2008年05月15日

「怪奇礼讃」E・F・ベンスン他  東京創元社

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しかし、この手の怪奇小説っていうのは、短編ながらも大概、読み応えがあって、独特の感慨を抱かせる素敵な読み物なのだが・・・本書はこのジャンルにしては、珍しくつまらない。

創元推理は、このジャンルでは定評があり、良質の作品が多いのだが、よくもまあ、これほど何にも印象に残らない作品ばかりを集めたものだと別な意味で感心してしまうほど、ヒドイ!

「まえがき」でさも上等な選ばれしセンスのある読者、な〜んて感じで持ち上げながら、こんな作品を読ませるとは編者のセンスに大いなる疑問(?)を禁じ得ない。

平井呈一氏の爪の垢でも、マジ飲んで出直して欲しい!! 別に正統派の古めかしいのに飽きたとか、ひぬくれてみたとかいう編者の戯言も結構。ただ、「読者が面白いと思えば」というのが最低の条件。それをクリアできないうちに、身の程知らずのことは慎むべきでしょう。

とにかく怖いとも思わないし、不思議な感覚に陥る事も全く無いです。あまりにも普通の文章を、どうでも良い訳で読まされてもなめんなよとしか言えません。これを小説というのはおこがましい感じすらします。現在全体の4分の3まで我慢して読んだけど、いい加減勘弁して欲しい。

好きだった作家が、こんなにつまらない作品書いてたの?って、かえって嫌いになりそうです。ブラックウッドやダンセイニって、こんな駄目駄目じゃないはずなんですけど・・・・。

全ての怪奇小説好きに、間違ってもお薦めしない本です。残りの作品も気になるんだけど時間の方が惜しいので読むのをやめるべきか悩んでいます。
【目次】
塔(マーガニタ・ラスキ)
失われた子供たちの谷(ウィリアム・ホープ・ホジスン)
よそ者(ヒュー・マクダーミッド)
跫音(E.F.ベンスン)
ばあやの話(H.R.ウェイクフィールド)
祖父さんの家で(ダイラン・トマス)
メアリー・アンセル(マーティン・アームストロング)
「悪魔の館」奇譚(ローザ・マルホランド)
谷間の幽霊(ロード・ダンセイニ)
囁く者(アルジャナン・ブラックウッド)
地獄への旅(ジェイムズ・ホッグ)
二時半ちょうどに(マージョリー・ボウエン)
今日と明日のはざまで(A.M.バレイジ)
髪(A.J.アラン)
溺れた婦人(エイドリアン・アリントン)
「ジョン・グラドウィンが言うには」(オリヴァー・オニオンズ)
死は素敵な別れ(S.ベアリング=グールド)
昔馴染みの島(メアリ・エリザベス・ブラッドン)
オリヴァー・カーマイクル氏(エイミアス・ノースコート)
死は共に在り(メアリ・コルモンダリー)
ある幽霊の回顧録(G.W.ストーニア)
のど斬り農場(J.D.ベリスフォード)
怪奇礼讃 (創元推理文庫)(amazonリンク)

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「魔法使いの弟子」ロード ダンセイニ 早川書房
「妖怪博士ジョン・サイレンス」アルジャノン ブラックウッド 角川書店
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2008年04月09日

「ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル」フランソワ ラブレー 筑摩書房

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書名はかなりの人が知っていても、読んだことがあるという人を滅多に聞かない古典。本書もまさにそういうものの一つではないかと思います。

私も知ってはいてもあまり読む気がなかったのですが、先日読んだ本「チャップ・ブックの世界」などで出てきていたので、気になってしまい、ついつい手に取った次第です。

amazonの書評を見ると、新旧の訳の違いが好対照で興味深い感じですが、私はこの訳でしか読んだことがないので普通に気付いた点などを挙げていきますね。

とにかく読み易い。表面的な字面で見る限り、児童文学並みの読み易さ&口語体、というか卑俗で猥雑な文章です。一言でいうと、下品な言葉がポンポン出てきます。

訳者が意図して原文の味わいを出そうとしているのでしょうが、人によっては嫌いな人がいるかもしれませんね。私的には、全然OKです。

基本、ジャックと豆の木みたいなノリの昔話みたいなもんです。最初は私全然面白くなかったんですが、読み進めていくうちに痛烈な社会批判ありの、冒険活劇ありので結構楽しめました。

戦闘シーンは、なかなか豪快で映画化したら、ほぼ間違いなくスプラッター映画になりかねないほど、エグくて残酷ですが、まあ、大衆の読み物なんてそういったモノでしょう。陳腐でどぎつくて刺激的でないと受けませんから。

とはいうものの、一見すると低俗なだけだと思ってしまいますが、どうして&どうして、文章のあちらこちらでパロディーや掛詞のようになっている台詞を見ると、実はかなりの教養が無いと完全には楽しめないのではないかと思います。

そもそも著者が修道士から医者になったインテリですし、それが散々世相を皮肉って、諧謔趣味に満ち満ちた文章を書いているのですから、当然と言えば当然ですね。

当時の常識を差っ引いても、ギリシアやローマ古典を踏まえた記述やスコラ哲学などをさりげなく踏まえてのパロディーとかは、ハードルが高いです。本書の中では訳注で解説してくれているので少しは分かるのですが、説明されても知らないことが実に多いです。

でも分かる範囲で「注」も実に面白く、むしろそちらを徹底的に調べたくなりますね。さすがにそこまでの情熱が無い私ですが・・・(口先だけのヤツです)。

確かに、教会やパリ大学の神学部をあれだけこき下ろしたら、大衆受けはするものの、異端の書として神学部から目を付けられるのも納得です。

いつの時代でも面白いものは、お上から睨まれてしまうものですから!

いきなり本書だけ読んで面白いと言えるほど、私は教養がありませんが、少しだけでも当時の社会や時代背景などを理解できる人ならば、楽しめるかもしれません。単純な物語以上に、奥が深い作品でした。

さて、続きも読もうかな。

ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル(amazonリンク)

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「チャップ・ブックの世界」小林 章夫 講談社
タグ:書評 古典 小説
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2008年04月06日

「ジョン・ランプリエールの辞書」ローレンス・ノーフォーク 東京創元社

読破するのに、思いっきり時間がかかります。ほぼ2週間かかりました。読んでいると、面白くなりそうな予感というか、予兆がちらほら垣間見えてきっと面白くなるのでは? そんな期待感だけに励まされて最後まで読破してしまいました。

しかし、結論から言えば、全然面白くなかったです。

最後に基本部分の謎解きはしっかりとされるのですが、その部分は大して面白くもないです。そこにいたる部分まで、東インド会社の大株主とか、その富の9分の1とか、カバラやら、さんざん思わせぶりに振っておきながら、アレレ?! っていうのが私の感想です。

また、相当予備知識がないととりとめもないような(意味があるような?)描写が全く理解できません。私は、恥ずかしながら教養が無いせいか意味不明部分が頻出しました。そして、その描写が小説としてどのような効果があるのかも不明です。

というか・・・それらの予備知識を十分に持っている人なら、原書で読むべきでしょう! また、原書でそれらの本を読んで理解できるレベルでないと日本語訳になっててもとうてい太刀打ちできないような気がします。

そそる雰囲気はあるのですが、どうしてもそれにふさわしい中身のある小説だと思えません。『辞書』の本当の意味もくだらなかったし・・・、もったいつけ過ぎでしょう。西洋の古典知識を知っていると楽しめるのでしょうか? 

