2017年05月08日

「(あるいは)SFのある風景」文野 はじめ ディスカヴァー・トゥエンティワン

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舞台設定は一応SFと言えばSFなんだけれど、SFである意味があまり無いですね。
以下、ネタバレ要素含みますので未読の方はご注意下さい。




コンピュータによる管理、情報統制という、それこそ手垢まみれの古典的近未来設定の下でそれに対する抵抗・・・といったものに少年少女の恋愛感情を絡めて、はい、あっという間に出来上がった作品。

あまりにも内容が乏しくて、何故、これが本になったのか?

編集関係者に小一時間問い詰めたいところですが、出版社が会社の〇〇記念に新しいジャンルへ進出したくて生み出した企画物に質の高い応募者も集まらず、公募作品を評価する能力もないままにとりあえず、やっつけでシリーズ出してみました、的な感じがしてしまうのは私のうがった見方感想でしょうか?

タレント本でもないのに今の時代でよくこれが出版出来たなあ~と不思議さでいっぱいです。
読むに値しない作品かと思います。

(あるいは)SFのある風景 (ノベライドル) (amazonリンク)
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2017年05月01日

「下流志向」内田 樹 講談社

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久しぶりに衝撃を受けた1冊でした!

根本的なところで自分は時代を分かっていなかったのか?

本書の説明を読んでいるうちに、うう~む、なるほど・・・とそんな馬鹿な考え方ってあるの?って思いながらも不可解な現象の説明に妥当性がありそうで今後の日本の将来像に暗澹たる気持ちにさせられました。

NHKスペシャルの「縮小ニッポン」の絶望感を上回るくらいの将来性の無さですね。この衝撃は!

もしこの解釈が正しければ、これからの日本はパラダイムシフトなんてもんではない、別次元の理解の仕方が必要な社会となり、将来像も全く違ったものになっていくことでしょう。

本書では大きく「学びからの逃走」と「労働からの逃走」が掲げられていますが、本書の中ではそれらの解説の途中で非常にショッキングが事実とそれに対する解釈が語られています。

例えば、『わからないことがあっても気にならない』。

文章を読んでいて知らない単語があってもそれをスキップして、そのスキップした事実を全く気にしないままでいられて、通常、何か気になる、ひっかかる、といった感覚の欠如が挙げられています。

女子学生が一番読んでいるファッション誌で統計をとり、誌面の分からない文字を調べていくと物凄い虫食い状態の文章になり、それをそのままで受け入れて平然としている事実があるそうです。

これはその人の現実世界の認識が虫食いの穴あき状態でなされていて、その穴を埋めていくといったことをしないでいられる、分からないという本来ストレスフルな環境にストレスを感じずにいられる、ということだそうです。

これって・・・もう普通じゃないレベルですよね!

そもそもの人間の言語能力からしても、英語とか外国の文章読んでてもそうですし、日本語でも自分の知らない分野の本とか読んでてもそうですが、知らない単語や知らない言い回しとかは、大量の文章を読んで何度か目にしていくうちに自然と前後関係からも否が応でも意味を掴んでいくものですが、そういった当たり前の行為すら行われなくなっている、ということですもんね。

いつの頃からか、TVとかを見ても物事を知らないことを前提に、かえって知らないから自分には関係無い、知らないから自分はそれに縛られない、的な愚かな発言をする人が増えていて、この人達は無知を恥ずかしいことだと思わないんだ。しかもそれを堂々と自慢気に話していて、その行為自体が自分が愚かであると公言している事実を認識していないんだと思っていましたが、それも含めて全て認識からスキップしているんですね。

驚愕の事実と著者の解釈が正しいのなら、驚愕の認識です。

あと・・・「不快」という貨幣。

著者が便宜的に定義している概念ですが・・・その貨幣経済(等価交換)の帰結として、『学力の低下は「努力の成果」』という有り得べからざる事実がその通りなら、日本はもう救いようがない感じがしてなりません。

そして、それは現在の日本人が子供の頃から経済合理性を学んだ成果が上記に繋がるというのが著者の説明なのですが、非常に興味深く、且つ絶望的な無力感に襲われそうになりますが、その一方で個人的には大いなる違和感を感じずにはいられません。

子供達が自分なりの価値尺度(経済合理性)で、学習や労働を評価し、合理的な対応をした結果というのですが、それはあくまでも短期的な一回限りの特殊な状況下での取引を想定した範囲でのみ有効な経済合理性でしかなく本来、経済学等で想定している経済合理性を持った人の行動とした場合、教育や労働は長期的なスパンの中で最大効用をあげるべき行動をすると規定され、子供であっても学習の放棄や割に合わない労働からの忌避の説明としては間違っていると思われます。

長期継続的な取引における経済合理性を首肯するなら、情報の非対称性や時間選好率、あるいは囚人のジレンマとかの観点を加味しないと、著者の説明は成り立たなくなると思いますが、著者はその辺、自分の都合の良い解釈としてしまっている点に問題がありそうです。

