2011年01月10日

「中世賎民の宇宙」阿部謹也 筑摩書房

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「ハーメルンの笛吹き男」以来、著者の作品は結構読んできましたが、この本も非常に学ぶ事の多い内容でした。実に勉強になりますし、ずっと漠然と疑問に思っていたことなどが幾つか氷解しました(笑顔)。

西洋の中世的なモノに関心を持つ方なら、是非読んどくべき作品だと思います。こういうのを理解したうえで、中世の写本とか見るとまさに目から鱗ですから・・・♪

幾つか学んだことをメモ。
古ゲルマン人―時間と空間はア・プリオリな概念でなく、経験の外にあるものではなく、直接に経験されるもの

キリスト教以前と以後での時間:
時間の円環的性格(自らが経験した昨日と明日、1年を通して繰り返されていくもの) VS 直線的な時間意識(最後の審判がその終結点)

商人が何故批判させるのか
←神にのみ属するはずの時間から利益を上げる高利貸しが批判の的となり、利子は禁止させる存在

贈与・互酬:
死者は法的主体でもあり、死後の財産中には「死者の持分」が存在した。
→ケルトのように地中(池や湖等含む)へ財宝を埋蔵するのはその一例
キリスト教的価値観が入ってくると、現世ではなく天国でお返しがあるとして「神への贈与」に代わっていき、教会への死後の寄進が生まれてくる

生き続ける死者:死者はいなくなってしまうのではなく、異なる次元へと移行して存在し続ける。
相続の主体が相続人ではなく、被相続人の死者であり、死者が法的主体(権利・義務の主体)として認められている。「死者が生者を相続人にする」

聖遺物崇拝:
生ける死者「聖者」
聖者は贈与を通して現世と交流可能な関係を結んでいる。
→寄進された財宝は死せる聖者が現世にそのお返しとして介入(=奇蹟)することを期待してなされた

人間狼:平和の喪失を宣告された者=死者
社会から受け入れを拒まれることは、当時そのまま死を意味する。
→不法者が集まり、集団化し、生者に害為す存在としてのみ認識される

小宇宙(ミクロコスモス)―人間が制御できる範囲
大宇宙(マクロコスモス)―人間が制御できない範囲
この両宇宙により、世界は構成されており、中世の写本でしばしば見られる小宇宙と大宇宙の概念は、そのまま上記を反映している。
いやあ~、利子が禁止されていた理由といい、聖遺物崇拝、人間狼など、ここの事象は幾つかの本で分かった気になっていましたが、それらを根本から生み出す基本的な概念がつかめず、上っ面だけの理解だったのを痛感しました!

本当にお薦めですよ~♪

まあ、ちょっとエッセイ的な著者自身の思考の軌跡みたいな部分もありますが、そういったものも著者の問題意識の形成にどう関わってくるのか、理解するうえでは、あっていいのではないかと思います。嫌いな人もいるかもしれませんが・・・・。
【目次】
私たちにとってヨーロッパ中世とは何か
ヨーロッパ・原点への旅―時間・空間・モノ
死者の社会史―中世ヨーロッパにおける死生観の転換
ヨーロッパ中世賎民成立論
中世ヨーロッパにおける怪異なるもの
ヨーロッパの音と日本の音
中世賎民の宇宙―ヨーロッパ原点への旅 (ちくま学芸文庫)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「ハーメルンの笛吹き男」阿部 謹也 筑摩書房
「中世の星の下で」阿部 謹也 筑摩書房
「中世の窓から」阿部 謹也  朝日新聞社
「刑吏の社会史」阿部 謹也 中央公論新社
「甦える中世ヨーロッパ」阿部 謹也 日本エディタースクール出版部
「中世社会の構造」クリストファー ブルック 法政大学出版局
「中世の奇蹟と幻想」渡辺 昌美 岩波書店
「名もなき中世人の日常」エルンスト・シューベルト 八坂書房
「動物裁判」池上 俊一 講談社
「中世の巡礼者たち」レーモン ウルセル みすず書房
「巡礼の道」渡邊昌美 中央公論新社
「中世のアウトサイダー」フランツ イルジーグラー、アルノルト ラゾッタ 白水社
「狼男伝説」池上俊一 朝日新聞
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」藤代 幸一 法政大学出版局
「中世の大学」ジャック・ヴェルジェ みすず書房
「異貌の中世」蔵持 不三也 弘文堂
その他、多数。
posted by alice-room at 09:33
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