おそらく日本人の9割9分くらいは、読者対象外だと思いますけど・・・。いくらアメリカ版でも全然分からないんですが・・・???

すっごい不毛な時間を費やしてしまった気がしてなりません。歴史小説とか、バロック小説とかコメントがついていたような気がしますが、私的には、どうやったらそんな風に捉えられるのか非常に疑問です。

これを文庫本で出す創元社もすごいですが、絶対に売れないと思うんですけど・・・訳者はともかく編集者は会社をつぶす気なのだろうか、英断というよりは暴挙としか思えないのですけど。

ジョン・ランプリエールの辞書 (上) (amazonリンク)
ジョン・ランプリエールの辞書 (下) (amazonリンク)
タグ:小説 歴史
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2008年01月20日

「災いの古書」ジョン・ダニング 早川書房

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古書を巡るミステリー小説で人気のシリーズ物、第四作目に当たる作品です。

これまでのシリーズ物で披露された古書にまつわる知識は、本書に限っていうならば、その役割を大幅に縮小している感じです。単純にいうとその部分はあまり面白いとは言えない。

でも、「著者サイン本」という形でメインストーリーにはきっちり組み込まれてはいますので、本に関するミステリー小説としては、体裁を保っていると思います。

小説として面白いかと言われれば、ちょっとためらいがあるものの、確かに面白いし、事実、読書中は夢中になって頁を追っていたし、最後の最後まで話の展開を引っ張って飽きるどころか、きっちり盛り上げていく手腕は素晴らしいと思います。

その一方で、本書で描かれる世界はアメリカに普通にありそうなのは分かるのですが、正直反吐(へど)が出るほど、嫌な日常世界です。私は大嫌い!!

映画ランボーの第一作目のような偏狭で傲慢でしかも自らを「正義」と勘違いしている小役人や、本当に罪の無い子供たちが虐待する大人なんて速攻、抹殺でいいのではと強く思います。

本書を読んでいて、前半はほとんど憤りと嫌悪感を通り越した不快感でいっぱいになりながら、読み進めてました。それでも、読書を放棄させず読み続けさせるのが作家の類い稀な力量なのかもしれません。

不満はあっても、実際読書をやめずに続けさせたんですからネ。

さて、内容はというと。
恋人の依頼で、かつての警官としての経験を買われ、事件に巻き込まれていく古書店主である主人公。恋人のかつての女友達が殺人事件の容疑者になっており、何故か殺されたその人の夫は、微妙に価値のあるサイン本を大量に所有していたりする。

余所者を嫌う保安官代理。協力的でない容疑者である女友達。

あまりの閉塞感にここは自由の国アメリカの話とは、嘘でも信じたくなくなるような世界です。まるでCBSニュースの事件報道のようで気持ちが鬱になります。

そういうところでの裁判が中心になります。一部法廷劇っぽいが、あくまでも一部でむしろハードボイルドっぽいかもしれません。



【※ 以下、直接的なネタバレはありませんが、微妙にかすっていくので読了後に読むことをお薦めします。】













最後の方は、だんだんミステリーらしく盛り上げていき、途中伏線も無しで「そういうのアリ?」とか思うのもあったのですが、正統派っぽい感じでそれなりに納得させて終わります。

きちんと結末をつけて収束させているのでOKですが、前半部というかストーリーのほとんどをいらだたせつつ、読者を引っ張る(=注意を集める)のもまあ最後につながるところではあるのですが、う〜ん、好きとは言えないです、私には。

アメリカ社会へのいらだち面へと関心がいってしって、素直にフィクションと楽しめなくなりそうだったんです。なんだかなあ〜、確かにヒーローっぽくいささか偏った形での正義感の発露は、いいような悪いような、複雑な感情を残します。

決してミステリーとして悪いなんてことはなく、面白いと言えば面白いのですが、後に残った不快感が辛いなあ〜。個人的には、お薦めしたくない本です。これは人によって個人差があるので、読もうか否かを悩まれているなら、他の方の書評も読まれた方がいいかも?

災いの古書(amazonリンク)

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「死の蔵書」ジョン ダニング 早川書房
「封印された数字」ジョン ダニング 早川書房
「幻の特装本」ジョン ダニング 早川書房
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2007年12月08日

「魔法使いの弟子」ロード ダンセイニ 早川書房

確か、荒俣氏によるダンセイニの翻訳は、相当昔に読んだことがあり、本書もおそらく読んだような気がします。でも、漠然とした記憶ではそんなに面白くなかったはずなんですけど・・・。

文庫は段ボールの奥にしまわれていて、所有しているかどうか、とても開けて調べる気にならなかったのですが、古書店で見かけたら面白そうでつい買ってしまいました。(重複して持ってる可能性大)

で、読んでみると、面白いです! こんなに面白いとは思ってもみなかった。いやあ〜なんか思惑と違って騙されたかと思うぐらい、魅力的なファンタジーとなっています。

タニス・リーにも十分匹敵するんじゃないでしょうか? 

ストーリー的には定番中の定番であり、魔法使い有り、妖精有り、錬金術有り、恋愛有り、騎士道有り、で、影無し。

当ブログの筆名たる alice-room には、まさにうってつけのファンタジーでしょう(笑顔)。

とある地方領主の息子がお家存続の為、卑しいながらも必要な『黄金』を得る為、父に頼まれて魔法使いへ弟子入りします。そこで錬金術を学んでくるように言われているのですが、そうは問屋が卸さないということになります。

若者は様々な経験をし、冒険を経て・・・めでたし&めでたしとなります。

こう書くと単純ですが、あの荒俣氏が最近のようにTVに出るのに慣れてしまい、すっかりお茶間御用達の文化人になる以前の真面目な英米文学翻訳家だった頃の作品ですので、いい意味で情熱がこもっていてお薦めです。

クリスマス・プレゼント向きかも? この本にお金かけて(or 手間かけて)オリジナルの装丁とかしたら、絶対に素敵なプレゼントですよ〜♪

今年読んだファンタジーの中では、一番良かったです。

なお、現在、早川書房の方は絶版みたいで代わりにちくま文庫で出ているようです。

魔法使いの弟子 (ちくま文庫)(amazonリンク)

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「闇の公子」タニス・リー 早川書房
「エンデュミオン・スプリング」マシュー・スケルトン 新潮社
「奇術師」クリストファー・プリースト 早川書房 
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「幻魔の虜囚」タニス・リー 早川書房
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2007年11月28日

「マギの聖骨」ジェームズ・ロリンズ 竹書房

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いやあ〜「ダ・ヴィンチ・コード」を読んで以来、この手のものはそれこそ山のように読んできましたが、大概のものは期待外れでした。しかし、本書だけは、久しぶりに心の底から面白かったです!! コレ、本年最後の一押し(たぶん・・・)。

「ダ・ヴィンチ・コード」を読んで面白いと思った方には、是非&是非薦めたい一冊。

いやあ〜、これぞアメリカの小説って感じで、いろんなものを吹っ飛ばして爆破しちゃうのが凄いです。ゴジラが東京タワー壊したり、キングコングがエンパイアーステートビルに登るなんてメじゃないです。ランボーよか凶暴つ〜か、極悪非道のモノを壊しちゃいます。ラングドンも真っ青でしょう♪

私もビックリしましたよ〜、あれ爆破すんのかよ〜って!