あとね、大学のシラバスについても学ぶまで分からないのだから、不要みたいな感じの話になっていますが、それもどうなんでしょうね? 大学生であれば、それこそ自己決定権を持っていていい思慮分別のある年齢だと思いますし、シラバスを参考にして、自分が関心(目的)を持って学ぶべき科目を選択するのは妥当な行為だと思います。

師を信じろって、言われても面識もないし、話したこともない人を信じるだけの合理的理由がありません。
オカルトで自分の将来に直結するかもしれない、勉強する科目を判断するにあたり、シラバスは貴重な判断材料だと思うんですけどね。

大学生と中学生、小学生を同列に扱うこと自体に無理を感じます。
勿論、著者が言いたいことは現在の若い人に共通な背景にポイントを置いているのは分かるのですが、それこそ、どこまでを保護者や周囲の教育関係者、世間の人が面倒をみるのか、パターナリズムの問題かと思います。

昔、大学生の頃に「校則と自己決定権」とかで卒論を書いたのを思い出しちゃいました(笑)。

著者はパイプラインからこぼれ落ちる人達に対しても、積極的に関与して、おせっかいも含めて社会全体で面倒をみていくべきと主張されていますが、そこも私的には大いに疑問を感じます。

著者の憲法論まで出して教育とかを語られるのですが、それであれば、当然、そこで法律的に規定された範囲を超えた部分での論拠はどうなるのでしょうか? 当然、法的担保は無いはずです。

本書には、目を見張るばかりの非常に衝撃的な事実と思わず納得してしまいそうな解釈が書かれていて大変勉強になるし、現実認識に際して鋭い視点を示されていて大変示唆にも富む内容なのですが、その一方で法律論、経済論としては都合の良い部分だけをつまみ食い的に解釈している部分も散見されます。

その辺が本書を読む際に注意しないといけないかもしれません。
決して本書で書かれている内容は鵜呑みにはできません。解釈もところどころ、妥当性を欠いているのも事実だと思います。しかし、それらを踏まえても物凄い衝撃を受ける内容だと思いますし、私は大変参考になりました。

これからの日本を理解するうえで、実に興味深く示唆に富む内容だと思います。
私的にはお薦めですね。但し、本書を適切に生かすには読み手側にもそれなりのものが必要になってくるとは思いますが・・・じゃないと本書に流されます。そこんとこ、注意!

先ほど、少し書いたこぼれ落ちた人に手を差し伸べる対応策についても、その方が費用が安く済むといいますが、それはその範囲に絞った限りでは確かに経済合理性があるのでしょうが、国民感情として受け入れることが出来るとは思えません。

まして進んで自己決定の結果としてその現状があるのであれば、その人達よりも更に優先して国家が福祉政策として対応すべき対象者がいるかと思います。

なんか目についたところだけ、対応しようとして、その局所的範囲で経済合理性を出しても大いなる違和感を覚えずにはいられません。何故、他の対象ではなくその対象が優先されるのか、優先することにより、大局的にどんな長所があり、それが国家としてより好ましいものになるのか、その辺の説明は本書ではされていません。

その辺はアロケーションの問題になりますが、著者はいささか恣意的に経済合理性を出されているようでここも私的には納得がいきませんでした。

ただ、将来も含めた現在の状況に対して、何らかのアクションをしていこうという提言は有りだと思います。そういったものも含めて、久しぶりに考えさせられる本でした。
【目次】
第1章 学びからの逃走
(新しいタイプの日本人の出現、勉強を嫌悪する日本の子ども、学力低下は自覚されない、「矛盾」と書けない大学生、わからないことがあっても気にならない、世界そのものが穴だらけ、オレ様化する子どもたち、想定外の問い、家庭内労働の消滅、教育サービスの買い手、教育の逆説、不快という貨幣、生徒たちの意思表示、不快貨幣の起源、クレーマーの増加、学びと時間、母語の取得、変化に抗う子どもたち、「自分探し」イデオロギー、未来を売り払う子どもたち)

第2章 リスク社会の弱者たち
(パイプラインの亀裂、階層ごとにリスクの濃淡がある、リスクヘッジとは何のことか?、三方一両損という調停術、リスクヘッジを忘れた日本人、代替プランを用意しない、自己決定・自己責任論、貧しさの知恵、構造的弱者が生まれつつある、自己決定する弱者たち、勉強しなくても自信たっぷり、学力低下は「努力の成果」)

第3章 労働からの逃走
(自己決定の詐術、不条理に気づかない、日本型ニート、青い鳥症候群、転職を繰り返す思考パターン、「賃金が安い」と感じる理由、労働はオーバーアチーブ、交換と贈与、IT長者を支持する理由、実学志向、時間と学び、「学び方」を学ぶ、工場としての学校)

第4章 質疑応答
(アメリカン・モデルの終焉、子どもの成長を待てない親、育児と音楽、高速化する社会活動、師弟関係の条件、教育者に必要な条件、無限の尊敬、クレーマー化する親、文化資本と階層化、家族と親密圏、新しい親密圏、ニートの未来、ニート対策は家庭で、余計なコミュニケーションが人を育てる、付和雷同体質、相手の話を聴かない人々、時間性の回復策、身体性の教育)

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)(amazonリンク)

