
古典SFの一つとして著名な作品ながら、読んでいなかったのですが、初トライ。
確かに舞台はSFなのですが・・・あえてSFの設定を必要とする作品ではありませんでした。
普通の小説として読んでも素敵な内容の作品でした。
もっともSFだからこそ、かえって現実による余計な設定等を考慮せず、純粋な作品の舞台を作って、その分、本質的な内容部分の充実に著者の精力が注ぎ込まれたのかもしれませんが・・・。
うん、非常に中身のある作品ですね。
自分たちの世界を、自分たちの政治を決める最終的な市民権行使の資格を兵士に限定する、という「市民皆兵」というかその手の基本的ルールというのが何よりも根本にあり、その兵士は自発的な意思による志願者というのが、古代ローマの軍隊を思い出させました。
確か、30年間だったっけ?
ローマ市民権を持たないものでも軍務に服せば、市民権を与えられたというのがありましたねぇ~。
あと、古代ギリシアのアテナやスパルタなんかも全市民に兵役があり、直接民主制がとられていたのも、その辺が本書の想定する市民社会かな?なんて思いながら読んでました。
オーソン・ウェルズの動物農場よりは、こっちの方が面白いし、教訓というか為になることが多いなあ~。
だけど、決して説教臭い訳ではなく、なんていうかまさに古き良き時代の徒弟関係ではないものの、仲間や長幼の別、上が下を育ていく、今の世界でもどんなところでも見かけなくなったとても大切な価値観を思い出させてくれる作品でした。
ストーリーはとある一人の若者が将来の進路として、兵士を志望します。
志願兵ですね。
恵まれた環境に育ち、輝かしい将来を約束されていたものをすべて捨てて、命の危険を冒して、兵士を志望してしまう・・・その代価は退役するまで持った場合に与えられる、政治において行使できる市民権。
しかし、若者はその将来の代価を望んで兵士を志望する訳ではないのです。
いささか成り行き的に決まった兵士という選択は、その若者を特殊な環境において教育することになります。
その兵士となる過程で、彼は大切なことを身につけていったりします。
新兵がやがて数々の修羅場を経て、老練な熟練兵になっていくのですが、その過程がまたなかなかに読ませる内容となっています。
以前に英語版で読んだ TOYOTA's WAY も個人的には頭に思い浮かべました。
結構、熱い思いがこもった作品となっています。
何よりも面白いですねぇ~。
こういう作品とは思いませんでしたが、未読であれば、一読の価値はあるかと。
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