しかも次から次へと出てくるほとんどSFのノリには、かなり異様なというか・・・空想科学小説入ってません?(イイ意味で)

とにかく、いろんな知識がこれでもかというぐらいに詰め込まれていて、それがきちんと有機的に関連してストーリーを作っているのは、一読に値します。

お約束の暗号解読なども、ベタであっても基本がしっかりしているのでそれがやっぱり楽しいかったりしますしね。

でもね、全米で100万部突破とかというけど、日本人にこれって理解できるのか正直微妙・・・。勿論、ダ・ヴィンチ・コードのようにそれなりに解説をしながら、謎解きが進んではいくのですが、かなり読者に求められる要求水準が高い(!)感じがします。

それに本書は、キリスト教や錬金術等々の知識だけではなく、最新の科学知識がふんだんに盛り込まれていて、実は私の場合、科学(&化学)関係の説明が本当にどれくらい正しいのか全然分かりませんでした。う〜ん、勉強不足だあ(涙)。

まあ、キリスト教や歴史、グノーシス系の話などはだいたい知っていたし、元ネタ分かるんで問題無いですが、私の知っている範囲では結構、調べたうえで著者書いてるなあ〜というのが感じられました。恐らく科学関係の記述もそうだと思います。

冒頭の「事実どうとか、実在の〜」というくだりは、まんま「ダ・ヴィンチ・コード」とパクリかよ〜とか思ってしまいますし、最初の部分はあんまり面白そうでなかったりするのですが、少し読めば、きっとこの面白さを実感できると思います。まずは我慢して少し読んでみて下さいね!

書くとネタバレになってしまうことが、たくさんあり過ぎて書きたいことの10分の1も書けませんが、とにかくこれは読む価値のある小説だと思います。

ざっと粗筋だけ述べると。
ケルン大聖堂で大事件が起こります。その事件で狙われたのは東方の三博士で有名な『マギの遺骨』(聖遺物)。それを巡って、バチカンとアメリカ機密組織の合同チームが、歴史の闇に隠れてきた秘密結社との間で死闘を繰り広げます。その過程で明らかになっていく、世界の命運を握る『秘密』とは・・・?

文章の上手さでは、どうしても「ダ・ヴィンチ・コード」に負けますが、情報量というか知識水準ではこちらが確実に勝ってます。あとアクションかな?

きっと物知りな方なら、きっと本書内の何気ない文章にも「ああっ、あれのことね」とか「あの本の話ね」と大いに共感を持って読めると思います。そうなると、楽しくってしょうがなくなること間違い無しです。逆に説明を読んですぐピンとこないと面白さが半減するかもしれません?

とにかく膨大なネタが詰まってますので、是非それらを堪能して下さい。うちのブログでも本書に関する関連書だけで数十冊以上ありそうですが、書いたらネタバレになるのであえて挙げません。う〜書きたい・・・けど。

とにかく小説読むなら、最近では本書が一番のお薦めです!! 久しぶりに本当に楽しかった♪

マギの聖骨 (上)(amazonリンク)
マギの聖骨(下)(amazonリンク)
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2007年11月25日

「聖ペテロの遺言」A.M. カバル サンケイ出版

え〜っと、またまたベタなキリスト教絡みの海外小説です。謎解き要素は一切ありません。ただひたすらアクションシーン&残虐シーンの連続で登場人物がバタバタ死んでいく、そういう小説です。

冒頭すぐに明らかになるので書きますが、今回争いの元になるのは、コプト教の寺院に伝わる古写本で、それは聖ペテロの最後の言葉でそうです。それによって、聖ペテロの遺体がある場所がローマでなくなくってしまい、バチカンの権威が失墜するので、それを防ぐ為にバチカン側が無かったことにしようと画策します。

と同時に、発見されたのがそれぞれの政治勢力が陰謀を巡らす複雑な政治環境のエジプト。ここが舞台となり、CIAや政府関係者、大富豪、地元の有力者が入り乱れて、発見物を奪い合い、写本の発見者であるイギリス人考古学者が巻き込まれていきます。

写本自体は、単なるネタでほとんど何の意味もない、ただゲームの賞品の位置付けですのでどちらかと言うと、中東の政治情勢とキリスト教に関する知識がないとそもそもこの環境が理解できないし、関心も湧かないかも?

もっとも環境は面白そうだけど、写本取りゲーム以上のストーリー展開はありません。登場人物の登場意義が分からないまま死んでくし・・・かなり痛々しい主人公がちょっとパス。

私はお薦めしませんね。

著者はインド生まれのインド人だが、子供の頃からイギリスで暮らしていてオックスフォードのトリニティー・カレッジの出身。だからかな?この陰謀好きなところは。主人公自体はスパイじゃないんだけど、ノリはほとんどスパイ系小説ですね。

中近東だけでなく、アジアもそうだし、中南米なんかも本書で描かれるようなノリですね。正義はお金で買えるものでしょう、って。

聖ペテロの遺言(amazonリンク)
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2007年11月20日

「死者の季節」上下 デヴィッド・ヒューソン ランダムハウス講談社

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バチカン図書館内での殺人事件。人の生皮が剥ぎ取られ、「聖バルトロメオ」を象徴した猟奇事件。そりゃ、誰だって「ダ・ヴィンチ・コード」を連想し、あの手の小説を想像するでしょう。実際、私もそれを期待しつつ読んだクチです。

結論から言うと、本書はそういった類いの小説とは全く異なり、一切ダ・ヴィンチ・コード系とは無縁の小説です。訳者か著者だったかな?どちらかの言葉を借りると、純然たる警察小説だそうです。

うん、私もそう思います。バチカンは舞台として使われていますが、本書のポイントは、むしろ人間の「情愛」というか人間性に関わる心情を描いた小説でしょう。推理小説的な面白みや、薀蓄的な面白さはあまり期待できません。

その一方で、上巻についてはバチカンにまつわる事実を知っているとそれだけで惹き込まれるだけの魅力があります。例えば、ロベルト・カルビやマルチンスク枢機卿、こういった固有名詞が頭に浮かぶ人ならば、ニヤリとしながら読んでいけるでしょう。本書に出てくる登場人物は、明らかに現実の人物がモデルになっています。

しかし、そういったことがすぐ頭に浮かぶ人でなく、単純な小説として読もうとするとちょっとつまんないかも? 上巻の時点で。登場人物のの女性についても、いささかの嫌悪感を抱かずには読んでいけないだろうし・・・。

下巻に入ると、状況は様変わりしていきます。いつのまにか、人間関係の複雑さを描く人間ドラマになったりする。上巻で覚えていた不快感は下巻では消えて別なものになり、アイデアは面白いんだけど、結末はかなり微妙。

私的には、人の心に関する読み物として面白かったけど、通常の小説とはちょっと違う感じですね。たぶん、あまり受けない作品かもしれません。歪んではいてもそれなりに巧みに人の心の揺れ動きを描写していて、うまいんだけどね。

普通の小説(推理小説など)を期待するならば、読むべきではない小説かと思います。

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タグ:小説 書評
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2007年11月14日

「殉教者聖ペテロの会」ジョン ソール 東京創元社

読み始めるまで本書がホラーだとは思いませんでした。解説にはモダン・ホラーというのですけど、読了後もホラーという感じではないかも?

