀
第1章 酒屋の一角はオアシス納得の酒ラインナップ
第2章 焼き鳥&焼きとんのモウモウたる煙に巻かれて
第3章 酒のあては鮮魚からうなぎ、串揚げまで
第4章 立ち飲みゾーン「神田vs.新橋」徹底踏破
第5章 バッカス&バーフライのスタンディング舞台
第6章 堂々の立ち飲みスポット根掘り葉掘りガイド
立ち飲み屋(amazonリンク)
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2016年10月28日

「吉田類のマタタビ酒場」佐藤 ピート (著), 吉田 類 (監修)講談社

もう何冊か読んでますが、吉田類さんが書いた本、かと思いきや・・・・監修だけなんですね。
知名度のある類さんの名前だけ使って、しかも酒場関連の本って・・・まあ、便乗本的な安易な発想の作りですね。

他の本でも吉田類さんはずいぶんと長い間、ご一緒に暮らしていた猫ちゃんがいて、猫好きなのは事実でしょうがこの本はちょっと、読者が求めるものは違うかなあ~と思います。

いつもの酒場巡りっぽい雰囲気でまとめていますが、その場にいなくても無理に猫を登場させて、関係者から猫への話を探り出すってのは、やっぱり違うでしょう?

酒場にはたくさんの人がいるのだから、猫や犬のいる酒場があってもいいとは思いますが、それをメインに持ってくるのは、なんかおかしく感じられます。

酒場に行くのは雰囲気もそうですが、美味しい酒を飲みたいし、美味しい酒の肴を頂きたいのであって、猫を見に行くわけではないでしょう。本書はどの層にターゲット絞っているのか分かりませんが酒場の候補として挙げられる店ではないし、猫好きが行くのもちょっと違うかと。

企画として失敗しているのでは?
と思ってしまう本でした。内容も特筆すべきものは無しです。

吉田類のマタタビ酒場(amazonリンク)
ラベル:書評 酒場 吉田類
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2016年07月27日

「無業社会」工藤啓、西田亮介 朝日新聞出版

最近、この手の本がよく目につくし、関心はあるものの本書の内容は読む価値無しかと。

具体例を挙げて説明的な話を・・・と言いつつもあまり具体的なものはなく、計量的な話も本書の対象外としつつ、結局はあまり意味があるとも思えない恣意的選択による統計の数字をあげたり、グラフを載せたりと何を主張したいのかよく分からない本です。

生活保護で養うよりは、労働させた方が社会的費用は安く済むなんて、いちいち説明するまでもないことをさも何か新しい知見のように書かれても、著者の独りよがり以外の何者でもないようにしか思えない。

働かなくても生きていけるなら、そして働きたくないなら働かなくてもいいだろうし、働きたくても結果として働けないなら一緒でしょ。

憲法で生存権が保障されているといっても、それは国家が財政的に許せる範囲というのが前提にあることさえ、分からない人が憲法を語って欲しくないなあ~。どんなものにもプライオリティがあり、空想の世界でないなら、当然、制約条件下の中でも最大の効用を図るってのは自明だし、ぶっちゃけ予算の余裕がなければ、国家は何も出来ない、それどころか夜警国家に徹しても最大限の費用を税として要求するものでしょうが・・・。

個人の趣味でボランティアするのはいいが、それを国家的な規模で国家の役目だなんて考えて欲しくないなあ~と思う。仕事がなくてお金を出すなら、その引き換えに国家は一定水準以上の労働を求めるべきでしょう。

一部の人が本当に苦労しながら労働し、体や精神をすり減らした代価の所得、そこにかかる税金からおこぼれに与ろうとする人達を許せないと考えるのは至極妥当且つ健全な感じもするんですけどね。

本書は本当にどこにでもありがちな、雰囲気を売るだけで新しい提言を含むような本ではありませんでした。
残念な感じです。読むのは時間の無駄でしょう。

むしろベタであっても本当に生活保護を必要とする人達に適切に行き届く為にはどうしたら良いか、そちらに重点を置くべきかと思った。
【目次】
第1章 なぜ、いま「若年無業者」について考えるべきなのか
第2章 「働くことができない若者たち」の履歴書
第3章 「働くことができない若者たち」への誤解
第4章 「無業社会」は、なぜ生まれたか?
第5章 「無業社会」と日本の未来
第6章 若年無業者を支援する社会システムのあり方
第7章 「誰もが無業になりうる社会」でNPOが果たす役割

無業社会 働くことができない若者たちの未来 (朝日新書)(amazonリンク)
ラベル:書評 新書
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2009年11月14日

「他人を見下す若者たち」速水敏彦 講談社

タイトルからして、ありがち・・・いかにも・・・ってな感じで期待せずに読みましたが、内容も予想通り。つ~か、予想以下の水準。

傷つき易い自尊心を抱えた若者(馬鹿者?)が、努力もせず、自らの劣等感を癒すために他者を貶めることで相対的に自分が特別で、有能であるかのような錯覚を自ら望んで生み出すこと。

著者の造語によると『仮想的有能感』だそうです。なんでもバーチャルつければいいんかい?(笑)

もっともこういうことをネットの書評で書く私なんて、まさに著者の主張で言えば、仮想的有能感に浸っているタイプに分類されることでしょう。外れてはいないけどね。

本書自体の内容に目新しさはありません。あちこちでしばしば言われているような内容を、学部生レベルが卒論としてコピペして作るレベルぐらい。最近の水準の下がった大学院生のレベルかもしれない?

だったら、日本終わったな?とも思うけど・・・。

もっとも本書の内容から知識として得るものは皆無ですが、自分自身を再認識する契機にはなりました。

だって、まさに私の学生時代がまさに、本書の対象者でしたから! 周りが馬鹿に思えて、教師や親が世俗にまみれた汚れた存在だと思ってましたもん。処世術なんてほざく奴は、それだけで死に値するとかマジ思ってましたよ。同級生なんて、それ以前の問題でしたし・・・。

確かに、幾分ませていたり、教師よりも知識があって問題の解法などでも自分が優秀だと今でも思えることはありますが(検定教科書の誤植見つけて、教科書会社から礼状もらったりね)、誰よりも劣等感に苛まれていたのも事実でしたね。

真剣に、自分は歴史に名を残せない人物ではと、悩んでもいましたし、人間の幸福って何?とかね。今は考えもしませんが・・・汚れちまったな、私。

私の場合は、自分が平均よりは出来ていても、所詮その程度で本当に優秀な人には、明確に劣る事実を認めることができたので、最終的には独り善がりな『有能感』から抜け出せましたけど。

もっとも劣っているという現実直視は、相当なストレスで一時、虚無主義やらアナーキスト系へ走りそうになりましたけど・・・。

だから未だにサブカル系への違和感が全く無いんですけどね(苦笑)。屈折した奴がいきつくのはそこいらですから。

私の場合は、とにかく劣等感から逃れる為にも周囲の環境とは、隔絶したいところへ行きたくて、私の中学校からは誰も入れない一番難しい進学校へ進んだというのがあります。(悪名高き、県内統一模試で200点中、194点とか取った時かな? 偏差値76とか)

大学は失敗して、滑り止めの外大に行ってたりしたけど・・・。あそこもつまらなくて中退しちゃったしなあ~。結局、別な国立を卒業したけど、ああ~なんかいまふうのダメダメ君じゃん(自爆!)

ニートもどきもよくやってたなあ~。仕事時間中も無職の時も、本読んで勉強しているのがいつもお仕事でしたし、そんなに変わらないんだけどね。仕事探している時は、国会図書館と地元の市立図書館とかに籠もっている時が多かったかも?

今は、本よりもネットで調べながら、試行錯誤している時間が多いけどね。

本書でも触れていますが、根拠の無い、自分の劣等感を癒す為だけの有能感(優越感?)の反射で、他者を貶めることが必要になるというのは分かるのですが、それをしている自分がより一層惨めでどうしょうもないクズに思えてしまい、そんなことをしている自分を殺したくなるので、私には出来なかったんです。

周りを否定して、たいしたことないぜ!っていう為に、私の場合は、無理矢理にでも自分を何かの点で高めなければ、自分で自分が許せない状況でした。

だから、中学生の時、睡眠時間4時間とかで勉強してたんだし。学校ではいつも基本一番でしたよ。妬まれましたし、いじめもあったかな? それよりも何よりも、成績がちょっといいぐらいで、さも自分の手柄のように誇る教師への幻滅は、並大抵のものではありませんでしたが・・・。

後年、小学校教師の友人に、初めて知り合った時の君の冷ややかな態度をよく覚えていると言われたことがありますが、全然記憶に無いのですが、心に刻み込まれていて無意識に表出するんでしょうね。いかん、いかんです。大いに反省。

とまあ、いろいろと自分の中のものを見つめ直す機会にはなります。そういうものがある人には。

勿論、そういう苦悩や挫折を経験したことのない人なら、読んでも何も感じないでしょう。共感できない事柄に、人はいたって無関心です。縁無き衆生は度し難し、ってね。馬の耳に念仏ですよ。

本書に価値は見出せませんが、やっぱり私はコンプレックスを抱き続け、それを克服する為に、何か自分で目標を持って努力するっきゃないんでしょう。その緊張感のもとで努力している切迫感の中でこそ、初めてある種の充足感を得る、つ~のも歪んだ感性なんでろうね。

でも、努力しないであれこれ言っている輩は、私にはとうてい受け入れられないんだけどねぇ~。私の周囲であれば、極力切ってきたしね。
切れない場合は、干渉せず、関わらず、放置プレイが基本。

さて、また切迫感に駆られて、努力しようか? このまんまのぬるい生活を肯定する気にもならないしなあ~。楽だけど、生きている実感持てないし・・・。

やっぱり適度な修羅場も必要かと・・・。難儀な性格な私です、ふう~。

他人を見下す若者たち (講談社現代新書)(amazonリンク)
ラベル:書評
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2009年10月19日

「日本科学技術大学教授上田次郎のどんと来い、超常現象」学習研究社

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なにを今更なのを承知であまりに流行遅れと知りつつも読んでみたが、結構面白い。

すっかりドラマとかのストーリーを忘れていたが、TVドラマの「トリック」好きで映画とかも観ていたファンなら、やっぱり読んでおくべきでしょう。

上田教授の生い立ちから、教授になるまでを描いた部分に、各ドラマでの上田教授視点による活躍の記録。

第3章にいたっては、おまけ的な上田教授のお部屋拝見、山田奈緒子のインタビュー、ヅラ(?)の刑事さん達の会話等々、盛り沢山の内容になっています。

活字の異様な大きさと共に、結構こだわりまくって、ネタ満載で書かれているエンターテイメント精神には、思わず拍手を送りたくなるくらい。

読んでいて、どっかで読んだような既視感を覚えたが、そうまるで日経新聞の「私の履歴書」のような素晴らしさでした。おじいさま達の自慢話のアレです(笑)。

自分視点での自慢さ加減は、まさにそのまんまで好きだなあ~。

ドラマ中を振り返る部分の説明では、助手の貧乳、もとい山田と上田教授の驚くまでの相違が際立っていて秀逸です。まるで小説「藪の中」みたい?

まあ、そうなふうに考えなくても端的に、エンターテイメントとして面白いので、ドラマを観ていて楽しかった人は、是非読んでおくべきでしょう。

続編作ってもいいのになあ~。また観たくなりました。

日本科学技術大学教授上田次郎のどんと来い、超常現象(amazonリンク)

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トリック劇場版2
ラベル:書評 トリック
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2009年07月25日

「あぶない脳」澤口俊之 筑摩書房

どうでもいい余談も多いが、関心があっても知らなかったことがたくさん書かれていて、面白かった。

特に分析する対象となるモノを捉える際の視点を、至近要因(メカニズム)と究極要因(進化要因)の2点に分け、前者には脳科学(神経科学)、後者には進化生態学(社会生物学)からのアプローチを明示している。

一般的に認められている説から、著者独自の説まで幅広い考え方が提示されているが、論理が明快なので、ほお~と頷かされるところが多々ある。

勿論、書かれている内容がどこまで一般的なのかは、専門外なので判断できないので割り引いて受け取るべきでしょうが、それでも自分が普段考えている事に対して、参考になりました。

例えば、『幸福感』とか。

私的には、中高校生くらいから、ずっと『幸福』の定義とか漠然と考えてきてましたが・・・(暗い子だなあ~)。

現在に至るまで、「他者(過去の自分を含む)との比較において生じる自己満足的な優越感」という定義以上のものを見出せないでいました。しばしば言われるように、昔は食べ物もなくてひもじかったのに今は、白いお米がお腹いっぱい食べれて幸せ、な~んて話もその類いです。

また、どんなにお金持ちであったり、どんなに能力があって、何不自由ない生活を送っていても、幸福感を感じられない人は多々いるでしょう。

それは当人が比較する対象と比べて、自分が上である、と感じられることでしか、実感できない感覚。それこそが、幸福感なのでは・・・と思ってきました。

宗教が、その比較対象を別次元に移すことで、より多幸感を増すのは、現実世界での比較を無視することができるからでは?とも思ってました。

逆に幸福感が永続しない故に、人は絶えず、現状維持ではなく、現状を超える環境を求めようとし、永遠に車輪を回し続けるねずみさんになるんでしょうし、それこそが人類の発展(勢力拡大)の原動力でしょう。

だからこそ、人は有り得ない幸福感の永続を願い、日々改善やら、努力やらを続け、その反動で鬱になったり、将来を悲観して自殺したり、自分を向上させるよりも周囲を貶めることで相対的な優越感を得ようとしたり、しょうもないことをしてしまうんでしょう。

とまあ、中学生ぐらいでそんなことを考え、卒業文集に虚無主義とか書く、嫌~なマセガキが大きくなると私のような人物になるわけです(苦笑)。

前置きが長過ぎて恐縮ですが、そういう人物には、是非、本書はお薦めしたいです。物の見方ががとにかくロジカルですから、目からウロコ的に確かにそうかも~と思える部分が多々あるんですよ~(拍手)。

まあ、その先にある著者の主張は、正直どうかな?ってのもまた多々あるのですが、決して押し付けている訳ではなく、どこまでが一般論でどこからが著者の主張か分かるように書かれていますが、良心的だと思います。

意図的にその辺をごまかして主張している本や、著者自身が無意識で混同してしまって、分かっていないで書かれているどうしょうもない本とは違いますので、その点は安心して読めるかな。面白いよ~。

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【以下、読書メモ】
自我・・・自己制御と自己意識。両者の前提にあるのがワーキングメモリ

ワーキングメモリ:行動や決断に必要な様々な情報を一時的に保持しつつ操作して、同道や決断を導く認知機能

<思い込み>
節約的安定化原理:脳は、最小限の情報で辻褄あわせをする
  ↓
出てきた結論は、長期記憶へ
  ↓
脳は記憶をベースに情報処理をする結果、思い込みは事実として認識されるに至る=思い込みの固定化完了

ブームは、無意識的な記憶情報を溜め込むことで、判断時に影響を与え、行動を偏ったものにしてしまう

幸福感の究極要因は、男女の持続的な結び付き=結婚を維持する為

言語獲得の結果としてのヒトの脳の発達
・・・・言語の獲得は、対象をシンボル化して操作(=相手の心の理解)を通して、社会関係を適切に処理することを可能にした
  ↓
他者の心の理解ができない昨今の若者

社会失行:社会的理性(=状況に応じて自分の行動や感情を制御して、適切な社会関係を営む機能)はあるものの、それに反する行為をおこなってしまうこと

結晶性知能:豊富な経験や知識に基づいた判断力、思考力、統率力といった高度な知能。高齢になるほど発達する知能

何故、結晶性知能が存在するのか?
生殖自体とは別に、子孫が存続しやすい環境(社会)を産み出す目的で存在するのでは・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

著者自身の見解も多々あるものの、全般的に非常に面白いです。ご興味のある方、お薦めします。
【目次】
第1章 精密にして危うい脳
第2章 愛と性の脳進化
第3章 脳教育の必然
第4章 理不尽な脳
第5章 もっと深まる脳
あぶない脳 (ちくま新書)(amazonリンク)

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「バカの壁」養老孟司 新潮社
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2009年05月07日

「もてない男」小谷野敦 筑摩書房

そもそもこういう本は買わない人なのですが、手元の本が切れてしまった時にとにかく何でもいいから、薄めの本をブックオフで数冊購入した時に混じったものです。

フェミニズム論とかは反吐が出るほど嫌いですが、ああだこうだと何かにつけて屁理屈ばかりつけるのもイヤだったりする。本書もかなりそれに近いものがある。

本書は、その辺を危惧しながら読んだものの、最後に著者自身が書かれているのようにせいぜいがエッセイの範囲であるというように、著者の戯言が書き連ねたものとなっている。

この手の本というのは、共感できるか、自分の心の中のもやもやを代弁してもらってすっきりできるか否かで評価が分かれると思うが、私的には、本当に無駄で得るものは全く無かったと言える。

不思議と怒りはないものの、どうでもいいじゃん!というのが率直な感想です。

中高校生ぐらいで悶々としつつ、薄っぺらな自尊心とのせめぎ合いで悩んでいるのなら、分かるけど、いい年した大人がそんなどうでもいいことに時間とエネルギーを費やすなと言わざるを得ない。

小人のプライドなんてゴミっしょ。お見合いがどうとか、恋愛がどうとかどうでもいいし、どうせ人の心なんて分からないし、変化するのだから、関心があれば、デートにでも何でも誘えばいいジャン!

合コンとか行ってもいいし、ナンパでもなんでもやりゃいいっしょ。つ~か、私も大学入った後は、とりあえず経験とばかりに新宿でナンパしたり、夏に軽井沢行って声かけたり、御茶ノ水やポン女の子と合コンとかしたけど、いやあ~もてなかったなあ(苦笑)。

就職してから、同期や新人の女性と週2,3人とデートしまくりとかいう時もあったけど、結局もてなかったような・・・。京都で現地待ち合わせに来なかったあいつは、殺意を覚えたりしたが・・・♪

人にもいろいろいて、そりゃ、いきなり終電がなくなるので泊まっていきます?とか聞く女性にはさすがにひきましたが、それを据え膳喰わねば・・・とか言われても嫌なもんは嫌です。まあ、いろんな人がいますからね。

私と違い、本当にもてる友人は、何度か痴情のもつれで絵に描いたようにトラブって、玄関の扉を開けると包丁を持って立っていたと笑える実話をしてたけど、まあ、ちゃらいお話ですよ~。

周囲がどうであろうと、自分は自分だし、そんなことを気にしているうちは、一生自分の中でループしまくりで自損するぐらいしか生きている価値を見出せなくなってしまうかもしれませんね。

まあ、結婚してようが、してなかろうが、恋愛だろうが、見合いだろうが、人は一生悩む生き物なんで、わざわざ「もてる」「もてない」で騒ぐほどでもないだろう。

私には、今は別な悩みでいっぱいですから・・・ネ。

ただ、本書を読んで思ったのは、本当に著者の戯言以外の何物でも無いです。それで出版までされて、お金が稼げるのだから、大変幸せな方だなあ~と思います。こんな内容は、日記にでも書いて一人で悩んでりゃ十分です。

以上、これは読む価値ないでしょう。

恋は肉色、とか愛の技法の方がはるかに有用だと思うぞ!

そうそう「ゆびさきミルクティー」の方がはるかに、繊細で精神的に高尚だと思う。何故、8巻が出ないの~(号泣)。
【目次】
第1回 童貞であることの不安―童貞論
第2回 「おかず」は必要か?―自慰論
第3回 女は押しの一手?―恋愛論
第4回 てめえらばっかりいい思いしやがって!―嫉妬・孤独論
第5回 妾の存在意義―愛人論
第6回 強姦する男、誘惑する女―強姦・誘惑論
最終回 恋愛なんかやめておけ?―反恋愛論

もてない男―恋愛論を超えて (ちくま新書)(amazonリンク)

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「ローマ・愛の技法」マイケル グラント,マリア・テレサ メレッラ 書籍情報社
「カーマ・スートラ」ヴァーツヤーヤナ(著)、大場正史(訳) 角川文庫
「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
「恋は肉色」菜摘 ひかる 光文社
「ゆびさきミルクティー」1~7巻 宮野ともちか 白泉社
ラベル:書評
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2009年03月30日

「アラビアンナイト」西尾哲夫 岩波書店

私が以前読んだのは、岩波文庫の「完訳 千一夜物語」全13巻だったが、途中でしばらく放置した期間があったものの、内容の面白さ故に結構、順調に読破できたことを覚えている。

バートン版やマルデュス版の違いとか、実は読書中は全然知らず、当初はそのまま素直に中近東の昔話・伝承と素直に思っていた。

本書を読んで改めて、アラビアンナイトというのは、元々あったものではなく、東洋に対する憧憬から生み出された異界へ対する共同幻想の産物のようなものであり、ある種、人工的に作られたものであることをようやく知りました。

シンドバッドの冒険が千夜一夜物語に紛れ込んだことは、以前何かの本で読んだことがあり、別途翻訳されたものも確か持っているのだが、読まずにどこかに隠れているらしく、本書を読んで大変気になった。

まあ、何はともあれ、アラビアンナイトがどのようにして生まれ、それがどのように西欧で受容され、日本を始め西欧以外の世界中に拡散していくその変容過程は、大変面白いです。

時代的背景や各国の抱く東洋への思い入れ、政治的思惑等々が混沌して自分たちの求めるアラビアンナイトを生み出していく様は、まさに物語の誕生であり、子供向けの教訓有り童話から、大人向けの好色文学までいかようにも分化をしていく多様性は、地域を越え、時代を超え、文化を越えて現在も進化しているのは、全く同感するばかりです。

本書は物語の内容や主題を扱うものではなく、その文化的価値や受容の変遷等、多方面からの視点でその存在そのものを捉えようとするものであり、類書をあまり見たことがなかったので大変興味深いです。

ついでに日本での歴史的な翻訳事情なども書かれていて、そういう点でも楽しかったりする。直接関係ないものの、「西洋珍説 人肉質入裁判」は個人的には大爆笑した! ちなみに勘のいい人は気付いただろうが、「ベニスの商人」の邦訳タイトルです。最初、ホラーかと思った。

インドっぽい服装の挿絵を大して違和感なく眺めて育ったけど、本書を読んでなるほど(!)、初めてそのおかしさに気付きました。まあ、私のセンスもその程度のもんです。他にも気付かされることの多い本でした。

読んでおいて悪くは無い本でしょう。
【目次】
第1章 アラビアンナイトの発見
第2章 まぼろしの千一夜を求めて
第3章 新たな物語の誕生
第4章 アラブ世界のアラビアンナイト
第5章 日本人の中東幻想
第6章 世界をつなぐアラビアンナイト
終章 「オリエンタリズム」を超えて
アラビアンナイト―文明のはざまに生まれた物語 (岩波新書)(amazonリンク)
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2008年11月09日

「男が女を盗む話」立石 和弘 中央公論新社

源氏物語の中でも若紫が大好きで、学生時代は原文でそらんじていた私ですが(あと夕顔のところも)、今年は源氏絡みで盛り上がっていることもあり、少し気になっていたタイミングで見つけて読んだみました。

但し、時間がなくて飛ばし読み。

源氏物語に限らず、古典の中で「女性を略奪して妻にする」類型とおぼしき題材を採り上げ、昨今の映画やアニメまで幅広くカバーしつつ、論拠を示しながら詳細に分析していく。

従来、何気なく読んでいた箇所が筆者の視点でみると、そこの背景にある当事者の女性の心情は、表面的に現われているものとは全く異なるものとなり、大変興味深い。

ある程度、古典を読んで分かったうえで、筆者の視点を取り入れることで更に読みを深化させていけるのではないかと思う。

その反面、あくまでも筆者の視点は、現代人としての価値観の下で、当時の女性の置かれた状況を理解し、心情を解するという枠の中で進むため、そこが明確な限界であるようにも感じられた。

即ち、当時の人が当時の価値観の中で幸せを定義した場合、筆者の考える現代人的な幸せとは異なるのが当たり前であり、当時と今のそれぞれの幸せについて絶対的な良し悪しはないのだが、暗黙のうちに現代の価値観を押し付けていることを認識できていない。

まあ、この手の文化論にありがちではあるが、西洋人が西洋以外を理解・評価する際に、自分の尺度でしか判断できないのでいるのと同様に、現代人は現代の価値観というtemporaryな尺度でしか、歴史上の一時期を測ろうとしないものである。しかもそれを無自覚でやるので、タチが悪い。

その辺をクリアすれば、面白いかもしれないが、そこから何が言いたいのか?という点については、何も無い様な気がしないでもない。まあ、視点移動の一つとしてなら、価値を見出せるかもしれない。

だが、あえて読む必要は感じなかった。

男が女を盗む話―紫の上は「幸せ」だったのか (中公新書 1965)(amazonリンク)

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NHK よみがえる源氏物語絵巻 「浄土を夢見た女たち」
京都散策シリーズ~宇治神社・平等院鳳凰堂(8月22日)
「源氏物語」第壱巻 江川達也 集英社
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2008年10月25日

「ドキュメント 屠場」鎌田慧 岩波書店

普段、結構ホルモン系が好きで、よく焼き肉屋や飲み屋でも、もつ煮とか食べる機会も多いので何気にふと手に取った本。以前読んだ「世界屠畜紀行」の影響もあるかな?

普段知ることのない職場として『屠場』を紹介している本かと思って読んだのですが・・・岩波だったし・・・。勿論、どういう職場かも説明されているのですが、かなりの部分が職業蔑視と被差別部落差別に関する話で、正直期待外れでした。

歴史的積み重ねによる偏見や、経済的目的の為の差別の悪用などによって、不当にただ働きをさせられたり・・・という部分を読むと確かに酷いし、あってはならないことだとも思うが、同時に本書の主張には違和感を感じざるを得ない。

搾取されている人民を助けなければ、弱者は連帯しなければ・・・的な
発想&行動って、あまりにも思想的に偏ってない? なんか大昔の社会党系や共産系のアジ演説かと思うほどで、素直に同意できない。

機械化は人間性を喪失するとか、仲間は助け合うのが美徳だとか、本書が書かれた当時であっても、もうそれって忘れ去られたお題目以上の価値はないでしょう。チームワークは大切だけど、馴れ合いとは違う。

どんな仕事でも人は喜びを見出し得るし、努力や向上心は必須でしょう。工場労働であってもしかり。この著者には「TOYOTA's way」でも読んでみろといいたい! まあ、「GOAL」でもいいけどね。

民衆の立場にたって、権力批判(体制批判)という安っぽいジャーナリズム根性が鼻について嫌な感じがした。

興味深い点は、多々あるし、昔は酷かったというのも恐らく事実だと思うのですが、あまりにも特別扱いし過ぎるでしょう。普通の事務員でも過酷なノルマ仕事でつぶれたり、駄目になった人はたくさんいるからね。別に屠場に限定されないでしょう。国内工場を海外に移し、リストラなんてありきたり過ぎて、何を今更だし。それ自体は、純粋な経済活動としておかしくないでしょう。

金持ちとそれ以外の溝は、時代・地域を越えて、それこそ普遍的でしょう。職人技、職人技というけれど・・・そんなの日本の職場なら、当たり前です。大田区の職人技ではないですが、それなりの製造系の会社なら、こだわりとプライドとそれを支える絶え間ない努力&向上心を持つ人が必ずいますよ。

事務職やソフト開発、営業等職種を問わず、大変な努力をして誰からも尊敬を勝ち得るに値する仕事をしている人がいて当然なのだけど・・・。

本書は、なんか視点がおかしいです。機械を使ったり、コンピュータを使う仕事は全て、非人間的で職人技とは異なる世界というのは、あまりにも物事を知らな過ぎますね。

四国のハムの例は、実は知り合いから少し聞いたことがあったのだが、う~ん、実態はいろいろと違うらしい。勿論、知り合いを経由してなのでそれなりのバッファーがかかっているとしても、この本が偏った視点で書かれているのは間違いないだろう。

正直、労働組合史とかそういう系のノリの本です。あまりまともに採り上げるべきではないような気がします。あくまでも個人的な見解ですけどね。
【目次】
日本一の食肉工場―東京・芝浦屠場
「職場の主人公は労働者だ」―横浜屠場
仕事師たちのゆくえ―大阪・南港市場
「自由化」という逆風のなかで―四国日本ハム争議
ドキュメント 屠場 (岩波新書)(amazonリンク)

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「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社
ラベル:書評 差別 食べ物
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2008年10月06日

「三つの教会と三人のプリミティフ派画家」J.K.ユイスマンス 国書刊行会

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前半と後半は全く異なったものを一冊まとめたことに注意!

後半の絵画評論については、そもそも当該絵画自体があまり私の好みではない為、興味が持てなかったし、評論自体も私を惹き付けるものではなかった。

しかしながら、前半のゴシック建築についての部分は、やっぱり私の好きなユイスマンスだと言えよう。まさにゴシック教会とは、象徴表現にこそ、その意義を見出し得る存在であり、本書の表現を借りるなれば「物質的研究」などでは、その本質を理解し得るものではないだろう。

ごく当たり前のように聖ディオニュシオスが出てくるのが、イイ!(「目に見える生物も事物も、目に見えぬものの光り輝く象徴である」という言い回しを引用している)

エミール・マールの著作を読んでいる事が前提の文章が端々に見られる。

逆に言えば、ゴシック建築に関する基本的な資料が頭に入っていない状態で本書を読んでも、それは真の理解に成り得ないし、ユイスマンスの言わんとする意図が汲めるとはとうてい思えない文章が書かれている。

幸いなことに門外漢とはいえ、一応はそれらの基本資料は読んであるので、私の独り善がりであることを差っ引いても、このうえもなく、共感でき、ユイスマンスがそれほどまでに思う気持ちが痛切に感じられる。

勿論、本書で書かれている錬金術的図像については、そのまま首肯するには、ある種の抵抗を覚えるものの、ニコラ・フラメルの「大聖堂の秘密」を読んでいれば、これも言わんとするところは、十分にその意を汲めるところだろう。

少なくとも予備知識無しに、本書の前半を読んでもそれは無駄だと思う。私自身が知らなかったら、全然理解できなかったと思うからでもある。昔、シャルトル大聖堂に行ったことがない時に読んだ、「大伽藍」は全然その面白さを理解できなかったが、それと同じではないかとも思う。

後半は逆に私の知識がないから、つまらないだけけもしれない。

本書は読み手をかなり選別する作品ではないだろうか? これを読んで楽しめる方は、それなりの素養(準備)がある人だと思われる。

ただ、私は前半を非常に興味深く読めた。同好の志には、一読をお薦めしたい。
【目次】
三つの教会
ノートル=ダム・ド・パリにおける象徴表現
サン=ジェルマン=ロクセロワ
サン=メリー

三人のプリミティフ派画家
コルマールの美術館におけるグリューネヴァルト
フランクフルト・アム・マイン
三つの教会と三人のプリミティフ派画家(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「大伽藍」ユイスマン 桃源社
「神の植物・神の動物」ジョリ=カルル ユイスマン 八坂書房
「ゴシックの図像学」(上)エミール マール 国書刊行会
「ゴシックの図像学」(下)エミール マール 国書刊行会
「中世思想原典集成 (3) 」上智大学中世思想研究所 平凡社
中世思想原典集成 (3)~メモ「天上位階論」「神秘神学」
ゴシックということ~資料メモ
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
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2008年09月07日

「戦術と指揮」松村 劭 PHP研究所

なんとか潜在顧客を掘り起こそうと『戦術』をやらたとビジネスに関連付けて説明する趣旨が一部に出てくるが(出版社からしてビジネス系だしね)、その意味では完全に失敗だと思う。

著者自身がビジネスに関しては、素人のようで対応付けようとする戦術とビジネス手法が妥当でないと思われる点がしばしば見受けられる。むしろ、自衛隊の作戦参謀であった経験を踏まえ、淡々と自らのご専門について書かれた方がはるかに有意義であったろうと想像される。

それをいかように応用するかは、あくまでも読者側に委ねるべきでしょう。ビジネスとか余計なことを言う割に、本の内容そのものも戦術に関するお話だけに限定されています。

また、戦術の大切さを非常に力説され、勿論、一つ一つの戦闘の勝利が戦略的勝利を支えるというのも分かるのですが、わざわざこの手の本を読んでまでビジネスに利用したいと考える読者層なら、まず部長相当以上のマネジメント層でしょうし、だったら、戦略に資する戦術手法の選択という視点の方がはるかに有用だと思うですが・・・???

内容的には、「大戦略」とかのウォーゲーム好きに受けそうな戦術想定集です。良くも悪くも戦術のみに限定されてますので戦略立案に関して何の参考にもなりません。

まあ、ずらずら~っと批判的なことばかり書いてますが、私的には学ぶべきものがありました。本の主題ではありませんが、軍の組織における『参謀』の役割と機能というのが大変(!)目からウロコでした。

上意下達式のタテの方向に物事が流れる組織で、ヨコ方向に繋げていく『参謀』という存在に改めて強い関心を持ちました。これを知っただけで読む価値がありましたね。

以下、読書メモ:
軍隊(師団を例としている)では、指揮官が一人で決心する。けっして合議しない。指揮系統は明確である。指揮官は歴史的にみれば、原則として部下の生殺与奪の権をもっているが、今日においては、そのいくつかは制限されている。

 指揮官と、その部下である参謀の地位・役割は明確に分けられている。参謀には一切の指揮権はない。参謀は無私の精神によって、指揮官を「補佐」することが使命である。
 
 軍の組織は、上から師団長―連隊長―大隊長―中隊長―小隊長―分隊長である。会社では、社長―事業本部長―工場長―製品部長のラインに相当する。会社の重役は参謀であるのか社長から権限の一部を委任された指揮官なのか分かり難い。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
 軍隊では、作成の成否の責任は、師団については師団長、連隊については連隊長がすべてとる。以下、分隊長にいたるまで、それぞれの指揮官に責任がおかれている。

 しかも戦場においては、突然、指揮官が戦死することが予想される。そのときは自動的に指揮権はつぎの位のものがつぎ、さらにその人が戦死すると、次々位者がつぐことになっている。
 
 さて、師団長、連隊長、大隊長には参謀がつく。参謀組織は、一般参謀と特別参謀に区分され、一般参謀は指揮官を兼務することはない。特別参謀は指揮官を兼務する事があるが、参謀と指揮官の権限は明確にわけられ、その参謀を支援する事務参謀部員も区分されている。

たとえば、師団通信参謀は、同時に通信大隊長であることが多い。しかし、彼を支援する事務参謀部員は師団司令部に席を持ち、大隊長としての彼の補佐をする参謀は、通信大隊に席を置く。混同したり、兼務する事はない。

 一般参謀は「監理・行政」「人事」「情報」「作戦」「兵站」に区分される。そして一般参謀は、そのすべての領域に発言権がある。たとえば、情報参謀であっても、作戦、人事、兵站などに発言権をもっている。

 一方、特別参謀は「総務」「通信」「工兵」「輸送」「航空」「整備」「補給」「化学」「衛生」「会計」「厚生」「警務」などにわけられ、専門的事項に関して、全一般参謀に対しての、調整権をもっている。いわば、一般参謀が横軸、特別参謀が縦軸ということである。

 この結果、軍隊の参謀組織は「縦割り」ではなく、「網型」となっている。このような師団参謀組織の利点は、いずれの参謀も、師団長が承知している状況と同じ範囲の状況を、承知することである。

 なぜならば一般参謀は、すべての領域に発言権があり、最高会議につねに参加する。一方、特別参謀は、自分の専門領域に関して、すべての一般参謀と調整するので結果的にすべての状況を知ることになるのだ。

 連隊、大隊の参謀も、それぞれの指揮官と同じ状況を承知する。したがって、担当参謀が留守の場合には、どの参謀でも、自動的に代役がつとまるのだ。

 これにより、会社や一般官僚における、縦割り組織のもっとも悪い欠陥、参謀の官僚化(自分の領域しかわからない、他参謀の領域に口出ししない、踏み込まない。他参謀の代役をしない。自分の領域の利益のみを考える)などが、軍隊の参謀組織では、おこらないのだ。

 軍隊の参謀組織は一見、複雑で人員が必要なようであるが、参謀全員が師団長のつもりで状況を把握し、師団長の立場にたって問題解決を考えているので、複雑な作戦を、迅速に計画するには、最良の組織となっている。
一切の指揮権が無いんですね参謀って。それでいて、全ての情報を知り得る権限を有するのか・・・。昨今では、体のいいプレイング・マネージャーなどという言葉で一見効率良さそうな・・・その実、ピンポインでの過剰負荷と機能不全な組織などがありますが、『参謀』的な機能を軽視し過ぎた弊害かもしれませんね。

いろいろな点で、大変興味深い限りですね!ふむふむ。
【目次】
第1章 戦いに勝つための9の原則
第2章 基本演習―敵と味方を考える21の質問
第3章 集団における命令の下し方
第4章 『Simulation1 中川盆地における戦闘』―問題解決の思考順序を学べ
第5章 『Simulation2 海に浮かぶ、仮想島“Q島”』―少人数をひきいる現場指揮官の決断
第6章 『Simulation3 Q島における三鷹戦闘団の戦い』―大組織を動かす指揮官の決断
戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
情報と国家」江畑 謙介 講談社
「最終戦争論・戦争史大観」石原 莞爾 中公文庫

ラベル:戦術 書評
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2008年09月03日

「フランス世界遺産の旅」山田 和子 小学館

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シャルトル大聖堂とやアミアン大聖堂、他にも世界遺産として登録されている修道院などの写真が、それなりに綺麗だったので読んでみました。

トンボの本とかと同系列の体裁でビジュアル重視の昨今よくあるタイプの本です。写真は可も無く不可も無く、ただ解説はよく言っても観光ガイド+αレベル。写真に紙面の大部分を割くのはいいのですが、ガイドブックではないのなら、もう少しピンポイントで興味深いエピソードとかぐらい紹介しても良いかも。

表面的にはそういう説明されることもあるけど、厳密には否定されているようなあまり調べていない解説が散見され、読んでいてがっかりし、なんかひっかかった。

似ているようでいて、本書とは全く異なる、本質がしっかりした「大聖堂物語」とかとは似ても似つかない。ひとえに著者の知識量と情熱の差ですね。

何もこだわらずに世界遺産をシンプルに見て回りたい向きにはどうぞ。世界遺産を見ただけでは満足できないような、好奇心旺盛の方には不向きです。
【目次】
第1章 パリとイル・ド・フランス
第2章 北フランス
第3章 フランス北西部
第4章 ロワール川とその周辺
第5章 フランス中部
第6章 フランス南西部
第7章 南フランス
第8章 フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼道
第9章 その他の世界遺産
フランス世界遺産の旅 (ショトルトラベル)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「図説 大聖堂物語」佐藤 達生、木俣 元一 河出書房新社
「図説 ロマネスクの教会堂」河出書房新社
「フランス・ロマネスクへの旅」池田 健二 中央公論新
「とんぼの本フランス ロマネスクを巡る旅」中村好文、木俣元一 新潮社
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2008年07月27日

「社会不安障害」田島治 筑摩書房

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鬱をはじめとして、精神に関わる『病(やまい)』が身の回りで頻繁に、しかも何人もの知り合いから聞いたりする昨今。

自分も含めて決して他人事ではなく、個人だけの問題に止まらず、社会的病理としても関心があったときに、手にした一冊です。

新書でお手軽な本だろうと、あまり期待していなかったのですが、分量の少なさにも関わらず、きちんとした姿勢で書かれていて、勉強になった一冊でした。

病気としての定義の他、事例を挙げながらの病状や診断基準などから、おおよその概要を理解できるだけでなく、さまざまな批判を踏まえてバランスよく書かれています。

単純に薬を処方すればいいというものではなく、ある意味、人格自体を変えてしまいかねない危険性を十分に認識したうえで、それによって確かに救われる人がいる、その為に何をどう為すべきか、という視点で治療に取り組まれているのがよく分かりました。

薬の服用で全てが直るわけでもなく、再発の危険性も多分にあるものの、薬の服用によって脳の形質的変化が認められる場合も確かにあるというのも、私にとってはなかなか驚きでした。

確かNHKスペシャルか何かでも見ましたし、本書でもしばしば挙げられている批判として、内気な人を積極的な性格にする『薬』というのは、人を変えてしまうわけで本来のその人ではなくなってしまう恐れもあって使用には、慎重であるべきとする主張も私的には納得です。

特に啓発活動の名のもとに、次々と『病気』を生み出す製薬会社のマーケティング戦略には、非常に否定的な私です。ただ、その啓発活動によって初めて、自らの病気を知る方もいるそうで、実に難しい問題だと思います。

病跡学などを見るまでもなく、なんらかの精神疾患の結果、素晴らしい芸術作品を残した方もたくさんいますし、類い稀な経営手腕の経営者などにもややもすると、いささか常軌を逸した方がしばしば見受けられるわけで、うがった見方をすると、人類社会の飛躍的発展にも帰依する可能性をつぶすことにもなるでしょうし・・・。

もっとも、天才と呼ばれるよりも一般人として、安楽に暮らしたい方もいるでしょうし、個人レベルではなんとも言えないでしょうね。

そういったことも含めて、いろいろと考えさせられる本でしたし、得るところも多い本でした。改めて『人は薬で変えることができる』というのは、驚愕の真実です!!

そうそう名称はよく聞くものの、あまり知らなかったSSRIとかについても説明されています。

以下、メモ。
SSRI:
神経の終末部から放出されたセロトニンがシナプスと呼ばれる狭い隙間を介して別の神経の表面にある受容体と呼ばれる部位に作用した後、元の神経の終末部に再取り込みされるのを防ぐ薬。
再取り込みをブロックすることで、シナプスにおけるセロトニンの濃度が高くなる。

SSRI→扁桃体が刺激に鈍感になる=過度な緊張感等が緩和される
【目次】
第1章 社会不安障害とはどういうものか
第2章 病気としての登場の歴史
第3章 症状と診断
第4章 社会不安障害への批判
第5章 社会不安の脳と心のメカニズム
第6章 治療の実際
社会不安障害―社交恐怖の病理を解く (ちくま新書 725)(amazonリンク)
ラベル:書評 病気
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2008年06月21日

「京の花街「輪違屋」物語」高橋利樹 PHP研究所

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最近の新書らしく読み易さは合格点だけど、中身がほとんど無い。特に島原の歴史的な記述部分は、他の類書を読むべきだろう。

また、お座敷遊びや粋な振る舞いとかについても、本書が際立って興味深いものはなく、お酒を飲むようなところなら、どこにでも共通する良識があれば、基本的にOKなのは一緒です。

では、本書の特徴かと言うと、島原最後のお茶屋さんの跡取り息子である著者が肌で感じ、実際にその世界で生きてきた人の生活観、というか考え方とかがちょっと面白い。

まさにおぼっちゃまとして蝶よ花よと育てられた特殊な世界が、現代の日本にもあった、そのこと自体が新鮮な驚きに感じられます。

一度もこの手のものを読んだ事の方、お茶屋さんで遊んだことのない方には、良いかも? 

