2007年04月03日

「グリーンマン」ウィリアム アンダーソン 河出書房新社

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植物の葉と人間が組み合わさったデザインである通称『グリーンマン』。本書はこのデザインが象徴するものを読み解くイコノロジー(図像解釈学)という話なのだが、イコノグラフィー(図像学:図が意図するものを把握する)まで達していないような気がしてなりません。

ただ&ただ、グリーンマンとおぼしき図像があるものを採り上げて紹介・勝手な推測しているだけで、自分の知識を広める役に立ちません。まず図像が直接的に意図している内容自体の説明がかなり適当で、一応は脚注で文献を示していてもいきなり著者自身の独自解釈を入れてるうえに、複数の図像を提示しつつもそれらがどのように関連するのかの論理的な説明がほとんどありません。

別に引用なら引用で明示したうえで著者自身の見解を表すとか、そういった基本的な姿勢がなくて主張がかなり混乱して記述されています。また著者独自の解釈なら、それはそれで良いと思うのですが、単なる類似性だけで論理的な説明や根拠となる文献等も示されないまま、いきなり結論的な見解を出されてもきっちり1分間思考停止してしまいます。「はあ~?なに言ってるの?」ってなカンジ。

およそ合理的ではなく、だらだらと列挙と引用と独断が続く文章には嫌気がさしてきます。

グリーンマンが異教的な要素を残したままキリスト教的美術に取り込まれたという一般的な見解に対し、著者は異教というよりも十分に取り込まれて一体化したうえで更に発展したというようなことを主張したいようなのですが、本書全体を通して、一貫した論理展開が見られません。エッセイとしても論外なカンジがしてなりません。

話はあちこちに飛ぶものの、それが最終的に著者の論旨に収束することがなく、かえって論点を分散するだけでいっこうに要領を得ません。これってヒドくないかなあ~。

第五章にいたっては、ゴシック期のグリーンマンとしてシャルトル大聖堂内の彫刻内のものがたくさん出てきて頁数も結構占めてるものの、全然意図不明です。もったいない。デザインの一次的な意味するものさえ、明確に特定できないままに解釈とか、歴史的な大きな意味で捉えようとしても論外でしょう。方法論の時点で致命的に欠陥有り。

個人的には絶対にお薦めしない本です。狙いは面白くてもねぇ~。ただ&ただ、たくさんの本を読みましたというレベル。それだったら、単なる引用とそれの整理だけでも十分に価値があるのに、無理して独自の解釈の真似事等した為に何の役にも立たないものに仕上がってるようです。実に、実にもったいない・・・。ちなみに図版もそれほど多いとは思いませんし。

これを読むなら、図像学の大家エミール・マール読みましょうね! パノフスキーは私には難しくて理解できませんが(涙)。
【目次】
プロローグ グリーンマン登場
第1章 グリーンマン狩り
第2章 古代のグリーンマン
第3章 暗黒時代のグリーンマン
第4章 ロマネスク期とゴシック初期のグリーンマン
第5章 ゴシック期のグリーンマンの凱旋
第6章 グリーンマン作品の謎
第7章 グリーンマンの再来と消滅
エピローグ グリーンマンはよみがえる
グリーンマン―ヨーロッパ史を生きぬいた森のシンボル(amazonリンク)

関連ブログ
「ヨーロッパのキリスト教美術―12世紀から18世紀まで(上)」エミール・マール 岩波書店
「ゴシックとは何か」酒井健 著 講談社現代新書
「ゴシック建築とスコラ学」アーウィン パノフスキー 筑摩書房
「黒い聖母と悪魔の謎」 馬杉宗夫 講談社ここでいう「葉人間」が「グリーンマン」のこと。
「キリスト教図像学」マルセル・パコ 白水社
posted by alice-room at 19:16
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