ただ、非常に不可思議などよ〜んとくすぶった重々しい感じが最初から最後まで全編を通して一貫して漂っています。なんか、異様な感じに囚われることだけは間違い無しです。

これはこれで強烈なスタイル(文体)を持った作家さんであることが分かります。少女達が次々と死んでいくのですが、謎解きはあるものの、どうにも私にはよく分かりませんでした。決して悪い意味ではないです。むしろ、不可思議な感覚が永劫に続いていくようで、かえってじわりじわりと響いてくる違和感というか、恐怖感があります。

すっきりと納得がいかないままに本は終わるのですが、どうにも生理的に異様な感覚が読後感として後引くカンジですね。

確かにそういう意味では現代的かもしれませんが、基本がしっかりしているのでうわべだけで全然怖くない最近のものとは違うから、読むだけの価値はあるように感じます。

設定としては、田舎の閉鎖された空間である地方が舞台。住民が未だにカトリック的な慣習に支配されている地域。そんな場所にあるカトリック系の学校に聖職者になることをやめて心理学の教師になった人物が赴任してくる。それから次々と連続自殺事件が起こり始める。

当然、疑われる余所者(よそもの)とそもそも彼をここに招聘した修道院長(兼、学校のトップ)の複雑で微妙な関係。修道院長が開く集会「殉教者聖ペテロの会」なるものとは?

分量が相当あるので秋の夜長に読むのもいいかも? 気になって眠れなくなりそうですけどね。途中でも、読み終わっても・・・。

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2007年11月09日

「封印された数字」ジョン ダニング 早川書房

これは、本来翻訳すべき小説ではなかったんだろうと思います。著者のジョン・ダニングの人気が高まっていたのでとにかくこの作家の本なら、読者が内容も考えずに買うだろう・・・そういう狙いで翻訳されて出版されたのでは?と私はあえて下種の勘繰りをしたい気分です。

古書を主題にした他の作品とテイストが全く異なるのは別に問題ではないのですが、端的につまらないのです。グダグダした個人の家庭内の出来事が書かれている時点で、かなり切れそうになりつつ我慢してみましたが、どんどんつまらなさが増してきてついに私のリミッターを切ったので、読書途中で止めました。

私的には完全に時間の無駄という判断です。中止したのは40頁に達する前だし、最後までざっと内容を拾ってもみましたが、やっぱりもう読む気にはなれません。そういう意味で内容を読んだうえでの書評ではありません。ご注意下さい。

あえて、私的なメモとすると、著書の最初の本であったこの本が売れないのは、まさにその事実こそが内容を物語っています。そもそも何について語り本なのかがまず分かりませんし、文体も嫌い。

不幸中の幸いは、私がこの著者の作品のうち、本書を最初に読まなかったことかな。もし、そうだったら、一生この作者の本は手に取らなかったことでしょう。

以上。

封印された数字(amazonリンク)

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「死の蔵書」ジョン ダニング 早川書房
「幻の特装本」ジョン ダニング 早川書房
タグ:書評 小説
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2007年11月07日

「エンデュミオン・スプリング」マシュー・スケルトン 新潮社

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世界の全ての叡智が書かれていて、世界を危険に晒す力を持った謎めいたいにしえの書『最後の書』を巡る物語。これがジュブナイル作品だとは、私には信じられません。大人が読んでも十分に鑑賞に耐え得る内容を持った作品だと思います。

最近読んだ本に関する小説としては、これが一番だと思います。ジョン・ダニングの作品よりは、私はこちらを高く評価しますね。

だって、ここに描かれる英国(オックスフォード)の図書館がなんとも魅力的。貴重な写本やインキュナブラ、稀稿本に囲まれた中世以来の『知』の殿堂。これは、本好きにはたまりません! そういったものに囲まれた至福の空間を是非味わいたいものです。普通に描かれている舞台の図書館や蔵書票協会などがいちいち羨まし過ぎ。

また、現代と並行して描かれるグーテンベルクの世界。私も何冊かグーテンベルク関係の本は読んでいて知っているだけに、より一層の興味をそそられます。

確かに主人公が少年であり、ジュブナイルらしいところも多々ありますが、本質的な意味でそんなこと気にならないくらい面白いです。まあ、ネバーエンディングストーリーみたいな部分もありますが、あれと比べたら、こちらははるかに硬派です。

ジャンル分けするとファンタジーになるかもしれませんが、極上のファンタジーだと思います。とにかく本好きの人にはお薦めしたい小説です。しっかし、いいなあ〜。やっぱり本に囲まれて勉強するなら、アメリカではなく、イギリスだよね。うっ、お金に余裕があれば、永遠に図書館に籠もっていたいかも?

最近、書庫に入ったことないなあ〜。あの独特の感覚って、経験しないと分からないけど、くせになりますよね。書庫で本を探していると、時間の感覚が一切無くなってくるし、ある種の異界ですねぇ〜。本書ではそういったものも含めて描かれていて、ドキドキしてしまいます(ウットリ)。

あ〜、印刷博物館にまた行きたくなってきた。

【追記】
ワーナー・ブラザースで映画化が決定しているそうです。よし!これは映画館で見ようっと♪

新潮社の関連情報サイト
【新潮社サイトより転載】
過去、現在、未来、全ての知識が詰まった本『最後の書(ラスト・ブック)』をめぐり、オックスフォードの図書館で始まる大冒険。全世界17カ国で翻訳される話題のファンタジーがついに登場! 全世界の〈本と活字と図書館〉で育った人たちへ──。
ワーナー・ブラザースで映画化決定!

過去、現在、未来のすべての知識が詰まった全知の本『最後の書(ラスト・ブック)』をめぐる物語。この本を手にした者は全世界を支配できる。もし悪人の手に渡ったら、世界は破滅への道をたどることだろう。ただし、その本のページは、空白でなにも書いてなく、選ばれし者しか読むことができない。──グーテンベルクをはじめ、歴史上の人物も登場させ、印刷術の話などもおりこみ、主人公の現代の少年が追跡者の影に怯えながらも、本の謎を解明していく。──『エンデュミオン・スプリング』は1450年代のドイツと現代のオックスフォードを舞台にした歴史サスペンスタッチになっています。
エンデュミオン・スプリング(amazonリンク)

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2007年11月04日

「幻の特装本」ジョン ダニング 早川書房

古書を巡る殺人事件を描いたシリーズ物の二巻目に当たります。前回のような暴力シーンは減ったものの、やっぱりアメリカのベストセラー小説なんでしょうね。SEXとバイオレンスは必須みたいです。

私的には、そういったしょうもない付け足しが無かったら、大いに楽しめる娯楽小説として評価するんだけど、毎回、興をそぐそれらのお約束シーンにげんなりします。陳腐。

その為、評価もどうやっても並の上ぐらいにしかならないけど、面白いのは事実です。本に関心のある人なら、心惹かれる要素があります。でも、本を安易に金・金・金で評価しているのはどうなんですかねぇ〜。

今回稀稿本として出てくるのは、限定出版された装丁や活字に凝った特装本。勿論、素晴らしいものもあるのでしょうが、私的には一番興味あるのは本の内容なんだけどねぇ〜。

全てをお金に換算して評価するアメリカっぽいと言えば、アメリカっぽいのだけれど、どうしても違和感が残る。イギリスとかだったら、こういう話にはならないんだけどねぇ〜おそらく。

でも、本の世界の話としてはそれなりに面白いと思います。但し、アメリカでいい本が作られたなんて話は聞いたこともないし、私には信じられないんだけどなあ〜。お金で購入する事はあっても、決して生み出さない国というのが、私のイメージだったりする。偏見だとは思うのだけど、アメリカで印刷した本(出版社がアメリカなのはOK)を購入したいと思ったものないしなあ〜。

実は、数日前に読めもしないフランス語の本を買おうとして、入手できず、いささか不機嫌な私です。ちっ、惜しかったなあ〜。別なところの洋書のバーゲンフェアでも掘り出し物が見つからず、今週は全然ついていない私です。