あと、ふむふむと思った記述をメモ。
昔はおばあちゃんがよくお稽古に顔を出して、娘さんたちを振り分けたといいます。

踊りが上手な別嬪さんは「立方[たちかた](舞いを舞う人)さんに、顔はそれほどではないけど、三味線の筋が良かったら「地方[じかた](唄や三味線をする人)さんに、あまりお顔も芸も・・・、という子にはとにかく三味線を徹底的に仕込んで「義太夫」さんに、といった具合に。

義太夫さんは一曲が長いから花代(お座敷代)が高くつく。小唄だったら三分で終わってしまうから美人さんでないと間がもたなくて、お客さんは「お姉さん、もう帰るわ、車呼んで」となってしまいます。義太夫なら、曲が終わるまでお客さんは動けないわけです。
適材適所ですねぇ~。同時にそこまで考えてあげないと人を使うってことは大変なことでもあります。
昔はこんな話もありました。

あるお金持ちの旦那さんが、ある一つの廓を気に入って通うとします。すると、一人だけではなく、三人とか四人とかの芸妓さんに子供を産ませるということがありました。女の子の場合、大きくなると芸妓になりますから、その花街の芸妓さんはみんな似たような顔になっていくのです。父親がいっしょですからね。ですから「宮川町顔」とか、「祇園顔」とかがあったのです。パッと一目みてわかるようなのが。勿論、そんな甲斐性のある人はほとんどいませんけど。
なんか、昔の話にしても凄いお話ですね。事実は小説より奇なり、かもしれません。
【目次】
第一話 輪違屋に生まれて~跡取り息子の日々
第二話 最古の花街 島原 最後の置屋 輪違屋
第三話 極上の妓女・太夫
第四話 京都の花街
第五話 お座敷に遊ぶ
第六話 きゅうの輪違屋十代目~廓の情緒
京の花街「輪違屋」物語 (PHP新書 477)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「江戸の花街「遊廓」がわかる」凡平 技術評論社
祇園祭に行きた~い!
「図説 浮世絵に見る江戸吉原」河出書房新社
「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社
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2008年06月04日

「日本を降りる若者たち」下川 裕治 講談社

著者の本は、アジアの旅行絡みで何冊も読んでいるし、それらは結構面白かった。本書はその延長線上で、今風の時代に迎合して、社会不適合者となった一部の若者達に焦点を当てて書かれたもの。

基本的に、著者の他の本でも読んだし、別な著者による本でも読んで知っていたよくある話がほとんど。取り立てて目新しい内容は無かった。

いつの時代でも、どこの国にも、主流から取り残された人々はいるし、まして資本主義の社会体制をとるなら、その存在が生じることは肯定すべきでしょう。

人の生き方なんて、いろんなものがあるはずだし、またあってもいいのでみんながみんな特定の社会に適合する必要はないでしょう。勿論、それが場合によっては死につながる場合でもあっても・・・しかたないことだと思う。

というか、人が他の動物と同様にある『種』として捉えるなら、適当に淘汰されることは格別重要視すべきとも思えないなあ~。別にニートやゆとりを卑下する必要もないが、それで生きていければOKでしょう。もっとも、現代の日本では、淘汰される可能性が一番高いのかあ~とか思うけど。

別にアジアの国(タイ)とかでなくてもいいような気がするけどなあ~。日本の山とか籠もって自給自足してもいいはずですが、所詮は生きていく力がない存在なのかもしれない。

まあ、私も勤勉に働く事に価値を見出さないし、何をしてもいいと思うんだけど、自分が楽しいと思えることさえしていればいいんじゃないかと思う。私自身は、とりあえずやりたいと思った事は、行動に移すべく生きてきたので、それが『楽しみ』ですが、本書に出てくる人達はつまんない感じがしてならない。

私も一人旅は国内・国外を問わず、よく出掛けるが、何もしないで旅行先の街を散策していることもあるが、常に知らない場所・店を巡るのが好きですね♪ 一箇所に長くいるのは、1週間以上いるのを旅と言わないでしょう。

個人的には本書に出てくるような人を実際に何人か知っているし、心情的には分からなくはないけど、自分に自信を持てず、口先だけで信頼が置けない感じがしてならない。

悩むなら悩めばいいし、それに立ち向かえばいいし、駄目ならこの世から消え去るのも選択肢ですが、なんだかなあ~。まあ、『ゆとり』の世代なんでしょうネ。

日本にはいらない人でしょうし、日本をいらない人なんでしょう。お互いの為にもそれは良い事でしょうね。

タイは私も二度ほど行ったことがありますが、物価安いし、人の性格は穏やかだし、湿度が高くなければ、いいところだと思うんですが、だからと言ってそこに埋もれる気にはならないなあ~。どうせなら、ブラジルの方がはるかに良かったもの。あそこの生活リズムが結構好き♪

本書を読む人は、窮屈な自我と自尊心の枠から逃れられずに苦しむ人が読んで、ささやかな安らぎを得るんでしょうね、きっと。私は、逆にむかつきましたけどね。

率直な感想として、心の底から思うのは努力している人がいいなあ~。自分自身に対して偽ることなく、仕事や生き方にプライドを持っている人を尊敬したいし、そういうのに憧れる。逃げるのは、嫌ですね。少なくともやるべきことをやり遂げて成果出してから、辞めちゃうのは私的にはOKですけど、辛いから逃げるのは、一生逃げていくしかなさそうですもん。

自分で自分を蔑む生き方だけは、したくないなあ~。

そういうことを考えさせる本ですかね。でも、この本あんまりいいとは思いません。ゆとりの愚痴もどき聞いて、それをメシのネタにしているだけの本でしょう。ごく一部に存在する事実を、あたかも一般的な事象のように採り上げる、あざといマス・メディ的な臭いがして、イヤですね。まあ、『まぐれ』の本の方が、これよかなんぼかマシで意味があります!

日本を降りる若者たち (講談社現代新書)(amazonリンク)
ラベル:沈没 書評 旅行 タイ
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2008年02月03日

「妖怪談義」柳田國男 講談社

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まさに妖怪関係の先駆者の一人である柳田氏の本です。個人的には「遠野物語」のような、採集した伝承等をまとめ本が好きですが、それを他の地方で収集された類似の話と比較しつつ、共通点・差異点を明確にし、合わせてその成り立ちや伝播状況、ローカル化などの解説を加えた本書も面白いと思います。

現代から見ると、そうでもないように見えてしまうのですが、あの時代に率先してこういった視点から、妖怪に取り組まれたのは、まさに先駆者だったのではないでしょうか? 

そういえば、以前荒俣氏の本で、妖怪学の基本書(or定番)的な紹介をされていた文章を読んだ覚えがあります。何の本だったか、忘れちゃいましたけど・・・。

暖かい目で読むと、いいような気がします。ただ、個人的にはもっと&もっと、採集した生の伝承や伝聞なども読みたかったです。解説については、私の基礎知識が無さ過ぎる問題があるのでしょうが、もう少し深く、元の文献自体の説明やそれからの伝わり方なども解説があったら、面白かったのになあ~と思いました。

でも、目を通しておくべき本なのは確かだと思います。大昔に読んだような気がするんだけどなあ~。残念ながら、ほとんど覚えていませんでした。
【目次】
自序
妖怪談義
かはたれ時
妖怪古意
おばけの声
幻覚の実験
川童の話
川童の渡り
川童祭懐古
盆過ぎのメドチ談
小豆洗い
呼名の怪
団三郎の秘密
狐の難産と産婆
ひだる神のこと
ザシキワラシ(一)
ザシキワラシ(二)
己が命の早使い
山姥奇聞
入らずの山
人の市に通うこと
山男の家庭
狒々
山の神のチンコロ
大人弥五郎
じんだら沼記事
 付 小太法師伝説四種
一つ目小僧
一眼一足の怪
片足神
天狗の話
妖怪名彙
妖怪談義(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「稲生物怪録」荒俣 宏 角川書店
国立国会図書館「描かれた動物・植物」展
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社
「化け物展」10月開催へ/人魚や天狗の“ミイラ”も
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2008年01月20日

「不味い! 」小泉 武夫 新潮社

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普段書かれているものも決してグルメとは言えないものの、珍味・美味の話を書かれている小泉氏ですが、本書は美味しいものとは対極にある、不味いものを紹介しています。

タイトル見ただけで、実に不味そうなものが並んでいます。食事時に見ると、食欲減退すること必至ですのでダイエット時の読書に良いかもしれません(笑)。

しかし、さすがは発酵学をはじめとする『食』の専門家。何故に不味いのかを科学的に解説してくれるのが、素晴らしい!!

ただ、不味いというだけではなく、何故、それが不味いのか、素材のせいなのか、料理法のせいなのか、はたまたそれ以外の味覚おんちの故なのか、不味いものを明確に認識することで逆に美味しいものもはっきりと分かるようになる、という考え方はなるほどと思いました。

でもね、勉強になるのものの、不味い食事の話はあまり楽しいものではありません。読んでいて、確かに不味そうと納得する場面が多々あるものの、つまんないです。私はやっぱり美味しいものが好きだし、そういう話が読みたいです。

結論としては、まあ読まなくてもよい本かと思います。美味しいものの本の方がいいなあ~。
【目次】
観光地のお膳
不味いカニ
不味いラーメン
ホテルの朝食の蒸した鮭
病院の食事
丼物
ブロイラー
不味い蕎麦
不味い学校給食
不味い蛇
不味い駅弁 街弁
不味いフライ
不味い虫
ホテルのティーバック
不味い野菜
血の匂い
カラスの肉
不味い刺身
ジュール・ストレミング
不味い豆
不味いビール
未去勢牡牛の肉
不味い飯
ホンオ・フェ
不味いイクラ、不味い筋子
不味い鰻
不味い総菜
不味い納豆
大阪のホテルの水
不味いつまみ
不味いライスカレー
不味い!(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社
「小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」日本編」小泉武夫 
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社
「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店
「下町酒場巡礼」大川渉、宮前栄、平岡海人 筑摩書房
ラベル:書評
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2008年01月12日

「浅田真央、16歳」宇都宮直子 文藝春秋

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最近、スポーツ選手が妙にタレント化していたり、挙句の果てには政治家になったりして、大変違和感を覚えている私ですが、ボクシングやトライアスロン以外では、あまりスポーツ興味ないんですよねぇ~。

相撲見ていてもいらつくことが多いですが、真央ちゃんだけは好きですね。加護ちゃん亡き(無き?泣き?)後、残るは真央ちゃんただ一人!

冗談はさておき、本音ベースでも変わりませんが、いつもけなげに努力している姿がなんか癒されます。不平不満ばかり言って、成績のたいしたことの無い選手と比べたら、まさに選手の鑑でしょう。

写真集とかはありそうだなあ~と思っていましたが、本が出ているんですね。面白かったら買おうと思って手にとったのですが・・・。

うん、世界のトップ選手なんで年齢の割に大変だとは思うんです。目に見えないところで相当努力していると思うんで。でもね、それらを割り引いても幸せな星の下で生まれたんでしょうね、きっと。

文章というか、文字の羅列からは一切の苦労と思しきものは見受けられませんでした。でも、そういうのもありなんでしょう。出来る限り幸せなままで是非頑張ってもらいたいものです! みんながみんな苦労すればいいというものではありませんしね。

ただ、手にとっている間に全部読んでしまい、写真のカットも購入するだけの価値はないし、文章は更にね・・・辛い。結局、お金を出して購入する事だけはどうしてもできませんでした。残念。

決してお薦めはしませんが、こういう本があってもいいのかもしれません。真央ちゃんの活躍だけを期待してます。他の何も、誰も期待してませんが・・・すみません、ちょっと反社会的な私です。

浅田真央、16歳(amazonリンク)
ラベル:書評
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2007年12月13日

「知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語」デレク フラワー 柏書房

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小説、あるいは史実のアレクサンドリア図書館を描いたものかと期待していたのですが、そういった類いのものではなく、その図書館に納められた本の著者達の業績を羅列したような本で本来の図書館自体についての説明は、限りなく少ない。

私の知りたいような内容は、ほとんど無かった。また、古代の著名な学者達の業績が書物と共に挙げられているものの、あまりにも細切れで簡潔な説明で、予備知識のほとんどない私には、結局何にも分からないままで得られるものが無かった。

個人的には読まなくていい本だった。最初から100頁まではきちんと読んでみたが、段々使えない本であることが明白になってきたので、後はさっと斜め読みで目は通したが、最後まで使えるところは無かった。

お薦めしない本です。
【目次】
序説 アレクサンドリア再訪
アレクサンドロス大王
プトレマイオス王家
デメトリオス
甦るアレクサンドリア図書館
幾何学者エウクレイデス(ユークリッド)
医学者カルケートンのヘロフィロス
歴史家マネトン
詩人テオクリトスとゼノドトス
詩人カリマコス
ムーセイオンと大図書館
天文学者アリスタルコスとアポロニオス
万能の天才学者エラトステネスと不世出の大天才アルキメデス
ファロス大灯台―世界最初の超高層ビル
「セプトゥアギンタ」(七十人訳聖書)
凋落の訪れ
・・・
知識の灯台―古代アレクサンドリア図書館の物語(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「アレクサンドリア図書館の謎」ルチャーノ・カンフォラ 工作舎
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2007年12月06日

「小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」日本編」小泉武夫 

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著者の小泉氏の本は何冊か読んでいるが、当たり外れがあるように思う。本書は私的には大いに当たりだった。

知っている食材や料理もたくさんあるが、同時に知らなかったものでこんなの美味しそうなものがたくさんあるなんて! いやあ~感激です!!

メモしておいて、全国を旅行した際には、探して是非Tryしてみようと思ったものが実にたくさんある。読んでいて、本当にお腹がすいたし、酒が飲みたくてしかたなくなった。

そんな誘惑する魔力のある本です。基本スタンスは、いつもと一緒。有名・無名を問わず、発酵という過程に関わる魅力的な食(食材・料理・調理法等)を次々に紹介していきます。著者が発酵学の専門家であり、日本の伝統的な食文化が発酵学や衛生学などの今日的観点から見ても、実に合理的でしかも美味しくなっていて素晴らしいかを教えてくれます。

私の嫌いな「おいしんぼ」などのように、必要以上に大仰しくなく、淡々とこれ美味しい、という視点が私の本書の好きなところです。

そして、実際に紹介されているのも私的にツボに入った美味しさで、自分の知っているモノなら、思い出してお腹がすくし、本書で知ったモノならば、食べたくてお腹がすくし、どちらにしてもお腹がすく本です(オイオイ)。

魚を食べ終わった後の骨に、塩などの調味料を少し振ってお湯をそそぎ、骨をしゃぶるように食べるというか飲む著者のやり方は、新潟の漁港近くに住み、魚屋さんの娘であって母が今でもそうしているのを見るので、やはりツウの食べ方なんだなあ~と思う。

お刺身やフライなど以外のお魚はあまり食べない私は、不肖の子なのでそういう食べ方をしたことがないのだが・・・やっぱり美食家になれないわけです。

あっ、でも塩辛は買ったものよりも自家製が一番好き! もっとも自分で作らず、作ったものを食べるだけだから、やっぱり駄目&駄目君かな、私?

著者は、塩分を濃いめにして1週間以上置いたほうがお好きなようだが、私的には一日置いて二日目以降のものが大好物。当日は、味がなじまず、単に塩辛いだけで美味しくない。二日目になると、味がまろやかになり、とげとげした塩味が嘘のように消えてくる。これが日本酒や焼酎のロックにいい。ああっ、おととい食べたばかりだけど・・・。

いろいろな話が書かれているが、ふむふむと勉強になることが実に多い。酒の話もあるし、調味料の話もある。ミシュランの本を買って喜ぶタイプの方には、お気に召さないかもしれないが、本当に美味しいものを食べる為なら何でもするような、真の意味で貪欲な『食いしん坊』なら楽しくてしかたのない本だと思います。

この本については、お薦めです。あえていうと、別に『世界遺産』とか便乗するようなことしなくても良かったのに・・・というとこぐらいです。まあ、編集サイドの企画だったんでしょうから、しかたないとは思いますけど、それ以外はOKです(笑顔)。
【目次】
「発酵」の遺産
 フグ卵巣の毒抜き
 酢茎
 大根漬け
 糠みそ
 豆腐よう
 甘酒
 種麹
 かんずり
 琵琶湖周辺の熟鮓
 アケビの熟鮓

「調理」の遺産
 日本粥と日本雑炊
 焼いて食べる漬け物(べん漬けとへしこ)
 早すし
 握り飯
 灰汁巻き
 『豆腐百珍』
 干し椎茸
 『卵百珍』と日本流鶏卵料理
 キリタンポ
 沖縄の「いらぶー汁」

「食材」の遺産
 蘇鉄味噌
 ドングリ味噌
 梅干
 オントゥレパカム
 ネドチ
 トンブリ
 花料理
 碁石茶
 柿渋
 唐墨
 宝漬け
 魚骨料理
 メフン
 うるか
 このわた
 イカの塩辛
 ホヤ料理
 海鼠子(くちこ)
 河豚料理
 黒焼き

「調味」の遺産
 七色遠辛子
 山葵
 山椒
 出汁
 鰹節
 カレールウ
 ジャパニーズ・ウースターソース

「保存・殺菌」の遺産
 火入れ
 灰による食料の保存法
 種馬鈴薯の殺菌法
 灰干しわかめ
 くさや
 凍み食
 干し納豆
 村上の「塩引き鮭」と北海道の「山漬け」

「教え」の遺産
 酒道
 茶道
 「会席」「懐石」と「精進」料理

「酒」の遺産
 泡盛の「仕次ぎ」
 粕取焼酎
 灰持酒
 吟醸酒
 燗酒
小泉教授が選ぶ「食の世界遺産」 日本編(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社
「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店
ラベル:
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「バカの壁」養老孟司 新潮社

すみません、私ってかなりバカかもしれません。
本書を読み終わっても、そもそも「バカの壁」が何かいまいち良く分かりません。

いろんな例は挙げられていて漠然とは分かるのですが、本書を通して著者が明確にこの言葉の定義をしている箇所が見つかりません。私的な理解では、受け手の基準次第で情報の取捨選択が行われているので意思疎通には目に見えない『壁』があるというふうに捉えたのですが、合っているのか不明です。

本書は一見するとかなり読み易いのですが、説明の仕方に戸惑いを覚えました。確かに世間でしばしば聞くようなフレーズ(「個性を伸ばせ」とか、「話せば分かる」)を何も考えずに肯定するのではなく、考え直してみようというのはアピール性はあるのですが、その説明には疑問が多いです。勿論、同意する部分も多いのですが、著者個人の立場による主張だけで決して一般化されるようなものではなく、それはそれでかなり偏っていることを強く感じます。

別に意見である以上、どんな主張もOKなのですが、それがあたかも世間の間違いをただす正論のような形で押し付けられているような記述が気になりました。

また、説明に際しての仮定であるにもかかわらず、いきなりその仮定が出てきて当然のようにその仮定に基づいた説明がされても『?』としか言えません。

例えば、脳内の一次方程式ですが、情報の入力に対してどういった出力が為されるか、経済学などでは普通「効用関数」として説明される内容だと思います。関数なら、まだ説明として分かるのですが、どうして一次方程式なのでしょう? 私には説明がしやすいから、便宜的に勝手に使っているとしか思えません。想定される読者の理解力からは、単純化しないと分からないだろうという配慮かもしれませんが、あまりにも唐突で粗雑で、はっきり言って適当な感じです。

他にも「平家物語」の「祇園精舎の・・・」のくだりの解釈ですが、本当に本書でいうような解釈(=人間は絶えず変わっている)でいいのでしょうか? その当時の人が、著者の言うような価値観を持って書いていたと何故、言えるのか私には不明です。他の部分でもしばしば見られますが、過去の有名な文言を自分の都合のいいように解釈する姿勢が多々見受けられます。

私が関心を持っていて、しばしば読む中世の図像等に関する本では、その当時の人々の常識・価値観を知らずに、後世の人々が自分の時代の価値観で誤って図像を解釈する危険性が指摘されていましたが、本書などはその典型に思えてなりません。

読者の分かり易さ(&受け易さ)を狙い過ぎて、なんか変な方向に行っている感じですが、著者の専門に関する話だけは興味深いです。

天才の反応というのは、神経細胞から神経細胞へのシナプス間の逐次的な伝達(A―>B―>C―>D)ではなく、間を飛ばした特別な伝達(A―>D)ではないか、というのは大変勉強になりました。

著者の専門だけの本だったら、面白かったのですが、そこを離れて専門外への適用になると途端に、短慮な提案や思い付きだけになってしまい、どこぞの評論家と変わらなくなってしまいます。う~ん、残念です。

後はビジネス書などで嫌というほど言い古された言葉、『行動』(著者の言葉では『身体』)が大切ってやつですね。これは確かに真理でしょうが、ビジネス書の方がしっかり分析し、それをいかに応用するか、方法論で確実に長けています。

ベスト・セラーになった理由は、やはり常識を否定した目新しさだけでしょうか? もし著者が東大や北里大の医学部の教授であった経歴がなかったら、誰も読むまでもない本だった気がしてなりません。

個人的には、もっときちんとした科学的な本を読むべきだったなあ~と思いました。
【目次】
第一章「バカの壁」とは何か
第二章脳の中の係数
第三章「個性を伸ばせ」という欺瞞
第四章万物流転、情報不変
第五章無意識・身体・共同体
第六章バカの脳
第七章教育の怪しさ
第八章一元論を超えて
バカの壁(amazonリンク)
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2007年12月05日

「本屋の眼」平野義昌 みずのわ出版

本屋さんの話かなあ~と図書館にあったので中身をあまり確かめずに借りた本です。15~20分で読めるでしょう。

著者もあくまでも手すさびで書きなぐりと、ちゃんと書かれていたのでいいのではないでしょうか? 一応、本屋さんだろうとは分かるものの、内容は特に本屋さんとは関係あってもなくても変わらないような感じです。

文章から察するに人としては、嫌いにはなれないタイプでしょうが、お金を出して買うまでの本ではないでしょう。直接の知り合い以外はちょっと買えないな。

でも、まあ、そんなに嫌いではない。天声人語よりは、いいかも?

小学生、中学生と天声人語読んでたが、あまりにもパターン化した姿に呆れてしまい、高校生以降読んだ覚えがありませんけど。

まあ、人生は楽しく生きた者勝ちかな?そんなふうに思った本でした。

本屋の眼(amazonリンク)
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2007年12月04日

「ネット君臨」毎日新聞取材班 毎日新聞社

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読む前から、新聞社が書いたネット社会批判(そういって語弊があるなら、『ネット社会への警鐘』、とかと書くと綺麗に聞こえる?・・・冷笑)の本かなあ~と思っていて軽く眺めてみたら、最初から最後まで想像通りの絵に書いたような内容の本でした。

新聞社だけではなく、TVも含めて既存のメディアに対しての不満が人々の間にだいぶ以前から溜まっていてそれが現在、ネットという環境を得て顕在化しているといった自らの問題点には一切触れず、あくまでもネットがもたらした負の側面だけをピックアップした論調には、今更ながら笑止と言わざるを得ない!

いつの時代にも新技術がもたらす負の側面は存在したし、本書に書かれている問題は、ネットの当初からさんざん議論されていた点で全然独自の視点がなく、既存の議論の焼き直しでしかない。

申し訳ないが本書内でコピペの弊害を語る本書自身が、私の目には同様に映るのだが・・・。ただ&ただ、こういった問題があるんですと言うだけで、それではどうしたらそれらが防げるのか、取材班自身の建設的な提案がほとんど無いのもいつもの通り。

それらしいその筋の人に、もっともらしい意見を聞いて、規制しろとか教育しろとか、何それ?って、感じで呆れ果てて涙が出てくる。これってどう考えても責任逃れじゃないの? 

メディアは欠点をあげつらうが、決して解決策を提示することもなく、気紛れに騒ぐだけでまさに本書が問題視している『祭り』を従来行ってきた自分達の行動を一切鑑みることはしないようだ。

ネットによって、社会が確実に良くなった点も多々有り、悪くなった点も多々ある。犯罪を取り締まるのは、大賛成だが、規制すれば良いという安易な考えが理解できない? 規制すれば、地下に潜るだけでしょう。

そもそもメディアは自らを擁護する時は、言論の自由を声高に叫ぶが自由には責任が伴うはず、責任をとってるとこ見たことないけどね。頻繁に見られる誤報道をしたメディアや悪意による捏造したメディアは何故、つぶれずに存続しているのだろう??? しかも社主が世襲だったりするしね(爆笑)。

規制をしたら、絶対に抜け道を探すのが普通だし、それらは次々に出てきます。ネット利用に実名登録制とか、児童ポルノ所持だけ有罪とか、別に規制してもいいんですけど、それを規制するだけ法的な違法性の根拠がちっとも明示されていないのが不思議。特に児童ポルノなどの規制自体はもっと強くてしかるべきだが、所持だけで有罪とする根拠なんかあるの? 

単純に感情論だけで適当なこと言うから、『ジャ-ナリスティック』な議論は、まともな人達から冷笑ではなく、失笑されてしまうのになあ~。その辺りのこと、ご存知ないのでしょうか?

私が学生の時は、よく先生方に言われたものです。

「新聞やテレビのようなジャ-ナリスティックな物の見方だけはするんじゃないぞ!」って。
「彼らは何も知らべもせずに、知ったかぶりしたうえに誤ったままで大衆を感情的にミスリードする社会の必要悪だし、君たちは自ら調べて自分で判断しなさいって」。

あとね、言いたくないけど、議論の持っていきかたが読者の感情に訴えかけるやり方で非常にいやらしい。例えば、難病児募金の件なども挙がっているが、確かに善意でやっている人達がネットによる噂で困っている姿を知れば、どんな人でもネットが悪いと感じるし、現代の問題と感じるだろう。私だって、可哀想だと思うし、ひどいと思う。

しかし、本来問題とすべきは個々の事例の感情論ではなく、事実かどうかの確認が無いまま噂が一人歩きし、それが人を傷付ける可能性があるということだと思う。「ジャ-ナリスティック」な視点は、極力大衆の感情論に訴え、冷静な議論をしないのが特徴であり、本書もそれを地でいってるように感じられてならない。

こんな記事で、あれこれ言われてもねぇ~。

申し訳ないけど、こんな記事書く前に強引に新聞をとらせようとするおたくの新聞勧誘員の方をなんとかしたらと言いたい。一人暮らしをしていると、きっと誰でも思い当たると思いますが、ヤクザのチンピラのようなのがしつこく夜中や休日に勧誘に来ます。3ヶ月といいながら、半年の契約だと嘘言うので、証拠を取っておいて販売所に文句言ったこともある。

洗剤やしょうもないチケットを置いていったので、翌日返してやったが、特に読売新聞はヒドイので有名。本書は毎日新聞だけどね。こういう自分の問題をクリアにしてからでしょ、他人の批判は。

この手の問題も昔からあるが、自分達にとって不都合な話題は決していわないんだよね、メディアって。だから、嫌いなんだけど。

久しぶりに話題がそれまくってますが、ネットの功罪を検討することもなく、マイナス面だけ羅列してあえて目を背けがちなネット問題に脚光を浴びせたとか本音で思っていたら、黙って失笑するしかないでしょうね。

メディアが既得権益にしがみついている以上、言論の自由は弊害があっても、むしろより自由な場に晒した方が好ましいと思う。犯罪につながるような場合は、後で個人が特定できるようにするのも悪くないと思うが、原則は匿名であるからこそ、自由に発言できるのもまた真実だと思う。

本書内で、ネット上で発言する人にいちいち実名を出さないかと聞いているが、馬鹿馬鹿しい話だ。ネット上で実名を出している人は、ビジネス上で利用する為など明確な意図がある場合か、単純にセキュリティー意識に欠けて無知である場合がほとんどだろう。

例えば、ある組織内の不正に関する告発的なものに、実名などかけるはずがない。マスコミはしばしば情報源の秘匿を主張するが、彼らにとって都合の良い場合だけは秘密なのかあ~とつくづくその身勝手さには呆れるばかりだ。

新聞記者が実名で書くのと、ブログやサイト、掲示板で投稿者が実名で書くのを同様に捉える方がよほどおかしいと思うだけど・・・? 投稿してお金がもらえる訳ではないだろうし。

久しぶりに、かなりいらつかされた本だったけど、大変勉強になったことも一つありました。韓国のネット事情。韓国のネット環境が凄いは、有名だし、熱狂しやすい国民性も知っていましたが(一緒に仕事していたことあるしね)、ネットの意見がこれほど現実社会(政治等)に影響を及ぼしているとは知りませんでした。へえ~、ここまでの影響力は思いもしませんでした。

日本のネットもそういった意味での社会的影響力は、もっとあってもいいように思います。日本では、誰からも批判されずに存在している特殊な『マスメディア』という権力がありますが、これを抑制する意味でももっとネットが影響力を持つべきでしょう。

と、同時に誰もが参加できるだけに、自分で考えながら行動しないと今度は、自分が直接的に踊らされることになる危険性がありますけどね。所詮、権力はそれぞれが掣肘しあってこそのバランスなんでしょう。効率は一番悪いんだけどね、本当は。でも、しかたないでしょう。
【目次】
第一章失われていくもの
第二章IT立国の底流
第三章近未来の風景
第四章私の提言
第五章ネットからの反響
ネット君臨(amazonリンク)
ラベル:書評 新聞 ネット
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2007年12月02日

「超図解 竹内文書」高坂和導 徳間書店

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古史古伝の一つであり、青森の戸来村にある『イエスの墓』が書かれていた情報ソースとしても有名な「竹内文書」に関する本です。

BBCの記事で青森の「イエスの墓」が採り上げられたり、最近では、インドのカシミール地方にも「イエスの墓」があっとか・・・映画までできるそうだし・・・。ずっと気になっていたのでもう少し詳しいことを知りたいと思い、本書を読んでみました。

読んでみて、本当に唖然とします。目次を見れば分かりますが、かなりというか、行き着くとこまでいってしまってますねこの内容。世界は天皇の下に一つでまとまり、天皇が世界を統治していたとか、世界中の聖人が日本で修行してたとか・・・。空飛ぶ飛行船や宇宙船、ムー大陸にしまいには宇宙人までアリ。完全に雑誌『ムー』の世界以外のなにものでもありません。

個々に突っ込みを入れたら無数に突っ込み所があり過ぎて、キリがないのでさすがに今回は、もうそういうのはナシにしておきます。

とにかく面白いところだけ、後ほど抜き書きしておきますね。しかし、本書のような本を出版するところはどこだろうと思ってたら、徳間書店でした。最初は、あまりに『ムー』的なノリに学研かと思いましたが、徳間もこういうの好きだもんねぇ~。

しかし、不敬罪にならないんだろうか? こんな裁判を持ち込まれた裁判所もさぞかし困惑したことでしょう。判例とか読んでみたいかも?

まあ、それはおいといてイエス・キリスト絡みのところに重点を置いてみました。
山根キク「光は東方より」昭和13年。

 山根の竹内文書研究によれば、イエスは神倭十台、祟神天皇の即位六十一年の一月五日、父ヨセフを母マリアの長男として、エルサレムの郊外ベツレヘムで生まれている。その後、ヘロデ王の幼児虐殺から逃れるため、一時エジプトへ行くが、しばらくの後ユダヤに戻り、ナゼレに定住する。十二歳のとき、エルサレムの神殿で司祭たちと議論して勝ったほどの天才であったことは、聖書などでよく知られている。

 その後、日本を目差して旅に出る。途中、釈迦の師であるといわれているカララ仙人の子孫に日本への道を尋ねたりしながら、ついに日本の能登、宝達港に上陸するのである。イエス十八歳、垂仁天皇即位十年のことであった。

 イエスの最初の日本滞在は、足かけ五年にわたる。その間イエスは皇祖高太神宮の神主、武雄心親王(たけおごころしんのう)の弟子となり、さまざまな修行を積むことになる。そして、天皇からユダヤの王の紋章を賜り、ユダヤの人々に道を説くために帰国するのである。帰国後、イエスは迫害に遭い、危うく十字架にかけられるところ、弟イスキリが自ら身代わりとなって、イエス自身は難を逃れる。

 その後、世界中をまわり、再び来日、百十八歳の天寿をまっとうするまで日本を基点として過ごすのである。
イエスの行った数々の奇蹟は神の力の表れではなく、皇祖高太神宮で厳しい修行を積んだ成果だそうで、山根キクの著書「キリストは日本で死んでいた」(たま出版)から引用している。

「彼は五十有余の神業の内、二十位までの奇蹟は行い得るようになっていた。病気平癒の術などはほんの初手の神業で、姿を隠す術、一丈以上もある高木への飛び上がり、飛び降り、更に海や川の上に竹竿を投げ、それを伝って水面を歩くこと、又空中を歩くこと、今一つは、室内や地を清める術事に、ローソクに火をともして、手の掌にたまるローソクのローを少しも熱さを感ぜず、火傷もせずに、室内を廻る術をした。」
著者は忍者のような特訓と書いていましたが、すごいですね。奇蹟は努力と訓練の賜物だったというわけです。
イエスがこの世を去ったのは、景行天皇即位十八年、十二月二十五日のことであった。享年百十八歳、苦難と光輝に満ちた人生であった。イエスの遺体は遺言により、戸来岳で風葬に処し、白骨化したものを死後四年経った後に埋葬している。イエスの遺言を守り、この一連の作業を行ったのは、イエスの弟子のうちの金笠太郎天空坊と大平太郎天空坊のふたりであったという。このふたりは、イエスの信頼が特に篤かったものとみえ、遺言書の中でイエス自身が指名し、自分の死後の事を頼んでいるのである。
なんかチベット仏教みたいですね。天に昇ったはずのイエス様を風葬なんですね。不思議?
イエスの遺言書は、昭和六年に竹内家の秘蔵品の中から見つかったものである。内容はイエスの生涯を綴ったものであった。原文はイエスがタメマキ文字をもとに作ったと思われるイスキリス文字で書かれていたが、発見当時には、平群真鳥の漢字カナ混じりの訳がすでについていた。
そして、そこに書かれたいた『イエスの遺言』の内容ですが、以下の通りだそうです。

takeuti1.jpg

takeuti2.jpg

最後に、うちのブログを見ている方なら、当然誤解されるはずもないでしょうが、一応書いておきます。本書の内容は単純にネタとして面白いだけで私は一切信用してないし、そもそも議論するまでもなく、フィクションです。本書内の説明は全く説得力ありませんし、アナロジーと論理の飛躍だけでこの内容が真実であると言われても全くナンセンスでしょう。

たま~に、こういうのを採り上げると曲解や誤解される方がいらっしゃるので念の為。
【目次】
第一章 人類の正史「竹内文書」
 竹内文書とは
 竹内文書公開を巡る波紋

第二章 人類の祖先は宇宙からやってきた
 開かずの壺に秘蔵されていたもの
 天神七代の記録「創世記」
 神々が選びし国日本
 謎の金属ヒヒイロカネは地球外金属だ
 天孫降臨の神勅と世界天皇の統治
 日本を中心に世界を十六方位に区分
 五色人の誕生~すべては日本から始まった

第三章 神代に超古代文明が存在した
 天空浮船は何種類もあった
 世界各地の遺跡・遺物が天空浮船の存在を証明
 天皇の万国巡幸と天空浮船
 ワラビテの表すもの
 天空浮船のスピードが二種類書かれていた理由
 ハダマが象徴するもの
 飛行場の地理的条件

第四章 古代ピラミッドの謎
 ピラミッド文明圏は地球規模で広がっていた
 ピラミッドは日本で誕生した

第五章 古代文明興亡の歴史
 超古代文明は天変地異で何度も滅んでいた
 失われた大陸を求めて
 なぜ天変地異は起るのか
 古代人の寿命の謎
 人類の想念が天変地異から地球を守る
 竹内家に伝わる長寿の秘茶

第六章 世界の聖人は皆日本で学んだ
 竹内文書に見る聖人来日記録
 モーゼの来日
 モーゼの足跡

第七章 イエス・キリストの謎
 イエスの来日
 イエス再び日本へ
 イエスの遺言

付録・年表
超図解 竹内文書―地球3000億年の記憶(amazonリンク)

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「危険な歴史書「古史古伝」」新人物往来社
日本のイエスの足跡(BBCのイエスの墓の記事による)
「キリストの墓」発見か――「妻」マグダラのマリアと息子も?
エルサレムで発見された「イエスの墓」
「キリストの棺」シンハ・ヤコボビッチ/チャールズ・ペルグリーノ(著)、ジェームズ・キャメロン(編集) イースト・プレス
イエスの兄弟の石棺は偽物 CBSニュースより
これから読んでみたい本―「The Rozabal Line」
ハリウッドがアクションヒーローのイエスをインドへ連れて行く
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2007年10月26日

「ニコラ・フラメル 錬金術師伝説」ナイジェル ウィルキンズ 白水社

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錬金術師として有名なニコラ・フラメルの本ということで、内容を確認せずにとりあえず読み始めた本です。(実は最初、フルカネッリと混同していて時代が合わず、読んでいてパニクりそうになった馬鹿な私です)

それはおいといて。
錬金術師としてのエピソードが書かれた本かなと思ったら、予想と全然異なり、歴史上の実在の人物としてあるがままの姿を当時の公文書等の文献から、検証して再現していこうという趣旨の本でした。

書いているのは学者さんだそうです。

それ以上に、驚いたのはニコラ・フラメルの資料ってちゃんとしたものがずいぶんと残っているんですね。中世の伝説上の人物で資料なんてなんにも無いのだろうと完全に誤解してました私。

写字生兼書籍販売業者として、成功した裕福な市民であり、華麗な時祷書で有名なベリー公ともお知り合いで、本を納品したりしていたまさにそこそこ大物だった実在の人物なんだそうです。

いやあ~驚きですね。20世紀のフルカネッリが全く謎の人物なのに、中世の人物であるフラメルの方がはるかに資料が揃っているとは、盲点でした。

勿論、本書は何故の一般市民であったニコラ・フラメルが錬金術師と看做されるようになったかまでを含めて考察されているのですが、正直それほど面白くはない。

俗物の私としては、むしろ錬金術師としてのエピソードの方が、ファンタジーになって嬉しかったのですが・・・ちょっと残念かも? 

面白い本ではないですが、知らない事がたくさん書かれていました。読んでいて辛くなってきたので、関心事のみ丁寧に読み、後は流し読みしましたが、いわゆる『錬金術』に関心のある人向けではない本かもしれませんね。どちらかというと、歴史の本になっています。
【目次】
第1章 パリ
第2章 ニコラとペルネル
第3章 奥義とアーケード
第4章 写本―ふたりのフラメル
第5章 黄金
第6章 錬金術
第7章 著作
第8章 偽書と偽作者―アルノー・ド・ラ・シュヴァルリー
第9章 伝説
ニコラ・フラメル 錬金術師伝説(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」吉田光邦 中央公論社
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」沢井繁男 講談社
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「The legend of the Golem」
posted by alice-room at 22:06| 埼玉 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする

2007年10月04日

「生協の白石さん」白石昌則 講談社

話題になっていた当初、読もうか否か悩んでいたけど、ひぬくれ者としてはブームが終わってからにしようと思って読まずにいた本です。

あの時は、あんなにも読んでみたかったのに今読むと、かなり、寂しい感じがします。当時も、生協の一職員として淡々と対応されていたらしい姿には、大変好感を持っておりましたが、本としてしまうと、正直あまり面白くありません。私的にはですが。

たぶん、ネット上の口コミで話題になってたものを見たり、直接掲示板を見たら、面白かったのでしょうけど、ブーム後に読むには辛い本です。

ただ、本来、受け狙いで書かれたものではなくて、通常の職務としてかかれていたことを考えると、著者の誠実の人柄が伺えますし、微笑ましいです。

でもねぇ~、これを本で読む気にはならない。著者ご自身が書かれているように、どこか勝手な盛り上がりで話題の『使い捨て』になってしまっているようでかえって残念な気がしてしまう。

もっとも著者は、異常な状態が終わってほっとされていらっしゃるかもしれませんね。出版社は商売上手と思う一方、やっぱりいろいろな意味で違和感を覚えてしまったりする・・・。

ある種のタレント本のような一抹の寂寥感を覚えてしまうのが悲しい。

生協の白石さん(amazonリンク)
ラベル:書評
posted by alice-room at 00:27| 埼玉 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 未分類A】 | 更新情報をチェックする

2007年09月12日

「色街を呑む!」勝谷誠彦 祥伝社

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昭和の古き良き時代、レトロ感漂う色街の美味しい酒場の紹介かと思うと、さにあらず。単なる場末で、一杯千円以上(場合によってはそれ以上のぼったくり料金)のまずくて最悪の酒を、ありあわせの酒の肴で飲んでるだけの話です。

場所が色街だから、艶っぽい話があるのかというと、中途半端に分かったようなことばかりの話でどうにも読んでいてムカツク。妙に達観したような著者の距離感がイライラします。

酒か、女か、街の風情か、どれかに絞って書けばいいものを本当に適当に書いています。しかもそのどれもが中途半端。読んでいる私が泣けてきますよ(号泣)。

もっともその適当さが味わいになるような文章なら良いのでですが、文章も小学生の作文並みでかなり苦痛。枯れた文章というか、著書の感性が枯渇して、文章が死んでいるとしか感じられません。

ああいう場所に行けば、地味だけど、ぐっと心にくるような出来事や話があるはずだし、人が生きていく事の悲哀というか何とも言えない情感があるものですが、本書ではそれが全く感じられない。

取材場所の選定もいい加減なら、下調べもおざなりで呆れるばかり。タクシーの運ちゃんに場所を聞くなんて、当たり前過ぎてバカかと思う。あんなの馴染みの店に紹介してキックバックもらうだけジャン! ご当人が分かってるだろうに・・・つくづくやる気が無い、というか色街を語る資格がないんじゃないでしょうか。

申し訳ないが、三流のエロ雑誌の風俗街探検記事の方が、はるかに面白い!! トコトン俗ではあっても、少なくとも庶民の側に徹しきった潔さがかえって心地良い。地元の街並みや人々の描写は、本書よりもはるかに優れたものさえ(たまに)ある。

どこかで自己を卑下しながら、それでも薄っぺらなプライドを持って文章を書いているのが行間から滲み出て、読んでいても心が寂しくなる。

ただ、風俗街に行って酒場を探して飲んで、やっつけで記事書き、経費で落としている姿が目に浮かぶようだ。酒が好きだといいながら、適当な酒を飲んでる人間は、『酒』ではなくて『酔う』ことが、あるいは『酔っている自分』が好きなんじゃないの?って思う。

メニュー自体はありきたりでもちゃんとした物を出す店は、いくらでもあるし、そういう店を色街で探し出すのがプロだと思うんだけど・・・。

とにかく話の水準が低過ぎる。これ以上の話なんて、いくらでも知っているし、聞いてます。海外で一人旅してりゃ、誰だっていろんな目に合うもんだし。国内だって、注意していれば、もっと&もっとdeepな話があるはずなのに・・・。

これ系の本も何十冊も読んでる私としては(そんなに読むなよ~(自爆)、憤りを覚えるぐらい否定したくなる本です。人が生きていくのって、本当に&本当に大変なんだけどね。だからこそ、刹那的に陽気になることが大切なんだけど・・・。泥をかぶってまでその域に落ちる覚悟を感じません。どっからどこまでも傍観者的でイヤ!