ブログ内関連記事
「学歴分断社会」吉川 徹 筑摩書房
「新平等社会」山田 昌弘 文藝春秋
「無業社会」工藤啓、西田亮介 朝日新聞出版
「貧困女子のリアル」沢木 文 小学館
「高学歴ワーキングプア」水月昭道 光文社
「3年で辞めた若者はどこへ行ったのか」城繁幸 筑摩書房
「仕事漂流」稲泉 連 文藝春秋
「ホームレス博士」水月昭道 光文社
「自己啓発病」社会 宮崎 学 祥伝社
「キャリアポルノは人生の無駄だ」谷本真由美 朝日新聞出版
「無縁社会」NHK「無縁社会プロジェクト」取材班  文藝春秋
タグ:書評
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「懐かしの街さんぽ 埼玉」幹書房

昔の建物や食べ歩きのスポットを紹介したよくある街歩きの本。

ただ紹介されている建物は、るるぶ等で紹介されるものよりは一歩深く突っ込んだものとなっていて、そこがウリでしょうか? 差別化ポイントとなっています。

個人的には歩いたことのある街については、ほとんど知っていることばかりでしたが、それを採り上げたこの手の本が無いなあ~と思っていたところでしたので、悪くないと思います。

また歩いたことのない街については、訪れてみたいと私が関心をもつようなモノが紹介されていたので嬉しかったです。

懐かしの街さんぽ 埼玉 単行本 (amazonリンク)
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2017年04月27日

「吉田類の散歩酒」吉田 類 主婦と生活社

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最近、よくある吉田さんの名にあやかって、居酒屋や飲み歩きの本を出している系の本です。
編集として名前がクレジットされているので内容チェック等はされているのでしょうが、基本、別なスタッフがまとめて書いた文章や情報を吉田さん風にアレンジしてムック本みたくしたものです。



【目次】
1章 変わっていく街、変わらぬ街「吉祥寺」散歩酒
2章 江戸下町情緒の残る街「深川」散歩酒
3章 都会を背にした大自然「高尾山」散歩酒
4章 街の歴史を紐解く

吉田類の散歩酒 単行本(amazonリンク)
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「ほんほん本の旅あるき」南陀楼 綾繁 産業編集センター

一箱古本市で有名な著者が全国のあちらこちらに『本』をキーワードにして旅というか、訪れたエピソードを語ったもの。

もう少し本自体に触れた話もあるかと思ったのですが・・・所謂、古書にまつわる話とかそういうものはありません。町おこしに関連して「一箱古本市」みたいなのやりませんか? っていうことでお仕事絡みの単なる出張に際しての覚書といった感じの内容です。

「本」を縁とした人の繋がりで地域が活性化されるのは結構だと思うのですが、古書関連の興味で本書を読もうとするなら、やめた方が良いでしょう。

古書に関する話は本当に皆無に近い状況です。

また・・・本としてはあまりにも紙質が悪くないですかねぇ~。
再生紙か何かでしょうか?
すぐにボロボロになりそうな紙に小さいカラー写真が時々入っているのですが、正直、小さいし、あまり意味が無いのでせっかく写真を入れるなら、もう少し大きいものではないと思いました。

正直、プロの方がされているのとは思えません。
あえて意図されているのかもしれませんが、この内容、この『物』としての本に対してこの価格設定は納得できません。自腹では購入する気になれないと思います。

ただ・・・1点だけ本書を読んで私には意味のある情報がありました。
高田馬場にある崩壊仕掛けたまま何十年もあった喫茶店「らんぶる」の話だけ、私には長年の疑問というか気がかりだったので、ちょっと感動しました。
【以下、抜粋】
その先に進み、「あそこにある店がね・・・」と同行者に云おうとして、その先が続かない。
店があるはずの場所が更地になっていたからだ。ココには崩れかけのボロボロの建物があり、<らんぶる>という喫茶店をやっていた。名曲喫茶なのになぜかラジオの相撲中継がかかっていた。タキシードを着たマスターがやってきて「コーヒーでいいね」と有無を云わせず、泥水のようなコーヒーを持ってくる。サークル仲間と授業のハナシをしていたら、マスターが「ぼくも早大の哲学科だったんだよ」などと割り込んでくる、ヘンな店だった。ずっと前から店はやってなかったが、それでも建物は残っていた。ついにそれがなくなかったのだ。
ここだけは私にとっては値千金、ってほどではないけれど、なんかずっと気になっていたので少しでも知ることが出来て良かったです。あとは・・・まあ、本書を読む必要は無かったです。個人的には。

【目次】
 盛岡(岩手県)
 秋田(秋田県)
 石巻・仙台(宮城県)
 新潟(新潟県)
 富山・高岡(富山県)
 津(三重県)
 鳥取・松崎(鳥取県)
 松江・隠岐(島根県)
 呉・江田島(広島県)
 高知・阿波池田(高知県・徳島県)
 北九州(福岡県)
 別府(大分県)
 鹿児島(鹿児島県)
 都電荒川線(東京都)
ほんほん本の旅あるき 単行本(amazonリンク)
posted by alice-room at 06:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 【書評 本】 | 更新情報をチェックする