くじけずに古書展を回るかな・・・本書の主人公とは違い、掘り出し物は手元に置いて眺め、一人悦に入るアイテムにしちゃう私です。気に入ったら本を売るなんて死んでも嫌ですね。逆に要らない本は、頻繁に売ってしまうけど。

古書店は利用したいものの、自分がなりたいとは一度も思ったことがない私でした。従って、本が好きで古書店主になるという主人公にも共感できないんだけどね。むしろ、本好きが一番なってはいけないのが古書店主のような気がするんだけどなあ〜。

単純に宝探しをするだけなら、割安な株買って、株価の化けるを待った方がよほど興奮するけど、本探しは違うような気がする。

本としては面白いんだけど、どうしても素直に喜べない部分が残るシリーズです。正直、微妙。

幻の特装本(amazonリンク)

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「死の蔵書」ジョン ダニング 早川書房
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2007年11月02日

「食人国旅行記」澁澤龍彦 河出書房新社

本書は四巻から成る「アリーヌとヴァルクール」の物語中、第二巻だけを採り上げて独立した物語としたものだそうです。最初は桃源社から出たものが、現在、河出書房から文庫で出ています。

私は確か桃源社で持っていてはるか昔に読んだと思いますが、たまたま文庫で見つけて改めて購入して読みました。

全然、時代的な古さを感じません。というか、その鮮烈な開明的(啓蒙的)思想性に久しぶりに感動しました!!

最初は、恋する二人の愛の逃避行で始まるため、ロミオとジュリエットのラブロマンスかよ〜と思いますが、どうして&どうして、二人の運命は暗転直下、激動の渦中に投げ込まれます。

運命に翻弄される二人。主人公は本来有り得べからざる(ような特異な習俗・慣習・文化を持つ)国々を訪れます。

そして、そこでおよそ当時の良識人且つ理想に盲目な若者が到底許容できない価値観にさらされるのですが、彼はそれまでの自らの価値観を根底から揺さぶるような状況に置かれます。

あまりにも残虐で無慈悲且つ階級を是する国もあれば、あまりにも聡明且つ人道主義的で徹底的な平等を是とする国もあり、それらの両極端性が著しく際立って描写されています。

前者においては、家庭では女性を完全に家畜以下と看做し、人民対国家では人民を牛馬以下の奴隷と看做す描写は、怖気や嫌悪感を催すほどですが、後者において余りにも理想的な幸福の中で無邪気に生きる市民も憧れてやまない理想郷ではあるものの俗物たる私にはまさに有り得ない楽園幻想としか思えない。(でも、私はこの国に憧れてしまう)

ただ、誤解してはいけないのはこれは、あくまでも合理的思考を突き詰めていったうえで提示された一つのモデルであり、著者が置かれていた時代的・個人的状況と無関係ではないことです。

トマス・モアの「ユートピア」論とは異なるものの、現状への不満が思索の下で昇華されたものと言えるだろう。まして、現代の矮小な『常識』レベルから、判断すべき作品では決してない。その点だけは力説できるだろう。

柔軟で、理性的な思考能力を持ち、(サドについても予備知識があれば、更にOK)常に政治的な視点を欠かさない人物なら、本書で物語のスタイルをとって示される、あまりに進歩的というか超絶的な『合理性』の姿にある種の神々しさを覚えるかもしれない。少なくとも、私の胸を強く打ったことは事実である。

ただ、TVや新聞記事読んで、ふう〜んと納得してしまう人には絶対に合わない本です。これだけは間違いないでしょう! まかり間違えば、反体制的な思想の持ち主と誤解されかねない危うさと不穏当性があります。

実際、普通の人には毒が強過ぎる文章であり、思想です。でも、これこそがサド文学のサドたる所以と私は思いっきり肯定しちゃいますけどね。普通の人と話すと、逆に言うと一番理解されない点ですね。特に、日本の人はこの手の話が苦手みたいだし。

勿論、本書で出てくる考え方でも個々の部分は、おかしいと思うし、私的には正反対のものも多数あるのですが、そんな枝葉末節などどうでもいいほど、本質的に『来るモノ』があります。

タフな思考能力と精神力のある方にお薦めしめす。言葉は悪いけど、『ゆとり教育』で育った世代には辛いと思います。安保とか周りに流されてるだけで主体性のない世代にも合わないような気がしますねぇ〜。
(どんな世代だ、私?っという話もあるが・・・)

そうですね、いわゆる『ユートピア』論から別次元に行ってしまった感のある世界です。しかし、この作品に着目した澁澤氏はやっぱり改めて凄いなあ〜と今になって思いました。残念ながら、最初に読んだ時には全然理解できていなかった自分に気付きました。こんなもんです。

少しだけ以下に文章を引用してみましたが、万人向きではないでしょう。
土人の隊長は、あわれな捕虜たちを点検し、六人だけ前に出させて、隊長みずから棍棒をふるって、一撃のものに彼らを殴り殺してしまいました。すると、部下の四人が、殺された人間の身体を切りこまざき、血のしたたる肉片を、隊員一同に分配するのでした。どんな肉屋だって、これほどすばやく牛の肉を切りこまざくことはできなかろうと、思われました。

 それから土人たちは、わたしのよじのぼっている木の隣の木を根元から引っこ抜くと、枝を取り除き、これに人をつけて、今切りこまざいたばかりの人間の肉片を、その炭火の上でこんがり焼くのでした。ぱっと焔が燃えあがると、さっそく土人たちは、肉片をうまそうにがつがつ食ってしまいました。
ここまでは普通の物語で済むのですが・・・。
「人肉食の習慣を品性の堕落だなとど考えては困るな。人間を食うことは、牛を食うことと同様に単純なことだよ。いったいきみは、種の破壊の原因というべき生存競争を、けしからぬ悪だなどと思っているのかね。それに、この破壊ということが一旦行われてしまった以上、解体した物質を土の中に埋めて葬ろうと、あるいはおれたちの胃の中におさめてしまおうと、まったくどちらでもよいことではなかろうかな?」
段々と、世論の反発が高まってくる雰囲気が漂ってきます。特に、西欧キリスト教文化にとっては、タブーに触れる内容です。
悪徳の数が減れば、法律がたくさんあることは無駄になります。法律を必要とするのは罪悪です。罪悪の量を減らし、みんなが罪悪だと思っているものが、実は自然のものにすぎないということを認めれば、法律はたちまち無用のものになります。

 ところで、どんな気紛れな行為でも、どんな卑賤な行為でも、それが社会に対して何らかの侵害をもたらすということは絶対にありえません。賢明な立法者によって正しく評価されるならば、それらは全て、危険なものと見なされるわけにはいかなくなるのです。ましてや、罪悪だなどと見なす事は不可能になります。

 われわれはもっと法律を廃止すべきであるましょう。法律などというものは、暴君が自分の権威を証明するためにに、人民どもを彼らの気紛れに服従させるために作ったものにすぎないからです。ひとたび法律を廃止するならば、われわれを縛っている多くの束縛はなくなって、その結果、この束縛の重圧に苦しんでいた人間は、ほっと息がつけるようになるはずです。
法家の思想を高く評価する私とは正反対ではあるものの、論理的な思考の進め方でこの手の文章が延々と続きます。面白いんだけどなあ〜。私は好き。

新・サド選集〈第5〉食人国旅行記(amazonリンク)

食人国旅行記 (河出文庫―マルキ・ド・サド選集)(amazonリンク)