虚飾に満ちた薄っぺらな紹介記事です。著者が情熱を持っていない本は、どんな分野であろうと無価値です。本書はそれに該当するように感じられてなりません。

そうそう、三重県のA島。いわゆる『女護が島』のことでしょう。もうちょっと歴史にも触れろよ~。情報源としても使い道がなく、本書は即刻、売り飛ばす予定。
【目次】
和歌山・天王新地の巻―やり手婆がとつぜん突き出したもの
黄金町&堀之内の巻―桃色の蛍光灯の下、女たちの目線の強さ
町田・田んぼの巻―肌を剥き出した少女と気だるい女を隔てたのは?
高知・玉水町の巻―古びた旅館の二階からこぼれ出たもの
京都・五条楽園の巻―一見をこばむ闇のむこう
大阪・飛田新地の巻―美少女たちの化粧や髪型の謎
釧路&札幌の巻―滅びゆく色街の残影
青森・第三新興街の巻―猥褻語溢れる、連絡船の遺した祝祭
宮崎・上野町の巻―あの球団選手も遊んだかもしれぬ色街
広島県・福山の巻―チンチン村のパツ屋
群馬県・太田の巻―いかなる街の風俗地帯にもないセンス
金沢の巻―古都の隠れたもう一つの顔
松山・ネオン坂の巻―漱石の描いた郭を発見!
フィリピン・マニラの巻―オカマで有名だった通りの今
福島県・小名浜の巻―港町に遺された、僅かな遊郭の風情
ソウル・弥阿里&涼里の巻―生きている色街の生臭さ
西川口の巻―西川口のお膝元
三重県・A島の巻―数百年の聖域

解説 麻木久仁子
色街を呑む!―日本列島レトロ紀行 (祥伝社文庫)(amazonリンク)

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「性風土記 」藤林 貞雄 岩崎美術社
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2007年08月13日

「房中秘記」土屋英明 徳間書店

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中国の古典にして、表に出せない艶本の短編集です。率直に言って、エロ本の読み物や官能小説みたいなもんです(すみません、学がないもんでみもふたもない表現で・・・)。

でも、本国である中国で原本を失ってしまい、今は日本に残るのみ、な~んてものもあったりして興味深いです。先日読んだ禁書の時に、低俗だから焼かれてしまったのかもしれませんね。ふむふむ。

表現は露骨ながら、読み口はさらりとしていて軽く読めてしまいます。実際、私が持っている中国のこの手の好色関係の本って、どぎついものが多くて(大陸ならではのノリですもん!)それらと比べたら、実におとなしいもんです。

それにしても『肉具』やら『牝口』とか、なんだかなあ~官能小説以外の何物でもないような猥褻っぽい漢字が頻出します(笑)。

まあ、それはおいておくとしても、息抜きにこうした古典を読むのもいいでしょう。フランス書院よりも面白いかもしれない?(比較するなって!)。

ただ、紅楼夢や金瓶梅のような傑作と比べると、チャライです。毒っ気がないので、和み系H話といったところです。その代わり、悪名高き則天武后が若い男にうつつを抜かす姿は、人間の業の深さを痛感させます。老いて益々盛ん也。っていうのは、こういうことでしょうか?

志怪小説の合間にこういうのもいいでしょう♪
【目次】
痴婆子伝―好色一代女
控鶴監秘記
則天武后如意君伝
春臠折甲
春夢瑣言
房中秘記―中国古典性奇談(amazonリンク)

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2007年08月05日

「女盗賊プーラン」上・下 プーラン デヴィ 草思社

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インドの下層カーストに属した少女が、小説の世界でしか有り得ない様な虐待と苦難を乗り越え、盗賊に誘拐された後、自ら盗賊団の首領となって、弱者を搾取する金持ちや女子供をレイプすることさえ自らの権利と信じて疑わない上級カーストの者達に制裁を加えていく。あまつさえ、盗んだ金を人々に配る姿は鼠小僧のようだが、現実は冷酷であり、正直救いようがない。

但し、彼女は自ら自首して刑に服した後、民衆からの圧倒的支持のもと、立候補して国家議員にまでなったが、まさについこないだ暗殺されている。それが歴史的事実そのものである。

日本にいると、気付かないで済んでしまうのだが、この手の話は世界中にリアルに存在している。私の学生時代の知り合いで某国の大農場主の跡取り息子は、12、13歳の時に召使の女性で最初の体験をしたそうだし、自分はそんなところにはいかないが行っていたが、鉄格子に繋がれた女性(十代前半の子供)を数百円で売る売春宿もあると言っていた。

少し前のCNNか何かのTV番組でも、内線のアフリカ某国で村にいる全ての女性は、村の実力者の妻(性奴隷)であり、10歳ちょっとで妊娠させられ、子供の世話をしながら、炊事洗濯、農場労働など奴隷の如く働かされているのをレポートしていた。

本書の中でも出てくるが、警察や司法当局が貧者の見方をして公正だというのは、いつの時代を通しても絵空事でしかない。どうにもならない虚しさ・悲しさを痛感する。警察が賄賂や政治的思惑次第で、権力を無実の人に向け、容疑者を拷問・監禁・乱暴するのは世の常なのだろうか?

タイの警察なんかも、このノリだったもんなあ~。詐欺連中から袖の下もらっていて、捕まえる気なんてありはしないし。ブラジルでは、殺人以外なら、金さえ出せば全て解決できると言っていた人が普通にいたもんね。その場にいた人達が、普通にそれを肯定する姿が目に焼きついて忘れられません。

まあ、ちっぽけな私の経験や知識でも、本書に書かれている直視しがたい現実の姿には、胸が苦しくてやり切れなくなるが、同時に誰も助けてくれないんだなあ~と改めて思った。しばしば日本の学校教育では、みんなと一緒にあわせること、自己を主張しないことを美徳のように教えるが、そういう人々は絶対にこの悲劇の少女プーランを助けはしないだろう。

少し前に特急か新幹線の中で、乗客の少女が乱暴され、周りの乗客が誰も助けなかったらしいが、同じ事でしょう。この人達は、環境さえ同じなら、いくらでも人を見殺しにするんだろうね。

人間が生まれたそのままで、自由であり、権利があるなんてのは、幻想以外の何物でもない! 自らが意識し、学び、戦略的に行動して初めて獲得される政治上の妥協点でしかないのもかもしれません『権利』とか『自由』という存在は。

学生時代も社会に対する矛盾感や偽善的な仕組みに嫌悪して、法律を学んだけど、結論は自らルールを知って、自らを守ることでしたしねぇ~。

子供の頃から、『性悪説』を採用してきた私としては、法家の思想に共感を覚えるのも故無き事かと。もっとも、そっからアナーキストみたいな人達にならなかったのは、周りに人間的に素晴らしい人や教師がいたからね。悪い奴98%でいい奴2%ぐらいに思ってたもん、以前は。(今は、いい奴10%ぐらいに増えたかな?)

しかし、本書の中の主人公は、裏切りにつぐ裏切りにあいます。誰もが自らの保身と金の為に、裏切っていく姿勢は決して、特殊なものではありません。普遍的な人間の姿です。そこが更に悲しいです。

道徳の教科書を学校で読ませるよりも、この手の本を読ませたらいいのに。夏休みの課題の図書でもいいと思いますよ。そしたら、日本の未来も変わるかも? 年金を自分のお金として使い込む社保庁の職員を懲戒免職にして退職金の支払いを停止し、使い込んだ分を民事で返金させたうえ、刑事事件で横領罪に問う、民間なら当たり前ですけどね。それをしない政府を許してしまう日本人には育たないかもしれません。

本筋からそれてしまいましたが、いろんな意味で本書は人間の、そして人間社会の縮図です。人は相手が無知であることを知れば、徹底的にそれを利用するのです。その辺は「なにわ金融道」を見るとよっく分かります。無知を誇る風潮さえある、今の日本って、どうなんでしょうねぇ~。知らない事を恥じる必要はないでしょうが、知らない状態を放置する、怠惰な人間性は恥ずべきことだと思うのですけどね。(うわあ~、説教じみて我ながら愚痴っぽいですね、やめときます)。

とにかく本書を読むと、いろんな意味で衝撃を受けると共に、人間である事が悲しくなります。と同時に、たまたま日本にいるという幸運だけの違いであり、環境によっては同じ事をしそうな人達がたくさんいることを考えると、嫌悪感に苛まれます。気持ち悪いです。

それに対して、何にもできない無力感が輪をかけてしまいそうですが、いい人もいるんですよねぇ~。本書にも数は少ないのですが、自らの命と引き換えに主人公を助ける人さえ、出てきます。

悲しいんですよ。悪い人ばかり生き残って、善人が先に苦しんで死んでいくのって。どうしても感情が高ぶって冷静さを失いかねないですが、綺麗事の話ではなく、社会を少しでも良くしたいですね。何からすればいいのか、ちょっと途方にくれますが。

べたなやり方ですが、悪には厳罰を処すのも大切でしょう。どこかの国にもいますが、死刑囚の刑の執行に署名しない法務大臣なんて、国辱物の日和見主義者でしかないね。法を執行しない法務大臣、法治国家ではない。

まあ、どうしても脱線する話ばかりになってしまいますが、心ある人なら、何かしら思うか、感じるかしないではいられない本だと思います。『自由』を、そして『権利』を求めた人々。天安門で轢き殺された人々は、国家から無知であること強要されていたのでしょうね。(ますます、うちのブログは中国からブロックされそう・・・)

注】本書はフランスで出版された本が、英語に翻訳され、英語本を底本にして日本語になっています。その意味で内容がどこまで正確か、疑問です。というのは、私の友人は英語でこの本を読みましたが、印象がだいぶ違っています。単純に読む人によって異なるだけかもしれませんが、訳の問題による可能性もあるので付記しておきます。

女盗賊プーラン〈上巻〉(amazonリンク)
女盗賊プーラン〈下巻〉(amazonリンク)
ラベル:女盗賊 書評 実話
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2007年07月30日

「カーマ・スートラ」ヴァーツヤーヤナ(著)、大場正史(訳) 角川文庫

この本は正直、あんまり面白くない。ご存知のように本来のカーマ・スートラは、性愛のみに限定されることなく、より幅広い人間活動のほぼ全てを対象に、いかにして人は生きるべきかという人生哲学、あるいは世界の理(ことわり)を理解する為の指針を示すような深い示唆に富んだ書物である。また、同時に実践の書でもあるのが特徴でしょう。

本書は、非常に大部なカーマ・スートラの要約版の要約版の翻訳、そんなレベルのもので目次を見れば分かるが、性愛のみに限定されていて本来の作品の素晴らしさには全然及ばないと思われます。

以前、別な本でもカーマ・スートラについて読んだことがあるが、それも一部の抄訳ではあるものの、本書よりももっと哲学的で興味深かった記憶がある。

勿論、本書も単純な HOW TO SEX ものではないが、どうも薄っぺらい感じがしてしかたがない。期待外れでした。ちょっとだけ面白かったのは娼婦の部分かな?

いかにして娼婦の目的である、金銭的利益を獲得するか、この部分は極めて合目的で実践的な記述がされていますが、おそらく現代のお水系の商売の方には、未だに通用しそうな内容でした(笑顔)。

まあ、理念だけでなく実践の書であるのは、カーマ・スートラの特徴ですが、完全版の方を読んでみたいなあ~。なかなかチャンレンジする気になれないのですが・・・。

他にも市販されている同様な本も、いまいちつまらなそう。翻訳者が自分勝手に取捨選択して、その人の思い込みによる作品にしてしまっていそう。ちゃんとした作品が読みたいもんです。となると、東洋文庫かな?
【目次】
第一部 ヴァーツヤーヤナ・スートラ
第二部 性的結合について
第三部 妻の獲得について
第四部 妻について
第五部 他人の妻について
第六部 娼婦について
第七部 人を惹きつける法について
カーマ・スートラ(amazonリンク)

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「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
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2007年07月14日

「東京の下層社会」紀田順一郎 筑摩書房

最近、『下流社会』やら何やらと世間を賑わすタイトルの本が売れていたりするが、ざっと眺めてみた限りでは、はなはだ薄っぺらな現象面の認識ともっともらしい説明がついていて単純に社会不安と危機意識のみを煽るだけの世迷言としか思えない。

人間が営む社会は、確かに時代により変化はすれども、本質的には変わらない面も多岐に渡る。歴史を学ぶ意義は、まずその変わらない点と変わる点を学ぶところにあると私は思うのだが、その意味で本書は大変興味深い。たかだか100年やそこらで日本が変わったと思うか、変わっていないと思うか、読む人によってずいぶんと変わってくることだろう。

ミートホープの事件や中国で作られたダンボールと肉を6対4の比率で混ぜた加工食品、下水溝から生成した油をつかったインスタントラーメンなどなど、世界という点で見れば、何一つ変わっていないと言えるかもしれない。本書には、陸軍や海軍から出た残飯が非常に栄養価が高い故、引く手あまたで払い下げられ、スラムに住む細民の大切な食料となっていた姿が生々しいルポの記事として紹介されている。いろんな物が混ざり合い、夏の暑さですえて腐りかけ、異臭を放つ残飯に群れ集う人々、それが近代国家たる日本の姿だったらしい。

私が以前読んだ東南アジアの紀行文には、やはり上流階級の人々が食べ残した残飯を集め、吸殻やらゴミやらくずやらがまぜこぜになったものを屋台で下層民に販売する姿が書かれていたが、決してそれは他人事ではなかったことが分かる。時間の経過により、腐敗する段階にあわせて残飯の値段が下がっていくのも、リアル過ぎて苦しくなる話だが、それでもそれを買って食べられる人々はまだ幸せだというのが、現実らしい。

また、日本では軍の施設に繋がる下水溝で一斗缶をかまえて米粒などが流れてくるのを待っているという話もあった。そうして集められた米粒は養鶏場などに売られたらしい。その他、残飯でも売れ残ればそれを乾かしたうえで、菓子問屋に卸す。そしておこしや大福餅の原料として相当の値段で売られていたそうだ。

こういった話を本書では、かの紀田氏が丹念に文献資料を集めて二次資料によるものではあるが、適宜引用しながら、解説を加えている。

本書は食にとどまらず、あたかも現代の漫画喫茶難民のような定住するところを持たない人々の木賃宿や長屋住居などにも詳しい。不衛生の限度を超えた寝具に、まさに気絶せんばかりの悪臭・異臭に加えて蚤・虱・蚊が押し寄せる有様。読んでいるだけど、背筋がぞわぞわしてきて吐き気がこみ上げそうになるのですが、それでも野宿よりもマシだという話が切ない。

「西行も三日露宿すればそぞろに木賃宿を慕うべく、芭蕉も三晩続けて月に明かさば必ずや蚊軍、蚤虱の宿も厭わざるに至るべし。ああ木賃なる哉。木賃なる哉、木賃は実に彼ら、日雇取、土方、立ちんぼ的労働者を始めとして貧窟の各独身者輩が三日の西行、三夜の芭蕉を経験し、しかして後慕い来る最後の安眠所にして蚤、シラミ元より厭う処にあらず。」

本書には他にも騙し騙され、搾取され続けて牛馬以下の存在として扱われた娼婦や女工の生活などが克明に描写されている。近代国家を支える殖産興業の基盤として、低賃金での労働力として暗黙のうちに、国家自体がそうした社会構造を是認していたところに根の深さがあるなど、教科書には出てこない視点が刺激的だ。。先日のニュースで中国の奥地で子供達が誘拐され、煉瓦作り工場に幽閉されて労働力として酷使されていた話を聞いたが、本当に世界が変わってきたとは私にはどうしても思えない。

もっともこれらの事を時代を超えても変わらない人間の本質として認めるのは、絶対に嫌だし、そこまでの悲観主義者ではないが、どんなに文明が進歩し、インターネットで世界中の情報が瞬時に分かっても、人は人以上の存在になれないものだとつくづく思う。せいぜいできることは、まずは事実を知る事だろう。

未だに延々と引きずる従軍慰安婦問題だが、単純に外国の女性だから慰安婦にしたというよりも同様のことを政府や軍は国内においても行ってきたことを分かっていないと、人種差別だけの偏った議論になりかねない。いろいろな見方があるのは承知のうえだが、そもそもの為政者の認識として、軍を効率的に統制し、効果的に活用する為の道具としての慰安婦であり、戦後においてGHQの占領軍が来た時に、日本の婦女子の貞潔を守るためと称して吉原に資金を与えて客をとらせようとした話なども同じ発想であろう。

どんなことでも常に本質から物事を見ようとしないといけないと私は思うのだが、一般受けはしないらしいし、世間様からは嫌われがちである(苦笑)。ただ、本書を読んでいて強く思ったのだが、やっぱり知らないというのは『悪』であり、『罪』だなあ~と思う。安易な希望的観測かもしれないが、たくさんの人が真実を知るだけで世界は良くなると思うんだけどなあ~。いい人は世界中にたくさんいるからね、本当に。他方、すぐにでも殺した方が社会の為だと思う人もそれにもましてたくさんいるんだろうけど・・・。

余談が過ぎましたが、まずは読んでみるだけの価値ありです。私は3回目かな、この本読んだの。本を読むたびに、私は『人は人であることのみによって、決して生来的に自由になれるのではない』と思わずにはいられません。

娼婦や女工、乞食だろうと本人の自由意志なら、何をしようと勝手ですが、選択の余地がない場合も実際あるのが現実なのも知るべきでしょう。世界が少しでも良くなる事を望みたいですね。

そうそう、本書ではしっかりと参考文献が紹介されていて、好学の徒(雑学の徒?)には次へのステップが進めます。面白そうな文献もあるし、ちょっと読んでみたいかも。あっ、今日は国会図書館で本読もうと思ったのに、ケロロ軍曹見てて行き損なった。駄目な私。
【目次】
最暗黒の東京探訪記
人間生活最後の墜落
東京残飯地帯ルポ
流民の都市
暗渠からの泣き声
娼婦脱出記
帝都魔窟物語
糸を紡ぐ「籠の鳥」たち

参考文献

東京の下層社会(amazonリンク)
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2007年07月03日

「賃金,価格,利潤」横山正彦 大月書店

50円の平台で見つけて一年ぐらい未読で積んでおいた本。ちょっと暇つぶしに読んでみた。う~ん、これも有名な本なんだと思うけど、近代経済学を曲がりなりにも学び、資本主義社会で生きてきたものの感覚から言うと、寝物語に聞こえる。

ある人が「マルクス経済学は『科学』ではなくて『哲学』だ」とか言ってたように思ったけど、およそ科学的という感じでは確かにない。

初めに直観と個人的価値観に基づく仮定があり、それにより現実をいかに説明できるかという内容であるかのように思った。勿論、大学でもマル経などやったことないので、完全な門外漢による感想なので説得力がなくて恐縮だが、いろいろと現代の経済では破綻している仮定(理論)が目につく。

目次を書いてみたが、10章の「利潤は商品をその価値どおりに売ることによって得られる」なんてのがまさに好例だろう。商品の価値があたかも絶対的にあるかのような考え方は、幻想以外の何物でもない。

例えば、一つの例を挙げよう。以前はやったダイエットリング。指につけているだけで痩せられると、一個一万円から8千円の定価だったが、ブーム中は飛ぶように売れた。半年後、ブームが終焉し、在庫を抱えた業者は一個一円でいかがですかと私のとこに売りに来たことがあった。最後はただでもと言われたくらいだ。この半年の間に、絶対的な商品の価値に変動があったとは思えない。そもそも現代において物の価格は、実質的な価値に依存しない。あくまでもそれを購入することで消費者が得られる効用(←広告に踊らされた幻想が大いに影響する)を背景にした需給で決まるに過ぎない。

ブランド物のバッグでもいい。全く同じ素材で全く同じ工場で作ったバッグが、ブランド物のバッグとしてマークが入り、無意味なギャランティカードがつくだけで3倍以上の価値がしている。

少なくとも本書では、それらについて一切の説明ができない。また、労働者の賃金は、特別な生産要素ではない。いくらでも買えるし、一人の人間としては限界があっても労働力としては制限がないはずだ。グローバルな枠組みで考えれば、実際、24時間稼動の工場なんていくらでもあるし、必ずしもそれが従業員への過重労働に繋がるわけではない。

本質的な意味で、勝手な仮定に基づくアドホックな理論としか思えない。歴史的な意義は、当然尊重されてしかるべきだろうが、学問ではないような気がしてならない。

どうせなら、経済学ではなくてむしろ社会政策としてならば、積極的な価値判断が含まれてもOKだし、政治学にでもすればよかったのに・・・などと思ってしまう。

今だから、こんなこと言えるんだろうなあ~。昔だったら、資本主義の犬、とか言われたりして・・・。それとも不勉強な人と思われるぐらいか? 

人の行動を欲望(美名でいうと、効用?)に基づく行動(=合理的経済人)と規定した近代経済学は正解ですね。まさに、人間の本質の一つがそれでしょう。もっとも効用は、屈折した表現をすることもあり、それだけではないから、難しいし、面白いのですけどね。
【目次】
1生産物と賃金
2生産物、賃金、利潤
3賃金と通貨
4需要と供給
5賃金と価格
6価値と労働
7労働力
8剰余価値の生産
9労働の価値
10利潤は商品をその価値どおりに売ることによって得られる
11剰余価値が分解する種々の部分
12利潤、賃金、価格の一般的関係
13賃上げの企て、または賃下げ反対の企ての主要なばあい
14資本と労働との闘争とその結果
賃金,価格,利潤(amazonリンク)

関連ブログ
「賃労働と資本」カール マルクス 大月書店
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2007年06月06日

「沈黙の春」レイチェル カーソン 新潮社

友人から教えられて読んでみた環境に関する本です。

最近ではTV番組や雑誌の記事で、微量な農薬でも生物濃縮を通じて、食物連鎖の上にいる生き物ほど被害が大きくなることや、殺虫剤を使用することでそれに耐性を持つ虫が増えて次第に効かなくなり、より強力で人体にも生態系にも有害な物質を使わざるを得なくなっていることなどは、ある程度知られるようになりましたが、本書はその草分け的存在であるそうです。

1962年当時においては、まさに画期的な啓発(or 警告)の書だったに違いありません。現在読んでも、内容が全く古びておらず、そのまま現在書かれている環境問題の本としても通ってしまうほどです。逆に言えば、それだけ先見の明があると共に、人類は問題に気付いてもなんら対応が進まずに、当時よりも状況が悪化している可能性さえある悲しい現実を認識させられます。

まあ、普通にNHKスペシャルとか雑誌の「ニュートン」とか読んでいれば、知っている内容ばかりです。

農薬を使うことで、一時的に害虫へ効果があってもそれは生態系全てに打撃を与え、本来なら有益な生き物までも殺してしまう。その結果、本来意図していた対象(害虫等)が再び脅威になってもその天敵たる存在(鳥等)が失われた結果、農薬使用以前にも増して、害虫による被害が大きくなってしまう。

しかも、農薬等の化学薬品の使用は、対象物の『耐性』獲得に伴い、より強力で有害な薬品を永久的に使用せざる得ない状況に陥り、まさに負の悪循環に至る。本書の例とは異なるが、最近しばしば聞く、抗生物質が効かないウィルスなどは、まさに好例であろう。

著者は、可能な限り化学薬品の使用を抑制し、例えば害虫の不妊化処理をしたものを自然界に放つことで、生態系をコントロールしつつ、害虫の被害を防ぐ手段や、害虫の天敵になる存在を生態系に組み込むことで成果を挙げることを進めている。

なるほど、確かに現在徐々にそれらの手法は行われているらしいのは、ちょっと前にニュースでやっていた地中海ミバエ(?)も不妊化で、成虫数を減少させたという報道からも納得できる。

ただ、私個人の素人考えだと、外来種の害虫が繁殖しているのでそれを抑制する為に、天敵たる生き物を輸入して増やすというのは、どうなのだろうか??? 一つ間違えば、その地元における生態系を崩すのではないかという心配もあるように思うだけれど・・・本書では、そこまで突っ込んだ考察はしていない。

不妊化処理も、放射線を当てたり幾つかの手法があるようだが、遺伝子自体を傷付ける恐れもあると思う。ということは、それ自体が十分に問題があるようにも思うだけれど・・・。長期的にそれが原因で生態系に悪影響を及ぼす恐れもあるだろう。

まあ、当時は今と置かれている状況が違い、まずは環境問題(農薬、化学薬品)を認識させることが最優先だったのだと思う。私が提示した疑問は、全てその問題を認識した以後の問題なので、本書でそこまで要求してはいけないだろう。

ただ、いろんな意味で現代の環境問題を考える一つの示唆になると思う。非常に分かり易く、具体例を豊富に書いているので今まで知らなかった人には特に勉強になるかもしれません。私は、問題意識の整理になりました。

あと、言っても詮無いことではありますが、『効率化(=経済性)』を短期的に求めると生態系を破壊し、公害を撒き散らす特定企業のような行動が合理的、つ~か合目的的になりますが、長期的に『効率性』を求めると生態系を維持しつつ、調和をとった行動こそが、費用を最小限に抑えて最大限の効果を挙げられる行動だと分かりますね。外部性の経済を考慮した「コースの定理」などもこれに関連するでしょう。奇しくもこれも60年代に提唱されたものだったね。ふむふむ。

なにしろ大変有名な本みたいですので、一度目を通しておくといいかもしれません。実は、私、教えてもらうまで全然知らなかったんですけどね(苦笑)。


そうそう、著者の指摘は非常に素晴らしいが、単純にだからと言って現在の社会は間違っているとか、安易な主張をする人にはならないようにすべきでしょう。

反感を買うのを承知でいうならば、便利だからといって自動車に乗り、コンビニや100円ショップで物を買う人は、自分の行動がまさに短期的な『効率化』積極的に支援し、ひいては種々の農薬使用を強制していることを意識すべきでしょう。

マクドナルドへジャガイモを納めている契約農家の人は、自分たちが食べる分は、農薬を一切使わないものだけで、決して売り物のジャガイモを食べないという実話もある。類例は枚挙に暇がないので省くが、綺麗事だけでは社会は変わらないのだろう・・・。

そして、私も不本意ながら、自分の行動を省みると何も発言できないなあ~、と自己嫌悪に陥りそうになったとだけ言っておこう。でも、なんとかしたい気持ちもあるんだけど・・・。う~ん、無力だ。
【目次】
明日のための寓話
負担は耐えねばならぬ
死の霊薬
地表の水、地底の海
土壌の世界
みどりの地表
何のための大破壊?
そして、鳥は鳴かず
死の川
空からの一斉爆撃
ボルジア家の夢をこえて
人間の代価
狭き窓より
四人にひとり
自然は逆襲する
迫り来る雪崩
べつの道
沈黙の春(amazonリンク)
ラベル:環境 書評
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2007年06月04日

「続・下町酒場巡礼」大川渉、宮前栄、平岡海人 四谷ラウンド

う~ん、先日読んだ本の続編であるが、さすがに飽きてきたというのが正直な感想。前回と全く同じノリで著者達が実際に見聞した失われゆく大衆酒場への限りない思いを胸に描いた体験記。まあ、人情に訴えかけるようなところは、本書にもあるのだけれど、似たような話が多くなり、それに反比例するように酒場自体がイマイチに感じられてきた。

具体的に言うと、酒の肴があまり美味しそうではない。安くて美味しい大衆酒場なら、嬉しいが、ただ安いだけでつまらない肴で酒を飲まされるなら、そういう店には行きたくない! たとえ、どんなに風情があっても!

なんか今回はそんなふうに感じてしまうお店が多かった。ネタ切れだろうか・・・、本書はあまり面白くない。看板だけ見たことのあった店を見つけたが、私の経験からでは、どう見ても美味しくなさそうだった。ふと、本書で紹介されている店って本当に、なんらかの価値があるのか・・・疑問が浮かんできてしまったのも事実。だけどねぇ~???

前の本は、読んでもいいけど、本書まで読む必要はなかったなあ~と思いました。お勧めしない本です。
【目次】
第1章 人情話を肴に今宵は憩う
第2章 こだわりに酔い、酒に酔い
第3章 立ち飲みブルースが聞こえる
第4章 わが麗し、セピア色の本格派
第5章 もつ焼きの煙が目にしみる
第6章 大衆食堂に懐かしい風が吹く
第7章 ふらふらと夕暮れ逍遙
続・下町酒場巡礼(amazonリンク)

関連ブログ
「下町酒場巡礼」大川渉、宮前栄、平岡海人 筑摩書房
「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店
ラベル:書評 大衆酒場
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2007年05月29日

「下町酒場巡礼」大川渉、宮前栄、平岡海人 筑摩書房

sitamati.jpg

言葉は悪いですが、場末の玉暖簾や赤提灯の居酒屋を巡ったどこにでもある(あった)情景を描き出したメモみたいな感じの本です。今の流行ではないのでしょうが、こういった雰囲気も嫌いではない、つ~か結構好きなんで私は大変楽しく読ませて頂きました。

見た目は、年季が入っていてこの店大丈夫かな?と心配になるようだけど、たま~に本当に美味しい肴を出して、信じられないほど安いお店ってあるけど、そんな店も紹介してます。

もっとも、それはごく一部だと思うんだけどね。私の個人的経験からだと飛び込みで探した赤提灯だとほとんど90%以上の場合、外れで汚くて料理もイマイチで値段がそれなりに高い店ってのが多かったからなあ~。

昔は新しい店をよく探して挑戦してたけど、最近は面倒で新規開発はとんどご無沙汰。ほどほどのところで定番の店を作って、妥協して飲んでるなあ~。

本書では、酒好きの著者が自分の足で体験したお店のうち、いろんな意味で印象に残ったお店を紹介しています。新鮮なホルモン(特に、レアな部位)を生で食べれるところとか、煮込んでもつ煮にしたものとか、読んでいてお酒が無性に飲みたくてしかたなくなります(笑)。

料理もさることながら、いかにも大衆酒場的な居酒屋の雰囲気が満ち溢れ、どことなく郷愁を誘うような文章が、なんとなくイイ。実際、この手の居酒屋は当たり外れがあり、常連さんが多過ぎても居心地が悪いし、なかなか難しいものがあるが、この本を読むとたまにはまた一人でお店に行ってみるのも悪くないかなあ~と思う。

昼間からデンキブランやホッピーを飲んでて、ちんぴらヤクザと知り合いになったり、寄席の芸人の方と知り合いになったりするのもまた悪くないだろう。そういうのは楽しいものだ。本書には、特に何も意味はないが、読んでいてなんかイイ感じだから、酒を飲む前に読むことをお薦めする。あるいは、ちびちび飲みながら読むのも悪くないだろう。

私は本書を読んだ晩、かしらの焼き鳥(にんにく味噌)と野菜スティック(肉味噌つける)、かつおの刺身、カレーの残り、ズキの炒め物、ナスの油炒め、チキンナゲットを肴に黒ホッピーと焼酎で飲んでいた。うん、やっぱりお酒は美味しいです(満面の笑み)。

【追記】
そうそう、最後にちょっとだけいちゃもんをつけると、デンキブランを飲みながら、ビールを飲む姿をカッコいいとか書かれていましたが、それって普通だと思うんですが・・・。私はいつもデンキブランとお水、そしてビールを同時並行で飲んでますけどね。

あと、お酒をグラスに注ぐときに受け皿にこぼすのは当たり前じゃん。受け皿から溢れそうになるまでなみなみと入れてもらうでしょう、普通。著者は下の受け皿から飲むと言ってますが、コレ疑問? 
先にグラスを少し飲まないと表面張力で保っているのがこぼれてしまうから、ほんの少しだけそちらを飲んでから、グラスを左手で上げて、受け皿の酒を飲むのが常識だと思うのですが・・・。昔、誰か酒飲みの人から教わったんだけどなあ~。

あっ、でも本書で書かれている「角打ち」って私経験なかったりする。酒屋さんの一角でお酒を買った人がそのまま持ち込めて、簡単な肴を出してそのまま飲めるところのこと。

実は、都内にもその手の美味しいお店があるらしく、知り合いから今度教えてもらう予定。早く行きたいなあ~。
【目次】
第1章 煮込みには焼酎が似合う
第2章 泡盛が奏でる至福の時
第3章 店構えに吸い寄せられて
第4章 豊潤なるもつ焼きの世界
第5章 これが下町の酒場だ
第6章 都の北は宝の山
第7章 泪橋は今宵もふけて
第8章 門前、街道沿いに憩いの店
下町酒場巡礼(amazonリンク)

関連ブログ
「酒の肴・抱樽酒話」青木正児 岩波書店
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社
「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社
ラベル:下町 酒場 書評
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「帝都東京・隠された地下網の秘密」秋庭俊 新潮社

最高に面白かった! 久々の大ヒット!!
今までも地下鉄に乗っていて何度かその不自然さから疑問に思っていたことに対して、妥当を納得できるだけの説得力のある仮説が出されている。不自然な連絡通路や無意味に広い空間、どう考えても奥に何かあるのではと思われる唐突に閉ざされ、鍵をかけられた扉など、本書を読むと疑問が氷解する。

都内の地下には、戦前・戦中を含めて国家政策的観点から、国民に対して秘密のまま作られ、一部の関係者のみ周知の事実とされている多数の地下建築物や陽の目を見ない地下鉄網などがあるという、著者の主張は実に面白い。また、著者は直接的な証拠が隠蔽されていて立証できない
以上、あくまでも仮説としながらも、可能な限り公開されている公文書等の資料を用いて間接的な根拠を複数示すことで、その仮説の可能性を検討に値するだけのものにしていると思う。

amazonの書評にあるトンデモ本という説明には、個人的には賛同しかねる。トンデモ本を何冊も読んだことがあるが、本書のように断定を極力避け、真面目にその可能性を検討する姿勢がある本は、決してトンデモ本の範疇に入らないだろう。著者の主張全てが正しいとは私も思わないが、確実に真実の一部が含まれている感じがしてならない(これは私の個人的感想です)。

うがった見方をすると、amazonの書評の方を疑いたくなる。自社製品を売らんが為にamazonのレビューを捏造するのはしばしあるし、その反対に本書の一部でも真実ならば、当然、それによって困る方々がいるわけで、彼らはトンデモ本として一蹴できるならば、なんでもするだろう。某上場会社では、自社の悪評などを某掲示板に書き込まれると、即座にそれを否定する書き込みをしたり、削除依頼するのは事実としてあることでもある。勿論、真実は闇の中なのだが・・・。

著者の仮説を幾つか紹介してみよう。まずは、私も先日特別参観で行ったばかりの国会議事堂。できてからまだ60年ぐらいしか経っていないそうだが、何故か設計者が不明とされている。候補はいるのだが、明確に誰による設計なのかは公表されていないそうだ。著者が盛んに疑問を呈しているが、これには私も同感だ。国家の最高権力機関の一つである国会議事堂の設計者が公表されていないのは、当然何らかの意図があって行われていると考えるのだが妥当だろう。

国会が地下一階しかないというのも、防空意識が非常に高まっていた当時からして有り得る話ではない。確かに私の手元にある国会参観の資料には地下一階までとなっている。道路を挟んで向かいに建つ国会図書館は蔵書の収蔵の為、最近改築し、地下8階まであるのは知っていたが、これもうがって考えれば、もともとそれだけの地下空間なり、地下構造物があった可能性も考えられるだろう。この国会図書館も元々は陸軍関係の施設の跡地にあるらしく、普通に考えれば地下でそれらは結ばれていて当然だろう。実際に、どこの国でも議会・裁判所、首相官邸、官庁、軍、警察など主要機関が地下構造を持ち、秘密の通路を有するのは常識である。まして、戦争をしていた当時の日本であれば、言うまでもないことであろう。

その他にも著者の仮説は実に説得力があって興味深い。地下鉄のカーブを示す数字を公開されている資料から、拾い出している。普通は何十メートルというメートルでキリのいい数字が書かれているのだが、一部に○○○.○○mなどと半端な数字が並ぶ箇所があるそうだ。普通なら、そんな半端な数字はありえなさそうだが、これをヤードに換算するとキリのいい200ヤードになるという。つまり、明治・大正の頃、日本でヤード・ポンド法が使われていた時に設計・施行されていたものが、後にそのまま流用されている証(あかし)ではないかと言っている。これらは、個別に資料が明示されているので、これは興味があって熱意がある人ならば、自分で裏付けが取れるだろう。私はそこまでする気力はないが、これだけでもかなりの説得力だと思う。

他にも時期総理の声さえあった後藤新平が東京市長(当時、はるかに格下の地位)になった時期があったが、それは東京市が実力者たる人物の威光によって、各省庁の干渉を抑えて、東京の地下鉄網整備を進める為の人事だったと指摘する。関東大地震という、偶発的な出来事を奇禍として、国家の大計の為に、膨大な予算を注ぎ込んで地下鉄を建設しまくった様子が目に見えるようで、非常に刺激的である。

これもどこまでが事実か、全く不明であるものの、荒俣氏の帝都物語を待つまでもなく、あの当時、何かが行われたと考えるのは至極当然なことであろう。著者は、その可能性を裏付ける幾つかの根拠も提示している。

また、戦後でも「下水改良」の名称のもとで老朽化の危険のある地下鉄網や地下構造物の補修が行われているのではないかと主張している。改良にかかる費用金額の比較などや、その後の利用状況に比した費用効率から、本来の目的ではない別な目的に使われたのではないかというのである。いかにもありそうな話であり、最近の緑資源機構ではないが、常に政府の外郭団体など不明朗な組織経由で、よく分からない資金が使われているが、官僚組織が常に情報の独占と制御によってパワーを有する組織である以上、これらのことが行われていても当たり前のように国民には知らされないのだろう。

他にも、誰でもご存知のように丸の内の地下街のところには、大きな駐車場があるが、都内のあちこちにある巨大な駐車場もなるほど、そもそもそこにあった空間の有効利用ならば、納得がいく。

私の個人的な経験でも、著者の説はありそうに思えてならない。
実際、私が学生の時に某銀行の本店で面接を受けた時、道路を挟んだところにある銀行系の関連会社の通用口を経由して道路の下をくぐって秘密の通路を使って銀行内部に入ったことがある。日曜日で当然、銀行の出入り口はシャッターが下りていたが、その関連会社は地下鉄の通路に沿った横道の所に通用口があり、知らなければまず気付かれない場所だった。

当時は、こんな秘密通路があるのかびっくりした覚えがあるが、その後、就職した別の会社では何気ない事務棟に見せながら、中は電源関係の変電所(社内に独自にある)があったり、NTTなどとは異なる独自の光ファイバーが埋設されていたり、大企業ってほんと怪しい?と思ったものである。

民間でさえ、これぐらいいろんなことをやっているのだから、国家組織がやることは、国民の想定外の規模と構想であろう。著者の話は、私には大変魅力的な説明に思えてならない。

本書にも出てくるが、都心の公園は、地下に工事がされていて緊急災害用の物資が備蓄されているところが数多くある。実際に、その通りの場所もあるのだろうが、都心の公園の地下に何か別なものがあっても誰にも分からないのは事実だろう。私が子供の頃に、突然練馬区の公園の一つが地下の工事をするといってしばらく使用中止になっていたことがある。非常に大量の土砂(か何か?)が運搬されていて、かなりの大規模工事だったように思うのだが、とても単純な災害物資の備蓄とは思えなかった。今でも印象に強く残っているので本書を読んでいてふと思い出した。

どこまでが真実かは勿論、疑問ではあるが、都内の地下鉄を使用している人なら、全ての人にお薦めする。読んでいて大変面白い本だ。また、一部には必ず真実が含まれているのでは思わずにはいられないだろう。google earthで地上は見れても、地下は最後まで解放されていない秘密の宝物なのだろう。
【目次】
序 七つの謎
第1章 入れ換えられた線路
第2章 一等不採用
第3章 知られざる東京の地下
第4章 地下は新宿を向いていた
第5章 二〇〇ヤード
第6章 戦前、ここにも地下鉄が走っていた
第7章 帝都復興
第8章 東京の下にはもう一つの東京がある

参考文献一覧
帝都東京・隠された地下網の秘密(amazonリンク)

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東京散策シリーズ~衆議院特別参観1
東京散策シリーズ~参議院開設60周年特別参観1
ラベル:東京 地下 歴史 書評
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2007年05月15日

「闇の超世界権力 スカル&ボーンズ」クリス・ミレガン、アントニー・サットン 徳間書店

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一時期、大いに話題になったエール大学内にあるという秘密結社スカル&ボーンズに関する本です。あのブッシュ大統領を始め、大統領経験者の多数がそこに所属していたとされ、フリーメーソン内の上位秘密組織に通じるとか、ダン・ブラウンの小説「天使と悪魔」で有名になった謎の組織イルナミティと構成員が重なるとか、大変興味深いことが書かれています。

もしも、それが本当だったら・・・っていうお話ですけどね。良識というか、単純な常識があれば、ネット上に氾濫するアングラ系の陰謀史観大好き論者がしばしばのたまう内容と大差ないことに気付きます。私の感触でいえば、どっかからどう見ても仮面ライダーの秘密結社ショッカーの見過ぎって感じですね(←すみません、例えが古過ぎですね。マルドゥーク機関(エヴァより)でも古いし、最近ならなんだろう?)。まあ、その程度のもんです・・・笑。

少数の選ばれし者達による大多数の愚かなる大衆支配の元で、新世界秩序を作り上げるとかなんとかって、あまりにも陳腐でステレオタイプな類型に苦笑(つ~か失笑)を禁じえない。

確かに、CIAが多国籍企業を通じて、中南米でアメリカにとって好ましくない政権転覆に加担したり、手引きしてたとかって事実は、国連でも取り上げられてるし、周知の事実ではあるが、そこから一気に「新世界秩序の構築」って言われてもなあ~。

おそらくまともな人は、本書の内容を信じないと思います。

そんだったら、つい最近の自衛官経由で中国政府の手引きによる中国人妻のイージス艦機密情報のスパイはどうなるんでしょうね? 日本の海外大使館員が秘密を中国に握られて国家機密を漏洩するように脅されたあげくに、機密を漏らすよりはと自殺した事件があったけど、あれはどうなんでしょう??

別に中国だけの話ではないし、日本だって戦争中に満州国の財政の大部分を阿片密売で補っていたのだって、知ってる人なら知っている話。そんなの世界には無数にある話だけれど・・・?

現在、イラクへ指導者として戻りつつある人々は、元々イランに亡命していてイランで全ての生活の面倒を見てもらっていた、まさに親イラン派。アメリカがこないだまで目の敵にしていた、イランべったりの人々がイラクへ新しいリーダーとして戻っている現実だって、いくらでも陰謀論に絡ませることできるけどね。ホント、キリがない。

本書は、いかにも大衆が好きそうなネタ系の話を膨らませて、関連が無さそうな所にも牽強付会を地で行きながら、強引に関連づけて楽しい読み物にしています。従来からよくある、この手の安っぽい陰謀(妄想)暴露本のパターンをこれでもかと踏襲しているので、そういう意味ではイエローペーパーの王道路線ですね。日本語版の表紙見ても、まさにイエローで髑髏が書かれているし(笑)。中高校生向きかな。出版社さん、徳間書店さんだもん。田中芳樹氏の小説のノリですよ~(蒼龍伝とかね)。

ご存知のように、アメリカではCIAやケネディ、フリーメイソンなどのキーワードが大好きです。おまけにナチまで出てくれば、言うことなし! 今回はイルナミティにも詳しく紙面を割いていますのでお好きな方は、眉唾として読んでみるのも一興かと。

ただ、真面目に読んでるとちょっと問題かと。ダ・ヴィンチ・コードを読んでイエスが結婚して子供がいたと信じる人達と一緒になってしまいます。ご注意を!

でも、この手のノリ自体は嫌いじゃないけどね。あくまでも『読み物』として読みましょう♪
【目次】
第0章 “国際謀略”解明のためのイントロダクション
第1章 スカル&ボーンズを暴露する
第2章 ボーンズメンが連なるブッシュ一族
第3章 “九・一一テロ”の“今日”から“明日”に向かって!
第4章 “秘密”結社の最終目的「世界新秩序」への暗躍
第5章 スカル&ボーンズをめぐる種々のエピソード
第6章 骸骨の集団
闇の超世界権力 スカル&ボーンズ(amazonリンク)

関連ブログ
「テンプル騎士団とフリーメーソン」三交社 感想1
「秘密結社」セルジュ・ユタン 白水社
「フリーメーソンの秘密」赤間 剛 三一書房
「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社
「法王暗殺」より、抜き書き
「法王の銀行家」殺害で4人起訴 CNN
ラベル:陰謀史観 書評
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2007年05月02日

「錬金術と神秘主義」アレクサンダー・ローブ タッシェン・ジャパン

錬金術と神秘主義

とにかく膨大な量の錬金術関係の図版が魅力です。ただ、TASCHEN社の出版物全般にいえることですが、印刷が綺麗とは言い難い。

図版命の本だけに、印刷の質がイマイチなのはかなりイタイ。この本に出てくる図版の幾つかは、荒俣氏の本で見たことがあるが、それと比較すると図版の見易さ、大きさ、印刷の綺麗さで格段に落ち、物足りない。

その一方で実際、錬金術やオカルト系の図版としては、よく見かけるものもあるが、私は本書で初見というものもたくさんあったので大変勉強になった。まだまだ、この世界にはこんなにも素敵な挿絵があるんだなあ~っと感動!!

でも、解説は良くない。元々、オカルト系は『隠秘学』からして、文字で明解に説明できるものではないのだけれど、本書の記述はやっぱり不十分、且つ意味不明。

本書の場合は、あくまでも図版を眺めて、個々の図版の最低限度の説明を読む程度でしょう。

そもそもまともに一項目づつ読み進めていくタイプの本ではない。個人的には、図版だけもっと整理して数を絞り、より詳しい説明を入れたうえで綺麗な印刷をしてくれたら、即、図版集としてだけでも購入するのにね。残念!

今のままでは、私はあえて欲しいとは思わないかも? 図書館で見れば十分ですね。やっぱり、印刷が綺麗じゃないとねぇ~。
【目次】
はじめに
マクロコスモス
大いなる作業
ミクロコスモス
回転
索引
錬金術と神秘主義―ヘルメス学の博物館(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」吉田光邦 中央公論社
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」沢井繁男 講談社
「サファイアの書」ジルベール シヌエ 日本放送出版協会
魔女と錬金術師の街、プラハ
「THE GOLD 2004年3月号」JCB会員誌~プラハ迷宮都市伝説~
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
「The legend of the Golem」Ivana Pecháčková
「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り) 
本書と同じ図版が出ています。キルヒャーの奴ね。
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2007年04月26日

「中国怪食紀行」小泉武夫 日本経済新聞社

kaisyoku.jpg

今の日本でいうなら、ゲテモノ喰いとか悪食(あくじき)とか呼ばれてしまうネズミやハチ、蛇、犬等々。何でも現地で普通に食べられているものには、チャレンジし、それを美味しいと心から思ってしまう著者の味覚に拍手! この人、本物のグルメだと思うなあ~。

著者が事前に余計な偏見を抱かずに、まずは現地の人と同じもの食べてみようとする姿勢が実にイイ! 食べてみなくては分からないものっていっぱいあるからね。食べたうえでの好き嫌いは、あって当たり前だけど、食べもしない人には一生何も知らないままで終わる人だと思う。それもその人それぞれの生き方ですけど。

私的にはグルメなんて人種は、食い意地の張った強欲の塊みたいなもんでどんなに美味しいもの食べて満腹で戻しそうでも、まだ食べたことのないものがあれば、箸を伸ばして無理して口に入れようとする、それぐらいの存在だと思っていたりします(個人的偏見)。

失礼ながら、著者ってそういう人だったりして・・・?そんなふうに誤解しかねないほど、この著者はどんな食べ物にでもTRYします。軟弱な私では、そこまでは食べないかなあ~と断念しそうなモノ(カブトムシとかセミ)でも、美味しそうに食べる健啖家ぶりには脱帽。いやあ~、マジ頭が下がりますよ、ホント。どこの土地に行っても、人々と溶け込める素敵な性格をされていそうです。まあ、旅行してても土地の料理が食べれない人ってまず、そこに溶け込めないからね。当たり前と言えば、当たり前ですけど。

しかもこの著者、ただ&ただ食べるだけのゲテモノレポーターにあらず。専門が醸造学や発酵学の先生で、その土地土地での食べ方やお酒の作り方などを学問的に説明がつくところは、きちんと説明してくれたりもする。先祖伝来のやり方で美味しく料理し、美味しいお酒を作ったりする人類の知恵の素晴らしさをできるだけたくさんの人に紹介しようとするのも素敵だし、また勉強になったりする。漫画の「美味しんぼ 」のように鼻につくほど、嫌らしくなく自然体の語り口調も好感が持てる。

なんか単なる酒好きで食道楽の怠け者(失礼!)ってな感じにさえ、思えてしまうのだが、おそらく気のいいおっちゃんなのだろう。大衆酒場で、陽気に珍味つついて旨い酒飲んでるおやじってカンジです。率直に言って、憧れます。いやあ~、私もいろんなもの食べてみたいって思う。火さえ通してあれば。

そんな人が、うちの故郷のうまいもんがあるから、これ食べてご覧よ!って出してくるかなり匂いのキツイ発酵食品の数々。そ~んな感じで、著者が中国で出会った不思議で怪奇、しかも美味しい珍味の数々を紹介しています。あまり食べたくないなあ~と引きそうなものから、あっ!それ是非食べてみたいというものまで。今までの食の常識に鉄槌を下し、崩壊させかねないパワーがあります。

ここで紹介されたようなものを、食べる食べないに関わらず、本書を読むと食べるということの意味を、全く違った感じで再認識させられるかもしれません。私は、この本面白いと思います。既存の枠に囚われない、強欲なグルメの方にもお薦めです。

写真が結構入っていて、文字だけでは伝わらない凄さ(グロさ?美味しさ?)を伝えてくれるのもまた一興(つ~か一驚?)かと。いやあ~、旨い酒と旨い肴があれば、人生は幸せでしょう♪(笑)
【目次】
赤い色が似合う国
犬を食す
涙に咽ぶ魚です
君知るや究極の蛇の味
鶏がとっても旨いから
草の子たちに成仏あれ
虫は胃のもの味なもの
永遠の熟鮓
茶の国は知恵深し
醸して変身
豚は家族の一員である
牛肉がいっぱい
蘇れ珍獣たち
悠久の蒸留器
食うことは豊かの象徴
傘を差して大をする
スッポンと宰相
ヤシガニの涙
名酒はラオチャイより出て胃袋に収まる
朝の一杯、夜の三回
焼鳥はごゆっくり
曲は音楽にあらず
愉快な職人達に幸あれ
中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である(amazonリンク)

関連ブログ
<「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社/a>
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
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2007年04月13日

「銭湯の謎」町田忍 扶桑社

sentou0413.jpg

この本は、まさに役に立たない雑学以外の何物でもないのだが、なんとも言えず味がある。とっても面白い本だったりする。

何故、銭湯の建築が神社仏閣のような作りなのかから始まり、坪庭や脱衣籠の形状、ペンキ絵の題材や発祥、タイルなどなど。実にどうでもいいことだけど、銭湯に行ったことがある人なら、そういわれてみると・・・気になる?そんな情報が実に豊富に詰まっています。

個人的にはケロリン桶についての詳細な話がヒット! 今でも地方の温泉場とかでも見かけるのですが(先月使ったし、私)、なんとなく好きなんだよねぇ~。とにかく、日本情緒がたっぷり詰まった一冊です。

都内の温泉と言えば、筆頭に上がる黒湯なども出てくるし(私も時々入るけど)、銭湯の独特の縁起担ぎの彫刻や絵って大好きなんですよ~(満面の笑み)。この手のノリの好きな人には絶対嬉しい本でしょう。TVの「タモリ倶楽部」のノリです。そう、まさにアレ! タモリ倶楽部でやっていた銭湯の掃除の話も出てきますよ~。

ただ、残念なのはせっかく銭湯の持つ素晴らしい彫刻やタイル絵やペンキ絵を紹介しておきながら、写真がほとんどなく、あっても白黒で全然駄目。これは致命的にイタイ。ほんと、この本の説明に豊富なカラー写真がついているならば、絶対買いの一冊なんだけどねぇ~。う~ん、もったいないです。

それと最後の「銭湯自分史」の空白。編集上、余った頁の処理かと思うがこれ最低&不要。自分が銭湯の感想をメモする項目まで、あれこれいうのは余計なお世話以外の何物でもない。編集者もちょっと考えたらと言わざるを得ない。残念です。

あっ、でもね、私が江戸たてもの園で写真を撮った昔懐かしい銭湯も紹介されています。やっぱりあの建物素晴らしかったもんね!納得です。また、銭湯行きたくなってきたなあ~。
【目次】
第1章 銭湯の歴史
第2章 銭湯の建築
第3章 銭湯の雑学
第4章 銭湯自分史
銭湯の謎(amazonリンク)

関連ブログ
東京散策シリーズ~江戸東京たてもの園(9月30日)
蒲田温泉・池上本門寺・川崎大師
ラベル:書評 銭湯
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2007年04月02日

「世界屠畜紀行」内澤旬子 解放出版社

totiku.jpg

かなり特殊な本と言えるだろう。著者が関連するテーマを本で調べようとしてなかなか本が見つからなかったというだけあって、レアな部類の本だと思う。

食肉全般とかそういったテーマならもっとあるかもしれないが、食べるために動物を『しめて』『解体』する部分を扱ったものになると、やっぱり珍しいのだと思う。

著者は世界中を旅しながら、世界各国の屠殺(本書内で、著者は『殺』という語感を避けて『屠畜』と表現している)の状況を紹介している。宗教儀式の一環として、神への生贄として家庭内で行われるものから、いわゆる屠殺を行う食肉市場まで実際に足を運んで具体的にその屠殺に至るまでの過程をイラストの描写と関係者からの話を元に自ら理解した内容を説明している。

勿論、著者の理解を経たという点で一定程度のバイアスがかかっていることを割り引いても、滅多に知ることができない話であり、大変興味深い。

また、日本における状況についても説明があり、都内や一部の地域ではそれらの仕事をしている人が公務員なのを初めて知りました。と同時に非常に厳しい管理と膨大な手間がかけられていることも知りました。BSE対策と口では言うものの、こんなに大変だとは・・・。本当に大変そう。同時に輸入肉では、やっぱりここまでの衛生・安全管理って難しそうな気がしてなりません。

もっとも、これって食肉だけではなくどこの現場でそうですが、人がやることであり、いくらルールを厳しくしても現場って守らないことが往々にしてあるんだよねぇ~。最近、原子力関係の不祥事等いい加減な対応が報告されてるけど、この手のって本当にありがち。私が研修の一環で工場の現場実習を経験したときでさえ、危険な薬品の取り扱いがルーズだったしなあ~。半導体工場でこれだもんね。

難しいもんです。かと言って、何もかも神経質になり過ぎてたら、今時食べるもんなんて何にも無くなってしまうしねぇ~。私はこの本を読んだ後も平気でもつ鍋の店とか行ってましたけど。

まあ、そういった心配は置いといて。本書では、実に詳しくどうやって屠殺し、解体するかまでの手順を説明しています。手で動脈をひねってしめるやり方やら、内臓各種をいかに手際よく、効率的に腑分けして洗浄するかなども初めて知ることばかりでした。そうそう、日本に限って言えば、屠殺だけではなく、皮を鞣して革にする過程まで説明があり、革製品大好きでバイヤーをやっていたこともある私としては、実に面白くて興味深い話でした。こうやって原皮ができるんだあ。

しかし、著者自身がどこの国でもこの取材のことを話すとびっくりしたり、気味悪くならないか尋ねられたというのももっともでしょう。文字やイラストでさえ、かなりグロイです。苦手な人だと、これ読むと肉食べれなくなるかも? 海外旅行に慣れ過ぎた女性の方でこの手のタイプの異様にバイタリティーあふれる方がいますが、著者もそういった感じの方のようです。

良くも悪くも異文化に対して非常に寛容で抵抗感なく、すっと受け入れられるタイプかな?犬を食べる話なども普通に出てきますし、大切に飼っていた犬や鳥などをつぶして食べる話などがドンドンでてきます。失礼ながら、口先だけで動物愛護を訴える方には我慢ならない本かもしれません。学校で魚の解剖とかさえ、やらない歪んだ教育の成果で、自己欺瞞的な動物愛護を唱える方にはね。

今の日本だと精神がタフであるか、精神的に成熟して寛容な人でないとこの本は辛いかもしれません。嫌いな人は、まじめな話吐き気を催すような気がします。

それとは別次元の話ですが、本書を読んでいてどうしても嫌な感じがするのは、やたらとそうした職業をする人達への差別について関心を持ち、ところかまわず聞いてまわっていること。確かに、そういう職業的差別があるという話は、実際に知り合いから聞いたこともあるが、著者が執拗に聞くのは何故?

ふと思ったのですが、ここの出版社の名称の『解放』って被差別部落解放運動とか、あの手の関係する出版社なのでしょうか? あてずっぽうで私が思っただけですが、だったら、その手の広報活動の一環みたいで嫌だなあ~。

勿論、職業とかそんなんで差別するのは論外だと思うし、差別は反対だけど、その手の差別を逆にネタにして機関紙を購読させたり、特別な権益を得ている団体とかあるでしょ。ああいうのって大嫌い!! 以前も大阪府だったか、大阪市役所でもその手の不正な金の問題があったけどね。腐ってるね、本当に。

本書がその手の関連でないことを祈ろう。本の内容自体は、拒否反応がない人なら、十分に面白いと思う。写真じゃなくてイラストによる説明も、写真撮影が拒否されたという事情もさることながら、リアルさを軽減してくれるのでかえっていいのかもしれない。絵自体はあまり好きな絵ではないけどね。
【目次】
第1章 韓国
第2章 バリ島
第3章 エジプト
第4章 イスラム世界
第5章 チョコ
第6章 モンゴル
第7章 韓国の犬肉
第8章 豚の屠畜 東京・芝浦屠場
第9章 沖縄
第10章 豚の内臓・頭 東京・芝浦屠場
第11章 革鞣し 東京・墨田
第12章 動物の立場から
第13章 牛の屠畜 東京・芝浦屠場
第14章 牛の内臓 東京・芝浦屠場
第15章 インド
第16章 アメリカ
終章 屠畜紀行その後
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関連ブログ
「悪魔のピクニック」タラス グレスコー 早川書房
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2007年02月25日

「セックスボランティア」河合 香織 新潮社

ちょっと前にだいぶ騒がれた本。私の中では、この手の本はどうしても偽善的な取り繕いがされているあまり良くないイメージがあり、まず読まないジャンル。たまたま、他の本を探しているときに視界に入り、読むことになったもの。

内容は障害のある人の『性』に関するもので、障害が原因で社会生活上の不都合がある際に、性的な援助をすることについてをテーマにしている。

人間である以上、不可避的な問題であるが、非常に生々しい問題であり、実際に社会通念上の倫理や公衆道徳上との兼ね合いがあるうえに、また日本という社会がそれを禁忌としてきた文化があるのでより一層困難な現況が紹介されている。

本書では、決してその問題に対して積極的に何かを主張したり、著者自らもほとんど動こうとはしないが、それを非難するのは無理があるだろう。著者はあくまでもライターとして書いているだけであり、あくまでも仕事の一環であることを読めばいい本だと思う。

逆に、現状を認識できないエセ進歩主義者や解放された性意識の主張者ではないので、こういったことがあるんですよ~的な問題提起として、きっかけになるだけでも価値があるかもしれない。

ただ、これを読んで思ったのは人が生きていくのは、『パンのみにあらず』性欲も含めて、生きている実感としての充足感を感じられないといけないんだなあ~と思いました。性欲は本能であると共に、いわゆる自己実現欲求の一つの現れでもあるかもしれません。

人間なら誰しも持つ『業』のようなものを感じさせずにはいられない本です。もっとも人は生きている限り、悩み続ける存在であり、精神のバランスをとることだけがそれに対処できるのかもしれませんが。

また、本書ではオランダでの進んだ(?)実例の紹介もありますが、根本的に有効な方法ではないようです。人がすることである以上、ボランティアを受ける人とする人の気持ちも複雑で何かしら別な問題も生じかねない恐れもあるようです。実に難しい話。

もっともより現実的に考えるなら、表向きは非合法でも金銭である程度は片がつく問題ではある。状況が状況だけに、関係者もグレーな対応というか、場合によっては見て見ぬふりをするのもそれが一番良い場合も考えられる。綺麗事では済まない問題だけに、できるだけ現実的に対応することが必要に感じたりもした。

障害者に固有の問題ではなく、いろいろと気付かされることがある本だった。でも、正直言うと、あまり好きではない。この手の本は。どうしても売文の匂いがしてしまうのは、私の穿った見方のせいか?

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ラベル: 書評 障害者
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2007年02月21日

「図録 性の日本史」笹間 良彦 雄山閣出版

神代の時代(古事記や日本書紀)から、現代(昭和)までの性や風俗に関わるものを思いつくままに集めて古いものから並べてみた、そういう類のもの。かっこよくいうと「性の社会史」とでも言うのかもしれないが、それほどの内容は無い。採り上げられている事項も明確な基準はなく、著者の恣意的な基準である。

イラストは親しみ易いが資料的な価値はなく、絵解きエロ話といったレベル。特に高度経済成長期まではなんとか書かれているが、それ以降の同時代的な現代については、言及されていない。

出版社が民俗学などで有名な雄山閣の為、期待したが、残念ながら期待外れでしょう。わざわざ購入するほどの価値はないかと思います。

あえて本書の長所というと・・・。
江戸時代の売春の呼称の種類が非常に多く採り上げられているのは、ちょっと参考になりました。飯盛り女や湯女、夜鷹などは私も知っていましたが、これでもかというくらいの異名が挙げられていました。著者の好みで特に江戸時代の名称が充実しているようなのですが、一つだけ疑問に思ったのが実際上、それがどこまで当時妥当なのか?ということでした。

例えば、今の時代でいうなら、キャバ嬢に金を払ってHしたから、「キャバ嬢」とは売春婦の名称でもあったというのは、正しくないと思います。同様にAV嬢も売春婦ではないわけで、こういった類と同レベルの疑問が著者の記述に対して浮かぶのですが・・・???

あっ、本書自体は特に売春婦に限定しているわけではないから、いいのかもしれませんが、少しだけ疑問に思いました。それ以上、本書には特になんの感想もありませんでした。

図録 性の日本史(amazonリンク)

関連ブログ
「性風土記 」藤林 貞雄 岩崎美術社
「赤線物語」清水 一行 角川書店
「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
「AV女優 (2)」永沢 光雄 文芸春秋
「恋は肉色」菜摘 ひかる 光文社
ラベル: 社会史 書評
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2007年01月27日

「イヴの七人の娘たち」ブライアン サイクス ヴィレッジブックス

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遺伝子を遡ることで人類(欧米人)の祖先が7人の女性に辿り着く。このインパクトのある内容で読まずとも名前だけは聞いたことがある本でした。また、更にはアフリカにいた1人の女性に辿り着くとも。

私の遺伝子に関する知識は高校生レベルで止まっていたので、ミトコンドリアのDNAが母系からしか受け継がれず、しかも親のものを100%引き継ぐと本書を読んで初めて知りました。そしてそれを遡ることで先祖の特定などに利用できるとは・・・。しかも突然変異の発現確率から進化時計としても利用可能だなんて、スゴイですよね。

そうそうミトコンドリアがもともと独立した生物で人類に寄生(共生)するようになったとか、その手の話も他の本で読んだことがあったがやっぱり本書でも触れられていて、ふむふむと確認してしまいました。

本書を読むことで最近の遺伝研究の一端なりを知ることができるように思います。と、同時にこのミトコンドリアDNAをツールとして使用することで次に次に明らかにされる人類の先人達の辿った道筋。いくつかの仮説が覆され、いくつかの仮説の有力な証拠となっていくその流れは、リアルタイムゆえのダイミックさがあり、学問の素晴らしさと人間のたくましさを感じさせてくれます。

そして本書の中でも絶えず出てきますが、著名な研究者であっても常に実績を示しつつ、いかに研究予算を獲得するのか?その点にいかに苦労しているのかが伺われます。日本で一番欠けている点とも言われますが、是非日本の研究者の方々にも頑張って頂きたいものです。ちょうど日経新聞の私の履歴書にノーベル賞を受賞された江崎氏のものが書かれていますが、あれと平行して読むと、より一層フェアな競争の素晴らしさと大変さを感じます。

いろんな意味で本書は大変興味深いと思います。自分の先祖は一体どんなルートで日本に渡り、連綿と生き延びてきたのか?実に&実に面白いです。生半可な家系図なんかより、魅力がいっぱいです。

でも、最後の方で7人に絞られた女性達の在りし日の姿を再現ドラマ風に描いているのは、非常に違和感を覚えます。ここまで非常に論理的に展開されてきたのに、読者の分かり易さを狙ったのか、突如、非論理的な空想場面が描かれるのは大いにマイナスです。友人で本書を読んだ人もこの部分については、本書を台無しにしていると言っていましたが、私もそれに近いものを感じました。

まあ、その部分を除けばとっても面白いし、クロマニヨン人とネアンデルタール人との関係など、知りたいことばかりです。雑誌の「ニュートン」でも読みたくなりますね(笑顔)。

イヴの七人の娘たち(amazonリンク)

関連ブログ
「ネアンデルタール」 ジョン・ダートン著 ソニー・マガジンズ
ラベル:書評 遺伝
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2007年01月04日

「大アルベルトゥスの秘法」アルベルトゥス マグヌス 河出書房新社

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amazonの商品説明にも書かれていますが、あの『トマス・アクィナス』を弟子に持ち、中世でも有数の碩学であったドミニコ僧のアルベルトゥス・マグヌスによる著作の翻訳です。

13世紀の中世において、科学と魔術の分化がなされていない頃の知識であり、たぶんに迷信が混交しているのは当然と言えば当然でしょう。あのニュートンが錬金術にはまっていたのは、これよりもだいぶ後の時代であることからも故無しかと。

しかも、マグヌスによる魔術書の類は有名であった彼の名を騙っている可能性も多々有り、どこまでが本人によるものかさえも明確ではないそうです。様々な異本もあるようですし・・・。それらを差っぴいて考慮しても、中世において広く知られたある種の『知識』(魔術であるのか?錬金術であるのか?迷信であるのかは問わず)であり、それを前提にして社会や文化が動いていた以上、知っておくべき事柄でしょう。

個々のハウツーの部分は、私にはどうでもいい感じがするのですが、それらを通じて理解できる当時の思考方法や社会慣習などが非常に興味深いです。ゴシック大聖堂の彫刻や手彩色写本の時祷書などに描かれる天体の運行と人体の関連など、人間の体がどれほど星の影響下にあると考えられていたのか、本書を読んで私は初めて納得がいったような気がします。

病気になった時の治療法でも、一定の天体の条件下で行わなければ無効とされる以上、人々は否が応でも天体と人体を結びつけて考える訳です。黄道12宮なんてその際たるもんです。現代の朝の番組でさえ、未だに星座占いとかを流していてそれを大勢の人が見ているのが私には不思議でなりませんが、その人達が魔術や迷信を笑っているのがより一層不可解でなりません。

神社仏閣で年始参りをして干支の縁起物やお守りを買う行為は、本書に書かれた数々の処方を真剣に行う人々の行為と本質的に差異はないようにさえ、感じられます。極論過ぎるかもしれませんが、何をされているか理解しないままただ医者の為すがままの(高度な)医療行為を受ける私達と中世人の置かれた立場に相違は無いかもしれません。

私的には、痩せるはずのない痩せ薬に大金を投じる人々の姿が重なってしまいました。

新年から、いささか皮相的な物の見方になってしまっては良くありませんが本書を読むことでゴシック彫刻やステンドグラスの意匠の内容理解に役立ちそうな気がします。フルカネリの「大聖堂の秘密」とかにも関連してきそうです。そういう意味合いで読む本かと。個々のおまじないを実践するようなオカルト本として読んでもねぇ~、意味無いかと。

そうそう翻訳者の立木鷹志氏、『媚薬の博物誌』という本もあります。以前、読んだことありますが、基本的にこういう本がお好きな方みたいです。
【目次】
(第一の書)
人間の誕生、あるいは、人はいかにして生まれるか
胎児はいかにしてつくられるか―胎児に対する惑星の影響について
惑星の身体への影響について
下等動物はどのように生まれるか
出産について
自然界の奇形について
胎児が男か女かを知るための徴候について

(第二の書)
さまざまな植物の効力について
さまざまな石の効力について
さまざまな動物の効力について

(第三の書)
自然の驚くべき秘密について
いろいろな糞の効力と特質について
さまざまな鉱物の秘密について

(第四の書)
身体の部分的差異による人相学概論
吉日と凶日
悪性熱病の治療法-悪性熱病の特質について

(編訳者解題)
魔術の復権
魔術書「大アルベルトゥスの秘法」について
大アルベルトゥスの秘法―中世ヨーロッパの大魔術書(amazonリンク)

関連ブログ
「大聖堂の秘密」フルカネリ 国書刊行会
ラベル:書評 魔術
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2006年12月22日

「萌えよ!戦車学校 02式」田村 尚也 (著), 野上 武志 (イラスト)  イカロス出版

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萌え系で売れた本というと「萌え単」などしか知らない方(「電車男」はこの際、ベタ過ぎなんで除く)、時代はここまで来ているんだなあ~と現代にキャッチアップして下さいね!

先日のニュースで50年後の人口予測では8900万人とまさに衰退しつつある我が国を憂いつつ、本書の前作が売れていたのは知っていたのですが、本屋で手に取るぐらいでした。でも、想像通り売れたんですね前作。早速の続編が出ているではありませんか、思わず手にとってしまいましたよ~(笑)。『戦車』と『美少女』という某アニヲタ様の頭の中の世界が現実に本になって売っているのを見るとマジで衝撃を受けます。この国大丈夫なんかい?って!

まあ、冗談が冗談でなくなる昨今ですが、かつてなら同人誌ぐらいじゃないと有り得なかった本がマジで流通しております。しかも私のような興味は少しあるけど、実際は何にも知らないど素人が読んでも面白いし、分かるし、非常に勉強になります。戦車に関する入門書としてみたときに一定水準以上の使える本だと思います。美少女の漫画やイラストの部分とは別に、解説が必要な知識部分は文字での説明がきっちりしているのでそれもまた嬉しい♪

やっぱり美少女が描かれている、ただそれだけで見る気になるし、なかなか内容とマッチした毒舌系のセリフも好き(笑顔)。自衛隊のパンフなどでも見習って欲しいものですね。この分かり易さと親しみ易さ。東京電力のデンコちゃんのような人気キャラを期待します。でもピーポ君は駄目だよ~。

アメリカでは、軍の宣伝目的でTVゲームを作らせて無料でばらまいているぐらいですから、日本も宣伝広報活動は頑張って欲しいものです(あっ、あくまでも洒落なんで笑い飛ばして下さいね)。

しかし、これは買っちゃうよなあ~。分かっていても乗せられしまう自分が哀れです。まあ、「大戦略」とか「提督の決断」とかシミュレーションゲーム大好き人間の私としては止むを得ないかと。(最近本読んでばかりでやる暇ありませんけど)

防衛研究所でスパコンを利用してウォーゲームしたいとちょっとだけ真剣に考えたことあったし・・・どんな奴だ、私?

まあ、いろいろ感じるところはありますが、売れるべくして売れた本です。更に続編を予定されているそうなんで、実に楽しみです。笑って楽しく遊べる方にはお奨めします。萌える美少女のイラストだけでも楽しかったりするし。ただネックは価格かな?1200~1300円ぐらいにして欲しかったなあ~。ちょっとお高めかも。
【目次】
第1講 戦車乗員の役割&単車―小隊の戦闘
第2講 機甲師団って何?
第3講 ドイツ戦車部隊の装備、編制、戦術
第4講 日本戦車部隊の装備、編制、戦術
教官&生徒と行く世界の戦車めぐり
第5講 イギリス戦車部隊の装備、編制、戦術
第6講 アメリカ戦車部隊の装備、編制、戦術
第7講 ソ連戦車部隊の装備、編制、戦術
第8講 フランス・イタリア戦車部隊の装備、編制、戦術
まとめ 大戦中の機甲部隊が目指したもの
萌えよ!戦車学校 02式(amazonリンク)

萌えよ!戦車学校―戦車のすべてを萌え燃えレクチャー!(amazonリンク) 
こちらは書店で見ただけでまだ読んでいないのですが、これが最初にブレイクしたらしいです。さもありなん!
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2006年12月08日

「西洋古代・中世哲学史」クラウス リーゼンフーバー 平凡社

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最近、結構はまっているゴシック建築に関連して調べ物をしていて見つけた本。サン・ドニの修道院長シュジェールがゴシック建築を生み出す思想的背景となったものとして”光の形而上学”があったそうなのですが、それを唱えた人物として挙げられているのがこのディオニュシオス・アレオパギテス。

本書では新プラトン主義を引き継ぎ、「アウグスティヌスの思想」という章の中でディオニュシオス・アレオパギテスが紹介されています。以下、本書から引用メモ。
ディオニュシオス・アレオパギテス:

 中世にディオニュシオス・アレオパギテス(Dinysios Areopagites 五世紀末)の著作として重んじられた「ディオニュシオス文書」と言われる一群の著作がある。
 ここではギリシア教父たちの神秘思想が総合され、特にプロクロスの新プラトン主義哲学からの影響に基づいて神秘的神認識の理論にまで深められた。

 「ディオニュシオス文書」の著者については、480年頃活躍し、おそらくシリアの修道者であったということ以外には何も知られていない。というのは、この人物はアテナイの評議会(アレオパゴス)での使徒パウロの説教によって改宗した評議会員(アレオパギテス)の聖ディオニュシオス(「使徒行伝」第17章第34節)の名を擬してその著作を著しており(そのため現在では「偽ディオニュシオス・アレオパギテス」と呼ばれるのが普通ある)、実はこの著者が一世紀の聖ディオニュシオスよりはずっと後の人物であるということがはっきりしたのは、ようやく19世紀後半になってからだったからであう。

ディオニュシオスの思想は強く新プラトン主義的である。万物の根源ないし神は超越的な一者であり、その充溢する善性から万物が成立する。この神について語ろうとする時には、まず感覚的な象徴によって名指すことができる(「象徴神学」)が、概念を用いるならば、一方で神は我々が認識するすべての有限的完全性の起源として、それらを表す概念を用いて肯定的に語ることができ(「肯定神学」)、他方では神は我々が認識するあらゆる有限的な在り方を持たないものとして、それらを表すすべての概念が除去されるという形で否定的に語られることが可能である(「否定神学」)。

 この中では否定神学が神の語りに最もふさわしいものであるが、端的には精神の脱自的な純粋の超越によって、沈黙のうちに認識が達し得ない隠れたる神へと神秘的に一致することこそが、究極的な道なのである。人間が神へと近づくためには第一に「浄化」を経て感覚的なものに対する欲求と認識におけるあらゆる執着から開放され、第二に「照明」の段階に至って実在の英知的原像を直観することが必要であるが、最後には「一致」の状態において思惟の次元をも超えて神の闇の内に入っていき、認識を超える仕方で完成に至るのである。

 ディオニュシオスの思想は東方教会の神学を規定し、また西方の十二世紀から十四世紀までのスコラ学や神秘思想、さらに十六世紀のスペイン、十七世紀のフランスの神秘思想に深い影響を与えていくことになる。
ここで説明されている第二の「照明」の段階が”光の形而上学”につながるのでしょうか?う~ん、私その辺について不案内でよく分からないのですが、「実在のものを通して神の世界に至る」という点では対応しているように思うんですけどね。

後ほど、他の本にも当たって調べてみることにしようっと。調査課題として保留。

他にもスコラ学とはそもそもどういったものかとか、ギリシア以来の哲学がキリスト教との間でいかに整合性を持ちえるようになっていったかなど、興味深い内容が書かれています。

ただ、正直私にはいまいち分かりにくい。これって放送大学の教材が元だという話ですが、だいぶレベル高くないかなあ~。表面的には読めば分かるのかもしれませんが、どうしても心底納得いく説明ではないので(紙面の制約もあるだろうし、私の理解力の限界とかね)、もうちょっと知りたい。

ただ、他にも読むべき本があるのでその兼ね合いが難しいなあ~。よくまってまっているけど、私的には説明がまだまだ足りない感じでした。

(注:ちなみに本書は拾い読みしかしてません。哲学史全般には興味ないんで。その程度の感想なので全体を読み通したら感想が変わるかもしれません。あしからず。)

【目次】
古代哲学の誕生
ソクラテス以前の哲学
ソフィストとソクラテス
プラトンの哲学
アリストテレスの理論哲学
アリストテレスの実践哲学
ストア学派
新プラトン主義
キリスト教哲学の起源
アウグスティヌスの思想
十二世紀の初期スコラ学
十三世紀のスコラ学とアリストテレスの受容
トマス・アクィナスの哲学
十四世紀の後期スコラ学
中世の神秘思想と近代への移行
西洋古代・中世哲学史(amazonリンク)
ラベル:哲学 書評
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2006年10月15日

「名園のはなし」岡崎 文彬 同朋舎

庭園に関する権威の著者が自らの足で訪れた世界中の庭園のうち、有名で誰でも知っていそうなところをあえて外した通好みの選択による名園紹介。

う~ん、コンセプトはいい感じですが、知名度高いところしか知らない私としては正直知らないところばかりで・・・。かてて加えて、本書の説明を読んでも、文書とともに入っている写真を見ても。ちっとも美しいとか素晴らしいとか思えないんですよ~。

結果的に無味乾燥な文章を淡々と読んでいる感じになります。紹介されている庭園、どれも行きたいと思わないんですよねぇ~。アルハンブラ宮殿とかベタなところじゃないと駄目みたい、俗物の私では。

個人的には、この本はお勧めしないなあ~。庭園の説明自体にも、ちょっと問題有りかも?
【目次】
ミレスゴルデン(スウェーデン)
ストウ(イギリス)
アンギャンとベロイュ(ベルギー)
エルムノンヴィル(フランス)
ムスカウとブラーニッツ(東ドイツ)
ヘレンキムゼー(西ドイツ)
チコーニア荘(イタリア)
ガルツォーニ荘(イタリア)
モンレアーレ修道院(イタリア)
エル・ラベリント(スペイン)
チェヘル・ソトゥーン(イラン)
アンベル城とシソディア宮苑(インド)
バンパイン離宮(タイ)
留園(中国)
瀟灑園(ソセウォン)と鳴玉軒(ミョウオクガン)(韓国)
庭園探訪ガイダンス
名園のはなし(amazonリンク)
ラベル:庭園 書評
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2006年10月07日

「性格」相場 均 中央公論新社

久々に精神を取り扱った本で、興味深く読めた本です。マスコミに踊らされたようなお手軽な占いと同レベルのくだらなさとは対極にある実に真摯な精神医学の本です。

人の『性格』というものを決定する要因として、人間が生まれながらにして持つ「素質(気質)」が重要な位置を占めるとする考え方と後天的な「環境」が重要であるとする考え方の二つがあるが、著者はあの(!)偉大なるクレチェマー氏の影響下、気質を中心に置きながら、環境による影響を考慮する立場をとる。

幾つかの事例を挙げながら、非常に簡明に性格を決定する要因と思われるものに解釈を加えていく本書は、大変勉強になります。私自身も物心ついた学生の頃に、クレチャマーの「天才の心理学」を読んで天地が動転するほどの衝撃を受けましたから、本当に納得してしまったりします。

未だに私が人を見る目は、この立場ですもん。自らを冷ややかに見つめながらもあえて表面的には不合理そうでいて、実は当事者的には合目的っぽい理性的な思考や計算があったりするのも、周りからは理解されなくても自分で自分を理解できるだけでも嬉しいかも♪ (たとえ自己満足、いや自己欺瞞でさえあっても・・・)

一読するだけでも分かり易い本です。でも、本書を読んで改めて感じるのはクレチェマーの非凡さですね。本書の著者もいいんですが、そもそも「気質」を考慮するときに重要な遺伝的な要素へ言及が足りないのがやや不満。

クレチェマー読んで、夢野久作の「ドグラマグラ」読んで、鈴木清順の映画でも見れば、人間の精神の玄妙さ・可笑しさを少しは感じられるかも? 鈍い人は一生気づかずに幸せに生きていける『あの』感覚を分かる方は、読んでみられてはいかがでしょう。私的には好きな本でした(笑顔)。

性格―素質とのたたかい(amazonリンク)

関連ブログ
「犯罪と精神医学」中田 修 創元社
「辻潤全集 (第5巻)」辻潤 五月書房
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2006年09月11日

「帯をとくフクスケ」荒俣 宏 中央公論社

はいはい、久しぶりに荒俣先生の本を読みました。福助の絵が表紙だったので開運ご利益もの大好きの私としては、思わず読まずにはいられませんでした。

でもね、本書は福助や大黒様なども出てくるのですが、それはあくまでも本書の一部。主題は、古今東西のありとあらゆるところで目にする図像の意味を芸術性とか付加価値的部分をとっぱらって、その図像(意匠含む)が描かれた社会的・地域的・歴史的文脈の中でナニを意味しているのか?―――それを明らかにしようという荒俣氏お得意のパターンです。

それこそ博物学関係の本に始まり、驚異的な収集癖と関心を示し、並々ならぬ博識を誇る氏らしく、読んでいてう~む、と驚かされること間違い無し。知的好奇心をそそる内容です。ただ、ラングドン教授よりも荒俣先生の方がはるかに物知りのような気がしますが、微妙なことに本書で解き明かされる対象自体がマイナー過ぎ、一般受けはしないんだろうなあ~とも思います。

すごいんだけど、売れる本か売れない本かと言えば、売れないんじゃないかと・・・(すみません、失礼なこと言って)。

ただ、この本を読むと絵画だけではなく、ポスターなども含めてありとありゆる図像を見た時、表面的な図像だけでなく、それが背後に指し示す作者の意図を明確に感じるかも? 西洋絵画のアトリビュートなどもそれに含まれますが、それよりももっと広汎で奥行きのある物の見方ができるかもしれません。そういった意味で感性の錬磨には向いています。

まあ、精神的に余裕があって人生を楽しめる方向きの本です。薄っぺらな現代的合理性などの美名のもとに、感性の摩滅したような方には、理解できないし、されない本かと思いました。

本書で採り上げられていた引札とかは私も好きで、いくつかは綺麗なの持っていますから、そういう方にはいいかも?私も改めて自分の持っている引札の絵柄を確認してみよかと思いました(笑顔)。
【目次】
楽園への誘い
エロティックになる勉強
美人の恥ずかしい姿
忘れられた最高技芸―紙幣の印刷
シュール魚かリアル魚か
潜水マスクがない頃の海中事情
額縁の裏がわの見かた
別世界の軒先―エジプト画の意味
蛇は図像の王様だい!―足のない動物の謎
〈金のなる木〉は商芸の傑作!
〈宝づくし〉の進化論
帯をとくフクスケ
帯をとくフクスケ―複製・偽物図像解読術(amazonリンク)

関連ブログ
「蔵書票の美」樋田 直人 小学館
印刷革命がはじまった:印刷博物館企画展
「怪物誌」荒俣宏 リブロポート(図版13枚有り)
「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り)
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2006年08月15日

「京都新発見散歩」昭文社

コンセプト的には、観光地観光地したベタなスポットではなく、地元の人が散歩するような、ちょっと違った散歩コースを御紹介、というものなのですが・・・。

う~ん、そうはいうものの大した内容ではない。確かに「るるぶ」よりは幾分マシかなあ~ってレベルです。逆に言えば、京都なんてバスの一日乗車券持って適当に市バスに乗り、行き着いた先をブラブラしてもそれなりに楽しめるのがいいところ。

たかが京都行くのに、一生懸命計画しちゃうのは、ちょっとねぇ~。個人的にはそういう旅はあまり好きではない。一日に一ヶ所ぐらい見たいポイントだけ押さえて後は適当に時間も行き先も気にせず、ぶらつくことこそが旅なんだもん。

思いもしなかったところで思いもしない物を見つけたり、変わったもの、怪しいお店とかを発見する、そんなのがスキ!他人が見つけたものをわざわざ後からマネして追体験しても、何の意味があるのやら・・・?ってね。

こういうこというから、中学生の通知表の通信欄に協調性がありませんとか書かれてしまうんだろうなあ~。

まあ、この本はいらないです。知ってるし、これぐらい。もっと素敵な視点で描いた本が欲しいかも?せっかくの地図の会社が出しているんだから、もうちょっと知恵を絞って欲しかったです。残念。
【目次】
平安建都千二百年の歴史をたどる―古い街並み新発見(祇園 清水 ほか)
時代の波を呼吸しながら進化する―新しい街角新発見(京都駅周辺 四条河原町 ほか)
清らかな川の流れに四季を感じる―水辺の小径新発見(鴨川 哲学の道周辺 ほか)
静寂の中にもひっそりと息づく異空間―寺社境内・公園新発見(知恩院 黒谷 ほか)
京都新発見散歩(amazonリンク)
ラベル:京都 観光 散歩
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「京都・異界をたずねて」蔵田 敏明 淡交社

ikai.jpg最近しばしば見られる異界や魔界など、京都の伝承に裏打ちされた歴史的スポットを紹介する本です。小松和彦氏的なノリと言えば分かって頂けるでしょうか? 