関連ブログ
「神聖受胎」澁澤龍彦 現代思潮社
「黒魔術の手帖」澁澤 龍彦 河出書房新社
企画展「澁澤龍彦 カマクラノ日々」鎌倉文学館
「澁澤龍彦ー幻想美術館ー」展、埼玉県立近代美術館
「図説 地獄絵を読む」澁澤龍彦、宮次男 河出書房
澁澤龍彦氏の書斎を紹介するサイト
「澁澤龍彦」河出書房新社
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2007年10月22日

「死の蔵書」ジョン ダニング 早川書房

本職はだしの本好き&目利きの刑事が主人公。その日暮しの古書掘り出し人(日本でいうところのセドリ)が殺された事件をきっかけに、謎を追う過程で主人公が巻き込まれるていく出来事。

稀稿本をめぐる(?)殺人が本書の中核になっていて、本好きの人なら大いに関心をそそられ、また思わず共感してしまう『書痴』的描写は面白いのだが、必要以上に無駄な暴力的サブストーリーが全体を安っぽく、安易なアメリカの読み物にしてしまっていて、実にもったいない。

また、ここで描かれる値段の高い本だが、書名を見ると個人的には苦笑してしまう水準の本が多い。確かに初版本を求める心理は、私にも分かるし、澁澤さんの本の初版を集めようとお金も無いのに買い漁っていた頃があったので他人事とも思えないが、ただ飾っておく為だけで、読みもしない本を集める人の気がしれない・・・。

無駄に帯にこだわるよりは内容にこだわれよ〜とか、保存用に同じ本を2冊、3冊買うなんて馬鹿ジャン!と思いながら読んでいたのだが、ある事に気付いて愕然とした。同じ内容の本を、全集名が違うからと持っていたり、わざわざ海外から時祷書を購入して気に入ってしまい、初版は保存用にしてもう一つ通常閲覧用に同じものを購入した馬鹿な自分がいたことに気付いた!(欝だ)

すべからく本好きは変人で、狂人なのか・・・。ビブリオマニアなんて、元祖オタクだしなあ〜。読めない本を集めている病気は重症だし、人の事なら笑い飛ばせるものの、チェコ語の本を買ったしまった私は何? 

まあ、自己反省しつつ、今週末の神田の古書祭りを楽しみにしているんだから、しょうがない奴です。

最後に、本書の感想まとめ。
古書マニアをくすぐるノリは良いものの、肝心の古書自体はどうでも良い雑本ばかりで興味は湧かない。それと古書とはおよそ不釣合いな暴力要素が多過ぎで、単純なアメリカの小説の域を出ない。「呪のデュマ倶楽部」や「謎の蔵書票」と比べるに値しない水準。

でも、個人的には続き読むかもしれない? 人にはお薦めしない本です。

死の蔵書(amazonリンク)

関連ブログ
「古書ワンダーランド1」横田順弥 平凡社
「ある愛書狂の告白」ジョン・バクスター 晶文社
「呪のデュマ倶楽部」アルトゥーロ ペレス・レベルテ 集英社
「謎の蔵書票」ロス キング 早川書房
「書物の敵」ウィリアム ブレイズ 八坂書房
「古書店めぐりは夫婦で」ローレンス ゴールドストーン, ナンシー ゴールドストーン 早川書房
「古書街を歩く」紀田 順一郎  新潮社
「われ巷にて殺されん」紀田順一郎 双葉社
「古本屋さんの謎」岡崎 武志 同朋舎
「古書法楽」出久根 達郎 中公文庫
「関西赤貧古本道」山本 善行 新潮社
「本の国の王様」リチャード ブース 創元社
「世界古本探しの旅」朝日新聞社
「古本道場」角田 光代、岡崎 武志 ポプラ社
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2007年09月19日

「フランス世紀末文学叢書1 パルジファルの復活祭」ジョゼファン・ペラダン 国書刊行会

短編集。フランス文学で世紀末と言われれば、何も考えずに買ってしまうでしょう。若き頃の私も、気がつくと購入していたようです。恐らく・・・ユイスマンスの「腐乱の華」とか読んだ後だったような気がします?

それ以来、この本は読まれぬまま積読本に。数ヶ月前に、部屋から発掘し、「責苦の庭」で感銘を受けた勢いで読んでのですが、またまた挫折。

短編集なんで、たま〜に一編づつ読んだりしてましたが、結局三分の一ぐらいしか読んでません。そのまま、二ヶ月以上が過ぎたので認めざるを得ませんネ。これ、永久積読本決定!買ってから、死蔵してたので紙が妙に綺麗で心苦しいです。

だって、いくら読んでも盛り上がらないんだもん。詩的断片のような単語が重なり合っても、私のような無骨な詩的センスの無いものには、ちっとも心に響きません。散文的にして欲しかった。

時には、ちょっと興味を惹かれるものもありましたが、一瞬かすって終わってしまうカンジ。タイトルが全然生きてないようなんですが・・・? タイトル倒れの内容のように思えました。

そうそう選ばれている短編はバラバラの作者ですが、翻訳を担当しているのもバラバラの異なる翻訳者です。企画としては失敗してるんでしょう。「責苦の庭」は良かったんだけどねぇ〜。同じシリーズなのにね。残念でした。

余談ですが、amazonで検索するとタイトルは「フランス世紀末文学叢書1 」となっていて、本来のタイトル「パルジファルの復活祭」が出てきません。amazonって何気に間違いが結構ありますね。以前も似たようなことが何回もありましたけど。残念ですね。

フランス世紀末文学叢書1(amazonリンク)

関連サイト
「責苦の庭」オクターヴ・ミルボー 国書刊行会
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2007年09月17日

「フーコーの振り子」(上)ウンベルト エーコ 文藝春秋

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正直言って私には、本書の面白さが理解できない。確かに衒学的な装いに目を惹かれるところはあるものの、オカルト関係の本を自費出版させてお金を稼ぐ素敵な出版社が舞台の一つになっているだけに、個々の事項については、意図的だと思うが、かなり胡散臭い眉唾のものの説明が随所に見られる。

下巻を読む前に書評を書くのもどうかと思うが、下巻を読むか否かを悩んでいるので現時点での感想や気付きについて書いておく。

メインテーマの一つであるテンプル騎士団関係の情報は、全然物足りないし、類書の専門的な本と比べると、甚だしく興醒めだった。エジプト関係の話なら、グラハム・ハンコックの本の方がはるかに楽しい♪ ケルヒャーとかなら、荒俣さんの図鑑とかに頻出してるし、今更なあ〜ってカンジ。

勿論、私の知らない話もたくさんあるのですが、如何せん料理の仕方が悪い! 全然、話が広がらずにただ列挙してるだけのように感じてしまうのですが・・・? 下巻でそれらが全て有機的に結び付き、伏線として効果的な役割を果たすのならば、凄い傑作だと思うのですが、『期待薄』な感じがしてなりません。

ただ、極め付けに読む気を失せさせるのが本書の妙に『こなれた』訳。というか、強烈な違和感を感じさせる訳があちらこちらに頻出し、読んでいて気分がそがれてイライラしてしまう。

この手の本でよくこんな訳をするものだと翻訳者の良識を疑う一方、それを認めて出版させる担当者と文芸春秋にがっかりさせられる。ここまでくると、呆れてしまうし、情けない(涙)。

少なくとも翻訳者が別な人なら、本書は上下巻を読み通す自信があるが、今の訳で下巻もと思うとかなり憂鬱な気分になる。さて、どうしょうか?