もっとも異界とか魔界なんてタイトルにつくと、薄っぺらな情報を偏向した視点から誇大に強調して取り上げた本も目について食傷気味になりますが、本書はその点、非常にバランスがいいです。

歴史上、正統派的な伝承を淡々と紹介しながら、歪曲することのない情報に基づいて過不足無い量の写真とともに紹介してくれます。8割以上はさすがに知っていることでしたが、1割ぐらいは私も初めて知ることもあり、勉強になりました。まあ、多い時には年に3回も京都行ってるんだから、当然か(笑)。来週もまた行くんだし・・・。

ここで紹介されているスポットも9割まではいかないまでも8割以上は、実際に行ったことのある場所でした。晴明神社、貴船神社、祟道神社、神泉苑、大将軍八社、船岡山、玄武神社、今宮神社、上御霊神社、一条戻橋、下御霊神社、京都御所、鳥辺野、三年坂、六道珍皇寺、将軍塚、野宮神社、化野念仏寺、鞍馬寺、伏見稲荷等々。

まあ、基本でしょう。荒俣氏や夢枕獏氏でなくても、これぐらいは抑えておいてもね。学生時代にほとんど行ったとこばかり。京都でデートした思い出は、ずいぶんと昔だったような・・・(寂しい)。

こういう裏面的な歴史上の有名スポットを巡る観光も楽しいもんです。今昔物語とか持参して読書しながら旅するのも楽しいですよ~。予備知識なくてもそこそこ分かるように、丁寧に説明してありますから入門書としてもいいかも? ある程度京都旅行に慣れた人でも、それなりに楽しめる内容です。これと「歩く地図」でも持っていれば、歩いて楽しむ観光には、十分じゃないでしょうか?

と言いつつ、もう何冊か京都と奈良の本は、仕入れてあるのだが・・・。あ~、今週のどうでもいい仕事なんか投げ捨てて早く旅行に行きたいな♪♪

京都・異界をたずねて(amazonリンク)

関連ブログ
「錦絵 京都むかし話」浅井収 蝸牛社
「日本妖怪巡礼団」荒俣宏 集英社文庫
祟徳上皇(or 祟神天皇陵)にまつわる不思議な話
ラベル:京都 観光 魔界
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2006年08月14日

「唐沢俊一のカルト王」唐沢 俊一 大和書房

karuto.jpgトンデモ本で有名な唐沢氏の本です。個人的には、SF系の本で以前はよく名前を見たことがありましたが、最近ではカルト業界の権威になられたようでそちらの方で有名ですね。

でも、唐沢氏ってタレントの派遣業やっていたなんて全然知りませんでした。本書はその仕事絡みでの人脈で培った怪しげな心霊業界の人々やホモ系の方々の話などがたくさん載っています。まあ、サブカル系だとは思って買ったんだけど、こっち系(レディコミとか)のサブカルとは思いませんでした。

まあ、基本的にサブカル系は興味あるし、そこそこ知っているんで別に驚くようなこともないですが(私の知り合いには、いくらでもこの手の事を経験している人いるし・・・)、古書とかそっち系のサブカルを期待していたのでちょっと肩透かしかな?

トリビアっていえば、トリビアの本ですが、私は自分の関心事以外はどうでもいいよっていう所謂おたく系の無関心さも結構強いので、読んでいてつまらないテーマも多かったです。ドラッグだろうが、性関係だろうが、もっと極端なディープな世界の方がはまれて好きなのさ♪(笑)。

個人的には、いささか欲求不満気味。もっと刺激が欲しいかも?そ~んなことを考えてしまう一冊でした。「悪い薬の本」とかそっちの方が面白いね。

唐沢俊一のカルト王(amazonリンク)
ラベル:カルト トンデモ
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2006年07月28日

「キリン伝来考」ベルトルト・ラウファー 博品社

先日読んだ「スキタイの子羊」と同じ博品社の博物学本のシリーズの一冊です。う~ん、私自身があまり興味無いからなあ~。現実の生き物よりも空想上のものが好きな夢想家の私としましては、イマイチの感じでした。

このシリーズ悪くはないのだが、テーマの好き嫌いに左右されてしまうのは止むを得ないところですね。自分の趣味にテーマがあれば、結構イイんでけど・・・。

内容はタイトル通り、キリンが世界中にどのようにして伝えられ、どのように受け入られていったかを数々の絵画や文献資料などを元に博物学的に展開したお話です。

まあ、この本を読んでいて気付いたことをメモ。
キリンの生息地としてエチオピアがあるが、昔はインド自体が明確に地理的にも認識されておらす、エチオピアと混同された結果、キリンはインドに生息すると思われていたそうです。

キリンをヨーロッパに最初に持ち込んだのは、カエサルの時でその後の中世ヨーロッパでは、キリンは失われた知識に属する存在で誰にも知られていなかった。それがあらゆる知識がアラビア人経由で入ったきた際、キリンに関するものもヨーロッパにやっと入ってきたそうです。キリンを表すgiraffeもアラビア語由来の言葉なんだそうです。

そうそうエチオピアからキリンがしばしば連れて来られた訳ですが、これってあのプレスター・ジョンと連絡を取ろうとして人を派遣した事ととも関連しているそうです。こういう結びつきも色々知っていると、別な意味で興味深いですね!
こんなことかな? さてさて他に何か面白そうなテーマはあったっけ?
【目次】
1章 キリン
2章 古代エジプト
3章 エジプト以外のアフリカ
4章 アラビアとペルシア
5章 中国
6章 インド
7章 古代ギリシア・ローマ
8章 コンスタンティノープル
9章 ヨーロッパ中世
10章 ルネサンス時代
11章 十九世紀およびそれ以後
キリン伝来考(amazonリンク)出版社は違うけど、全く同じ内容で早川書房から出ているんですね。

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「スキタイの子羊」ヘンリー・リー ベルトルト・ラウファー 博品社
国立国会図書館「描かれた動物・植物」展
「怪物誌」荒俣宏 リブロポート(図版13枚有り)
「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り)
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社
「エチオピア王国誌」アルヴァレス 岩波書店
「大モンゴル 幻の王 プレスター・ジョン 世界征服への道」 角川書店
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2006年07月24日

「世界遺産を歩こう」荻野 洋一 PHP研究所

arukou.jpg著者は実際に242カ国も訪れているそうですが、この本にはその片鱗さえも見られない。写真が多いのが救いだが、書かれている文章は観光ガイドと同レベルあるいは、それをちょこっとだけ深くした程度。正直言って、このレベルの文章は行かなくてもTBSの世界遺産を見れば書けてお釣りがきてしまうくらいで内容が全く無い。

紙面の関係もあるのだろうが、著者の経験が全然生かされてないようでもったいないとしか言いようがない。もう少し、実際に行った人でなければ、賭けない文章があると思うだが・・・悲しい。

それとも著者は行くことは行ったが、表面的に見ただけの薄っぺらな観光をされてきたのだろうか? そこんとこ小一時間ぐらい、問い詰めたい気にさえなってくる。出版社の方針も悪いのかもしれないが、もっと生の情報と感想が知りたかった。

ちなみに写真は非常に綺麗だと思う。でも、こういうのは私求めてないんだよねぇ~。更に一番不可解なことがある。意味がない世界遺産の登録データとアクセスや周辺情報はまったくもって無用の長物。

本当に行きたい人なら、自分で調べるし、ちょっと見るにしても情報量が少な過ぎて無意味。だったら、その分の紙面を著者の体験談に出来なかったのだろうか?

JTBや近ツーが出す本なら分かるが、個人に書かせてこれってどういう意図があるのでしょう。こんなの見ても行きたくならないし・・・。写真の綺麗さに騙されて買ったが、買うべきではない本かと思います。

おまけにこの本に書かれてることぐらい、ほとんど知っていたし。行ったことあるところなら、もっと為になること知っているぞ!って。世界遺産はやっぱりTBSのDVDしかないなあ~。あれがお気に入り♪
【目次】
1章 ヨーロッパ東部(イタリア共和国・ヴェネツィアとその潟
イタリア共和国・フィレンツェ歴史地区 ほか)
2章 ヨーロッパ西部(フランス共和国・パリのセーヌ河岸
フランス共和国・モン‐サン‐ミシェルとその湾 ほか)
3章 アジア(トルコ共和国・イスタンブール歴史地区
トルコ共和国・ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群 ほか)
4章 南北アメリカ(カナダ・カナディアン・ロッキー山脈公園群
カナダ・ケベック歴史地区 ほか)
5章 アフリカ・オセアニア(エジプト・アラブ共和国・メンフィスとその墓地遺跡―ギザからダハシュールまでのピラミッド地帯
モロッコ王国・マラケシュ旧市街 ほか)
ビジュアルガイド 世界遺産を歩こう―一度は訪ねてみたい「歴史とロマン」の厳選スポット(amazonリンク)
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2006年07月19日

「スキタイの子羊」ヘンリー・リー ベルトルト・ラウファー 博品社

スキタイの子羊

まずは、この本の表紙で手が止まっちゃいました。どっかで見たなあ~と思っていたら、澁澤龍彦氏の本で何度か見かけていたあの「スキタイの子羊」だったんですねぇ~。本のタイトルでは、思い浮かばなかったけど、思春期に読んだ本の影響は、ちょっとやそっとじゃ消えません。

記憶力がないことで定評のある私ですが、さすがにこれだけインパクトのあるものは、記憶のどこかに引っ掛かっていたようです。(でも、名称覚えていなかったけど・・・)

植物になる動物《子羊》だっていうんだから、そんなのあるんかい?って思うでしょう。勿論、そんなのありません!でもね、中世の人々は真面目に信じていたんだよね。迷信や噂に踊らされている民衆ではなく、高度な教育を受け、知的水準も十分に高い人達がそれを心底信じていて、たくさんの本にも書かれていたんだから、楽しくなってしまいます(笑顔)。

実際、どんなふうに信じられていたかと言うと・・・
「スキタイの子羊」とは本当の動物であると同時に生きた植物でもあると説明され、何人かの著述家によれば、この「植物=動物」の合成物はメロンかヒョウタンに似た種子から生えた木になる果実である。

この木がつける果実はあるいは莢(さや)は完熟するとはじけ、その中の小さな子羊の姿があらわになる。その子羊は自然に生まれた通常の子羊となんら変わらぬ完全な姿をしている。

この驚くべき木は以前「スキタイ」と呼ばれていた「東タタール」の領土に分布すると考えられており、その土地の住民達が衣服や「かぶりもの」の材料となる織物を作るのは、この「木の子羊」たちの並外れて真っ白な羊毛からだと言われていた。

時が経つと、子羊が木の実としてではなく、地中に根差した短い茎にヘソの部分でくついている、生きた子羊として描写される別のバージョンが流布した。子羊を先端に付けて宙吊りにしている茎もしくは幹は、十分に柔軟なので、子羊は下の方に向かってその茎をしならせては、届く場所にある牧草を食べることができるのである。届く範囲にある草を食べ尽くしてしまうと、茎はしおれ、子羊は死んでしまうのである。

この植物=子羊には骨も血も柔らかい肉もあって狼たちの好物であるが、その他のどの肉食動物からも攻撃されることはないと伝えている。

アレキサンダー大王が遠征途中で出会い、泣く泣く諦めた『ワクワク』を思い出しません? この手のお話が好きな人ならピンと来るでしょうが、美しい女性が果実としてなる『ワクワク』という木があり、かのアレキサンダー大王もその美しさには目を奪われてなんとしても自らの遠征に連れて行こうとしたが、美女はその木を離れると生きていられず、涙を飲んで彼女達を残し、大王は遠征を続けた。というあの有名なお話です。

是非ともアメリカのバイオベンチャーで作り出して欲しいところですが・・・そういう夢はおいといて、このスキタイの子羊も実にユニークで魅力的ですよね。この手の話って、大好きなんですよ~私。

ボリュームは少ない割に値段がそこそこ高いのがいささかネックですが、装丁もちょっと凝っていていい本です。中身が面白いのもまたイイ! このシリーズ全てを集めるのは、場所を取るのでちょっと二の足踏みますが、何冊か面白いのを見繕って買っておいて良さそうです。私は今、二、三冊しか以ってないからあと四、五冊くらいは買っておこうかな?

荒俣さんとかお好きそうな本達です。このシリーズ。知っていてもなんの役にも立たないけど、読んでいて空想の世界に遊べます。ある時代、ある地域ではこの空想が、事実とされて百科事典に載っていたんですから、凄いことです!! 

今の人って、私もそうだけどTVの映像で知識として知っていても感覚として知っていないから、薄っぺらなんだよね。TVでやらせをやっていたり、平気で嘘つかれても気付かないんだから、中世の人々の空想を笑うなんてむしろ滑稽なんだけど・・・。

逆に進んでそういったもの世界で遊ぶゆとりのある方向き。こういうのって、本当に楽しかったりする。

さて、本書ですが結論書いちゃうかな? ここで言っている「スキタイの子羊」って何だと思います? (制限時間3分経過・・・)




実は綿だったりします。白くて弾け出るさまは、まさに綿と言われると納得もんですが・・・って、皆さん生えている綿ご存知ですよね。(知らないっていう貴方は情報過多の都会の中で実は無知になっていますよ~。速攻で旅に出ましょう♪)

本書では綿が何故、スキタイの子羊になったのか、その伝説の生まれて育っていった過程も説明してくれます。いろんな文献に基づきながら、これも実に面白いです。すぐ読み終えてしまうのが残念ですが、こういう本もいいねぇ~。ちょっと叡智の図書館っぽいかな(フフフッ)。

そうそう、何故かアマゾンでは出てこない。取り扱っていないようなのですが、もしかして既に出版社つぶれてるかな? 古書店で半額ぐらいで大量に出回っているから、その可能性もあるなあ~(一人ごとでした)。

ふと、思い出した。mandrakeの本、7、8割翻訳したままで忘れていた。50年なんて著作権はとっくに切れた古い本だから、問題無いし。夏休みに残りを訳してしまおうっと。8月中に出来上がったら、ブログでも紹介しますね(気が向いたら・・・)。

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2006年07月14日

「秘密結社」セルジュ・ユタン 白水社

あまりに・・・あまりにも初心者向きというか、入門書向きというか・・・。説明が足りない、足りな過ぎる!

この本を読んで身に付けられた知識は皆無であり、これまであちこちで聞きかじった程度の薄っぺらな私の知識の整理にも役立たなかった。っていうか、この本読んだらよく分からなくなってしまいました(涙)。

どこにポイントがあるのか、よく分かりません。著名なフリーメイソンやKKK、カルボナリ党、マフィア、テンプル騎士団、薔薇十字団とかにも触れているのですが、本当に触れているだけで個々の秘密結社の内面的なものは全く届いていません。

秘密結社論的な一般論も格別に意味があるものではなく、言葉遊びの域を出ていないようにも思える。

正直もっと&もっと俗っぽい話を知りたかったのに・・・! 秘密結社にまつわるいかがわしい&神秘的なエピソードの方が面白いのになあ~。残念です。そういうのは一切触れられていません。

それこそ、「ムー」とか人物往来社のいい加減な陰謀史観に絡ませてさ、でっち上げ的な、いかにもイエローペーパーの記事のような話の方が面白いのに。大衆はそれを求めているんだけどなあ~。秘密結社なんて、日刊ゲンダイのノリか、学者もどきのオタクが喜んで読むアカデミックな解釈か二極化しちゃえばいいんですが、どちらにもなれなかった中途半端なものです。

従って、これ読まないほうがいいと思います。胡散臭い話なら、私が既に読んでいる本の方がずっと面白いよ~。P2とかね!(ニヤリ)


秘密結社 改訂新版(amazonリンク)

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「テンプル騎士団とフリーメーソン」三交社 感想1
「フリーメーソンの秘密」赤間 剛 三一書房
「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社
「法王暗殺」より、抜き書き
「法王暗殺」デイヴィッド・ヤロップ 文芸春秋
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2006年07月10日

「AV女優 (2)」永沢 光雄 文芸春秋

av.jpg確か前作はそこそこ面白かったような気がしました。周囲と自分の描くイメージへギャップからの逃避・解放の手段として、ある種社会的に『特殊』と判を押された職業をあえて選択することで逆説的に、自分は自分であることを宣言するような、そんな心理が面白かったのですが・・・。

今回の本書は、単なる自堕落の結果でしかなく、適当に流されて楽に生きていこうとしたら、こうなりました。っていうんじゃ、あまりにもつまらなくありませんか? 一昔前のステレオタイプな風俗嬢の経歴をわざわざ本にする必要ないでしょうに。

「楽にお金が欲しいから、AV女優になりました」そんな一行で終わる内容の本よりも、私の昔のメル友のメール内容の方がよほど面白いです。相手の承諾が取れれば、公開したいくらいですよ~。出版社に持っていきたくなりますね(笑)。

正直この本は読むに値しない。頑張って半分くらい読んだけど、時間の無駄っぽいので後は読まずに古書店に売り飛ばそうっと!

AV女優 (2)(amazonリンク)

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「恋は肉色」菜摘 ひかる 光文社
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2006年04月20日

「魔」の世界 那谷 敏郎 新潮社

「魔」とか「魔物」というと、つい手にとってしまう私ですが、感想としてはもったいないなあ~という溜息が出てしまいます。著者は何気に博識ですし、実際に世界のいろいろなところに行ってフィールドワークもばっちりで、西洋・東洋を問わず、古典をしっかりを抑えたうえで縦横無尽に筆を滑らして魔について述べています。

実際、そこに取り上げられる対象の数やその文献の範囲は、壮大で素直に凄いなあ~物知りだなあとは思うのですが、なんといえばいいのでしょうか、それぞれについて語られる内容が極めて簡素。簡潔というと良く聞こえてしまいますが、メリハリをつけてもっと突っ込んでくれればいいのにと思うことが多々あり。本来はもっと&もっと魅力的な個別の「魔」について感情移入ができない。要は、面白いと楽しめるほど語ってくれないんですよ。

そりゃ、文化的な比較に重点を置いているのかもしれないですが、しょせんは論文ではなくてエッセイみたいなもんでしょう。読んでて面白くなければ、この手の文章は価値が半減してしまいます。著者の博識さは行間から滲み出ていますが、題材の採り上げ方がマズイと思う。

ちっても面白みが伝わってこないし・・・。平妖伝、捜神記、唐代伝奇集、千夜一夜物語、死者の書、ケルト妖精物語、フランス幻想民話集等々、今ここで挙げたものの100倍以上もの書名が文中には挙げられていると思いますが、私が読んだものも多く、読もうと思っているリスト(=読んでないもの)に入っているものも多くて著者を尊敬しながら、読んでいたんですが、採り上げ方がねぇ~。やっぱりつまんない。

絶対にこれだけ読まれているんだから、書けるはずなのにねぇ~。たくさんの引用文献は素晴らしいが、それ以上の価値が見出せないのが悲しい、悲し過ぎる(涙)。

結果として、「魔」というのは何なのか?それも私には分からなかったし、ただ世界中の文献からの列挙で終わってしまっている感じがしてならない。どうせなら、もっと内容を紹介したり、メリハリつけて時々は突っ込んだ解説してくれればいいのに・・・。

とにかく不満だらけです。読み易いのですが、これだけじゃ、読んでも意味ないでしょう。書名の一覧だけ、使えるかもしれません。新潮社のは絶版になってるようですが、講談社学術文庫で同じもの出ているようです。でも、これは本当に残念です。
【目次】
ナッツ(精霊)の国で
魔の創始、魔の定義
エジプトのヘビ、中国のトラ
龍の階層化と発展形
自然現象の魔化
吸血鬼伝説
狼男、ヒトトラ、月
アスーラとアトラス
鬼子母神など
スリランカの魔たち
ネパールの魔、バリ島の魔
西欧中世の魔女
魔法=錬金術
呪文・護符・仙人
ヒンドゥー圏のリシ=聖者
イスラーム圏の魔術師
西欧の妖精たち
狐狸、河童、山姥たち
十王、地蔵、座敷童子
鬼から化猫まで
日本の幽霊たち〔ほか〕

「魔」の世界(amazonリンク)
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2006年03月15日

「恋は肉色」菜摘 ひかる 光文社

現役風俗嬢が書いた本。それだけでも十分にキャッチーではあるが、つい最近亡くなってしまわれたことでも有名でもある。何冊か本を出されていて以前に別なものを読んだことがあるが、いろんな意味でかなり興味深い本である。

風俗業界っていうのは、普通の人にはなかなか分からない世界であるし、またどこの業界でもそうであるが、そこで働く立場の側からみた世界というは案外違っているものだったりする。

大手百貨店でさえちょっと裏に周れば非常に汚くてホコリまみれだったりするし、クリスマスシーズンのグッチやプラダのリングの検品時など、あまりの数に夜店の露店に並ぶおもちゃ程度の価値しか見出せない。15万円のクロコのビジネスバッグだって、卸は7万円程度。メーカー出しで5~6万円。まあ、そんな世界だ。ちなみにブランドもののリングの原価なぞマーク剥がせば十分の一以下なんてことは、業界の人なら誰でも知っている。

それと同様のことを風俗という業界に絡めていろいろと教えてくれている。単純にそれを知るだけでも楽しい♪ 仕事として一生懸命に頑張る著者は、どこにでもいる人であり、私でもある(おそらく貴方でもある)。少なくともお金と引き換えにプロとしての責任感を持っている点で、仕事をしない(あるいはできない)のにお金を得ているどこぞの人よりは、人間として好感が持てる。

勿論、だから著者の考えが正しいとかいや間違っているとか、そんなおこがましいことを言うつもりもないし、言えた義理でもない。まあ、いろんな人がいていいんだと思う。正直他人には、干渉しないようにするのが基本スタンスだしね、私。

でも、この人の考えには共感できることも多いです、ほんと。著者の場合、風俗に興味があるんですぅ~という人に対して、興味あるならまずやってみれば、とずばり言っているのはまさに納得しますね。別に風俗に限らず、海外旅行に興味があれば、行きゃいいのにという著者の考え方には思わず、うなずいてしまいました。うんうん。何でもやりたければやればいいし、遠まわしに眺めてやってみたいなあ~とかいうだけで何も行動しない人の気持ちがわからんというのは、同感だったりする。

私もやりたいことは何でもやってきたし、行動しないでただやってみたいかも?などというのは、性格的には我慢できない方だからなあ~。勿論、やりたいといってもその強弱があるんですが、真剣にやってみたいと思ったら、他の全てを捨てて行動しちゃうとこあるしなあ~、いかん破滅型だ(自爆)。

とまあ、いろんな読み方ができますが、個人的にはこういうの結構好きです。ただね、後半以降は精神的な葛藤がいろいろと書かれていて、こういうのが駄目な人は辛いかも? 私も昔は駄目だったけど、こういう感じの人と何人か知り合いになり、同調してこちらまでやばくなったこともありましたが、今は距離を置いて対処できるだけの(姑息な)技術を身に付けたので問題ないです。もし、読まれる方はその辺を気を付けてお読み下さい。

基本としては、とっても面白い本だけどね。

そうそう、これを読んで思い浮かべたのが岡崎京子氏の「PINK」という漫画。これは昼はOLで夜はイメクラで働く女性が主人公なのですけど、彼女の生き方は凄い!! 超・ポジティブ。「人生は幸せになる為にあるし、幸せになる為なら、私は何でも頑張って努力する、でなければ生きている意味がない」というその人生哲学は一時、私のバイブルになってましたもん(笑顔)。

私の場合は「恋は肉色」よりもはるかに衝撃を受けましたね。学生時代から万事において努力していかなかればと考える生真面目なタイプだった私には、まさに目からウロコでした。ちょうど、会社を辞めるか否かをうじうじと悩んでいた時だったので、これ読んで「辞めよう」と決意しちゃったもん(漫画で決意すんな、私)。

まあ、これだけではないですが、面白くもない仕事をしてて将来の子会社の社長か役員なんて、悲し過ぎます。人ができる仕事をするなら、他の人がやればいいもの。自分が誰よりもうまくできる仕事。自分が一から開拓した仕事、そういうのじゃないと嫌なんだよねぇ~。必然的に、ベンチャーとかの新規事業や新規部署の立ち上げ担当だったりする。上に報告しなければならないし、許可も得なければならないが、なんでも自分で決めて作り上げ、形にする仕事ってスキ!当然、結果に責任は取らなければならないが、数字なんて挙がるもんだしね。(自分の事業だけ数字が挙がっていないのが泣ける)

まあ、うだうだ書いてしまったが、人生をハッピーに生きようと思う方には「PINK」を絶対にお薦めします。惰性で生きていくよりはいいかも?まあ、こういう生き方選ぶと人よりも何倍も苦労するけどね。その分面白いのは事実。今度、また読み直してレビュー書こうっと。

恋は肉色(amazonリンク)
Pink(amazonリンク)
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2006年03月11日

「フリーメーソンの秘密」赤間 剛 三一書房

もうタイトルからして胡散臭さが爆発してますが…ふふふ。おまけに著者が書いている他の本は、ヒットラーやUFO、バチカンだもん。いかにも売文で書き散らしてますって感じが漂っています。まあ、ブックオフで100円じゃなければ、死んでも買わない本ですが、こういう本の文章にもたまに興味深い事実があったりする時もあるので一応チェック。

で、内容はというと、フリーメイソンの陰謀論だらけのトンデモ本と思いきや想像以上よりはずいぶんとまともでした。ちょっと拍子抜けしちゃうくらい。情報ソースに、それ本当なの~?というものがあるのはお約束ですが、そこそこ普通の新聞などからも引用されていたしね。

本当は少しだけP2に触れられていたので、もっと詳しい情報あるかと期待していたんですが・・・駄目でした。私の方がもっと知ってるって!(残念)

後は、普通によくあるアメリカ系フリーメイソンや英国系やフランス系のフリーメイソンとかの違いや、シオニズム運動絡みのユダヤ系の話とか。それとバチカンのフリーメイソン嫌いとかね。みんなどっかで聞いたことのあるレベルの話。その他は実際に日本にあるフリーメイソンにインタビューした内容ですが、これも昔読んだことあるような話。全然面白くない。

明らかに誇大妄想的陰謀論もしらけるが、当たり障りのない話の寄せ集めといったところでしょうか。私的にはかなりイタイ本。当然ながら、お薦めしません。もっと面白い秘密結社の本でも探して読みましょう、皆さん。

フリーメーソンの秘密―世界最大の結社の真実(amazonリンク)

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P2及びオプス・デイについてのメモ
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2006年02月06日

「私の履歴書 第二十八集」(田中角栄)日本経済新聞社

日経朝刊の最後の頁に連載されているアレです。時々、面白いものがあるので選んで読んでいます。基本的には、一代で成功した実業家や政治家のものが面白いですね。いろんな事を経験し、またその人脈の広さと行動力には脱帽するばかり。逆につまらないのが失礼ながら、学者や画家の方かな? 

平和な時代故に、特に最近のは読むに値しないものが多いようにも感じます。

記憶のある中で興味深かったのは、中曽根氏。実際に行動はされているんでしょうが、これ以上無いってぐらい御自分のされた事を過剰なまでに表現する凄さは、ある意味天才的!! 政治家として為された事と比較してあのパフォーマンスは、現代の政治家なんだなあ~と感銘することしきりです(笑)。

まあ、そういうのはおいといて。本書を神田で購入したのは、若き日の田中角栄氏の文章があったから。当時は、ロッキード以前で幹事長の肩書きだったかな?新進気鋭の若手出世頭としての立場でした。普通、私の履歴書って功成り遂げて現役を退き、余生をいかに過ごそうかという人(失礼!)が書くものですが、今まさにこれからって人が書くのはずいぶんと異例ではないかな。そういう意味でも興味深いものでした。

普段、私は田中氏の秘書だった早坂氏の本から政治家田中角栄をうかがうだけでしたが、どの本も日本的な価値観と社会の良い点・悪い点を学ぶ教科書であり、いろんな意味で勉強になる本でした。人間を描いたものとしても非常に感動させられることが多かったので、その辺も期待して読みました。

う~ん、ただ感想としてはまだイマイチかな? 田中氏が自分の苦労をベラベラ話されるタイプではないことと、政治家として現役である時に、表に出せないことがあまりにも多過ぎたのかもしれません。出せば自分はどうでもいいにしろ、迷惑がかかる人が出ることを何よりも気にする方だったようですし。いろんな意味で古いタイプの苦労人だったんだと思います。とにかく努力と誠実さが人間にとって、何よりも大切だなあ~と今更ながらに思いました。

この本ですがまあ、資料としては持っておくべき本かな? ただ何に使う資料かは不明ですが…。

昭和43年の出版だから、それよりも前の掲載ですね。確か27歳か28歳で初当選してますが、こないだ若くして当選された誰かさんとは異なり、その時点でのキャリアも人間性も全く雲泥の差がありますね。あの田中氏でも苦労に苦労を重ねてようやく、人間田中角栄ができたことを考えると、ありきたりではありますが、苦労して世間にもまれないと人間は育ちませんね!今回の教訓でした。
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2006年02月02日

「犯罪と精神医学」中田 修 創元社

率直に言って、懐かしいなあ~という感想でしょうか?中学生くらいの時かな?よくこの手の本をむさぼるように読んでいたような…あの頃だと福島章氏の「犯罪心理学」とか、ユングとか心理学系の本をよく読んでたし。そういえば、高校の友人はその方面に進んでどっかの女子大で講師してたけど、今は助教授ぐらいにはなってるかな???

と思わず、懐かしさの余り感慨に耽ってしまいそうですが、これも正統派の本です。著者は実際に精神鑑定などもしていて、理論も実務もバランスがとれている感じですね。基本といえば、基本事項をしっかり押さえている感じです。

ただ、いきなりロンブローズの生来的犯罪人説とか、クレチェマーの循環器質類型とか言っても普通の人は知らないんではないでしょうか? 僕はクレチェマー大好きで初めて読んだ時は、本当に感動ものでしたけどねぇ~。そこで展開されている主張が実に!実に!よく当てはまる実例を知っていたので、ほとんど驚愕に近いものがありました。でも、この本にはそういうの無いです。

淡々と、まさに冷静な観察者の視点で書かれているとでもいうべき本です。幾つかの具体的な犯罪の事例なども出しながら、説明しているので基本は分かり易いです。かっとなって激情のおもむくままに行われた犯罪や常習犯として行われる犯罪の危険性や再犯率なんかもいかにも妥当な説明でしたし、良心的かなあ。

さらっと入門書として読むような本です。更に踏み込むと面白いですよ~。刑法の総論なんか、もう半ば哲学かい?と思うような「人が人を裁くとは、何故か?」とかの議論は奥が深くて個人的には大好きだったりする。久しぶりに刑法の本でも読んでみたくなったなあ。

本書であと興味を持ったのは、その人の性情として、社会に出すと非常に高い確率で犯罪を起こすことが明白な人には保安処分を積極的に採り入れるべきだという主張は、なかなか注目に値するかと。一つ間違うと、思想犯に対して行われた政治的弾圧に悪用される恐れはあるものの、社会を守る為にはある程度の必要性を認めるのも真摯な姿勢故に評価すべきだと思いますけどね。

安易な平等や責任を伴わない主義主張に対して、等価的な価値を与える必要は覚えなかったりするんだけどね、個人的には。まあ、久しぶりに読むには、いい刺激になりました。
【目次】
1犯罪と精神医学
2精神病と犯罪
3精神薄弱と犯罪
4精神病質と犯罪
5中毒、とくにアルコール中毒と犯罪
6性欲倒錯と犯罪
7情動と犯罪
8精神鑑定
9拘禁反応と詐病

犯罪と精神医学(amazonリンク)

犯罪心理学入門(amazonリンク)
天才の心理学(amazonリンク)
これは、心理学好きなら絶対読むべきでしょう!! お薦めします。

関連ブログ
「辻潤全集 (第5巻)」辻潤 五月書房 ロンブローズの翻訳
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2006年01月15日

「聖パトリック祭の夜」鶴岡 真弓 岩波書店

いやあ~騙された&騙された。先日、著者の鶴岡氏のケルト関係の本が結構良かったので、更にケルトのことを知りたくて購入したけど、思いっきり外されました。これ、ケルトの本じゃないジャン!!

サブタイトルでジョイスのことに触れていたから、一抹の不安があったんだけど悪い方向で当たってしまいました。私が知りたいいにしえのケルトに関することなど、何もなく、ケルト的な要素を現代に引き継ぐ「フィネガンズ・ウェイク」のジョイスの話とか、著者の個人的な日常の話が書かれているだけで、大いに失望した。天下の岩波といえどもやっぱりつまらない本も出すんだね。自戒の意味も込めて、反省しきりの私です。

少なくともケルトに関することが読みたくて、買う本ではありません。本書の前にジョイスの「フィネガンズ・ウェイク」を既に読んでなければ、意味分からんって!私と同じ後悔をしないように皆様御注意を! 良く言えば、ケルトもどきのエッセイでしょうか? エッセイに行く前の単なる著者の日記もどきに見えてしまいます。ブログで書くのにはちょうどいいかも。

amazonに書かれている出版社や著者からの内容紹介には、嘘じゃないの~と言いたくなります。マジに。ケルトをダシにして、思い付くままに独りごとを書き連ねているのでは? もっとも非常に読み易いので、その手の文章が好きな人にはいいと思いますが、少なくとも内容紹介と実際の内容は異なっていると思います。

だって、一番肝心のケルト航海譚がちっても出てこないのであやうく読むの止めて速攻で古書店に売り飛ばそうかと思いましたもん、私。本書の中で、一番読みたくてまた一番価値があったのは「聖ブレンダン航海譚」の話。わずか11頁ながら、ここだけは一読の価値有り。逆にここだけが読みたくてこの本買ったんだもん。11頁だけ切り取って後は、本当に売るか捨てるかな? ちょっとイライラしております。値段が高い割にたったの11頁なんだもん!使えるのは。

やっぱり!素直にもう一冊の方「聖ブランダン航海譚」だけ買っておけば良かった。しかたないんであちらを買い直そうっと。あ~あ、無駄金を使ってしまった(鬱)。
聖ブランダン航海譚―中世のベストセラーを読む(amazonリンク)

著者の鶴岡氏、前回良かったケルトの本でもたま~に本文に関係無いエッセイ的なとこがあって無意味で嫌だったけど、全体としては良かったので大目に見ました。でも、この本はひどすぎ。読者が読みたいのは、個人的なエッセイではなく、あくまでも知識としてのケルトなんですが…。この著者の本を買う時には、今後のその辺の無駄なところがあまり無いかチェックしてから買おうっと。

しかし、時間とお金を無駄にしてしまったなあ~。もっと読まなければならない本がすぐ脇に山積みなのにさあ~、ちぇっ(グチグチ)。もう~(号泣)。

【補足】
平凡社からは「ジョイスとケルト世界」というタイトルで改題されていまは出ている。これならば、詐欺に当たらないだろう。逆に言えば、本書のタイトルはちょっとヒドイと思った。
聖パトリック祭の夜―ケルト航海譚とジョイス変幻(amazonリンク)

関連ブログ
「図説 ケルトの歴史」鶴岡 真弓,村松 一男 河出書房新社
「ケルト神話と中世騎士物語」田中 仁彦 中央公論社
聖ブレンダンの航海譚 抜粋
ラベル:書評 ケルト
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2005年12月10日

「酒の肴・抱樽酒話」青木 正児 岩波書店

高田馬場の古書店で早稲田中学の除籍図書として50円で売っていた一冊。暇つぶしに読み捨てられればと安易な気持ちで買ったものだが、どうして&どうして、中身のある一冊でした。

最近、TVでやっているくだらないグルメ番組には正直飽き飽きしていたし、おいしんぼ系のウンチクもいささか鼻につき、かえっていやらしさを感じる昨今、是非とも酒を愛し、酒の肴を愛す、硬派の士人諸君には読んでもらいたい一冊! 思いっきり俗物で軟派な私が言うのでは信憑性が薄いかもしれませんが、これは酒飲みとして、読んでおいていい嗜みとも言うべき本かとも思う。

最近では、めっきり評価されないものタイプ教養あふれる文章。著者が漢文学系の学者さんというのでそれも納得だが、土地土地の酒の肴を紹介したりしながらも、それをはるか中国の古典籍に由来を遡りつつ、評論していくのがなんとも愉快。塩、鮒寿司、河豚、蟹、酒盗などなど。詳しい作り方や、古の製造法。それにまつわる漢詩なども豊富で、実に楽しいんだなあ~。ただ酒を飲みゃあいいってなもんでもないことを改めて思い知らさせる。

やっぱ、酒は人生の友でしょう。昨日は酒飲んで電車を乗り過ごし、終電がなくなったのでタクシーに乗る羽目になり、3000円も無駄に金を払って泣きそうになりましたが(本が買えたのに・・・)、それでも酒無しにはいられません。悪友と飲むも良し、綺麗な女性に囲まれて飲むのも良し、一人で画集を眺めつつ、飲むのも良しです(満面の笑み)。

話は変わるけど、鮒寿司って下にしいてあるご飯は腐ってしまうので食べないんだってこと、本書を読んで初めて知りました。江戸前の寿司のように、お手軽さがウリの寿司ではなく、本当に発酵させたなれ鮓なのは知っていましたが、食べたことないんですよねぇ~。ダチョウやワニは食べたけど、こういうの食べてみないと!!

この本を読んでふと金沢で食べたかぶら寿司を思い出しました。酒糟に魚を挟んで発酵させたもので私にはすっごく美味しくてお土産にも買ったけど、自宅では独特の匂いと味に両親がパスして一人で酒の肴として食したことを思い出してしまいました。あれに近いのかな?ごり料理も良かった!

ちょっと話が脱線してますが、古代中国での酒にまつわる話などが本書では随所に触れられていて、本当にお薦め。但し、漢文とかの素養というかその手のに関心がある人でないと十分に楽しめないかもしれないです。良くも悪くも、趣味人の通好みのお話かな。

酒を愛し、芸術を愛し、人生を愛する方には是非どうぞ!

そうそう、決して金をかけて高ければ、珍しければそれで良いというような安っぽいことは言わない一方で、古来より美食にかけては、本当に厳選されたごく一部以外全ての食材をゴミとしてしまうような美食の話も出てきて、スケールが非常に大きいのもまた素晴らしい。古代ローマの饗宴サテュリコンを思い出してしまったくらい。読まねば~♪

あっ、絶版みたいです。どっかで見つけて下さいませ。

酒の肴・抱樽酒話(amazonリンク)

関連ブログ
国立西洋美術館のイルミネーションと酒の肴
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2005年12月01日

「性風土記 」藤林 貞雄 岩崎美術社

まあ、民俗学系の本で性風俗を扱う本というとだいたい想像がつく向きも多いかと思います。パターン的には、社会学としての解説がメインのものと全国から集めた事例集がメインのものの2つがあるように思いますが、これは事例集の方ですね。地方各地に残された風習や習俗に関する伝聞や文章を集めています。

特に、著者が非常に真面目な方でともすると、卑俗で野卑なものになりかねない性風俗を真摯に調査しようという姿勢が結構好きですね。逆にいうと、猥褻っぽいものを期待してはいけません(笑)。

内容として興味深かったのは、処女を忌み、見ず知らずの他人や年長者によって女にしてもらって初めて一人前になり、嫁にいけるという習俗が昭和になってもまだ存続していたらしいことが想像を超えていて驚きでもありました。西洋の中世にあった領主の初夜権と似ているようですが、あれは強制的な領主の横暴ですが、日本の場合は習俗から自ら進んでそれを行うというのが対照的に異なっています。どうやら、神とすることによって初めてうまくいくようになるという考えがあり、神を代行するものとして他人が出てくるものなのだそうです。

この本には書かれていませんが、古代文明の神聖売春のようなものに近いような気がします。年頃になった娘は全て神の神殿に巫女として奉仕し、自らを売って得たお金を神殿に奉納して初めて、人間の女となり、故郷に戻って結婚が許されたというあの話です。容姿が美しくない女性はいつまでも買手がつかず、巫女から解放されなかったというエピソードがおまけについてましたが、あの手の考え方が昭和になっても日本で存続していたのは、凄いですねぇ~。

そうそう、嫁盗み、なんて話も載っています。いわゆる略奪婚みたいなものを想像しますが、事実は全く異なっており、資力の無い次男・三男が結納などの経済的負担無しに婚姻をする為に、いささか非合法的な手段を取るものであり、軟禁はするものの、最終的に親からの了解を取り付けるまでは一切、暴行等手出しはしないのが原則なんだそうです。しかも当事者個人だけが行うものではなく、周りの人に相談したうえで協力して行い、連れていく時にはちゃんと親に誰が連れていったのかを連絡する役目の者がいるのが普通なんだそうです。勿論、交渉がまとまらなければ、女性は無事に自宅に帰されるのであり、当時の社会情勢から生まれたそれなりに合理的な習俗・習慣だったようです。

それを字づらだけで追うと、原始人が力ずくで拉致して嫁にしたように誤解されますが全然違うと書かれています。なかなか勉強になりますね。(でも、源氏物語の若紫はどう考えても不法監禁と略奪婚だと思うけどなあ。美男子だから許されるのかな?(笑))

女護が島伝説。好色一代男で有名なあの島ですね! それにまつわる話がいろいろと載っています。私がこの本を買おうと思ったのは、実はこの章に惹かれてだったりします。名称はよく聞くものの、内容がはっきりとは分からなかったので、資料として読んでみたかったのですが、まあ、悪くはないかな。想像の範囲内ではありましたが、今までほとんど知らなかったので参考になりました。

あとは、普通の男女の性器にまつわるものとかのお話かな。金精様とか。まあ、持っていても悪くないかな~っていう程度の本です。読み易いですけどね。必携の本とまではいかないです。お好きな方は、ついでにどうぞって感じでしょうか。

性風土記(amazonリンク)
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2005年11月19日

「ウサーマ・ビン・ラーディンその思想と半生」石野肇 成甲書房

usama.jpg著者が外務省の専門調査員であり、実際に職務に関連して収集した情報をベースにして(但し、本に載っているのは公表済みのもの)、ほとんどのマスコミが適当な情報を流している中でかなり客観的に書かれたものだと思います。

ただでさえ謎が多い人物であり、おそらく本当に正確なものは分からないのだろうけど、辿れる範囲でビン・ラディンがどのように生きてきたのか、どのようにして彼の思想が形作られてきたのか、少しでも理解するうえでは役に立つと思う。

彼が決して最初から、過激なテロリストのスポンサーだったり、反米主義の急先鋒だったのではない。彼が尊敬する宗教指導者が反体制的であるというだけで投獄され、殺されたり、アメリカによる数々の政略的な戦争、大切な祖国が異教徒であるアメリカ軍に駐留(=当然、彼らからは侵略以外に何物でもない)されるなど、何度にも渡る先制攻撃に対して立ち向かった過程をみると、アメリカ発の「世紀の極悪人ビン・ラディン」像には、疑いの目を向けざるを得ない。

イラクのフセインの時もそうであるが、えてしてアメリカ自体が紛争の種をまき、それに水と肥料を与えて育て、できた果実が反米主義、テロの標的国家アメリカに他ならないことを忘れてはならないだろう・・・。

かくいう私なんかもランボー3の「怒りのアフガン」とか出来の悪い映画でしか、アフガン戦争のイメージがないのは明らかに情報操作され、踊らされているのだと思う。アフガン戦争は、ソ連VSアメリカではなかったんですね。基本的な図式さえ知りませんでした。アフガンで闘っていたのは、世界中から軍事経験を積む為に来ていた人々も多くいたとは・・・、つまりある種のOJTにもなっていたとは・・・知りませんでした。何にも。

彼は既にアフガン戦争でアメリカを撤退させた英雄だったんですね。同時に、多国籍企業の経営者であり、土木業から運送業、穀物ビジネスの商社やら純然たる銀行や外国為替会社を始め、傘下にはそれこそ無数の企業群を抱えたコンツェルンのようなものを築き上げているんだからなあ。どっかの国のトップで、パパから紹介してもらった石油会社をつぶしまくった誰かさんとはえらい違いですね。条件が同じなら、絶対にどちらが優秀なのか分かります。

まあ、本の著者は人物の能力は冷静に評価しつつも、その思想や行動については相当冷ややかなコメントをされていますが、私は異なったイメージを持ちました。肯定はできませんが、少なくともアメリカのいう悪役ではなく、日本のマスコミも含めてみんなで情報操作をしているのは間違いないですし。自由な国と言っても北朝鮮と大して変わらないかも?・・・マスコミの無為無策には。

他業界には競争を強いるくせに、自らが資本主義の中で競争に巻き込まれると、逃げようとする卑怯な態度には不快感を覚える。不祥事を起こした時点で、何故免許を剥奪しないのか不思議? 民放の一つや二つがなくなっても、いくらでも代わりの局なんか作れるのにね。トヨタTVがあってもおかしくないのに・・・。

ちょっと、話がそれましたが公平な観点から、世界のいろんなことを知りたい方にはお薦めします。アル=カーイダやタリバン、世界で起こった各種テロ事件、国際紛争。いろんなことを知ることができます。日本にたくさんの石油を供給してくれるアラブの国ですが、豊かで明るい石油成金なんて、とんでもない誤解でした。国内の各種反対勢力を抑える為に、法律によらない不法監禁・拷問なんかもやる結構えげつない国なんですね。TVのイメージのようなのんびりしたもんなんかじゃありません。やはりいつでも政治は、冷酷で非情なんだと思いました。

少なくともアメリカが正義の国でないことだけは、いつもながらに実感しました。もっとも、その国無しにやっていけない日本の繁栄も痛感してますけどね。所得が半分になっても世界平和を望む日本人はどのくらいいるでしょうか? 奇麗事ではなく、生きるのは大変だと感じました。

ウサーマ・ビン・ラーディンその思想と半生(amazonリンク)

関連ブログ
「インタビュー オサマ・ビンラディン」ダイヤモンド社
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2005年11月16日

「賃労働と資本」カール マルクス 大月書店

えっと、高田馬場の古書店で均一棚を覗いていたら、あったものです。おそらく一度も読まれないままで補充カードや常備カードがついたまま、マルクス関係の本がドサって売られてたんです。一冊50円也。

経済学を専攻していたとはいえ、メインはファイナンス。近代経済学の申し子たる私には、マルクス経済学とは、どこぞのいにしえの信仰? 程度の認識しかありませんでした。ただ、一度くらい読んでみたいと思っていたけど、もう売ってるとこもほとんどないんじゃないでしょうか? 

本自体は綺麗ですし、レアもんかなとそこにあったシリーズを5冊ほど買ってしまいました。まずはこの一冊から読書。

特別な教養の無い普通の労働者が読んで分かるように書かれたパンフ、とのことですが、それほど分かり易いかなあ~? 私の理解力がないのかな??? 悲しい(涙)。

分からないなりに、理解したことを書くと、土地とか各種の生産財と労働力により産み出されるものの価値は、提供された労働力の本来の価値以上のもの(余剰=利潤)が含まれている。とか、そういったことですね。その余剰が資本の蓄積により、更なる労働力を要するようになるとか、資本家達の競争により、生産効率(=生産性のことだと思います)がよくなって商品の価格が下がっても、それは分業と単純化による労働力の実質的価値が下がる、みたいな説明がされていました。(私の理解が怪しいけどね?)

全般的な感想しか言えないけど、資本主義のマイナス面の評価しかしてないんじゃないかな?時代的なものを考えれば、分からないでもないけど、資本主義の競争によって必然的に産み出される労働生産性の向上とかの視点が非常に弱い!と感じました。

価格低下に伴う、大衆による需要の創出・増大の視点もほとんどないし、あくまでもあの当時の過渡期の”仮説”なのかなあ~? まあ、これを元にしてしまうと、確かに効率性の概念が抜けてしまい、かつての共産国になってしまうかも・・・。やっぱり、今の時代にはそぐわないものを感じました。

賃労働と資本(amazonリンク)
実は、amazonにあるのは岩波しかありません。訳者も私が読んだのは村田陽一氏でしたが、岩波文庫は違う方みたい。参考までに。
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2005年11月13日

「妖怪十二支参り」村上健司 同朋舎

youkai1111.jpg水木しげる氏の表紙と、妖怪絡みの本ということで以前から気になっていた本。「ホラージャパネスク叢書」という、いかにも現代的且つ、売れ線狙いのネーミングながらちょっと読んでみたいと思わされる本が何冊かこのシリーズにあり、まずは一冊読んでみて良かったら他のものにも手を出そうかとチャレンジ!

結果からいうと、この本は中程度の当り!!この手の本は、企画ばかりで内容がないものが多い中、それなりに読むだけの価値がありました。もっとも本書は干支にちなんだ妖怪をそれぞれ紹介していく企画だったようですが、干支にはもともと日本に馴染みのない動物(外国産)や、馴染みはあっては妖怪としてはあまりいない場合もあり、後半になるにつれて企画の意味がなくなってしまっています。

その点でいうと、本書のタイトルや当初の企画は完全な失敗ですが、干支をキーワードに妖怪に関する話が多種多様な文献から、引用されています。こういう話があったんだ、あるいは、あっ、あの本にはこんな事書かれているんだと文献探しや目安には、とっても有用。

具体的には、以前本屋で見つけて買おうか否かと迷った本に「河童駒引考」(石田英一郎著)があるが、この本から本書に引用されている部分を読むとなかなか使えそうな本であり、改めて購入予定本に入れました(笑顔)。他にも、自分が所有している本が多数引用されていたり、名前だけで読んだことのない文献等もたくさん挙げられていて、自分で調べたい時にとっても役に立ちますそうです。ただ、巻末に文献一覧とかあると、言うこと無しなのですが・・・その点は残念です。

あとね、妖怪に絡む神社・仏閣の写真や駒犬の写真なども白黒ながら、そこそこ入っていて分かり易いです。私もあちこち旅行した時にこの手の写真をよく撮る人なので、それだけで嬉しかったりする。鼠の章では、京都の哲学道沿いにある大豊神社の駒犬として鼠の写真があるが、ここの神社はデートで回ったこともあり、写真もバシバシ撮った覚えがあって懐かしい。貴船神社や三峰神社、秩父神社など私も好きで行ったことのある所の写真も時々出てきてそれもちょっと嬉しい♪

本書の良い所は、これを読むだけでいろんな伝承などを引用という形で知れること。読んでいて分かり易く、楽しいし、更なる文献探しをしようという気にさせてくれます。何でもそうですが、関心が湧かないと資料なんて読む気にならないもんね。特に気まぐれな私としては(笑)。

いくつか本書の中で面白かったところを孫引きすると・・・。有名な話ですがインドの説話から。

「その昔、帝釈天が森の動物たちの徳を試す為、老婆の姿になりすまして森を訪れた。このとき、獣達はすすんで老婆に御馳走するために森をあさった。頭のよい鼠や猿などはいち早く食物の材料を集め帰ったが、兎は不器用なため何も探せず、とぼとぼと帰ってきた。そして老婆の前に来るなり木の枝を集め、火を焚きはじめた。それを見ていた老婆は、兎がこれから調理でもはじめるのだろうとながめていると、とつぜん兎はその身を火中に投じ、「この身体を焼いて食べて下さい」といって、みずから犠牲になった。帝釈天はその行為にいたく感動し、ただちに兎の魂を天に上げ、月世界に住まわせたという。」

お釈迦様が飢えた虎に自らの身体を与えた話が自然とオーバーラップしてきますね。この話自体は何度か聞いたことありますが、改めて他宗教とは異なる仏教的な精神を感じさせてくれる話なので引用してみました。

あと、「兎には雄が無く、月を見て孕む」との中国の古書の話が、「和漢三才図会」にも載っていることなんかも紹介されています。そんな情報も面白くて好きなんですよ~(ニコニコ)。基本としては定番系のお話が多いですが、それにプラスアルファされたものもあり、
この手のが好きな人には、おさらい代わりに如何でしょう? 軽~く読める一冊です。

妖怪十二支参り(amazonリンク)
河童駒引考―比較民族学的研究(amazonリンク)

関連ブログ
「妖怪図巻」京極夏彦、多田克己 国書刊行会
「日本妖怪巡礼団」荒俣宏 集英社文庫
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社
「稲生物怪録」荒俣 宏 角川書店
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2005年11月11日

「大江戸魔方陣」加門 七海 河出書房新社

ooedo.jpgちょっと前、っていうかだいぶ前か結構もてはやされた本。京都が四神相応の祝聖された土地であり、徳川家300年が続いた江戸も同様に祝聖されているだろうとことから、霊的に守護された証拠を今に残る神社などから、探していこうというものなのだが・・・。

いやあ~、ブームの時に読まなくて良かった。イマイチ表紙の胡散臭さから、購入を控えたのは正解でした。高田馬場で100円だから買ったものの、こんなのはもう二度と手に取らないだろう。本当に中身がない本。悲しい、悲し過ぎる…(涙)。

この前に読んだ本が聖人イグナチオで感動の涙だったのに…次がこれかい!もう~。

著者はこれ以上ないってくらい軽い。誤解しないで欲しいのですが、間違っても軽妙な文章というのではない。中身がなく、ただ文字を連ねているだけで文章ではない。ゴーストライターの書いたタレント本に負けないくらい中身がない。それはある意味、驚愕に値するほど、つまらない文章だったりする。

更に輪をかけるのが、中身の無さ。地図を買ってきて、線を引いてみました。線上にある神社の祭神が同じでした。だから・・・なに?(イライラ) 解説がもう言語道断なくらい意味無し。おば様の独りごとを本にしたの?とでも言いたくなる。まあ、著者はそれで印税が入るなら、いいでしょうが、これを本にして出版した河出書房を恨むなあ~。とても澁澤龍彦全集を出した出版社だとは思えん?つ~か、悲しくて涙出るぞ~!

しかし、紙面が余って余白が多いこと&多いこと。下の2割のスペースは何の為?紙がもったいないよ。広告の裏紙でもいいくらい。しかし、よくもこんな最低本があったもんだ。これが売れてたなんて・・・? 

文庫にまでなっているのが、恐ろしいなあ。誰が読むんだろう?少年少女にしたって、もっと内容のある面白いのを読むと思うのですが・・・。本を読んでてこれほど無駄に感じたことも久しぶりでした。まあ、こういうときもありますね。

大江戸魔方陣―徳川三百年を護った風水の謎(amazonリンク)
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2005年10月30日

「江戸の花街「遊廓」がわかる」凡平 技術評論社

yuukaku.jpg表紙の見かけから、思いっきり軽くて内容無さそうに見えたのですが。落語カルチャーブックとも書かれてもいたし、最近流行りの表面だけをなぞったものかと期待しないまま読んでみると・・・。

どうしてどうして、なかなか盛りだくさんの内容で想像以上に中身が濃い。遊郭に関する本は何冊か読んでいたので、この本で初めて知った知識は少ないもののコンパクトにまとめられた割に基本がバランス良く抑えられていてとっても良心的。この手の分野の初心者には、絶対にお薦めします!

読み易いけど、これでもかっていうくらい親切な解説は嬉しいかも。客が遊女を尋ねる1回目を初会、2回目を裏を返す、3回目を馴染みとかの用語の他にも祝儀の惣花(そうばな)や特別イベント日の紋日、吉原へのアクセスとして猪牙船とか他の本で学んだことがこの一冊で分かってしまいます。

なかなか客がつかなくて「お茶をひく」って言葉がありますが、これは売れていなくて暇な女郎に本当にお茶を臼でひかせていたとか、トリビア的な事柄もいっぱいあって読んでて楽しい。

あとね、文章ばかりで飽きないようにコラムみたいにして、別なトピックを採り上げているのもユニーク。当時を踏まえて、現代の散策路として紹介されているのもイイです。紹介される前から、時々この辺は歩いているので知っていますが、確かに歩いても面白いところを挙げてます。御存じない方は是非、一度歩いてみるといいかも?

後半の4分の1くらいは実際の落語を文章におこして、脚注に用語の解説をしてくれています。ここまで解説しなくても、っていうくらい詳しく丁寧な解説で、落語をほとんど聞きに行ったことのないような人(私も数回しかないんです、実は)でも分かります。きっと。

これ読んでると、落語を聞きに行きたくなりますよ。ホント。おまけにこの本はCDで志ん生の落語まで入っているのでまさに至れりつくせり。遊郭に興味のある人、落語ってどんな感じと思う初心者、買って損のない一冊です。見た目と違ってなかなか、充実した本でした。出版社が技術系の技術評論社っていうのも意外ですけどね。これは当りかと思います。
【目次】
1章 江戸の遊廓「吉原」
 江戸の不夜城・吉原遊廓
 吉原は色の夢里
 いざ吉原へ
 五丁町と仲之町
 茶屋と見世
 見世の格付け
 見世のつくり
 吉原遊び
 目指すは間夫
 遊女の手練手管
  散策コース (1)浅草寺と奥山
  散策コース (2)富岡八幡宮と深川えんま堂
  地図で読む江戸今昔 吉原遊廓の“廻し”

2章 吉原の歴史と伝説
 格子向こうの吉原の花
 新吉原の変遷
 明治以降の新吉原
 伝説のお大尽遊び
 座敷遊びと料理
 観光名所・吉原
 花魁道中
 江戸文化の華
 ありんす国の花魁伝説
  散策コース (3)柳橋と鳥越神社
  地図で読む江戸今昔 浅草は江戸の解放区

3章 遊廓に暮らす人々
 娘たちの十年間の吉原生活
 遊女の一日
 遊女人生
 吉原の年中行事
 吉原モード
 遊女屋で働く男たち
 遊女屋に出入りする人々
  散策コース (4)吉原遊廓と鷲神社
  地図で読む江戸今昔 芸者の男名前の由来

4章 四宿と岡場所
 庶民が通った色里
 四宿と岡場所
 宿場と飯盛旅籠
 四宿の遊び
 南国・品川宿の飯盛旅籠
 岡場所と女郎アラカルト
 気っ風が売りの深川
  散策コース (5)内藤新宿と追分跡
  散策コース (6)板橋宿と縁切榎
  地図で読む江戸今昔 四宿と宿場女郎

落語速記
 付き馬
 二階ぞめき
 幾代餅
 品川心中

志ん生で味わう江戸情緒[2] 江戸の花街「遊廓」がわかる [CD-ROM付](amazonリンク)

関連ブログ
「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社
「図説 浮世絵に見る江戸吉原」河出書房新社
猫定 三遊亭圓生
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2005年10月20日

「陰陽師」荒俣 宏 集英社

onnmyouji.jpg土御門家って、皆さんご存知でしょうか?私が初めてその名を知ったのは、本書の著者荒俣氏の書かれた「帝都物語」でした。この本を最初に手に取ったのもまずは、土御門家についてページが割かれているからでした。

本書は土御門家をスタートに、現代に残っている陰陽師にまつわる場所や人々を尋ね、フィールドワークを通して地方や現在に至る陰陽師の姿を描き出していきます。なんせ資料を調べるのがお好きな荒俣氏ですから引用される様々な文献はもとより、実際に行って調べてるので情報が豊富で面白いです。さすがは本家とでもいうべき荒俣氏らしさがあり、ありがちな陰陽師関係本とは一線を画していてユニークです。

さて、内容ですが、土御門家は中央にあって陰陽道に関する官位を独占する一方で、地方の民間陰陽師についても許認可権を持ち、お茶やお花の家元のように一定の上納金等を集めていたそうです。また、中世以降になると陰陽師は中央の仕事以外にも、散所(さんじょ)という荒地を管理し、自由無所属の人びとをたくさん抱えるようになりました。地鎮祭と土木工事の技術を有する陰陽師には、まさにうってつけだったそうです。そもそも、そういった無所属の人々との繋がりは、芸能の民を束ねることからも進んでいったようです。

その辺のこともとても興味深いが、昭和20年頃まで吉備真備ゆかりで賀茂家の祖先の地と言われる吉備に上原(かんばら)大夫という陰陽師の一団が村を作っていたそうです。そしてそこには、あちこちに安倍晴明伝説が残されているんだそうです。

他にも学者の小松和彦氏の研究で一躍有名になった高知県物部村のいざなぎ流などもしっかり採り上げられています。もっとも以前から小松氏の本ならかなり読んでいた私には、そんなに目新しいものはなかったですが、リアルに今現在も祈祷が行われているのは、注目に値しますね。いざなぎ流の話だと必ずと言ってもいいほど出てくる「唐土じょもん」の祈祷祭文の話とかもきちんと入っています。知らない人は、ちょっと珍しくて良いかも?

確か、異色(異端?)の漫画家丸尾末広氏によって唐土じょもんの話は漫画化されていたような気がしました。すっごくインパクトがありますが、特殊過ぎて普通の方にはお薦めできません。探したんですが残念ながら、作品名は見つかりませんでした。 まあ、一応参考までに。

それらはおいていて、本書で気になったことをメモ。
森鴎外の小説「山椒大夫」の山椒はさんじょにつながりがあり、「さんじょ」とは未だ開墾されていないような土地とかを指していた。また「大夫」も陰陽師を指す言葉であることから、即ち、さんじょを治める地方の有力者である、民間陰陽師のことだったんだって。これは、初めて知ってちょっと感動しちゃいますね。

だって、「安寿恋しや、ほーほれほー」「厨子王恋しや、ほーほれほー」とかいうあの山椒大夫がまさか地方で流浪の民を使役する陰陽師とは思いもしませんでした。売り飛ばされて奴隷のように働かされる安寿の仕事である汐汲みは、塩作りの過程であり、まさにさんじょでの人びとの仕事なんだって。いやあ~、なんかトリビアにならんかな?これ。こういう話、大好きだったりする(笑顔)。

あと遊女と傀儡(くぐつ)との関係も面白い。同様に彼らは陰陽師との関係も深いそうです。陰陽師が芸能の民を束ねていた以上、当然といえば当然ですけどね。

大江匡房「傀儡子記」より
~クグツとは定住しない人々の呼び名で、家を持たずに暮らしているという。男は弓と馬を使い、狩猟に従事する。また木人(でこ)をあやつり、生きている人のように舞わせることができる。また「魚竜蔓蜒の戯」という正体不明の技を行う。彼らは「百神(百大夫)」を信仰し、女は化粧し、媚を売り、素晴らしい声で歌う。一夜の交わりも嫌わない。かれらは田を耕すことなく、枝葉を一本も採らない。県官にも所属することのない流浪民である。東国の美濃、遠江、また播州や但馬にいる。その名は小三、万歳、孫君などある。今様や催馬楽、田楽、呪禁、占いなどを行う。~

どうも傀儡と遊女というと、あの小説の「吉原御免状」を思い出してしまいます。あれも背景的なものは、事実なんですね。改めてあの本も感心しちゃいました。

いざなぎ流のスソの祭文より
~釈迦如来尊すなわち仏が四十二歳、妃が四十一歳になっても子宝に恵まれなかった。相談すると、叔父のだいばん殿を養子にして御世を継がせるべきだと、との教示があった。仏は。だいばん殿を養子にもらうのであれば、妃がいなくてはいけなからうと、浄土へ妃探しに行った。そこに二人の姫がみつかったので、妹の方を貰い受けて、だいばん殿の妃にした。

 ところがすぐに仏の妃が懐妊した。だいばん殿が、仏の妃に望まれた「七十五品の願」を聞き届けて、七十五品をすべて揃え、妃に送った。その引き換えに、約束どおり御世を譲ってほしいと訴えたのだが、仏は一日延ばしにして譲ってくれなかった。

 やがて仏に子の釈尊が誕生した。その子が大きくなったので、仏はだんばん殿に、「石の的を打った者に御世を譲る」と宣言した。だいばん殿は、はね返ってきた矢で目をつぶしてしまい、一方の釈尊はみごとに石の的に矢をあてた。

 怒っただんばん殿は仏の許を脱し、旅に出てしまった。残されたのは妃のみ。妃は釈尊を恨み、釈尊を調伏しようと決心した。しかし妃の力では、釈尊を調伏することなどできない。途方にくれているとき、唐土じょもん様という人が通りかかった。妃は贈り物をして調伏法を伝授してもらうことになった。

 唐土じょもんは、次のようにして、恐ろしい呪詛を実行した。
 伊勢のごんざが川へ降りていき七段三段の壇を作ると、茅萱の人形に色絹を逆さまに縫い着せ、逆刀を使い水花を三度蹴上げ蹴下ろし、地に伏し天を仰いで、「三年三月火の病に罹るがよい」と調伏した。すると呪詛が効き、釈尊は倒れてしまう。

 釈尊はこの悲運を克服すべく、偶然なことに唐土じょもん様の許を訪れた。すると唐土じょもんは、釈尊に問いかけた。「以前に人と諍いをしたことはないか?」と。

 釈尊は叔父のだいばん殿との一件を思い出した。その話を打ち明けると、こんどは唐土じょもんが驚く番だった。
「その釈尊を調伏してしまったのは、実は私だったのです」と。

 釈尊としては唐土じょもんに呪詛返しをしてもらうほかない。この呪詛返しが撥ね返ってきたのは、だいばん殿の妃であった。彼女は再度の呪詛返しを依頼するが、いざ調伏してみると、その呪いがこんどはだいばん殿の妃に行ってしまった。妃は重病にかかり、腹を立てて鳥になって飛んでいってしまった。~

うっ、メモし過ぎて疲れた。まあ、こういった本もちょこっと見る分にはいいかも。軽~く読み流すレベルです。そうそう、いざなぎ流のお話をもっと知りたければ、何はなくとも小松和彦氏の本を見ておきましょう。以前は阪大の助教授でいらしたのですが、その後、教授になられた方です。この手のお話や民俗学系の生贄とか習俗の話は、傾聴に値すると思います。何よりも面白いです♪ 

あれぇ~作品名忘れた?この人も妖怪関係とか、手当たり次第本出すから、冊数多くて誰だったか分かんない?読んで面白かったのをいくつか紹介しておきます。

陰陽師―安倍晴明の末裔たち(amazonリンク)

小松和彦氏の本
鬼がつくった国・日本―歴史を動かしてきた「闇」の力とは(amazonリンク)
神隠しと日本人(amazonリンク)
憑霊信仰論―妖怪研究への試み(amazonリンク)

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2005年10月05日

「錬金術」沢井繁男 講談社

私は、この本は初心者の為の入門書だと誤解して読み始めました。全然違っていたようです。この本を読んで錬金術を理解できた方はきっと初めから知っていらっしゃったか、恐ろしく誤解されているのではないか? そんな心配をしてしまう本です。

まどろっこしい表現をしてしまいましたが、著者が勝手にそうだと思っている理解を自分の論理で《分かり易く》紹介している本ではないかと思います。少なくとも私には、この本を読んでも何を言っているのか全く理解できませんし、錬金術モドキではないかと思いました。もしかして難しいことを言って「ケムに巻く」この本自体が錬金術かな~とも屈折して捉えたいくらい、訳が分かりませんでした。

そもそも錬金術とは何か? この基本的な命題を歴史的な変遷や社会的背景とかをほとんど考慮しないまま、あたかも所与のもののように定義付けされても、私には懐疑的にしか見れません。物事を単純化して考える、巷にもよく言われますし、予備校の先生である著者にはお得意なのでしょうが、正直言って無理してます。錬金術の概念の仮説構築の段階で失敗していると思います。

更によせばいいのに、ご自分の把握した概念説明の便宜の為に、ご自分が作り上げた用語で説明しだす辺りから、暴走しているなあ~としか思えません。いろんな本とかからも引用しながら、説明するのですが、なんかグチャグチャしていて、まがりなりにも単純化したメリットが全くないようにも感じました。

それとオカルト系のしょうもない本によくある、錬金術師が使った用語とかの説明をしてしまい、(そもそもそこに入門書で触れるのはどうかと思うのですが)・・・自爆してます。段々と、しかしはっきりとこの本が何の本か分からなくなります。何を説明したい為に、引用しているのか or 単語の象徴するものを述べているのか、本末転倒し、ダラダラと引用と説明をするだけで私にはついていけません。

後半以降は、さすがに耐えられず飛ばし読みしてみましたが、私には無意味なものとしか映りませんでした。私が読んだ錬金術関係の中では、一番つまらなかったし、訳分からなかった本です。オカルト本の方が、噂や捏造にしろ、もっと面白いですし。

講談社の現代新書シリーズとしても読んだ中では、初めて期待外れでした。う~ん、なんでだろ? 絶版で良かったかも、古書で見つけても買わなくていいと思います。

錬金術―宇宙論的生の哲学(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」吉田光邦 中央公論社
これらの2冊の方が、はるかにいいです。
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2005年09月11日

「青木雄二のナニワ資本論」朝日新聞社

naniwa.jpg漫画「ナニワ金融道」で有名な青木氏の本です。いくつもの会社を転職し、自分でも会社を経営していた体験に基づいて描かれた日本の資本主義の真実の姿が非常に好評です。私も漫画の時から、読んでいましたが、大学で学ぶ手形・小切手法より、実社会では使えます。マジに。

法律上でいくら債権があるといっても、債権は回収して現金になって、初めて本当の意味での財産権になるのであり、回収できない債権は子供銀行券のおもちゃのお金と同じようなもんです。いくら法律上、保護されていても力がない者(更にいうならば、無知であることが一番最悪ですが)には意味ないんですね。その辺のことが分かり易く、実例入りで紹介されていて面白いです。

実際に社会でそれなりの仕事をしている人なら、そうそう良くあるねと共感できますし、あまり社会経験のない人なら、自分が物を知らない故にカモにされたり、搾取されたりといった目に遭わない為にも有用だと思います。

もっとも、先日お亡くなりになられた青木氏は、かなりのマルクス信者でそこには私は共感できませんけどね。私は大学院でも近経(=近代経済学)専攻で、マル経(=マルクス経済学)には、あまり価値を見出しませんでした。あれって、経済ではなくて哲学とか思想の範疇のような気がしますしね。まあ、人それぞれですが。

まあ、それらはおいといても、現在の資本主義社会では、生きていくうえでの法律や経済の知識に関する限り、「無知」は「純粋」や「無邪気」といった肯定的な価値観ではなく、「怠慢」といった否定的なものなのかもしれませんで、こういう本もたま~に眺めるのは有用だと思います。実際、ここに出てくるような国家の払い下げる国有地の入札や、マンションやビルの一棟買いの話は個人がすぐできる話ではないですが、定価で売られているマンションを購入するのがいかに暴利をむさぼられているかを理解するうえでは参考になります。

これは私が実際に知っている話ですが、とある副都心の一等地にあるオフィスビルに入居するにあたり、最初の数ヶ月の賃料をタダにしてもらうなんていうのは、なんでもなくて。まとめて15年とか20年分の賃貸料を現金一括で払うから、賃料を3割とか4割まけろとかそういう交渉をするんですよね。金持っている人は。

あるいは、通常のお客さんでもプラチナカードホルダーとかは、モノを買うのでもまとめて20個買うならいくらまけるかと、交渉してくるんですよね。一般カードの人は、必ず定価で買うのに、金持ちは必ず値切る。勿論、お金があるからできるし、それをするから金持ちなのですが…。

だいぶ昔の話になると、あるとオフコンを一台入れるのにハードとソフト合わせて2000万以上とかいうのを、他社とあいみつをとってさんざん値段を落としたうえで、細かい見積もりを出させて不要部分を削りながら、1000万円まで落とす。更に契約書の最終段階で、支払を一括現金にするからといいながら、もう一度値切る。かなりエグイ。そこまでしないと駄目なんだろうなあ~。ビジネスって。

それと同種の事柄がたくさん載っていて、思わず納得・共感しながら読みました。青木氏の本、全般にいえるけど、知っておいて損はない知識や情報がたくさんありますね。少なくとも自分が資本主義の社会で騙されたりするのを防ぐ役に立ちそうです。

こういうのを知ったうえで、必要に応じて専門書を読むと便利です。どっかの銀行が漫画の「ナニワ金融道」を新人研修で採用したと言っていたけど、さもありなんってね。私が大嫌いだった道徳の本よりは、人生にとって有用だと思いました。

青木雄二のナニワ資本論(amazonリンク)
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2005年09月06日

「江戸入浴百姿」花咲 一男 三樹書房

edo.jpg完全なる資料本ですね。モノクロですが、図版もそこそこ入っています。

当時の入浴、というか銭湯に関する風俗がよく分かります。あと、川柳とかが非常にたくさん引用されていて、その風俗の状況を説明するのにうまく使われています。その洒落たところがなかなか心憎く、言葉遊びの勉強にもなって楽しい反面、あまりにもその引用件数が多く、川柳とかに興味が無い人には正直苦痛で読み難いかも?

う~ん、私の場合は微妙でした。面白いと思うことも多かったけど、そんなにたくさんの川柳をいちいち見てられるかって感じもしました。本書の半ば以降になると、川柳はさらっと目を通すだけで興味を持ったものだけちゃんと見るって感じでした。時には辛かったかも?

内容としては、風呂のいろいろ(据風呂、五右衛門風呂、雁風呂、朝湯、しまい湯等々)、薬湯各種、湯屋の構造や備品(ざくろ口、ぬか袋、毛切り石、ゆぶろぼぼ、行水等々)、銭湯の客、銭湯で働く人々。光明皇后の施行風呂や風呂ふき大根まで、なかなか幅広いです。

基本的に、資料用というか勉強用ですね。ちょっとエロい所もありますが、あまり期待するようなところはありません。でも、きちんとして資料を調べたい向きには役立つ本だと思います。普通の読者諸氏には、どうでしょう? あまり面白いとは言えないかも? 私も購入するだけの価値があったかは微妙。図書館で借りれるなら、それで十分だなあ~。高いし。

江戸入浴百姿(amazonリンク)

関連ブログ
「江戸の性談」氏家 幹人 講談社
「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社
「図説 浮世絵に見る江戸吉原」河出書房新社
「図説 浮世絵に見る江戸っ子の一生」河出書房新社
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社
「かわら版 江戸の大変 地の巻」稲垣史生 平凡社
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2005年08月29日

「色道禁秘抄」福田和彦 ベストセラーズ

底本には1894年の物を用いているそうで筆者は兎鹿斉先生著、版元は大極堂だそうです。原文がきっちり載っていて、絵も無削除で復刻したもの。注や現代語訳もついていて私でも読めるのは嬉しい限り。古文の勉強にもなりますし、こういうのもいいねぇ~。

内容は問答形式で書名通り、色道(=男女の交わり)について書かれたものです。でも、猥褻さというか最近のSEX関係の本みたいなことを期待すると裏切られますので悪しからず。私的には、こういうの好きなんですけどねぇ~。古代ローマの「愛の技法」って本とかも面白いけど、こっちの方がそのものズバリかも。いささか直接的過ぎるのが、欠点かな? いささかグロイような。

まあ、洒落の分かるセンスのある方や、さんざん女性道楽の限りを尽くされた方なら共感できるかも? (元の)著者がそもそも博識なうえに、相当数の実体験を元にして書かれた本らしいのでそういう意味でも興味深いです。好事家向きかな? 

文章だけ読んでると疲れてきますが、適度に無修正の浮世絵があって、文章だけの堅苦しさから解放してくるのは嬉しいですね。まあ、出してる出版社がちょっと意外ですけど。

内容を具体的に紹介するといいのかもしれませがんが、モノがモノだけに難しかったりする。前回の楊貴妃に関する記述があったのでそこを少々引用してみる。
唐書、楊貴妃が伝をみるに、貴妃、媿声(かいせい)を発すとあり、これ、すなわち文弥なり。相書に、貴妃の陰毛を引き伸ばす時は膝頭を過ぎるとあれば、毛の多きこと知るべし。

垣根草に曰く、楊貴妃は玄宗の寵愛無双にして、三千の官女も顔色なきが如くなりしより、後世、毛嬙(もうしょう)、西施(せいし)と一等の美人と思うは誤なり。貴妃は廣西普寧県雲陵というところの産にて、異質ありしゆえ楊康も止めて女(むすめ)とし、後に楊玄琰また康に乞いてこれを寿王の宮に奉る。その頃の美人聞こえもなし。
玄宗一度見てより喜びたまいしは聡明怜悧は論なけれでも、美は毛嬙、西施に及ばず、いかんとなれば、もし美人なれば高力士が進めを待たずして聞召したまわん。いわんや、貴妃は体肥満して、暑を苦しみ、茘枝(れいし)を好んで食い、狐臭(わきが)ありしゆえに、外国の名香を以って掩(おお)いたりしを以って知るべし。君寵を得たる故に、詩曲に美艶を称し、文人画工も阿諛(あゆ)して天下の絶色と盛誉したるなり。
まあ、普通の人向きではないですね。お好きな方には資料としてどうぞ。

【追記】
文字が表示されていない箇所は。特殊な漢字の為、表示されないみたいです。そのままにしておきますけど。

色道禁秘抄(しきどうきんぴしょう)〈前編〉(amazonリンク)
色道禁秘抄〈後編〉(amazonリンク)

関連ブログ
「楊貴妃後伝」渡辺龍策 秀英書房(1980年)
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2005年08月12日

「辻潤全集 (第5巻)」辻潤 五月書房

ロンブローゾの「天才論」の日本語訳である。たぶん、訳はこれしかないと思う。調べたみたけど、他にはなかった。本当は生来的犯罪者説が読みたかったのだが、見つからなかったのでこれで妥協した。

そうだねぇ~、読んでみたんだけど…あまり面白くない。つ~か全然面白くない。出てくる内容がやたらと人名が多く、そこからどのようにして天才に普遍の法則性なり、規則性なりが導かれてくるのかが、読んでいてもどうも納得がいかない? 