読んでいて決してつまらないわけではないし、話には引っ張られるところもあるんですが(オカルトネタ満載だし、ブラジル出てくるし・・・)。でも、いかにも結社やセクト的なごちゃごちゃした関係の話は、ちょっとパスしたい。そして女性関係の話もどうかなあ〜、必要? 話を膨らませる為に要るのかな? 個人的には、もっと本質的な内容に踏み込んだものを期待したいのですが・・・。

やっぱり下巻も読むべきなんでしょうね。しかし、この訳は嫌い。つーか、大嫌い! 「太夫(たいふ)」なんて単語がどうやったら、この本の文脈で出てくるんだ。いわゆる高級娼婦のことだろうけど、センスのかけらもない。いちいち挙げてたらキリがないのですが、もっと劣悪な訳があちこちで出てきます。う〜イライラ・・・。

決して本書はお薦めしません。ちゃんとした翻訳のできる方が訳した新訳版が出たら、買ってもいいかも。

そういえばamazonのレビューを見たら、訳の酷さは折り紙付きですね。もっとも英語版でも読むの大変みたいだから、私もそちらを買って読み直そうかと思ったが、あえなく挫折しそうなんでやめときます。

現時点でまとめると、オカルトネタとしてくすぐるものはあるものの、あくまでもネタになっている感じで、もっと生真面目にオカルトを楽しむ気になれないなあ〜。雑誌の「ムー」と同レベルに水準を落とし過ぎている感じがします。あのエーコですから、意図的なのでしょうけど、私には不満だし、つまらないです。

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)(amazonリンク)

関連ブログ
薔薇の名前(映画)
「前日島」ウンベルト エーコ 文藝春秋
「テンプル騎士団 」レジーヌ・ペルヌー 白水社
「テンプル騎士団とフリーメーソン」三交社 感想1
「テンプル騎士団の謎」レジーヌ ペルヌー創元社
「十字軍」橋口 倫介  教育社
神秘的なテンプルマウントの人工物がダ・ヴィンチ・コードを惹起させる
「イエスの血統」ティム ウォレス=マーフィー, マリリン ホプキンス 青土社
「トリノの聖骸布―最後の奇蹟」イアン・ウィルソン 文芸春秋
「世界を支配する秘密結社 謎と真相」 新人物往来社
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2007年08月26日

「妖怪博士ジョン・サイレンス」アルジャノン ブラックウッド 角川書店

この本を読み返すのは何度目だろう。ずいぶん前に購入してから既に4回ぐらいにはなっているだろうか? いかにも(!)と誰もが思うに違いない英国怪奇作家ブラックウッドの面目躍如たる作品集である。

本書で共通するのは、ロンドンの変わりものの医師ジョン・サイレンスが出てくることであり、彼は合理的な西洋教育(とりわけ医学)を修めただけに留まらず、東洋を含めて世界各所に散在する叡智をことごとく修めた傑出した人物として描かれています。

そんな彼が、あくまでも既存の医療や常識的手段では解決できない不可思議な事件に対し、善良なる奉仕の精神と個人的な学究的関心から解決していくのです。

背景にあるのは、英国心霊主義がブームであった時代ではないでしょうか? 迷信や禁忌を安易に信ずることなく、かといって表面的な近代的解釈で拒否することもなく、同時代の科学では解明できない事柄が明確に存在し、それに対しては密かに知られている神秘的手法が有効な場合もあることを認めようとするある種、アンビバレンツな精神をあるがままに肯定しています。

科学では説明できない一方で、それ以外の人類に知られた『叡智』に照らせば、十分に説明がつき、対処も可能というのが本書の根底に流れており、その一方で安っぽいオカルトに走らずに、どこかそれと一線を画しつつ、なんとか理性で判断できる余地を残している感じがイイ♪

京極氏の小説のように、不思議な事象を無理に現代的に説明がつくようにしてしまうような、現代という時代の「論理や知性」礼賛的な姿勢がないのが、何よりも好き。

説明は欲しいが、全てに説明がつくというのも、私の理性は『拒絶』しちゃうんですよ。「そんなのありえな〜い」って! 逆に嘘っぽく感じてしまうんです。

だからね、こういう怪奇路線って大・大・大好き!!

残暑厳しい折ではありますが、夏は怪談とかホラー読みたいですもんね。短編集ですが、何気に読み応えあります。人間心理の描写もなかなかのもんです。まだ、読んだことのない方はチェックしておいて損はないでしょう。一度、読んでもふと読み返したくなるそれだけの魅力を持った作品だと思います。

紀田順一郎氏が翻訳と解説してる、というだけで読むべき作品であることが分かるでしょう。怪奇小説好きなら、チェックしてないとモグリ?って、感じの作品です。
【目次】
いにしえの魔術
霊魂の侵略者
炎魔
邪悪なる祈り
犬のキャンプ
四次元空間の囚
妖怪博士ジョン・サイレンス(amazonリンク)
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2007年08月09日

「影のオンブリア」パトリシア・A・マキリップ 早川書房

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2003年の世界幻想文学大賞を受賞したファンタジイ、それだけにつられて購入した本です。だって、過去に同じくこの賞を受賞したタニス・リーの「死の王」とかって、すっごくお気に入りだったので・・・。

で、この本はどうかというと、予想に違わず、きっちりファンタジイしてるのですが、どこぞの子供向けのつまらないおとぎ話ではなく、良質のファンタジイだけが持つ虚構の世界なのに、妙にリアリティがあってしかも哲学的な本質を備えている、そんな作品だったりします。

結構、好きなタイプ!!

でもね、読了して謎が説明されても、私全然理解できていなかったりする。とにかく不思議な感じが薄〜い膜のように、あるいは霞のように頭にかかった感じ。子供の頃、読んだ「コロボックル」とか「飛ぶ教室」とか、なんか分からないんだけど心に残る、そういった感じの物語です。

舞台は世界でもっとも古く、もっとも豊かで、もっとも美しい都であるオンブリア。この都は、現在の都であるオンブリアのすぐ下に、いにしえのオンブリアが多層構造のように重なっており、そのいにしえのオンブリアへは分かる人ならば、相互に行き交うことのできる不思議な空間になっている。

同時に現在のオンブリアで歳若い少年を大公として擁立し、傀儡政権を牛じる悪玉「黒真珠」に対し、地下のいにしえの都で世界創造と共に生きてきたかのような魔女「フェイ」。魔女の下で働く蝋人形と自分を信じていた少女「マグ」。歳若い大公を黒真珠から守ろうとする若き貴族「デュコン」。暗殺された元の大公の愛妾であり、元酒屋の娘である「リディア」。

これらの登場人物を中心に、政治的な陰謀が渦巻く宮中で数々の事件が湧き上がる。シンプルな構成なのですが、実に味わい深い世界観がじわじわと現在と過去の互いの侵食の中で描かれていきます。

とにかく、巷で有名な某ファンタジイよりかは、はるかに私の好み。洗練されて、いろいろなものが削り落とされた架空世界は、なんとも素敵で魅力的です。

現実逃避したい方にはお薦めですね! タニス・リーとかその系好きな方にはお薦めです。ベタなファンタジイファンにはお薦めしませんけどね。

影のオンブリア(amazonリンク)
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2007年08月04日

「真紅の呪縛」トム ホランド 早川書房

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正真正銘、吸血鬼が主人公の小説です。昨今のなんちゃってバンパイア物が横行する中で、ある意味古くからの正統派的な系譜に位置づけられる存在かもしれません。

怖い小説というよりも、詩人のランボーとかが出てくるディレッタント向けの小説、いや退廃文学とかそういうテイストですね。詩人バイロン卿が主役のデカダンス文学だったりして・・・。

個人的には、かなり大好物の系統。選ばれし者、特別な存在故の苦悩。露悪的な行動の反面、非常に繊細で脆いがタフな精神。既存の道徳観を超越しつつもそれに拘泥し、捨てきれないヒューマニズム。

実に&実に面白いです。吸血鬼物としては、おそらく『初』のアイデアなども盛り込み、怪しげな夢幻感が素敵ですね。やっぱ、英国人にこういうの書かせると秀逸ですね! 