大変有名な本であり、画時代的な名著であるはずなのだが…私が理解できないだけのかもしれないのでなんともいえないが、ちっとも感動しないし、何が言いたいのかが不明。クレチェマーの「天才人」とかの方は、以前読んだ時は目からうろこと思うぐらい、感銘を受けたものなのだが…。どうようなものを期待すると痛い目にあうかもしれない。

クレチェマーは結構、若い頃のバイブル的な存在だったんだけどなあ~私にとっては。その後もいろんなことを考える時に、価値判断の基本の一つだったんだけど…。それにマキャベリの君主論をスパイスに振りかけると、若き先鋭主義者である私が出来上がるのだが(苦笑)。

とにかく、この本からは私は何物をも得られなかった。高い金出して買って失敗したなあ~。誰か買値で引き取ってくれないかなあ~、悲しい。

辻潤全集 (第5巻)(amazonリンク)
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2005年08月11日

「インタビュー オサマ・ビンラディン」ダイヤモンド社

radhin.jpgイタリアで出版された本。当事者じゃないから中立的な立場から書かれているなどと、紹介記事には書かれているが、そんなこともない。しょせんは、キリスト教陣営から、ちょっとだけ距離を置いて書かれただけのレベル。それでも、アメリカ側からの一方的な情報に頼って、偏りまくったものよりははるかにマシだとも言える。

前半の部分は、やはりイタリアもキリストの国だからなあ~と思わずにいられないし、つまんない本だなあ~と思った。読了しないでやめてしまもうかと思ったほどだったが、読み進めていくとドンドン面白くなってきた。

そもそもイスラム原理主義という言葉は知っているけど、その言葉の指すものが歴史的にどういった背景を持ち、それがどう変遷してきたのかは全く知らなかったので興味深かった。そして、更に読んでいくと、このビンラディンという人物、単なるテロリストのスポンサーとか指導者なんて枠にはいらない人間としては大物であることを感じた。

父親が大富豪なのは知っていたが、その父自体も港湾の荷揚げ人夫からの叩き上げであり、苦労人であってなかなかあなどれない人物だが、ビンラディン自体も非常に恵まれた生活環境で大変なエリート教育をうけて育ったインテリであることが分かる。しかも、単なる机上の人ではなく、前線では率先して闘う一兵士であり、熱心なイスラム教徒であり、それだけでもなかなかの人物だが、本当の凄さ・怖さがそこではない。

サウジアラビアの王家とも関係が深いだけでなく、世界中のイスラム教国や軍事組織とも親密な関係を有するのみならず、表面に出ないような多国籍企業を無数に有する、超やり手経営者であり、ベンチャーから一代で大成功させたその手腕は、資本主義国にいたら、NY証券取引所にいくつも上場企業を有するオーナーとして君臨していたであろう。売上高100億円とか1000億円なんて規模ではすまない筋金入りのコンツェルンを今もその配下に押さえているようだ。

もっともそうでなくては、世界中のありとあらゆる所から、輸出禁止の軍需物資を調達し、密輸し、テロを推進する軍事組織に提供するなんて芸当はできないであろう。何よりも主義主張が異なる各独立抵抗組織を反米・汎イスラム主義で連携し、ネットワークしていく外光手腕は、国連にも匹敵しかねないほどだ。アメリカがてこずるのも無理は無い。また、彼らは情報の交換には細心の注意を払い、テキストを映像ファイルに紛れ込ませる手法やさらには情報交換にイスラムの理念には相容れないアダルトサイトを利用するなどの事例も報告されているらしい。

アメリカが合法非合法を問わず、世界中に流れるあらゆる情報を集めようとしてネット上での検閲や盗聴などを日常茶飯事に行うのはこうした事情が背景にある。だからと言って、建前で個人主義やプラバシーを尊重している国自らがそれを踏みにじっている行動は、イスラム側からしては更なる不信と侮蔑を招き、彼らの自己正当化を補強するだけであろう。

この本もそうだが、フセインにしろ、ビンラディンにしろ、日本のTVや新聞を通じて得られる情報ではほとんど聞いたことがないような情報が多い。日本人は何も知らないまま(=情報を捜査されたまま)、与えられた歪んだ情報の枠内で自由に決めていいよ、と言われているような気がしてならない。郵政民営化も然りだが。

もっといろんな情報が欲しいですね。フセインにしろ、ビンラディンにしろ、彼らが勢力を伸ばしていく過程で必ずCIAが絡んでくる。親米で利用できる際には、資金を援助し、対軍事教練や軍事マニュアルまで提供していたのが、やがては袂をわかち、反米に向かう。この図式はここでも変わらないことが分かる。ノリエガもそうだったが、アメリカの戦略はいつもこればかりだ。ちなみに現在でも自爆テロ等で使われる爆薬製造の処方はCIAのマニュアル通りだそうだ。

私が学生の時に、多国籍企業論を受講中のテキスト内に、中南米に展開する米系多国籍企業がCIAの指図の下、現地政権に資金援助等で干渉し、国際政治上の問題となっているという記述を見た覚えがある。当時は私も無知でそんなのは漫画か映画の世界だと思っていたので、驚愕したが、それは事実であり、今も変わらないのだろう。現在のイラクがその好例である。

もっとそういった情報が欲しいと思うのだが、身近なTVや新聞は、芸能人と可愛い動物達の記事でいっぱいで、私の欲しい情報が入手できないのが困る。最近は新聞は眺めるだけで読まず、ネットで複数の情報ソースから知識を得るようになったが、これがなかなか面倒。TV局等にも自由競争が導入され、自然淘汰の原理が働くことを切に望む今日この頃。

いささか話題からそれたが、アルカイダという組織も含めて、知らないことばかりだったのを痛感した。この本はきっかけにはなるが、それほどいい情報源でもないのでもっと使える本を今後探していってみよう。何も知らないままなのは、絶対にイヤだから。

インタビュー オサマ・ビンラディン(amazonリンク)
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2005年08月05日

「錬金術」吉田光邦 中央公論社

【 目次 】
はじめに

仙術と哲学の混沌―中国
1説話の中で
2神仙思想の背景、道教
3「周易参同契」の三位一体論
4「抱朴子」の世界
5丹薬の服用と製造
6本草学との関係
7中国錬金術の発展と展開

魔術から科学へー西洋
1アレキサンドリアの時代
2イスラムの神秘と科学
3中世神学と錬金術
4妖術と近代科学
5東と西の交流

日本の錬金、錬丹術
1神仙たちの話
2四方拝から庚申待まで
3舶来丹薬の流行

むすびに 

通常、この手の本にありがちなオカルトめいた雰囲気が全く無いのが最初、意外でもあった。非常に合理的な立場から、淡々と書物に残る仙術や錬金術、それに相当するエピソードを集め、その意義を自然科学者の真理追究の姿勢として評価している。当然、黄金を求めるという動機や方法論から、近代科学とは違っている点についてそれはそれとして認識したうえで過度にオカルトめいた見方や魔術師・山師として切り捨てたりすることもなく、非常に冷静な目でその現代的な意義を捉えているのが特徴的だった。

もっとも錬金術の現代的復権、そういった見方も最近はそれほど珍しいものではないが、初版が昭和38年であり、また薄手の本の割に実に、実に多彩な題材が採られている。資料集としても重宝できそうでかなり使える本と言えそう。

錬金術というと、すぐに暗黒中世の城にこもって黒魔術と一体化したような妖しいものをイメージしがちだが、勿論、それにも触れてはいるものの、本書はむしろ中国の丹術や仙術の類いをメインに採り上げている。

仙人になる、不老長寿を得る、おまけで金も獲得、そんな摩訶不思議な術が古代中国で隆盛を極めていたのは有名でした。本書では、具体的にそこで作られる物質や製造方法を現代的に解説し、予想される効能から解説を施している。中でもその素材の中心になる水銀についての解説は既知の知識も多いが、より総合的・統合的に解説されていて知識の整理にも役立つ他、それを取り巻く社会的な背景にまで及び読み応えのあるものとなっている。歴代皇帝が水銀中毒で早死にしたり、日本の奈良の大仏の塗金にあたり、水銀を使用したことなども定番情報だが、いい具合で説明されてます。あと、おおっと思ったのが塩化水銀の白粉を使用した伊勢白粉等。日本でもいろいろ使われているし、確か荒俣氏の「帝都物語」にも丹術関係の場面がありましたね。懐かしい~。

本書でも取り上げられる「神仙伝」「抱朴子」とか読んだ気がするんですが、例のごとく記憶が怪しいので再読しようかな? 特に「抱朴子」。意識して読んでないと内容が頭にのこらないんだよねぇ~。ブログにこうして感想文書くのも、記憶の定着化と後々のメモの為でもあるし。

錬金術に絡んで贋金作りの話もなかなか楽しい。そもそもこの手の話題に事欠かないが、単純な贋金と言えない合金作りが非常に興味深い。これは著者も指摘しているが、現代でも広く行われていることで22金、14金といった金の増量に他ならない。素人には見た目同じように金色に輝くし、何しろ安くたくさんの金が手に入るのだから、現代でもそれで喜ぶ人はたくさんいますしね。その際たる物が金メッキ。表面に金をつけているのだから、間違いなく金の輝きです、削れなければ(笑)。皆さんご存知の湯があふれだすことで比重というアイデアを発見したアルキメデスがまさに好例。彼は王様から金の王冠が純金であるか、混ぜ物があるかを調べて欲しいという依頼を受けて、その解決方法として比重を利用する訳ですが、いかに古代から合金が利用(悪用)されてきたかが分かります。

他にもグノーシス派キリスト教で魔術師とも有名はシモン・マグナスが出てきたり、果ては久米仙人や役小角まで。合理的な解説と共に、神秘主義的なエピソードの数々も脚色せずに淡々と紹介してくれるのも嬉しい限り。西洋中世に先進の技術として取り込まれ、当初支配的であったイスラム由来の知識についても説明されているのでとってもお徳ですね。

読了後に著者の経歴見てやっと分かったのですが、天文学科卒でご専門は科学技術史。どうりでねぇ~、あまりにも幅広い資料・文献から集められているので本業絡みで無いとなかなかここまで出来ません。後は、道楽の極みを尽くした書痴か、現代では失われた博物学者さんとかね。納得。

オカルト以外の側面からもご興味のある方どうぞ。こういう説明も結構好きだな、私は。数学を離れてだいぶ経つが、数式に耽溺するのも楽しいんだよね。全てが数字で処理できるのって理想の純粋世界でもあり、ある意味理想郷。現実では不確定要因であるパラメーターが多くて、モデルが不完全にしか機能しないし。もっともその場合は、モデルが不完全なのだけれど…。昔、株式市場の価格変動モデルを既知のものよりもっと精緻にしたいと思ったものだが…あの情熱はいずこに??? ポイントは人間心理をいかにパラメーターで採りこんで定数化するかだったが。

錬金術―仙術と科学の間(amazonリンク)

関連ブログ
「錬金術」セルジュ・ユタン 白水社
「錬金術」沢井繁男 講談社
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2005年07月17日

「別冊太陽 骨董市・蚤の市」平凡社

kottou.jpg結構あちこちでやってるんですね、骨董市。たまに上野の忍ばず池の所や富岡八幡宮のとこの骨董市は見たりしてたけど、意識したこと無かったので新鮮でした。早速、明日つ~か今日だけで骨董市でも覗いてみようか? 

でもね、難しいよね。珍しいものや面白いものもあるけど、中にはゴミじゃないかと疑いそうなものも多数有り。まあ、モノに対して価値をつけるのは人それぞれ違っていいんだけどね。根付で変わったものとかあるといいなあ~。別に古くなくてもいいんだけどね、新しい中国産のでもデザインが良くて彫りもしっかりしてれば問題なしだしぃ~。

さてさて、ちょっとこの本やネットで下見しておこうか、もう一度。そうそう、この雑誌ですが、最新版が出てます。amazonでは見つからなかったけど、手元にあるのは2000年だったけど、もっと最新のもあるのかな?

骨董市・蚤の市(amazonリンク)
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2005年06月17日

「化物屋敷」橋爪 紳也 中央公論社

子供時代に都内に住んでいた時、児童館の催し物にお化け屋敷があり、真っ暗な中を歩いていたらヌルン~っとしたものが顔に当たり、大声で泣きながらすぐさま入口に戻ってしまった覚えがあります。同い年の女の子は平気で、暗闇を通り抜け、出口から出てきましたが…。

学生の時、6月か7月頃、一人で東北を旅していた際にたまたまどっかの鎮守様のお祭りに当たり、縁日の一角にお化け屋敷を見つけたことがあります。歳をとってもチキンな野郎の私ですが、何故か好奇心だけは旺盛で入ってみました。ところが…。ここのお化けって若者がやっているのかプロっぽくなく、狭い通路内に蛍光塗料を塗った衣裳をつけて、入口からずっと追いかけるんです。もう怖いの怖くないのって…号泣。すさがにいい年した男が泣く訳にもいかず、苦笑いしてかろうじて我慢しながら、何故か本当に怖かったのを鮮明に覚えています。

それ以外だと京都の八坂(神社)さんのとこのお化け屋敷ですね。春と秋に小屋がかけられます。夏だと、麻布十番祭りにも同じ業者さんが出てます。ここはドキドキ感とお笑い感とが混ざったほのぼの系。さすがに「板に血」はないですが、それに近いノリがあります。と、同時に蛇女は怖かったんですが…。河童の河太郎君は好き!!

私の思い出話になってしまいますが、基本的にこのノリです。勿論、きちんと小屋の内部や人の流れ、怖さの演出等にも説明があり、歴史的な変遷も紹介してくれてます。でも、見たことない人が読んでも面白くないと思うなあ~きっと。あくまでも見たことのある人が、そうかあれってこういう意味なんだ。とか納得&共感して意味がある本だと思います。

こういう失われいく伝統とは言わないまでも、昔の大衆芸能って見れるうちに見ておかないとね。たまに行くのは風情があっていいかも? 浴衣か甚平でも着込んで女性と一緒に行きましょう。根付も忘れずに!きっと女性にすがりつつ青い顔して出口に立つ貴方がいますよ~(情けない)。

そういえば、もうすぐ花火の季節。夏ももうすぐですね。全然、書評になってませんが、そんな感じの本です。さらっと雑誌感覚向き。

化物屋敷―遊戯化される恐怖(amazonリンク)
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2005年06月10日

「江戸の性談」氏家 幹人 講談社

SEIDAN.jpg以前、どっかで触れた衆道(男色)をメインにすえながら、現代とは明らかに異なる近代化以前の日本古来の美意識に裏付けられた江戸時代の性風俗を扱った本。著者の言葉を借りるなら、「猥談が酒席でアレ、交際の場の潤滑油や余興であるのに対して、性談は性に関する真面目で実証的な談話である」とあるが、私見と断りながら、それを本書の姿勢と述べられています。

な~んか堅い内容かと思うと、実際はそうでもなく、単なる好事家や好き者でも楽しめちゃうような作りですが、それだけではない研究者としての思い入れも含めてかなり楽しく読めちゃう本です。その手のものに抵抗がない人なら、絶対に楽しめますね! いろんな本や川柳から題材を採っていますが、非常に分かり易い(まさに)意訳をしてくれていて、それが安っぽくならないギリギリの程度で噛み砕いてくれていて、誰でも分かし、内容がとっても興味深い。

幼きは5・6歳の子供の性的高まりや乳母への限りない愛着など、今読んでも男性諸氏には誰でも心当たりがなくもないかつての思い出にう~む、となってしまいます。さすがに乳母はいませんでしたが…。

年頃になれば、至る所で見目麗しい男の子が、年頃の青年達の毒牙の危険にさらされていた社会状況とか、へえ~っと思うことばかり。もっとも、それで殿様の覚えがめでたく、後々も立身出世につながることも珍しくなく、まさに麗しき愛の取り持つ機縁かな?と思いました。何よりも「心身ともに」が副臣には望ましいし、合理的かも? 女性よりもしっくりしていいとか、生々しい表現が至るところで描かれていて、それだけでもちょっとそそられる文章になっています。きっと買うのは男性じゃなくて、ヤオイ系の女子高生あたりの気もしますが・・・。倒錯の国ニッポン万歳!(って皮肉かい?)

他にも個人的に関心をそそられる事柄がいっぱい。「洗濯」が性的なことに結びつくって想像つきました? 私は知らなかったけど。江戸時代には、吉原みたいな売春婦を置く場所を設置する際に、お上への陳情書に書かれる名目として人足や船頭の衣類の洗濯をさせる女性を置くからと称したらしいです。なるほどねぇ~。売春は駄目だけど、特殊浴場としてサウナの機器を設置すれば良いというどっかの国と変わりませんね(同じ国で時代が変わっても、人は変わらないのです)。

あと、ご存知歌舞伎だと、四代目松本幸四郎が陰間茶屋で色子として男色サービスを提供していたが、そこから逃げて役者に弟子入りして功成り遂げた話も、さすが梨園の世界と納得してしまうものでした。人当たりがよくて優しい風情は、幼い頃の苦労が身に付けた賜物だったそうです。人生、何が役立つか分かりませんね。

他にもふたなり(アンドロギュヌス)の話や挙げるのにキリがないくらい興味深い事例なども多数。さらっと読めてしまいますが、何かというと異常性欲がどうのこうのと、大騒ぎする神経症気味の現代には、そのおおらかさが羨ましくもあります。もっとも、著者もそうはいいながらも、流行り病やちょっとしたことでいつ死ぬとも知れぬ人生であった、その刹那さ故のおおらかさであったことも指摘されていてバランスのいい本です。ちょっと、読むにはいい気晴らしになりますね(笑顔)。

江戸の性談―男は死ぬまで恋をする(amazonリンク)

関連ブログ
「昭和美少年手帖」中村 圭子編 河出書房新社
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2005年06月07日

「図説 浮世絵に見る江戸吉原」河出書房新社

edoyosiwara.jpg絵がとっても綺麗な図説シリーズの吉原です。どうしても文章の内容としては、前回読んだ吉原三才図絵とかで説明し尽くされている観があるなあ~。逆に最初、こちらを読めば新鮮だったんでしょうけど…。

こちらはカラーで版が大きいから、より見易いのは確か。まあまあってとこかな?わざわざ購入してまで見なくてもいいかも。確か東京国立博物館も結構な枚数持っているんだよね、浮世絵。展示スペースの関係か、ほとんど展示してないけど、時々企画展でテーマに合わせた浮世絵を展示しているから、本物を見るのもいいですね。原宿(?)の浮世絵美術館は、なんにも無いのに大層な入館料取るし、外国人でも無ければわざわざ見たいとも思いませんね。

あっ、先日行った印刷博物館も当然、浮世絵はかなり所蔵してるそうですよ。今度、それ系の企画展があれば、その時に拝見したいですね。

あと、ネットで検索してて時代の流れを痛感したんですが、最近の図書館(県立・都立等)は自分のところで所蔵している浮世絵や古文書を一部ながらその映像を公開してるんですよ。ネットで。それなりに綺麗だし、わざわざ面倒なことしなくても私のような素人には、たま~に観れるだけでも大喜び。いい時代になったもんです。下記、少しだけ紹介しますね。お好きな方はご覧になると楽しいかも?

図説 浮世絵に見る江戸吉原(amazonリンク)

関連リンク
都立図書館、貴重資料画像データベース
埼玉県立図書館 貴重書デジタル画像
他にも大学や、全国の図書館でいろいろあるようですよ! こういうのってお薦めです。

関連ブログ
「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社
「吉原御免状」隆 慶一郎  新潮社
「古書法楽」出久根 達郎 中公文庫

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2005年06月03日

「図説 浮世絵に見る江戸っ子の一生」河出書房新社

edoko.jpg個別の内容がどうこうしたというものでもないが、大人向きの絵本といった感じであろうか? ちょっと眺めて休憩するときにはよいかもしれぬ、そんな本。この図説シリーズは他社も似たようなものが多いが、なんといっても視覚的な情報が多く、落語の中でしか聞かない様な事柄をビジュアルで見せてくれるのは嬉しいところ。

当時の風俗を断片的とはいえ、知るのはなかなか愉快。えてして「昔は良かった・・・」の如くなりそうだが、文化的なものを庶民レベルで行う町民文化が育ち、音曲や芸事が盛んになっている様子も親しみがわく。

私は朝顔市や酉の市によく行くが、少し江戸時代の情緒と通じるところがありそう。なんかまた、行きたくなった。来週末は、日枝神社と鳥越神社のお祭りがあるし、ちょっと顔を出してみようか、そんな気になった。

図説 浮世絵に見る江戸っ子の一生(amazonリンク)
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2005年05月19日

「アンデスの聖餐」Jr. クレイ・ブレア 早川書房

この話自体は漠然と聞いたことがありましたが、実際にそれに関する記事や本を読んだことはありませんでした。たまたま、古書店で目について買ってしまった一冊。

安く海外旅行へ行く為、大学生の集団を中心にした乗客を乗せた軍のチャーター便が天候の悪化や数々の不運やミスが重なって、冬期のアンデス山中に墜落してしまう。幸いにして多くの乗客が落下時点では一命を取り留めるのだが…。

不運に不運が重なる。パイロットが落下時の現在地点を勘違いしたが故に、事故機捜索は暗礁に乗り上げて中止され、また、遭難者達も自らの場所が分からない為に、自力で救助を求めに行くのが遅れ、悲劇を増長することになった。しかしながら、誰もが彼らの生存を諦め、捜索隊が既にその活動を断念したのちも彼らは自らの知恵と強い生存の意思から、生き続けていた。最終的に、彼らのうちの一部が自力で山を降り、救助を求めて生き残っていた人全てが救出されるのだが…。

あまりに遅過ぎた…体力の無い者、運のない者が次々と亡くなっていく中で彼らは、通常の高山病になるような高い山に食料の蓄えも無く、防寒服も無く、水さえもない中で必死に知恵を絞り、助け合い、励まし合って生き抜いたのは驚愕に値する。但し、誰かが生きる為には何かを食べ無かればならない。生物界の掟がシンプルに規律する極限状況の中で、死者を食べるというタブーを破らなければならなかったとしても…。


【ここからは、具体的な食人に関する記述が出てきますので、気の弱い方やその手のものに嫌悪感がある方は絶対に読まないように】






日本人以上にカンニバリズム(食人主義)に過敏なキリスト教国の人達故、さらに彼らの苦悩は大きい。何よりも彼らの学校はカソリック系の大学で上層階級の子弟の通う学校だったらしい。多くはラグビー部に属し、今回の海外旅行のラグビーの試合の為にという者が多かった。逆に、その団結心があったので彼らはより強固に励まし合えたのかもしれないが、救助後の彼らの扱いは、一時の英雄から、食人報道後の忌み嫌われ誹謗中傷の渦中に置かれた悲劇まで、その後も苦悩から逃れられない一生を負う羽目となったそうだ。(但し、この本では救出された直後までで終わり、その後の苦悩については触れられていない)

死人の肉なんて食べられないし、そんなもの食べるくらいなら自殺するなんていうのは、本当に飢えた事のない人であり、日常生活の枠内でしか物事を判断できない真の想像力を欠如した人なんだと思う。私も飢えたことなど無いので、想像の範囲内でしかないが、人間は追い込まれればなんでもするし、常識のタガなんてちょっとしたきっかけですぐ外れるのは知っている。本当に信念を持ち続けられる一握りの偉人以外、たいていの人は、何でもしますから。

大岡昇平の「野火」だったと思うが、戦争中に極限までの飢えで、死んだ敵国兵士を食べて生き延びる話がありましたが、それをまず第一に思い浮かべました。映画だったら「ひかりごけ」なんてもありましたね。

まあ、他の作品はおいといて、とにかく生き延びるっていう本能は何よりも強力ですね。一切の妥協が無いし、その為になら、他者を裏切り・出し抜き・踏みにじることまで平気でできる。人には良心があるのも事実だし、素晴らしい感情だと思いますが、良心や思いやりだけだったら、人類はとうの昔に自然界の生存競争に残れなかったでしょうし。NHKスペシャルの生物の進化を見るまでもなく、他よりも強欲で卑怯でなかったら、物理的弱者の人類は現在の繁栄を為し遂げられなかったのだから、複雑な気持ちです。

この本読んで改めて、そういったことを感じました。勿論、生き残った彼らは、不幸中の幸いで既に死者がいたので生きる為に殺し合うという最悪の場面だけは避けられましたが、救助隊が全員を救助した後の現場は、ある意味地獄だったようです。生き残った彼らは5日で1体の割合で死者を食べていたそうですが、カミソリで薄く剥がし、それを事故機の機体の上に張って乾燥させたうえで食べていたそうです。付近には綺麗に肉をそぎ落とした骨が散乱し、脳ミソも綺麗に無くなっていたそうです。実際の文中の表現は、もっと淡々としてよりリアルですが、それ故にもっと切迫した極限感があります。

また、救出後、彼らが一番気がかりだったのが神父に告解して自らのした行為を許してもらうことだったというのも、彼らの苦悩がいかばかりであったのかを想像させる。この本は人によって見方が180度変わるでしょうが、真実の記録として知っておいていい話しだと思いました。まず、会う訳はないのですが、そういう目に合わない事をつくづく願わずにはいられません。私はヨーロッパ行く時にチューリッヒ空港を何度か経由したことがありますが、これまでも眼下にある雪に覆われたヒマラヤ山脈に落ちたらどうなるんだろうと考えることがあります。今度からは、この話を思い出さずにいれれないかも知れないです。う~む。

生きている実感のない人。完全自殺マニュアルとかしょうもないもの読んでる人(私も初版で持ってますが…自爆)はこういうのでも読んでみるといいかも? 生きるということを改めて考えさせてくれます。ただ、絶版みたいですが…。

あっ、苦手な人は間違っても手を出さないように。思いっきりブルーになるし、気持ち悪くなってしまうかもしれません。あと、特殊な嗜好の人も興味本位で読まないように、そういう本ではありません。真面目な話です。当時、アンデスの奇跡と呼ばれたのも当然なくらい。

アンデスの聖餐(amazonリンク)
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2005年05月18日

「江戸吉原図聚」三谷 一馬 中央公論社

とにかく非常に図版が多くてイイ!656頁の本に250点以上の図版があり、文章だけでは分かりにくい当時の様子が視覚的に捉えられるのがポイント高し。これが文庫でなく、大きいサイズの版で入手できれば、絵が細部までしっかり見れてもっと&もっと良かったでしょう。文庫サイズでは絵がかろうじて分かる程度で存分に味わえないのが難点。実際には、大きなサイズのもあるんですが絶版中らしく入手不可能みたい、なんとも残念。

全部ではないが構成としては、図版が右1頁にあってその説明が左1頁にあるものが多く、見易いし、分かり易い。基本的に当時の風俗絵を説明するのが主題で、個々の図版を説明しつつ、江戸吉原全般の風俗も説明する形であり、体系的・全般的な知識を前提として持っていると更に味わいがありそう。但し、その知識が無くても問題なく楽しめるし、勉強になる本です。

文章はシンプルでいいのですが、説明が足りな過ぎるところもしばしば散見される。当時の文章や川柳のたぐいが引用されているのは、好ましい一方でその現代語訳無しでは正直辛い。意味がよく分からないところも多々あった。ただ、基本的にはおおよそ分かりますけどね。そこだけは一般向きとして苦しいかも?

それと。入っている図版で気になったこと。教育的な配慮かなにかしりませんが、別に枕絵じゃあるまいし、猥褻とは思えないような箇所を著者の独断的な配慮で、図版から一部削除しているらしいことが書かれています。あくまでも歴史的な資料として図版を入れているのに、それを勝手に削るというのはいかがなもんでしょう? それだけ、資料的な価値は下がると思うのですが…。モノクロなのも残念ですね。

とまあ、不満はあるもののコレはお買い得な資料かもしれませんね。分かり易くて非常にいいです。手元に置いといて損はないですね。これは正解。遊女と遊ぶ値段まで書いてあり、勉強になります。10分そこそこでいくらとか…、通常ではあまりにも短い時間で事を為すのに足りない為、2・3倍の料金がかかったとかまで書かれてあります。

あと、一旦馴染みになると他の遊女のところにおいそれと遊びに行けないそうです。廻状みたいに、他のところに行ったら自分のとこに戻すようにとかは言うに及ばず、帰りを待ち伏せて身柄を拘束し、ネチネチと詫びるまで監禁したとか。いやはや大変だこと。他方で相手に一途なことの証明に名前を入れ墨したり、小指まで落として血で書かれて誓文もらったら怖いでしょう。やはり。

他にも、吉原の季節ごとの行事や遊女の私生活。妊娠や堕胎、時代劇でよくある駆落ちやせっかんとかにも頁が割かれています。個人的には下記にもメモした羅生門河岸とかがなんか笑えて気に入ってしまいました。今でもあったら、ひやかしにすぐ行ってみたいぐらいですね(笑顔)。

あとは用語集よろしく、メモ。
○初会(1回目)、裏(2回目)、馴染み(3回目)。裏の時には裏祝儀を遊女の他、若い者に与え、若い者はお返しに菓子、又は蕎麦や寿司を持ってきます。馴染みは馴染み金を出して初めて馴染みになれ、遣り手にも出しますが返しは無し。
○惣花は遊客が妓楼の使用人全員に出す祝儀で、床花は3回目に遊女に渡す祝儀
○仕舞は、紋日などに揚代金を払って遊女の一日を借り切ること
○名代は、客が登楼(店にくること)しても馴染みの遊女がさわり等の病の時に、妹分の遊女が代理をすること。通常、名代には手をつけませんが、揚代はしっかり馴染みの料金をとられたそうです。
○猪牙船(ちょきぶね)。吉原へ向かう際に使う船足の速い船。
○羅生門河岸(江戸町二丁目から京町二丁目)。通る客の髷をつかんで無理矢理にひっぱり揚げたり、腕をつかんで話さないので腕が抜けるとのことから、腕を切り落とした羅生門の鬼に引っ掛けた名ですね。現在の呼び込みかボッタクリみたい(笑)。でも、それで客が御代を持っていないとボコボコにして路上に投げ捨てたそうですから、ほんとそっくり。そうそう、一説には、「茨木屋」という見世があったとも言われます(何故かは、分かりますね?)
○亡八。楼主のこと(オーナー)で仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つを職業柄忘れていることから。
○地廻り。吉原付近の職人、遊人のこと。もっぱらひやかし専門。
【目次】
登楼
廓内
妓楼
遊女の生活
年中行事
遊女の風俗
吉原風俗

江戸吉原図聚(amazonリンク)

関連ブログ
「古書法楽」出久根 達郎 中公文庫
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2005年05月04日

「媚薬」エーベリング (著), レッチュ (著) 第三書館

biyaku.jpgいわゆるエロティックな小説等とは異なり、かなり堅めの博物学誌的な著作。でも、こういうの大好きなんだよね。性行為時の興奮を高め、快楽の度合いを増すものから、俗にいう惚れ薬をはじめ、健康サプリメント的な強壮剤までを、文化史・歴史的な側面から捉えると共に、薬理的にも説明を加えていて興味深いです。

私が渋澤氏の小説で慣れ親しみ、洋書で「mandrake(和名 マンドラゴラ)」というタイトルの本まで持っているくらい好き。名著「毒薬の手帳」でも頻繁に出てくるこのマンドラゴラやカンタリス(はんみょうの毒)、日本でも殺人事件で知名度上げたトリカブトとか定番の毒薬がいろいろと出てきます。あっ、今でもそうですが、毒と薬は紙一重。量や用法次第で鬱を直す向精神薬や性的不能に効く媚薬・精力剤が、あっというまにオーバードーズになってしまい、あの世逝きというのは今も昔も変わりません。市販の薬でさえ、それは変わりません。

私の場合、幸いなことに使用したことはありませんが、都内ではついこないだまでマジック・マッシュルームを夕方7時ぐらいに渋谷の路上で売っているのには驚きました(大通りなのに)。今は違法になったみたいですが…。 

もっともこの本でも述べられていますが、媚薬の使用はそれほど奇異な例ではなく、各種宗教にはある意味つきものでもありますしね。実際、以前読んだ本では、初期キリスト教はある種の幻覚キノコの見せる奇跡によるものだという、とんでもない説が紹介されていましたし、明確な話としては旧約聖書にマンドラゴラを飲んで不妊のラケルを懐妊させる話も紹介されています。あとイスラムのスーフィズムとか、中国の金瓶梅とかで媚薬や精力剤を使って酒池肉林に励む主人公もありがちな話でした。シェークスピアにも魔女が頻繁に媚薬を作っている場面が出てきますしね。お馴染みです。

そういったところで使われる植物や薬の名称、素材や作り方、効能等を博物的に集め、紹介してくれます。また、いろんな本でそれについて触れている文章を引用しながらなので、当時それがどんなふうに扱われていたのかも分かり、たくさんの知識が身に付きます(生きていくうえで役に立つとは思いませんが…)。私的にはこういうのってスキ!なんですよねぇ~。もう、無駄以上の何物でもありませんが(ってオイオイ)。

アルカイド系の成分を含んだナス科の植物がどうたらこうたら…、チョウセンアサガオの成分がとかね。今ふうの単なる合成麻薬とかだったら興味はありませんが、植物や動物、女性の月経血とかを材料にして作る媚薬って面白そう。また、それを用いるのが未開(語弊がありますが)の民族だったら、それは神聖な成人の証かもしれませんし、中世の王侯貴族なら、選ばれし者のみの特権だったのかもしれません。インドだったら、神の飲み物ソーマとか、ギリシアならネクタル等々。う~ん、そういうのを知るのって密やかな楽しみって感じですね。

資料的には、持っておいて悪くはない一冊。これの他だと「媚薬の博物誌」とかもいいね。あと何冊か、この関係の書籍持ってますが、まずまず合格水準だと思います。ちょっと俗っぽい「危ない薬」とかあの手の本よりは、ずっといいです。あれも持ってるけど…。
目次見ただけで、好きな人ははっきりしますね。サティリコンに錬金術だもん(笑)。まさにツボかな?
【目次】
序章 文化とエロス
第1章 ポン・シャンカール
第2章 サテュリオン
第3章 錬金術と魔女
第4章 アフリカの幻想
第5章 新世界の媚薬
第6章 永遠の「サマー・オブ・ラブ」
終章 聖なるものと俗なるもの

媚薬―エクスタシーと快楽のドラッグ(amazonリンク)
ラベル:書評 媚薬
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2005年04月30日

「吸血鬼伝説」ジャン・アリニー 創元社

blood.jpg非常に良心的な解説書ってとこでしょうか。実にバランス良く多方面から吸血鬼を採り上げています。あのこのシリーズの特色ですが、図版や絵が多く、飽きさせない作りになっています。

何よりも、吸血鬼という存在の持つ意味を歴史的な変遷から、時代ごとに読み解く一方、ブラド公ツェペシュやジル・ド・レ公、血まみれバートリー伯爵夫人など有名なエピソードももれなく入っていて、吸血鬼フリークを目指す方の第一歩にはふさわしい本ですね。だって、吸血鬼好きなんですと言ってるくせに最低限の知識も何にも知らないのでは、いけませんよ! 

勿論、吸血鬼が生まれる時代背景や文化的背景、キリスト教における捉え方等もそれなりにきちんと説明されていますし、基本である「早すぎた埋葬」とかにもしっかり触れられています。また、単なる不死者に過ぎない存在が忌み嫌われる吸血鬼に成長していく過程も興味深く説明されています。

そして、有り難いことに文学や映画に出てくるドラキュラまで手を抜かずに解説してくれるのは、助かります。クリストファー・リーとか基本中の基本ですもんね! 古典を知らずして革新的なブレイク・スルーは生まれません(ほんとかい?)。

kubi.jpg勿論、ある程度知っている人には、知識として新しく得られるものはないでしょうけど、ちょっとした整理にはなるかも? 私も知ってはいても、整理されていないグチャグチャな知識(の断片)しかないので、大いに参考になりました。ただ、どうしても内容の深みが足りないのは否めませんけどね。でも、この本の厚さでこれだけ、知識がつくならお買い得かも。初心者には、きっと絶好の入門書ですね。

で、その後に吸血鬼妖魅考とか読むのがいいのかな?それとも澁澤氏の本の方がいいかな?日本語でも結構、いろいろありますし。先人の努力(物好き)に感謝。
(目次)
第1章 血の執着
第2章 認められた吸血鬼
第3章 吸血鬼信仰の黄金時代
第4章 吸血鬼の復活
資料篇―吸血鬼をめぐる伝説・文学・映画(吸血鬼現象を読み解く―生者の驕り・死者の復活
ドラキュラという名の暴君
幾世紀にもわたる吸血鬼信仰
合理主義者の反発
『ドラキュラ』と『カーミラ』
詩になった吸血鬼
ドラキュラの里、ルーマニア
暴かれた地下墓所の悪魔の謎
映画における文学作品の吸血鬼)
関連リンク
ヴァン・ヘルシング(2004年)スティーヴン・ソマーズ監督
「アンダーワールド」スコット・スピードマン監督
「ドラキュリア2 鮮血の狩人」パトリック・ルシエ監督

吸血鬼伝説(amazonリンク)
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「かわら版 江戸の大変 地の巻」稲垣史生 平凡社

tinomaki.jpgもう一つの本、天の巻き(先ほど、写真を大量に掲載しました!)がとっても面白かったので期待してこちらも読んだ、というか見たんですが・・・。あまり、いや、全然面白くないなあ~。これはお薦めしません。

天の巻きで扱っているのは、地震・雷・火事・怪物で私的には怪物がもうピタリ!ってきたんですが、今回の地の巻きでは、仇討・心中・乱・黒船でなんかつまんない。絵もいまいちだしね。せういえば、こないだ買った浮世絵の画集に芳年出てたなあ~。あの感想も忘れないうちに書いておこうっと。

感想になってませんが、まあ、似たようでいて外れもあるってことでしょうかね。

関連ブログ
「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社(こっちはお薦め!)

江戸の大変〈地の巻〉仇討・心中・乱・黒船(amazonリンク)
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2005年04月28日

「かわら版 江戸の大変 天の巻」稲垣史生 平凡社

edo1.jpgかわら版を元にして読み解くっていうか、完全に好事家(マニア)的な視点でコメントつけてるのがいいかも? いわゆるイエロー・ペーパーみたいなもんです。現代でいうなら写真週刊誌のたぐい。大衆の好奇心を満たす為の俗っぽさが隠れミーハーの私には、なんか愉快♪♪

江戸って、よっぽど火事が多かったみたい。まあ、あれだけ人口が密集していれば、しょうがないか。現在の東京の過密さに引き継がれてるなあ~。そんなこんなでここに採り上げられているのは火事の記事が多い、でも個人的にはつまらないですね。せいぜい、有名な振袖火事ぐらいか面白いのは。

会津磐梯山の怪獣 江ノ島、人語を解する海獣 奇病除けのスカ屁


むしろ、お薦めの記事はそれよりも妖怪や怪獣、化物の類い。駱駝が見世物として来たなんて記事もあり、なかなか興味深い。コアラやパンダが来たといって上野動物園に集まってきた人達なら、間違いなく当時だったら、見に行くでしょう。勿論、私も行くなあ~。最も、今だったら愛知博でマンモス見ている人と一緒ですネ。

アラビア産ラクダ ふたこぶラクダ

ちなみにこの駱駝、足に三節あって水脈を探り当てる天性で日本人を驚かしたらしい。押すな押すなの大評判で見料が三十二文。それで読まれた狂歌が

    押あうて見るよりも 見ぬがらくだろう
    百のおあしが 三つに折れては 

日本人のこういうセンスって好きです。コンクラーベよりも洒脱な感じがしません?

胴体に三つ目人魚次は三つ目の人魚が越中湾に現る! 
越中国の四方浦に人魚が現われ、漁船を悩ますので鉄砲でしとめると・・・。丈三丈五尺(約10m)、頭に金色の角が生え、胴体の両側に三つの目があるという奇怪さ。顔は勿論、若い女、人魚は永遠に老衰しないといわれ、これを食えばたちまち若返る。

う~ん、もし捕まえてヤフオクで売ったら、一千万以上は堅いね! お金持ちのおば様に買ってもらえそう(ニコニコ)。ここで書かれている古川柳が、もう最高!!

    あの芸者人魚を 食ったかも知れず

いやあ~、分かる。分かり過ぎるほど、分かってしまいますね。経費で落ちない領収書を山のように持って頭を抱えている男性諸氏が目に浮かびます(爆笑)。

飛騨の大ムカデ 飼い主を殺す?怪猫

他にも興味深いのはたくさんあるんですが、後ほど写真をいくつかアップしますね(ようやく写真をUP! クリックで大きくなります)。こればかりは、映像を見ないと話だけでは分からないし。個人的には、そこそここういうのスキ。

関連リンク
「かわら版 江戸の大変 地の巻」稲垣史生 平凡社

江戸の大変 かわら版〈天の巻〉地震・雷・火事・怪物(amazonリンク)
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2005年04月25日

「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社

kessya.jpg端的に言うと、中・高校生ぐらいの時に面白がって読むような類いの本です。理性あるまともな大人が読むような本ではありません。個人的には嫌いじゃないけど、誰それ(故・鳩山一郎)がフリーメイソンだとか、よく知られているネタを繰り返し&繰り返し焼き直して小銭を稼ぐような人達が小遣い銭稼ぎに筆を汚しているってとこですね。フリーメイソンのロッジの写真やありがちなシオン議定書の黒幕は・・・、とかソロモンの石工以来の伝統をひく○○といった程度の話でど素人の私でさえ、ほとんど知っているくらいのお粗末な内容です。まともなことを知りたければ、時間の無駄です。

肩書き的には学者でも、まず、まともな正統派の方ではなさそうでその発言内容も薄っぺらで中身がないです。まして作家とか自称研究家の方の場合は、どこをどうしたら、そんな結論が出るのか一切の説明無しに、勝手な自説の主張をされています。イエスをエジプト人の魔術師だとか書いていた自称・研究家さんを彷彿とさせるような記述の数々。歴史を独自の陰謀史観で解釈しているといえば、聞こえがいいですが、その域にもいっていないでしょう。良い子は信じちゃ駄目だよ~(笑顔)。

とまあ、この出版社も普段はそこそこまともな歴史物を出しているんですが、眉唾ものの俗っぽい方がきっと売上がいいのでしょう。定期的に別冊でこういったトンドモ本系の出してます。これもそれ系です。

散々、否定的な事を書きながら、何故この本を読んだかというと、オプス・デイについて書かれていた記事があったので。ただ、それだけの為に図書館から借りてきたのでした。じゃなきゃ、いらないもん!

さて、本題。記事のタイトルは「オピュス・デイ ラテン国家における権力者たちのネットワーク」(オプス・デイをここではオピュス・デイと訳出している)となっていて内容は・・・。

どこまでが本当かは、この本自体の作りについて既に述べているので、はなはだ怪しい?とだけ言っておきますが、中には私が知っている事実も含まれていたので、とりあえず、興味深いとこを抜書きしてみると、

ポーランドのカルロ・オイチワが、オプス・デイ会員であるベニスのコーニング枢機卿の助力で教皇ヨハネ・パウロ2世になると、オプス・デイの勢力は更に伸び、教皇の母国ポーランドの共産主義打倒の為に資金援助して、感謝された。教皇はオプスの力を認め、既に枢機卿になっていた創立者エスクリーバーを福者に“列福”させ、オプスの二代目ロドリゲス枢機卿を自分の相談役に登用した。

ラテン国家で起きた解放の神学、大地主の土地を貧者に与えようという進歩的な司祭の運動はパウロ2世とオプスは否定。改革を指導した司教は暗殺され火は消えた。改革に反対した反共のペルーのフジモリ元大統領、現イタリアのベルルスコーニ首相夫妻はオプスの熱心な支持者だ。

82年イタリア最大のアンブロシアーノ銀行がマフィア銀行家ミケーレ・シンドナとフリーメイソンに食われて倒産。カルビ頭取は鉄橋で首吊り死体。シンドナは裁判で真相暴露を表明したが、刑務所で毒殺された。同年、スペインの大富豪でオプスのパロトン、ホセ・マリア・マテオスが脱税と不正金融操作で逮捕。彼は3億ペセタの献金を認めた。実はバチカン銀行(IOR)の懇願で、アンブロシアーノ銀行の倒産を防ぐためのカネだった。教皇庁は職員の給料が払えなくなり、IORのコンサルタントであるシンドナの指導で株投機をしたが失敗。その資金を頭取カルビが貸したが、返済不能になりアンブロシアーノ銀行倒産につながった。教皇パウロ2世は真実を知ると、IOR総裁マルチンスク大司教をクビにした。前教皇が就任直後に急死したのは巨額な欠損を知り驚愕した為だと言われた。

とまあ、こんなこととかがいろいろと書き連ねてあります。他にもオプス・デイが右翼政権との間に、どれほどの蜜月を過ごしてきたかなど有名な事実もありますが、市販の百科事典にも出ていますし、私の用語集でも採り上げ済みなので割愛しちゃいます。どこまでが真実でどこからが濡れ衣かは皆さんでご判断下さい。全部嘘かもしれないし…???

宗教と政治は本当に密接に結びついていますね。現在のバチカンに来ている世界各国の首脳を見ていても思いますが・・・バチカン外交花盛りですし。

世界を支配する秘密結社―謎と真相(amazonリンク)

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オプス・デイ創立者、列聖へ  カトリック新聞
「法王の銀行家」殺害で4人起訴 CNN
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2005年04月03日

「妖怪図巻」京極夏彦、多田克己 国書刊行会

表紙現存する妖怪に関する和本をもとに、とっても魅力的で愛らしい(怖い?)姿を綺麗な写真(印刷)で紹介していく一冊。お手本となる作品をもとにして、たくさんの模写とか習作が作られたいたそうです。それが右ページ(化物づくし)と左ページ(百怪図巻)で対比されている点も面白いです。

個々の妖怪に関する説明は巻末にまとめてしてあり、その妖怪に関する定番エピソードや異説、名称の由来等の解説も楽しいです。まあ、あちこちの本で聞いたことあるものばかりですが、比較的よくまとまっていて知識の整理にもいいかも?なんたって、この本は絵が命、全て、の本ですから。とっても綺麗でこういうの好き!

収録内容は江戸期製作の「化物づくし」「百怪図巻」「化物絵巻」「百鬼夜行絵巻」。183ページもあってオールカラーだから、これは結構当りだったかも?高いけど…(涙)。

ろくろ首犬神塗仏

河童火車手目坊主

濡れ女ぬらりひょん猫また

かまいたち雪女野狐

幽霊

ここでも一部だけ、絵で紹介。第一段目がろくろ首、犬神、塗仏。第二段目が河童、火車、手目坊主。第三段目が濡れ女、ぬらりひょん、猫また。第四段目がかまいたち、雪女、野狐。第五段目が幽霊。

この中でお初なのが手目坊主、知らなかったので解説を読むと。博打で自分に都合の良い目や札を出すイカサマが手目。で、その手目(=いかさま)を見せているのでイカサマばれた=化けの皮がはがれた、妖怪になるそうです。なかなか粋ですね。しかも勝負に負ける=坊主、にかけているというんだから、西洋絵画の図像にも負けませんよ。まあ、世界中に共通かな、こういうのは。楽しいですね(笑顔)。

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2005年03月24日

「怪物誌」荒俣宏 リブロポート(図版13枚有り)

まずは博物誌というと、いろんな所で必ず出てくるコンラート・ゲスナーの「博物誌」。私もいろんな資料を調べた時に名前だけはよく聞くので漠然と気にはなっていたんですが…。16世紀の人なんですね。荒俣さんの文章によると、このゲスナーという人、直接調べられるものは可能な限り自分の目で調べ、直接調べるのが不可能なものは、いつわりと知りつつも恣意性を避けて、入手可能な資料を忠実に模写したそうです。ほ~、なかなか興味深い姿勢ですね!

個人的には、とにかく関心があるものや綺麗なものを本から撮り込んでみました。スキャナーだと時間がもったいないのでデジカメ利用です。ちょっと歪むのはしかたないですね。あくまでもメモですので。(クリックで拡大します)

ゲスナー「動物誌」四足獣編 海の怪獣 インドサイ

一番左はゲスナー「動物誌」四足獣編で描かれている怪物はスウ。現地語で<水>の意味。真ん中の右半分は、ゲスナーの著作を出した出版社のアンドレア・カンビア社の紋章。で、左半分は上から海の怪獣ジェニー・ハニヴァー。人為的に作られた怪物。二番目は海のライオン。三番目は海馬。右のものはインドサイ。但し、長い航海で腫れ物が生じて変わった姿になったもの。あちこちの絵画でも見られる有名なもの。

ドラゴン 海坊主 海の大主教

左はドラゴン各種。真ん中は海坊主。別名、海の大主教、海の修道士。この種の怪物がカトリック腐敗を断罪するシンボルとしてマルティン・ルターらに利用されたそうです。即ち、畸形とは堕落したカトリックの没落を予兆するサインという宣伝がされていたそうです。う~ん、でも私が調べた資料では逆に、これら異形のものが海においてもキリスト教に帰依したとして、むしろ教会の権威付けに利用された話もあるのだけれど…?話が錯綜してますね、なにかいい資料や研究所があれば読んでみたいもんです。で、右のものの右半分は海の大主教。左半分はセイレーンとも呼ばれるトリトン。

鯨 ヒュドラ

左は右半分の上から鯨を襲うシャチ、次に船を襲う鯨、最後に解体される鯨。左半分も鯨です。で、右はセバ「博物宝典」のヒュドラ。

ヨンストン「禽獣虫魚魚図譜」の一角獣 一角獣 一角獣

左は、ヨハン・ヨンストン「禽獣虫魚魚図譜」と一角獣。左半分のうち真ん中の一角獣には足に水かきがあるのが特徴的。真ん中は、一角獣3種。右は上から、一角獣のオナガー、海狼、野生山羊。

ヨンストンのドラゴン象人間 レチフ・ド・ラ・ブルトンヌの「南半球の発見」

左は「禽獣虫魚魚図譜」のドラゴン各種。右は本の表紙にもなっているレチフ・ド・ラ・ブルトンヌの「南半球の発見」に出てくる象人間。

個人的には、これぐらいメモしておけばもう十分。整理するのも疲れるし…。

関連ブログ
「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り

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2005年03月21日

「THE GOLD 2004年3月号」JCB会員誌~プラハ迷宮都市伝説~

クレメンティヌムこれは、BOOKOFFで見つけたもの。通常、ゴールド会員なら無料で届くやつですね。以前いた会社がよく通販広告載せてたおなじみのもの。通販的には結構、食いつきが良かったりする。

まあ、それはどうでもいいことでちょうどこの号でプラハ特集を組んでいたんです。大・大・大好きな中世の図書館の画像があったので速攻で購入&写真をスキャナー。メモ代わりにここのブログに載せときます。

これ表紙ね。クレメンティヌム。もとはイエズス会の修道院で現在は、国立図書館になっているそうです。実はここ回ろうと思っていたんですが、一時間に一回ぐらいの割合でガイド付きで回るんですよ、確か。それで二度ぐらい行ったのに時間が合わなくて見てないんだ…今から思うともう泣くしかない(号泣)。

クレメンティヌムこれなんかもそう、クレメンティヌム。こういった図書館で時間を忘れて本を読んでいたいですねぇ~。このブログのトップの左にあるストラフホフ修道院図書館もそうですが、ほんとプラハは魅力的な図書館の宝庫。貴重な手彩色写本等蔵書も多数。だてに『錬金術師と魔女の都』じゃないですよね。改めて写真で見てもうっとりしますねぇ~。
(写真はみんなクリックすると大きくなります。) 


からくり時計で、こちらがいわくつきの大時計。あの当時(11世紀?)、これだけの機械仕掛けは本当に珍しく、高い技術水準がうかがえる。現在、ユーロ加盟後、安価な労働力と高い技術水準に惹かれて多数の自動車工場とかがここチェコに集まっているのも故無いことではなさそうですね。
そうそう、この時計を作った職人は、当時の常識からはあまりにも逸脱するほど素晴らしかった為、悪魔と契約して作ったとかいろんな伝説があるそうです。作った人も殺されてしまったとか…?怪し過ぎる…、もう、たまりませんね! 

あと、プラハ城内には魔女裁判用の拷問器具とか錬金術の為の器具なんかも残ってたりします。で、街中にはシナゴーグ(ユダヤ教の公会所)があり、その中の一つには土塊に戻ったとされるゴーレムが未だに天井裏の部屋にあるという伝説があったりします。是非、また行って美味しい黒ビールでも飲みたいもんです。

関連ブログ
魔女と錬金術師の街、プラハ
NHK世界美術館紀行 プラハ国立美術館
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2005年03月16日

「日本妖怪巡礼団」荒俣宏 集英社文庫

youkai
【目次】
序 日本妖怪巡礼団縁起
第1部 東京怪異探策
第2部 崇りの発掘
第3部 関東妖怪探索
第4部 冥界との交信

~麻布七不思議、本所七不思議、稲荷のキツネ、魔都の闇、江戸のゴーストバスター、首塚の悲しみ、亡霊をもとめて、伊豆の暗夜、湘南の血みどろ、筑波のふもとの恐怖、イタコ話、霊魂の行方~
荒俣さんがお得意の俗っぽさを全面に出しながら、これでもか~と芝居がかった調子で自称「妖怪巡礼団」の名の下にミステリースポットを巡る旅。あの名著「帝都物語」で平将門の首塚を絶妙に生かしたあのセンスが再び輝きだしますと言えば、ピンとくるかなあ~。でも、これも雑誌に連載されていたものだから、読み易い反面、いささかおふざけが過ぎるキライがあるものの、トリビア的なものには事欠かないので一読の価値有り。街歩きが好きな方は、読んでおくと散歩が単なる散歩以上の楽しみになりますね!私もお休みの時にはあてどもなく、街中を散策してる人なんで。おお~、あそこのことかと思うことも多かったです。いくつか抜書きすると…。

その一つは麻布の蝦蟇(ガマ)。麻布十番祭りで各国大使館が出す屋台のエスニック料理を食べつつ、ぶらぶらするとここにぶつかりますね、麻布十番神社。この近辺に蝦蟇池という池があり、以前はガマがたくさんいてその中には化物となって人を殺す事さえあった。殺された人は江戸末期の旗本、山崎主税助治正の家臣で治正がガマ退治を命じると、ガマの精が現われ、罪を詫びて今後は当家の防火に尽くすと誓う。その後、大火が起きた際もガマが水を吹き付けて火災から守ったという伝説があるらしい。それ以降、山崎家は蝦蟇のお守りを出して今も実際にこの神社で扱ってたりする。私も数年前に行った時、連れが可愛いからと意味も分からず、カエルのストラップを購入していたのでよく覚えていたりする(お金がカエルとか安易なよくあるものだと思ったので)。しっかりした由緒ある蝦蟇様だったんですね。今年行くときは、もっと注意してみよっと。

あと、メモすべきは松浦静山著の「甲子夜話」。江戸の化物や怪事件の調査記録だそうです。松浦藩は海賊行為と海外貿易で財を為し、この静山は明治天皇の曾祖父さんにあたるんだって。しかも、鬼退治で有名な源頼光の部下、渡辺綱その人がその祖先というのですから、こちらの本も読んでおこうっと。井上円了の本とはどう違うかな???

遊女が死ぬと投げ込まれたという「投込寺(なげこみでら)」こと浄閑寺。あの吉原が近くにあることから、たくさんの遊女が死ぬとみなここに運ばれていた。「生まれては苦界、死んでは浄閑寺」という言葉が切なくなる。この本では書かれていないが、北海道ススキノにも、同様に浄閑寺のような寺があったのを私は覚えている。どこの世界に行っても、公秩序の中に納まり切らない必要悪な社会的な暗部は、ヨシやススキといったものが生えるような隔絶された土地に押し込まれ、更にそこには、底辺に近い人々を受け入れる存在としての寺がつきものらしい。それによって、怨嗟の声をあげる存在は浄化されるのやら? 

ちなみに萱場町も同様です。今も株屋さん(表現的に失礼かな?)が集まっていますが、社会的な扱いが一段低かった為に、ああいう地名(カヤ)の場所だったりします。まあ、金融それ自体もユダヤ人居留区ゲットーから始まっているという、歴史的なものがオーバーラップしますなあ~(偏見っぽい)。ちょっと元に戻すと、ここには書かれていませんが俗に吉原は「男の極楽、女の地獄」というのも有名です。初会、裏を返す、馴染み等々、日本語の基本でしょう、教養ある皆様方はご存知ですね!(う~む、私は何歳なんだ?廓言葉の辞典買うか悩んだ事もあるが…)落語とかは、そういう意味でも面白いです。本所の七不思議なんて、まさにソレ(!)ですし。

そうそう、この本の中で首塚についての解説中で特にエッ~!? と思ったのが、恩賞の為の首検分に先立ち、首が腐らないように処理をしたんだけど、その方法に塩漬けもさることながら味噌漬けも多かったそうです。腐り易い脳を取り出し、代わりに味噌を詰める。そこから脳みそなる言葉が生まれたとか。本当なんでしょうか?あまりにうまいんですけど、落語じゃないんですから???

で、谷中の全生庵における幽霊画。これは私も見たことあるし、なんども谷中の墓地巡りして有名人のお墓を見つけたりしてるのであれのことね、っと頷いてしまうことしきり。怪談で有名な落語家圓朝をしのぶ怪談も聞きに行ったしね。谷中には七福神巡りでも行ったし、デートで行ったこともあったなあ~(物好きな人もいたね)。これは確かに見ておかないといけないようなあ~と荒俣さんの選択センスに共感しちゃいますね。だから、ついついモノによっては不満もあるけど、買ってしまったりする。

あとお散歩にも最適で桜も美しく咲いちゃう隅田川沿いの牛島神社。元々は牛御前社。黒光りする撫で牛の像で有名。私も当然、撫でた経験有り。でもここも将門よろしく関東独立国家を樹立せんとした反乱分子だったとは知りませんでした。そのことを知ったのは、この本ではなく、別な荒俣さんの本から。だいぶ、影響をされていたりする。まあ、私のいるところ自体が、江戸時代の庚申塔やら鎌倉時代の石碑に不自由せず、坂上田村麻呂がやってきたので地名に「将軍沢」なんてのがあるような土地柄だけに江戸なんて歴史の浅い所は、そんなに驚いたりしませんけどね。(凄い田舎だという証明でしかないけど)

他にも興味深い話題がぎっしり。ローマを巡るなら聖人のことを知っておいた方が楽しめるのと一緒かな?東京で街歩きする前に読んどくと楽しいです。上野公園の清水寺は京都の清水寺を勧請しており、京都の清水寺で蝦夷征伐の武運を願ったのが先ほどの坂上田村麻呂(征夷大将軍)。歴史は有機的に絡みあってますね。また、東京赤坂の日枝神社は埼玉長瀞の登宝山の日枝神社から勧請しており、さらに長瀞のものは京都から勧請しているはず(?)。江戸は浅いんだよねぇ~歴史が。でも浅草のとこにある駒形どじょうとかは好きなんだけどね。今月中にまた食べに行こっと。神谷バーもここ数ヶ月行ってないしね。今日、仙台から帰ってきたけど、来月は花見で京都だ。妖しい桜の花に魅惑され、またまた旅路にと出向くか…。

とまあ、ダラダラと書き連ねてますが、基本的には妖怪系が好きなら持っておいていい本ですね。京極さんのように、くどいウンチクと違い、これは非常に浅く(意図的にね)触れていますのでお散歩のお供に。王子の狐も出ていたなあ~。花見で以前よく行ってた飛鳥山もあそこだし、誰かさんと別な用事で2・3年前は本当によく行ってかも?懐かしい場所がいっぱい出てきて為になります。もっとも、いささか低俗に過ぎるのがマイナスですが。と生意気な感想でした。

日本妖怪巡礼団集英社文庫(amazonリンク)
ラベル:妖怪 荒俣宏
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2005年03月15日

エスクァイア(Esquire)VOL.19

esquire2005年3月号の雑誌です。これ聖人の特集してるんですよ~。しかもその内容がなかなかに濃い!特集は「聖人を巡るイタリア」でローマ、フィレンツェ、ヴェネツイアを中心に各都市に捧げられた守護聖人についての解説がしてあります。とにかく写真が多いし、その説明が通常の観光ガイドよりもはるかに詳しく突っ込んで書かれています。イタイリア旅行する際には、某○TBなんかの安っぽい旅行ガイドなんかより、よほどこちらをお薦めします。職人の守護聖人の話に絡めながら、職人のこともごく自然に紹介してるし、おいしそうな料理やワインについても書かれていてこれこそ文化!酒も飲まないで、芸術を享受するなんてあるまじき発想でしょう(えっ、異論が聞こえてきそうですが・・・)。私が求めるような情報が結構、盛りだくさんに書かれています。

よりdeep(cheapじゃないです)な旅を目指すなら、これはなかなか美味しい資料です。何気に聖人については定番「黄金伝説」からも引用してるし、私も行ったカタコンベなんかの写真や説明も普通ではあまり見ないだけに、結構貴重だと思うなあ~。もっとも雑誌にありがちな話で雑誌の後ろ半分は広告や記事で私的には不要。思いしかさばるから、破って捨てたいのですが・・・雑誌が傷みそうだし、どうしたものやら・・・・???思案のしどころですね。う~ん。

ちょっと面白かったのを引用
キリスト教を最初に公認したコンスタンティヌス帝の話。重い病に倒れた皇帝に、異教の司祭は幼児達の生き血に浸れば癒えると説くが、さすがにそれはできず、絶望して臥せっていると、夢枕にピエトロとパオロ(ローマ守護聖人二人)が現われ、山に籠っているサン・シルベストロにあうようにと言われる。そしてシルベストロが洗礼を施すと皇帝の病は癒える。伝説ではそのお礼にキリスト教を国教にしたとされている。

こんなの初めて聞きました。普通は権力闘争のさなかで、空中で十字を見て戦いに勝利したからというのは一般的な伝説みたいなんですけど・・・。由来はどの資料だろう?調べてみたいテーマですね。

そうそう、私の好きなフィレンツェのサン・ロレンツォ教会のことも詳しく書かれていて、とっても懐かしかった。あと、革職人とか基本ですね。あそこの革製品は、なめしがしっかりしているので革が柔らかく、しかも丈夫で本当にいい品物が激安。私が以前、バイヤーだったときにもあそこから輸入してた商品をよく扱ったものです。あ~、今度は買付けに行きたいなあ。業者さんに連れていってもらおうかな???ただ、TAX16%ぐらいだったと思ったけど・・・・。勉強しないと。

ベネツィアのマルコは、そう言えば、聖遺物を盗ってきたもんなんですよね。何度も聞いてたし、絵画を見るたびに説明でも読んで知っていたのに、全然理解するまでいってなかったかも?ただ、金色に輝く富と栄光を象徴する教会しか、イメージに残ってなかったのですが、改めて新鮮な驚き。やっぱり、この雑誌の特集は買いでしょう。まだ売っているのかな?たまたま仙台で見つけてわざわざ買ってしまったのも、まあそういう縁(えにし)だったのでしょう・・・、とっても思いのですけどね。

結論! やっぱり黄金伝説を読まないと。この特集には私がよく採り上げていた聖チェチリアもピックアップされていて、すっごく嬉しかったし・・・。マグダラのマリアがね、大切ですね!
Esquire (エスクァイア) 日本版(amazonリンク)
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2005年03月14日

「アルハンブラ」佐伯泰英 徳間書店

何故、仙台の旅行中、アルハンブラを読んでいるのか?何故、作並温泉の露天にたった一人で浸かりながら、phantomを口ずさみつつ、アルハンブラなのか?
まあ、そういったことは別にして旅の最中に必ず本が相棒の私としては、まずまずの相手でした。

中身としては著者のバックパッカー的な旅行記に、史実のアルハンブラ物語が織り込まれる構成で、個人的には「中途半端にせず、どっちかにしろ!」といつもなら、不満を覚えるところなのですが(=実際、最初は結構、鼻につき、自分に酔ってる自己満足的な低俗さを感じたんですが・・・)、最終的には大目に見てあげようかというぐらいの気持ちになりました。

一度行って、自分の足で心ゆくまで回った人には、この小説の中に描かれている個々の風景が目前に浮かび、勝手に自分の中で膨張するのできっかけさえあれば十分なのです、そもそも。既に、もう焼きついて離れないほど、刷り込まれてしまう強烈な美しさ!イスラムの(神の)至高性! 本書はそういう意味では十分に、それを思い出させるキッカケになりうるのです。

あれほど神の領域にも近づき得るかのような、壮麗且つ至高のアルハンブラは、最後の王ボアブディルその人の責めに帰すべき事由よりも、権力闘争に明け暮れたイスラム国家の結果として、レコンキスタ(国土回復運動)をキリスト教徒に為さしめてしまったその悲劇。しばしば歴史上あることの一つではあるが、アルハンブラをユニークにするものは・・・。論より証拠、行ってみるしかないでしょう。自分の足で、自分の意思で、自分の価値観で。

なんだか漠としていますが、そういったことを感じながら、読んでいました。内容的には、オーソドックスなものを下敷きにしていて、格別知らなかったことが無かっただけに、より一層、自分の中の記憶や思いを再発見する機会になりました。やはり、美しいですアルハンブラ。単なる世界遺産の一つではないなあ~。目にも彩かな天人花、シアラネバダより延々と引き込まれ、敷地内を流れまわる水のせせらぎ。モローの描く、出現の背景。モザイクのごとき、無限のイメージに翻弄されながら、未だに魅了するのですから・・・。

行った事のある人、行く人は読んでもいい本かも?但し、著者の描写が優れているわけではないので、行ったことがないとおそらく想像できません。この本のレベルでは。とにかく、仙台にいながら、何故か心はハーレムだったりします。魅惑の迷宮と言ったところでしょうか。
アルハンブラ―光の迷宮 風の回廊(amazonリンク)

関連ブログ
アルハンブラ宮殿の思い出(2002年8月)
NHK世界遺産 光と影の王宮伝説 ~スペイン・アルハンブラ宮殿~
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2005年03月12日

「ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く」サイモン・コックス PHP研究所

【目次】
東方三博士の礼拝――ダ・ヴィンチの隠蔽工作
アルビ(アルビジョア)十字軍――異端撲滅運動
アンク(アンサタ)十字――ジャック・ソニエールのコレクション
マヌエル・アリンガローサ――オプス・デイの枢機卿
アスモデウス(アマシュダイ)――鬼形の守護神
アトバシュ・サイファー(暗号)――ヘブライ語の暗号システム
バフォメット――テンプル騎士団の偶像神
クレアヴォーの聖ベルナール――聖杯伝説の理解に欠かせない人物
シスター・サンドリーヌ・ビエイル――名前に隠された系譜
黒マドンナ(像)――黒色の聖母マリア ほか
もう言わずと知れたダ・ヴィンチ・コード便乗本の最有力候補といったところでしょうか。著者がこういうの大好きな「フェノミナ」という雑誌の編集長でハンコックらとも親交があるんだから・・・まあ、容易に想像がつきますね、内容は。

あっ、でも中身的には結構、きちんと文献を調べていて、ダ・ヴィンチ・コードに出てくる用語のもう少しだけ詳しい説明が知りたい!という人の要求には十分応えられる内容になっています。自分で調べれば、もっと&もっと詳しい説明を知る事もできますし、とっても楽しいんですが、そんな暇ないし、もうちょっとだけ知りたいんだ――そういう人にはうってつけだと思います(お薦め!)。それにこの手の本にありがちな著者の不要且つ独善的な解釈をほとんど含まずに、比較的良心的にまとめてあります。まあ、逆に自分で調べたり、「レンヌ=ル=シャトーの謎」を読む気があるなら、これは買わなくてもいいです。

この著者も書かれている通り、ダ・ヴィンチ・コード自体が元にしている定本が、「レンヌ=ル=シャトーの謎」「テンプル騎士団の啓示」「石膏の壺をもた女:マグダラのマリアと聖杯」であり、特に「レンヌ=ル=シャトーの謎」が一番の中核で本書もここから大部分を拠っているのでこれを読む気力があれば、お金がもったいないので止めときましょう(但し、この本が日本語訳だと500頁を軽く超え、5千円を超える出費になりますが)。あとはつたないですが、私が作った用語集(もどき?)やこのブログで十分ですよ~。また、この本読んでから追加・修正するし、内容は。もっとも、余計な文章が多くて読み辛いかもしれません。無料ですけどね(笑)。

あっ、DVDにもなってますね。DVDのことは知ってましたが、この本だったんですね、元々は。なるほど~。一人で納得しちゃいました。

関連ブログ
「ダ・ヴィンチ・コードの謎」DVDの話
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「オーパーツの謎」南山宏 二見書房

はいは~い、たまには息抜きも必要ということで、あからさまにトンデモ本を読んでみました(きちんとしてものもあるはずですが、この本は書き方故にトンデモ本)。で、オーパーツですが out of place artfifacts のことで「その時代においては本来、技術的に作り出せないと考えられるのに、現存する工芸物」のこと。まあ、4チャンネルあたりのTV番組でよくやっていた類いですね。私も小学生ぐらいの時、UFOや雪男と同じように、怪しげな雑誌や本で結構見たこと有ります。嫌いじゃないんですよ、こういうのも・・・(ニヤリ)。確かNASAには極秘の最高意思決定機関があり、その中の一人は宇宙人とかね!以前の矢追氏のネタ路線ですな。

 (目次)
  古代人の恐竜土偶(メキシコ)
  人造大石球の謎(コスタリカ)
  飛翔する黄金シャトル(コロンビア)
  機械じかけのピラミッド(エジプト)
  巨石建築の不思議(ペルー)
  モアイ像に隠された秘密(イースター島)
  有史前世界地図(フランス)

うわあ~恐竜土偶以外、全てどっかで一度は見たり聞いたりしたことある、焼き直しの項目ばかり。今では恥ずかしくてちょっと出版できないような・・・出すかな?金になれば出版社は。なんせ、これもあの二見書房さんだし・・・・。みんなに夢と希望を与えてくれますなあ~、マジに。

しかし、凄いなあ~。思いつきと連想ゲームだけで本書いちゃうんだから。写真を撮ってきたら、それで検証は済んだと言われても・・・??? おまけに中南米の警察官を完全に信用しているのが不思議。まともな神経していたら、絶対に信用なんかしないけどなあ~。実情を知っていたら・・・なおさらね。さらには、証言者の写真はいいのですが、記念写真よろしく自分も並んでしっかり写った写真を本に掲載しているのは??? あの~単なる目立ちたがり屋さんかな。結構、すごいですこの方。

だって、なんでも勝手に思いつくまま関連付けて説明した後、一切の科学的調査は受けていないが、と言ってしまうのはちょっとネ。どんな発見・発明でも思い付きがきっかけかも知れませんが、その後、実現・実証の努力があって意味をなすんですけど・・・。子供じゃないんだからね。でも、現代においては貴重な存在かもしれません。世界を空想で豊かにしてくれる人です。別に科学者じゃないんだし、なに言ったっていいじゃないですか。そうですよ!自分の思いつきは、実証無しにすごいアイデアと言い切ったうえで、それを認めない科学者を頭が固いと一刀両断。キャアーすてきぃ~とか言いたくなるほど、ワイルドです(苦笑)。

絶対にお薦めしませんが、105円で売っていたり、図書館に万が一あったら、パラパラ頁をめくってみてもいいかも。それ以上は、時間の無駄になりますけどね(笑)。まあ、罪がない一冊でした。
(念の為に言うと、オーパーツが全てトンデモというわけではありません。きちんと学問的に取り組み、研究されている方もいらっしゃるのでその辺は誤解無く!あくまでもこの本についての感想です。)

オーパーツの謎 サラ・ブックス(amazonリンク)

荒俣さんの本の中でもオーパーツ紹介されてます
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「バロック科学の驚異」 荒俣宏 リブロボート(図版3枚有り)

イエズス会ローマ神学大学内博物館図版(左はイエズス会ローマ神学大学内博物館)がたくさん入っていて、アート系の採算を無視したようなリブロポートから出てる本って結構好きなんだけど、西武グループだもんね。みんな絶版になってるのかな?悲しいかも・・・。

と、それはさておき、荒俣氏らしいいつもの作りの本です。いつもは平凡社さんから出すようなタイプの、個人で買うより図書館で一括購入されるタイプの本。でもこれは一冊2060円だから安いね。しっかりした作りで個人的にはこういう本好き!但し、欠点はかさばって部屋に置けないこと。

うちにある本も去年だけで6箱くらいブックオフに売り飛ばしたが、まだ20箱近くある。戦前の黒本(?)やら、海外で買い求めた怪しい本とか、国会図書館にも無い本も少しはあるから、売るわけにもいかないし・・・。場所だけ取って困るなあ~。ああ、広い本置き場が欲しい。本棚は本が日に焼けるからパス。と、愚痴をもらしつつ。。。

この本では、荒俣氏いわく'バロックの恐竜'キルヒャーの書いた種々の本のうち、荒俣氏が趣味で集めた本の中から、気に入った図版をバサバサ取り上げて、荒俣ワールド風にしたもの。氏のお得意のパターンですが、この図版がなかなかいいんですよ。ホント。個人的にもこういうの好きだし、今の時代にはかえって、この不可思議な挿絵が新奇で斬新でもあり、いかにもマニア向けってカンジがいいです。でも、金にはならないんだろうなあ~きっと。

で、キルヒャーについても説明もされているのでちょっとだけ、要約すると。17世紀のイエズス会士で叡智の万人ともいうべき役割を果たした人物。カトリックに対する科学の攻撃(ガリレオ等)が始まりつつあり、それに対する防戦側の立場に立ったうえで、ありとあらゆる知識をキリスト教的価値観の下で、合理的に再構成していこうとした、まさに博覧強記の偉人とのことです。天文学、物理学はいうに及ばずエジプト学に至るまでありとあらゆる学問的領域にキリスト教的論理の下で統合していく学問的幅広さは驚嘆に値します。本当に、凄そうですね。まるでかのアリストテレスのようです。

そんな当時の超一流の知識人が書いた本の中から、さらに興味深い図版がたくさ~ん引用され、解説されているんですから、ホント見て楽しめますね。暇な時にゴロゴロしながら、眺めるのは至福の時でしょう。で、具体的には「ノアの箱舟」とか、GOOD!
だって、箱舟の構造図がついているんだよね。よくあるような、船の構造図みたいなカンジで。妙にリアルに。しかも念の入ったことに、その船の船室の配置図まであり、どこにどの生き物を入れるか、えさや人はここに、とか詳しく書かれている。ど・どうしてそんなことまで分かるのか?いくら合理的に推論した結果、きっとこうでしょうと言われても・・・???しかし、それをイエズス会が教育を担当していたハプスブルク家のカルロス2世に教えていたというんだから、帝王教育もここに極まれりですね!!アレキサンダー大王を教育したアリストテレスにも負けてないですなあ~。素晴らしいです。

パラダイス世界地図には、アトランティスがしっかりあるし・・・。パラダイス(左、挿絵)の想像図は、私、目からウロコが落ちるかと思いました。だって、アダムとイブは楽園から追放されたでしょ。この図では、柵で楽園が囲われていて入れないようになってる! オイオイ~、まんまジャン!?でも、それを大真面目に本にしているあたりが大先生たる所以なのでしょうか、一度講義を聴きたかったなあ~。でも、ラテン語だから無理か(残念、涙)。

そうそう、支那図説には「大秦景教流行中国碑」がしっかり描かれています。A.D.781年に既にネストリウス派キリスト教が中国に広まっていてことを示す有名な資料。先日、読んだ「大モンゴル」にも出てきた資料で、定番ですが押えておくべきでしょう。

ストラホフ修道院図書館 あとキルヒャーが生み出したイエズス会ローマ神学大学内博物館(左上、挿絵)。これは涎ものでしょう。キルヒャーが趣味に走って(綺麗にいうと、学問的好奇心から)作った博物館。ありとあらゆる資料が集められたようです。アルファベットが描かれた化石(?)、まともな動植物、怪物(=畸形)の標本(タイのあの博物館を思い出す・・・)、ノミの拡大図、虫入り琥珀、聖母像が現われた岩や石等々。なんか、私の中ではプラハのストラホフ修道院図書館(左上、写真)が、まさにこういったたぐいのものがあって、それを延々とデジカメで撮りながら見た記憶があり。ゾクゾクするほどそそられたりする。やっぱ、これでしょ、コレ!これと禁書があればPerfect!! 

そしてそして、このイエズス会ローマ神学大学内博物館には、あの澁澤龍彦大・大・大先生(物心ついてから澁澤氏の本でヨーロッパを理解した人なんで)がいらしたというのだから、もう行くしかないね。今は、ここにあった所蔵品はチリジリになってしまって散逸してるらしいのですが、一部は現存してあるそうですから。機会があれば行ってみたいリストの一つですね。

荒俣氏よりも先んじてキルヒャーに注目してたのも澁澤氏らしいです。まあ、澁澤さんそういうの大好きですからね。プリニウス同様に。おかげでその影響下の私ときたら・・・・(不問にして)。とにかく、見て楽しい本です。大人の絵本ってとこでしょうか。最初の数ページ以外は図版ばかりですし。うん、とても楽しめた本です。このシリーズのいくつか読もうかな。好きなものと興味ないものも結構あるけど。
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「神の刻印」グラハム・ハンコック著 凱風社

言わずと知れたハンコックの本です。上下巻があるのですが、上巻は資料をよく調べてあり、読んでいてとっても楽しいし、知識も増えてなかなかGOOD。それなのに・・・下巻以降は、余計な推理(もどき)をして、資料調査よりも行動記録になってしまい、くだらなくなってしまっていくのが非常に惜しい。後半は、低俗なイエローペーパーのように根拠の無い勝手な思い込みによる独り言になってしまうが、上巻はお薦め。もっとも、流れで前半を読むと下巻も読んじゃうんでしょうけどね。

内容は失われたアークを巡るお話。ここでもソロモン絡みの情報がたくさんあり、読まずにはいられなかったりする。勿論テンプル騎士団も出てきます。おまけにシャルトル大聖堂まで出てきてしまってはねぇ~。美味しいネタを盛り込んであるので、俗物で好奇心の旺盛の私としては読まずにいられない。知り合いから勧められたのですが、どうやら趣味を見透かされてしまってますね(苦笑)。でも、すっごく面白かったです。

さて、ちょっとばかり解説。そもそもアークとは?インディ・ジョーンズでこれでもかというくらい有名になりましたが、キリスト教に出てくる秘宝で、預言者モーゼが神と契約した「十戒」が記された石版を収めたとされる「契約のアーク」。どんなものかは、不明。

このアークは、聖書に書かれているところでは、行く先々でイスラエルの民を勝利に導き、ソロモン王が建立したエルサレム神殿の至聖所に収められた後、エチオピアに運ばれたという伝承があるそうです。伝承「ケブラ・ナガスト」によると。

また、エルサレムの聖墳墓教会の礼拝堂と祭壇は、十字軍からイスラム勢力に奪還された後、イスラム教徒の将軍サラディンにより1189年にエチオピアに下賜されたそうです。

ダ・ヴィンチ・コードよろしく、またまたサン・グリアルの話も出てくるし、ネタはつきませんね。テンプル騎士団がエルサレムの神殿跡に本拠地を置いたこと、初期の不可解な活動内容と沈黙、その後の驚異的な発展やフリーメイソンにつながる系譜などなど。どっかで聞いたネタが満載です。シャルトル大聖堂にあるシバの女王の彫刻もテンプル騎士団によるとされる。(私個人としては、こちらの本読んだ後にダ・ヴィンチ・コード以降の本読んでるので、本当はこれが最初だったりする。だから、当初はすご~く面白かった!)

エチオピアに土着のユダヤ人がいて、フラシャと呼ばれていたことなど、ここで初めて知る事も多く、「ケブラ・ナガスト」の英訳も読んでみた~い。と切に思ったりする。

女王はソロモンの子を身籠ったことに気付き、エチオピアに戻ってネメリクを生んだ。メネリクは20歳になると、イスラエルに旅して父の宮殿を訪ねた。ソロモン王はすぐにメネリクを息子であることを認知し、大いなる名誉を与えて可愛がった。やがてイスラエルの長老達はメネリクへの寵愛に焼もちを焼き、エチオピアに帰すよう進言した。そこで、王はメネリクの帰還に際し、長老達の長子を同伴させることを条件に、進言を受け入れた。大祭司ザドクの息子アザリウスもその同伴した長子の一人でアークを盗んだ張本人であるが、その盗みの事実をメネリクに話したのは、エルサレムを遠く離れてからであり、このような大それた企みが成功したのは、神がそれを望んでいるからと考えて、そのままアークを持ち出すことに同意した。かくしてエチオピアにアークがもたらされたという。

以上、抜粋であるが、なかなか興味深い。

シバの女王に関しては、私のブログの別のところでも触れているが、キリスト教の最後の審判にも係わる存在であり、宗教的主題にもしばしば登場するポピュラーなものらしく、今後も注意してみていきたいトピックだと感じた。

そうそう、先ほどのファラシャの伝説では次のようなものもある。
ソロモンがシバの女王だけでなく、召使をも身籠らせたのでメネリクには異母弟がいて、その弟がファラシャの王朝を設立したとする。今日のエチオピアのユダヤ人はみな、契約のアークを携えたメネリックについてきたイスラエルの長老の長子からなる警護隊の子孫とされる。

しかし、次から次へと話が出てきて奥が深いですねぇ~。まったく、飽きないし、尽きないテーマです。

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【補足】本書の中では、聖杯伝説にも触れており、プレスター・ジョンと呼ばれる王についても述べられている。この件については、別のところで関連する資料を見つけたのでこちらを参照のこと。
「大モンゴル 幻の王 プレスター・ジョン 世界征服への道」 角川書店

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「荒俣宏の20世紀ミステリー遺産」集英社

目次
リプレー「信じようと信じまいと」コレクション、ウィンチェスター・ミステリー・ハウス、リリ・エルベの肖像画、アンジェリンの看板、東京大学雪男探検隊、石原慎太郎のネッシー探検隊、オリバー君、フルカネリのサイン、福来博士の念写写真、熊沢天皇、学天則、レーニンのミイラ、ボルネオ島「首狩り族」の復活、ガラパゴス殺人事件、アナタハンの女王蜂、空手、沖縄ロゼッタストーン、与那国海底遺跡、ツチノコの足、ロッズ(スカイフィッシュ)、クロップサークル(ミステリーサークル)、ナスカの地上絵、レイライン、ロズウェルUFOの破片、死海文書、ヴォイニッチ写本、トリノの聖骸布、ピルトダウン人の化石、コティングレーの妖精写真、ミッチェル=ホッジズの水晶ドクロ、中国遺伝学、陸軍登戸研究所 

荒俣氏の好奇心全開の本です。もともとが雑誌プレイボーイに連載していたそうで、普段よりかなり俗っぽさを全面に出しております。どちらかと、小遣い銭稼ぎにちょこっと書かれたのかなあ~というカンジではありますが、それなりに面白いものも混ざってます。

小学生の時に、矢追純一氏のUFO本やらNASAの上層部には宇宙人がいる・・・という子供騙しの本を一生懸命、真剣に読んでいた私には、妙に懐かしい雰囲気がして独特の感慨がありました。何歳になっても、こういう嘘かホントか分からないけど、なんか不思議なものっていうのはいいですね! 京都の八坂神社に花見の季節になると出るお化け屋敷がまさにそんな感じでいいんですよねぇ~。河童やら蛇女の見世物とか。堪らない俗っぽさとか、大衆性とか。


で、実際に読んで面白かったのはフルカネリ。本から一部を抜粋すると
1963年出版 「魔術師の朝」ルイ・ポーウエルとジャック・ベルジュ共著に出てくる人物。フルカネリは19世紀半ばに生まれ、賢者の石の創造に成功して不老長寿の肉体に恵まれた、稀有の魔法使い。1920年代からパリのオカルト研究者たちに名を知られていたが、1926年にフルカネリの筆名で刊行した「大聖堂の秘密」で有名になった。内容は、シャルトルやノートルダムなどの大聖堂には、錬金術の秘密の知識を明かすステンドグラスがあり、ステンドグラスを解読すれば古代魔術の叡智を手に入れられると主張する本。
第二作「賢者の住居」を1929年に出版し、錬金術の秘密を明らかにした。その中で自身の正体を暴露する鍵があり、画家シャンパーニュが裏表紙に描いた紋章だった。調べてみるとモン=サン=ミッシェル修道院と関係があり、第三十代院長ロベール・ジョリヴェがこの紋章を使用していた。モン=サン=ミッシェルの修道士は太陽を崇拝し、錬金術も研究する奇怪な人々だったといわれる。 

なんかたまりませんねぇ~、こういうのを知るとゾクゾクして読んでみたくてたまらなくなってしまいます(悪い病気か?(苦笑))。調べてみると、フルカネリはカリオストロのように錬金術師として非常に有名で、ここで紹介されている「大聖堂の秘密」って実在し、日本語訳まで出てるんだよね。荒俣氏の本をきっかけに初めて知りました。これだけでも大収穫!ちょうど、この少し前にゴシック建築に関する本を読んだばかりで、そこに秘められた非常に高度な象徴性、崇高さ等々について関心が増していたときなのでより一層、タイムリーな一冊でした。(後日譚ですが、値段が高くて今は我慢している所です。「イエスのミステリー」「死海文書の謎」「レンヌ=ル=シャトーの謎」と高価な本を立て続けに買いまくっているので自粛中。でも、2月中に買ってしまいそうな気がします・・・・)本棚に増えるのは時間の問題ですね。う~む。

次はトリノの聖骸布。なんだってイエス様のお顔が見れるという話ですから・・・。なかなか一概にそれが事実とは言えないのがツライところですが、見たかったなあ~。なんだかんだ言っても、そういう所だけは異様にミーハーな私としては、公開中にイタリア行くべきだった。ピティ宮殿のラファエロばかり何度も行っていて、他のところ行く暇無かったんだけど(涙)。アッシジも壁画が地震で壊れる前に行きたかったなあ・・・。
最後の奇蹟─トリノの聖骸布
写真のはじまりは「トリノの聖骸布」?

あと、なんといってもオーパーツ(=Out Of Place Artifactsのこと)。世界の七不思議とか、不思議百科全集とかいうチャチなものでも、子供時代には興奮して読んでいたものです。熱帯のジャングル、アマゾンに探検に行くと、原住民が大切にしてる宝としてそういうものとかを隠し持っていたりしそう(オイオイ、妄想全開モードか?)。実際に、ブラジルのアマゾン(国立森林公園内)に行ったが、そういう出会いはなかったなあ・・・寂しい。もっともテング熱とか風土病もはやっていて、うかつなところになんて行けなかったけど。NHKスペシャルでオーパーツ特集とかやってくれた最高なんだけどなあ~。BBCとかと組んでくれたら、もうヨダレが垂れてしまいます(笑)。うちの机のうえに転がっているものは、パラハで買ったゴーレム人形と首切り処刑場面のフィギア。なかなかレアっぱくて好きなんですが、以前会社の机においておいたら、周囲の同僚や部下から、「悪趣味」とひどい言われよう。泣く泣く自宅へ持ち帰った経緯も。でも負けません。オーパーツなんかも欲しいなあ~。他にも、伏見稲荷で買ったお狐様ぬいぐるみもあったりしたが、これは人気者でもらわれていきました。元気かな?コンちゃん(お狐様の愛称)。

荒俣宏の20世紀世界ミステリ遺産(amazonリンク)

関連サイト
【特集】アビドスのオーパーツ
「オーパーツの謎」南山宏 二見書房 こっちはトンデモ本ってことで

関連ブログ
「トリノの聖骸布―最後の奇蹟」イアン・ウィルソン 文芸春秋
『トリノの聖骸布』の印影は復活の時のものか
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