アン・ライスのヴァンパイア物や菊池さんの吸血鬼ハンターDとかも良いのですが、まさに正統派的手法に則りながら、ここまで新しい吸血鬼像は一読の価値有りでしょう。

吸血鬼好きなら、押さえてべき作品かと思いました。

真紅の呪縛―ヴァンパイア奇譚(amazonリンク)

関連ブログ
「吸血鬼伝説」ジャン・アリニー 創元社
「アンダーワールド」スコット・スピードマン監督
「ドラキュリア2 鮮血の狩人」パトリック・ルシエ監督
ヴァン・ヘルシング(2004年)スティーヴン・ソマーズ監督
「ヒストリアン」T&Uエリザベス・コストヴァ 日本放送出版協会
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2007年07月26日

「キリストの遺骸」(上・下)リチャード・ベン サピア 扶桑社

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タイトルだけ見ると、キャメロン監督により映画化で話題になった「キリストの墓、発見」ニュースの関連かと思ってしまいますが、こちらは完全なる独立した小説です。

著者は1980年代に亡くなっていますから、そういう意味ではずいぶんと先見の明があったんでしょうね。キリスト教をネタにした小説を他にも書いていて「謎の聖杯」ってのもあります(読了してから気付いたけど)。

粗筋は、エルサレムで地下室を作っている途中で古い遺跡が出てくる。当然発掘調査が始まるのですが、大きな石でふさがれた中から一人の人骨が出てくる。鉄の釘で打ち付けられた痕、槍で刺された傷、なによりも文字が書かれた粘土板が決め手となって「キリストの遺体」である可能性が浮かび上がり、即座にイスラエル政府からバチカンに極秘連絡がなされた。

バチカンからの使者として、あくまでも厳正なる事実を確認しようとする神父に、宗教家をすべからく毛嫌いするかのような第一発見の責任者たる女性考古学者。世界各国の思惑と政治や宗教感情が入り乱れる中、数々の科学的調査の下でその遺体が証明する事実が明らかになっていく。

キリスト教における根幹に関わる『イエスの復活』そのものを根底から揺るがす事件であるが、その調査過程で出てくるキリスト教関連の雑学的内容は、そこそこ楽しめます。イエスの復活自体を掘り下げたり、新しい解釈をしたりといった点はないので、あくまでも小説として読む分には悪くないかと思います。

ただ、女性考古学者の嫌味な性格には、辟易しますけどね。その後の神父との展開もありがちなワンパターン。ただ、ラストはアレレ?って感じですけどね。私の好きな終わり方ではなかったですが・・・。

ネタバレになってしまうので、これ以上書けませんが、肝心の『イエスの復活』そのものについては、薄っぺらな記述で深くはないのでそこは期待しないで小説として読みましょう。

読みやすいし、テンポも普通以上。さらっと読めます。

キリストの遺骸〈上〉(amazonリンク)
キリストの遺骸〈下〉(amazonリンク)

関連ブログ
エルサレムで発見された「イエスの墓」
キリストの「本当の墓」発見? 米で映画化へ 教会反発
イエスの兄弟の石棺は偽物 CBSニュースより
「イエスの弟」ハーシェル シャンクス, ベン,3 ウィザリントン 松柏社
「謎の聖杯」上下 リチャード・ベン サピア 徳間書店
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2007年07月22日

「日本の面影」ラフカディオ ハーン、(訳)田代三千稔 角川書店

日本名、小泉八雲。「怪談」等で有名な作家であり、私も子供時分に読んであの奇妙、且つ独特な風情を有する日本情緒を感じたものであるが、本書は読んだことがなかった。

本書は、一冊の本の翻訳ではなく、複数の本から翻訳者の視点で選んだ幾つかの小編を訳してまとめたものという構成をとっている。日本という異国に来て記した紀行文であり、随筆であり、文化論であり、単なる覚書でもある。

ラフカディオ・ハーンが残した雑多なメモであるかもしれないが、本書の中に描かれる『日本』は私達の郷愁をそそる在りし日の幻影としての『日本』であり、どこか実際とは異なる、御伽噺に出てくるような噂や想像上にしか有り得ないような『日本』でもある。

全く自分の慣れ親しんだ価値観や常識が通用しない『異国』。そこに迷い込んだ異邦人である自分を強烈に自覚しながらも、自分の知っているのとは全然違っているにも関わらず、冷静に観察することで気付くこの国独自のルール《日本の常識》。

あまりにも他人を思いやり、表面的には控え目ながら、己が美学(or 道徳)を貫く為には、自らの命さえ賭してしまう強い自負心。等々、異国にいるという異様に高揚した精神のみが生み出し得たある種、架空の『古き良き日本』が表現されています。

ハーン自身の過剰なまでに繊細さと、異国での精神的高揚の相互作用で描かれる『日本』の姿は、実に、実に美しい。夢幻的ですら有り得るでしょう。日本人が百万言の言葉を費やしても描けないその姿に、私はすっかり魅惑されてしまいました。

例えば、こおろぎや鈴虫に関しての日本の習慣&自らの飼育経験をここまで書いている本は過分にして見たことがありません。私も鈴虫は幼少時飼っていたことがあり、近所のおばさんがツボに入れて何世代にもわたり生育していた一級品を分けて頂いたことがありましたが、冬を越す事ができませんでした。

あれって、数日おきに押入れから出して霧吹きで土を湿らせたりと細かな世話が必要んですよねぇ〜。本書を読んで鮮烈なイメージと共に過去の記憶を呼び起こされたりしました。

勿論、それ以外にも地方それぞれに伝わる盆踊りや夏祭り。経験しても文章としてここまでのものは私には書けません。外人故の新鮮な視点という以外の何かをハーン自身が持っていなければ、絶対に生まれない文章です。まさに文体(スタイル)が傑出している作品でしょう。

あまりにも文章が素敵なので、ふと疑問が浮かんだのですが、これって翻訳者が異様にうまいということもあるのでしょうか? 訳者は田代三千稔という方です。その辺をはっきりさせる為にも一度、原書を読んでみてみたいと強く思いました。だって、あまりにも日本語の文章が素敵なんで。

先日読んだ「東京の下層社会」と描かれているのは、ほぼ同時期ではないかと思うのですが、とても両者が同じ時代だとは信じられません。もっともそれがえてして真実の実像なのでしょうが・・・。

とにかく「美しい日本」に触れたい方にはお薦めです。是非、本書の中で描かれた日本に行ってみたいと願わずにはいられません!!

【注】本書はいろんな翻訳者によって訳されています。翻訳者が変われば、全然違った感じの文章になることはよくあることです。従って他の翻訳者の本については、その本を読まれた方の書評を参考にされることをお薦めします。老婆心ながら。
ちなみに私が読んだのは角川の復刊文庫の奴です。
【目次】
東洋の第1日
盆おどり
子供の霊の洞窟―潜戸
石の美しさ
英語教師の日記から
日本海のほとりにて
日本人の微笑
夏の日の夢
生と死の断片
停車場にて
門つけ
生神
人形の墓
虫の楽師
占の話
焼津にて
橋の上
漂流
乙吉の達磨
露のひとしずく
病理上のこと
草ひばり
蓬莱
日本の面影(amazonリンク)
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